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特開2024-14813光通信システム、光通信方法、端局装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014813
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】光通信システム、光通信方法、端局装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2543 20130101AFI20240125BHJP
【FI】
H04B10/2543
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117901
(22)【出願日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】17/870,862
(32)【優先日】2022-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 慎介
(72)【発明者】
【氏名】石井 直人
(72)【発明者】
【氏名】ビナヤチャンダラン アンキット
(72)【発明者】
【氏名】ル タヤンディエ ドゥ ガボリ エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ヤマン ファティ
(72)【発明者】
【氏名】バション, フサム ジー
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA01
5K102AB06
5K102AD15
5K102AH11
5K102AH22
5K102AH26
5K102AH27
5K102KA06
5K102KA39
5K102PB13
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】波形歪みを等化する非線形波形歪みの補償方法、端局装置および光通信システムを提供する。
【解決手段】光通信システム10は、第1のデータを受信し、受信した第1のデータに基づいて光波形を生成する第1の端局装置(光送信器)と、第1の端局装置から光波形を受信する光ファイバ通信路と、光ファイバ通信路から光波形を受信し、光波形に基づいて第2のデータを出力する第2の端局装置(光受信器)と、を備える。第1の端局装置または第2の端局装置の少なくとも一方は、非線形波形歪み補償部を備える。非線形波形歪み補償部は、光通信路に沿って伝播する光波形に起因する非線形波形歪みを補正し、非線形波形歪補償部を含む回路全体のサイズを削減するために、再帰的中間層を有するニューラルネットワークの機能を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のデータを受信し、前記受信した第1のデータに基づいて光波形を生成するように構成される第1の端局装置と、
前記第1の端局装置から前記光波形を受信するように構成された光通信路と、
前記光通信路から前記光波形を受信するように構成され、前記光波形に基づいて第2のデータを出力するように構成された第2の端局装置と
を備え、
前記第1の端局装置または前記第2の端局装置の少なくとも一方は、非線形波形歪み補償部を備え、
前記非線形波形歪み補償部は、前記光通信路に沿って伝播する前記光波形に起因する非線形波形歪みを補正するように構成され、少なくとも1つの再帰的中間層を備える
光通信システム。
【請求項2】
前記非線形波形歪み補償部は、単一の再帰的中間層を備える、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
前記非線形波形歪み補償部は、前記少なくとも1つの再帰的中間層の出力値に基づいて代表値を決定するように構成される、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの再帰的中間層は、第1の入力として前記出力値を受信し、前記代表値に基づいて前記少なくとも1つの再帰的中間層の後続の出力を決定するように構成される、請求項3に記載の光通信システム。
【請求項5】
前記非線形波形歪み補償部は、出力層をさらに備え、前記出力層は、前記出力値を受信するように構成され、前記出力値および前記代表値に基づいて前記非線形波形歪み補償部の出力を決定するように構成される、請求項3に記載の光通信システム。
【請求項6】
前記非線形波形歪み補償部は、入力層をさらに備え、前記少なくとも1つの再帰的中間層は、第2の入力として前記入力層の出力を受信するように構成される、請求項3に記載の光通信システム。
【請求項7】
前記第1の端局装置は、前記非線形波形歪み補償部を備える、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項8】
前記第2の端局装置は、前記非線形波形歪み補償部を備える、請求項1に記載の光通信システム。
【請求項9】
第1の端局装置を使用して、第1のデータを受信することと、
前記第1のデータに基づいて光波形を生成することと、
光通信路に沿って前記光波形を送信することと、
第2の端局装置を使用して、前記光通信路から前記送信された光波形を受信することと、
前記第2の端局装置によって受信された前記光波形に基づいて前記第2の端局装置から第2のデータを出力することと、
前記第1の端局装置または前記第2の端局装置の少なくとも一方を使用して、非線形波形歪み補償を行い、前記光通信路に沿って伝播する前記光波形に起因する非線形波形歪みを補正することであって、前記非線形波形歪み補償を行うことは、少なくとも1つの再帰的中間層を使用することを含むことと
を含む、光通信方法。
【請求項10】
非線形波形歪み補償部を備える、光通信システム用の端局装置であって、
前記非線形波形歪み補償部は、光通信路に沿って伝播する光波形に起因する非線形波形歪みを補正するように構成され、
前記非線形波形歪み補償部は、
前記光波形に関する情報を受信するように構成され、第1の出力を生成するように構成される入力層と、
第1の入力として前記第1の出力を受信するように構成され、第2の出力を生成するように構成され、第2の入力として前記第2の出力を受信するように構成される少なくとも1つの再帰的中間層と、
前記第2の出力を受信するように構成され、前記第2の出力と前記第2の出力に基づく代表値とに基づいて第3の出力を生成するように構成される出力層と、を備える
端局装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、波形歪みを等化する方法、端局装置、および光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及により基幹ネットワークのトラヒック量が急増していることから、急増するトラヒック需要を高効率に収容する技術が必要不可欠である。高効率に基幹ネットワークに大容量トラヒック需要を収容するために光通信システムが導入されており、光通信システムは拠点間を接続する光ファイバ通信路を介して、要求トラヒックを通信する機能を提供する。近年のトラヒック需要に合わせて1チャネルあたり1 Tbps級の大容量光通信システムの実現が強く望まれている。このような大容量光通信システムを実現する技術として、多値変調方式や偏波多重分離方式など周波数利用効率の向上方式を適用するためにデジタル信号処理が用いられている。
【0003】
また、大容量光通信システムの長距離化がビット単価低減に寄与するため強く要望されている。中でも、光海底ケーブルは海で隔てられた陸地間に大容量な通信インフラを提供する手段として必要不可欠であり、ケーブル総延長が1万数千キロメートルに到達することもあるため長距離化による効果は非常に大きい。
【0004】
光ファイバ通信路の総延長が長くなると、光信号が通信路中で通過する光増幅器の数が増えるために、受信側の端局装置での光信号雑音比が低下するため信号品質が劣化する。一方で、受信光信号雑音比を改善するために、送信側の光信号強度を増加させると光ファイバ通信路中で生じる非線形波形歪みが増大することで信号品質がむしろ劣化する。したがって、大容量光通信システムを長距離化するためには、この非線形波形歪に対する歪補償技術の実現が課題である。
【0005】
光ファイバ通信路中の非線形波形歪補償技術として、これまでにデジタル逆伝搬法(Digital Back-propagation)が提案されてきた。デジタル逆伝搬法では光ファイバ通信路における非線形波形歪をデジタル信号処理で模擬し、非線形波形歪の逆作用を受信データに適用することで歪補償を実現する方式であり、大容量光通信システムの長距離化に有効であることが知られている。このような波形歪補償機能の例が、特許文献1に記載されている。
【0006】
しかしながら、デジタル逆伝搬法を効果的に適用するためには非線形波形歪に関する特徴量を事前に最適化しておく必要があり、最適化するためには光ファイバ通信路の物理特性を精度良く把握しておくことが不可欠である。端局装置を導入する際に当該最適化を実施することが一般的であるが、そのためにはスキルを有した熟練エンジニアが光信号導通試験において特徴量を算出することが必要になり、人手と時間がかかる点が問題点である。さらに経年劣化などで光ファイバ通信路の物理特性が変化した場合には非線形波形歪補償方式の最適化を再度実施することが望ましく、その度に熟練エンジニアを再度派遣する必要になる点も好ましくない点である。
【0007】
すなわち、光ファイバ通信路の物理特性の経年変化にきめ細やかに対応するには非線形波形歪補償の自動化が望ましい。近年、ニューラルネットワークを用いて非線形波形歪を受信データから学習することで非線形波形歪に関する特徴量を自動的に取得し、その逆作用を受信データに適用することで歪補償を実現する方式が注目されている。ニューラルネットワークではデジタル逆伝搬法の非線形波形歪モデルで取り込むことができなかった残留非線形波形歪を含めることが可能になると考えられ、さらなる信号品質の向上を実現する方式として期待が高まっている。このような波形歪補償機能の例が、特許文献2、非特許文献1、および非特許文献2に記載されている。
【0008】
すなわち、インターネットの使用の増加により基幹ネットワーク上のトラフィック量が急速に増加しているため、基幹ネットワークにおける大容量トラフィック需要に効率的に対応する光通信システムが導入されている。光通信システムは、基地局などの通信ハブを接続する光ファイバ通信回線において単一のチャネルを使用して需要トラフィックを通信する機能を提供する。当該チャネルは、光通信システムにおける最近のトラフィック需要に関する情報を通信するために使用可能である。テラバイト/秒(TBPS)クラスの光通信システムの実現は、そのような大容量光通信システムを容易にするのに役立っている。周波数利用効率を改善するために、多値変調方法または偏波多重分離方法などのデジタル信号処理が使用されている。
【0009】
さらに、大容量光通信システムを使用した長距離通信は、山、大洋、海、または砂漠などのように、かなりの距離で隔てられた場所間の通信に使用される。場合によっては、光通信システムの総ケーブル長は、10,000キロメートル(km)以上に達する。例えば、光海底ケーブルは、海で隔てられた場所間で大容量の通信インフラストラクチャを提供するために使用可能である。光信号が光ケーブルに沿って進む距離が大きくなるにつれて、光信号の歪み量も大きくなる。この歪みの影響は、長距離通信インフラストラクチャにおいてより一般的である。
【0010】
場合によっては、光ファイバ通信経路中での光信号強度の減衰を補償するために、光ケーブルに沿って光増幅器が使用される。光ファイバ通信路の全長が長くなると、光信号が通信路において通過する光増幅器の数が増加する。しかし、これらの光増幅器は、光通信システムの受信側の端局装置によって検出される光信号対雑音比を低減する。低減された信号対雑音比は、端局装置によって検出される信号品質を悪化させる。光増幅器の欠点にもかかわらず、光増幅器が使用されない場合、受信した光信号雑音比を改善するために送信側の光信号強度が増加する。この光信号強度の増加は、光ファイバ通信路における非線形波形歪みを増加させる。その結果、信号品質は依然として悪化してしまいうる。
【0011】
光ファイバ通信路における非線形波形歪み補償技術として、デジタル逆伝播法が挙げられる。デジタル逆伝播法は、デジタル信号処理によって光ファイバ通信路における非線形波形歪みをシミュレートし、非線形波形歪みの逆演算を端局装置によって受信されたデータに適用することによって歪み補償を実現する。逆伝播法は、光信号が進む距離に関する光信号に対する品質劣化を低減するのに効果的である。デジタル逆伝播法の一例が、特許文献1に記載されている。
【0012】
デジタル逆伝播法は、非線形波形歪みに関する特徴を効果的であるように事前に最適化することを含む。特徴を最適化するには、光ファイバ通信路の物理的特性を正確に理解する必要がある。場合によっては、最適化は、端末機器を導入するときに行われる。しかし、最適化プロセスは、光信号連続性試験における特徴を手動で計算する能力を有する熟練技術者を伴う。この手動処理は、大量の時間を要する。さらに、光ファイバ通信路の物理的特性が経時的な悪化によって変化する場合、再最適化が熟練技術者によって行われる。
【0013】
効率の改善においては、光ファイバ通信路の物理的特性の変化に細かく対応するために、非線形波形歪み補償の自動化が求められている。近年、ニューラルネットワークを使用して受信データから非線形波形歪みを学習し、悪影響を受信データに適用することによって、非線形波形歪みに関する特徴を自動的に取得して歪み補償を実現する方法が開発されている。その目標は、ニューラルネットワークが、デジタル逆伝播法の非線形波形歪みモデルによって捕捉することができなかった残留非線形波形歪みを含むことである。このような波形歪み補償機能の例は、特許文献2、非特許文献1、および非特許文献2に記載されている。
【0014】
図1Aは、上述した技術に関連する光通信システムの構成の一例を示すブロック図である。図1Aに示すように、上述した光通信システム90は、光送信器91、光ファイバ通信路92、および光受信器93を有する。ここでは、光通信システム90が光送信器91と光受信器93とが光ファイバ通信路92に接続する場合を例に説明するが、光送信器および光受信器の台数はこれに限らない。また、一般に端局装置は光送信器91および光受信器93とを備えるものである。
【0015】
光送信器91は、送信端クライアントインターフェース910、送信データ生成部911、光波形生成部912を有する。光受信器93は、光波形受信部930、波形歪補償部931、受信データ復調部932、受信端クライアントインターフェース933を有する。波形歪補償部931は、線形波形歪補償部9310、非線形波形歪補償部9311を有する。
【0016】
図1Bは、上述した技術に関する光通信システムが備える非線形波形歪補償部の一例を示すブロック図である。図2に示すように、上述した非線形波形歪補償部9311は、入力層940、中間層941-0、941-1、941-2、出力層942を有する。入力層940は積和演算部95-0を備え、中間層941-0は積和演算部95-1を備え、中間層941-1は積和演算部95-2を備え、中間層941-2は積和演算部95-2を備え、出力層942は積和演算部95-3を備える。ここでは、非線形波形歪補償部9311が3つの中間層941-0、941-1、941-2を有する場合を例に説明するが、中間層の層数はこれに限らない。
【0017】
なお、以降の説明では、同種の装置等の符号に添え字(-1、-2等)を伴う要素について、それらを総括して説明する場合は、符号の添え字を省略するものとする。
【0018】
次に、上述した技術に関連する光通信システムが、要求トラヒックを光信号に収容する動作について説明する。
【0019】
光送信器91は、送信端クライアントインターフェース910より入力される要求トラヒックに基づいて、送信データ生成部911において多値変調方式や偏波多重分離方式を適用するためのシンボルマッピングを実施した上で光波形生成部912に入力する送信データを生成し、光波形生成部912において前述の送信データに基づいて光波形を生成し、接続する光ファイバ通信路92に光波形を送信する。一般に光波形生成部はRF増幅器および光I/Q変調器を有し、送信データの電気波形から光波形を生成するものである。光受信器93は、光波形受信部930において接続する光ファイバ通信路92を伝搬した光波形をコヒーレント検波した上でアナログデジタル変換により得られた受信データに対して、波形歪補償部931において当該受信データが含む線形および非線形の波形歪を補償し、受信データ復調部932において多値変調方式および偏波多重分離方式の適用したことに伴うシンボルデマッピングを実施した上で、受信端クライアントインターフェース933から要求トラヒックを出力する。
【0020】
以上の動作により、光通信システム90において、要求トラヒックを収容する光チャネルを確立する。
【0021】
次に、上述した技術に関連する光通信システムにおいて、ニューラルネットワークを用いて受信データから非線形波形歪を学習した上で前述の非線形波形歪を補償する動作について説明する。非線形波形歪補償部9311は、一例として3層の中間層(隠れ層とも呼ぶ)を有するニューラルネットワークであり、入力層940に波形歪補償部931に入力される受信データを入力し、出力層942から受信データが内包する非線形波形歪が補償された受信データが出力される。積和演算部95は各層940、941および942において、ニューラルネットワークの重み行列積和演算、バイアス値加算および活性化関数演算を各々実施し、非線形波形歪補償を実現する。なお、入力層940への入力としては前述した受信データに限らず、前処理を実施した受信データを採用することもある。
【0022】
続いて、非線形波形歪補償部9311の学習の動作について説明する。一例として教師付き学習の場合について動作を説明するがこの限りではない。教師付き学習においては、非線形波形歪補償部9311に対する教師データとして、光送信器91より既知の送信データを送信し、入力層940に線形波形歪補償部9310の出力を入力した上で、出力層942の出力データと前述の既知の送信データとの平均二乗誤差が最小になるように各層940、941および942の重み値とバイアス値とを最適化することで学習が完了する。一般に最適化アルゴリズムとして確率的勾配降下法やAdam法、RMSProp法などを用いる。教師付き学習によって得られた重み値、バイアス値を非線形波形歪補償部9311の特徴量として採用することで、教師データに限らず一般の受信データに対して非線形波形歪の補償が実現される。
【0023】
以上の動作により、光通信システム90が備える光受信器93において非線形波形歪の補償を実現する。
【0024】
すなわち、図1Aは、ニューラルネットワークを使用した光通信システム90のブロック図である。図1Aに示すように、光通信システム90は、光送信器91と、光ファイバ通信路92と、光受信器93とを含む。光通信システム90は、光送信器91および光受信器93を光ファイバ通信路92に接続する。
【0025】
光送信器91は、送信端(送信側)クライアントインターフェース910と、送信データ生成部911と、光波形生成部(光波形発生器)912とを有する。光受信器93は、光波形受信部930と、波形歪補償部931と、受信データ復調部932と、受信端(受信側)クライアントインターフェース933とを含む。波形歪補償部931は、線形波形歪補償部9310と、非線形波形歪補償部9311とを有する。
【0026】
図1Bは、非線形波形歪補償部9311のブロック図である。非線形波形歪補償部9311は、光通信システム90などの光通信システムに含まれ得る。上述の非線形波形歪補償部9311は、入力層940と、中間層941-0、941-1、941-2と、出力層942とを有する。入力層940は、積和演算部95-0を有し、中間層941-0は、積和演算部95-1を有し、中間層941-1は、積和演算部95-2を有し、中間層941-2は、積和演算部95-3を含み、出力層942は、積和演算部95-4を含む。
【0027】
簡潔にするために、以下の説明では、同じタイプのデバイスなどの番号に添え字(-1、-2など)を付した要素を総称する場合には、当該番号の添え字を省略するものとする。
【0028】
次に、光信号におけるトラフィックに対応する光通信システム90の動作について説明する。
【0029】
光送信器91は、送信端クライアントインターフェース910から入力される要求トラフィックに基づいて、送信データ生成部911において多値変調方法または偏波多重分離方法を適用するためのシンボルマッピングを行い、送信データを生成する。送信データは、光波形生成部912に入力される。光波形生成部912は、送信データに基づいて光波形を生成し、光波形は、光ファイバ通信路92に送信される。場合によっては、光波形生成部912は、無線周波数(RF)増幅器と、光同相直交位相(IN-Phase Quadrature-Phase:I/Q)変調器とを含む。光波形生成部912は、送信データの電気波形から光波形を生成する。
【0030】
光受信器93は、光ファイバ通信路92を伝播する光波形のコヒーレント検波によって得られた受信データに対する波形歪補償部931を含む。光波形は、アナログ-デジタル変換を行う光波形受信部930に受信される。波形歪補償部931を使用して、受信データに含まれる線形および非線形波形歪みを補償した後、受信データ復調部932は、多値変調方法および偏波多重分離方法の適用によるシンボルデマッピングを行う。結果として得られるデータは、受信端クライアントインターフェース933に転送される。
【0031】
以上の動作によって、光通信システム90は、光チャネルにおけるトラフィックに対応することができる。
【0032】
光通信システム90のいくつかの例では、上述の非線形波形歪みの補償は、ニューラルネットワークを使用して受信データから非線形波形歪みを学習した後に行われる。非線形波形歪補償部9311は、例えば、3つの中間層(隠れ層とも呼ばれる)を有するニューラルネットワークであり、波形歪補償部931に入力された受信データは、入力層940および出力層942に入力される。出力層942は、非線形波形歪みが補償された受信データを出力する。積和演算部95は、それぞれ各層941-0、941-1、および941-2におけるニューラルネットワークの重み行列積和計算、バイアス値加算、および活性化関数計算を行い、非線形波形歪み補償を実施する。
【0033】
非線形波形歪補償部9311の動作を学習する例を、教師あり学習を使用して説明する。教師あり学習では、既知の送信データが非線形波形歪補償部9311に対する教師データとして光送信器91から送信され、線形波形歪補償部9310の出力が入力層940に入力された後、出力層942が使用される。訓練は、出力層942の出力データと上述の既知の送信データとの間の平均二乗誤差が最小になるように、層941-0、941-1、および941-2の重み値およびバイアス値を最適化することによって完了する。場合によっては、確率的勾配降下法、Adam法、RMSProp法などが最適化アルゴリズムとして使用される。非線形波形歪補償部9311の特徴量として教師あり学習によって得られた重み値およびバイアス値を採用することによって、非線形波形歪み補償が教師データだけでなく他の受信データに対しても実現される。
【0034】
以上の動作により、光通信システム90に含まれる光受信器93において、非線形波形歪みの補償が実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】米国特許第8,873,971号
【特許文献2】米国特許第10,833,770号
【特許文献3】米国特許出願公開第2021/0256347号
【非特許文献】
【0036】
【非特許文献1】C.Hager et al.,「Nonlinear interference mitigation via deep neural networks」OFC 2018 paper W3A.4。
【非特許文献2】BI Bitachon et al.,「Deep learning based digital backpropagation demonstrating SNR gain at low complexity in a 1200 km transmission link」Optics Express,Vol.28,No.20,pp.29318-29334(2020)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
非線形波形歪みの補償方法の改良が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明は、光通信システムの伝送特性を最良とするために、光端局装置において受信した波形をデジタル復調処理により得られた受信信号データと送信信号データとの比較結果から波形歪みを推定し、受信信号データに対して推定した波形歪みの逆作用を適用することで歪みを補償する波形歪等化方法に関し、特に当該波形歪み方式を適用することで、光海底ケーブル通信に代表される大容量長距離光通信システムにおいて課題となる光ファイバ伝送路中で生じる非線形波形歪みに対して高い耐力を有する端局装置に関する。
【0039】
すなわち、本明細書は、ニューラルネットワークを利用して、光端局装置において受信された波形のデジタル復調処理によって得られた受信信号データと送信信号データとの間の比較結果に基づいて非線形波形歪みを推定する光通信システムを含む。波形歪み等化方法は、推定された波形歪みの悪影響を受信信号データに適用することによって歪みを補償する。波形歪み等化方法を適用することによって、光海底ケーブルなどの長い光ケーブルを介した送信による非線形波形歪みが補償され、出力光信号が改善される。本明細書はまた、光ファイバ送信回線で発生する非線形波形歪みを補償する能力を有する端局装置に関する。
【0040】
大容量光通信システムの長距離化を実現し、光ファイバ通信路の物理特性の経年変化にきめ細やかに対応可能な技術として、ニューラルネットワークを用いた非線形波形歪補償方式が有望であることを前述した。一般に、光通信システムの長距離化に伴い、非線形波形歪が増大するため、非線形波形歪補償を実現するために必要となるニューラルネットワークの中間層の層数も同時に増える傾向にあることが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0041】
一方で、前述した中間層の層数が増えるにつれて、中間層は積和演算部を有するために非線形波形歪補償部全体の回路規模が増大する問題がある。その結果、波形歪補償をリアルタイム処理するために用いるASIC回路資源の上限値よりも、非線形波形歪補償部の回路規模が上回ってしまうという実装上の懸念がある。
【0042】
ニューラルネットワークを活用した非線形波形歪補償方式の回路規模を削減する手段の一例として、特許文献3に記載の通り、ルックアップテーブル(LUT)を用いる方式が公知である。前述したLUTを用いる方式は、図1Cに示す通り、光送信器において送信データに対して非線形波形歪を予等化することが前提であって、予等化では送信データがQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、32QAMおよび64QAMといった多値変調方式を前提としてシンボルマッピングされるため、I/Q軸に関する対称性を活用することで、非線形波形歪予等化を実現するニューラルネットワークの入力層において、積和演算部のうち乗算部の解の候補が限定され得るので、乗算解をLUTに保存可能となり、当該乗算部をLUTで置き換えることで回路規模削減に寄与する。
【0043】
しかしながら、特許文献3に記載される回路規模削減手段は、光受信器が非線形波形歪補償部を有する場合には適用できない問題と、さらには入力層の乗算部をLUTで置き換えるため中間層の層数が小さい非線形波形歪予等化部には有効であるが、中間層の層数が増大する場合には回路規模削減効果が相対的に低減するという問題がある。
【0044】
本開示の目的は、上述した課題の少なくとも1つを解決する波形歪等化方法、端局装置および光通信システムを提供することにある。すなわち、大容量光通信システムの長距離化を実現し、光ファイバ通信路の物理特性の経年変化に自動的に追随することで伝送容量を常に最大化することを目的に、ニューラルネットワークの回路規模を実装可能な規模に抑えることで、非線形波形歪補償部および予等化部を実現する上での課題を解決するものである。
【0045】
すなわち、上述したように、ニューラルネットワークを使用した非線形波形歪み補償方法は、経時的な光ファイバ通信路の物理的特性の変化に対して精度良くかつ正確に対応することができる。他の手法では、非線形波形歪み補償を実施するために使用されるニューラルネットワークの中間層の層の数は、光信号路の距離に起因する非線形波形歪みが増加するにつれて増加する。(例えば、非特許文献2参照)。
【0046】
中間層の層の数が増加するほど、各中間層が積和計算部を含んでいるため、非線形波形歪み補償部の回路全体のサイズが大きくなる。中間層の数が閾値を超えて増加する場合、非線形波形歪み補償部の回路規模は、波形歪み補償のリアルタイム処理に使用されるASIC回路リソースの上限を超えることになる。
【0047】
特許文献3に記載されているように、ルックアップテーブル(LUT)を使用する方法は、ニューラルネットワークを利用した非線形波形歪み補償方法の回路規模を削減する代替手段を提供する。いくつかの実施形態では、非線形波形歪予等化(nonlinear waveform pre-distortion)部9131は、非線形波形歪みが光送信器内の送信データに対して推定されるという前提に基づいてLUTを含む。この等化では、送信データが直交位相シフトキーイング(QPSK)であり、多値変調方法を前提として16直交振幅変調(QAM)、32QAM、および64QAMがシンボルマッピングされているので、I/Q軸を中心とした対称性を利用して非線形波形歪みを実施するニューラルとなる。ネットワークの入力層において、積和計算部間の乗算部の解の候補を限定することにより、乗算解をLUTに記憶することができる。乗算部をLUTに置き換えることは、回路規模の削減に寄与する。
【0048】
しかし、特許文献3に記載のLUTによって提供される回路規模の削減は、光受信器が非線形波形歪み補償部を有する場合には適用することができない。さらに、中間層は、入力層の乗算部をLUTに置き換えるために使用される。LUTの使用は中間層の数が少ない非線形波形予歪み部には効果的であるが、中間層の数が増加すると回路規模の削減効果が小さくなる。
【0049】
本明細書は、光ケーブルの物理的特性の変化を考慮すると共に、端局装置での実装を可能にするのに十分に小さい回路サイズを維持するという上記の問題を解決するのに役立つ波形歪み等化方法、端局装置、または光通信システムに関する。ニューラルネットワークの回路規模は、大容量の光通信を行う長距離光ケーブルに対する非線形波形歪み補償を実施するのに役立つ。いくつかの実施形態では、光通信システムは、光ファイバ通信路の物理的特性の変化を自動的に調整することによって、大きな送信容量を維持することができる。回路に対する規模を限定することによって、非線形波形歪み補償部をASICに効果的に実装することができる。
【0050】
いくつかの実施形態による波形歪み等化方法は、光信号データの値として頻出する値を代表値として選択するための代表値決定部と、代表値および光波形に含まれる波形歪みの等化行列とを含む。波形歪み等化方法はまた、積を計算するための乗算部と、積からなる光信号データの波形歪み等化設定を学習するための等化学習部とを含む。波形歪み等化方法は、等化学習部に計算された積の値を記憶するための乗算保持媒体をさらに含む。波形歪み等化方法は、値保持媒体と、乗算保持媒体によって保持された積の値を加算するための加算部とをさらに含む。波形歪みは、1つまたは複数の中間層を使用して光信号データに対して再帰的に等化される。いくつかの実施形態では、波形歪みは、単一の中間層を使用して再帰的に等化される。
【0051】
本明細書による波形歪み等化方法、端局装置、および光通信システムのいくつかの実施形態によれば、非線形波形歪み等化に使用される中間層の数は、他の手法と比較して低減される。積和計算部は、中間層の出力値を中間層に再入力することによって再帰的に使用される。中間層および出力層の出力値の発生率は、監視される。この発生の分布に応じて、代表値が決定される。中間層および出力層の出力値は、代表値に近似される。ルックアップテーブルに中間層における積和計算部の乗算部の解を記憶することによって、従来可能であったよりもはるかに小さい回路規模で非線形波形歪み等化を実施することができる。これにより、光通信システムの端局装置に含まれるように十分に小さいデバイスを使用して、熟練技術者が手動で計算することなく光ケーブルにおける物理的特性の変化を自動的に補償することが可能になる。
【0052】
本開示の態様は、添付の図と併せて読むと、以下の詳細な説明から最もよく理解される。業界の標準的な慣行に従って、様々な特徴は縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。実際、様々な特徴の寸法は、説明を明確にするために任意に拡大または縮小されることがある。
【0053】
本開示の第一の実施態様によれば、光通信システムは、第1のデータを受信し、前記受信した第1のデータに基づいて光波形を生成するように構成される第1の端局装置と、前記第1の端局装置から前記光波形を受信するように構成された光通信路と、前記光通信路から前記光波形を受信するように構成され、前記光波形に基づいて第2のデータを出力するように構成された第2の端局装置とを備える。前記第1の端局装置または前記第2の端局装置の少なくとも一方は、非線形波形歪み補償デバイスを備える。前記非線形波形歪み補償デバイスは、前記光通信路に沿って伝播する前記光波形に起因する非線形波形歪みを補正するように構成され、少なくとも1つの再帰的中間層を備える。
【0054】
本開示の第二の実施態様によれば、光通信方法は、第1の端局装置を使用して、第1のデータを受信することと、前記第1のデータに基づいて光波形を生成することと、光通信路に沿って前記光波形を送信することと、第2の端局装置を使用して、前記光通信路から前記送信された光波形を受信することと、前記第2の端局装置によって受信された前記光波形に基づいて前記第2の端局装置から第2のデータを出力することと、前記第1の端局装置または前記第2の端局装置の少なくとも一方を使用して、非線形波形歪み補償を行い、前記光通信路に沿って伝播する前記光波形に起因する非線形波形歪みを補正することであって、前記非線形波形歪み補償を行うことは、少なくとも1つの再帰的中間層を使用することを含むこととを含む。
【0055】
本開示の第三の実施態様によれば、光通信システム用の端局装置は、非線形波形歪み補償部を備える。前記非線形波形歪み補償部は、光通信路に沿って伝播する光波形に起因する非線形波形歪みを補正するように構成される。前記非線形波形歪み補償部は、前記光波形に関する情報を受信するように構成され、第1の出力を生成するように構成される入力層と、第1の入力として前記第1の出力を受信するように構成され、第2の出力を生成するように構成され、第2の入力として前記第2の出力を受信するように構成される少なくとも1つの再帰的中間層と、前記第2の出力を受信するように構成され、前記第2の出力と前記第2の出力に基づく代表値とに基づいて第3の出力を生成するように構成される出力層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1A】関連する光通信システムの構成を示すブロック図である。すなわち、光通信システムのブロック図である。
図1B】関連する光通信システムが有する非線形波形歪補償部の構成を示すブロック図である。すなわち、図1Aの光通信システムに含まれ得る非線形波形歪み補償部のブロック図である。
図1C】非線形波形歪予等化方式を採用する関連する光通信システムの構成を示すブロック図である。すなわち、非線形波形予歪み方法を含む光通信システムのブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る光通信システムの構成を示すブロック図である。すなわち、いくつかの実施形態による光通信システムのブロック図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る光通信システムが有する非線形波形歪補償部の構成を示すブロック図である。すなわち、いくつかの実施形態による図2の光通信システムに含まれ得る非線形波形歪み補償部のブロック図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る光通信システムが有する非線形波形歪補償部における処理を示すブロック図である。すなわち、いくつかの実施形態による図2の光通信システムに含まれ得る非線形波形歪み補償部のブロック図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る光通信システムが有する非線形波形歪補償部の別構成を示すブロック図である。すなわち、いくつかの実施形態による図2の光通信システムに含まれ得る非線形波形歪み補償部のブロック図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る非線形波形歪補償部に対する学習プログラムの構成を示すブロック図である。すなわち、いくつかの実施形態による光通信システムの一部のブロック図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る非線形波形歪補償部に対する学習プログラムの動作を説明するためのシーケンス図である。すなわち、いくつかの実施形態による非線形波形歪みを補償するための学習方法のフローチャートである。
図8】本発明の第1の実施形態に係る非線形波形歪等化プログラムにおける処理を示すブロック図である。すなわち、いくつかの実施形態による非線形波形歪み等化部のブロック図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る非線形波形歪等化プログラムにおける中間層の出力値の頻度分布の一例を示す図である。すなわち、いくつかの実施形態による非線形波形歪み等化部における中間層の出力値の発生分布を示すグラフである。
図10A】本発明の第1の実施形態に係る波形歪等化設定決定部において事前に決定した閾値を上回る頻度区間の中央値に代表値を決定する動作を示す図である。すなわち、いくつかの実施形態による代表値および所定の閾値を決定するために使用可能な非線形波形歪み等化部における中間層の出力値の発生分布を示すグラフである。
図10B】本発明の第1の実施形態に係る波形歪等化設定決定部において頻度が一定値になるように割り当てた頻度計数区間の中央値に代表値を決定する動作を示す図である。すなわち、いくつかの実施形態による代表値および複数の区間を決定するために使用可能な非線形波形歪み等化部における中間層の出力値の発生分布を示すグラフである。
図11】本発明の第2の実施形態に係る光通信システムの構成を示すブロック図である。すなわち、いくつかの実施形態による光通信システムのブロック図である。
図12】本発明の第2の実施形態に係る光通信システムが有する非線形波形歪予等化部の構成を示すブロック図である。すなわち、いくつかの実施形態による図11の光通信システムに含まれ得る非線形波形予歪み部のブロック図である。
図13】本発明の第2の実施形態に係る非線形波形歪予等化部の別構成を示すブロック図である。すなわち、いくつかの実施形態による非線形波形予歪み部のブロック図である。
図14】本発明の第2の実施形態に係る非線形波形歪予等化部に対する学習プログラムの動作を説明するためのシーケンス図である。すなわち、いくつかの実施形態による非線形波形予歪み部のための学習方法のフローチャートである。
図15】いくつかの実施形態による非線形波形歪み補償のためのシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
[本発明の特徴]
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。本実施形態においては、第1の実施形態による波形歪等化方式を採用する端局装置を備える光通信システム10について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る光通信システム10の構成を示すブロック図である。図2に示すように、光通信システム10は、光送信器11、光ファイバ通信路12、光受信器13、学習プログラム実行計算機16を有する。ここでは、光通信システム10が光送信器11と光受信器13とが光ファイバ通信路12に接続する場合を例に説明するが、光送信器および光受信器の台数はこれに限らない。また、一般に端局装置は光送信器11および光受信器13とを備えるものである。
【0058】
前述した光送信器11は、送信端クライアントインターフェース110、送信データ生成部111、光波形生成部112、学習データDB(データベース)14を有する。前述した光受信器13は、光波形受信部130、波形歪補償部131、受信データ復調部132、受信端クライアントインターフェース133を有する。波形歪補償部131は線形波形歪補償部1310、非線形波形歪補償部1311を有する。
【0059】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る波形歪等化方式を採用する非線形波形歪補償部1311の構成を示すブロック図である。図3に示すように、非線形波形歪補償部1311は入力層140、中間層141、出力層142を有する。入力層140は積和演算部15-0を有し、中間層141は積和演算部15-1、代表値置換部151-1、乗算値LUT152-1を有し、出力層142は積和演算部15-2、代表値置換部151-2、乗算値LUT152-2を有する。
【0060】
光送信器11は、送信端クライアントインターフェース110より入力される要求トラヒックに基づいて、送信データ生成部111において多値変調方式や偏波多重分離方式を適用するためのシンボルマッピングを実施した上で光波形生成部112に入力する送信データを生成し、光波形生成部112において前述の送信データに基づいて光波形を生成し、接続する光ファイバ通信路12に光波形を送信する。光受信器13は、光波形受信部130において接続する光ファイバ通信路12を伝搬した光波形をコヒーレント検波した上でアナログデジタル変換により得られた受信データに対して、波形歪補償部131が具備する線形波形歪補償部1310において当該受信データが含む線形の波形歪を補償し、非線形波形歪補償部1311において当該受信データが含む非線形の波形歪みを補償し、受信データ復調部132において多値変調方式および偏波多重分離方式の適用したことに伴うシンボルデマッピングを実施した上で、受信端クライアントインターフェース133から要求トラヒックを出力する。
【0061】
光送信器11が具備する学習データDB14は、非線形波形歪補償部1311に対して教師付き学習に用いる学習データを保存し、教師付き学習を実施する折に、送信データ生成部111に保存する学習データを入力する。以降では、一例として教師付き学習の場合について動作を説明するが、教師なし学習の場合には学習データDB14を備える必要はない。
【0062】
次に、本発明の第1の実施形態に係る波形歪等化方式を採用する非線形波形歪補償部において、学習を実施後に、前述した受信データが含む非線形波形歪を補償する動作について説明する。非線形波形歪補償部1311は、再帰型ニューラルネットワークであり、一例としての中間層が1層である場合について述べる。非線形波形歪補償部1311が具備する入力層140には波形歪補償部131に入力される受信データが入力され、出力層142から受信データが内包する非線形波形歪が補償された受信データが出力される。
【0063】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る光通信システムが有する非線形波形歪補償部における処理を示すブロック図である。図4に示すように、入力層140において、受信データsに対して、重み行列Wの積和演算、バイアス値bの加算、および活性化関数演算fを積和演算部15-0にて順次実施し、f(ΣWs+b)の値を出力する。次に、中間層141の入力値は、前述した入力層140の出力値(今後xと呼ぶ)と、併せて中間層自身の出力値rである。中間層141において、入力層140の出力値に対して重み行列Winとの積和演算を積和演算部15-1にて実施し、中間層141の出力値に対応する代表値に代表値置換部151-1において置換した上で当該代表値に対応する乗算値を乗算値LUT152-1より読み出した値を積和演算部15-1において各々足し上げて、バイアス値bを加算した後で活性化関数演算fを積和演算部15-1において実施する。すなわち、図4に示す通り、時刻tの入力層140の出力値x(今後xと呼ぶ)に対して、f(ΣWin+ΣWt-1+b)を時刻tにおける中間層の出力値rとして出力層142へと出力する。ここで、Wt-1は積和演算により算出する値ではなく、前述の通りrt-1に対応する代表値に基づいて乗算値LUTを読み出すことで得る値である。最後に、出力層142の入力値は、前述した中間層141の出力値rであって、出力層142において、中間層141の出力値rに対応する代表値に代表値置換部151-2において置換した上で当該代表値に対応する乗算値を乗算値LUT152-2より読み出した値を積和演算部15-2において各々足し上げて、バイアス値boutと加算する。すなわち、図4に示す通り、時刻tの中間層141の出力値rに対して、ΣWout+boutが時刻tにおける出力層の出力値である。ここで、Woutは積和演算により算出する値ではなく、前述の通りrに対応する代表値に基づいて乗算値LUTを読み出すことで得る値である。
【0064】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る波形歪等化方式を採用する非線形波形歪補償部1311-0の構成を示すブロック図であり、入力層140-0が活性化関数LUT153-0を有し、中間層が活性化関数LUT153-1を有する点が図3に示した非線形波形歪補償部1311との構成上の差分である。
前述した非線形波形歪補償部1311において、入力層140と中間層141での活性化関数演算をそれぞれ積和演算部15-0、15-1にて実施したが、非線形波形歪補償部1311-0では活性化関数LUT153-0、153-1を参照して、各々、入力層140と中間層141の値を得る点が動作上の差分である。
【0065】
なお、波形歪等化方式では再帰型ニューラルネットワークを用いて回帰問題を解くことが一般的であるため、出力層142において活性化関数演算を実施しないが、出力層142が備える積和演算部15-2を用いて活性化関数演算を実施することも可能である。また、出力層142が入力層140-1、中間層141-1と同様に活性化関数LUTを備えれば活性化関数LUTを参照して出力層の出力値を得ることも可能である。
【0066】
また、入力層140への入力としては前述した受信データsに限らず、受信データに対して前処理を実施した前処理済み受信データを採用することも可能である。前処理の一例としては主成分分析、ヴォルテラ核処理、tanh関数処理が選択できる。
【0067】
続いて、本発明の第1の実施形態に係る波形等化方式の学習手段に関して説明する。
【0068】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る波形等化方式を採用する非線形波形歪補償部1311に対する学習プログラム160の構成を示すブロック図である。図6に示すように、学習プログラム実行計算機16上で学習プログラム160が実行され、当該学習プログラム160は学習データDB14-1、波形歪等化プログラム161、差分計算部162、重み・バイアス計算部163、波形等化設定決定部164を有する。前述した波形歪等化プログラム161は、線形波形歪等化プログラム1610、非線形波形歪等化プログラム1611を有する。非線形波形歪等化プログラム1611は入力層170、中間層171、出力層172を有する。入力層170、中間層171、出力層172は積和演算部15-0、15-1、15-2をおのおの有する。
【0069】
図6に示すように、光受信器13と学習プログラム実行計算機16とが接続され、光波形受信部130で取得した受信データを波形歪等化プログラム161に入力し、学習プログラムの実行後に波形等化設定決定部164より非線形波形歪補償部に決定した設定値として、重み行列W、Win、W、Wout、バイアス値b、b、bout、中間層141の出力値rの代表値、および重み行列W、Woutと当該代表値との積についてLUTに格納する値を通知する。また、非線形波形歪等化プログラムで用いた活性化関数を波形等化設定決定部164より非線形波形歪補償部に通知することも可能であり、活性化関数LUTを具備する非線形波形歪補償部に対しては当該活性化関数LUTに格納する値を通知することが可能である。
【0070】
なお、複数の光受信器13を有する光通信システムにおいて、学習プログラム実行計算機は学習を要する光受信器に接続して汎用的に学習を実行することが可能である。なお、学習プログラム実行計算機として、汎用的なコンピュータ、マイコン、FPGAなどを用いることができる。
【0071】
次に、本発明の第1の実施形態に係る非線形波形歪補償部に対する学習プログラムの動作を説明する。図7は本発明の第1の実施形態に係る非線形波形歪補償部に対する学習プログラムの動作を説明するためのシーケンス図である。図8は本発明の第1の実施形態に係る非線形波形歪等化プログラムにおける処理を示すブロック図である。
【0072】
図7に示すように、学習プログラム実行計算機16が動作する状態において、学習プログラム160を起動する(ステップS01)。次に、光送信器11において学習データDB14より読み出した送信データに基づいて光波形生成部112を用いて生成した光波形を送信する(ステップS02)。光ファイバ通信路12を伝送した光波形を光受信器13が備える光波形受信部130において取得し、取得した受信データを学習プログラム実行計算機16に入力する(ステップS03)。学習プログラム160中で動作する波形歪等化プログラム161に前述した受信データを入力し、線形波形歪等化プログラム1610および非線形波形歪等化プログラム1611において波形歪を等化した後の受信データを差分計算部162に入力する(ステップS04)。非線形波形歪等化プログラム1611においては、図8に示すように、入力層170において、受信データsに対して、重み行列Wの積和演算、バイアス値bの加算、および活性化関数演算fを積和演算部15-0にて順次実施し、f(ΣWs+b)の値を出力する。次に、中間層171の入力値は、前述した入力層170の出力値xと、併せて中間層自身の出力値rである。中間層171において、入力層170の出力値xに対して重み行列Winとの積和演算を、中間層の出力値rに対して重み行列Wとの積和演算を積和演算部15-1にて実施し、バイアス値bを加算した後でさらに活性化関数演算fを積和演算部15-1において実施する。すなわち、時刻tの入力層170の出力値xに対して、f(ΣWin+ΣWt-1+b)を時刻tにおける中間層の出力値rとして出力層172へと出力する。最後に、出力層172の入力値は、前述した中間層171の出力値rであって、出力層172において、中間層171の出力値rに対して重み行列Woutとの積和演算を積和演算部15-2にて実施し、バイアス値boutと加算する。重み行列W、Win、W、Wout初期値としては単位行列、ランダム行列、または光ファイバ通信路12の特徴量に基づいて決定した行列を選択することができ、バイアス値b、b、boutの初期値としてはゼロ、固定値、ランダムな値を選択することができる。次に、差分計算部162において、学習データDB14-1より読み出した学習データと前述した歪等化後の受信データとの時間相関を計算した上で、時間相関の絶対値が最大となるタイミングにおいて、当該学習データと当該歪等化後の受信データとの差分を計算する(ステップS05)。差分としては平均2乗誤差、および交差エントロピーを用いることが可能である。前述した差分値が事前に指定した閾値を下回ったかどうかを判定し(ステップS06)、判定結果が真の場合には、非線形波形歪等化プログラム1611が保持する重み行列およびバイアス値に基づいた波形歪等化を受信データに適用し、中間層171および出力層172の入力値各々について頻度分布を計算したうえで、高頻度で取り得る値を代表値として決定する。当該代表値に関して重み行列との乗算値を算出し、乗算値LUT152-1、152-2の値として決定する(ステップS07)。また、判定結果が偽の場合には、重み・バイアス計算部163において、前述した差分に基づいて非線形波形歪等化プログラム1611が保持する重み行列およびバイアス値を更新し、更新した重み行列およびバイアス値を非線形波形歪等化プログラム1611に反映する(ステップS08)。なお、更新アルゴリズムとして確率的勾配降下法やAdam法、RMSProp法などを用いることが可能である。最後に、ステップS07で決定した重み行列、バイアス値、代表値、乗算値に基づいて、受信データに対して波形歪等化プログラム161を適用したときの通信品質を算出し、改善が得られることを確認した上で、前述した重み行列、バイアス値、代表値、乗算値LUTの値を非線形波形歪補償部1311に反映する(ステップS09)。なお、通信品質としては、シンボル誤り率、ビット誤り率、Q値、Error Vector Magnitude、相互情報量、一般化相互情報量、正規化相互情報量を選択可能である。なお、ステップS06の試行回数の上限値を予め設定しておいて、上限値に到達しても判定結果が偽である場合に、前述した重み行列の初期値およびバイアス値の初期値を再選択した上で、ステップS04から再試行してもよい。
【0073】
図9は本発明の第1の実施形態に係る非線形波形歪等化プログラムにおける中間層の出力値rの頻度分布の一例を示す図である。図9に示す一例では、中間層の出力値rの頻度分布が0から0.5に分布しており、特に値がゼロ近傍に局在していることがわかる。そのため、頻度分布を確認することで中間層の出力値として高頻度で取り得る値がわかる。この高頻度で取り得る値をステップS07において代表値として選択することを述べた。代表値の決定方法としては、中間層の出力値の値域に関して、頻度計数区間を等間隔に非線形波形歪補償部1311のビット精度分取った上で、事前に決定した頻度の閾値以上となる区間の中央値あるいは平均値を代表値として決定する方法が考えられる。または、頻度が一定値になるように割り当てた頻度計数区間の中央値あるいは平均値を代表値として決定してもよい。
【0074】
以上の動作により、本発明の第1の実施形態に係る波形歪等化方式において、波形歪等化方式の学習を完了する。前出した学習は、学習手段を適用する端局装置の初期導入時のみでなく、光通信システムの運用中に他の端局装置を導入する折、端局装置間の光接続を変更する際、および通信品質の低減が検出されたことを契機として、非線形波形歪補償部の再調整が必要となった状況に置いて実施することが可能である。
【0075】
上述した、本発明の第1の実施形態に係る波形歪等化方式では、中間層の出力値を当該中間層に再入力することで再帰的に中間層を利用し、さらに中間層および出力層の出力値を代表値に近似した上で、前述の層における積和演算部の乗算部の解をLUTに事前に格納することで実装可能な回路規模で非線形波形歪等化を実現できるため、大容量光通信システムの長距離化を達成できる。
【0076】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、本実施形態においては、第2の実施形態による波形歪等化方式を採用する端局装置を備える光通信システム20について説明する。図11は、本発明の第2の実施形態に係る光通信システム20の構成を示すブロック図である。図2に示すように、光通信システム20は、光送信器21、光ファイバ通信路12、光受信器23、学習プログラム実行計算機16を有する。ここでは、光通信システム20が光送信器21と光受信器23とが光ファイバ通信路12に接続する場合を例に説明するが、光送信器および光受信器の台数はこれに限らない。
【0077】
前述した光送信器21は、送信端クライアントインターフェース110、送信データ生成部111、光波形生成部112、波形歪予等化部213、学習データDB14を有する。前述した光受信器23は、光波形受信部130、波形歪補償部231、受信データ復調部132、受信端クライアントインターフェース133を有する。波形歪補償部231は線形波形歪補償部2310を有する。
【0078】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る波形歪等化方式を採用する非線形波形歪予等化部2131の構成を示すブロック図である。図12に示すように、非線形波形歪予等化部2131は入力層240、中間層241、出力層242を有する。入力層240は積和演算部25-0、乗算値LUT252-0を有し、中間層241は積和演算部25-1、代表値置換部251-1、乗算値LUT252-1を有し、出力層242は積和演算部25-2、代表値置換部251-2、乗算値LUT252-2を有する。
【0079】
光送信器21は、送信端クライアントインターフェース110より入力される要求トラヒックに基づいて、送信データ生成部111において多値変調方式や偏波多重分離方式を適用するためのシンボルマッピングを実施した上で光波形生成部112に入力する送信データを生成する。波形歪予等化部213は、前述した送信データに対して、光波形生成部112、光ファイバ通信路12、および、光波形受信部130において生じる波形歪みを予等化する。具体的には、波形歪予等化部213が具備する線形波形歪予等化部2130において、当該送信データに対して線形の波形歪を予等化し、非線形波形歪予等化部2131において当該送信データに対して非線形の波形歪みを予等化する。予等化後の送信データに基づいて、光波形生成部112において光波形を生成し、接続する光ファイバ通信路12に光波形を送信する。光受信器23は、光波形受信部130において受信光波形をコヒーレント検波した上でアナログデジタル変換により得られた受信データに対して、波形歪補償部231が具備する線形波形歪補償部2310において当該受信データが含む線形の波形歪を補償し、受信データ復調部132において多値変調方式および偏波多重分離方式の適用したことに伴うシンボルデマッピングを実施した上で、受信端クライアントインターフェース133から要求トラヒックを出力する。
【0080】
光送信器21が具備する学習データDB14は、非線形波形歪予等化部2131に対して教師付き学習に用いる学習データを保存し、教師付き学習を実施する折に、送信データ生成部111に保存する学習データを入力する。
【0081】
次に、本発明の第2の実施形態に係る波形歪等化方式を採用する非線形波形歪予等化部において、学習を実施後に、送信データに対して非線形波形歪を予等化する動作について説明する。非線形波形歪予等化部2131は、再帰型ニューラルネットワークで構成され、一例としての中間層が1層である場合について述べる。非線形波形歪予等化部2131が具備する入力層240には前述した送信データが入力され、出力層242から非線形波形歪が予等化された送信データが出力される。
【0082】
本発明の第2の実施形態に係る非線形波形歪予等化部における処理は、図4に示した本発明の第1の実施の形態に係る非線形波形歪補償部における処理と同様であるが、入力層240が乗算値LUT252-0を備え、受信データに対する重み行列との積和演算値をLUTより読み出す点が異なる。入力層240へ入力される送信データが離散値を取る性質とI/Q軸に関する対称性を活用することで、積和演算部25-0において積の値の候補が限定され得るため、当該乗算値を乗算値LUT252-0に格納することで、積和演算部の回路規模を削減しつつ、入力層240の役割を持たせることが可能である。すなわち、入力層240において、受信データsに対して、重み行列Wと積を乗算値LUT252-0を参照した上で足し合わせ、さらにバイアス値bの加算、および活性化関数演算fを積和演算部25-0にて順次実施し、f(ΣWs+b)の値を中間層241へ出力する。なお、送信データが離散値を取る性質とI/Q軸に対する対称性を最大限活用するために、非線形波形歪予等化を実施した上で、線形波形歪予等化を実施するのが望ましい。線形波形歪予等化を先に実施する場合には、送信データの性質が変わることが考え得るため、入力層240、240-0が代表値置換部を有し、図10Aおよび図10Bに示したように、高頻度に取り得る代表値に関して乗算値LUT252-0を構成すればよい。
【0083】
図13は、本発明の第1の実施形態に係る波形歪等化方式を採用する非線形波形歪予等化部2131-0の構成を示すブロック図であり、入力層240-0が乗算値LUT252-0、活性化関数LUT153-0、および、加算部254-0から構成され、中間層が活性化関数LUT153-1を有する点が図12に示した非線形波形歪予等化部2131との構成上の差分である。
【0084】
前述した非線形波形歪予等化部2131において、入力層240と中間層241での活性化関数演算をそれぞれ積和演算部25-0、25-1にて実施したが、非線形波形歪予等化部2131-0では活性化関数LUT253-0、253-1を参照して、各々、入力層240-0と中間層241-0の値を得る点が動作上の差分である。さらに、入力層240-0において、受信データsと重み行列Wと積を乗算値LUT252-0を参照することで得るため、加算部254-0のみで十分である。
【0085】
続いて、本発明の第2の実施形態に係る波形等化方式の学習手段に関して説明する。図11に示すように、学習プログラム実行計算機16と光受信器23とが接続され、光波形受信部130で取得した受信データに基づいて学習を実行する。また、学習プログラム実行計算機16での計算結果を反映するために、学習プログラム実行計算機16より光送信器21が備える非線形波形歪予等化部2131に、重み行列W、Win、W、Wout、バイアス値b、b、bout、重み行列Wと送信データとの積についてLUTに格納する値、中間層241の出力値rの代表値、および、重み行列W、Woutと当該代表値との積についてLUTに格納する値を通知する。また、非線形波形歪等化プログラムで用いた活性化関数を非線形波形歪予等化部に通知することも可能であり、活性化関数LUTを具備する非線形波形歪予等化部に対しては当該活性化関数LUTに格納する値を通知することが可能である。
【0086】
図14は、本発明の第2の実施形態に係る非線形波形歪予等化部に対する学習プログラムの動作を説明するためのシーケンス図である。図14に示すように、学習プログラム実行計算機16が動作する状態において、学習プログラム160を起動する(ステップS11)。次に、光送信器21において学習データDB14より読み出した送信データに基づいて光波形生成部112を用いて生成した光波形を送信する(ステップS12)。ステップS12において、非線形波形歪予等化部2131における予等化を実施せずに送信データを光波形生成部112に送信する。光ファイバ通信路12を伝送した光波形を光受信器23が備える光波形受信部130において取得し、取得した受信データを学習プログラム実行計算機16に入力する(ステップS13)。学習プログラム160中で動作する波形歪等化プログラム161に前述した受信データを入力し、線形波形歪等化プログラム1610および非線形波形歪等化プログラム1611において波形歪を等化した後の受信データを差分計算部162に入力する(ステップS14)。差分計算部162において、学習データDB14-1より読み出した学習データと前述した歪等化後の受信データとの時間相関を計算した上で、時間相関の絶対値が最大となるタイミングにおいて、当該学習データと当該歪等化後の受信データとの差分を計算する(ステップS15)。前述した差分値が事前に指定した閾値を下回ったかどうかを判定し(ステップS16)、判定結果が真の場合には、非線形波形歪等化プログラム1611が保持する重み行列およびバイアス値に基づいた波形歪等化を受信データに適用し、中間層171および出力層172の入力値各々について頻度分布を計算したうえで、高頻度で取り得る値を代表値として決定する。当該代表値に関して重み行列との乗算値を算出し、乗算値LUT252-1、252-2の値として決定し、さらに、学習データが取り得る値に対して重み行列Wとの乗算値を算出し、乗算値LUT252-0の値として決定する(ステップS17)。線形波形歪予等化を先に実施する場合には、線形波形歪等化プログラム1610において、前述した学習データに対して線形波形歪等化を実施し、当該線形波形歪等化済みの学習データについて頻度分布を計算したうえで、高頻度で取り得る値を代表値として決定する。
一方、判定結果が偽の場合には、重み・バイアス計算部163において、前述した差分に基づいて非線形波形歪等化プログラム1611が保持する重み行列およびバイアス値を更新し、更新した重み行列およびバイアス値を非線形波形歪等化プログラム1611に反映する(ステップS18)。最後に、ステップS17で決定した重み行列、バイアス値、代表値、乗算値に基づいて、受信データに対して波形歪等化プログラム161を適用したときの通信品質を算出し、改善が得られることを確認した上で、前述した重み行列、バイアス値、代表値、乗算値LUTの値を非線形波形歪予等化部2131に通知する(ステップS09)。
【0087】
一般に、光波形受信部130で取得する受信データの方が、学習プログラム実行計算機16から非線形波形歪予等化部2131に通知する値よりも容量が大きいため、学習プログラム実行計算機は光受信器23が導入される局舎に設置されるのが望ましい。その場合に、学習プログラム実行計算機16から非線形波形歪予等化部2131への通知は光通信システムの監視制御用通信路を用いて実施することや、端局装置間の内部通知機能を用いることが考えられる。
【0088】
以上の動作により、本発明の第2の実施形態に係る波形歪等化方式において、波形歪等化方式の学習を完了する。
【0089】
上述した、本発明の第2の実施形態に係る波形歪等化方式では、中間層の出力値を当該中間層に再入力することで再帰的に中間層を利用し、さらに中間層および出力層の出力値を代表値に近似した上で、前述の層における積和演算部の乗算部の解をLUTに事前に格納し、また、送信データが離散値を取る性質とI/Q軸に関する対称性を活用することで、入力層においても乗算値LUTの適用が可能になるため、実装可能な回路規模で非線形波形歪等化を実現でき、大容量光通信システムの長距離化を達成できる。
【0090】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0091】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
本開示にかかる波形歪等化方法、端局装置、および光通信システムによれば、光通信システムの長距離化により非線形波形歪等化に必要となる中間層の層数が増大し回路規模が増大する問題に対して、中間層の出力値を当該中間層に再入力することで再帰的に積和演算部を利用し、さらに中間層および出力層の出力値の頻度分布を参照し、当該頻度分布によれば前述した出力値が高頻度に特定の値(代表値と呼ぶ)を取る性質を活用することで、中間層および出力層の出力値を代表値に近似した上で、前述の層における積和演算部の乗算部の解をルックアップテーブルに事前に格納しておくことで、実装可能な回路規模で非線形波形歪等化を実現できるため、大容量光通信システムの長距離化を達成できる。
【0092】
本発明の開示についてさらに説明する。
以下の開示は、提供される主題の異なる特徴を実施するための多くの異なる実施形態または例を提供する。以下、本開示を簡略化するために、構成要素、値、動作、材料、配置などの具体的な例を説明する。もちろん、これらは単なる例であり、限定することを意図するものではない。他の構成要素、値、動作、材料、配置なども考えられる。例えば、以下の説明における第2の特徴の上側または上の第1の特徴の形成は、第1および第2の特徴が直接接触して形成される実施形態を含むことができ、第1および第2の特徴が直接接触しないように、追加の特徴が第1および第2の特徴の間に形成され得る実施形態も含むことができる。加えて、本開示は、様々な例において参照番号および/または文字を繰り返すことができる。この繰り返しは、単純化および明確化のためのものであり、それ自体は、説明した様々な実施形態および/または構成の間の関係を規定するものではない。
【0093】
さらに、「真下」、「下」、「下側」、「上」、「上側」などの空間的に相対的な用語は、図に示されるように、1つの要素または特徴と別の要素または特徴との関係を記載するための説明を容易にするために本明細書では使用され得る。空間的に相対的な用語は、図に示す向きに加えて、使用中または動作中のデバイスの異なる向きを包含することを意図している。装置は、他の方向に向けられてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子は、それに応じて同様に解釈されてもよい。
【0094】
上述したように、光通信は、高速で信頼性の高いデータ転送に対する信頼のために増加している。光通信は、場合によっては、光ファイバなどの光通信路に沿って進む光信号を使用して行われる。光信号が光通信路に沿って伝播するにつれて、信号は劣化する。場合によっては、信号劣化は、例えば、光ファイバのコア/クラッド界面での不完全な反射による強度の損失、例えば、光ファイバとの不整合による分散、または例えば、光ファイバの曲げによる光通信路の物理的条件に影響を与える他の要因に起因する。この信号劣化は、光通信路の長さが長くなるほど大きくなる。この劣化の一部は本質的に線形であり、光信号を復号するときに考慮することが比較的容易である。しかし、この劣化の一部は本質的に非線形であり、光信号を復号するときに考慮することがより困難な場合がある。その結果、光信号の非線形歪みが増加するにつれて、データの損失または光信号の不正確な復号のリスクが増大する。
【0095】
他の手法は、非線形歪みをどのように補償するかを決定するために、経験豊富な技術者に依存して光通信システムを解析するものである。このプロセスは、高価で時間がかかる。本明細書は、非線形歪みの補償の高速化および低コスト化を図るために、自動学習を使用する光通信システムを含む。本明細書は、光通信システムの端局装置内に収まるように十分に小さく、非線形波形歪みの精度が良くかつ正確な補償を提供するように十分に堅牢な非線形波形歪み補償部を含む。
【0096】
本明細書の光通信システムおよび端局装置はまた、経時的な光通信路の性能の変化を補償するためにも使用可能である。多くの状況において、長距離光通信路の一部は容易にアクセスできない。例えば、大洋もしくは海の中にある光通信路、山を通過する光通信路、または遠隔地にある光通信路は、アクセスが困難であり、かつ光通信路の一部を交換もしくは修理することが困難である。光通信路の耐用年数の間、光通信路の物理的特性は、例えば地震、津波、または他の自然災害によって変化する傾向がある。物理的特性のこれらの変化を補償するために、端局装置は、光信号に対する新しい非線形歪みを補償するように再調整される。熟練技術者に依存する手法では、新しい補償モデルを開発する時間は、新しい補償モデルが開発および展開されるまで、通信が不正確になる、低減される、または完全に中断されるリスクを増加させる。何らかの自然災害によって物理的特性が変化している状況では、熟練技術者を適切な場所に派遣して光通信路の解析を開始するまでの期間が長くなる可能性がある。これらの問題を解決するのを助けるために、本明細書は、光通信システムの端局装置に直接展開することが可能な自動学習を利用して、独立した方式で光信号の非線形歪みに対する新しい補償モデルを生成することを可能にすることができる。その結果、光通信路に沿った通信に対する影響の大きさと時間の両方が低減され、光通信路の物理的特性の変化に追従して光通信の維持または急速な回復を可能にする。
【0097】
加えて、光通信路の構成要素の通常の摩耗により、光通信路の物理的特性の変化も生じる。本明細書のこの自動学習機能は、非線形歪みの補償モデルに対する定期的な更新を容易にし、光通信システム内の緩やかな劣化を考慮するのに役立つ。
【0098】
図2は、いくつかの実施形態による光通信システム10のブロック図である。図2に示すように、光通信システム10は、光送信器11と、光ファイバ通信路12と、光受信器13と、学習プログラム実行計算機(以下、学習プログラム実行コンピュータと称する)16とを含む。光通信システム10は、単一の光ファイバ通信路12によって単一の光受信器13に接続された単一の光送信器11を含む。当業者であれば、図2の構成要素の数は単なる例であり、光通信システム10に導入されるマルチプレクサおよび/またはデマルチプレクサを使用することによって、光送信器11、光ファイバ通信路12、または光受信器13のいずれかのうちの2つ以上が可能であることを理解するであろう。同様に、図2は単一の学習プログラム実行コンピュータを含むが、いくつかの実施形態では、当業者であれば、クラウドベースのコンピューティングを含む複数のコンピュータを使用して自動学習の実行が可能であることを理解するであろう。光送信器11および光受信器13の各々は、構成要素が光ファイバ通信路12の終端に存在するために端局装置と呼ばれる。
【0099】
光送信器11は、送信端(送信側)クライアントインターフェース110と、送信データ生成部111と、光波形生成部112と、学習データデータベース(DB)14とを有する。光受信器13は、光波形受信部130と、波形歪補償部(waveform distortion compensating unit:WDCU)131と、受信データ復調部132と、受信端(受信側)クライアントインターフェース133とを含む。波形歪補償部131は、線形波形歪補償部1310と、非線形波形歪補償部1311とを含む。
【0100】
光送信器11は、送信データの電子版を作成するために、送信端クライアントインターフェース110からの要求入力データに基づいて、送信データ生成部111において多値変調方法または偏波多重分離方法を適用するためのシンボルマッピングを行う。いくつかの実施形態では、送信端クライアントインターフェース110は、イーサネットなどのネットワークインターフェースカード、タッチスクリーン、キーボード、マウス、オーディオ受信器などの入出力(I/O)部を含む。いくつかの実施形態では、送信データ生成部111は、一次元(1D)分布整合器(distribution matcher:DM)を含む。いくつかの実施形態では、送信データ生成部111は、二次元(2D)DMを含む。いくつかの実施形態では、送信データ生成部111は、ビットラベラを含む。いくつかの実施形態では、送信データ生成部111は、低密度パリティチェック(low-density parity check:LDPC)を含む。いくつかの実施形態では、送信データ生成部111は、16QAMシンボル、32QAMシンボル、または64QAMシンボルなどのシェーピングされたQAMシンボルを生成するように構成される。送信データは、光波形生成部112に入力される。光波形生成部112は、受信した送信データに基づいて光波形を生成する。いくつかの実施形態では、光波形生成部112は、光源からの光信号を変調することが可能な任意の波形発生器(arbitrary waveform generator:AWG)を含む。いくつかの実施形態では、光源は、1つまたは複数の波長の光を放出することが可能なレーザを含む。
【0101】
光波形は、光ファイバ通信路12に送信される。いくつかの実施形態では、光ファイバ通信路12は、光学的に透明な材料のコアと、コアよりも高い屈折率を有するクラッドとを含む。いくつかの実施形態では、光ファイバ通信路12は、円形断面、長方形断面、または別の適切な断面形状を有する。
【0102】
光受信器13は、光ファイバ通信路12からの光波形を受信するように構成された光波形受信部130を含む。光波形受信部130は、光波形のコヒーレント検波を行った後、例えば、アナログ-デジタル変換器(ADC)を使用してアナログ-デジタル変換を行い、受信データ信号を生成する。波形歪補償部131は、受信データ信号を受信し、受信データに対して補償動作を行う。線形波形歪補償部1310は、受信データに含まれる線形波形歪みを補償し、非線形波形歪補償部1311は、受信データに含まれる非線形波形歪みを補償する。受信データ復調部132は、補償された信号に対して多値復調を行い、復調信号を生成する。シンボル復調または偏波多重分離方法を行った後、復調信号は、受信端クライアントインターフェース133を使用してエンドユーザに出力される。いくつかの実施形態では、受信端クライアントインターフェース133は、イーサネットなどのネットワークインターフェースカード、タッチスクリーン、ディスプレイ、オーディオデバイスなどの入出力(I/O)部を含む。
【0103】
光送信器11における学習データDB14は、非線形波形歪補償部1311における教師あり学習に使用可能な学習データを記憶し、教師あり学習を行う際には送信データ生成部111に学習データを保存する。以下、教師あり学習の例を使用して学習動作を説明する。当業者であれば、教師なし学習も可能であり、いくつかの実施形態では、教師なし学習が使用される場合、学習データDB14は省略されることを理解するであろう。
【0104】
波形歪補償部131は、いくつかの実施形態によれば、学習が完了した後に非線形波形歪みを補償する波形歪み等化方法を採用する。非線形波形歪補償部1311は、再帰的ニューラルネットワークであり、以下では、一例として中間層が1つの層である例について説明する。しかし、当業者であれば、非線形波形歪補償部1311内の複数の再帰的層も本明細書の範囲内であることを認識するであろう。
【0105】
学習プログラム実行コンピュータ16は、光波形受信部130から受信データを受信し、学習データを非線形波形歪補償部1311に提供するように構成される。学習プログラム実行コンピュータ16の動作に関するさらなる詳細は、いくつかの実施形態に従って、図6に関して以下に説明される。
【0106】
図3は、いくつかの実施形態による図2の光通信システムに含まれ得る非線形波形歪み補償部のブロック図である。いくつかの実施形態では、図3の非線形波形歪み補償部は、光通信システム10の非線形波形歪補償部1311に対応する。いくつかの実施形態では、図3の非線形波形歪み補償部は、光通信システム10とは異なる光システムに含まれる。明確にするために、説明では、図3の非線形波形歪補償部に参照番号1311を使用する。
【0107】
非線形波形歪補償部1311は、非線形波形歪補償部1311を含む回路全体のサイズを削減するために、再帰的中間層を有するニューラルネットワークの機能を含む。図3に示すように、非線形波形歪補償部1311は、入力層140と、中間層141と、出力層142とを有する。入力層140は、積和(product-sum:PS)演算部15-0を有する。波形歪補償部131に入力された受信データは、非線形波形歪補償部1311に含まれる入力層140に入力される。中間層141は、積和演算部15-1と、代表(Rep.)値置換部151-1と、乗算値LUT152-1とを有する。出力層142は、積和演算部15-2と、代表値置換部151-2と、乗算値LUT152-2とを有する。受信データに含まれる非線形波形歪みが補償された受信データが、出力層142から出力される。
【0108】
図4は、いくつかの実施形態による図2の光通信システムに含まれ得る非線形波形歪み補償部のブロック図である。いくつかの実施形態では、図4の非線形波形歪み補償部は、光通信システム10の非線形波形歪補償部1311に対応する。いくつかの実施形態では、図4の非線形波形歪み補償部は、光通信システム10とは異なる光システムに含まれる。明確にするために、説明では、図4の非線形波形歪補償部に参照番号1311を使用する。
【0109】
図4に示すように、入力層140では、重み行列Wの積和演算、バイアス値bの加算、および活性化関数演算fが積和演算部15-0によって受信データsに対して行われる。入力層140は、f(ΣW0s+b)の値を出力する。次に、中間層141の入力値は、上述した入力層140の出力値である。簡単にするために、中間層141の入力値は、xとラベル付けされる。中間層の出力値はrとラベル付けされ、代表値と呼ばれる。中間層141では、重み行列Winによる積和計算が、積和演算部15-1によって中間層141の入力値xに対して行われる。代表値置換部151-1を使用して代表値rt-1を置換し、その代表値に対応する乗算値LUT152-1から乗算値Wを乗算した後、積和演算部15-1では、バイアス値bが加算される。活性化関数演算fは、積和演算部15-1において計算される。すなわち、反復、またはエポックごとの中間層141の出力値は、式(1)を使用して決定される。
=f(ΣWin+ΣWt-1+b) 式(1)
【0110】
ここで、rは、時間tにおける中間層141の出力であり、xは、時間tにおける中間層141の入力値である。Wの値は、積和演算によって計算された値ではなく、rt-1に対応する代表値に基づいて乗算値LUT152-1を読み出すことによって得られた値である。
【0111】
出力層142の入力値は、中間層141の最後の反復またはエポックにおける中間層141の出力値rである。出力層142では、中間層141の出力値に対応する代表値rが、代表値置換部151-2において代表値に置き換えられる。置換後、代表値に対応する乗算値Woutが代表値rに乗算され、続いて積和演算部15-2によってバイアス値boutに加算される。乗算値Woutは、乗算値LUT152-2から読み出された値である。すなわち、出力層142の出力値yは、式(2)を使用して決定される。
=ΣWout+bout
【0112】
上述したように、Woutは、積和演算によって計算された値ではなく、rに対応する代表値に基づいて乗算値LUT152-2を読み出すことによって得られた値である。
【0113】
図5は、いくつかの実施形態による図2の光通信システムに含まれ得る非線形波形歪補償部1311-0のブロック図である。非線形波形歪補償部1311-0は、非線形波形歪補償部1311と同様である。非線形波形歪補償部1311と比較して、非線形波形歪補償部1311-0は、入力層140-0が活性化関数LUT153-0を含む波形歪み等化方法を採用しており、中間層は、活性化関数LUT153-1を有する。
【0114】
非線形波形歪補償部1311において、入力層140および中間層141における活性化関数演算は、それぞれ積和演算部15-0および15-1によって行われた。しかし、非線形波形歪補償部1311-0では、それぞれ活性化関数LUT153-0および153-1を使用して、入力層140および中間層141についての活性化関数の値が決定される。
【0115】
波形歪み等化方法における回帰問題を解くために、再帰的ニューラルネットワークが使用可能である。その結果、活性化関数計算は出力層142では行われない。積和演算部15-2は、依然として出力層142に含まれる。いくつかの実施形態では、活性化関数演算は、積和演算部15-2を使用して行われる。さらに、いくつかの実施形態では、出力層142が入力層140-1および中間層141-1のように活性化関数LUTを含む場合、活性化関数LUTを参照することによって出力層の出力値を得ることも可能である。
【0116】
さらに、入力層140への入力は、上述した受信データに限定されない。いくつかの実施形態では、受信データに対して前処理を行うことによって得られた前処理された受信データが使用される。主成分解析、Volterra核処理、およびtanh関数処理は、上述の入力層140による演算の前に受信データに対して行われる前処理演算の例である。
【0117】
図6は、いくつかの実施形態による光通信システム10の一部のブロック図である。学習プログラム実行コンピュータ16は、いくつかの実施形態による波形等化方法を採用する非線形波形歪補償部1311のための学習プログラム(以下、学習部と称する)160を含む。この説明の目的のために、学習プログラムという用語は、学習プログラム実行コンピュータ16に学習部160に関連する機能を実施させるための非一時的コンピュータ可読媒体に記憶された命令のセットを指す。
【0118】
学習部160の機能は、学習プログラム実行コンピュータ16上で実行され、学習部160は、学習データDB14-1と、波形歪等化プログラム(以下、波形歪等化部161と称する)と、差分計算部162と、重み・バイアス計算部163とを含む。学習部160はまた、波形等化設定決定部164を含む。波形歪等化部161は、線形波形歪等化プログラム(以下、線形波形歪等化部と称する)1610と、非線形波形歪等化プログラム(以下、非線形波形歪等化部1611と称する)とを含む。非線形波形歪等化部1611は、入力層170と、中間層171と、出力層172とを有する。入力層170、中間層171、および出力層172は各々、それぞれ積和演算部15-0、15-1、および15-2を有する。
【0119】
光受信器13と学習プログラム実行コンピュータ16は接続されており、光波形受信部130によって取得された受信データは、波形歪等化部161に入力される。重み行列W、Win、W、Wout、バイアス値b、b、およびbout、ならびに中間層141の出力値rは、非線形波形歪補償部1311に対して波形等化設定決定部164によって決定された設定値である。Woutと代表値との積に関するLUTに記憶される重み行列WR値は、非線形波形歪補償部1311に提供される。さらに、波形歪等化部161で使用される活性化関数もまた、波形等化設定決定部164から非線形波形歪補償部1311に送信することができる。いくつかの実施形態では、活性化関数LUTに記憶される値を送信することは、非線形波形歪補償部1311にも転送することができる。
【0120】
光通信システムが複数の光受信器13を有するいくつかの実施形態では、学習プログラム実行コンピュータ16は、学習を利用して一般的な目的のための学習を実行する光受信器に接続される。いくつかの実施形態では、学習プログラム実行コンピュータ16の機能は、汎用コンピュータ、マイクロコンピュータ、FPGAなどを使用して行われる。いくつかの実施形態では、学習プログラム実行コンピュータ16の機能は、後述するシステム1500(図15)を使用して実施される。
【0121】
図7は、いくつかの実施形態による非線形波形歪みを補償するための学習方法700のフローチャートである。いくつかの実施形態では、方法700は、学習部160によって実行される。いくつかの実施形態では、方法700は、光通信システムで使用可能な別の構成要素によって実行される。
【0122】
動作S01において、学習部、例えば、学習部160は、学習プログラム実行コンピュータ、例えば、学習プログラム実行コンピュータ16が動作している状態で起動される。いくつかの実施形態では、学習部は、検出されたトリガイベントに応答して起動される。いくつかの実施形態では、トリガイベントは、所定の期間の経過、検出された自然災害、光通信路から受信された波形の検出された変化、ユーザからの受信された命令、または別の適切なトリガイベントを含む。
【0123】
動作S02において、光波形は、光波形生成部、例えば、光波形生成部112によって生成される。光波形は、光送信器、例えば、光送信器11において学習データDB、例えば、学習データDB14から読み出された送信データに基づいて生成される。
【0124】
動作S03において、光波形は、光ファイバ通信路、例えば、光ファイバ通信路12を介して送信される。送信された光波形は、光受信器、例えば、光受信器13に含まれる光波形受信部、例えば、光波形受信部130によって受信される。受信データは、学習プログラム実行コンピュータ、例えば、学習プログラム実行コンピュータ16に入力される。
【0125】
動作S04において、受信データは、学習部で動作する波形歪等化部、例えば、波形歪等化部161に入力される。線形波形歪み等化部、例えば、線形波形歪等化部1610、および非線形波形歪み等化部、例えば、非線形波形歪等化部1611において波形歪みを等化した後、等化波形は、計算部、例えば、差分計算部162に転送される。いくつかの実施形態では、方法700で使用される非線形波形歪み等化部は、図8の非線形波形歪等化部1611に対応する。
【0126】
図8は、いくつかの実施形態による非線形波形歪等化部1611のブロック図である。非線形波形歪等化部1611は、入力層170を含む。入力層170は、入力層140に関して上述したのと同様の積和演算および活性化関数演算を行うように構成される。非線形波形歪等化部1611は、中間層171をさらに含む。いくつかの実施形態では、中間層171は、中間層141と同様である。中間層171の入力値は、入力層170の出力値xであり、中間層171の再帰的出力値rは、中間層171にフィードバックされる。中間層171は、上記の式(1)を使用して、入力層170の出力値xに対する積和演算、および中間層171の出力値rに対する積和演算を行うように構成される。非線形波形歪等化部1611は、出力層172をさらに含む。いくつかの実施形態では、出力層172は、出力層142と同様である。出力層172の入力値は、中間層171の出力値rである。出力層172は、上記の式(2)を使用して積和演算を行うように構成される。いくつかの実施形態では、重み行列W、Win、W、またはWoutの各々の初期値は、光ファイバ通信路、例えば、光ファイバ通信路12の特徴に基づいて決定される単位行列、ランダム行列、または行列として独立して設定される。いくつかの実施形態では、バイアス値b、b、またはboutの各々の初期値は、0、固定値、またはランダム値として独立して設定される。いくつかの実施形態では、重み行列および/またはバイアス値の初期値は、ユーザから受信したデータに基づいて設定される。いくつかの実施形態では、重み行列および/またはバイアス値の初期値は、非線形波形歪等化部1611に対して受信データを供給するものと同様の光ファイバ通信路について得られた経験的データに基づいて設定される。
【0127】
方法700に戻って、動作S05において、差分計算部、例えば、差分計算部162は、訓練データDBから読み出された訓練データと歪み等化後の受信データとの間の時間相関差分を計算する。差分計算部は、時間相関差分の絶対値が最大値に達するタイミングを決定する。いくつかの実施形態では、差分計算部は、二乗平均平方根誤差解析または交差エントロピー解析を使用して最大時間相関差分を決定する。
【0128】
動作S06において、最大時間相関差分値が所定の閾値を下回っているかどうかが決定される。最大時間相関差分が所定の閾値を下回っていないという決定に応答して、方法700は、動作S08に進む。最大時間相関差分が所定の閾値を下回っているという決定に応答して、方法700は、動作S07に進む。いくつかの実施形態では、所定の閾値は、ユーザから受信される。いくつかの実施形態では、所定の閾値は、同様の光通信路に関する経験的データに基づく。
【0129】
動作S07において、重み行列の最新の反復およびバイアス値が非線形波形歪み等化部に記憶される。記憶された重み行列およびバイアス値に基づいて、歪み等化が光ファイバ通信路からの受信データに適用される。代表値は、等化された受信データに基づいて決定される。いくつかの実施形態では、代表値は、中間層171の各出力値に対して頻度分布を行うことによって決定される。最も多く発生する出力値は、代表値であると決定される。いくつかの実施形態では、中間層についての重み行列と出力層の重み行列の積が、代表値を決定するために使用される。いくつかの実施形態では、重み行列の積は、LUTについての値、例えば、LUT152-1およびLUT152-2を使用して決定される。
【0130】
動作S08において、重み/バイアス計算部、例えば、重み・バイアス計算部163は、最大時間相関差分に基づいて非線形波形歪み等化部における重み行列およびバイアス値を更新する。そして、重み/バイアス計算部は、非線形波形歪み等化部における重み行列およびバイアス値を更新し、方法700は、動作S04に戻る。いくつかの実施形態では、重み/バイアス計算部は、確率的勾配降下法、Adam法、RMSProp法、または別の適切なアルゴリズムを使用して重み行列およびバイアス値を更新する。
【0131】
動作S09において、重み行列に基づいて、動作S07で決定されたバイアス値、代表値、および乗算値LUT値が非線形波形歪み補償部、例えば、非線形波形歪補償部1311に記憶される。これらの記憶された値は、方法700を使用して解析された光ファイバ通信路を使用して受信されるさらなる通信のための非線形波形歪み補償を行うために使用可能である。
【0132】
いくつかの実施形態では、方法700は、追加の動作を含む。例えば、いくつかの実施形態では、非線形波形歪み補償部に記憶された値をさらに更新するかどうかを決定するために、光ファイバ通信路の通信品質が決定される。いくつかの実施形態では、通信品質は、シンボル誤り率、ビット誤り率、Q値、誤差ベクトルマグニチュード、相互情報量、一般化相互情報量、正規化相互情報量、または別の適切な品質メトリックに基づいて決定される。
【0133】
いくつかの実施形態では、方法700のうちの少なくとも1つの動作は省略される。例えば、いくつかの実施形態では、動作S06は省略され、重み/バイアス計算部を使用する更新は、予め設定された反復回数またはエポックに対して行われる。いくつかの実施形態では、予め設定された反復回数またはエポックは、方法700を実行するために使用される構成要素の利用可能な処理容量に基づいて決定される。
【0134】
図9は、いくつかの実施形態による非線形波形歪み等化部における中間層の出力値の頻度(発生)分布を示すグラフ900である。いくつかの実施形態では、グラフ900は、代表値、例えば、動作S07で決定された代表値を決定するために使用可能である。グラフ900は、中間層の出力値rの頻度分布が0から0.5まで分布していることを示している。さらに、グラフ900は、特に0付近に値が偏在していることを示している。分布を確認することによって、どの出力値が最も多く発生するかが決定される。最も多く発生する値は、代表値、例えば、動作S07で決定された代表値として使用可能である。
【0135】
図10Aは、いくつかの実施形態による代表値および所定の閾値を決定するために使用可能な非線形波形歪み等化部における中間層の出力値の頻度(発生)分布を示すグラフ1000Aである。いくつかの実施形態では、グラフ900は、代表値、例えば、動作S07で決定された代表値を決定するために使用可能である。グラフ1000Aは、どの中間層の出力値が所定の閾値を超えたかを示している。いくつかの実施形態では、代表値は、所定の閾値を超えるように十分に頻繁に発生するすべての出力値の中央値または平均値とみなされる。
【0136】
図10Bは、いくつかの実施形態による代表値および複数の区間を決定するために使用可能な非線形波形歪み等化部における中間層の出力値の頻度(発生)分布を示すグラフ100Bである。いくつかの実施形態では、グラフ900は、代表値、例えば、動作S07で決定された代表値を決定するために使用可能である。グラフ1000Bは、複数の区間1010A~1010Dを示している。区間1010A~1010Dは、ビット精度に基づいて均等に分割される。いくつかの実施形態では、代表値は、区間1010A~1010Dの最も狭い区間内のすべての出力値の中央値または平均値とみなされる。グラフ1000Bの例では、最も狭い区間は区間1010Aであるため、代表値は、区間1010A内のすべての値の中央値または平均値とみなされる。
【0137】
上述の学習および更新は、端局装置または光通信路の初期導入時だけでなく、光通信システムの動作中、端局装置間の光接続の変化に応答して、検出された通信品質の低下に応答して、所定の期間後、または非線形波形歪み補償部の再調整が望まれる任意の他の基準で行われる。
【0138】
波形歪み等化方法では、中間層は、中間層の出力値を中間層および出力層に再入力することによって再帰的に使用される。上記の出力値を代表値に近似し、事前にLUTに積和演算部の乗算部の解を記憶することによって、端局装置内で展開可能な回路規模で非線形波形歪み等化を実施することが可能である。波形歪み等化方法のこの削減された回路規模および更新能力は、手動の介入または解析を使用せずに光通信、特に長距離光通信を改善するのに役立つ。
【0139】
図11は、いくつかの実施形態による光通信システム20のブロック図である。光通信システム20のいくつかの構成要素は、光通信システム10と同様であり、簡潔にするために詳細には説明しない。光通信システム10と比較して、光通信システム20は、光受信器23の一部としてではなく、光送信器21内の非線形波形歪みの予等化(pre-equalization)を行うように構成される。
【0140】
光通信システム20は、光送信器21と、光ファイバ通信路12と、光受信器23と、学習プログラム実行コンピュータ16とを含む。光通信システム20は、単一の光送信器21と、単一の光受信器23とを含む。しかし、いくつかの実施形態では、複数の光送信器21または光受信器23が光通信システム20に含まれる。さらに、いくつかの実施形態では、複数の光ファイバ通信路12が光通信システム20に含まれる。
【0141】
光送信器21は、送信端クライアントインターフェース110と、送信データ生成部111と、光波形生成部112と、波形歪予等化部(波形歪推定/等化部)213と、学習データDB14とを有する。光受信器23は、光波形受信部130と、波形歪補償部231と、受信データ復調部132と、受信端クライアントインターフェース133とを含む。波形歪補償部231は、線形波形歪補償部2310を有する。いくつかの実施形態では、線形波形歪補償部2310は、線形波形歪補償部1310と同様である。
【0142】
光送信器21は、送信端クライアントインターフェース110からの受信入力に基づいて、送信データ生成部111において多値変調方法または偏波多重分離方法を適用するためのシンボルマッピングを行う。送信データは、波形歪予等化部(波形歪推定/等化部)213に転送される。波形歪予等化部(波形歪推定/等化部)213は、光ファイバ通信路12が波形に与える歪みを予測し、光送信器21からの送信前に波形を調整するように構成される。光送信器21における波形歪みを考慮することによって、光受信器23によって受信される光信号は、波形歪みが低減されるか、または波形歪みがないと予想される。波形歪予等化部(波形歪推定/等化部)213は、送信データを修正して修正された送信データを光波形生成部112に出力し、光ファイバ通信路に沿って送信される波形を生成する。
【0143】
波形歪予等化部(波形歪推定/等化部)213内の線形波形歪予等化部2130は送信データに対して線形波形歪みを予測し、非線形歪予等化部(非線形波形歪予測等化部)2131は送信データに対して非線形波形歪みを予測する。
【0144】
光受信器23は、光波形受信部130での受信光波形のコヒーレント検波およびアナログ-デジタル変換によって得られた受信データに対して、波形歪補償部231に線形波形歪補償部2310を含む。受信データに含まれる線形波形歪みを補償し、受信データ復調部132において多値変調方法および偏波多重分離方法の適用によるシンボルデマッピングを行った後、データが受信端クライアントインターフェース133によってユーザに提供される。
【0145】
光送信器21に含まれる学習データDB14は、非線形波形歪予等化部2131における教師あり学習に使用可能な学習データを記憶し、教師あり学習中には送信データ生成部111に学習データを記憶する。
【0146】
学習プログラム実行コンピュータ16と光受信器23は接続されており、学習が光波形受信部130によって取得された受信データに基づいて実行される。さらに、学習プログラム実行コンピュータ16の計算結果を反映するために、重み行列W、Win、およびW、Wout、ならびにバイアス値b、b、およびboutがLUTに記憶され、非線形波形歪予等化部2131にフィードバックされる。いくつかの実施形態では、学習プログラム実行コンピュータ16は、LUTに代表値をさらに記憶する。いくつかの実施形態では、学習プログラム実行コンピュータ16からのフィードバックは、光ファイバ通信路12に沿って提供される。そのような実施形態では、光受信器23はまた、フィードバックを学習プログラム実行コンピュータ16から非線形波形歪予等化部2131に提供する光送信器(図示せず)を含む。
【0147】
図12は、いくつかの実施形態による図11の光通信システムに含まれ得る非線形波形歪予等化部2131のブロック図である。いくつかの実施形態では、非線形波形歪予等化部2131は、光通信システム20に含まれる。いくつかの実施形態では、非線形波形歪予等化部2131は、光通信システム20とは異なる光通信システムに含まれる。
【0148】
非線形波形歪予等化部2131は、入力層240と、中間層241と、出力層242とを有する。入力層240は、積和演算部25-0と、乗算値LUT252-0とを有する。中間層241は、積和演算部25-1と、代表値置換部251-1と、乗算値LUT252-1とを有する。出力層242は、積和演算部25-2と、代表値置換部251-2と、乗算値LUT252-2とを有する。いくつかの実施形態では、入力層240は、入力層140と同様である。いくつかの実施形態では、中間層241は、中間層141と同様である。いくつかの実施形態では、出力層242は、出力層142と同様である。
【0149】
非線形波形歪予等化部2131は、再帰的ニューラルネットワークを含む。非線形波形歪予等化部2131は、単一の中間層241を含む。いくつかの実施形態では、非線形波形歪予等化部2131は、複数の中間層241を含む。送信データは、非線形波形歪予等化部2131に含まれる入力層240に入力され、非線形波形歪みが予等化された送信データが出力層242から出力される。
【0150】
入力層240は、乗算値LUT252-0を有し、LUTから受信データに対する重み行列との積和演算値を読み出す点が異なる。入力層240に入力される送信データが離散値をとる性質およびI/Q軸に対する対称性を利用することによって、積和演算部25-0では、他の手法と比較して積値候補が限定される。限定された積値候補は、入力層240の処理時間および回路サイズを削減するのに役立つ。乗算値LUT252-0に積値を記憶することによって、入力層240は、他の手法と比較して積和演算部25-0の回路のサイズを削減しつつ、重み行列Wを生成することができる。入力層240では、乗算値LUT252-0からの積値を参照して、重み行列Wおよび積が受信データsに加算される。バイアス値bが加算され、活性化関数演算fが決定される。積和演算部25-0は、f(ΣW0s+b)の値を中間層241に出力する。
【0151】
離散値およびI/Q軸に対する対称性を使用して送信データを利用するためには、非線形波形歪み予等化を行った後に線形波形歪み予等化を行うことが有利である。場合によっては、線形波形歪み予等化が非線形波形歪み予等化の前に行われると、送信データの性質が変化する。いくつかの実施形態では、乗算値LUT252-0は、周期的に代表値に関する情報で更新される。いくつかの実施形態では、中間層241の動作は、上述の中間層141の動作と同様である。いくつかの実施形態では、出力層242の動作は、上述の出力層142の動作と同様である。
【0152】
図13は、いくつかの実施形態による非線形波形歪予等化部2131-0のブロック図である。いくつかの実施形態では、非線形波形歪予等化部2131-0は、光通信システム20に含まれる。いくつかの実施形態では、非線形波形歪予等化部2131-0は、光通信システム20とは異なる光通信システムに含まれる。
【0153】
上述した非線形波形歪予等化部2131において、入力層240および中間層241における活性化関数演算は、それぞれ積和演算部25-0および25-1によって行われた。これに対して、非線形波形歪予等化部2131-0では、それぞれ活性化関数LUT253-0および活性化関数LUT253-1を参照して、入力層240-0および中間層241-0に対する活性化関数の値が得られる。さらに、入力層240-0では、乗算値LUT252-0を参照して、受信データs、重み行列W、および積が得られるので、入力層240-0の機能を実施するには、積和部ではなく加算部254-0を使用すればよい。
【0154】
図14は、いくつかの実施形態による非線形波形歪み予等化部のための学習方法1400のフローチャートである。方法1400のいくつかの動作は、方法700の動作と同様であり、簡潔にするために詳細には説明しない。
【0155】
動作S11において、学習部は、トリガイベントに応答して起動される。いくつかの実施形態では、動作S11は、動作S01と同様である。
【0156】
動作S12において、光波形は、光送信器において学習データDBから読み出された送信データに基づいて光波形生成部によって生成される。いくつかの実施形態では、動作S12は、動作S02と同様である。動作S12において、送信データは、非線形波形歪予等化部2131における推定を行わずに光波形生成部に送信される。
【0157】
動作S13において、光波形は、光ファイバ通信路を介して送信され、光受信器内の光波形受信部によって受信される。受信データは、学習プログラム実行コンピュータに入力される。いくつかの実施形態では、動作S13は、動作S03と同様である。
【0158】
動作S14において、受信データは、学習部内の波形歪み等化部に入力される。受信データは、線形波形歪み等化部および非線形波形歪み等化部において等化される。いくつかの実施形態では、動作S14は、動作S04と同様である。
【0159】
動作S15において、差分計算部は、訓練データDBから読み出された訓練データと歪み等化後の受信データとの間の時間相関差分を計算する。差分計算部は、時間相関差分の絶対値が最大値に達するタイミングを決定する。いくつかの実施形態では、差分計算部は、二乗平均平方根誤差解析または交差エントロピー解析を使用して最大時間相関差分を決定する。いくつかの実施形態では、動作S15は、動作S05と同様である。
【0160】
動作S16において、最大時間相関差分値が所定の閾値を下回っているかどうかが決定される。最大時間相関差分が所定の閾値を下回っていないという決定に応答して、方法1400は、動作S18に進む。最大時間相関差分が所定の閾値を下回っているという決定に応答して、方法1400は、動作S17に進む。いくつかの実施形態では、所定の閾値は、ユーザから受信される。いくつかの実施形態では、所定の閾値は、同様の光通信路に関する経験的データに基づく。いくつかの実施形態では、動作S16は、動作S06と同様である。
【0161】
動作S17において、重み行列の最新の反復およびバイアス値が非線形波形歪み等化部に記憶される。記憶された重み行列およびバイアス値に基づいて、歪み等化が光ファイバ通信路からの受信データに適用される。代表値は、等化された受信データに基づいて決定される。いくつかの実施形態では、代表値は、中間層の各出力値に対して頻度分布を行うことによって決定される。最も多く発生する出力値は、代表値であると決定される。いくつかの実施形態では、中間層についての重み行列と出力層の重み行列の積が、代表値を決定するために使用される。いくつかの実施形態では、代表値は、図9図10Bに関して上述したものと同様の方式で決定される。いくつかの実施形態では、動作S17は、動作S07と同様である。
【0162】
動作S18において、重み/バイアス計算部は、最大時間相関差分に基づいて非線形波形歪み等化部における重み行列およびバイアス値を更新する。そして、重み/バイアス計算部は、非線形波形歪み等化部における重み行列およびバイアス値を更新し、方法1400は、動作S14に戻る。いくつかの実施形態では、重み/バイアス計算部は、確率的勾配降下法、Adam法、RMSProp法、または別の適切なアルゴリズムを使用して重み行列およびバイアス値を更新する。いくつかの実施形態では、動作S18は、動作S08と同様である。
【0163】
動作S19において、動作S17で決定された重み行列、バイアス値、代表値、および乗算値は、非線形波形予等化部、例えば、非線形波形歪予等化部2131に送信される。いくつかの実施形態では、動作S19において、光システムの通信品質が計算され、さらなる学習が行われるべきかどうかに関する決定が行われる。
【0164】
一般に、光波形受信部130によって受信されたデータは、学習プログラム実行コンピュータ16から非線形波形歪予等化部2131に転送されるデータよりも容量が大きい。したがって、学習プログラム実行コンピュータ16は、光通信システム20において、光受信器23と同じ側にある。
【0165】
いくつかの実施形態では、方法1400は、追加の動作を含む。例えば、いくつかの実施形態では、非線形波形歪み補償部に記憶された値をさらに更新するかどうかを決定するために、光ファイバ通信路の通信品質が決定される。いくつかの実施形態では、通信品質は、シンボル誤り率、ビット誤り率、Q値、誤差ベクトルマグニチュード、相互情報量、一般化相互情報量、正規化相互情報量、または別の適切な品質メトリックに基づいて決定される。
【0166】
いくつかの実施形態では、方法1400のうちの少なくとも1つの動作は省略される。例えば、いくつかの実施形態では、動作S16は省略され、重み/バイアス計算部を使用する更新は、予め設定された反復回数またはエポックに対して行われる。いくつかの実施形態では、予め設定された反復回数またはエポックは、方法1400を実行するために使用される構成要素の利用可能な処理容量に基づいて決定される。
【0167】
光通信システム20または方法1400を参照して説明した波形歪み等化方法では、受信したエンドクライアントデータの送信の前に、代表値の近似および積和演算部の乗算部の解がLUTに記憶される。生成された送信データの性質は、離散値をとり、I/Q軸に関して対称性を有する。乗算値LUTは生成された送信データの性質を利用することによって入力層に適用することができるので、端局装置での展開を可能にする十分に制限されたサイズを有する回路を使用して非線形波形歪み等化の実施が可能である。
【0168】
当業者であれば、光通信システム10は光通信システムの受信側における非線形波形歪みの補償を説明し、光通信システム20は光通信システムの送信側における非線形波形歪みの補償を説明していることを認識するであろう。当業者であれば、光通信システムの受信側と送信側の両方で非線形波形歪みを補償することは、本明細書の範囲内であることをさらに認識するであろう。受信側と送信側の両方における非線形波形歪みの補償は光通信システムにおけるより高い処理負荷をもたらすが、そのようなより高い処理負荷は、通信のより高いレベルの精度および正確さが望まれる状況において保証されている。
【0169】
図15は、いくつかの実施形態による非線形波形歪み補償のためのシステム1500のブロック図である。システム1500は、ハードウェアプロセッサ1502と、コンピュータプログラムコード1506、すなわち、実行可能命令のセットで符号化された、すなわち、それらを記憶している非一時的コンピュータ可読記憶媒体1504とを含む。コンピュータ可読記憶媒体1504はまた、外部部とインターフェースするための命令1507で符号化される。プロセッサ1502は、バス1508を介してコンピュータ可読記憶媒体1504に電気的に結合される。プロセッサ1502はまた、バス1508によってI/Oインターフェース1510に電気的に結合される。ネットワークインターフェース1512はまた、バス1508を介してプロセッサ1502に電気的に接続される。ネットワークインターフェース1512は、プロセッサ1502およびコンピュータ可読記憶媒体1504がネットワーク1514を介して外部要素に接続することが可能であるように、ネットワーク1514に接続される。プロセッサ1502は、光通信システム10、方法700、光通信システム20、または方法1400に関して説明した動作の一部またはすべてを行うためにシステム1500を使用可能にするために、コンピュータ可読記憶媒体1504に符号化されたコンピュータプログラムコード1506を実行するように構成される。
【0170】
いくつかの実施形態では、プロセッサ1502は、中央処理装置(CPU)、マルチプロセッサ、分散処理システム、特定用途向け集積回路(ASIC)、および/または適切な処理部である。
【0171】
いくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体1504は、電子、磁気、光学、電磁、赤外線、および/または半導体システム(または装置もしくはデバイス)である。例えば、コンピュータ可読記憶媒体1504は、半導体もしくはソリッドステートメモリ、磁気テープ、リムーバブルコンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、剛性磁気ディスク、および/または光ディスクを含む。光ディスクを使用するいくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体1504は、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、コンパクトディスク読み取り/書き込み(CD-R/W)、および/またはデジタルビデオディスク(DVD)を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、記憶媒体1504は、光通信システム10、方法700、光通信システム20、または方法1400に関して説明した動作の一部またはすべてをシステム1500に行わせるように構成されたコンピュータプログラムコード1506を記憶する。いくつかの実施形態では、記憶媒体1504はまた、光通信システム10、方法700、光通信システム20、または方法1400に関して説明した動作の一部またはすべてを行うために使用される情報、ならびに光通信システム10、方法700、光通信システム20、または方法1400に関して説明した動作の一部またはすべてを行う間に生成された情報を記憶する。いくつかの実施形態では、情報は、重み行列パラメータ1516、バイアス値パラメータ1518、代表値パラメータ1520、通信品質パラメータ1522、および/または光通信システム10、方法700、光通信システム20、もしくは方法1400に関して説明した動作の一部またはすべてを行うための実行可能命令のセットを含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、記憶媒体1504は、製造機械とインターフェースするための命令1507を記憶する。命令1507は、光通信システム10、方法700、光通信システム20、または方法1400に関して説明した動作の一部またはすべてを効果的に実施するために、プロセッサ1502が外部デバイスによって読み取り可能な命令を生成することを可能にする。
【0174】
システム1500は、I/Oインターフェース1510を含む。I/Oインターフェース1510は、外部回路に結合される。いくつかの実施形態では、I/Oインターフェース1510は、情報およびコマンドをプロセッサ1502に通信するためのキーボード、キーパッド、マウス、トラックボール、トラックパッド、および/またはカーソル方向キーを含む。
【0175】
システム1500はまた、プロセッサ1502に結合されたネットワークインターフェース1512を含む。ネットワークインターフェース1512は、システム1500が、1つまたは複数の他のコンピュータシステムが接続されるネットワーク1514と通信することを可能にする。ネットワークインターフェース1512は、BLUETOOTH(登録商標)、WIFI、WIMAX、GPRS、もしくはWCDMA(登録商標)などの無線ネットワークインターフェース、またはETHERNET、USB、もしくはIEEE-1394などの有線ネットワークインターフェースを含む。いくつかの実施形態では、光通信システム10、方法700、光通信システム20、または方法1400に関して説明した動作の一部またはすべては、2つ以上のシステム1500で実施され、重み行列、バイアス値、代表値、または通信品質などの情報は、ネットワーク1514を介して異なるシステム1500間で交換される。
【0176】
本明細書の一態様は、光通信システムに関する。光システムは、第1のデータを受信するように構成された第1の端局装置を含み、第1の端局装置は、受信した第1のデータに基づいて光波形を生成するように構成される。光システムは、第1の端局装置から光波形を受信するように構成された光通信路をさらに含む。光システムは、光通信路から光波形を受信するように構成された第2の端局装置をさらに含み、第2の端局装置は、光波形に基づいて第2のデータを出力するように構成される。第1の端局装置または第2の端局装置の少なくとも一方は、非線形波形歪み補償部を含む。非線形波形補償部は、光通信路に沿って伝播する光波形に起因する非線形波形歪みを補正するように構成され、非線形波形補償部は、少なくとも1つの再帰的中間層を含む。いくつかの実施形態では、非線形波形歪み補償部は、単一の再帰的中間層を含む。いくつかの実施形態では、非線形波形歪み補償部は、少なくとも1つの再帰的中間層の出力値に基づいて代表値を決定するように構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの再帰的中間層は、第1の入力として出力値を受信し、代表値に基づいて少なくとも1つの再帰的中間層の後続の出力を決定するように構成される。いくつかの実施形態では、非線形波形歪み補償部は、出力層をさらに含み、出力層は、出力値を受信するように構成され、出力層は、出力値および代表値に基づいて非線形波形歪み補償部の出力を決定するように構成される。いくつかの実施形態では、非線形波形歪み補償部は、入力層をさらに含み、少なくとも1つの再帰的中間層は、第2の入力として入力層の出力を受信するように構成される。いくつかの実施形態では、第1の端局装置は、非線形波形歪み補償部を含む。いくつかの実施形態では、第2の端局装置は、非線形波形歪み補償部を含む。
【0177】
本明細書の一態様は、光通信方法に関する。方法は、第1の端局装置を使用して、第1のデータを受信することを含む。方法は、第1のデータに基づいて光波形を生成することをさらに含む。方法は、光通信路に沿って光波形を送信することをさらに含む。方法は、第2の端局装置を使用して、光通信路から送信された光波形を受信することをさらに含む。方法は、第2の端局装置によって受信された光波形に基づいて第2の端局装置から第2のデータを出力することをさらに含む。方法は、第1の端局装置または第2の端局装置の少なくとも一方を使用して、非線形波形歪み補償を行い、光通信路に沿って伝播する光波形に起因する非線形波形歪みを補正することをさらに含み、非線形波形補償を行うことは、少なくとも1つの再帰的中間層を使用することを含む。いくつかの実施形態では、非線形波形歪み補償を行うことは、単一の再帰的中間層を使用することを含む。いくつかの実施形態では、非線形波形歪み補償を行うことは、少なくとも1つの再帰的中間層の出力値に基づいて代表値を決定することを含む。いくつかの実施形態では、非線形波形歪み補償を行うことは、第1の入力として出力値を少なくとも1つの再帰的中間層に提供することと、代表値に基づいて少なくとも1つの再帰的中間層の後続の出力を決定することとをさらに含む。いくつかの実施形態では、非線形波形歪み補償を行うことは、出力層を使用して出力値を受信することと、出力値および代表値に基づいて出力層から非線形波形歪み補償値を出力することとをさらに含む。いくつかの実施形態では、非線形波形歪み補償を行うことは、第2の入力として入力層からの出力を少なくとも1つの再帰的中間層に提供することをさらに含む。いくつかの実施形態では、非線形波形歪み補償を行うことは、第1の端局装置を使用することを含む。いくつかの実施形態では、非線形波形歪み補償を行うことは、第2の端局装置を使用することを含む。
【0178】
本明細書の一態様は、光通信システム用の端局装置に関する。端局装置は、非線形波形歪み補償部を含み、非線形波形補償部は、光通信路に沿って伝播する光波形に起因する非線形波形歪みを補正するように構成される。非線形波形補償部は、光波形に関する情報を受信するように構成された入力層を含み、入力層は、第1の出力を生成するように構成される。非線形波形補償部は、第1の入力として第1の出力を受信するように構成された少なくとも1つの再帰的中間層をさらに含み、少なくとも1つの再帰的中間層は、第2の出力を生成するように構成され、少なくとも1つの再帰的中間層は、第2の入力として第2の出力を受信するように構成される。非線形波形補償部は、第2の出力を受信するように構成された出力層をさらに含み、出力層は、第2の出力および代表値に基づいて第3の出力を生成するように構成され、代表値は、第2の出力に基づく。いくつかの実施形態では、非線形波形歪み補償部は、単一の再帰的中間層を含む。いくつかの実施形態では、端局装置は、光波形を光通信路に送信するように構成される。いくつかの実施形態では、端局装置は、光通信路から光波形を受信するように構成される。
【0179】
以上、いくつかの実施形態を参照して本明細書を説明したが、本出願は上述の実施形態に限定されない。本明細書の構成および詳細に関して、当業者によって理解される様々な変更を本出願の範囲内で行うことができる。
【0180】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記述され得るが、以下に限定されるものではない。
【0181】
(付記1)
第1のデータを受信し、前記受信した第1のデータに基づいて光波形を生成するように構成される第1の端局装置と、
前記第1の端局装置から前記光波形を受信するように構成された光通信路と、
前記光通信路から前記光波形を受信するように構成され、前記光波形に基づいて第2のデータを出力するように構成された第2の端局装置と
を備え、
前記第1の端局装置または前記第2の端局装置の少なくとも一方は、非線形波形歪み補償部を備え、
前記非線形波形歪み補償部は、前記光通信路に沿って伝播する前記光波形に起因する非線形波形歪みを補正するように構成され、少なくとも1つの再帰的中間層を備える
光通信システム。
【0182】
(付記2)
前記非線形波形歪み補償部は、単一の再帰的中間層を備える、付記1に記載の光通信システム。
【0183】
(付記3)
前記非線形波形歪み補償部は、前記少なくとも1つの再帰的中間層の出力値に基づいて代表値を決定するように構成される、付記1に記載の光通信システム。
【0184】
(付記4)
前記少なくとも1つの再帰的中間層は、第1の入力として前記出力値を受信し、前記代表値に基づいて前記少なくとも1つの再帰的中間層の後続の出力を決定するように構成される、付記3に記載の光通信システム。
【0185】
(付記5)
前記非線形波形歪み補償部は、出力層をさらに備え、前記出力層は、前記出力値を受信するように構成され、前記出力値および前記代表値に基づいて前記非線形波形歪み補償部の出力を決定するように構成される、付記3に記載の光通信システム。
【0186】
(付記6)
前記非線形波形歪み補償部は、入力層をさらに備え、前記少なくとも1つの再帰的中間層は、第2の入力として前記入力層の出力を受信するように構成される、付記3に記載の光通信システム。
【0187】
(付記7)
前記第1の端局装置は、前記非線形波形歪み補償部を備える、付記1に記載の光通信システム。
【0188】
(付記8)
前記第2の端局装置は、前記非線形波形歪み補償部を備える、付記1に記載の光通信システム。
【0189】
(付記9)
第1の端局装置を使用して、第1のデータを受信することと、
前記第1のデータに基づいて光波形を生成することと、
光通信路に沿って前記光波形を送信することと、
第2の端局装置を使用して、前記光通信路から前記送信された光波形を受信することと、
前記第2の端局装置によって受信された前記光波形に基づいて前記第2の端局装置から第2のデータを出力することと、
前記第1の端局装置または前記第2の端局装置の少なくとも一方を使用して、非線形波形歪み補償を行い、前記光通信路に沿って伝播する前記光波形に起因する非線形波形歪みを補正することであって、前記非線形波形歪み補償を行うことは、少なくとも1つの再帰的中間層を使用することを含むことと
を含む、光通信方法。
【0190】
(付記10)
前記非線形波形歪み補償を行うことは、単一の再帰的中間層を使用することを含む、付記9に記載の光通信方法。
【0191】
(付記11)
前記非線形波形歪み補償を行うことは、前記少なくとも1つの再帰的中間層の出力値に基づいて代表値を決定することを含む、付記9に記載の光通信方法。
【0192】
(付記12)
前記非線形波形歪み補償を行うことは、
第1の入力として前記出力値を前記少なくとも1つの再帰的中間層に提供することと、
前記代表値に基づいて前記少なくとも1つの再帰的中間層の後続の出力を決定することと
をさらに含む、付記11に記載の光通信方法。
【0193】
(付記13)
前記非線形波形歪み補償を行うことは、
出力層を使用して前記出力値を受信することと、
前記出力値および前記代表値に基づいて前記出力層から非線形波形歪み補償値を出力することと
をさらに含む、付記11に記載の光通信方法。
【0194】
(付記14)
前記非線形波形歪み補償を行うことは、第2の入力として入力層からの出力を前記少なくとも1つの再帰的中間層に提供することをさらに含む、付記11に記載の光通信方法。
【0195】
(付記15)
前記非線形波形歪み補償を行うことは、前記第1の端局装置を使用することを含む、付記9に記載の光通信方法。
【0196】
(付記16)
前記非線形波形歪み補償を行うことは、前記第2の端局装置を使用することを含む、付記9に記載の光通信方法。
【0197】
(付記17)
非線形波形歪み補償部を備える、光通信システム用の端局装置であって、
前記非線形波形歪み補償部は、光通信路に沿って伝播する光波形に起因する非線形波形歪みを補正するように構成され、
前記非線形波形歪み補償部は、
前記光波形に関する情報を受信するように構成され、第1の出力を生成するように構成される入力層と、
第1の入力として前記第1の出力を受信するように構成され、第2の出力を生成するように構成され、第2の入力として前記第2の出力を受信するように構成される少なくとも1つの再帰的中間層と、
前記第2の出力を受信するように構成され、前記第2の出力と前記第2の出力に基づく代表値とに基づいて第3の出力を生成するように構成される出力層と、を備える
端局装置。
【0198】
(付記18)
前記非線形波形歪み補償部は、単一の再帰的中間層を備える、付記17に記載の端局装置。
【0199】
(付記19)
前記端局装置は、前記光波形を前記光通信路に送信するように構成される、付記17に記載の端局装置。
【0200】
(付記20)
前記端局装置は、前記光通信路から前記光波形を受信するように構成される、付記17に記載の端局装置。
【0201】
(付記1A)
光信号データの値として高頻度で出現する値を代表値として選択する代表値決定手段と、
前記代表値と光波形が含む波形歪の等化行列との積を計算する乗算手段と、
から構成される光信号データの波形歪等化設定を学習する等化学習手段を有し、
前記等化学習手段において、計算した前記積の値を保持する乗算値保持手段と、
前記乗算保持手段が保持する前記積の値をおのおの足し合わせる加算手段と、を有し、
光信号データに対して再帰的に波形歪を等化すること
を特徴とする波形歪等化方式。
【0202】
(付記2A)
前記代表値決定手段において、前記代表値を、光信号データのビット精度に関する頻度計数幅にて計算する振幅頻度分布に基づいて選択すること
を特徴とする付記1Aに記載の波形歪等化方式。
【0203】
(付記3A)
前記代表値決定手段において、前記振幅頻度分布における頻度が一定値以上となる値を前記代表値として選択すること
を特徴とする付記2Aに記載の波形等化方式。
【0204】
(付記4A)
前記代表値決定手段について、光信号データの振幅値に関して、出現頻度が一定となるように前記頻度計数幅を割り当てること
を特徴とする付記2Aに記載の波形等化方式。
【0205】
(付記5A)
前記代表値決定手段について、前記代表値を、前記頻度係数幅の中央値あるいは頻度計数幅における光信号データの振幅の平均値と決定すること
を特徴とする付記1A~4Aのいずれかに記載の波形等化方式。
【0206】
(付記6A)
送信データを光波形として送信する光送信器と、
光波形を受光し、電気波形に変換した後に、アナログデジタル変換により受信データを得る光受信器と、から構成され、
前記光受信器が、受信データが含む波形歪みを等化する波形歪補償部を有し、
前記波形歪補償部が、受信データの値として高頻度で出現する代表値と受信データが含む波形歪の等化行列との積の値を保持する乗算値ルックアップテーブルと、前記積の値をおのおの足し合わせる加算部と、を有し、
前記波形歪み補償部において、受信データに対して再帰的に波形歪を等化すること
を特徴とする端局装置。
【0207】
(付記7A)
送信データを光波形として送信する光送信器と、
光波形を受光し、電気波形に変換した後に、アナログデジタル変換により受信データを得る光受信器と、から構成され、
前記光送信器が、波形歪みを予め等化する波形歪予等化部を有し、
前記波形歪予等化部が、送信データの値として高頻度で出現する代表値と波形歪の等化行列との積の値を保持する乗算値ルックアップテーブルと、前記積の値をおのおの足し合わせる加算部と、を有し、
前記波形歪み予等化部において、送信データに対して再帰的に波形歪を予等化すること
を特徴とする端局装置。
【0208】
(付記8A)
送信データを光波形として送信する光送信器と、
光波形を受光し、電気波形に変換した後に、アナログデジタル変換により受信データを得る光受信器と、
前記受信データに基づいて、受信データが含む波形歪を等化する設定を学習する等化学習部とから構成され、
前記等化学習部が、受信データの値として高頻度に出現する値を代表値として選択する代表値決定部と、前記代表値と光波形が含む波形歪の等化行列との積を計算する乗算部、とを有し、
前記光受信器が、受信データが含む波形歪みを等化する波形歪補償部を有し、
前記波形歪補償部が、受信データの値として高頻度で出現する代表値と受信データが含む波形歪の等化行列との積の値を保持する乗算値ルックアップテーブルと、前記積の値をおのおの足し合わせる加算部と、を有し、
前記波形歪み補償部において、前記等化学習部より通知される前記代表値、および、前記積の値に基づいて、受信データに対して再帰的に波形歪を等化すること
を特徴とする光通信システム。
【0209】
(付記9A)
送信データを光波形として送信する光送信器と、
光波形を受光し、電気波形に変換した後に、アナログデジタル変換により受信データを得る光受信器と、
前記受信データに基づいて、受信データが含む波形歪を等化する設定を学習する等化学習部とから構成され、
前記光送信器が、波形歪みを予め等化する波形歪予等化部を有し、
前記波形歪予等化部が、送信データの値として高頻度で出現する代表値と波形歪の等化行列との積の値を保持する乗算値ルックアップテーブルと、前記積の値をおのおの足し合わせる加算部と、を有し、
前記波形歪み予等化部において、前記等化学習部より通知される前記代表値、および、前記積の値に基づいて、送信データに対して再帰的に波形歪を予等化すること
を特徴とする端局装置。
【0210】
この出願は、2022年7月22日に出願された米国特願17/870,862号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0211】
10、20 光通信システム
11、21 光送信器
110 送信端クライアントインターフェース(送信側クライアントインターフェース)
111 送信データ生成部
112 光波形生成部
12 光ファイバ通信路
13、23 光受信器
130 光波形受信部
131、231 波形歪補償部
1310、2310 線形波形歪補償部
1311、1311-0 非線形波形歪補償部
132 受信データ復調部
133 受信端クライアントインターフェース(受信側クライアントインターフェース)14、14-1 学習データデータベース(DB)
140、140-0、240、240-0 入力層
141、141-0、241、241-0 中間層
142、242 出力層
15-0、15-1、15-2、25-0、25-1、25-2 積和演算部
151-1、151-2、251-1、251-2 代表値置換部
152-1、152-2、252-0、252-1、252-2 乗算値ルックアップテーブル(LUT)
153-0、153-1、253-0、253-1 活性化関数LUT
16 学習プログラム実行計算機(学習プログラム実行コンピュータ)
160 学習プログラム(学習部)
161 波形歪等化プログラム(波形歪等化部)
1610 線形波形歪等化プログラム(線形波形歪等化部)
1611 非線形波形歪等化プログラム(非線形波形歪等化部)
162 差分計算部
163 重み・バイアス計算部
164 波形等化設定決定部
213 波形歪予等化部
2130 線形波形歪予等化部
2131、2131-0 非線形波形歪予等化部
254-0 加算部
90、90-1 光通信システム
91 光送信器
910 送信端クライアントインターフェース(送信側クライアントインターフェース)
911 送信データ生成部
912 光波形生成部
913 波形歪予等化部
9130 線形波形歪予等化部
92 光ファイバ通信路
93 光受信器
930 光波形受信部
931 波形歪補償部
9310 線形波形歪補償部
9311 非線形波形歪補償部
932 受信データ復調部
933 受信端クライアントインターフェース(受信側クライアントインターフェース)
940 入力層
941-0、941-1、941-2 中間層
942 出力層
95-0、95-1、95-2、95-3、95-4 積和演算部
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15