IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニパルス株式会社の特許一覧

特開2024-148131荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法
<>
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図1
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図2
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図3
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図4
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図5
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図6
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図7
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図8
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図9
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図10
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図11
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図12
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図13
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図14
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図15
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図16
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図17
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図18
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図19
  • 特開-荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148131
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66D 3/18 20060101AFI20241009BHJP
   B66D 3/20 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B66D3/18 E
B66D3/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118877
(22)【出願日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2023060547
(32)【優先日】2023-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄
(57)【要約】      (修正有)
【課題】操作性の改善を図った荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法の提供。
【解決手段】昇降作動部と、モータ部11と、重量検出部12と、位置検出部13と、記憶部10aと、制御部10と、操作指令部20とを備えた荷役助力装置であって、昇降作動部は吊索にて荷役物の昇降を行い、モータ部11は昇降作動部を駆動し、重量検出部12は昇降作動部に加わる重量値を検出し、位置検出部13は係止部の繰出し値を検出し、記憶部10aは係止部及び荷役物の重量を登録値として記憶し、制御部10は、操作指令部20からの指令を受信し、バランス手段10dと、荷役物リリース手段10cとを有し、バランス手段10dは重量値と登録値との差をゼロにする制御値を演算してバランス制御を行い、荷役物リリース手段10cは、バランス制御中に荷役物リリース指令を受信して、制御値を変化させつつ係止部の昇降の制御を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降作動部と、モータ部と、重量検出部と、位置検出部と、記憶部と、制御部と、操作指令部とを備えて荷役物の昇降の助力を行う荷役助力装置であって、
前記昇降作動部は、前記荷役物を係止する係止部を吊索で繰り出して前記荷役物の昇降を行い、
前記モータ部は、前記昇降作動部を駆動し、
前記重量検出部は、前記昇降作動部に加わる重量値を検出して前記制御部へ送信し、
前記位置検出部は前記係止部の繰出し値を検出して前記制御部へ送信し、
前記記憶部は前記係止部及び前記荷役物の重量を登録値として記憶し、
前記制御部は、前記操作指令部からの指令を受信する本体装置送受信部と、バランス手段と、荷役物リリース手段とを有し、
前記バランス手段は、前記重量値及び前記登録値を受信して前記重量値と前記登録値との差をゼロにする制御値を演算して前記モータ部を制御してバランス制御を行い、
前記荷役物リリース手段は、前記バランス制御の実施中に前記操作指令部から荷役物リリース指令を受信すると、前記制御値を変化させつつ前記係止部の昇降の制御を行う、荷役助力装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記荷役物リリース指令を受信すると、前記係止部を降下させ、前記係止部の下降速度が所定の値以下になった場合に前記制御値を減じ、前記制御値と前記係止部の重量の差が所定の値以下となった時、前記係止部を所定の距離降下させた後定めた時間だけ現在位置を保持する請求項1に記載の荷役助力装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記係止部を前記定めた時間だけ前記現在位置を保持した後、前記重量検出部から前記重量値を得て、前記重量値を基に前記制御値を定めて、前記係止部を上昇させ、前記係止部の上昇速度が所定の値以下になった場合に前記制御値を増加させ、前記制御値と前記係止部の重量の差が所定の値以下となった時、当該制御値を基に前記バランス制御を実行する請求項2に記載の荷役助力装置。
【請求項4】
昇降作動部と、モータ部と、重量検出部と、位置検出部と、記憶部と、制御部と、操作指令部とを備えて荷役物の昇降の助力を行う荷役助力装置であって、
前記昇降作動部は、前記荷役物を係止する係止部を吊索で繰り出して前記荷役物の昇降を行い、
前記モータ部は、前記昇降作動部を駆動し、
前記重量検出部は、前記昇降作動部に加わる重量値を検出して前記制御部へ送信し、
前記位置検出部は前記係止部の繰出し値を検出して前記制御部へ送信し、
前記記憶部は前記係止部の重量を登録値として記憶し、
前記制御部は、前記操作指令部からの指令を受信する本体装置送受信部と、巻上げアシスト手段とを有し、
前記巻上げアシスト手段は、前記操作指令部から巻上げアシスト指令を受信して前記重量検出部から得た前記重量値が所定の値よりも小さい時、前記重量値と前記登録値との差をゼロにする制御値を変化させつつ前記係止部の上昇の制御を行う、荷役助力装置。
【請求項5】
前記巻上げアシスト手段は、前記係止部の重量を基に前記制御値を定めて、前記係止部を上昇させ、前記係止部の上昇速度が所定の値以下になった場合に前記制御値を増加させ、前記制御値と前記係止部の重量の差が所定の値となるまで若しくは所定の位置に到達するまで前記係止部の上昇を実行する請求項4に記載の荷役助力装置。
【請求項6】
昇降作動部と、モータ部と、重量検出部と、位置検出部と、記憶部と、制御部と、操作指令部とを備えて荷役物の昇降の助力を行う荷役助力装置の制御方法であって、
前記昇降作動部は、前記荷役物を係止する係止部を吊索で繰り出して前記荷役物の昇降を行い、
前記モータ部は、前記昇降作動部を駆動し、
前記重量検出部は、前記昇降作動部に加わる重量値を検出して前記制御部へ送信し、
前記位置検出部は前記係止部の繰出し値を検出して前記制御部へ送信し、
前記記憶部は前記係止部及び前記荷役物の重量を登録値として記憶し、
前記制御部は、バランスステップと、荷役物リリースステップとを有し、
前記バランスステップは、前記重量値及び前記登録値を受信して前記重量値と前記登録値との差をゼロにする制御値を演算して前記モータ部を制御してバランス制御を行い、
前記荷役物リリースステップは、前記バランス制御の実施中に前記操作指令部から荷役物リリース指令を受信すると、前記制御値を変化させつつ前記係止部の昇降の制御を行う、荷役助力装置の制御方法。
【請求項7】
昇降作動部と、モータ部と、重量検出部と、位置検出部と、記憶部と、制御部と、操作指令部とを備えて荷役物の昇降の助力を行う荷役助力装置の制御方法であって、
前記昇降作動部は、前記荷役物を係止する係止部を吊索で繰り出して前記荷役物の昇降を行い、
前記モータ部は、前記昇降作動部を駆動し、
前記重量検出部は、前記昇降作動部に加わる重量値を検出して前記制御部へ送信し、
前記位置検出部は前記係止部の繰出し値を検出して前記制御部へ送信し、
前記記憶部は前記係止部の重量を登録値として記憶し、
前記制御部は、巻上げアシストステップを有し、
前記巻上げアシストステップは、前記操作指令部から巻上げアシスト指令を受信して前記重量検出部から得た前記重量値が所定の値よりも小さい時、前記重量値と前記登録値との差をゼロにする制御値を変化させつつ前記係止部の上昇の制御を行う、荷役助力装置の制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、令和5年4月4日付けの出願を基礎とする国内優先権主張の出願である。本発明は、製造分野の製造組立てや搬送などに用いる荷役助力装置であって、例えば荷役物を昇降させる際にモータによるアシストで重量バランスさせ僅かな操作力で上下移動させる荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から工業製品の組立てを行う工場では、大きな重量を有する工具、作業用機器、製品、半完成品などを移動させる荷役装置を使用している。その荷役装置の中でも、大きな重量の荷役物に対してバランス状態を作り出し、使用者が軽い操作力で任意の高さに昇降移動できるように助力(アシスト力)を発生させる荷役助力装置が一部で使用されている。このように助力を発生させる荷役助力装置は、電動モータによって助力を行い、バランス状態を作り出し、荷役物に小さな操作力を加えることでスムーズに移動させている。したがって単に上下動作を電動モータで行うものとは異なり、荷役物の荷重やこれに加わる操作力を例えば荷重検出器で検出して、回転角検出器と繋がったACサーボモータ等で外力の印加による重量変化を元に加速度を調整して細かいバランス制御を行うように構成されている場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-52007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、操作部からの指令によって制御部がバランスを保つ技術が開示されている。このような荷役助力装置によって吊具を介して係止した荷役物を扱う際に、作業者は操作スイッチを押して操作指令を行うことが必要である。作業者が目標の位置に荷役物を降ろして吊具(係止部)から外す作業に対して、荷役助力装置の操作で改善の余地があった。
【0005】
このような問題に鑑みて、本発明は、作業者の負担を軽減して荷役作業の改善を図った荷役助力装置及び荷役助力装置の制御方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る荷役助力装置は、上記の目的を達成するために、
昇降作動部と、モータ部と、重量検出部と、位置検出部と、記憶部と、制御部と、操作指令部とを備えて荷役物の昇降の助力を行う荷役助力装置であって、
昇降作動部は、荷役物を係止する係止部を吊索で繰り出して荷役物の昇降を行い、
モータ部は、昇降作動部を駆動し、
重量検出部は、昇降作動部に加わる重量値を検出して制御部へ送信し、
位置検出部は係止部の繰出し値を検出して制御部へ送信し、
記憶部は係止部及び荷役物の重量を登録値として記憶し、
制御部は、操作指令部からの指令を受信する本体装置送受信部と、バランス手段と、荷役物リリース手段とを有し、
バランス手段は、重量値及び登録値を受信して重量値と登録値との差をゼロにする制御値を演算してモータ部を制御してバランス制御を行い、
荷役物リリース手段は、バランス制御の実施中に操作指令部から荷役物リリース指令を受信すると、制御値を変化させつつ係止部の昇降の制御を行うように構成されている。
【0007】
また、制御部は、 制御部は、荷役物リリース指令を受信すると、係止部を降下させ、係止部の下降速度が所定の値以下になった場合に制御値を減じ、制御値と係止部の重量の差が所定の値以下となった時、係止部を所定の距離降下させた後定めた時間だけ現在位置を保持するように構成されている。
【0008】
また、制御部は、 制御部は、係止部を定めた時間だけ現在位置を保持した後、重量検出部から重量値を得て、重量値を基に制御値を定めて、係止部を上昇させ、係止部の上昇速度が所定の値以下になった場合に制御値を増加させ、制御値と係止部の重量の差が所定の値以下となった時、当該制御値を基にバランス制御を実行する。
【0009】
本発明の一態様に係る荷役助力装置は、昇降作動部と、モータ部と、重量検出部と、位置検出部と、記憶部と、制御部と、操作指令部とを備えて荷役物の昇降の助力を行う荷役助力装置であって、
昇降作動部は、荷役物を係止する係止部を吊索で繰り出して荷役物の昇降を行い、
モータ部は、昇降作動部を駆動し、
重量検出部は、昇降作動部に加わる重量値を検出して制御部へ送信し、
位置検出部は係止部の繰出し値を検出して制御部へ送信し、
記憶部は係止部の重量を登録値として記憶し、
制御部は、操作指令部からの指令を受信する本体装置送受信部と、巻上げアシスト手段とを有し、
巻上げアシスト手段は、操作指令部から巻上げアシスト指令を受信して重量検出部から得た重量値が所定の値よりも小さい時、重量値と登録値との差をゼロにする制御値を変化させつつ係止部の上昇の制御を行う、
【0010】
また、巻上げアシスト手段は、係止部の重量を基に制御値を定めて、係止部を上昇させ、係止部の上昇速度が所定の値以下になった場合に制御値を増加させ、制御値と係止部の重量の差が所定の値となるまで若しくは所定の位置に到達するまで係止部の上昇を実行する
【0011】
本発明の一態様に係る荷役助力装置の制御方法は、昇降作動部と、モータ部と、重量検出部と、位置検出部と、記憶部と、制御部と、操作指令部とを備えて荷役物の昇降の助力を行う荷役助力装置の制御方法であって、
昇降作動部は、荷役物を係止する係止部を吊索で繰り出して荷役物の昇降を行い、
モータ部は、昇降作動部を駆動し、
重量検出部は、昇降作動部に加わる重量値を検出して制御部へ送信し、
位置検出部は係止部の繰出し値を検出して制御部へ送信し、
記憶部は係止部及び荷役物の重量を登録値として記憶し、
制御部は、バランスステップと、荷役物リリースステップとを有し、
バランスステップは、重量値及び登録値を受信して重量値と登録値との差をゼロにする制御値を演算してモータ部を制御してバランス制御を行い、
荷役物リリースステップは、バランス制御の実施中に操作指令部から荷役物リリース指令を受信すると、制御値を変化させつつ係止部の昇降の制御を行う。
【0012】
本発明の一態様に係る荷役助力装置の制御方法は、昇降作動部と、モータ部と、重量検出部と、位置検出部と、記憶部と、制御部と、操作指令部とを備えて荷役物の昇降の助力を行う荷役助力装置の制御方法であって、
昇降作動部は、荷役物を係止する係止部を吊索で繰り出して荷役物の昇降を行い、
モータ部は、昇降作動部を駆動し、
重量検出部は、昇降作動部に加わる重量値を検出して制御部へ送信し、
位置検出部は係止部の繰出し値を検出して制御部へ送信し、
記憶部は係止部の重量を登録値として記憶し、
制御部は、巻上げアシストステップを有し、
巻上げアシストステップは、操作指令部から巻上げアシスト指令を受信して重量検出部から得た重量値が所定の値よりも小さい時、重量値と登録値との差をゼロにする制御値を変化させつつ係止部の上昇の制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置と係止部との斜視構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置の本体装置の一部を省略した斜視構成図と操作指令部の斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置の電子回路のブロック構成図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置の制御部が実行するステップのフローチャートである。
図13】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置の制御部が実行するステップのフローチャートである。
図14】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置のタイムチャートの例である。
図15】本発明の第2の実施形態に係る荷役助力装置と係止部との斜視構成図である。
図16】本発明の第2の実施形態に係る荷役助力装置の電子回路のブロック構成図である。
図17】本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置の制御部が実行するステップのフローチャートである。
図18】本発明の第2の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図19】本発明の第2の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
図20】本発明の第2の実施形態に係る荷役助力装置を用いた作業を表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る荷役助力装置について、図面を基に詳細な説明を行う。図1は本発明の第1の実施形態の一例である荷役助力装置1の斜視構成図である。
【0015】
荷役助力装置1は、本体装置2と、吊下げフック3と、リンクチェーン4と、吊り具用フック5(係止部A)と、グリップ6と、操作指令部20と、を含んで構成されている。本体装置2は、リンクチェーン4を介して、係止部B7に荷役物31を係止させて、荷役物31の昇降を行う。吊り具用フック5は、この本体装置2から鉛直下方向へ伸びたリンクチェーン4の下方端部に設けられている。本体装置2の天面部には吊下げフック3が設けられている。したがって本体装置2は建物の梁や、図4以降で表されるような水平移動用のレール42に沿って水平方向に移動自在な移動ブロック41などに吊して使用することができる。
【0016】
吊り具用フック5は、リンクチェーン4の一端に設けられた荷役物用のフックであって、本実施形態では係止部B7を吊下げる部材で、汎用性のある形状である。
【0017】
係止部B7は、荷役物31を係止するものである。係止部B7は、アイボルト7aと、ハンドル7bと、爪7cと、ガイド板7dと、を有している。アイボルト7aは、吊り具用フック5と係止部B7とを連結する。爪7cは、荷役物31の側面に設けられた段差部31aに係止部B7を係止するための部材で、ハンドル7bによって制限された角度範囲で回転して荷役物31を係止または開放することができる。ガイド板7dは、鉛直下向きに係止部B7を移動させる際に、係止部B7と荷役物31の相対位置を規制して、荷役物31の段差部31aと爪7cとの係止を容易にするものである。なお吊り具用フック5に直接的に荷役物31を係止する場合もあり、この時には吊り具用フック5が係止部に相当する。また吊り具用フック5と係止部B7を合わせて係止部としても良い。
【0018】
グリップ6は、吊り具用フック5とリンクチェーン4との接続部を覆って設けられた中空円筒状の部材である。作業者はグリップ6を握って、吊り具用フック5及び係止部B7を目的の場所に移動させて荷役作業を行うことができる。
【0019】
図2は本発明の第1の実施形態の荷役助力装置1の本体装置2の一部を省略した斜視構成図と操作指令部20の拡大斜視図である。本体装置2はカバーを備えていて、その内部には制御部10、モータ部11、昇降作動部16、重量検出部12、位置検出部13等が収納されている。
【0020】
本体装置2の制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、その他の記憶装置及び入出力装置を備えて、リンクチェーン4及び昇降作動部16を介して吊り具用フック5の上下移動の制御等を行う。また制御部10は、本体装置2を構成する電気電子部品等に電気を供給する回路を含んでいる。
【0021】
モータ部11は、吊り具用フック5及び係止部B7を上下移動させるための駆動源である。モータ部11のモータの負荷側には減速機が取り付けられている。このモータは例えば交流サーボモータである。
【0022】
この減速機はモータの回転速度を所定の速度に減速している。減速機は例えば波動歯車減速機である。波動歯車減速機は、ウェーブジェネレータと、フレクスプラインと、サーキュラスプラインとを有している。ウェーブジェネレータは、楕円状のカムの外周に薄肉のボールベアリングが嵌め込まれ、全体が楕円形状をしている。ベアリングの内輪は楕円カムに固定されていて、外輪はボールを介して弾性変形する。フレクスプラインは、外周に多数の外歯が形成され、ウェーブジェネレータに外嵌されて、ウェーブジェネレータの回転により円周方向へ撓まされる位置が変化するようにした弾性変形可能なものである。サーキュラスプラインは、フレクスプラインの外周側にあってフレクスプラインの外歯と嵌合する内歯を備えている。そして動力は、モータと連結したウェーブジェネレータからフレクスプラインに回転出力として繋げた出力軸15へ取り出されて伝達される。このモータ部11の減速機に例えば波動歯車減速機のようなバックラッシが微小なものを使用することで、モータの正逆回転切り換えを頻繁に行って上下移動を行う時に、切り換え時の制御不能な領域をなくし、スムーズな操作感を実現できる。なお減速機は波動歯車減速機に限るものではない。
【0023】
出力軸15は、減速機にて回転速度を減速し、増大させたトルクを出力する回転軸であり、昇降作動部16と連結し、昇降作動部16を連続的に正逆に回転させるものである。
【0024】
リンクチェーン4は吊索であって、半円弧部とこれに繋がる直線部からなる長円形の環が交差して交互に連接されたものである。リンクチェーン4の一端は吊り具用フック5に繋がっていて、他端(無負荷側)はチェーン収納部17に収納されている。
【0025】
昇降作動部16は、駆動源のモータ部11からの動力の伝達によって回転する回転部材を含んで構成される。本実施形態では昇降作動部16の回転部材は中空円柱の形状であって、中空部で出力軸15と繋がっていて、リンクチェーン4を巻回し、リンクチェーン4の巻き上げ及び繰り出しを行う。リンクチェーン4が巻回される位置は、おおよそ吊下げフック3の鉛直下付近であって、本体装置2の重心位置に近いところに設けられる。リンクチェーン4は昇降作動部16の外側円柱面に設けられたポケット溝に嵌入されておおよそ180度ほど巻回される。本実施形態では吊索は、吊り具用フック5に繋がって昇降作動部16に巻回されるものにリンクチェーン4を用いたが、これに限らずワイヤーロープであっても良い。ワイヤーロープを使用した時は、昇降作動部16はドラム形状で、ワイヤーロープはその一端が固定されて回転部材に巻回される。
【0026】
位置検出部13はモータ部11の反負荷側に連結されている。位置検出部13はモータの回転角位置を検出する。位置検出部13は例えばアブソリュートエンコーダであって、光学式にてモータの回転角位置を検出して位置値を本体装置2の制御部10へ送信する。したがってこの位置検出部13は、係止部B7の本体装置2からの繰出し値Lすなわち係止部B7の昇降位置を検出することができる。
【0027】
重量検出部12は、起歪体と起歪体に貼られた歪みゲージを備えている。起歪体は昇降作動部16に巻きつけられているリンクチェーン4から伝達される力を検出できるように弾性変形する形状を有している。歪みゲージは重量に応じて起歪体に生ずる歪みを電気信号に変換するホイートストーンブリッジ回路に組み込まれ、重量検出部12は昇降作動部16に加わる重量を検出して、重量値を本体装置2の制御部10へ送信する。
【0028】
そして本体装置2の制御部10が本体装置2内の昇降作動部16の近傍に配置されている。本体装置2の制御部10は、位置検出部13から位置値(繰出し値L)を、重量検出部12から重量値をそれぞれ受信し、これらを基に演算を行い、モータ部11を制御する。本体装置2の制御部10を含む電装部は、本体装置2を粉粒や水滴のかかる場所での使用も可能にするためにカバー内に配置されている。
【0029】
本実施形態では、位置検出部13はモータ部11の反負荷側に配置したがこれに限らず、減速機の出力である出力軸15や昇降作動部16に設けられても良く、また両方に設けられても良い。さらに光学式に限らず磁気式や静電容量式等であっても良い。
【0030】
また重量検出部12は昇降作動部16に加わる重量を検出できれば良く、減速機と昇降作動部16との間に設けた回転軸の捻れからトルクを検出するような回転型の構造や、モータ部11が受ける反力を検出するフランジ型や鼓型の構造のものであっても良い。さらに歪みゲージ式に限らず磁歪式や静電容量式等であっても良い。
【0031】
本体装置送受信部14が、本体装置2の制御部10の回路基板の一部に配置されている。本体装置送受信部14は、操作指令部20と無線にて通信するための電子回路を有している。
【0032】
操作指令部20は、本体装置2を遠隔にて操作するためのものであって、本実施形態では電波によって通信している。操作指令部20は、内蔵されている電池によって駆動される。操作指令部20は、操作手段として例えばバランス釦22、保持釦23、上昇釦24及び下降釦25を有している。操作の内容詳細については後述する。
【0033】
図3は本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置1の電子回路のブロック構成図である。荷役助力装置1は、本体装置2と操作指令部20とを含んで構成されている。
【0034】
本体装置2の制御部10は本体装置2全体の制御を行っている。本体装置2の制御部10は、モータ部11を駆動する駆動回路を含んでいる。そして本体装置2の制御部10は、重量検出部12から昇降作動部16に加わる重量値を受信し、位置検出部13からモータ部11の回転角の位置値を受信し、本体装置送受信部14と信号の送受信を行う。本体装置送受信部14と本体装置2の制御部10とは有線で繋がっていて、極めて短い時間間隔で高速に信号の送受信を行う。なお制御部10内には、記憶部10aと、演算部10bとが含まれていて、演算部10bは、荷役物リリース手段10cと、バランス手段10dとを含んでいる。また記憶部10aは、制御部10内にあってもよいが、制御部10外であっても良い。
【0035】
本体装置送受信部14は、操作指令部20の操作指令送受信部26と無線にて通信を行う。本体装置送受信部14及び操作指令送受信部26は無線通信を行う電子回路で構成され、電波による送信器と受信器を有する他、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有する場合がある。
【0036】
操作指令制御部21は操作指令部20全体の制御を行っている。操作指令制御部21は各操作手段(操作釦)による操作指令を受けて、操作の指令信号を操作指令送受信部26へ送信する。そして操作指令送受信部26は操作指令制御部21から受信した操作の指令を、本体装置送受信部14へ無線にて送信する。この指令を含んだ信号には、操作指令部20と本体装置2のペアリングを行う操作指令部20の識別情報が付与されている。
【0037】
次いで操作指令部20に設けられている操作手段である各操作釦の役割について説明する。各操作釦は例えばモーメンタリ動作のプッシュスイッチであって、押している期間中はONとなって離すと自己復帰でOFFになる。作業者がバランス釦22を押すと操作指令部20からバランス指令が送信され、本体装置2の制御部10はこれを受信してバランス制御へ移行する。すなわち本体装置2の制御部10は、バランス釦22が押された時、重量検出部12が昇降作動部16に加わる重量値を検出して出力した重量値を記憶部10aにより登録重量として記憶し、その後バランス手段10dによって登録重量と昇降作動部16に加わる重量との差をゼロにする制御値を演算して、モータ部11を制御する。この制御を本発明ではバランス制御と言い、このバランス制御中の係止部B7及び荷役物31の状態をバランス状態と言う。換言すると、本体装置2の制御部10は、登録した重量で生じるリンクチェーン4のテンションと、昇降作動部16検出した重量で生じるリンクチェーン4のテンションとが同じになるように制御値を演算してモータ部11を制御することがバランス制御である。そして作業者がこのバランス制御中に係止部B7や荷役物31に鉛直下向きの外力を加えると、昇降作動部16に加わる重量が大きくなることから、本体装置2の制御部10はこれを登録重量へ近づけるように制御値を演算し、リンクチェーン4を繰り出す方向にモータ部11を制御し、係止部B7及び荷役物31は下降する。一方、作業者がこのバランス制御中に係止部B7や荷役物31に鉛直上向きの外力を加えると、昇降作動部16に加わる重量が小さくなることから、本体装置2の制御部10はこれを登録重量へ近づけるように制御値を演算し、リンクチェーン4を巻き上げる方向にモータ部11を制御し、係止部B7及び荷役物31は上昇する。そして作業者が外力の印加をやめると、重量検出部12が検出する重量が登録重量と等しくなるので係止部B7及び荷役物31は静止した状態となる。なおこの制御値は例えば加速度を含むものである。
【0038】
一方で、作業者が保持釦23を押すと、本体装置2の制御部10は保持指令を受信し、昇降作動部16を現在位置にて保持、すなわち吊り具用フック5及び係止部B7の昇降位置を保つようにモータ部11を制御する。
【0039】
作業者が上昇釦24若しくは下降釦25を押すと、本体装置2の制御部10はこれを受けてモータ部11を制御して、吊り具用フック5を上昇若しくは下降させる。作業者は上昇釦24若しくは下降釦25を連続的に押すことで、モータ部11により吊り具用フック5及び係止部B7を連続的に昇降させることができる。本体装置2が保持状態及びバランス状態いずれにあっても、作業者が上昇釦24若しくは下降釦25を押すと、上昇若しくは下降を行い、押した上昇釦24若しくは下降釦25から手を離すと保持状態に戻る。
【0040】
図4から図11は、作業者が本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置1を用い、荷役物31を扱う一連の作業状態を表した模式図である。また図12及び図13は本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置1の本体装置2の制御部10が実行するフローチャートである。図4から図13を用いて係止部B7及び荷役物31の動きとその時の本体装置2の制御部10が実行する制御の各ステップについて説明する。
【0041】
図4において、レール42は作業構内の天井等に水平方向に設けられた軌道レールである。移動ブロック41はレール42に沿って略水平方向に移動可能な部材であって、吊下げフック3と連結して本体装置2を吊している。したがって移動ブロック41は吊下げフック3以下を水平方向に移動自在にしている。
【0042】
荷役助力装置1の鉛直下方向には、構造物30がある。構造物30は、第1の面30aと第2の面30bを有している。第1の面30aは鉛直方向において第2の面30bよりも低い位置にある。第1の面30aには、荷役物31が置かれている。ここでは第1の面30aに置かれた荷役物31を、第2の面30bへ移動させる作業と制御部10との関連について説明する。
【0043】
図12において、まず荷役助力装置1の電源が入っていない状態にて、作業者が、本体装置2の不図示の電源スイッチをONにすると、本体装置2の制御部10が起動して、本体装置2の制御部10はステップS101を実行して、ステップS102へ進む。本体装置2の制御部10はステップS101にて、昇降作動部16を現在位置にて保持する(保持モード)。本体装置2の制御部10はステップS102にて、上昇釦24若しくは下降釦25が押されたと判断した場合(Yes)は、ステップS103を実行する。本体装置2の制御部10はステップS103にて、昇降作動部16を作動させて係止部B7を上昇若しくは下降させステップS101へ戻って、その位置での保持状態となる。作業者が操作指令部20の上昇釦24若しくは下降釦25を連続的に押し続けると、本体装置2の制御部10はステップS103を継続して吊り具用フック5及び係止部B7を上昇若しくは下降させる。
【0044】
本体装置2の制御部10はステップS102にて、上昇釦24若しくは下降釦25が押されていないと判断した場合(No)は、ステップS104へ進む。
【0045】
本体装置2の制御部10はステップS104にて、バランス釦22が押されていないと判断すると(No)、ステップS101へ戻って保持状態を保つ。本体装置2の制御部10はステップS104にて、バランス釦22が押されたと判断すると(Yes)、ステップS105へ進む。すなわち作業者が、荷役物31が吊下げられていない状態、すなわち荷役物無し状態で、バランス釦22を押すと、本体装置2の制御部10はステップS105にて、重量検出部12に加わる重量値W1を受信して、これを登録値として記憶し、ステップS106へ進む。この重量値W1が荷役物無しの重量値であって、係止部B7に荷役物31が係止されていない時に重量検出部12が検出する重量、すなわち係止部B7の重量である。
【0046】
本体装置2の制御部10はステップS106にて、記憶部10aにて記憶されている荷役物無しの登録値を基に荷役物無しバランス制御を開始し(バランスステップ)、ステップS107へ進む。すなわち制御部10内のバランス手段10dが、このバランスステップを実行する。この状態では、作業者がグリップ6を掴んで係止部B7を自在に昇降できる。この時の状態が図4である。なお繰出し値Lとは、本体装置2の底面Bから係止部B7の先端までの鉛直方向の距離を指す。そして作業者は、荷役物31を係止部B7へ係止するまでは、係止部B7の爪7cを開放の状態としておく。
【0047】
本体装置2の制御部10のステップS107は、バランス釦22が押されたと判断すると(Yes)、新たな重量値を重量検出部12から受信して記憶するステップS105へ戻る。一方本体装置2の制御部10のステップS107は、バランス釦22が押されていないと判断すると(No)、ステップS108へ進む。
【0048】
本体装置2の制御部10のステップS108は、保持釦23が押されたと判断すると(Yes)、ステップS101へ戻って保持状態になる。一方本体装置2の制御部10のステップS108は、保持釦23が押されていないと判断すると(No)、ステップS109へ進む。
【0049】
本体装置2の制御部10のステップS109は、上昇釦24が押されたと判断すると(Yes)、ステップS110へ進み係止部B7の上昇を行い、ステップS101へ戻って保持状態になる。一方本体装置2の制御部10のステップS109は、上昇釦24が押されていないと判断すると(No)、ステップS111へ進む。
【0050】
本体装置2の制御部10のステップS111は、下降釦25が押されていないと判断すると(No)、ステップS106へ戻って引き続きバランス制御を継続する。
【0051】
図5は、本体装置2の制御部10のステップS106の実行中を示しており、作業者はグリップ6を掴んで係止部B7を荷役物31の上方近傍まで下降させた時の状態である。
【0052】
次いで図6に示すように、作業者はハンドル7bを回して爪7cを荷役物31の段差部31aへ係止させることで係止部B7と荷役物31とを連結する。
【0053】
そして作業者は、上昇釦24を押し続け係止部B7と荷役物31とを上昇させる。この時、本体装置2の制御部10は、ステップS109のYesの判断からステップS110を実行して、ステップS101へ進み、位置保持状態になる。そこで作業者は、バランス釦22を押すと、本体装置2の制御部10は、ステップS105にて係止部B7と荷役物31との重量の総和を記憶部10aに登録し、ステップS106を実行する。したがって係止部B7と荷役物31とは本体装置2に吊下げられてバランス状態となるため、作業者は係止部B7又は荷役物31に軽微な鉛直方向の外力を印加することで自在に昇降させることができる(図7参照)。
【0054】
作業者は、例えばグリップ6を掴んで、図8に示すように荷役物31を移動先の第2の面30bの鉛直上方に移動することができる。そして作業者が、下降釦25を押すと、本体装置2の制御部10はステップS111で、下降釦25が押されたと判断するので(Yes)、ステップS112へ進む。なおこの下降釦25の押下による指令が、荷役物リリース指令に該当する。また荷役物リリース指令は、下降釦25の押下に限らず、別途釦を設けても良いし、他の釦との同時押下などの変形であっても良い。
【0055】
本体装置2の制御部10はステップS112で、アシスト下降制御を開始する。アシスト下降制御は、通常の下降釦25による下降動作を行うのではなく、係止部B7や荷役物31に鉛直上向きの外力が加わると、下降速度が減少することから、本体装置2の制御部10はこの時、係止部B7及び荷役物31へのアシスト量を減少させて、係止部B7及び荷役物31を持ち上げる力を減少させる。ここで係止部B7や荷役物31に鉛直上向きの外力が加わるという現象は荷役物31が第2の面30bに当接し始める、すなわち着地し始めることを意味している。
【0056】
本体装置2の制御部10はステップS112で、予め定めた速度で係止部B7及び荷役物31を下降させている時に、ステップS113で、係止部B7及び荷役物31の下降速度が所定の速度以下になったと判断すると(Yes)、ステップS114へ進み、係止部B7及び荷役物31を引き上げるアシスト量を減少させ、ステップS115へ進む。本体装置2の制御部10はステップS113で、係止部B7及び荷役物31の下降速度が所定の速度を超えている場合には(No)、ステップS115へ進む。
【0057】
本体装置2の制御部10はステップS115で、係止部B7及び荷役物31の下降距離が制限値を超えた(Yes)と判断した場合は、ステップS101へ戻って位置保持となる。この制限値は、例えば荷役助力装置1のリンクチェーン4の繰り出しのリミット値や、装置管理者によって予め定める値である。係止部B7及び荷役物31の下降距離は、本体装置2の制御部10が逐次位置検出部13からの位置値の信号を受信して容易に演算して得ることができる。
【0058】
本体装置2の制御部10はステップS115で、係止部B7及び荷役物31の下降距離が制限値を超えていないと判断した場合は(No)、ステップS116へ進む。
【0059】
本体装置2の制御部10はステップS116で、アシスト量と係止部B7重量との差が所定値よりも大きいと判断すると(No)、アシスト下降を継続する。本体装置2の制御部10はステップS116で、アシスト量と係止部B7の重量との差が所定値以下と判断すると(Yes)、ステップS200へ進む。このステップS116での判断ための所定値は、係止部B7の形状や重量によって管理者などによって決めることができるが、例えば係止部B7の重量の1%からゼロに近い値であることが好ましい。
【0060】
図13は、ステップS200の詳細を示したフローチャートである。本体装置2の制御部10はステップS201で、現在のリンクチェーン(吊索)4の繰り出し位置すなわち係止部B7及び荷役物31の位置を、位置検出部13から受信して記憶部10aに記憶して、ステップS202へ進む。
【0061】
本体装置2の制御部10はステップS202で、昇降作動部16を駆動してリンクチェーン4を所定の量繰り出しを行い、ステップS203へ進む。
【0062】
本体装置2の制御部10はステップS203で、現在のリンクチェーン4の位置を所定時間n保持し、ステップS204へ進む。この保持時間は、作業内容に合わせて作業者や荷役助力装置1の管理者が任意に設定できる。
【0063】
本体装置2の制御部10はステップS204で、重量検出部12から受信した重量値を基にしてバランス制御を開始し、ステップS205へ進む。なお本実施形態では、本体装置2の制御部10はステップS203に続いて所定時間n経過後、ステップS204へ進むが、この期間に保持釦23の割り込み処理を許可して保持時間の延長を行っても良い。これは例えば何かしらのトラブルで、所定時間n内に係止部B7から荷役物31を開放することが間に合わないなどに対応するためである。
【0064】
本体装置2の制御部10はステップS205で、アシスト上昇制御を開始する。アシスト上昇制御は、通常の上昇釦24による上昇動作を行うのではなく、係止部B7に鉛直下向きの外力が加わると、上昇速度が減少することから、本体装置2の制御部10はこの時、係止部B7に対するアシスト量を増加させて、係止部B7を持ち上げる力を増加させる。ここで係止部B7に鉛直下向きの外力が加わるという現象は、リンクチェーン4の緩みがなくなり、リンクチェーン4が係止部B7を吊り上げ始めることを意味している。
【0065】
本体装置2の制御部10はステップS205で、予め定めた速度で係止部B7を上昇させている時に、ステップS206で、係止部B7の上昇速度が所定の速度以下になったと判断すると(Yes)、ステップS207へ進み、係止部B7を引き上げるアシスト量を増加させ、ステップS208へ進む。本体装置2の制御部10はステップS206で、係止部B7の上昇速度が所定の速度を超えている場合には(No)、ステップS208へ進む。
【0066】
本体装置2の制御部10はステップS208で、リンクチェーン4の繰り出し位置が所定の位置に到達したと判断したら(Yes)、ステップS210へ進む。
【0067】
本体装置2の制御部10はステップS208で、リンクチェーン4の繰り出し位置が所定の位置に未だ到達していないと判断したら(No)、ステップS209へ進む。
【0068】
本体装置2の制御部10はステップS209で、アシスト量と係止部B7重量との差が所定値よりも大きいと判断すると(No)、アシスト上昇を継続する。本体装置2の制御部10はステップS209で、アシスト量と係止部B7の重量との差が所定値以下と判断すると(Yes)、ステップS210へ進む。このステップS209での判断ための所定値は、係止部B7の形状や重量によって管理者などによって決めることができるが、例えば係止部B7の重量の1%からゼロに近い値であることが好ましい。
【0069】
本体装置2の制御部10はステップS210で、係止部B7の重量をバランス制御に適用してステップS200を終了し、ステップS106へ進む。
【0070】
なお本体装置2の制御部10が実行するバランスステップとは、ステップS104のYes判断によって開始されたステップS105からステップS106までを指す。また本体装置2の制御部10が実行する荷役物リリースステップとは、ステップS111のYes判断によって開始されたステップS112からステップS200を指す。
【0071】
図14は本発明の第1の実施形態に係る荷役助力装置1において、横軸を時間軸として、荷役助力装置1の制御モードと、係止部B7の繰出し値、制御に使用する登録重量及び検出重量の遷移との関係を模式的に示したチャートの例である。図14は、上からバランス釦22、上昇釦24、下降釦25の押下状態、制御部10の制御モード、係止部B7の繰出し値(図4図11に合わせ縦軸下向きをプラスとしている。)、記憶部10aが登録記憶している登録値、重量検出部12が検出して制御部10が受信した検出重量をそれぞれ示している。
【0072】
次に図4から図11で示された作業の状態と、図12図13のフローチャートと、図14のチャートとを参照して説明する。
【0073】
まず荷役助力装置1の電源が入っていない状態にて、作業者が、本体装置2の不図示の電源スイッチをONにすると、本体装置2の制御部10が起動して、本体装置2の制御部10はステップS101を実行して、位置保持を実行する。したがって荷役助力装置1のモードは保持モードとなる。この時、係止部B7には何も係止されていない状態であるので、作業者が外力を加えなければ重量検出部12が重量値W1を検出する。
【0074】
次いで作業者がバランス釦22を押すと(時刻t1)、本体装置2の制御部10はステップS104でYesへ進み、ステップS105で重量検出部12が検出する重量値W1を登録値として記憶部10aは記憶する。なお本実施形態では、荷役助力装置1の電源が切れた時の登録値が再起動時の登録値として引き継がれるため、起動時から登録値がW1となっている。
【0075】
本体装置2の制御部10は時刻t1から荷物無しバランスモードとなる。作業者はグリップ6を持って、係止部B7の繰出し値Lが、繰出し値L1からL7まで係止部B7を下降させようとする。すると重量検出部12に加わる重量値は増加するので、本体装置2の制御部10は、重量検出部12が検出する重量値がW1になるように係止部B7を鉛直下方向に送り出すので、検出重量はおおよそW1となる。
【0076】
作業者は、係止部B7を繰り出し値L7まで降下させ、係止部B7を荷役物31の鉛直上付近に移動させる(時刻t2)(図5)。そして作業者はハンドル7bを操作して、荷役物31を係止部B7に係止させる(図6)。さらにそして作業者は上昇釦24を連続的に押し始めて(時刻t3)、係止部B7及び荷役物31が第1の面30aから離れるまで上昇させ、上昇釦24を押すのをやめると、本体装置2の制御部10はその繰出し値L6で保持状態となる。
【0077】
次いで作業者はバランス釦22を押すと(時刻t4)、本体装置2の制御部10はステップS104でYesへ進み、ステップS105で重量検出部12が検出する重量値W2を登録値として記憶部10aは記憶する。そして本体装置2の制御部10はステップS106でこの登録値を制御値として用いて係止部B7及び荷役物31に対してバランス制御を実行する。
【0078】
作業者は、係止部B7及び荷役物31の上下移動及び水平方向の移動が自在となるので図8に示すように、係止部B7及び荷役物31を移動目標位置である第2の面30bの鉛直上方へ移動することができる。
【0079】
次いで作業者は下降釦25を押すと(時刻t5)、本体装置2の制御部10はステップS111でYesへ進み、ステップS112のアシスト下降動作を開始する。すると徐々に係止部B7及び荷役物31は下降していくが、やがて荷役物31が第2の面30bに接し始める(時刻t6)ので、本体装置2の制御部10はアシスト量を減少させ、ステップS116のアシスト量と係止部重量の差が所定値以下になるまで下降を継続する。そして本体装置2の制御部10はステップS116でアシスト量と係止部重量の差が所定値以下になった時刻t7で、ステップS201、S202を実行して、所定の量だけ係止部B7及び荷役物31を下降させる。次いで本体装置2の制御部10はステップS203で、現在位置を所定時間n保持する(時刻t7からt8)。作業者はこの所定時間n内にハンドル7bを操作して、荷役物31を係止部B7から開放する(図10)。
【0080】
本体装置2の制御部10は所定時間n経過後に自動的にステップS204を実行し、アシスト量と係止部重量の差が所定値以下になった時点で(ステップS209でYes)、係止部B7の重量値W1をバランス制御の制御値として用いて(ステップS210)、以後荷役物なしバランス制御を実行する。
【0081】
以上説明したように本発明の荷役助力装置を制御の一つの手段である荷役物リリース手段によって、操作釦を押す頻度を低減し、作業者の操作性の向上を図った荷役助力装置及びその制御方法を提供できる。
【0082】
図15は、本発明の第2の実施形態に係る荷役助力装置と係止部との斜視構成図である。第2の実施形態に係る荷役助力装置は第1の実施形態に係る荷役助力装置とハードウエアではほぼ同じものである。一方係止部は、吊り具用フック(係止部A)5と係止部C8とで構成されている。係止部C8は、荷役物31を係止するものである。係止部C8は、吊下げ軸8aと、軸8bと、アーム8cと、レバー8dと、板8eとを有している。吊下げ軸8aと、軸8bとで、アーム8cは制限された範囲で回転自在となっている。吊下げ軸8aは、吊り具用フック(係止部A)5に吊下げられる軸である。アーム8cは略L字型で、その先端部には板8eが制限された範囲で回転自在となっている。板8eは、荷役物32の側面に当接して、荷役物32を保持することができる。板8eの荷役物32が当たる面には、滑り止め処理が施されている。レバー8dは、アーム8cの回転を止めて、2つの板8eの間隔を一定に保つための部材である。
【0083】
したがって、係止部C8によって荷役物32を係止する手順は以下のようにして行うことができる。まず作業者はレバー8dの切り込み部をアーム8cのピンにはめ込んで、2つの板8eが荷役物32の幅よりも広い状態でロックしておく。次いで係止部C8を荷役物32の上方から降ろして行き、2つの板8eが荷役物32に当接できる状態でレバー8dによるアーム8cのロックを外す。そして吊下げ軸8aを本体装置2によって上昇させると、次第に2つの板8eが荷役物32を挟持し、係止部C8は荷役物32を堅く係止することができる。この状態では荷役物32の自重により荷役物32は係止部C8から外すことは困難となる。なお吊り具用フック5に直接的に荷役物32を係止する場合もあり、この時には吊り具用フック5が係止部に相当する。また吊り具用フック5と係止部C8を合わせて係止部としても良い。
【0084】
一方、係止部C8から荷役物32を開放する手順は以下のようにして行うことができる。作業者は荷役物32を床に接地させ、次いでアーム8cが荷役物32から離れる位置まで係止部C8を降下させる。そして作業者はさらに、レバー8dの切り込み部がアーム8cのピンにはめ込める位置まで係止部C8を降下させて、レバー8dの切り込み部をアーム8cのピンにはめ込む。そして作業者は2つの板8eが荷役物32の幅よりも広くした状態でロックしたまま係止部C8全体を上昇させて、係止部C8から荷役物32を外す作業は完了となる。
【0085】
ここで荷役助力装置1の使用において作業を円滑にするため、作業者がバランス釦22を押した時に、制御部(本体装置制御部)10は、重量検出部12から得た重量値が設定値以上の場合にはその時の重量値を基にバランス制御を行うが、設定値未満であった場合は係止部C8を含めた係止部の重量を基にバランス制御を行うという方法がある。
【0086】
というのも作業者が扱うのは、基本的に本体装置2に吊下げられているのが係止部C8のみか、係止部C8と荷役物32とであるかである。よって作業者が係止部C8に鉛直方向の成分の外力を印加した状態や、リンクチェーン(吊索)4が係止部C8を吊っておらず弛んでいる状態で作業者がバランス釦22を押すと、重量値を基に制御部(本体装置制御部)10がバランス制御を実行するため、その後バランス制御が作業者の思い通りに行われないことになる。ゆえに制御部(本体装置制御部)10は、重量検出部12から得た重量値が設定値以上の場合にはその時の重量値を基にバランス制御を行うが、予め設定登録してある設定値未満であった場合は係止部の重量を基にバランス制御を行うものである。
【0087】
そこでこの制御が適用されている場合、この係止部C8から荷役物32を開放する作業においては注意すべき点がある。制御部(本体装置制御部)10のバランス制御中に作業者が荷役物32を単に床に接地させた状態では、上述のように係止部C8から荷役物32を開放することができないので、係止部C8をさらに降下させなければならない。しかしながら本体装置2の制御部10は、荷役物32と係止部C8との重量の和でバランス制御を行っているので、荷役物32が既に床に接地していてさらに係止部C8を降下させようとすると、荷役物32を通して伝わってくる床からの抗力によって相当量の力が必要となる。そこで作業者は、一度保持釦23を押して制御部10を保持状態にした後、下降釦25によって係止部C8を荷役物32が開放できる位置まで手動操作で下降させる。この時降下させる距離によってはリンクチェーン(吊索)4が弛んだ状態にもなる。そして作業者がバランス釦22を押して、係止部C8のみでの昇降動作をさせようとすると、重量検出部12から得た重量値が設定値未満であるため、制御部10は係止部C8の重量を基にバランス制御を行うので、実際にリンクチェーン(吊索)4に加わっている重量との乖離が生じ、係止部C8は急上昇してしまう。特に係止部C8の重量が大きい場合にはこの急上昇が顕著なものとなり、以下に説明する本発明はこれを解決するものである。
【0088】
図16は、本発明の第2の実施形態に係る荷役助力装置1の電子回路のブロック構成図である。基本第2の実施形態は、第1の実施形態と同じ構成であるが、制御部(本体装置制御部)10の演算部は、巻上げアシスト手段10eを含んでいる。
【0089】
図17は、本発明の第2の実施形態に係る荷役助力装置1の制御部10が実行するステップのフローチャートである。以下図17を基に、制御部(本体装置制御部)10が行う制御について説明する。
【0090】
図17において、本体装置2の制御部10の実行するステップS301からステップS305までと、ステップS306からステップS309は、第1の実施形態と同様である。ただし、本体装置2の制御部10の実行するステップS304は、作業者が押すバランス釦22によってYesへ進むものの、その後のステップS401の判断によって異なる動作を行う。本体装置2の制御部10は、ステップS305を行った後に、ステップS401を実行する。本体装置2の制御部10は、ステップS401にて、ステップS305で記憶した重量値が、予め作業者若しくは管理者などによって設定された設定値以上であれば(No)、ステップS306へ進む。この設定値は、荷役物32の重量と、係止部C8の重量を勘案して設定される。例えば荷役物32の重量が80kg、係止部C8の重量が20kgの場合は、設定値を23kgとすることができる。したがって本体装置2の制御部10が実施するステップS401は、作業者がステップS304でバランス釦22を押した時に、本体装置2が吊るしているのが、係止部C8とこれに係止されている荷役物32なのか、係止部C8のみなのかを判断している。すなわち本体装置2の制御部10の実行するステップS306は、荷役物が吊下げられていて、係止部と荷役物の和の重量でのバランス制御を実行する。
【0091】
本体装置2の制御部10は、ステップS401にて、ステップS305で記憶した重量値が、予め作業者若しくは管理者などによって設定された設定値未満であれば(Yes)、ステップS402へ進む。
【0092】
本体装置2の制御部10は、ステップS402にて、巻上げアシスト制御を実行する。このステップS402、ステップS407からステップS410までが、巻上げアシストステップである。この巻上げアシスト制御とは、登録してある係止部C8の重量に若干の値を加算したものを用いたものである。係止部C8に外力が印加されず、本体装置2に吊下げられた状態では、重量検出部12が検出する重量は係止部C8の正味の重量であるから、巻上げアシスト制御を行うとその差分で係止部C8は巻上げられる。すなわち本体装置2の制御部10は、作業者がバランス釦22を押した事に対して、ステップS305で記憶した重量値が予め作業者若しくは管理者などによって設定された設定値未満であれば、これは巻上げアシスト指令を受けたと解釈し、巻上げアシスト制御を実行する。本実施形態では、巻上げアシスト制御を行う巻上げアシスト指令が、バランス釦22によって予め設定された条件により行うことができるが、これに限らず専用の釦を設けても良いし、バランス釦22と上昇釦24との同時押しなど、種々の変形によって行われても良い。なお本体装置2の制御部10が実行するステップS403からステップS406はいわゆる割り込み処理であって、それぞれの釦の指令を基に各ステップへ移行する。
【0093】
本体装置2の制御部10は、巻上げアシスト制御を実行中において、予め定めた速度で係止部C8を上昇させている時に、ステップS407で、係止部C8の上昇速度が所定の速度以下になったと判断すると(Yes)、ステップS408へ進み、係止部C8を引き上げるアシスト量を増加させ、ステップS409へ進む。本体装置2の制御部10はステップS407で、係止部C8の上昇速度が所定の速度を超えている場合には(No)、ステップS409へ進む。
【0094】
本体装置2の制御部10はステップS409で、リンクチェーン4の繰り出し位置が所定の位置に到達したと判断したら(Yes)、ステップS411へ進む。
【0095】
本体装置2の制御部10はステップS409で、リンクチェーン4の繰り出し位置が所定の位置に未だ到達していないと判断したら(No)、ステップS410へ進む。
【0096】
本体装置2の制御部10はステップS410で、アシスト量と係止部C8の重量との差が所定値よりも大きいと判断すると(No)、巻上げアシスト制御を継続する。本体装置2の制御部10はステップS410で、アシスト量と係止部C8の重量との差が所定値以下と判断すると(Yes)、ステップS411へ進む。このステップS409での判断ための所定値は、係止部C8の形状や重量によって管理者などによって決めることができる。
【0097】
本体装置2の制御部10はステップS411で、係止部C8の重量をバランス制御に適用して、ステップS412へ進む。本体装置2の制御部10が実行するステップS412からステップS414はいわゆる割り込み処理であって、それぞれの釦の指令を基に各ステップへ移行する。
【0098】
図18から図20は、本発明の第2の実施形態に係る荷役助力装置1を用い、作業者が荷役物31を扱う一部の作業状態を表した模式図である。図18から図20では、図15に示した係止部C8を用いた作業を対象としている。
【0099】
図18は、荷役物32が係止部C8に保持されて、リンクチェーン(吊索)4を介して本体装置2に吊下げられた状態である。そして本体装置2は、作業者が係止部C8若しくは荷役物32に軽微な鉛直方向の外力を加えることで鉛直方向に移動ができるバランス制御を実行中である(図17のステップS306)。この時の係止部C8の繰り出し値は例えばL8である。
【0100】
図19は、荷役物32が係止部C8に保持されたまま、リンクチェーン(吊索)4を介して本体装置2に吊下げられた状態ではあるが、荷役物32が第1の面30aに接地した状態である。この時の係止部C8の繰り出し値は例えばL9であってL9>L8の関係である。この状態では荷役物32を係止部C8から開放することができないので、例えば作業者は、保持釦23を押して係止部C8を保持状態にして、さらに下降釦25を押し続けて係止部C8を下降させた状態が図20である。係止部C8は荷役物32の上面にアーム8cの部分で接していて、板8eは荷役物32から離れている。この時、リンクチェーン(吊索)4は弛んだ状態で、係止部C8の繰り出し値は例えばL10>L9である。この時、アーム8cはレバー8dによって回転が規制できる位置にあるため、作業者はレバー8dによってアーム8cを開放状態に固定することができる。
【0101】
そして作業者は、バランス釦22を押すと(ステップS304でYes)、本体装置2の制御部10はステップS305で、現在の重量値を記憶し、ステップS401へ進む。本体装置2の制御部10はステップS401で、現在の重量値が登録済みの係止部C8の重量よりも小さいと判断して(Yes)、ステップS402へ進む。そして本体装置2の制御部10は、巻上げアシスト制御を実行するので、次第に係止部C8はリンクチェーン(吊索)4に引っ張り上げられて、吊り具用フック(係止部A)5に吊下げられる状態に達する。この時、本体装置2の制御部10はステップS410で、実行しているアシスト量が、係止部C8と略同じになったと判断して、この係止部C8の登録重量でバランス制御を実行する(ステップS411)。なおこのステップS411の係止部の登録重量でバランス制御の実行はこれに限らず、係止部の重量に若干の重量を加算して制御を実行しても良い。その場合は、作業者が係止部に外力を印加しなければ係止部は設定された速度で上昇する。そして、本体装置2の制御部10が、リンクチェーン(吊索)4の繰り出し値が所定の値に到達した場合に係止部重量でバランス制御を開始するようにしても良い。この時、作業者が係止部に外力を印加しなければ係止部は静止した状態となる。
【0102】
なお第2の実施形態では、係止部C8を用いて説明したがこれに限らず、荷役物に吊下げられる部位があって、直接吊り具用フック(係止部A)5によって吊下げられる場合においても適用が可能である。その際は吊り具用フック(係止部A)5の重量を基に演算が行われ巻上げアシスト制御が実行される。
【0103】
以上説明したように本発明の荷役助力装置を制御の一つの手段である巻上げアシスト手段によって、円滑な操作を可能にしている。例えば作業者が、荷役物を着地させ、さらに係止部を下降させ、一度その位置を保持させた後下降釦などで係止部を下降させてリンクチェーンが弛んだ状態で荷役物を係止部から外し、持ち上げる作業を開始する際に効果的である。特に係止部の重量が大きい場合には係止部の急上昇を抑制できる。
【0104】
本発明を好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の活用例として、荷役物の移動を助力して行う荷役機械への適用が可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 :荷役助力装置
2 :本体装置
3 :吊下げフック
4 :リンクチェーン(吊索)
5 :吊り具用フック(係止部A)
6 :グリップ
7 :係止部B
7a :アイボルト
7b :ハンドル
7c :爪
7d :ガイド板
8 :係止部C
8a :吊下げ軸
8b :軸
8c :アーム
8d :レバー
8e :板
10 :制御部(本体装置制御部)
10a :記憶部
10b :演算部
10c :荷役物リリース手段
10d :バランス手段
10e :巻上げアシスト手段
11 :モータ部
12 :重量検出部
13 :位置検出部
14 :本体装置送受信部
15 :出力軸
16 :昇降作動部
17 :チェーン収納部
20 :操作指令部
21 :操作指令制御部
22 :バランス釦
23 :保持釦
24 :上昇釦
25 :下降釦
26 :操作指令送受信部
30 :構造物
30a :第1の面
30b :第2の面
31 :荷役物
31a :段差部
32 :荷役物
41 :移動ブロック
42 :レール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20