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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148134
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器、及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/22 20060101AFI20241009BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20241009BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20241009BHJP
   B65D 1/40 20060101ALI20241009BHJP
   B65D 1/48 20060101ALI20241009BHJP
   B65D 1/46 20060101ALI20241009BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B29C49/22
B65D1/00 120
B65D1/02 110
B65D1/40 200
B65D1/48 ZBP
B65D1/46 ZAB
B29C49/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191724
(22)【出願日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2023060970
(32)【優先日】2023-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕司
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 宏明
【テーマコード(参考)】
3E033
4F208
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA14
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA17
3E033BA18
3E033BA21
3E033BA22
3E033BA26
3E033BA30
3E033BB08
3E033CA02
3E033CA03
3E033DA03
3E033DB01
3E033FA03
4F208AA50
4F208AG03
4F208AG07
4F208AG23
4F208AG25
4F208AG26
4F208AH55
4F208LA01
4F208LA08
4F208LB01
4F208LB22
4F208LG04
4F208LG06
4F208LG16
4F208LG22
4F208LG27
4F208LJ09
(57)【要約】
【課題】回収された合成樹脂製容器を原料化し、これを再利用して新たな合成樹脂製容器を製造するにあたり、特定の部位において安定した物性を有する合成樹脂製容器を提供する。
【解決手段】合成樹脂製容器は、回収された合成樹脂製容器から得られるリサイクル樹脂材料からなり、内容物の注入出口となる口部と、収容部とを含み、前記口部は、蓋体が装着された際に、前記口部の内周面と前記蓋体に設けられたインナーリングのシール面とが密着することで、密封されるように構成され、前記口部に、補強樹脂からなる層が設けられている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機からダイヘッドを介して押し出されたパリソンを、一対の分割金型間に挟み込み、前記パリソン内にブローエアーを吹き込んで、口部および収容部を備える所定の容器形状にブロー成形するにあたり、
回収された合成樹脂製容器から得られるリサイクル樹脂材料を、前記ダイヘッド内に設けられたリサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口から吐出させてパリソンを形成するとともに、
所定の領域において、補強樹脂材料を、前記リサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口から吐出される樹脂材料の内周側に吐出されるように前記ダイヘッド内に設けられた補強樹脂用ダイヘッド吐出口から吐出させて、前記パリソンの内周側に補強樹脂からなる層を部分的に形成し、
前記補強樹脂からなる層に対応する部位に前記口部が成形されるように前記パリソンを前記分割金型間に挟み込んでブロー成形を行い、前記口部の内周面を前記補強樹脂により形成することを特徴とする合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
押出機からダイヘッドを介して押し出されたパリソンを、一対の分割金型間に挟み込み、前記パリソン内にブローエアーを吹き込んで、口部および収容部を備える所定の容器形状にブロー成形するにあたり、
回収された合成樹脂製容器から得られるリサイクル樹脂材料を、前記ダイヘッド内に設けられたリサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口から吐出させてパリソンを形成するとともに、
所定の領域において、補強樹脂材料を、前記リサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口から吐出される樹脂材料の外周側に吐出されるように前記ダイヘッド内に設けられた補強樹脂用ダイヘッド吐出口から吐出させて、前記パリソンの外周側に補強樹脂からなる層を部分的に形成し、
前記補強樹脂からなる層に対応する部位に前記口部が成形されるように前記パリソンを前記分割金型間に挟み込んでブロー成形を行い、次いで前記口部の内周面側を切削して前記補強樹脂からなる層の少なくとも一部を前記口部の内周面に露出させ、前記口部の内周面の少なくとも一部を前記補強樹脂により形成することを特徴とする合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項3】
前記補強樹脂材料は、再生処理を経ていないバージン材である、請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項4】
前記補強樹脂材料は、サックバック制御により吐出が制御されている、請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項5】
前記補強樹脂材料を、前記ダイヘッド内に設けられ、前記リサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口から吐出されるリサイクル樹脂材料の外周側に吐出されるように配置された第三のダイヘッド吐出口からも吐出させて、前記パリソンの外周側に補強樹脂からなる層を部分的に形成する、請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項6】
前記補強樹脂材料を、前記ダイヘッド内に設けられた前記補強樹脂用ダイヘッド吐出口から、複数回吐出させて、前記パリソンに補強樹脂からなる層を部分的に2か所以上形成する、請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
【請求項7】
回収された合成樹脂製容器から得られるリサイクル樹脂材料からなる合成樹脂製容器であって、
内容物の注入出口となる口部と、収容部とを含み、
前記口部は、蓋体が装着された際に、前記口部の内周面と前記蓋体に設けられたインナーリングのシール面とが密着することで、密封されるように構成され、
前記口部に、補強樹脂からなる層が設けられていることを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項8】
前記口部の前記内周面の少なくとも一部は、補強樹脂により形成されていることを特徴とする請求項7に記載の合成樹脂製容器。
【請求項9】
前記補強樹脂からなる層は、再生処理を経ていないバージン材から形成されている、請求項7又は8に記載の合成樹脂製容器。
【請求項10】
前記収容部の外周面に、補強樹脂からなる層が部分的に設けられている、請求項7又は8に記載の合成樹脂製容器。
【請求項11】
前記収容部の内周面に、補強樹脂からなる層が部分的に設けられている、請求項7又は8に記載の合成樹脂製容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製容器、及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製の容器は、各種の用途に広く利用されている。近年にあっては、社会的な要請により、使用済みの廃棄された容器を回収し、これをリサイクル材料として再利用して新たな合成樹脂製の容器を製造するリサイクル技術が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、廃棄された熱可塑性樹脂製包装用容器を破砕・粗砕して小片にし、得られた小片に衝撃摩砕力を付加して樹脂材料と付着物を分離して、樹脂材料を整粒する工程を含む、廃棄樹脂製包装用容器の再利用(リサイクル)に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-220721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、廃棄された容器を回収し、その回収製品を原料とする樹脂材料から新たなリサイクル容器を製造する循環型のリサイクル技術にあっては、多様な回収製品が混在することに起因して、リサイクル容器に特有の物性低下が認められる。また、回収された後に分離工程や洗浄工程に供されたリサイクル樹脂材料であっても、リサイクル原料に残存する異物、例えば樹脂の劣化物やコゲ、さらに、金属、砂、顔料や充填剤等が混入してしまうことがある。そのため、再生されたリサイクル容器においては、嵌合部の密着性(シール性)が低下したり、衝撃強度が低下して落下時に破損しやすくなるなど、様々な問題が生じる虞がある。また一方では、リサイクル材料を高い配合で用いてリサイクル容器を製造することが求められている。
【0006】
そこで、本発明者らは、回収された合成樹脂製の容器を原料化し、これを再利用して新たな合成樹脂製の容器(リサイクル容器)を製造するにあたり、上記の如き問題を解消するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法は、押出機からダイヘッドを介して押し出されたパリソンを、一対の分割金型間に挟み込み、前記パリソン内にブローエアーを吹き込んで、口部および収容部を備える所定の容器形状にブロー成形するにあたり、回収された合成樹脂製容器から得られるリサイクル樹脂材料を、前記ダイヘッド内に設けられたリサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口から吐出させてパリソンを形成するとともに、所定の領域において、補強樹脂材料を、前記リサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口から吐出される樹脂材料の内周側に吐出されるように前記ダイヘッド内に設けられた補強樹脂用ダイヘッド吐出口から吐出させて、前記パリソンの内周側に補強樹脂からなる層を部分的に形成し、前記補強樹脂からなる層に対応する部位に前記口部が成形されるように前記パリソンを前記分割金型間に挟み込んでブロー成形を行い、前記口部の内周面を前記補強樹脂により形成する方法としてある。
【0008】
また、本発明に係る合成樹脂製容器の製造方法は、押出機からダイヘッドを介して押し出されたパリソンを、一対の分割金型間に挟み込み、前記パリソン内にブローエアーを吹き込んで、口部および収容部を備える所定の容器形状にブロー成形するにあたり、回収された合成樹脂製容器から得られるリサイクル樹脂材料を、前記ダイヘッド内に設けられたリサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口から吐出させてパリソンを形成するとともに、所定の領域において、補強樹脂材料を、前記リサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口から吐出される樹脂材料の外周側に吐出されるように前記ダイヘッド内に設けられた補強樹脂用ダイヘッド吐出口から吐出させて、前記パリソンの外周側に補強樹脂からなる層を部分的に形成し、前記補強樹脂からなる層に対応する部位に前記口部が成形されるように前記パリソンを前記分割金型間に挟み込んでブロー成形を行い、次いで前記口部の内周面側を切削して前記補強樹脂からなる層の少なくとも一部を前記口部の内周面に露出させ、前記口部の内周面の少なくとも一部を前記補強樹脂により形成する方法としてある。
【0009】
また、本発明に係る合成樹脂製容器は、回収された合成樹脂製容器から得られるリサイクル樹脂材料からなる合成樹脂製容器であって、内容物の注入出口となる口部と、収容部とを含み、前記口部は、蓋体が装着された際に、前記口部の内周面と前記蓋体に設けられたインナーリングのシール面とが密着することで、密封されるように構成され、前記口部に、補強樹脂からなる層が設けられている構成としてある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回収された合成樹脂製の容器を原料化し、これを再利用して新たな合成樹脂製の容器を製造するにあたり、特定の部位において安定した物性を有する合成樹脂製容器及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の一例に係る合成樹脂製の容器の概略を示す説明図である。
図2】本実施形態の一例に係る合成樹脂製の容器の要部拡大断面図である。
図3】本実施形態の一例に係る合成樹脂製の容器をブロー成形するためのパリソンの要部拡大断面図である。
図4】本発明に係る合成樹脂製の容器の製造方法を実施するための、パリソン成形装置の一例の概略を示す説明図である。
図5】本実施形態の他の一例に係る合成樹脂製の容器の概略を示す説明図である。
図6】本実施形態のさらに他の一例に係る合成樹脂製の容器の要部拡大断面図である。
図7】本実施形態のさらに他の一例に係る合成樹脂製の容器をブロー成形するためのパリソンの要部拡大断面図である。
図8】本発明に係る合成樹脂製の容器の製造方法を実施するための、パリソン成形装置の他の一例の概略を示す説明図である。
図9】本発明に係る合成樹脂製の容器の製造方法を実施するための、パリソン成形装置のさらに他の一例の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る合成樹脂製の容器1の概略を示す説明図である。
本実施形態の容器1は、回収された合成樹脂製容器から得られるリサイクル樹脂材料からなる、いわゆるリサイクルボトルである。
【0014】
図1に示す容器1は、内容物の注入出口となる口部2と、内容物が収容される収容部3を含む。収容部3は、その高さ方向上端側の部位が口部2に向かって縮径して口部2の下端に連接する胴部4と、胴部4の高さ方向下端側を閉塞する底部5とを有する。図示する例では、容器1は概ね円筒状の容器形状を備えるように成形されているが、容器1の形状は、これに限定されない。
【0015】
ここで、高さ方向とは、口部2側を上にして容器1を水平面に正立させたときに、水平面に直交する方向をいうものとし、容器1の上下左右及び縦横の方向は、口部2側を上にして正立させた図1に示す状態で規定するものとする。
【0016】
図示する例において、円筒状に形成された口部2の外周面には、図1には示されていない蓋体6を螺着によって取り付けるためのネジ山21が設けられているが、蓋体6の取り付け手段は、これに限定されない。ネジ山21に代えて係合突部を設けることにより、打栓によって蓋体6が取り付けられるようにしてもよい。
【0017】
図2は、容器1の要部拡大断面図であり、容器1の口部2を、容器1を密封するための蓋体6の一部とともに示している。なお、図2及び以降の図面の断面にあらわれる部材の肉厚は、誇張して模式的に描写されている。
本実施形態において、容器1の口部2は、蓋体6が装着された際に、口部2の内周面22と蓋体6に設けられたシール用のインナーリング61のシール面62とが密着することで、密封されるように構成されている。
【0018】
ここで、容器1の成形素材として、回収された合成樹脂製容器から得られるリサイクル樹脂材料を用いる場合には、密封性が低下するという問題がある。すなわち、回収した多種多様な製品を洗浄、ペレタイズ等して得られるリサイクル樹脂材料は、物性が低下したり、また、リサイクル原料に残存する異物が多く混在している虞がある。リサイクル樹脂材料に混入している異物としては、樹脂の劣化物やコゲ、さらに、金属、砂、顔料や充填剤等があり得る。これらの異物は、大きいもので長径が0.5mm程度となるものが確認されている。これにより、容器1の口部2が、リサイクル樹脂材料で形成されたリサイクル樹脂からなる層1aによって構成されている場合、蓋体6のインナーリング61のシール面62と口部2の内周面22との密着が不十分となってしまう虞がある。また、リサイクル樹脂からなる層1aに含まれる異物が、口部2の内周面22、すなわち表面に露出していると、蓋体6を口部2に嵌合するにあたり、密着性が劣るばかりでなく、異物が接するインナーリング61のシール面62に傷がついて、恒常的な容器1の内容物の漏洩につながる虞がある。
【0019】
そこで本実施形態に係る容器1では、容器1の口部2の内周面22側に、補強樹脂材料で形成された補強樹脂からなる層1bを設けている。
口部2に、リサイクル樹脂からなる層1aだけでなく補強樹脂からなる層1bが存在していることにより、当該部位において、リサイクル樹脂材料を用いることによる物性の低下を軽減させることができる。また、リサイクル樹脂からなる層1aが蓋体6のインナーリング61と直接的に接しないため、蓋体6のインナーリング61のシール面62と口部2の内周面22との密着を十分に保つことができる。また、蓋体6のインナーリング61のシール面62に、リサイクル樹脂からなる層1aに含まれる異物に起因した傷がつくことを防ぐことができる。
また、補強樹脂からなる層1bを口部2の一部に限って部分的に設けることで、容器1の全体又は大部分の領域において補強樹脂からなる層1bを備える場合と比較して、リサイクル樹脂材料の使用割合が低下してしまうことを回避することができる。
【0020】
リサイクル樹脂材料としては、回収された合成樹脂製容器を洗浄、ペレタイズ等して原料化して得られたもので、押出成形可能な熱可塑性樹脂であれば、特に限定されない。
かかる熱可塑性樹脂の例としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、環状オレフィン共重合体などのオレフィン系樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル系共重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α-メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6-6、ナイロン6-10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びこれらの共重合ポリエステル等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリフェニレンオキサイド樹脂;ポリ乳酸など生分解性樹脂;などを例示することができ、何れも押出グレードのメルトフローレートを有するものが使用される。
一般的には、包装分野で広く使用されているオレフィン系樹脂やポリエステル樹脂が好適に使用され、リサイクル樹脂材料が主としてメカニカルリサイクルにより得られるオレフィン系樹脂が最も好適に使用される。
【0021】
補強樹脂材料としては、上述した熱可塑性樹脂であって、再生処理を経ていない樹脂材料(バージン材)が好適である。容器1のリサイクル樹脂からなる層1aと補強樹脂からなる層1bとは、容器成形の観点から、同種の樹脂によって形成されるのが好ましいが、ブロー成形が可能であれば、必ずしも同種の樹脂に限定されない。特定の物性を有する他の樹脂材料としてもよい。
【0022】
このような合成樹脂製の容器1は、押出機からダイヘッド110を介して筒状に押し出されたパリソン10を、一対の分割金型間に挟み込み、パリソン10内にブローエアーを吹き込んで所望の容器形状にブロー成形する、いわゆるダイレクトブロー成形によって製造することができる。本実施形態に係るパリソン10は、リサイクル樹脂材料から形成されるリサイクル樹脂からなる層10aを備えるとともに、補強樹脂材料から形成される補強樹脂からなる層10bを、パリソン10の内周側の所定の領域に部分的に備えるように構成されている。
なお、図3は、本実施形態に係る容器1をブロー成形するのに好適なパリソン10の要部拡大断面図であり、パリソン10において、補強樹脂からなる層10bを含む領域近傍の断面を模式的に示している。図3では、向かって右側が、パリソン10の内周側となる。なお、図3の断面にあらわれる部材の肉厚は、誇張して模式的に描写されている。
本実施形態におけるパリソン10の補強樹脂からなる層10b(図3)は、ブロー成形されて容器1の補強樹脂からなる層1b(図2)となる。
【0023】
容器1をダイレクトブロー成形によって成形するに際し、補強樹脂からなる層10bを、その内周側に部分的に備えるパリソン10は、次のようにして形成することができる。
【0024】
図4は、第一実施形態にかかる容器1をブロー成形するためのパリソン10を成形する、パリソン成形装置100の概略を示す説明図である。
図示するパリソン成形装置100は、ダイヘッド110に、環状にリサイクル樹脂材料が押し出されるリサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口111と、環状に補強樹脂材料が押し出される補強樹脂用ダイヘッド吐出口112とを備えている。
本実施形態において、補強樹脂用ダイヘッド吐出口112は、そこから吐出される補強樹脂材料が、リサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口111から吐出される樹脂材料の内周側に吐出されるように配置されている。
【0025】
本実施形態ではこのようなパリソン成形装置100を用いて、リサイクル樹脂材料を、図示しない押出機によってリサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口111から吐出させてリサイクル樹脂からなる層10aを含むパリソン10を形成するに際し、所望の領域において補強樹脂用ダイヘッド吐出口112から所定量の補強樹脂材料を吐出し、次いで、補強樹脂材料の吐出を停止させて、一部の領域に補強樹脂からなる層10bを含むパリソン10を形成する。
なお、リサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口111からのリサイクル樹脂材料の吐出は、補強樹脂用ダイヘッド吐出口112からの補強樹脂材料の吐出によらず、一定とすることができる。または、補強樹脂用ダイヘッド吐出口112からの補強樹脂材料の吐出に応じて、リサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口111からのリサイクル樹脂材料の吐出量を増減するように制御されていてもよい。例えば、リサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口111からのリサイクル樹脂材料の吐出を減ずるとともに補強樹脂用ダイヘッド吐出口112から所定量の補強樹脂材料を吐出し、次いで、補強樹脂材料の吐出を停止するとともにリサイクル樹脂材料の吐出を増加させて、一部の領域に補強樹脂からなる層10bを含むパリソン10を形成するようにしてもよい。
【0026】
補強樹脂材料の吐出を停止する際には、サックバック制御を実施することが好ましい。すなわち、補強樹脂押出機122によって補強樹脂用ダイヘッド吐出口112から補強樹脂材料を吐出させてリサイクル樹脂材料に合流させるに際して、任意のタイミングで、補強樹脂押出機122から補強樹脂用ダイヘッド吐出口112へと供給される補強樹脂材料の供給路、すなわち、連通路140内の樹脂圧を調整して、補強樹脂用ダイヘッド吐出口112から補強樹脂材料を引き戻すサックバック制御を行う。
補強樹脂材料の吐出を停止する際にサックバック制御を実施することで、補強樹脂材料の部分的な吐出を好適に制御することができ、過分な補強樹脂材料の吐出を防ぐことができる。その結果、補強樹脂からなる層10bの肉厚及び形成範囲を、容易に調整することができる。
【0027】
このような樹脂材料の部分的な吐出及びサックバック制御は、例えば、図4に示すような、正転・逆転の変則運転が可能なギヤポンプ130によって行うことができる。補強樹脂材料を供給する押出機122は、ギヤポンプ130に接続されており、補強樹脂材料は、ギヤポンプ130の正転により連通路140を通って、ダイヘッドの補強樹脂用ダイヘッド吐出口112に供給される。また、ギヤポンプ130を逆転させることによりサックバック制御が可能である。
より具体的には、ギヤポンプ130は、ギヤケース131と二つの歯車132a,133aとを備える。歯車132a,133aは、図中矢印で示す方向にかみ合いながら回転する。流入部134において、二つの歯車132a,133aのかみ合いが離れると、押出機122から供給された補強樹脂材料が歯溝132b,133b内に入り込む。歯溝132b,133b内に入り込んだ補強樹脂材料は、ギヤケース131と歯溝132b,133bとの間に保持され、歯車132a,133aの回転により、その回転方向、すなわち、図中矢印で示す方向に沿って流出部135に運ばれる。流出部135において、歯車132a,133aの歯が再びかみ合うと、歯溝132b,133b内の補強樹脂材料が押し出され、流出部135に順次供給される。このようなギヤポンプ130を用いれば、押出機122からの補強樹脂材料の押出量と、歯車132a,133aの回転速度を適宜調整することで、ダイヘッド110に供給する補強樹脂材料の流速を制御しながら、所定量を供給することができる。そして、このようなギヤポンプ130の歯車132a,133aを逆回転させる(図中矢印で示す方向とは反対方向に回転させる)ことにより、サックバック制御を実施することができる。
【0028】
また、補強樹脂材料をダイヘッド110に供給する連通路140 が長い場合などには、ギヤポンプ130をサックバック機構として機能させても、補強樹脂材料を補強樹脂用ダイヘッド吐出口112から引き戻すのにある程度の時間を要し、サックバック制御の効果が瞬時に得られ難いことが考えられる。このような場合には、図4に示すように、ダイヘッド110寄りの位置に、第二のサックバック機構150 を設けることもできる。
この第二のサックバック機構150は、連通路140内の補強樹脂材料を吸引して、連通路140内の樹脂圧を調整できるものであれば、その具体的な構成は制限されない。例えば、図示するように、シリンダー150aにより図中矢印方向にピストン150bを動作させて連通路140内の補強樹脂材料を吸引するようにしたものとすることができる。
第二のサックバック機構150 は、補強樹脂用ダイヘッド吐出口112の近くに設けるほど、サックバック制御が敏感に作用する。しかし、その分、連通路140内の樹脂圧の減少率が大きくなってしまい、これに伴って、補強樹脂用ダイヘッド吐出口112から必要以上の補強樹脂材料が引き戻されてしまうことがある。そして、このような場合には、補強樹脂材料の肉厚が減少してしまうこともある。
このため、本実施形態では、サックバック制御は、ギヤポンプ130と、第二のサックバック機構150とを併用して用いてもよい。ギヤポンプ130による鈍感なサックバック制御と、第二のサックバック機構150による敏感なサックバック制御とを組み合わせることで、補強樹脂材料の補強樹脂用ダイヘッド吐出口112からの吐出の微小な調整がより容易に可能となる。
【0029】
このようにして形成されたパリソン10を、一対の分割金型で挟み込み、パリソン10の押し出し方向の先端側をピンチオフするとともに融着させた後に、パリソン10内にブローエアーを吹き込んでブロー成形することで、容器1を製造することができる。本実施形態では、パリソン10の補強樹脂からなる層10bに対応する部位に、容器1の口部2の内周面22が成形されるようにパリソン10を分割金型間に挟み込んで、ブロー成形する。
【0030】
また、容器1の口部2の内周面22を、回転刃などを用いた切削加工により、平滑面とする工程が実施されてもよい。例えば、ロータリー式ブロー成形のような、押出成形により容器1の口部2が形成されて、口部2の内周面22が成形金型の型面と接触していない場合には、口部2の内周面22は平滑性に欠けていることがある。このような場合に口部2の内周面22に切削加工を施して平滑性を高めることで、蓋体6のインナーリング61のシール面62と容器1の口部2の内周面22との密着性を向上させ、良好な密封性を確保することができる。
このようにして口部2の内周面22を切削加工する場合であっても、本実施形態の製造方法によれば、補強樹脂材料の吐出は前述のようにして制御されているため、口部2の内周面22側に設けられた補強樹脂からなる層1bは、所定の領域に部分的に、その厚みが調整されて形成され、切削加工によって補強樹脂からなる層1bが削り取られてしまってリサイクル樹脂からなる層1aが表面に露出してしまうことが適切に防止され得る。
【0031】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
図5は、本実施形態に係る合成樹脂製の容器1の概略を示す説明図であり、容器1の左側の一部を切り欠いて、その断面を示している。
前述した第一実施形態にかかる容器1では、補強樹脂からなる層1bを、口部2の内周面22に備える構成とした。これに対して、本実施形態にかかる容器1は、口部2の内周面22だけでなく、容器1の収容部3の外周面においても、補強樹脂からなる層1bを部分的に備える構成となっている。
【0032】
このような容器1によれば、容器1の収容部3の少なくとも一部の領域に補強樹脂からなる層1bが設けられることによって、当該箇所の耐衝撃性等の物性を改善することができる。図示する例では、補強樹脂からなる層1bが胴部4の下部に設けられている態様が示されているが、補強樹脂からなる層1bを設ける位置は、図示する例に限定されない。例えば、容器1の底部5の接地部やピンチオフ部に設けるようにしてもよい。
また、このような容器1によれば、容器1の全体又は大部分の領域において補強樹脂からなる層1bを備える場合と比較して、リサイクル樹脂材料の使用割合が低下してしまうことを回避することができる。
【0033】
容器1の収容部3の外周面に設けられる補強樹脂からなる層1bを形成する補強樹脂材料は、口部2の内周面22に設けられる補強樹脂からなる層1bを形成する補強樹脂材料と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。特定の物性を有するように調整されたリサイクル樹脂材料を用いてもよい。
【0034】
第二実施形態にかかる容器1は、リサイクル樹脂からなる層10aを備えるとともに、補強樹脂からなる層10bを内周側の所定の領域に備え、また補強樹脂からなる層10bを外周側の所定の領域に備えるように形成されたパリソン10を形成し、形成されたパリソン10を、一対の分割金型間に挟み込み、パリソン10内にブローエアーを吹き込んで所望の容器形状にブロー成形することで、製造することができる。
このような第二実施形態にかかる容器1を製造するためのパリソン10は、第一実施形態で説明したパリソン成形装置100において、リサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口111及び補強樹脂用ダイヘッド吐出口112に加えて、環状に補強樹脂材料が押し出される第三のダイヘッド吐出口113をさらに備えるパリソン成形装置100によって製造することができる。第三のダイヘッド吐出口113は、そこから吐出される補強樹脂材料が、リサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口111から吐出されるリサイクル樹脂材料の外周側に吐出されるように配置される。第三のダイヘッド吐出口113からの補強樹脂材料の吐出の制御は、補強樹脂用ダイヘッド吐出口112からの補強樹脂材料の吐出と同じように制御することができる。
ダイヘッド吐出口113をさらに備えるパリソン成形装置100を用いて、補強樹脂からなる層10bを、パリソン10の外周側に、部分的にさらに備えるように構成する以外は、第一実施形態の製造方法と同様にして、パリソン10を形成することができる。
本実施形態は、上記の点で第一実施形態の製造方法と異なっているが、他の構成は第一実施形態と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0035】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
図6は、本実施形態に係る容器1の要部拡大断面図であり、容器1の口部2を、容器1を密封するための蓋体6の一部とともに示している。図7は、本実施形態に係る容器1をブロー成形するのに好適なパリソン10の要部拡大断面図であり、パリソン10において、補強樹脂からなる層10bを含む領域近傍の断面を模式的に示している。図7では、向かって右側が、パリソン10の内周側となる。なお、図6及び図7の断面にあらわれる部材の肉厚は、誇張して模式的に描写されている。
【0036】
前述した第一実施形態にかかる容器1では、パリソン10の内周側に補強樹脂からなる層10bを部分的に形成し、補強樹脂からなる層10bに対応する部位に口部2が成形されるようにパリソン10を分割金型間に挟み込んでブロー成形を行い、口部2の内周面22を補強樹脂により形成する構成とした。これに対して、本実施形態にかかる容器1は、パリソン10の外周側に補強樹脂からなる層10bを部分的に形成し、補強樹脂からなる層10bに対応する部位に口部2が成形されるようにパリソン10を分割金型間に挟み込んでブロー成形を行い、次いで口部2の内周面22側を切削して補強樹脂からなる層1bの少なくとも一部を口部2の内周面22に露出させて、口部2の内周面22の少なくとも一部を補強樹脂により形成する構成となっている。
【0037】
このようにすることで、第一実施形態と同様に、口部2の一部にリサイクル樹脂からなる層1aだけでなく補強樹脂からなる層1bが存在し、当該部位において、リサイクル樹脂材料を用いることによる物性の低下を軽減させることができる。また、補強樹脂からなる層1bの少なくとも一部が口部2の内周面22に露出することで、蓋体6のインナーリング61のシール面62と口部2の内周面22との密着を十分に保つことができる。また、リサイクル樹脂からなる層1aが蓋体6のインナーリング61と直接的に接する面積が少なくとも減少するため、蓋体6のインナーリング61のシール面62に、リサイクル樹脂からなる層1aに含まれる異物に起因した傷がつくことを減少させることができる。
また、補強樹脂からなる層1bを口部2に部分的に設けることで、容器1の全体又は大部分の領域において補強樹脂からなる層1bを備える場合と比較して、リサイクル樹脂材料の使用割合が低下してしまうことを回避することができる。
【0038】
以下に、第三実施形態にかかる容器1の製造方法の詳細について説明する。
【0039】
図8は、第三実施形態にかかる容器1をブロー成形するためのパリソン10を成形する、パリソン成形装置200の概略を示す説明図である。
図示するパリソン成形装置200は、ダイヘッド210に、環状にリサイクル樹脂材料が押し出されるリサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口211と、環状に補強樹脂材料が押し出される補強樹脂用ダイヘッド吐出口212とを備えている。本実施形態において、補強樹脂用ダイヘッド吐出口212は、そこから吐出される補強樹脂材料が、リサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口211から吐出される樹脂材料の外周側に吐出されるように配置されている。
【0040】
本実施形態ではこのようなパリソン成形装置200を用いて、リサイクル樹脂材料を、図示しない押出機によってリサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口211から吐出させてリサイクル樹脂からなる層10aを含むパリソン10を形成するに際し、所望の領域において補強樹脂用ダイヘッド吐出口212から所定量の補強樹脂材料を吐出し、次いで、補強樹脂材料の吐出を停止させて、一部の領域に補強樹脂からなる層10bを含むパリソン10を形成する。
【0041】
このようにして形成されたパリソン10は、補強樹脂からなる層10bに対応する部位に口部2が成形されるように分割金型間に挟み込まれてブロー成形され、口部2の外周面側に補強樹脂からなる層1bを備えた容器1に成形される。本実施形態では、次いで、口部2の内周面22側のリサイクル樹脂からなる層1aを切削して補強樹脂からなる層1bの少なくとも一部を口部2の内周面22に露出させる。これにより、口部2の内周面22の少なくとも一部が補強樹脂により形成された容器1が製造される。
口部2の内周面22側を切削して補強樹脂を口部の内周面22に露出させるには、第一実施形態で説明したように、回転刃などを用いた切削加工により実施することができる。
【0042】
補強樹脂用ダイヘッド吐出口212が吐出する樹脂材料が、リサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口211が吐出する樹脂材料よりも外周側に吐出されるように配置されているパリソン成形装置200を用いて、補強樹脂からなる層10bをパリソン10の外周側に部分的に備えるように構成し、パリソン10をブロー成形した後に口部2の内周面22側を切削する以外は、第一実施形態の製造方法と同様にして、容器1を製造することができる。
本実施形態は、上記の点で第一実施形態の製造方法と異なっているが、他の構成は第一実施形態と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0043】
本実施形態の製造方法によれば、口部2の内周面22を切削加工する場合であっても、補強樹脂材料の吐出は第一実施形態において述べたように制御することができるため、口部2に設けられた補強樹脂からなる層1bは、所定の領域に部分的に、その厚みが調整されて形成され、切削加工によってリサイクル樹脂からなる層1aの一部が削り取られてしまって口部2の厚みが保持できなくなることが適切に防止され得る。
【0044】
本発明によれば、回収された合成樹脂製容器から得られるリサイクル樹脂材料を用いて、新たな合成樹脂製の容器1を製造するにあたり、補強樹脂材料によって形成された補強樹脂からなる層1bを部分的に備えることで、当該領域において、リサイクル樹脂材料を用いることによる物性の低下を軽減させることができる。特に、このような補強樹脂からなる層1bを口部2に備え、口部2の内周面22の少なくとも一部を補強樹脂で形成することで、リサイクル樹脂材料の使用割合を過度に減少させることなく、蓋体6のインナーリング61のシール面62との密着性を高めることができ、容器1の密封性を高めることが可能となる。また、補強樹脂からなる層1bを容器1の外周面の一部分にさらに備えることで、リサイクル樹脂材料の使用割合を過度に減少させることなく、当該部分の耐衝撃性等の物性を改善することが可能となる。
【0045】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0046】
例えば、前述の第一実施形態では、補強樹脂からなる層1bを、口部2の内周面22に備える容器1を製造する製造方法を例示したが、補強樹脂からなる層1bは、容器1の内周面の他の領域、例えば収容部3の内周面にさらに備えることも可能である。
パリソン10の内周側に補強樹脂からなる層10bを部分的に2か所以上形成するには、パリソン10を形成する際にあたり、ダイヘッド110内に設けられた補強樹脂用ダイヘッド吐出口112から、補強樹脂材料を複数回吐出させて、所定の領域に補強樹脂からなる層10bを備えるパリソンを形成し、形成されたパリソンを金型で挟み込みブロー成形することで、所定の領域に補強樹脂からなる層1bを備えた容器1を製造すればよい。
このような容器によれば、補強樹脂からなる層1bを容器1の内周面の一部分にさらに備えることで、リサイクル樹脂材料の使用割合を過度に減少させることなく、当該部分の耐衝撃性等の物性を改善することが可能となる。
【0047】
また、第三実施形態では、補強樹脂からなる層1bを、口部2の一部に備える容器1を製造する製造方法を例示したが、補強樹脂からなる層1bは、容器1の外周面の他の領域、例えば収容部3の外周面にさらに備えることも可能である。
パリソン10の外周側に補強樹脂からなる層10bを部分的に2か所以上形成するには、パリソン10を形成する際にあたり、ダイヘッド210内に設けられた補強樹脂用ダイヘッド吐出口212から、補強樹脂材料を複数回吐出させて、所定の領域に補強樹脂からなる層10bを備えるパリソンを形成し、形成されたパリソンを金型で挟み込みブロー成形することで、所定の領域に補強樹脂からなる層1bを備えた容器1を製造すればよい。
このような容器によれば、補強樹脂からなる層1bを容器1の外周面の一部分にさらに備えることで、リサイクル樹脂材料の使用割合を過度に減少させることなく、当該部分の耐衝撃性等の物性を改善することが可能となる。
【0048】
また、前述の第三実施形態では、第二実施形態で説明したような第三のダイヘッド吐出口113がさらに設けられたパリソン成形装置200を用いて、第三のダイヘッド吐出口113から吐出された補強樹脂材料により形成された補強樹脂からなる層10bを、パリソン10の外周側にさらに備えるように構成することもできる。この場合、補強樹脂用ダイヘッド吐出口212から吐出される樹脂材料と、第三のダイヘッド吐出口113から吐出される樹脂材料は、異なるものとすることができる。特定の物性を有するように調整されたリサイクル樹脂材料を用いてもよい。
【0049】
また、第三実施形態にかかる容器1を製造するためのパリソン10は、第二実施形態で説明した第三のダイヘッド吐出口113を備えるパリソン成形装置100によって製造することもできる。この場合、リサイクル樹脂材料を、リサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口111から吐出させてサイクル樹脂からなる層1aを含むパリソン10を形成するに際し、所望の領域において第三のダイヘッド吐出口113から所定量の補強樹脂材料を吐出し、次いで、補強樹脂材料の吐出を停止させることで、第三実施形態にかかる容器1を製造するためのパリソン10を形成することができる。この場合、第三のダイヘッド吐出口113は、サックバック制御により補強樹脂材料の吐出を停止するのが好ましい。パリソン成形装置100に備えられている、リサイクル樹脂用ダイヘッド吐出口111から吐出される樹脂材料の内周側に吐出されるように設けられたダイヘッド吐出口112から補強樹脂材料を吐出させることで、容器1の収容部3の内周面に、補強樹脂からなる層1bが部分的に設けられている容器1とすることもできる。
【0050】
また、前述の第一実施形態では、パリソン10を形成するにあたり、ギヤポンプ130により樹脂材料を部分的に吐出させ、吐出停止時にサックバック制御を実施する構成を例示したが、樹脂材料の部分的な吐出及びサックバック制御は、このような態様に限定されない。
例えば、アキュームレータによって樹脂材料の部分的な吐出及びサックバック制御を行う構成としてもよい。以下に、その具体的態様を説明する。
【0051】
図9は、本発明に係る合成樹脂製の容器1の製造方法を実施するための、パリソン成形装置100のさらに他の一例の概略を示す説明図である。この態様では、補強樹脂材料を供給する押出機122は、切換部161に接続されており、溶融した所定量の補強樹脂材料を間欠的に押し出すことができる。切換部161は、貯蔵部160の一部を構成し、切換バルブ165により補強樹脂材料の貯蔵と供給の切換を行う。押出機122から押し出された補強樹脂材料は、二つのアキュームレータ162,163を備える貯蔵部160にて一時的に貯蔵される。切換部161の切換バルブ165は、押出機122とアキュームレータ162,163との間、及びアキュームレータ162,163と連通路140との間の接続、切断を交互に行う。連通路140は、貯蔵部160とダイヘッド110とを連結しており、貯蔵部160に蓄えられた補強樹脂材料は、連通路140を通って、ダイヘッドの補強樹脂用ダイヘッド吐出口112に供給される。この際、補強樹脂材料の供給は、二つのアキュームレータ162,163から交互に間欠的に行われる。具体的には、押出機122から溶融押し出しされた補強樹脂材料を、切換バルブ165を介して一方のアキュームレータ162に充填する。そして、補強樹脂材料の吐出にあっては、切換バルブ165が切り換わるとともにアキュームレータ162が作動して、アキュームレータ162に充填されていた補強樹脂材料が、連通路140を介してダイヘッドの補強樹脂用ダイヘッド吐出口112に供給される。このとき、切換バルブ165は、一方のアキュームレータ162と、連通路140とを接続すると同時に、他方のアキュームレータ163と、押出機122とを接続する(図9に示す状態)。これにより、押出機122から押し出された補強樹脂材料はアキュームレータ163に充填される。このようにして、押出機122から二つのアキュームレータ162,163に、交互に補強樹脂材料が貯蔵され、かつ、アキュームレータ162,163から、交互にダイヘッドの補強樹脂用ダイヘッド吐出口112に所定量の補強樹脂材料が供給される。
【0052】
ここで、切換バルブ165の切り換え動作は図示しないシリンダーで行い、二つのアキュームレータ162,163の動作は、それぞれのシリンダー162a,163a等で行う。このとき、アキュームレータ162,163の作動速度を調整することによって、補強樹脂材料の供給速度、すなわち、パリソン10への補強樹脂材料を付加する量を調整することができる。これにより、補強樹脂からなる層10bの厚みを変化させることができる。
【0053】
サックバック制御を行う際には、アキュームレータ162,163から補強樹脂材料を供給した後に、それぞれのシリンダー162a,163aを逆に動作させることにより、連通路140内の補強樹脂材料をアキュームレータ162,163内に引き戻すようにして、アキュームレータ162,163をサックバック機構として機能させるようにすればよい。具体的には、アキュームレータ162から補強樹脂材料を供給した後に、ピストン162bを図中矢印方向に動作させて、補強樹脂材料をアキュームレータ162,163内に引き戻すようにすればよい。
また、第一実施形態で説明したような、第二のサックバック制御をダイヘッド寄りの位置に設けることもできる。サックバック制御は、アキュームレータ162,163と、第二のサックバック機構150とを併用して用いてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 容器
1a リサイクル樹脂からなる層
1b 補強樹脂からなる層
2 口部
22 口部の内周面
10 パリソン
10a リサイクル樹脂からなる層
10b 補強樹脂からなる層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9