(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148138
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】ナット割り工具
(51)【国際特許分類】
B23D 29/02 20060101AFI20241009BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B23D29/02 C
E04G23/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024013908
(22)【出願日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2023060507
(32)【優先日】2023-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519157727
【氏名又は名称】マクセルイズミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹島 雅文
【テーマコード(参考)】
2E176
3C039
【Fターム(参考)】
2E176DD23
3C039FA04
3C039FA27
(57)【要約】
【課題】固着したナットを破断することが容易にできるナット割り工具を提供する。
【解決手段】ナット割り工具1は、油圧ポンプ9を有する本体2と、油圧ポンプ9に接続されるシリンダ部4と、シリンダ部4に連結される工具ヘッド3を備える。工具ヘッド3は、互いに回動可能に連結された顎部6aおよび顎部6bと、第1軸部材11と、第1軸部材11に挿通され軸支された状態の顎部6aの先端側に回動可能に取付けられた楔部7aと、第1軸部材11に挿通され軸支された状態の顎部6bの先端側に回動可能に取付けられた楔部7bと、楔部7aの先端側と顎部7bの先端側を互いに遠ざける方向に付勢するばね6cを有する。工具ヘッド3は、油圧ポンプ9が作動しシリンダ部4に作動油が供給されてピストン5bに押されたガイドローラ5eが顎部6aの後端側および顎部6bの後端側を摺動することで、楔部7aと楔部7bが互いに近づいてナット51を破断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプを有する本体と、前記油圧ポンプに接続されるシリンダ部と、前記シリンダ部に連結されて作動する工具ヘッドを備え、
前記シリンダ部は、ピストンと、前記ピストンに取付けられた一対のガイドローラを有し、
前記工具ヘッドは、互いに連結されて回動可能な一対の顎部と、第1軸部材に軸支された状態で前記顎部の先端側にそれぞれ取付けられて回動可能な一対の楔部を有し、
前記油圧ポンプが作動し前記シリンダ部に作動油が供給されて前記ピストンが前進し前記ガイドローラが前記顎部の後端側を摺動することで前記楔部が互いに近づいてナットを破断すること
を特徴とするナット割り工具。
【請求項2】
前記工具ヘッドは、前記顎部の先端側が開く方向に付勢するばねを有し、
前記工具ヘッドは、第2軸部材に軸支された状態で前記シリンダ部に取付けられており、
前記油圧ポンプが作動停止し前記ピストンが後退し前記ばねが縮むことで前記顎部の先端側が開くこと
を特徴とする請求項1に記載のナット割り工具。
【請求項3】
前記顎部は、それぞれ第3軸部材に軸支された状態で一対の連結板が取付けられており、
前記顎部は、前記第3軸部材と前記連結板とによって互いに回動可能に連結されていること
を特徴とする請求項2に記載のナット割り工具。
【請求項4】
前記顎部は、一対の保護板が取付けられており、
前記顎部の先端側が互いに遠ざかったときに前記保護板と前記顎部の先端側とによって前記ナットを囲むことが可能な状態になること
を特徴とする請求項2に記載のナット割り工具。
【請求項5】
前記シリンダ部は、前記本体に連結されており、
前記本体の内部で前記シリンダ部と前記油圧ポンプとが接続されていること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のナット割り工具。
【請求項6】
前記シリンダ部は、油圧ホースに連結されており、
前記油圧ホースを介して前記シリンダ部と前記油圧ポンプとが接続されていること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のナット割り工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナット割り工具に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁やガードレール等の接地固定された構造物において、当該構造物に固着したナットを撤去するナット撤去作業が知られている。一例として、橋梁継手部は、数百個のナットが配設されており、定期的なメンテナンス作業において、古いナットは撤去されて、新品のナットに交換される。
【0003】
従来の高速サンダー装置やガス溶断装置を用いたナット撤去作業は、ナット一つを撤去するのに1分~3分要する。近年、ナット一つを撤去するのに要する時間を大幅に短縮することができる電動工具が提案されている(特許文献1:特許第7104102号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の工具は、固着したナットの周囲が狭スペースであるときは、当該ナットへのアプローチが難しい。そこで、本発明の課題は、固着したナットを破断することが容易にできるナット割り工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態として、以下に開示する解決策により、前記課題を解決する。
【0007】
本発明に係るナット割り工具は、油圧ポンプを有する本体と、前記油圧ポンプに接続されるシリンダ部と、前記シリンダ部に連結されて作動する工具ヘッドを備え、前記シリンダ部は、ピストンと、前記ピストンに取付けられた一対のガイドローラを有し、前記工具ヘッドは、互いに連結されて回動可能な一対の顎部と、第1軸部材に軸支された状態で前記顎部の先端側にそれぞれ取付けられて回動可能な一対の楔部を有し、前記油圧ポンプが作動し前記シリンダ部に作動油が供給されて前記ピストンが前進し前記ガイドローラが前記顎部の後端側を摺動することで前記楔部が互いに近づいてナットを破断することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、工具ヘッドを固着したナットにアプローチさせて当該ナットの両側を楔部で挟み、楔部の刃先を互いに近づけて前記ナットに食い込ませ、前記ナットを破断することができる。よって、前記ナットの周囲が狭スペースであっても、前記ナットへのアプローチが容易にできるとともに、前記ナットを破断することが容易にできる。
【0009】
一例として、前記工具ヘッドは、前記顎部の先端側が開く方向に付勢するばねを有し、前記油圧ポンプが作動停止し前記ピストンが後退し前記ばねが縮むことで前記顎部の先端側が開く構成である。この構成によれば、前記ナットを破断した後は、前記ばねの付勢力によって前記顎部の先端側が開いて、別のナットの破断作業に移ることが容易にできる。
【0010】
一例として、前記工具ヘッドは、第2軸部材に軸支された状態で前記シリンダ部に取付けられている。この構成によれば、工具ヘッドの交換が容易にできる。一例として、特定サイズのナットや特定種別のナットに特化した専用の工具ヘッドを複数揃えておくことで前記第2軸部材を前記シリンダ部から取り外し、所望の工具ヘッドに交換し現場で作業することが容易にできる。
【0011】
一例として、前記顎部は、それぞれ第3軸部材に軸支された状態で一対の連結板が取付けられており、前記顎部は、前記第3軸部材と前記連結板とによって互いに回動可能に連結されている。この構成によれば、前記顎部のヒンジ強度が向上し、小型かつハイパワーの工具にすることが容易にできる。
【0012】
一例として、前記顎部は、一対の保護板が取付けられており、前記顎部の先端側が互いに遠ざかったときに前記保護板と前記顎部の先端側とによって前記ナットを囲むことが可能な状態になる。この構成によれば、ナットを囲んだ状態でナットを破断するので、破断したナットの破片が飛散することを防止できる。
【0013】
一例として、前記シリンダ部は、前記本体に連結されており、前記本体の内部で前記シリンダ部と前記油圧ポンプとが接続されている。この構成によれば、コンパクトで可搬性に優れた構成にできる。一例として、前記本体は、前記シリンダ部に作動油を送液する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する電動モータを有し、前記本体は、前記電動モータに給電するバッテリパックと、前記バッテリパックを取付ける取付部を有する。この構成によれば、作業現場に携帯することが容易にできるとともに、作業範囲を拡大することが容易にできる。一例として、ピストル形状やガン形状やストレート形状の本体を備えたナット割り工具にできる。
【0014】
一例として、前記シリンダ部は、油圧ホースに連結されており、前記油圧ホースを介して前記シリンダ部と前記油圧ポンプとが接続されている。この構成によれば、シリンダ部と本体との組み合わせの自由度に優れた構成にできる。一例として、前記本体は、既知の油圧ポンプ装置にすることができる。一例として、前記油圧ホースは、市販品を適用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、工具ヘッドをナットの上方向からアプローチさせてナットの両側を楔部で挟み、楔部の刃先を互いに近づけてナットに食い込ませ、ナットを破断することができる。よって、現状の工具がアプローチし難いナット横のスペースが狭い個所においても、固着したナットを容易に破断するナット割り工具が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るナット割り工具の第1例を示す概略の正面図である。
【
図2】
図2は、第1例のナット割り工具の工具ヘッドを拡大して示す概略の構造図である。
【
図3】
図3は、第1例の工具ヘッドを側面から視た概略の構造図である。
【
図4】
図4は、第1例の工具ヘッドの楔部を下面から視た概略の構造図であり、前記楔部をナットの上方向からアプローチさせた状態の図である。
【
図5】
図5は、第1例の工具ヘッドの楔部を下面から視た概略の構造図であり、前記楔部の刃先を互いに近づけてナットに食い込ませた状態の図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係るナット割り工具の第2例を示す概略の正面図である。
【
図7】
図7は、第2例のナット割り工具の工具ヘッドを拡大して示す概略の構造図である。
【
図8】
図8は、第2例の工具ヘッドを側面から視た概略の構造図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係るナット割り工具の第3例を示す概略の構成図である。
【
図10】
図10は、第3例の工具ヘッドを拡大して示す概略の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。本実施形態のナット割り工具1は、油圧ポンプ9を有する本体2と、シリンダ部4と、工具ヘッド3を備える。本実施形態のナット割り工具1は、橋梁やガードレール等の構造物に固着したナットを破断するナット割り工具1である。橋梁に用いられているナット51のサイズは、一例としてM22またはM20以上である。これらのナット51は、高張力ハイテンボルトに締付けられており、締付け後の引張強度は1000N/mm2以上である。一例として、橋梁継手部は数百個のナットが設けられており、ナット間隔の最小値は34mmである。
【0018】
先ず、第1例のナット割り工具1Aについて説明する。
【0019】
[第1例]
図1は、第1例のナット割り工具1Aを示す概略の正面図である。
図2は、工具ヘッド3Aを正面から視た概略の構造図である。
図3は、工具ヘッド3Aを側面から視た概略の構造図である。ここで、ナット割り工具1Aの各部の位置関係を説明し易くするため、図中にX,Y,Zの矢印で向きを示している。ナット割り工具1Aは、いずれの向きにおいても正常に作動する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0020】
ナット割り工具1Aは、作業者が把持する本体2Aと、本体2Aに連結されたシリンダ部4Aと、シリンダ部4Aの油圧力でナット割り作業をする工具ヘッド3Aを備える。第1例は、本体2Aにシリンダ部4Aを取付けて連結する構成である。そして、本体2Aの内部でシリンダ部4Aと油圧ポンプ9とが接続されている。
【0021】
シリンダ部4Aは、ピストン5bにガイドローラ5eが連結されている。油圧ポンプ9は、シリンダ部4Aに作動油9bを送液する。本体2Aは、油圧ポンプ9と、油圧ポンプ9を駆動する電動モータ8と、電動モータ8を駆動制御するコントローラ17と、電動モータ8とコントローラ17に電力供給するバッテリパック19を有する。
【0022】
バッテリパック19は、本体2Aに設けられた取付部18に脱着可能に接続される。これにより、可搬性に優れた構成になる。上記以外に、本体2Aにバッテリパック19を内蔵する構成や、取付部18に付設したアダプタを介してバッテリパック19を接続する構成にする場合がある。バッテリパック19は、二次電池と、前記二次電池の状態を検知するセンサを有する。二次電池は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池やその他の既知の二次電池が適用できる。
【0023】
本体2Aを通る第1軸線P1に沿って、シリンダ部4Aと油圧ポンプ9と減速機8aと電動モータ8が順に配されている。筐体21は、第1軸線P1から離れる方向に作業者が把持するハンドル部21aが設けられている。筐体21は、ハンドル部21aに、電動モータ8を起動する起動スイッチ21bが配されており、起動スイッチ21bの上方向にリターンスイッチ21cが配されている。作業者は、ハンドル部21aを握っている手の指先で起動スイッチ21bやリターンスイッチ21cを操作する。本体2は、ハンドル部21aと取付部18とバッテリパック19とが順に配されている。一例として、ナット割り工具1Aは、ピストル形状やガン形状やストレート形状の本体2Aを有する。
【0024】
工具ヘッド3Aは、ナット51の上方向からアプローチさせてナット51の両側を楔部7で挟む構成である。工具ヘッド3Aにおける主要な構成部品は、ピストン5bを通る第1軸線P1に対して対称な位置に配設されている。工具ヘッド3Aは、互いに回動可能に連結された顎部6aおよび顎部6bと、第1軸部材11と、第1軸部材11に挿通され軸支された状態で回動可能に、顎部6aの先端側に取付けられた楔部7aと、顎部6bの先端側に取付けられた楔部7bを有する。
【0025】
シリンダ部4は、シリンダ室5cにピストン5bが配されており、ピストン5bの軸心に合わせてピストン5bの外周に沿うようコイルバネ5dが配されている。シリンダ部4の先端側は、円筒形状のカバー5aが取付けられている。
【0026】
工具ヘッド3Aは、一対の顎部6aおよび顎部6bの各先端側が開く方向に付勢するばね6cを有する。ばね6cは引張コイルばねである。顎部6aの後端側と顎部6bの後端側は、第1軸線P1から離れる方向に延設されており、ピストン5bが前進し、一対のガイドローラ5eが顎部6aの後端側と顎部6bの後端側を摺動することで、楔部7の刃先7cと刃先7dが互いに近づく構成である。
【0027】
一例として、楔部7aと楔部7bは、それぞれ窪みが形成されており、前記窪みに、刃先7cと刃先7dを互いに平行に向き合わせる方向に付勢する補助ばね7eと補助ばね7fがそれぞれ配されている。これにより、ナット51の両側を楔部7aおよび楔部7bで挟み易くできる。補助ばね7eと補助ばね7fは、いずれも圧縮コイルばねである。補助ばね7eと補助ばね7fはオプションであり、省くことができる。
【0028】
工具ヘッド3Aは、顎部6aと顎部6bとが、それぞれ第3軸部材13に軸支された状態で一対の連結板14が取付けられている。顎部6aと顎部6bとは、第3軸部材13と連結板14とによって互いに回動可能に連結されている。工具ヘッド3Aは、各連結板14に保護板15が取付けられて固定されている。顎部6aと顎部6bの先端側が互いに遠ざかったときに、各保護板15と顎部6aの先端側と顎部6bの先端側とによってナット51を囲むことが可能な状態になる。
【0029】
第1例は、シリンダ部4Aに工具ヘッド3Aを取付けた状態で第2軸部材12が工具ヘッド3Aを軸支する構成である。工具ヘッド3Aは、第1軸線P1方向に柱部31が延設されている。本体2は、第1軸線P1方向に一対の支持部16が延設されている。そして、一対の支持部16が柱部31を挟んだ状態で、各支持部16に形成された第1貫通穴と柱部31に形成された第2貫通穴とに第2軸部材12を挿通させて、第2軸部材12に第2ナットを締付けて固定する。この構成によれば、被破断物であるナット51における特定のサイズ範囲や特定の種別に特化した専用の工具ヘッド3Aを複数用意しておくことで、作業現場等で第2軸部材12を本体2から取り外し、所望の工具ヘッドに交換して作業することが容易にできる。
【0030】
図4は、楔部7aおよび楔部7bを下面から視た概略の構造図であり、ボルト52に締結し固着したナット51の上方向から楔部7aと楔部7bをアプローチさせた状態の図である。顎部6aと顎部6bの先端側が互いに遠ざかった状態における、楔部7aの刃先7cと楔部7bの刃先7dとの間隔を第1間隔W1とする。一例として、第1間隔W1は、34mm以上かつ38mm以下である。一例として、第1間隔W1は、35mm以上かつ37mm以下である。
【0031】
楔部7aの刃先7cと楔部7bの刃先7dとを互いに近づけてナット51に食い込ませた状態の図である。顎部6aと顎部6bの先端側が互いに近づいた状態における、楔部7aの刃先7cと楔部7bの刃先7dとの間隔を第2間隔W2とする。一例として、第2間隔W2は、21mm以上かつ24mm以下である。一例として、第2間隔W2は、19mm以上かつ21mm以下である。
【0032】
ナット割り工具1Aは、作業者が起動スイッチ21bを押釦すると電動モータ8が回転し、減速機8aを介して油圧ポンプ9が作動し、油圧ポンプ9がオイルタンク9aに貯留された作動油9bをシリンダ室5cに送液する。作動油9bがシリンダ室5cに供給されると、シリンダ室5cの油圧が高くなる。そして、ピストン5bに取付けられた一対のガイドローラ5eが、顎部6aの後端側および顎部6bの後端側を押しながら摺動し、楔部7aの刃先7cと楔部7bの刃先7dとを互いに近づける。そして、一対のガイドローラ5eが顎部6aの後端側および顎部6bの後端側をさらに押しながら摺動することで刃先7cと刃先7dをナット51に食い込ませ、ナット51を破断する。
【0033】
ナット51を破断した後、規定圧力でリリーフバルブが開となり高圧段階にある圧力が下がる(不図示)。次に、作業者がリターンスイッチ21cを押すことでチェック弁が開になり、コイルバネ5dの復元力でピストン5bが押し戻されてピストン5bが初期位置まで戻り、オイルタンク9aに作動油9bが戻される。
【0034】
本実施形態によれば、工具ヘッド3Aをナット51の上方向からアプローチさせてナット51の両側を楔部7aおよび楔部7bで挟み、刃先7cと刃先7dを互いに近づけてナット51に食い込ませ、ナット51を破断することができる。よって、従来の工具がアプローチし難いナット横のスペースが狭い個所においても、ボルト52に固着したナット51を容易に破断することができる。
【0035】
続いて、第2例のナット割り工具1Bについて説明する。
【0036】
[第2例]
図6は、第2例のナット割り工具1Bを示す概略の正面図である。
図7は、工具ヘッド3Bを正面から視た概略の構造図である。
図8は、工具ヘッド3Bを側面から視た概略の構造図である。第2例における本体2Aは、第1例と同じ構成である。第2例では、第1例と相違する点を中心に説明する。
【0037】
第2例は、本体2Aにシリンダ部4Aを取付けて連結する構成である。そして、本体2Aの内部でシリンダ部4Aと油圧ポンプ9とが接続されている。第2例は、シリンダ部4Aに工具ヘッド3Bを取付けた状態で第2軸部材12が工具ヘッド3Bを軸支する構成である。そして第2例は、第2軸部材12が顎部6aと顎部6bとを互いに回動可能に連結して軸支する構成である。これにより、部品点数を削減した簡易な構成にできる。
【0038】
続いて、第3例のナット割り工具1Cについて説明する。
【0039】
[第3例]
図9は、第3例のナット割り工具1Cを示す概略の構成図である。
図10は、工具ヘッド3Bを正面から視た概略の構造図である。第3例における工具ヘッド3Aは、第1例と同じ構成である。第3例では、第1例と相違する点を中心に説明する。
【0040】
第3例は、シリンダ部4Bと本体2Bとが別体である。シリンダ部4Bは、シリンダ室5cに連通する雌カップラ24bを有する。第3例は、油圧ホース23を有する。油圧ホース23は、高耐圧で耐油性のゴムホースであり、一端側に雄カップラ24aが配されており、他端側に継手22cが配されている。シリンダ部4Bは、油圧ホース23の雄カップラ24aに雌カップラ24bが連結されている。油圧ホース23は、本体2Bに継手22cが連結されている。上記以外の構成として、シリンダ部4Bが雄カップラ24aを有し、油圧ホース23が雌カップラ24bを有する場合がある。
【0041】
第3例は、油圧ホース23を介してシリンダ部4Bと油圧ポンプ9とが接続されている。一例として、油圧ホース23の全長は、1~10mである。第3例は、シリンダ部4Bに工具ヘッド3Aを取付けた状態で第2軸部材12が工具ヘッド3Aを軸支する構成である。この構成によれば、シリンダ部4Bと本体2Bとの組み合わせの自由度に優れた構成にできる。
【0042】
本体2Bは、油圧ポンプ9と、油圧ポンプ9を駆動する電動モータ8と、電動モータ8を駆動制御するコントローラ17と、電動モータ8とコントローラ17に電力供給する給電部25を有する。一例として、給電部25は、外部電源に接続される。一例として、給電部25は、バッテリパックを有する。
【0043】
筐体22は、上部に作業者が把持するハンドル部22aが設けられている。一例として、筐体22は、正面側に、電動モータ8を起動するスイッチ22bが配されている。一例として、スイッチ22bは、トグルスイッチである。
【0044】
ナット割り工具1Cは、作業者がスイッチ22bのレバーを上げると、電動モータ8が回転し、油圧ポンプ9が作動し、油圧ポンプ9がオイルタンク9cに貯留された作動油9bをシリンダ室5cに送液する。作動油9bがシリンダ室5cに供給されると、シリンダ室5cの油圧が高くなる。そして、ピストン5bに取付けられたガイドローラ5eが、顎部6aの後端側および顎部6bの後端側を押しながら摺動し、楔部7aの刃先7cと楔部7bの刃先7dとを互いに近づける。そして、一対のガイドローラ5eが顎部6aの後端側および顎部6bの後端側をさらに押しながら摺動することで刃先7cと刃先7dをナット51に食い込ませ、ナット51を破断する。
【0045】
ナット51を破断した後、規定圧力でリリーフバルブが開となり高圧段階にある圧力が下がる(不図示)。次に、作業者がスイッチ22bのレバーを下げるとチェック弁が開になり、コイルバネ5dの復元力でピストン5bが押し戻されてピストン5bが初期位置まで戻り、オイルタンク9cに作動油9bが戻される。上記構成以外に、本体2Bにリモコンスイッチを設けて、当該リモコンスイッチを用いて一連の操作を行う場合がある。
【0046】
上述の実施形態は、バッテリが内蔵されている構成や、外部電源に接続する電源コードが接続される構成や、これらを組み合わせた構成にする場合がある。本発明は、上述の実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1、1A、1B、1C ナット割り工具
2、2A、2B 本体
3、3A、3B 工具ヘッド
4、4A、4B シリンダ部
5a カバー、5b ピストン、5c シリンダ室、5d コイルバネ、5e ガイドローラ
6a 顎部、6b 顎部、6c ばね
7a 楔部、7b 楔部、7c 刃先、7d 刃先、7e 補助ばね、7f 補助ばね、
8 電動モータ、8a 減速機
9 油圧ポンプ、9a オイルタンク、9b 作動油、9c オイルタンク
11 第1軸部材
12 第2軸部材
13 第3軸部材
14 連結板
15 保護板
16 支持部
17 コントローラ
18 取付部
19 バッテリパック
21 筐体、21a ハンドル部、21b 起動スイッチ、21c リターンスイッチ
22 筐体、22a ハンドル部、22b スイッチ、22c 継手
23 油圧ホース
24a 雄カップラ、24b 雌カップラ
25 給電部
31 柱部
51 ナット
52 ボルト