(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014814
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ノズルプレート上の堆積物を防止する方法
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20240125BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240125BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20240125BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240125BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240125BHJP
【FI】
B28B1/30
B29C64/106
B29C64/209
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023117910
(22)【出願日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】22186211.3
(32)【優先日】2022-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】23184986.0
(32)【優先日】2023-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト,ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】ビター,ニコラ
【テーマコード(参考)】
4F213
4G052
【Fターム(参考)】
4F213AB16
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL24
4F213WL32
4F213WL74
4G052DA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】三次元プリンタ内のプリントヘッドのノズルプレートの下面の堆積物の形成とノズル内における印刷原料の乾燥を防止する方法および三次元プリンタを提供する。
【解決手段】ノズルプレート(101)の前の空気中で印刷液のキャリア液の飽和度を高めるステップを含んでなる、三次元プリンタ内のプリントヘッドのノズルプレート(101)上の印刷液の堆積を防止する方法である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルプレート(101)の前の空気中で印刷液のキャリア液(103)の飽和度を高めるステップを含んでなる、
三次元プリンタ(100)内のプリントヘッドのノズルプレート(101)上の印刷液の堆積を防止する方法。
【請求項2】
ノズルプレート(101)がキャリア液(103)によって湿潤化される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
キャリア液(103)をノズルプレート(101)上に蒸着させる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ノズルプレート(101)上にキャリア液(103)を噴射する請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ノズルプレート(101)の前でキャリア液(103)を霧化する請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
キャリア液(103)を超音波によって微粒子化する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ノズルプレート(101)上のキャリア液(103)をノズル(107)によって吸引する請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
印刷動作の前、最中、あるいは後にキャリア液(103)がノズルプレート(101)上に塗付される請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
キャリア液(103)あるいはキャリア液を含有する空気が放出ノズル(131)を介して放出されるか、またはキャリア液(103)が布材あるいはスポンジによってノズルプレート(101)上に塗付される請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
キャリア液(103)あるいはキャリア液を含有する空気がノズルプレート(101)上で吸引ノズル(129)によって吸引される請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
飽和度を高めるためにキャリア液(103)が50℃超の温度を有する請求項1ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ノズルプレート(101)の前の空気中で印刷液のキャリア液(103)の飽和度を高めるシステム(200)を有してなる、
ノズルプレート(101)を備えた三次元プリンタ(100)。
【請求項13】
三次元プリンタが、ノズルプレート(101)の前でキャリア液の蒸気を生成するための気化装置(133)、ノズルプレート(101)の前で霧化されたキャリア液(103)を形成するための超音波装置(121)、および/またはノズルプレート(101)にキャリア液(103)を噴射するための噴射装置(135)を備える請求項12に記載の三次元プリンタ。
【請求項14】
飽和度を高めるための放出ノズル(131)がノズルプレート(101)上に配置される請求項12または13に記載の三次元プリンタ。
【請求項15】
キャリア液(103)あるいはキャリア液を含有する空気を吸引するための吸引ノズル(129)がノズルプレート(101)上に配置される請求項12ないし14のいずれかに記載の三次元プリンタ。
【請求項16】
放出ノズル(131)がノズルプレート(101)の一側部に配置され、吸引ノズル(129)はノズルプレート(101)の他方の側部に配置される請求項14または15に記載の三次元プリンタ。
【請求項17】
飽和度を高めるために使用されるキャリア液(103)を加熱するための発熱装置を三次元プリンタが備える請求項12ないし16のいずれかに記載の三次元プリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、三次元プリンタ内のプリントヘッドのノズルプレート上の印刷液の堆積を防止する方法、ならびにノズルプレートを含むプリントヘッドを備えた三次元プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
水とセラミック粒子を含んだ水性のスラリで印刷する場合に、ノズル上で水が蒸発して固形物がノズルを詰まらせる。ノズルの詰まりを防止するために、超音波槽内での洗浄あるいは手動による洗浄を実行することができる。現状のプリンタは、プリントヘッドを伴って移動することができる洗浄装置を備える。その洗浄装置内において通常プリントヘッドが湿性の布材を介して移動する。しかしながら、洗浄は多様な方式で実行すべきである。
【0003】
インクジェットプリントヘッドを使用した水性のセラミックスラリ、またはその他の水性あるいは親水性の材料の噴射に際して、ノズルプレートの下面におけるスラリの乾燥が発生する。周囲の空気の湿度が90%未満である場合、そのことがノズルの詰まりを発生させ得る。ノズルプレートの上面にスラリが存在したとしても、ノズル内の乾燥した粒子を再び流動性のスラリに転換してノズルを通流可能にするためには一般的に不充分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の目的は、ノズルプレートの下面の堆積物の形成とノズル内における印刷原料の乾燥を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題は、独立請求項の対象によって解決される。技術的に好適な実施形態が、従属請求項、発明の詳細な説明、および添付図面の対象である。
【0006】
第1の態様によれば、ノズルプレートの前の気湿中で印刷液のキャリア液の飽和度を高めるステップを含んでなる、三次元プリンタ内のプリントヘッドのノズルプレート上の印刷液の堆積を防止する方法によって上記の技術的な課題が解決される。キャリア液は水あるいはその他の適宜な溶媒とし得る。水の場合は、飽和度が相対湿度になる。相対湿度は、空気がどの程度水蒸気で飽和しているかによって直接的に検知することができる。ノズルプレートの前の空気中でキャリア液の飽和度を高める場合、キャリア液がノズルプレート上に沈降することができる。逆に、ノズルプレート上のキャリア液が、ノズルプレートの前の空気中のキャリア液の飽和度も高める。ノズルプレート上のキャリア液の膜が、追加的に堆積物を減少させる。この方法によれば、独立した洗浄ステーションに移動する必要が無くなる。加えて、キャリア液を非接触式に、すなわち例えばスポンジ等の別の器具との機械的な接触を伴わずにノズルプレート上に塗付することができる。この方法によれば、例えば水ベースのスラリがノズルプレートの下面あるいはノズル内で乾燥することは無く、従ってスラリの乾燥によってノズルが詰まる可能性が無くなる。
【0007】
この方法の技術的に好適な実施形態によれば、ノズルプレートがキャリア液によって湿潤化される。それによって例えば、液膜がノズルプレート上の堆積物の形成を追加的に防止するという技術的な利点が達成される。
【0008】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、キャリア液をノズルプレート上に蒸着させる。それによって例えば、ノズルプレート上にキャリア液を均一に塗付することができるとともに液膜が堆積を追加的に防止するという技術的な利点が達成される。
【0009】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、ノズルプレート上にキャリア液を噴射する。それによって例えば、少ない労力でノズルプレート上にキャリア液を塗付し得るという技術的な利点が達成される。
【0010】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、ノズルプレートの前でキャリア液を霧化する。それによって例えば、ノズルプレートの前でキャリア液の飽和度を有効に高め得るという技術的な利点が達成される。
【0011】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、ノズルプレート下面の前で高い飽和度を有する空気を局部的に形成する。飽和度は、例えば50%超、より好適には90%超、さらに好適には95%超、最も好適には99%超である。前記の局部的な高い飽和度の形成は、例えばノズルプレートに沿って照準を合わせた気流によって達成される。それによって例えば、ノズルプレートの下面の直前で空気が高湿度に保持されるという技術的な利点が達成される。その場合に水ベースのスラリが周囲環境中に水分を放出できず、従って乾燥は発生せずノズルが通流可能に保持される。この方法は、プロセスの最中(「オンザフライ」)に実行することができる。従って、独立した洗浄ステーションにプリントヘッドを移動させる必要が無くなる。
【0012】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、キャリア液を超音波によって微粒子化する。この微粒子化によってキャリア液の微小な液滴が形成される。それによって例えば、少ない労力でキャリア液の霧を形成し得るという技術的な利点が達成される。
【0013】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、ノズルプレート上のキャリア液をノズルによって吸引する。それによって例えば、ノズルプレートのノズルが機能可能に、すなわち通流可能に保持されるという技術的な利点が達成される。
【0014】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、印刷動作の前、最中、あるいは後にキャリア液がノズルプレート上に塗付される。それによって例えば、ノズルプレートがどの時点でも動作可能になるという技術的な利点が達成される。
【0015】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、キャリア液あるいはキャリア液を含有する空気が放出ノズルを介して放出されるか、またはキャリア液が布材あるいはスポンジによってノズルプレート上に塗付される。その場合、前記の布材あるいはスポンジを容易に圧縮することができる。布材あるいはスポンジは、ノズルプレートの側方に装着することができる。その場合、布材あるいはスポンジがノズルプレートと共に動作する。それによって例えば、ノズルプレートの直前で飽和度を高め得るという技術的な利点が達成される。
【0016】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、キャリア液あるいはキャリア液を含有する空気がノズルプレート上で吸引ノズルによって吸引される。それによって例えば、使用済みのキャリア液あるいは飽和度が低下した空気をノズルプレートから除去し得るという技術的な利点が達成される。
【0017】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、飽和度を高めるためにキャリア液が50℃超の温度を有する。それによって例えば、ノズルプレート上の堆積物を効果的に除去し得るという技術的な利点が達成される。
【0018】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、ノズルプレート上に付着したキャリア液がノズルによって吸引される。それによって例えば、ノズルプレートが自動的に洗浄されるという技術的な利点が達成される。
【0019】
第2の態様によれば、ノズルプレートの前の空気中で印刷液のキャリア液の飽和度を高めるシステムを有してなる、ノズルプレートを備えた三次元プリンタによって技術的な課題が解決される。この三次元プリンタによって、第1の態様に係る方法と同様な技術的な利点が達成される。
【0020】
この三次元プリンタの技術的に好適な実施形態によれば、三次元プリンタが、ノズルプレートの前でキャリア液の蒸気を生成するための気化装置、ノズルプレートの前で霧化されたキャリア液を形成するための超音波装置、および/またはノズルプレートにキャリア液を噴射するための噴射装置を備える。それによって例えば、ノズルプレートの前で飽和度を有効に高め得るという技術的な利点が達成される。
【0021】
この三次元プリンタの技術的に好適な別の実施形態によれば、飽和度を高めるための放出ノズルがノズルプレート上に配置される。それによって例えば、ノズルプレートの直前で湿度を高め得るという技術的な利点が達成される。
【0022】
この三次元プリンタの技術的に好適な別の実施形態によれば、キャリア液あるいはキャリア液を含有する空気を吸引するための吸引ノズルがノズルプレート上に配置される。それによって例えば、使用済みのキャリア液あるいは飽和度が低下した空気をノズルプレートから除去し得るという技術的な利点が達成される。
【0023】
この三次元プリンタの技術的に好適な別の実施形態によれば、放出ノズルがノズルプレートの一側部に配置され、吸引ノズルはノズルプレートの他方の側部に配置される。それによって例えば、気流によってノズルプレートの前で高い飽和度を維持することができるという技術的な利点が達成される。
【0024】
この三次元プリンタの技術的に好適な別の実施形態によれば、飽和度を高めるために使用されるキャリア液を加熱するための発熱装置を三次元プリンタが備える。それによって例えば、ノズルプレート上の堆積物を効果的に除去し得るという技術的な利点が達成される。
【0025】
技術的に好適な別の実施形態によれば、プリンタの流体システム内でノズル上に負圧を付加することによって、分離された固形物をノズルプレートの下面からノズルを介して再吸引する。それによって例えば、ノズルが再び機能可能、すなわち通流可能にされるという技術的な利点が達成される。
【0026】
次に、本発明の実施例につき、添付図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2A】堆積物を伴わないノズルプレートの概略説明図である。
【
図2B】堆積物を伴ったノズルプレートの概略説明図である。
【
図3A】水膜を伴ったノズルプレートの概略説明図である。
【
図3B】最大の堆積物を伴ったノズルプレートの概略説明図である。
【
図4】プリントヘッドの湿潤化システムの概略説明図である。
【
図5】プリントヘッドの別の湿潤化システムの概略説明図である。
【
図6】プリントヘッドのソケットの概略説明図である。
【
図7】プリントヘッドと蒸気発生器の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、三次元プリンタ100の概要が示されている。三次元プリンタ100は、付加式の製造プロセスにおけるフリーフロー材料塗付を実行する。その場合に、小滴の形式の原料が選択的に印刷液中に収容される。ポリジェットあるいはマルチジェットモデリングの場合、線形に配置された複数のノズルを有するプリントヘッド105によってモデルが加工される。
【0029】
三次元プリンタ100は、例えば構築プラットフォーム119上で歯科補綴物127を層方式で形成するために印刷液を使用する。印刷液は、例えば固形物粒子とその固形物粒子のためのキャリア液を含む。
【0030】
印刷のために、印刷液からなる材料が複数のノズルからの印刷噴流123を使用して点状に塗付される。プリントヘッド105はX方向、Y方向、およびZ方向に移動可能であり、従って印刷噴流123が構築プラットフォーム119のいずれの位置にも到達可能である。印刷液は供給装置113を使用してプリントヘッド105に供給される。
【0031】
しかしながら、その場合にインク残渣、異物、あるいは沈殿物の形態の堆積物がプリントヘッド105内に発生し得るという問題が生じる。その堆積物が、プリントヘッド105の内部の流体システムの内面と、外部ではノズルプレート101上に付着し、時間の経過に従ってそれが詰まりの原因となり、ノズル107(印刷ノズル)およびプリントヘッド105の機能に影響を及ぼす。
【0032】
図2Aには、堆積物を伴わないノズルプレート101の外観が示されている。ノズルプレート101は、2本の平行な列内に配置された多数のノズル107を備える。それらのノズル107から印刷液が放出される。
【0033】
図2Bには、堆積物109を伴ったノズルプレート101が示されている。堆積物109は、印刷の間に乾燥した印刷液によって発生する。例えば、乾燥したスラリ残渣がノズルプレート101の下面のノズル107の周りに形成される。この堆積物109を除去することができない場合、印刷品質が低下してノズル107の詰まりが生じる。
【0034】
図3Aには、キャリア液103として付着した水の膜を有するノズルプレート101の概要が示されている。キャリア液は、一般的に任意の適宜な溶媒とすることができる。水103はノズルプレート101の中央に付加され、そこで堆積物109に対して作用する。水103が汚染を溶解する。三次元プリンタの動作中に、ノズルプレート101に水蒸気が付加されるか、または微細な水滴がノズルプレート101に噴射される。それによってノズルプレート101を湿潤化する。水に代えて任意の印刷液のキャリア液を使用することもできる。
【0035】
図3Bには、最大の堆積物109を伴ったノズルプレート101の概要が示されている。印刷液が滴り落ちないようにするために、印刷に際してプリントヘッド105に小さな負圧を加えて稼働させる。負圧によって、少量の水を吸引するか、あるいは湿潤化を十分にするかを設定することができる。溶解された堆積物109は、ノズル107によって吸引することができる。
【0036】
そのことによって、独立した洗浄ステーションに移動させる必要なく、ノズルプレート101の全てのノズル107が常に機能可能になることを保証することができる。それによってコストおよびスペースが節約され、印刷速度が高められる。洗浄効果を強化するために、一時的に負圧を高めることもできる。ノズル107の開放およびノズルプレート101の洗浄が印刷作業中(オンザフライ)に実行されるため、独立した洗浄ステーションへの移動による中断は発生しない。加えて、印刷ノズルが1つも使用不可能にならないことが保証される。ノズルプレート101の下面において局部的にスラリの乾燥が生じないように、噴射プロセスを制御することができる。
【0037】
洗浄中に吸引された溶液は、その後タンク内に収容して減圧しながら気化させて再び除去することができる。その際に、粒子を含有しない少量の液体を連続的にシステム内に流入させれば、固形物含有率は変化しない。
【0038】
図4には、プリントヘッド105のための湿潤化システム200の概要が示されている。湿潤化システム200は水タンク115を備え、その中にノズルプレート101を湿潤化するための水103が貯蔵される。水103は、ポンプ117を使用し導管を介してプリントヘッド101に推進される。
【0039】
ノズルプレート101の両側にそれぞれ放出ノズル131が存在する。放出ノズル131は、水タンク115からノズルプレート101に水103を放出する。それによってノズルプレート101が湿潤化されるのみでなく、ノズルプレート101の前の空間領域内の湿度が高められる。その場合、再溶解された固形物は、負圧を利用してノズル107を介して流体システム内に還流する。
【0040】
図5には、プリントヘッド105のための飽和度を高める別の装置あるいはシステム200の概要が示されている。システム200は、同様に水タンク115を備え、その中にノズルプレート101を湿潤化するための水103が貯蔵される。
【0041】
水タンク115内には、微粒子化装置(気化器)として超音波圧電素子121が設置される。超音波圧電素子121は、水タンク115内の水面付近で超音波振動を発生させる。超音波圧電素子121は、電気振動を機械的な振動に変換する。その機械的な振動が液膜の表面上の表面張力波の形成につながり、その表面張力波は励起周波数の上昇に従って指数関数的に増加する。励起周波数が特定の値に到達すると、特定の直径を有する液滴が形成される。霧の形成は、液体に伝達される3MHzまでの機械的な振動を使用して実行される。励起周波数の上昇に従って、あるいは液体の密度がより高いほどおよび表面張力がより低いほど、液滴の直径が縮小する。超音波圧電素子121によって、2ないし4μmの液滴サイズを達成することができる。超音波圧電素子121によって、水タンク115内の水を微粒子化あるいは気化することが可能になる。
【0042】
それによって、水面の上方に微細な液滴からなる霧125が形成される。そのようにして形成された霧125は、送風ファンあるいはポンプ117を使用する空気循環システムによって放出ノズル(アウトレット)131および吸引ノズル(インレット)129を介してノズルプレート101上に誘導される。吸引ノズル129による吸引の後に、霧125を水タンク115内に還流させる。
【0043】
放出ノズル131と吸引ノズル129は、ノズル107と同じ平面内に配置するか、または直接ノズルプレート101内に統合することができる。放出ノズル131と吸引ノズル129によって、ノズルプレート101の下側に沿って高湿度の霧125からなる層流を形成することが可能になる。それによって、ノズル107の直近でスラリと空気の間に湿度の格差が生じることが防止される。
【0044】
ノズルプレート101の下側に沿った層流は材料液滴の放出速度に比べて数分の一の低い流速を有するべきであり、それによって材料液滴の飛翔方向に対して過度に大きな影響を与えないようにする。加えて、層流は材料液滴の飛翔方向に対して略直交して延在すべきであり、理想的には列状に配置されたノズル107に対して直角に延在する。層流は個々の材料液滴による印刷の間に中断することができ、従って層流が印刷結果に影響を及ぼすことが無い。
【0045】
ノズルプレート101の下面に近接する高湿度の層流によって、周囲空気によるノズル107上の水の吸収を防止し、従ってスラリを乾燥させないようにすることが可能になる。それによって、ノズル107およびノズルプレート101上の堆積物109が防止される。
【0046】
この方法によれば、ノズルプレート101のための独立した洗浄ステーションが不要になるため、技術コストが削減されるとともに構造容積が縮小される。印刷動作中に洗浄を実行することができるため、印刷作業をより迅速に実行することができる。
【0047】
他方、ノズルプレート101の下面でスラリが周囲環境に湿気を放出して乾燥することが起こり得ない程度に、三次元プリンタの構造空間全体の空気を高湿度に維持することもできる。
【0048】
図6には、プリントヘッド105のソケット111の概要が示されている。ソケット111は成形部材によって形成され、その中にプリントヘッド105が上から挿入される。ソケット111は供給管路137と排出管路139を備え、それらが放出ノズル131と吸引ノズル129に結合される。供給管路137と排出管路139を介して、水蒸気あるいは水が供給あるいは排出される。
【0049】
プリントヘッド105の確実な機能を保証するために必要とされる全ての物を、プリントヘッド105のソケット111内に内蔵させることができる。それらの要素はプリントヘッド105と共に移動するもので、例えば減圧コネクタ、圧力空気コネクタ、超音波発生装置、気化器あるいは噴霧器である。独立した洗浄ステーションを移動させる必要は無く、またはプリントヘッドが固定されて構築プラットフォームが動作する場合でも独立した洗浄ステーションをプリントヘッドの下方で移動させる必要が無くなる。
【0050】
追加的に、ソケット111がノズルプレート101の前で蒸気を発生させるための気化器133を備えることができる。気化器133内において発熱装置を使用してノズルプレート101の周囲で水103を加熱し、それによって蒸気を発生させる。気化された水103がノズルプレート101上で凝集する。それによってノズルプレート101の周囲の湿度が高められるばかりでなく、ノズルプレート101が液膜によって湿潤化され、それが堆積物109を防止する。
【0051】
ソケット111は、ノズルプレート101に水103を噴射するための噴射装置135を備えることもでき、例えばノズルを使用して噴射する。噴射装置135によってもノズルプレート101を水103で湿潤化することができ、従って液膜によって堆積物109を防止することができる。
【0052】
図7には、プリントヘッド105と蒸気発生器141の概要が示されている。蒸気発生器141は、例えば水タンク内に配置された超音波圧電素子として形成することができる。三次元プリンタは、ノズルプレートの前の空気中で印刷液のキャリア液の飽和度を高めるためのシステムとして、気化器あるいは発熱装置、またはその両方を備えることができる。
【0053】
生成された霧125は、送風ファンあるいはポンプ117を使用し放出ノズル(アウトレット)131を介してノズルプレート101に誘導される。霧125は、ノズルプレート101上で凝結してそこで水滴として落下することができる。非水平の構築プラットフォーム119の場合、前記の水滴を収集槽内に集積してそれを再び水タンクに供給することができ、それによってノズル内へのキャリア液の再吸収あるいは再吸引が防止される。
【0054】
飽和度を高めるための霧125は、50℃あるいはそれ以上の温度を有することができる。少なくとも50℃の温度を有する霧125は、ノズルプレート101上の乾燥したあるいは堆積した印刷液を有効に軟化させることができる。それによって例えば、ノズルプレート101上の堆積物を有効、簡便、かつ迅速に除去し得るという技術的な利点が達成される。少なくとも50℃ないし60℃の温度を有する水霧125の使用によって、侵食性の化学物質の使用が不要になる。そのことは、腐食をもたらす危険性がある侵食性の化学物質を必要とすることなく、ノズルプレート101を効果的に洗浄し得るという別の利点を有する。
【0055】
その場合、ノズルプレート101の表面に凝結したキャリア液が形成される。ノズルプレート101が20℃ないし25℃の温度を有していて飽和度を高めるためのキャリア液の蒸気が50℃ないし60℃の温度である場合に、ノズルプレート101の洗浄が極めて効率的になる。気圧は、1013hPaとすることができる。可能な最大のキャリア液飽和度は、所与の圧力における気温、水分含有率、および空気エンタルピの間の関係のグラフ表示である、モリエ線図によって検出することができる。
【0056】
本発明の個々の実施形態に関連して説明および図示した全ての特徴を、多様な組み合わせで本発明の対象とすることができ、それによって同時に有効な利点が達成される。
【0057】
全ての方法ステップは、各方法ステップを実行するために適した装置を使用して実行することができる。対象である特徴によって実行される全ての機能は、この方法における方法ステップとすることができる。
【0058】
本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって定義され、説明中に記述されたあるいは図示された特徴によって限定されるものではない。
【符号の説明】
【0059】
100 三次元プリンタ
101 ノズルプレート
103 キャリア液/水
105 プリントヘッド
107 ノズル
109 堆積物
111 ソケット
113 供給装置
115 水タンク
117 ポンプ
119 構築プラットフォーム
121 超音波圧電素子
123 印刷噴流
125 霧
127 歯科補綴物
129 吸引ノズル
131 放出ノズル
133 気化器
135 噴射装置
137 供給管路
139 排出管路
141 上記発生器
200 システム
【外国語明細書】