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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148140
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/24 20060101AFI20241009BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20241009BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B23Q17/24 Z
B23Q17/20 A
B23Q11/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024023392
(22)【出願日】2024-02-20
(62)【分割の表示】P 2023060567の分割
【原出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】長末 秀樹
【テーマコード(参考)】
3C029
【Fターム(参考)】
3C029BB02
3C029BB10
3C029EE20
(57)【要約】
【課題】工作機械がワークを保持した状態において、測定部位近傍に切屑が無い状態で、測定を行うことができる工作機械を提供する。
【解決手段】工作機械100は、加工したワークを、測定子を備えた測定装置を用い、この測定子を移動させてワークに接触させることにより、当該工作機械100に保持した状態で測定することができる。工作機械100は、加工後のワークを、当該工作機械100が保持している状態で洗浄する処理を実行し、洗浄処理後、洗浄されたワークの測定部位を、自動作業装置20に備えられたカメラで撮像させる処理を実行する。撮像された画像に基づいて、測定子が移動する経路上に切屑が存在するか否かが判定された結果、測定子の移動経路上に切屑が無い場合に、工作機械100は、測定子を用いたワークの測定を実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する工作機械であり、カメラを備えた自動作業装置から作業の提供を受けるように構成された工作機械であって、
測定装置の測定子を移動させて、加工後の前記ワークに接触させることにより、前記ワークを該工作機械で保持した状態で前記ワークを測定する移動制御部と、
該工作機械で加工されたワークを、該工作機械が保持している状態で、該工作機械において洗浄する処理を実行する洗浄実行部と、
洗浄処理後、前記自動作業装置に指示を出し、洗浄された前記ワークの測定部位を、前記自動作業装置に備えられたカメラで撮像させる処理を実行し、前記自動作業装置を管理する管理装置または前記自動作業装置において、前記カメラにより撮像された画像に基づき、前記測定子が移動する移動経路上に切屑が存在するか否かが判定された結果を、前記管理装置または前記自動作業装置から受信し、前記測定子の移動経路上に切屑が存在しないと判定された場合に、前記測定子を用いて前記ワークの測定する処理を実行する測定処理部と、を備える、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械により加工したワークを、工作機械に保持された状態、言い換えれば工作機械の機内で測定することが可能な工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械により加工したワークの寸法を工作機械の機内で測定する方法として、従来、特開2014-237204号公報(下記特許文献1)に開示された方法が知られている。この方法は、NC旋盤において、チャックを介し主軸に保持されたワークを、タレットに設けられたツールを用いて加工した後、同じくタレットに設けられたタッチプローブをワークの測定部位に接触させ、タッチプローブによる接触を検知したときのスケールの読みから、ワークの外径や穴内径などの寸法を測定するというものである。
【0003】
ところで、加工時に発生した切屑がワークの測定部位に付着していると、当該測定部位の正確な寸法を測定することができない。そこで、従来、測定前に、ワークの測定部位にクーラントを掛けて切屑を洗い流す、或いは、圧縮空気を吹きかけて切屑を吹き飛ばすといった処理を行い、当該測定部位を清浄にするようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-237204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ワークの材質や加工条件によっては、渦巻き状にカールした切屑が発生することがあり、例えば、穴加工の場合に、カールした切屑が発生すると、このカール状の切屑が穴内部に挟み込まれた状態となって、外部に排出されない状態となることがある。このようにして穴内部に挟み込まれた切屑は、ほとんどの場合、クーラントの吐出や、圧縮空気の吹きかけといった処理では、容易には外部に排出することができない。
【0006】
そして、穴内部に切屑が残っていると、穴の内径等の寸法を正確に測定することができないばかりか、穴内部にタッチプローブを挿入したした際に、当該タッチプローブが切屑に接触して損傷する虞がある。
【0007】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであって、工作機械で加工され、当該工作機械に保持されたワークを測定する際に、測定部位から切屑が除去された状態で測定を行うことができる工作機械の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、
工作機械で加工されたワークの測定を、測定子を備えた測定装置を用い、前記測定子を移動させて前記ワークに接触させることにより、前記工作機械がワークを保持している状態で行う測定方法であって、
前記ワークの測定部位をカメラで撮像する撮像工程と、
前記カメラにより撮像された画像を処理して、前記測定子が移動する移動経路上に切屑が存在するか否かを判定する判定工程と、を含み、
前記判定工程において、前記測定子の移動経路上に切屑が無い場合に、前記測定子を用いた前記ワークの測定を実行するようにした測定方法に係る。
【0009】
この測定方法によれば、まず、前記撮像工程において、カメラによってワークの測定部位が撮像される。例えば、ワークの外周が測定部位である場合には、当該外周部がカメラによって撮像され、ワークの穴が測定部位である場合には、当該穴部がカメラによって撮像される。
【0010】
次に、前記判定工程において、カメラにより撮像された画像が処理され、測定子の移動経路上に切屑が存在するか否かが判定される。画像処理は、例えば、画像を2値化処理することによって行われ、予め取得された切屑の無い2値化した基準画像と、現在の2値化した画像との差分を取ることによって、切屑の有無を判別する。
【0011】
そして、判定工程において、測定子の移動経路上に切屑が無いと判定された場合に、測定子を用いた前記ワークの測定を実行する。尚、上述した画像処理において、画像中に切屑が存在していたとしても、当該切屑が測定子の移動経路上にない場合、即ち、測定子が移動する際に当該切屑と干渉しない場合には、測定子の移動経路上に切屑が無いと判定され、測定子を用いたワークの測定が実行される。典型的な具体例としては、ワークの穴部が測定部位である場合に、画像中の穴以外の部位に切屑の存在が認められたとしても、穴の中に切屑が存在しない場合には、測定子の移動経路上に切屑は無いと判定される。
【0012】
以上のように、この測定方法によれば、測定子の移動経路上に切屑が無い場合にのみ、測定子を用いたワークの測定を実行するようにしているので、当該ワークの、例えばワークの寸法を正確に測定することができ、また、切屑に測定子が接触することによって当該タッチプローブが損傷するのを確実に防止することができる。
【0013】
また、本発明は、前記判定工程において、前記移動経路上に切屑が存在すると判定された場合に、前記切屑を移動経路上から除去する除去工程を更に含み、
前記除去工程後、再度、前記撮像工程及び判定工程を実施し、
二度目の判定工程において、前記測定子の移動経路上に切屑が無いと判定された場合には、前記測定子を用いた前記ワークの測定を実行し、一方、前記移動経路上に切屑が存在すると判定された場合には、前記測定子を用いた前記ワークの測定を中止するようにした態様を採ることができる。
【0014】
この態様によれば、判定工程において、測定子の移動経路上に切屑が存在すると判定された場合に、切屑を移動経路上から除去する除去工程が実施されるとともに、除去工程後、再度、撮像工程及び判定工程が実施され、二度目の判定工程において、測定子の移動経路上に切屑が無いと判定された場合には、測定子を用いたワークの測定が実行され、一方、移動経路上に切屑が存在すると判定された場合には、測定子を用いたワークの測定が中止される。
【0015】
このように、この態様によれば、測定子の移動経路上に切屑が存在する場合に、切屑を移動経路上から除去する除去工程が実施されるので、一度の判定処理によって、当該ワークが保留品に分別されるのを避けることができ、これにより、ワークの歩留まりを向上させることができる。
【0016】
尚、前記撮像工程では、工作機械の移動体に設けられたカメラを用いることができ、この場合、移動体によりカメラを撮像位置に移動させて、ワークの測定部位を撮像する態様を採ることができる。
【0017】
或いは、前記撮像工程では、工作機械のワーク保持部に対してワークを着脱するマニピュレータに設けられたカメラを用いることができ、このマニピュレータの動作によりカメラを撮像位置に移動させて、ワークの測定部位を撮像する態様を採ることができる。そして、このマニピュレータとして、自律走行可能に設けられた態様のものを用いることができる。
【0018】
また、本発明は、ワークを加工する工作機械において、制御装置を備え、前記制御装置による制御の下、測定子を移動させて、加工後の前記ワークに接触させることにより、前記ワークを保持した状態で前記ワークを測定できる工作機械であって、
前記制御装置は、
前記工作機械に設けられたカメラを動作させて、加工後の前記ワークの測定部位を前記カメラにより撮像し、得られた画像を処理して、前記測定子が移動する移動経路上に切屑が存在するか否かを判定する処理(判定処理)を実行する指示(実行指示)を行うか、又は外部装置に設けられたカメラにより、加工後の前記ワークの測定部位を撮像させ(撮像処理)、得られた画像を処理して、前記測定子が移動する移動経路上に切屑が存在するか否かを判定する処理(判定処理)を実行する指示(実行指示)を行い、
前記測定子の移動経路上に切屑が存在しない場合に、前記測定子を移動させて前記ワークを測定する、工作機械に係る。
【0019】
尚、上述した加工後のワークは、工作機械に設置(保持)された状態で、当該工作機械により加工(除去加工及び付加加工を含む)され、加工後、当該工作機械から取り外されることなく、そのまま当該工作機械に保持された状態のワークを意味する。そして、このような状態のワークが前記カメラによって撮像される。
【0020】
また、前記制御装置は、上述したように、外部装置に撮像処理を実行させることができ、この場合、制御装置は、当該外部装置に対して撮像開始信号などの指示信号を送信することによって、実行指示を行う。また、この場合に、前記制御装置は、撮像された画像に基づいた前記判定処理を当該外部装置、又は他の装置に実行させることができ、この場合、制御装置は、当該外部装置又は他の装置に対して処理開始信号などの指示信号を送信することによって、実行指示を行う。或いは、前記制御装置は、前記判定処理を自身が実行することができるが、この場合においても、制御装置は、内部の処理部に対して処理開始信号などの指示信号を送信することによって、実行指示を行う。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る測定方法によれば、測定子の移動経路上に切屑が無い場合にのみ、測定子を用いたワークの測定を実行するようにしているので、当該ワークを正確に測定することができ、また、切屑に測定子が接触することによって当該タッチプローブが損傷するのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態に係る生産システムの概略構成を示した説明図である。
図2】第1の実施形態に係る生産システムの装置構成を示した平面図である。
図3】第1の実施形態に係る自動作業装置を示した斜視図である。
図4】第1の実施形態に係る測定処理手順を示したフローチャートである。
図5】第1の実施形態に係る自動作業装置による確認動作を示した説明図である。
図6】第1の実施形態に係る測定処理を説明するための説明図である。
図7】第1の実施形態に係る測定処理を説明するための説明図である。
図8】第1の実施形態に係る除去処理を説明するための説明図である。
図9】第1の実施形態の変形例に係る測定処理手順を示したフローチャートである。
図10】本発明の第2の実施形態に係る生産システムの概略構成を示した説明図である。
図11】第2の実施形態に係る測定処理手順を示したフローチャートである。
図12】本発明の第3の実施形態に係る生産システムの概略構成を示した説明図である。
図13】第3の実施形態に係る測定処理手順を示したフローチャートである。
図14】本発明の第4の実施形態に係る測定処理手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。図1及び図2に示すように、本例の生産システム1は、生産装置としての2台の工作機械100(100A,100B)と、加工前の素材を収納する素材ストッカ125と、加工後の製品を収納する製品ストッカ126と、前記各工作機械100,素材ストッカ125及び製品ストッカ126に対して作業を行う2台の自動作業装置20(20A,20B)と、前記各工作機械100及び自動作業装置20に作業指示を出して、各工作機械100及び自動作業装置20の作業を管理する管理装置10などから構成される。そして、管理装置10、自動作業装置20及び工作機械100は、有線若しくは無線により適宜ネットワーク15を介して相互に接続されている。尚、言うまでもなく、図1に示した装置構成は一例であってこれに限定されるものではない。
【0025】
前記工作機械100には、NC旋盤やマシニングセンタなど、前記ネットワーク15に接続する通信機能を備えた従来公知の全ての工作機械を適用可能であるが、本例では、工作機械100(100A,100B)として、NC旋盤を適用している。尚、図2に示すように、本例では、2台の工作機械100A,100Bを、適宜間隔を空けて並設しているが、当然のことながら、設ける工作機械100の台数及びその配置はこれに限られるものではない。
【0026】
また、各工作機械100(100A,100B)の近傍には、素材を収納する素材ストッカ120(120A,120B)、製品を収納する製品ストッカ121(121A,121B)、及び不良品を含む保留品を収納する保留品ストッカ122(122A,122B)が配設されている。尚、前記素材ストッカ125及び製品ストッカ126は、素材ストッカ120及び製品ストッカ121よりも収容容量が大きいストッカであり、前記工作機械100から離れた位置に配設されている。
【0027】
図4に示すように、前記自動作業装置20は、無人搬送車35、この無人搬送車35に搭載されるロボット25、無人搬送車30及びロボット25を制御する制御装置などから構成される。
【0028】
前記無人搬送車35は、その上面である載置面36上に前記ロボット25が搭載されている。また、無人搬送車35は、工場内における自身の位置を認識可能なセンサ(例えば、レーザ光を用いた距離計測センサ)を備えており、前記制御装置による制御の下で、前記工作機械100などが配設される領域を含む工場内を無軌道で走行するように構成され、本例では、各工作機械100、前記素材ストッカ125及び製品ストッカ126に対してそれぞれ設定された各作業位置に経由するようになっている。また、本例では、前記制御装置は、この無人搬送車35内に設けられている。
【0029】
前記ロボット25は、マニュピレータ部である第1アーム26、第2アーム27及び第3アーム28の3つのアームを備え、これら第1アーム26、第2アーム27及び第3アーム28を連設するように関節で接続した多関節型のロボットであり、第3アーム28の先端部にはエンドエフェクタとしてのハンド29及びカメラ30が装着されている。そして、ロボット25は、前記制御装置による制御の下で、これらハンド29及びカメラ30を3次元空間内で移動させる。尚、ロボット25の構造は、このような多関節型のものに限定されるものでは無く、利用可能な公知の全ての構造の物を採用することができる。
【0030】
前記制御装置は、自身の自動作業装置20を構成する無人搬送車35及びロボット25に接続するとともに、前記ネットワーク15を介して、前記管理装置10、前記各工作機械100の制御装置、及び他の自動作業装置20の制御装置に接続している。尚、管理装置10、工作機械100の制御装置及び自動作業装置20の制御装置は、それぞれCPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成されている。
【0031】
前記管理装置10は、ネットワーク15を介して、前記各工作機械100の制御装置、及自動作業装置20の制御装置に接続して、所定の加工スケジュールに従って、その稼働状態を管理する機能を有する。例えば、所定の加工スケジュールに従って、各工作機械100及び各自動作業装置20にそれぞれ作業を指示する作業指示を行う。具体的には、前記加工スケジュールに従って、所定の工作機械100に対して所定の製品を加工するように指示するとともに、所定の自動作業装置20に対して、対応する工作機械100に対して加工済みの製品の取り外しと、新たな素材の装着を行う着脱作業を指示して、各工作機械100における加工を管理する。
【0032】
前記着脱作業は、工作機械100内の加工済みの製品を取り出して、製品が良品である場合には、製品ストッカ121に格納し、一方、製品が保留品である場合には、保留品ストッカ122に格納した後、素材ストッカ120内の素材を取り出して、工作機械100に供給する作業が該当する。尚、この着脱作業を行う場合、本例では、自動作業装置20は対応する工作機械100の作業位置に移動して当該着脱作業を行う。
【0033】
また、管理装置10は、加工スケジュールに従って、所定の自動作業装置20に対し、素材ストッカ125に収容された素材を当該素材ストッカ125から取り出して各工作機械100の素材ストッカ120へ供給する素材供給作業、及び各工作機械100の製品ストッカ121に格納された製品を取り出して製品ストッカ126へ回収する製品回収作業を指示する。この素材供給作業及び製品回収作業では、自動作業装置20は、各工作機械100に付設される素材ストッカ120及び製品ストッカ121と、前記素材ストッカ25及び製品ストッカ126との間を移動して作業を行う。保留品ストッカ122に格納された製品は、オペレータによって状態が確認された後、適宜、回収される。
【0034】
尚、各工作機械100、素材ストッカ125及び製品ストッカ126に対する各自動作業装置20の位置決め誤差は、例えば、各工作機械に設けられた識別図形を各自動作業装置20に設けられたカメラ30によって撮像し、撮像した画像を各制御装置において解析することにより検出される。そして、検出された位置決め誤差に基づいて、各制御装置による制御の下で動作する各ロボット25の上記各作業、即ち、着脱作業、素材供給作業及び製品回収作業における各作業姿勢が補正される。
【0035】
また、本例の工作機械100では、製品(ワーク)の加工を完了した後、加工後の製品(ワーク)の寸法を機内、言い換えれば、加工完了した製品(ワーク)が取り外されることなく工作機械100にそのまま保持された状態で測定する機内測定が実施される。機内測定は従来公知の手法を用いることができ、例えば、図7に示すような測定子としてのタッチプローブ110を工具主軸やタレットに装着し、工作機械100の制御装置による制御の下で工具主軸やタレットを移動させて、タッチプローブ110を加工後の製品(ワークW)の測定部位に接触させ、その接触時におけるスケールの読みに基づき、当該制御装置において測定部位の寸法を算出する。以下、特に断らない限り、加工後の製品をワークWと称する。尚、スケールは工具主軸の移動軸やタレットの移動軸に沿って設けられている。測定部位としては、例えば、ワークWの外径寸法や内径寸法が例示される。
【0036】
ところで、加工時に生じた切屑がワークWに付着していると、正確な寸法測定を行うことができない。このため、従来、測定を行う前に、クレーラントをワークWに掛けて切屑を洗い流した後、圧縮空気をワークWに吹き掛けて、当該ワークWに付着したクーラントや切屑を吹き飛ばす洗浄処理を行うようにしている。ところが、ワークWの外面に付着した切屑ついては、洗浄処理によって比較的容易に除去することができるが、ワークWの穴部に残った切屑は、上記洗浄処理によっても除去できない場合がある。特に、カールした切屑は、穴内から取り除き難い。そして、穴内部にカールした切屑が残っている場合には、正確な測定ができないのは勿論のこと、場合によっては、タッチプローブ110が切屑に接触することによって損傷するが虞がある。
【0037】
そこで、本例では、自動作業装置20に設けられたカメラ30を用いてワークWの測定部位を撮像し、得られた画像を解析してワークWの測定部位に切屑が付着しているか否かを確認するようにしている。以下、本例における機内測定の具体的な手順について、図4に基づいて説明する。尚、図4において、各処理は、工作機械100の制御装置、自動作業装置20の制御装置、及び管理装置10において実行されるが、以下では、説明の簡略化のため、工作機械100の制御装置を含めて単に工作機械100と称し、自動作業装置20の制御装置を含めて単に自動作業装置20と称する。
【0038】
図4に示すように、工作機械100は、ワークWの加工を終了すると、続いて、測定処理を開始して(ステップS1)、まず、ネットワーク15を介して、管理装置10に対して確認準備要求(実行信号の送信)を行った後(ステップS2)、洗浄処理を実行する(ステップS3)。そして、確認準備要求を受信した管理装置10は、対応可能な自動作業装置20を認識した後、認識した自動作業装置20に対して確認作業(測定支援作業)の作業指示を行い(ステップS11)、作業指示を受信した自動作業装置20は、作業対象の工作機械100に対して設定された作業位置に移動した後(ステップS21)、後述する測定支援作業及び着脱作業を実行する。
【0039】
一方、工作機械100は上記洗浄処理を完了すると、加工領域と外部とを仕切るドアを開いた後(ステップS4)、ネットワーク15を介して、対応する自動作業装置20に対して、確認動作を要求し(実行信号の送信)(ステップS5)、これを受信した自動作業装置20は確認動作を実行する(ステップS22)。具体的には、自動作業装置20は、ロボット25を動作させて、図5に示すようにカメラ30を工作機械100の加工領域内に進入させ、ワークWの測定部位を撮像する姿勢を取らせた後、図6に示すように、カメラ30によってワークWの画像を撮像する(撮像工程)。尚、図5において、符号101は工作機械100の主軸であり、符号102はワークWを把持するチャックである。また、図6において、符号Cは切屑を示しており、この切屑Cはカールした形状を有し、ワークWの穴内部に挟み込まれた状態になっている。
【0040】
次に、自動作業装置20は、撮像した画像を解析して、タッチプローブ110が移動する経路上に切屑が存在するか否か、言い換えれば、測定が可能か否かを判定する(ステップS23)(判定工程)。言うまでもなく、移動経路上に切屑が存在する場合には、測定不可であり、移動経路上に切屑が存在しない場合には、測定可である。尚、画像の解析は、例えば、画像を2値化することによって行われ、2値化した現在の画像と、予め取得された切屑の無い基準としての2値化画像(基準画像)との差分を取ることによって、切屑の有無を判別する。尚、上述した画像解析において、画像中に切屑が存在していたとしても、当該切屑がタッチプローブ110の移動経路上にない場合、即ち、タッチプローブ110が移動する際に当該切屑と干渉しない場合には、タッチプローブ110の移動経路上に切屑が無いと判定される。典型的な具体例としては、ワークWの穴部が測定部位である場合に、画像中の穴以外の部位に切屑の存在が認められたとしても、穴の中に切屑が存在しない場合には、タッチプローブ110の移動経路上に切屑は無いと判定される。
【0041】
そして、自動作業装置20は、例えば、画像解析結果を以下の4段階で評価する。
a)測定可(切屑無しの場合。)
b)再洗浄要(切屑の付着が認められるものの、移動経路上に部分的に存在する場合。例えば、穴の一部分に切屑の存在が認められる場合。)
c)除去動作要(移動経路上に全体的に存在する場合。例えば、穴の全体に切屑の存在が認められる場合。)
d)測定不可(後述する再洗浄又は除去動作を行った後も、移動経路上に切屑の存在が認められる場合。)
【0042】
ついで、自動作業装置20は上記の評価結果が再洗浄要の場合には、工作機械100に対して再洗浄を指示し(ステップS24)、評価結果が除去動作要の場合には、工作機械100に対して除去動作を指示し(ステップS25)、評価結果が測定可の場合には、工作機械100に対して測定可の信号を送信する(ステップS26)。また、評価結果が、再洗浄又は除去動作の除去処理(除去工程)を行った後も移動経路上に切屑の存在が認められる測定不可である場合には、自動作業装置20は、工作機械100からワークWを取り外して、保留品ストッカ122に格納し、新たな素材を素材ストッカ120から取り出して、工作機械100のチャック102に把持させた後(ステップS27)、着脱完了信号を工作機械100に送信する(ステップS28)。
【0043】
一方、工作機械100は、自動作業装置20から再洗浄の指示を受けると、ドアを閉じて(ステップS6)、再度、上記洗浄処理を実行した後(ステップS3)、上記ステップS4以降の処理を実行する。また、工作機械100は、自動作業装置20から除去動作の指示を受けると、除去動作を実行した後(ステップS7)、再度、上記ステップS5の処理を実行する。除去動作は、例えば、図8に示すように、タレット又は工具主軸などに装着された除去工具111を回転させた状態で(図8(a))、ワークWの穴内に進入させ(図8(b))、その先端部に設けられた鉤状の部位に切屑Cを絡め取った後、除去工具111を穴内から退出させる(図8(c))態様を採ることができる。尚、除去工具111及び除去動作はあくまでも一例であってこれに限定されるものでは無い。
【0044】
また、工作機械100は、自動作業装置20から測定可の信号を受信すると、上述したタッチプローブ110を用いた測定動作を実行した後(ステップS8)、測定結果を自動作業装置20に送信して(ステップS9)、測定処理を終了する(ステップS10)。尚、工作機械100は測定結果に応じて、次のワークの加工時に、加工誤差を補正することができる。
【0045】
自動作業装置20は、工作機械100から測定結果を受信した後、工作機械100からワークWを取り外して、ワークWが良品である場合には、製品ストッカ121に格納し、不良品である場合には、保留品ストッカ122に格納した後、新たな素材を素材ストッカ120から取り出して、工作機械100のチャック102に把持させた後(ステップS27)、着脱完了信号を工作機械100に送信する(ステップS28)。
【0046】
そして、工作機械100は、前記ステップS28の処理により、自動作業装置20から着脱完了信号を受信すると次のワークを加工し、加工を終了すると、測定処理、即ち、上記ステップS1以降の処理を実行する。
【0047】
以上のように、本例の機内測定方法によれば、自動作業装置20に設けられたカメラ30を用いて加工後のワークWの測定部位を撮像し、得られた画像を解析することによって、測定部位に切屑が存在するか否か、言い換えれば、タッチプローブ110の移動経路上に切屑が存在するか否かを判別し、移動経路上に切屑が存在しないと判定された場合にのみ、タッチプローブ110を用いたワークWの寸法測定を実行するようにしているので、当該ワークWの寸法を正確に測定することができ、また、タッチプローブ110が切屑に接触することによって当該タッチプローブ110が損傷するのを確実に防止することができる。
【0048】
また、本例では、前記ステップS23の判定工程において、タッチプローブ110の移動経路上に切屑が存在すると判定された場合に、工作機械100において、移動経路上の切屑を除去する除去工程、即ち、再洗浄処理(ステップS3)又は除去動作(ステップS7)を行うようにしているので、一度の確認動作(判定処理)により一律に測定不能と判定されて、当該ワークWが保留品に分別されるのを回避することができ、歩留まりの良い測定を行うことができる。
【0049】
(第1の実施形態の変形例1)
上例では、前記ステップS23における測定可否判定を自動作業装置20において実行するようにしたが、これに限られるものでは無く、図9に示すように、例えば、ステップS22において、自動作業装置20のカメラ30により撮像されたワークWの画像データを管理装置10に送信して、この管理装置10において、ステップS23の測定可否判定を実行するようにしても良い。自動作業装置20の制御装置によってステップS23の測定可否判定を実行する態様を採用する場合、この自動作業装置20の制御装置に処理能力の高いコンピュータを用いる必要があるため、自動制御装置20の大きさが大きくなって機動性が悪くなるが、ステップS23における測定可否判定の処理を管理装置10で実行することにより、自動作業装置20の制御装置が過大になるのを防ぐことができ、これにより自動制御装置20の機動性を損なうことなく適正なものにすることができる。
【0050】
尚、図9における各処理も、工作機械100の制御装置、自動作業装置20の制御装置、及び管理装置10において実行される。尚、ステップS12における測定可否判定は、工作機械100の制御装置から管理装置100に対して処理開始信号(指示信号)を送信することにより、当該管理装置100において測定可否判定が実行される態様とすることもできる。また、自動作業装置20におけるステップS24-S26の処理を管理装置10で実行するようにしてもよい。或いは、測定可否判定及びステップS24-S26の処理を自動作業装置20の制御装置及び管理装置10以外の他の装置によって実行してもよい。
【0051】
(第1の実施形態の変形例2)
また、上述の図4および図9に示した例では、管理装置10を介して、工作機械100から自動作業装置20に確認準備を要求するようにしたが、このような態様に限られるものではなく、工作機械100から自動作業装置20に直接確認準備を要求する態様としても良い。この場合、待機状態にある自動作業装置20が当該工作機械100に対して作業を行う態様を採ることができる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。上述した実施形態では、ロボット25及び無人搬送車35から構成される自律走行可能な自動作業装置20によって撮像工程及び判定工程を実行するようにしたが、このような態様に限られるものではなく、図10に示すように、固定されたロボット25により、上述した撮像工程及び判定工程を実行するようにしても良い。尚、この図10に示した例において、図2に示した構成と同じ構成のものについては、同じ符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0053】
図10に示すように、この実施形態では、2台の工作機械100(100A,100B)を対向するように配設するとともに、この工作機械100A,100B間にロボット25を配設した構成が採用されている。この例では、ロボット25は、無人搬送車35の載置面36ではなく、床面に固定されている。また、ロボット25の周辺に、工作機械100Aに対して素材ストッカ120A、製品ストッカ121A及び保留品ストッカ122Aが配設され、また、工作機械100Bに対して素材ストッカ120B、製品ストッカ121B及び保留品ストッカ122Bが配設されている。
【0054】
この例においても、ロボット25は工作機械100からの要求に応じて、撮像工程及び判定工程を含むワークの着脱作業を実行する。この作業手順を図11に示す。尚、この図11に示す作業手順は、上述した図4及び図9に示す手順とほぼ同じ手順であるが、以下、説明が重複するものの、その処理の概要について説明する。また、この実施形態では、工作機械100及びロボット25はそれぞれ制御装置を備えており、各制御装置によってその動作が制御される。この図11に示した各処理も、工作機械100の制御装置及びロボット25の制御装置において実行されるが、以下では、説明の簡略化のため、工作機械100の制御装置を含めて単に工作機械100と称し、ロボット25の制御装置を含めて単にロボット25と称する。
【0055】
図11に示すように、工作機械100はワークWの加工を終了すると、測定処理を開始して(ステップS51)、まず、ロボット25に対して確認準備要求(実行信号の送信)を行った後(ステップS52)、洗浄処理を実行する(ステップS53)。そして、確認準備要求を受信したロボット25は、作業対象の工作機械100に対して設定された作業姿勢に移行、即ち、確認動作準備を実行する(ステップS61)。
【0056】
一方、工作機械100は上記洗浄処理を完了すると、ドアを開いた後(ステップS54)、ロボット25に対して、確認動作を要求し(実行信号の送信)(ステップS55)、これを受信したロボット25は確認動作を実行する(ステップS62)。具体的には、カメラ30を工作機械100の加工領域内に進入させ、ワークWの測定部位を撮像する姿勢を取った後、カメラ30によってワークWの画像を撮像する(撮像工程)。
【0057】
次に、ロボット25は、撮像した画像を解析して、タッチプローブ110が移動する経路上に切屑が存在するか否かを、言い換えれば、測定が可能か否かを、上例と同様の処理によって判定する(ステップ63)(判定工程)。
【0058】
そして、評価結果が再洗浄要の場合には、ロボット25は工作機械100に対して再洗浄を指示し(ステップS64)、評価結果が除去動作要の場合には、工作機械100に対して除去動作を指示し(ステップS65)、評価結果が測定可の場合には、工作機械100に対して測定可の信号を送信する(ステップS66)。また、評価結果が、再洗浄又は除去動作を行った後も移動経路上に切屑の存在が認められる測定不可である場合には、ロボット25は、工作機械100からワークWを取り外して、保留品ストッカ122に格納し、新たな素材を素材ストッカ120から取り出して、工作機械100のチャック102に把持させた後(ステップS67)、着脱完了信号を工作機械100に送信する(ステップS68)。
【0059】
一方、工作機械100は、ロボット25から再洗浄の指示を受けると、ドアを閉じて(ステップS56)、再度、上記洗浄処理を実行した後(ステップS53)、上記ステップS54以降の処理を実行する。また、工作機械100は、ロボット25から除去動作の指示を受けると、上述したステップS7と同様の除去動作を実行した後(ステップ57)、再度、上記ステップS55の処理を実行する。
【0060】
また、工作機械100は、ロボット25から測定可の信号を受信すると、上述したタッチプローブ110を用いた測定動作を実行した後(ステップS58)、測定結果をロボット25に送信して(ステップS59)、測定処理を終了する(ステップS60)。
【0061】
一方、ロボット25は、工作機械100から測定結果を受信した後、当該工作機械100からワークWを取り外して、ワークWが良品である場合には、製品ストッカ121に格納し、不良品である場合には、保留品ストッカ122に格納した後、新たな素材を素材ストッカ120から取り出して、工作機械100のチャック102に把持させた後(ステップS67)、着脱完了信号を工作機械100に送信する処理を行う(ステップS68)。
【0062】
そして、工作機械100は、前記ステップS68の処理により、ロボット25から着脱完了信号を受信すると次のワークを加工し、加工を終了すると、測定処理、即ち、上記ステップS51以降の処理を実行する。
【0063】
この態様によっても、ロボット25に設けられたカメラ30を用いて加工後のワークWの測定部位を撮像し、得られた画像を解析することによって、タッチプローブ110の移動経路上に切屑が存在するか否かを判別し、移動経路上に切屑が存在しないと判定された場合にのみ、タッチプローブ110を用いたワークWの寸法測定を実行するようにしているので、当該ワークWの寸法を正確に測定することができ、また、タッチプローブ110が切屑に接触することによって当該タッチプローブ110が損傷するのを確実に防止することができる。
【0064】
また、前記ステップS63の判定工程において、タッチプローブ110の移動経路上に切屑が存在すると判定された場合に、工作機械100において、移動経路上の切屑を除去する除去工程、即ち、再洗浄処理(ステップS53)又は除去動作(ステップS57)を行うようにしているので、一度の確認動作(判定処理)により一律に測定不能と判定されて、当該ワークWが保留品に分別されるのを回避することができ、歩留まりの良い測定を行うことができる。
【0065】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。上述した各実施形態では、ロボットは工作機械とは別に設けられているが、このような態様に限られるものではなく、図12に示すように、ロボットが工作機械に付設された態様をとることができる。図12において、符号120は工作機械、130はロボット、150はカバーである。尚、この実施形態においても、工作機械120及びロボット130はそれぞれ制御装置を備えており、各制御装置によってその動作が制御される。
【0066】
工作機械120は、ベッド121と、ベッド121上に配設された主軸台122、コラム125及び刃物台127とを備えている。主軸台122には、水平に設けられた主軸123が回転自在に保持され、主軸123の先端部にチャック124が装着され、このチャック124によってワークWが把持されている。また、刃物台127はX軸及びZ軸方向に移動可能に設けられており、その主軸123側の側面にタレット128が設けられ、このタレット128に適宜工具、並びにZ軸方向に沿ってタッチプローブ110及び除去工具(上例と同様の除去工具111)が装着されている。
【0067】
また、コラム125はZ軸方向に移動可能に設けられ、更に、コラム125には、X軸方向に移動可能に工具主軸126が設けられている。この工具主軸126は工具Tを回転可能に保持する。
【0068】
タレット128に装着された工具を加工位置に割り出した状態で、刃物台127をX軸及びZ軸方向に沿って適宜移動させることにより、ワークWが加工され、また、コラム125をZ軸方向に沿って適宜移動させるとともに、工具主軸126をX軸方向に沿って適宜移動させることにより、ワークWが加工される。そして、タレット128に装着されたタッチプローブ110を加工位置に割り出した状態で、刃物台127をX軸及びZ軸方向に沿って適宜移動させて、タッチプローブ110をワークWの測定部位に接触させることにより、当該ワークWの寸法が測定される。また、除去工具111を加工位置に割り出した状態で上例と同様の除去動作が実行される。
【0069】
ロボット130は、移動台141の下面に取り付けられている。移動台141は、支柱143,143によりZ軸方向に沿って水平に支持されたビーム142に係合しており、このビーム142に沿って移動するように設けられている。ビーム142は仕切部材151によって仕切られた加工領域内と加工領域外に跨るように配設されており、移動台131がZ軸方向に移動することで、ロボット130は加工領域内と加工領域外の待機位置との間で往復移動する。ロボット130は6軸の多関節型ロボットであり、その先端部にエンドエフェクタとしてのハンド131及びカメラ132が設けられている。尚、前記仕切部材151には開口が設けられており、前記ビーム142はこの開口に挿通されるように配設され、ロボット130は当該開口を介してZ軸方向に移動する。また、開口は、ロボット130がZ軸方向に移動する部分が適宜シャッタによって開閉されるようになっている。
【0070】
また、加工領域外の待機位置において、ロボット130の下方には、載置台145が設けられており、この載置台145上に素材ストッカ146、製品ストッカ147及び保留品ストッカ148が配設されている。
【0071】
この実施形態においても、ロボット130は工作機械120からの要求に応じて、撮像工程及び判定工程を含むワークの着脱作業を実行するが、この実施形態では、図13に示した手順が実行される。この図13に示した各処理も、工作機械120の制御装置及びロボット130の制御装置において実行されるが、以下では、説明の簡略化のため、工作機械120の制御装置を含めて単に工作機械120と称し、ロボット130の制御装置を含めて単にロボット130と称する。
【0072】
工作機械120はワークWの加工を終了すると、測定処理を開始して(ステップS71)、洗浄処理を実行した後(ステップS72)、前記シャッタを開き(ステップS73)、この後ロボット130に対して確認動作を要求し(実行信号の送信)(ステップS74)、これを受信したロボット130は確認動作を実行する(ステップS81)。具体的には、ロボット130は仕切部材151に設けられた開口から加工領域内に進入した後、カメラ132によってワークWの測定部位を撮像する姿勢を取り、当該カメラ132によってワークWの画像を撮像する(撮像工程)。
【0073】
次に、ロボット130は、撮像した画像を解析して、タッチプローブ110が移動する経路上に切屑が存在するか否か、言い換えれば、上例と同様の処理により、測定が可能か否かを判定する(ステップ82)(判定工程)。
【0074】
そして、評価結果が再洗浄要の場合には、ロボット130は工作機械120に対して再洗浄を指示した後(ステップS83)、仕切部材151の開口を通って加工領域外の待機位置に復帰し、評価結果が除去動作要の場合には、工作機械120に対して除去動作を指示した後(ステップS84)、加工領域内の適宜位置に退避し、評価結果が測定可の場合には、工作機械120に対して測定可の信号を送信する(ステップS85)。また、評価結果が、再洗浄又は除去動作を行った後も移動経路上に切屑の存在が認められる測定不可である場合には、ロボット130は、工作機械120のチャック123からワークWを取り外し、保留品ストッカ148に移送して格納した後、新たな素材を素材ストッカ146から取り出して移送し、工作機械120のチャック123に把持させた後(ステップS86)、加工領域外の待機位置に復帰して、着脱完了信号を工作機械120に送信する(ステップS87)。
【0075】
一方、工作機械120は、ロボット130から再洗浄の指示を受けると、前記シャッタを閉じて(ステップS75)、再度、上記洗浄処理を実行した後(ステップS73)、上記ステップS74以降の処理を実行する。また、工作機械120は、ロボット130から除去動作の指示を受けると、上述したステップS7と同様の除去動作を実行した後(ステップ76)、再度、上記ステップS74の処理を実行する。
【0076】
また、工作機械120は、ロボット130から測定可の信号を受信すると、上述したタッチプローブ110を用いた測定動作を実行した後(ステップS77)、測定結果をロボット130に送信して(ステップS78)、測定処理を終了する(ステップS79)。
【0077】
そして、ロボット130は、工作機械120から測定結果を受信した後、工作機械120のチャック123からワークWを取り外して、ワークWが良品である場合には、製品ストッカ147に移送して格納し、不良品である場合には、保留品ストッカ148に移送して格納した後、新たな素材を素材ストッカ146から取り出して移送し、工作機械120のチャック123に把持させた後(ステップS86)、加工領域外の待機位置に復帰して、着脱完了信号を工作機械120に送信する(ステップS87)。
【0078】
そして、工作機械120は、前記ステップS87の処理により、ロボット130から着脱完了信号を受信すると次のワークを加工し、加工を終了すると、測定処理、即ち、上記ステップS71以降の処理を実行する。
【0079】
以上のように、この実施形態によっても、ロボット130に設けられたカメラ132を用いて加工後のワークWの測定部位を撮像し、得られた画像を解析することによって、タッチプローブ110の移動経路上に切屑が存在するか否かを判別し、移動経路上に切屑が存在しないと判定された場合にのみ、タッチプローブ110を用いたワークWの寸法測定を実行するようにしているので、当該ワークWの寸法を正確に測定することができ、また、タッチプローブ110が切屑に接触することによって当該タッチプローブ110が損傷するのを確実に防止することができる。
【0080】
また、前記ステップS82の判定工程において、タッチプローブ110の移動経路上に切屑が存在すると判定された場合に、工作機械120において、移動経路上の切屑を除去する除去工程、即ち、再洗浄処理(ステップS72)又は除去動作(ステップS76)を行うようにしているので、一度の確認動作(判定処理)により一律に測定不能と判定されて、当該ワークWが保留品に分別されるのを回避することができ、歩留まりの良い測定を行うことができる。
【0081】
(第3の実施形態の変形例)
上述した第3の実施形態では、ロボット130を工作機械120の外側に付設した態様としたが、このような態様に限られるものではなく、図12に示した態様において、例えば、ロボット130を主軸台122側、例えば、主軸台122上に配設した態様としてもよい。この場合、移動台141、ビーム142、支柱143,143、載置台145、素材ストッカ146、製品ストッカ147、保留品ストッカ148などの構成は省略される。
【0082】
そして、この形態では、同様に、ロボット130は工作機械120からの要求に応じて、撮像工程及び判定工程を含むワークの着脱作業を実行するが、図13に示した手順の内、ステップS73及びステップS75の手順が省略される。
【0083】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。上述した各実施形態では、ロボット25,130によって撮像工程及び判定工程を実行するようにしたが、このような態様に限られるものではなく、上述の図12に示した第3の実施形態において、ロボット130に関連する構成、即ち、ロボット130、移動台141、ビーム142、支柱143,143、載置台145、素材ストッカ146、製品ストッカ147、保留品ストッカ148などの構成を省略し、カメラ132を、工作機械120のタレット128や工具主軸126などの移動体に装着して、前記撮像工程及び判定工程を実行するようにしてもよい。但し、移動体はタレット128や工具主軸126に限られるものではなく、工作機械120に設けられる適宜移動体を適用することができる。
【0084】
この場合、測定処理は、工作機械120の制御装置により、図14に示した手順で実行される。尚、以下では、説明の簡略化のため、工作機械120の制御装置を含めて単に工作機械120と称する。
【0085】
即ち、工作機械120はワークWの加工を終了すると、測定処理を開始して(ステップS91)、洗浄処理を実行した後(ステップS92)、確認動作を実行する(処理部に対する実行信号の送信)(ステップS93)。具体的には、工作機械120は、カメラ132が装着された移動体を適宜移動させて、カメラ132によってワークWの測定部位を撮像する(撮像工程)。
【0086】
次に、工作機械120は、撮像した画像を解析して、タッチプローブ110が移動する移動経路上に切屑が存在するか否か、即ち、上例と同様の処理を行う処理部に対して処理開始信号(実行信号)を送信して処理を実行させ、測定が可能か否かを判定する(ステップ94)(判定工程)。
【0087】
そして、評価結果が再洗浄要の場合には、工作機械120は再洗浄処理(ステップS95)、即ち、ステップS92以降の処理を実行し、評価結果が除去動作要の場合には、工作機械120は上例と同様の除去動作を実行した後(ステップS96)、ステップS93以降の処理を実行し、評価結果が測定可の場合には、工作機械120は、測定動作を実行した後(ステップS97)、測定処理を終了する(ステップS98)。
【0088】
また、工作機械120は、再洗浄又は除去動作を行った後の測定可否判定(ステップS94)において、再洗浄又は除去動作を行った後も移動経路上に切屑の存在が認められる測定不可である場合には、測定を中止して測定処理を終了する(ステップS98)。
【0089】
この実施形態によっても、カメラ132を用いて加工後のワークWの測定部位を撮像し、得られた画像を解析することによって、タッチプローブ110の移動経路上に切屑が存在するか否かを判別し、移動経路上に切屑が存在しないと判定された場合にのみ、タッチプローブ110を用いたワークWの寸法測定を実行するようにしているので、当該ワークWの寸法を正確に測定することができ、また、タッチプローブ110が切屑に接触することによって当該タッチプローブ110が損傷するのを確実に防止することができる。
【0090】
また、前記ステップS94の判定工程において、移動経路上に切屑が存在すると判定された場合に、工作機械120において、移動経路上の切屑を除去する除去工程、即ち、再洗浄処理(ステップS95,S92)又は除去動作(ステップS96)を行うようにしているので、一度の確認動作(判定処理)により一律に測定不能と判定されて、当該ワークWが保留品に分別されるのを回避することができ、歩留まりの良い測定を行うことができる。
【0091】
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、上述した実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1 生産システム
10 管理装置
20 自動作業装置
25 ロボット
30 カメラ
35 無人搬送車
100 工作機械
110 タッチプローブ
111 除去工具
120 素材ストッカ
121 製品ストッカ
122 保留品ストッカ
C 切屑
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14