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特開2024-148144コークス炉の原料配置方法およびコークスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148144
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】コークス炉の原料配置方法およびコークスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 47/10 20060101AFI20241009BHJP
   C10B 57/04 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
C10B47/10
C10B57/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024031095
(22)【出願日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2023060798
(32)【優先日】2023-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 純
(72)【発明者】
【氏名】小林 真穂子
(72)【発明者】
【氏名】杉原 広和
(72)【発明者】
【氏名】細原 聖司
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012MA01
(57)【要約】
【課題】合成樹脂類を配合するにあたりコークス強度の低下を抑制可能な技術を提案する。
【解決手段】合成樹脂類をコークス原料として原料炭とともにコークス炉へ装入するにあたり、炭化室のマシーンサイド近傍とコークサイド近傍とに合成樹脂類を偏在させる、コークス炉の原料配置方法である。前記炭化室を長手方向で4以上の領域に等分割し、前記マシーンサイドに接する領域および前記コークサイドに接する領域に、他の領域より多くの前記合成樹脂類を配分すること、前記マシーンサイドに接する領域および前記コークサイドに接する領域に配分する前記合成樹脂類の量の和が、コークス炉全体に装入される前記合成樹脂類の量の75%以上であること、などが好ましい。コークス炉の原料配置方法によって装入した合成樹脂類および原料炭を乾留する、コークスの製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂類をコークス原料として原料炭とともにコークス炉へ装入するにあたり、炭化室のマシーンサイド近傍とコークサイド近傍とに合成樹脂類を偏在させる、コークス炉の原料配置方法。
【請求項2】
前記炭化室を長手方向で4以上の領域に等分割し、前記マシーンサイドに接する領域および前記コークサイドに接する領域に、他の領域より多くの前記合成樹脂類を配分する、請求項1に記載のコークス炉の原料配置方法。
【請求項3】
前記マシーンサイドに接する領域および前記コークサイドに接する領域に配分する前記合成樹脂類の量の和が、コークス炉全体に装入される前記合成樹脂類の量の75%以上である、請求項2に記載のコークス炉の原料配置方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のコークス炉の原料配置方法によって装入した合成樹脂類および原料炭を乾留する、コークスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉において廃プラスチックに代表される合成樹脂類を製鉄原料としてリサイクルするにあたり、コークス炉の原料配置方法およびコークスの製造方法に関する。以下の記載において、質量の単位である「t」は10kgを表す。本明細書中で、「合成樹脂類」には、廃プラスチックと呼称される一般廃棄物の使用済みプラスチックのほか、製造工程で発生する合成樹脂の端材や不良品、使用済みプラスチックなど産業廃棄物となるプラスチックも含まれる。
【背景技術】
【0002】
近年、廃プラスチックによる海洋汚染が世界的な問題となっており、海洋に流出する廃プラスチックの量は全世界でおよそ年間800万tに上ると言われている。海洋汚染の解決は2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)において目標の一つとして挙げられている。これに対応するため欧州では「EUプラスチック戦略」を掲げてプラスチックのリサイクルの強化と使い捨てプラスチックの削減に取り組んでいる。日本においては、1995年に容器包装リサイクル法が制定され、早くから廃プラスチックのリサイクルが進められてきた。さらなる廃プラスチック削減の気運の高まりを受け、2022年から「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行され、さらなる廃プラスチックのリサイクル強化が求められている。鉄鋼業においては、廃プラスチックをコークス炉において、原料として石炭に混合し装入することにより、製鉄原料としてリサイクルする技術が実用化されている。容器包装リサイクル法における廃プラスチックのケミカルリサイクル技術として実施されている。しかしながら、石炭に廃プラスチックを混合してコークスを製造するとコークス強度が低下することが知られており、コークス強度が低下しない廃プラスチックの混合率の限界は約1質量%が上限とされている(非特許文献1)。そこで、廃プラスチック混合によるコークス強度劣化を抑制するため、これまで様々な技術開発が行われてきた。
【0003】
たとえば、特許文献1では、表面から内部に抜ける穴または亀裂を有しておらず、かつ見かけ密度が0.85~1.1g/cmで体積が6000~200000mm(6~200cm)であるプラスチック粒状物を用いてコークス炉で乾留する方法が開示されている。そのような粒状物を成形するために、熱可塑性樹脂を含む廃プラスチックをノズルから押し出す成形装置内で180~260℃の温度とし、ガスを吸引した状態からノズルで押し出し、水冷する手法が示されている。
【0004】
また特許文献2では、コークス炉炭化室に原料を装入したのち、少なくても1時間経ってから炭化室の装入原料上部に廃プラスチックを装入し、熱分解リサイクルする方法が開示されている。コークス炉上部の空間を利用し、コークス強度に影響を与えず大量の廃プラスチックをリサイクルできるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-293032号公報
【特許文献2】特開2019-135281号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】野村誠治、加藤健次、中川朝之、古牧育男 日本エネルギー学会誌 第81巻第8号(2002) PP728-737
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術では、以下のような課題があった。
特許文献1に開示された技術では、表面から内部に抜ける穴もしくは亀裂を有していないプラスチック粒状物が特徴となっている。二軸押し出し成形機で合成樹脂類を成形する場合、一定の長さに揃えるためノズルから押し出した合成樹脂類成形物をカッターで切断する手法が取られ、亀裂や穴を有しないように切断することは実質的に困難である。また、加熱温度を180~260℃とするとしているが、装置内のどの部分の温度を示しているか、具体的に記載されていない。さらに、加熱温度を180℃以上とする場合、合成樹脂類の熱分解によりガスが発生し、溜まったガスが溶融した合成樹脂類内で空隙となるため、密度が低下するといった問題がある。また、合成樹脂類の性状の変更により、コークス強度の低下を抑えることは可能であるものの、コークス中に発生する空隙による強度低下自体は根本的に解決されていない。加えて、合成樹脂類添加率が高い場合にはコークス強度低下の抑制は困難である。
【0008】
また、特許文献2に開示された技術では、石炭と廃プラスチックを分離することにより、コークス強度へ影響を最低限に抑制することが可能であるが、石炭装入後に原料装入蓋を開けて廃プラスチックを装入しなければならないため、ガスの漏洩を防ぐためには、ガス発生量が吸引量を上回らないように厳密に制御する必要がある。しかしながら石炭の品位の変動やその他の原因により炭化室で発生するガス量が増減した場合制御が困難となり、発生ガスが外部に漏洩し異常燃焼を起こす危険性がある。また、炭化室上部では大量に発生するガスを吸引しているが、廃プラスチックを炭化室上部で炭化した場合、粉状となった廃プラスチック炭化物が大量に吸引され、ガス回収・洗浄ラインにおいて閉塞の原因となる可能性があるほか、回収されるタール中にこれらの廃プラスチック炭化物が混入し、製品として回収されるタールの品位を低下させる可能性がある。さらに、石炭塔に原料を装入した後でプラスチックを装入するため、送炭車上部に廃プラ専用ホッパーを用意する必要があり、さらに原料装入の手順が増えるため、コークス炉の生産性が低下する要因となる。
【0009】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、合成樹脂類を配合するにあたりコークス強度の低下を抑制可能なコークス炉の原料配置方法およびコークスの製造方法を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を有利に解決する本発明にかかるコークス炉の原料配置方法は、合成樹脂類をコークス原料として原料炭とともにコークス炉へ装入するにあたり、炭化室のマシーンサイド近傍とコークサイド近傍に合成樹脂類を偏在させることを特徴とする。
【0011】
なお、本発明にかかる合成樹脂類の製鉄原料化方法は、
(a)前記炭化室を長手方向で4以上の領域に等分割し、前記マシーンサイドに接する領域および前記コークサイドに接する領域に、他の領域より多くの前記合成樹脂類を配分すること、
(b)前記マシーンサイドに接する領域および前記コークサイドに接する領域に配分する前記合成樹脂類の量の和が、コークス炉全体に装入される前記合成樹脂類の量の75%以上であること、
などがより好ましい解決手段になり得る。
【0012】
上記課題を有利に解決する本発明にかかるコークスの製造方法は、上記いずれかのコークス炉の原料配置方法によって装入した合成樹脂類および原料炭を乾留することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、合成樹脂類を炭化室の長手方向で両端に集中するように配置したので、それ以外の部分における合成樹脂類の混合率が低下し、コークスの強度低下を抑制することが可能となった。このためより大量の合成樹脂類を処理することが可能となる。合成樹脂類が集中する端部においてはコークス強度が低下するが、大きく劣化した部分は後のコークス搬送工程や冷却処理工程(コークス乾式消火装置、湿式消火装置等)において受ける衝撃により破砕され粉コークスとなる。粉コークスは回収され、鉄鉱石の焼結工程等で燃料として活用することが可能である。
【0014】
また、合成樹脂類は熱分解により揮発するため、石炭と混合して乾留する場合、コークス内部に空孔が発生し、空隙を起点としてコークス内部に亀裂が進展する。合成樹脂類を石炭中に分散して装入する場合、コークス化した際分散した空隙から亀裂が進展し、崩れやすくなるため、コークス炉からの押し出し・排出が困難となる。しかしながら、合成樹脂をコークサイド、マシーンサイドに集中して混合することにより、亀裂の発生がコークスケーキの両端部に限定される。そのため、コークスケーキ中間部分の崩壊が抑制され、コークスの押し出し・排出が容易になる。
【0015】
さらに、合成樹脂類が無酸素条件下で熱分解する際、吸熱することが知られている。コークス炉の耐火レンガと接触しながら吸熱すると局所的に温度が低下し、熱応力により耐火レンガの耐久性を低下させるおそれがある。しがしながら、コークサイド、マシーンサイドにおいては抜熱が大きく、耐火レンガは比較的温度が低いため、吸熱による温度低下の影響を受けにくい。このためレンガの劣化を抑制する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態にかかるコークス炉の原料配置方法を説明する概略図であって、(a)は平面図を表し、(b)は側面図を表す。
図2】比較例にかかるコークス炉の原料配置方法を説明する概略図であって、(a)は平面図を表し、(b)は側面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための設備や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
(コークス炉の原料配置方法)
本実施形態では、コークス炉炭化室内に石炭と成型した合成樹脂類とを原料として供する際、長手方向で炭化室端部に合成樹脂類を偏在させて配置するものである。すなわち、コークス排出側[以後、コークサイド(C/S)と記載する]およびコークス押出し側[以後、マシーンサイド(M/S)と記載する]の合成樹脂類の混合率(=合成樹脂類質量/(石炭質量+合成樹脂質量)×100、質量基準百分率)ができるだけ高くなるように配置する。
【0019】
本実施形態では、炭化室の長手方向で、炭化室内を4以上の領域に等分割し、コークサイドに接した領域とマシーンサイドに接した領域の合成樹脂類の混合率が内側の他の領域の合成樹脂類の混合率を超えるように装入することが好ましい。さらに、その混合率比が3倍以上であるとより好ましい。その場合、コークサイドに接した領域とマシーンサイドに接した領域とに装入される合成樹脂類の合計質量は全体の75%以上とすることが好ましい。このとき、その他の内側の領域の合成樹脂類の混合率は、全体の平均合成樹脂類の混合率の50%以下となる。そのため、その領域の乾留後コークスの強度低下も、合成樹脂類を均等に分布させた場合の50%以下に抑制することが可能となる。炭化室の領域分割数の上限を規定するものではないが、原料装入設備の設置負荷を考慮し、炭化室を10分割以下とすることが好ましく、6分割以下がより好ましい。
【0020】
通常コークス炉の炭化室は細長い略直方体形状(一例としてW0.6m×D15m×H7m)をしている。この炭化室に均一に原料を散布するため、炭化室の長手方向(D方向)に並んだ複数の送炭口から石炭を装入する。このとき、コークサイドやマシーンサイドに最も近い装入口から装入される合成樹脂類の混合率を高くすることにより、コークサイドやマシーンサイド近辺に集中して廃プラスチックを偏在配置することが可能となる。
【0021】
本実施形態で石炭と混合する合成樹脂類のコークス炉への添加量は、特に制限するものではないが、コークス炉への装入原料全体に対する割合で0.5質量%以上とすることが環境への配慮上好ましい。1.0質量%超えとすることがより好ましく、3.0質量%以上とすることがさらに好ましい。上限を特に制限するものではないが、5質量%超えの添加はコークス強度が低下するおそれがある。特に、多量に合成樹脂類を添加する場合には、コークサイドおよびマシーンサイド近辺の領域を除く内側の領域で、装入原料あたり1.0質量%以下になるように、合成樹脂類をコークサイドおよびマシーンサイド近辺の領域に偏在させることが好ましい。
【0022】
(合成樹脂類の成形物)
合成樹脂類は、同じ質量を添加する場合、添加個数が多いほどコークス強度が低下する。合成樹脂類が石炭中で乾留される場合、合成樹脂類は揮発分が多く、そのため揮発後に空隙が発生し、乾留後のコークス内部に空隙が発生することとなる。空隙はコークス内部において亀裂の起点となるため、空隙の数が増えるほど亀裂が多く発生し、コークス強度が劣化すると考えられる。
【0023】
合成樹脂類は、たとえば、二軸押し出し成形機で成形して合成樹脂類の成形物を製造する。合成樹脂類を破砕もしくは事前に造粒して供給する。この際、合成樹脂類の含有水分は5質量%以下となるように調整することが好ましい。合成樹脂類の含有水分を減少させることで、安定して合成樹脂類が成形できるようになり、成形物の密度が増加する。合成樹脂類の水分を蒸発させるためには、熱風気流式乾燥機をはじめ、様々なタイプの乾燥機を用いることができる。
【0024】
本実施形態で用いて好適な、合成樹脂類を成形可能な二軸押し出し成形機は任意であり、基本的な構造に差異はない。ケーシングに収められた二軸のスクリューによって供給原料を混錬し、加熱したプレートに設置されたノズルを通して合成樹脂類が押し出される。円筒状に押し出された合成樹脂類は回転式のカッターで切断され、一定の長さに調整される。この際、合成樹脂類1個当たりの体積を、ノズルの内径とカッター切断速度で調整する。通常ノズルは内径が2.0~3.0cmφのものが用いられることが多い。内径が4.0~6.0cmφの大径ノズルを用いて成形することにより、大形の成形物を製造することが可能となる。個数当たりの合成樹脂類の質量が増加し、同じ装入個数での装入可能量を増加することができる。
【0025】
成形された合成樹脂類はノズルの内径と同じ、もしくはノズルの内径より若干大きい直径の円筒状となり、その長さはカッターの回転速度で調整することができる。成形物の長さは成形ノズルの位置や状態により影響を受けるため、一定の長さに揃えることは困難である。短い成形物から長い成形物まで分布ができることになる。成形物の最大長さを長くすることで体積を増加できるが、成形物長さの分布の中で最大の長さが20cm以下とすることが好ましい。コークス炉の炭化室上部の装入口の直径は40~50cm程度であるため、最大長さをこれ以上長くすると詰まりが発生するおそれがあるからである。成形物の平均体積は90cm以上が好ましく、150cm以上がより好ましく、200cm以上がさらに好ましい。上限はコークス炉に装入する際の装入口の大きさにもよるが、1000cm以下とすることが好ましく、600cm以下とすることがさらに好ましい。
【0026】
(コークスの製造方法)
成形した合成樹脂類の成形物をホッパーに投入し、定量フィーダーにより一定速度で切り出し、コークス炉へ配合炭を供給するベルトコンベア上の石炭の上に切り出す。本実施形態では、コークサイド、マシーンサイドに最も近い装入口から装入される合成樹脂類をより多く配分し、その他の装入口から装入される合成樹脂類をより少なく配分する。それにより、その他の装入口から挿入される合成樹脂類の混合率が低下し、その部分の乾留後のコークス強度低下を抑制することが可能である。コークス強度の指標としてはJIS K2151:2004のコークス類試験法に示されたドラム強度測定法に従い、ドラム試験機に装入して150回転させた後15mm目開きの篩で篩った篩上の質量割合をドラム強度指標DI150/15として測定できる。ドラム強度指標DI150/15を用いる場合、DI150/15の低下が1ポイント未満となるようにすることが好ましい。DI150/15指数には0.5ポイント程度の測定誤差があることが知られており、1ポイント以上の強度低下があれば明らかにコークス強度が低下していると確認できるからである。コークス炉操業においても、コークス強度(DI150/15)低下1ポイント以上でコークス強度が低下していると認識され、原料炭品位向上などの操作を行うことがある。
【0027】
合成樹脂類の混合率の管理は、基本的に石炭の切り出し速度、合成樹脂類の切り出し速度を事前に測定し、定量フィーダーの供給速度もしくはゲート開度等によりそれぞれの切り出し速度を調整して一定比率となるようにして行う。また、コークス炉炭化室長手方向(D方向)における合成樹脂類の混合率は、直接測定することは困難である。そこで、炭化室送炭口上部において送炭車の各ホッパーにおける合成樹脂類の混合率から推定できる。炭化炉において一つの炉窯に対して複数の装入口から原料を装入する場合、各装入口から同時に装入されるため、各装入口直下の合成樹脂類の混合率は、送炭車の各ホッパーにおける合成樹脂類の混合率と同じであると考えられるからである。送炭車の各ホッパーにおける合成樹脂類の混合率は、各ホッパー上部にカメラを設置し、画像解析により合成樹脂類を検出して合成樹脂装入質量を算出することで推定可能である。
【0028】
合成樹脂類の成形物の切り出し位置は、石炭乾燥設備(CMC)を通った後でベルトコンベアが低い場所が好ましい。CMCでは石炭が加熱乾燥されるため、CMCの前で合成樹脂類の成形物を添加した場合、合成樹脂類の成形物がCMC内で溶融する恐れがあるからである。合成樹脂類の成形物は配合炭と一緒に石炭塔、送炭車を通り、炭化室に供給される。合成樹脂類は炭化室内で熱分解し一部が炭として残るが、多くはガスやタールとしてリサイクルされる。
【実施例0029】
(発明例1)
熱可塑性樹脂を主体とする廃プラスチックの混合物を破砕し、水分が5%以下であることを確認したのち、二軸押出成形機を用いて加熱しながら40mmφのノズルから押出し、切断して円筒状に成形した。図1に示すように、得られた成形物1をコークス原料として用いられる配合炭2の約40kgとともに乾留缶3に装入した。廃プラスチック成形物1の配置にあたり、配合炭2の量を8分割し、まず配合炭の1/8を乾留缶3に敷き詰めた。その後、乾留缶3の長手方向の一方の端に接触するように寄せて所定量(装入予定量の1/4)の廃プラスチック成形物1を並べた。次に配合炭の1/8をさらに装入し、装入炭密度が830kg/mとなるように押し固めた。このような工程を4回繰り返し、缶の長手方向の一方の端に廃プラスチック成形物1が偏在するように配置した。図1(a)は乾留缶1内の廃プラスチック配置を説明する平面図である。図1(b)は乾留缶1内の廃プラスチック配置を説明する側面図である。配合炭質量に対する廃プラスチックの混合割合は3質量%とした。試験乾留炉で700~1100℃で20時間乾留後、上部から水をかけて急冷した後、乾燥し、コークスを得た。得られたコークスについて、JIS K2151:2004のコークス類試験法に示されたドラム強度測定法に従い、ドラム試験機に装入して150回転させた後15mm目開きの篩で篩った篩上の質量割合をドラム強度指標DI150/15として測定した。乾留後のコークスは廃プラスチック成形物1が集中配合された側面に亀裂が多く確認され、その近傍のコークス強度が低下していることが推測された。一方、その他のコークスは健全であった。
【0030】
(比較例1)
図2に示すように、発明例と同一の手法で製作した廃プラスチック成形物1を、約40kgの配合炭2中になるべく均一になるように配置した。廃プラスチック成形物1の配置にあたり、配合炭2の量を8分割し、まず配合炭1の1/8を乾留缶3に敷き詰めた。その後、乾留缶3の一方の端から長手方向および幅方向の長さのそれぞれ1/4の位置と3/4の位置とに廃プラスチック成形物1の中心が来るように、廃プラスチック成形物1を配置した。このとき、廃プラスチックの装入予定量の1/4になうようにした。このような工程を4回繰り返し、乾留缶3の長手方向に4分割したとき、どの領域においても廃プラスチックの混合率が同じになるようにした。図2(a)は乾留缶1内の廃プラスチック配置を説明する平面図である。図2(b)は乾留缶1内の廃プラスチック配置を説明する側面図である。配合炭質量に対する廃プラスチックの混合割合は3質量%とした。試験乾留炉で700~1100℃で20時間乾留後、上部から水をかけて急冷した後、乾燥し、コークスを得た。得られたコークスについて、JIS K2151:2004のコークス類試験法に示されたドラム強度測定法に従い、ドラム試験機に装入して150回転させた後15mm目開きの篩で篩った篩上の質量割合をドラム強度指標DI150/15として測定した。
【0031】
得られたコークスのドラム強度を比較したものを表1に示す。参考例として、配合炭のみで乾留したコークスの強度を表1に併記した。比較例のように石炭中に廃プラスチック成形物1を乾留缶3に均等に配置した場合、コークスのドラム強度が参考例と比較して大きく低下する。発明例のように廃プラスチック成形物1を乾留缶3の一方の端部に集中して配置することにより、参考例と比較したドラム強度の低下が抑制されることがわかった。
【0032】
【表1】
【0033】
(発明例2)
熱可塑性樹脂を主体とする廃プラスチックの混合物を破砕し、水分が5%以下であることを確認したのち、二軸押出成形機を用いて加熱しながら40mmφのノズルから押出し、軸長20mm以上に切断して円筒状に成形した。これをコークス炉用配合炭に混合率3質量%となるように混合したのち、コークス原料として、コークス炉上部の送炭車のホッパーに装入した。送炭車には4基のホッパーが設置されていた。そのホッパーのうち、廃プラスチックを混合した石炭をマシーンサイドおよびコークサイドに最も近いホッパーにそれぞれ装入し、内側のホッパーには石炭のみを装入した。次に送炭車の各ホッパー下部から同時にコークス原料を切り出し、炭化室に装入することにより、炭化室のマシーンサイドおよびコークサイドの廃プラスチック混合率が3質量%、中間部の廃プラスチック混合率が0質量%となるようにした。この際、炭化室内の廃プラスチックの平均混合率は1.5質量%となった。乾留後に得られたコークスの強度をJIS K2151:2004のコークス類試験法に示されたドラム強度測定法に従い測定した。その結果、ドラム試験機に装入して150回転させた後15mm目開きの篩で篩った篩上の質量割合であるドラム強度指標DI150/15の値は85.7であった。また、乾留後のコークスケーキ押し出し性は後記する比較例2より良好であった。
【0034】
(比較例2)
熱可塑性樹脂を主体とする廃プラスチックの混合物を破砕し、水分が5%以下であることを確認したのち、二軸押出成形機を用いて加熱しながら40mmφのノズルから押出し、軸長20mm以上に切断して円筒状に成形した。これをコークス炉用配合炭に混合率1.5質量%となるように混合したのち、コークス原料として、コークス炉上部の送炭車の4基のホッパーに均等に装入した。次に送炭車の各ホッパー下部から同時に石炭を切り出し、炭化室内の廃プラスチックの混合率が均等に1.5質量%となるようにした。乾留後に得られたコークスの強度をJIS K2151:2004のコークス類試験法に示されたドラム強度測定法に従い測定した。その結果、ドラム試験機に装入して150回転させた後15mm目開きの篩で篩った篩上の質量割合であるドラム強度指標DI150/15の値は84.0であった。また、乾留後のコークスケーキの押し出し性は発明例2より悪化し、コークスケーキの排出により大きな動力が必要となった。
【符号の説明】
【0035】
1 (廃プラスチック)成形物
2 配合炭
3 乾留缶(炭化室)
図1
図2