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特開2024-148173農薬組成物、情報処理装置およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148173
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】農薬組成物、情報処理装置およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/00 20060101AFI20241009BHJP
   A01N 43/80 20060101ALI20241009BHJP
   A01N 39/04 20060101ALI20241009BHJP
   A01N 43/06 20060101ALI20241009BHJP
   A01N 43/08 20060101ALI20241009BHJP
   A01N 47/38 20060101ALI20241009BHJP
   A01N 43/824 20060101ALI20241009BHJP
   A01N 47/36 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
A01N25/00
A01N43/80 102
A01N39/04 B
A01N43/06
A01N43/08 G
A01N47/38
A01N43/824 C
A01N47/36 101E
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024104699
(22)【出願日】2024-06-28
(62)【分割の表示】P 2023562426の分割
【原出願日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2021189672
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232564
【氏名又は名称】バイエルクロップサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【弁理士】
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 健司
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 健太
(72)【発明者】
【氏名】山岡 達也
(72)【発明者】
【氏名】仁木 理人
(72)【発明者】
【氏名】朴 民植
(72)【発明者】
【氏名】赤藤 武一郎
(72)【発明者】
【氏名】芝野 晴通
(72)【発明者】
【氏名】奈良部 晋一
(72)【発明者】
【氏名】木内 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 善孝
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AA03
4H011AB01
4H011BA05
4H011BB06
4H011BB08
4H011BB09
4H011BB10
4H011BB14
4H011BC03
4H011BC06
4H011BC07
4H011BC16
4H011BC19
4H011BC20
4H011DA02
4H011DA15
4H011DD01
4H011DD02
4H011DG16
4H011DH07
4H011DH10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】圃場における農薬組成物の十分な分散性を担保することができる固体農薬組成物、および該組成物を施用する雑草の防除方法を提供する。
【解決手段】下記成分(a)および(b2):(a)殺虫効果を有する有効成分、殺菌効果を有する有効成分および除草効果を有する有効成分からなる群より選択される少なくとも1つの有効成分、(b2)1~20%w/wのアニオン分散剤を含み、前記アニオン分散剤として、アルキルナフタレンスルホン酸誘導体およびリグニンスルホン酸誘導体を含む、固体農薬組成物とする。また、コンピュータにより読み取り可能な命令を実行する少なくとも1つのプロセッサにより実行される、雑草の防除方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)および(b1)を含む液体農薬組成物、または、下記成分(a)および(b2)を含む固体農薬組成物:
(a)殺虫効果を有する有効成分、殺菌効果を有する有効成分および除草効果を有する有効成分からなる群より選択される少なくとも1つの有効成分、
(b1)1~200g/Lのアニオン分散剤、
(b2)1~20%w/wのアニオン分散剤。
【請求項2】
圃場への施用時、アニオン分散剤の施用量が9~300g/haとなるように設計されている、請求項1に記載の農薬組成物。
【請求項3】
前記固体農薬組成物が、水和剤または粒剤である、請求項1または2に記載の農薬組成物。
【請求項4】
前記固体農薬組成物が、自己拡散性および浮遊性の少なくとも1つを有する水和剤である、請求項1~3のいずれか1項に記載の農薬組成物。
【請求項5】
前記液体農薬組成物が、水性懸濁剤または油性懸濁剤である、請求項1または2に記載の農薬組成物。
【請求項6】
前記除草効果を有する有効成分が、テフリルトリオン、トリアファモン、フェントラザミド、クロメプロップ、オキサジアゾン、イプフェンカルバゾン、カフェンストロール、インダノファン、フェノキサスルホン、メフェナセット、ブタクロール、プレチラクロール、フェンキノトリオン、ベンゾビシクロン、スルコトリオン、メソトリオン、ピラゾレート、ベンゾフェナップ、ピリミスルファン、エトキシスルフロン、ベンスルフロンメチル、プロピリスルフロン、メタゾスルフロン、ペノキススラム、オキサジアルギル、ピラクロニル、ペントキサゾン、フロルピラウキシフェンベンジル、フェノキサプロップエチル、シハロホップブチル、メタミホップ、シクロピリモレート、ジメタメトリン、シメトリン、ベンタゾン、オキサジクロメホン、ブロモブチドおよびテトフルピロリメットからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1~5のいずれかに記載の農薬組成物。
【請求項7】
前記殺虫効果を有する有効成分が、イミダクロプリド、チアクロプリド、ジノテフラン、フルピラジフロン、フルピリミン、ニテンピラム、クロチアニジン、スルホキサフロル、エチプロール、フィプロニル、スピノサド、テトラニリプロール、クロラントラニリプロール、シアントラニリプロール、ピメトロジン、トリフルメゾピリム、ベンズピリモキサンおよびオキサゾスルフィルからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1~6のいずれかに記載の農薬組成物。
【請求項8】
前記殺菌効果を有する有効成分が、イソチアニル、プロベナゾール、トリシクラゾール、ジクロベンチアゾクス、ペンフルフェン、チフルザミド、インピルフルキサム、カスガマイシン、バリダマイシン、フサライド、メトミノストロビン、アゾキシストロビンおよびペンシクロンからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1~7のいずれかに記載の農薬組成物。
【請求項9】
前記アニオン分散剤が、アルキルナフタレンスルホン酸誘導体およびリグニンスルホン酸誘導体からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~8のいずれかに記載の農薬組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に農薬組成物を1または複数、圃場に施用する、病害、害虫および/または雑草の防除方法であって、
前記アニオン分散剤が9~300g/haの施用量で前記圃場に施用される、防除方法。
【請求項11】
前記アニオン分散剤が9~150g/haの施用量で前記圃場に施用される、請求項10に記載の防除方法。
【請求項12】
前記有効成分が、50~650g/haの施用量で前記圃場に施用される、請求項10または11に記載の防除方法。
【請求項13】
前記圃場が水田であり、
前記施用が、水田の水面への局所適用である、請求項10~12のいずれか1項に記載の防除方法。
【請求項14】
(i-a)前記農薬組成物を、自動計測して前記圃場に施用するか、
(i-b)前記農薬組成物を複数、自動計測および/または自動混合して前記圃場に施用するか、
(ii-a)前記農薬組成物を、計測して前記圃場に施用するか、または、
(ii-b)前記農薬組成物を複数、計測および/または混合して前記圃場に施用する、
請求項10~13のいずれか1項に記載の防除方法。
【請求項15】
前記農薬組成物が、前記圃場の病害、害虫および/または雑草の発生予測、および/または、その発生状況に基づいて自動選択または選択される、請求項10~14のいずれか1項に記載の防除方法。
【請求項16】
請求項10~15のいずれか1項に記載の防除方法に使用するための、請求項1~9のいずれかに記載の複数の農薬組成物と、空間的に分離された複数の容器とを含むキットであって、
前記複数の農薬組成物のそれぞれが、前記複数の容器のそれぞれに格納された、キット。
【請求項17】
病害、害虫および/または雑草を防除するための、請求項1~9のいずれか1項に記載の農薬組成物の使用。
【請求項18】
前記病害、害虫および/または雑草が水田に発生する、請求項17に記載の農薬組成物の使用。
【請求項19】
請求項1~9のいずれか1項に記載の農薬組成物の製造方法であって、
前記有効成分と前記アニオン分散剤とを混合する混合工程と、
前記混合工程の後、粉砕を行う粉砕工程と、
前記粉砕工程の後、前記アニオン分散剤を更に添加して混合する更なる混合工程と
を含む、製造方法。
【請求項20】
請求項1~9のいずれか1項に記載の農薬組成物を複数混合することを含む、農薬組成物の製造方法。
【請求項21】
少なくとも1つのプロセッサを具備し、
該少なくとも1つのプロセッサが、
水稲が栽培される対象領域に含まれる特定領域について、該特定領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す種類情報、および、前記特定領域において発生した前記少なくとも1つの害の各々の量を示す量情報を取得し、
前記種類情報および前記量情報に基づいて、前記特定領域に散布される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する、
ように構成されることを特徴とする情報処理装置。
【請求項22】
前記少なくとも1つの害が、病害、害虫、および/または、雑草を含む、請求項21に記載の情報処理装置。
【請求項23】
前記対象領域が少なくとも1つの圃場を含む、請求項21または請求項22に記載の情報処理装置。
【請求項24】
前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記対象領域に含まれる複数の単位領域の各々について、該単位領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す単位種類情報、および、該単位領域において発生した前記少なくとも1つの害の各々の量を示す単位量情報を取得し、
前記単位種類情報および前記単位量情報を用いて、前記対象領域の中から、発生した害の種類および発生した害の量において共通または実質的に共通する複数の単位領域、を含む1つのゾーンを決定し、
該1つのゾーンを前記特定領域として用いることにより、該1つのゾーンに散布される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する、
ように構成される、請求項21から請求項23のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項25】
前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記単位種類情報および前記単位量情報を用いて、前記対象領域の中から、各々が複数の単位領域を含む複数のゾーンであって、各ゾーンが発生した害の種類および発生した害の量において共通または実質的に共通する複数の単位領域を含む複数のゾーン、を決定し、
該複数のゾーンの各々を前記特定領域として用いることにより、該複数のゾーンの各々に散布される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する、
ように構成される、請求項24に記載の情報処理装置。
【請求項26】
前記少なくとも1つのプロセッサが、
学習済みの第1の学習モデルまたは学習済みの第1の決定木モデルに、
前記種類情報および前記量情報と、
前記特定領域の土壌の種類に関する土壌情報、前記特定領域において過去に発生した害に関する害発生情報、前記特定領域の土壌に埋没している種子に関する種子埋没情報、前記特定領域における薬剤に対する抵抗性を有する害の蔓延状況に関する害蔓延情報、および、前記特定領域において水稲を栽培する期間について予測された気象データに関する気象予測情報、のうちの少なくとも1つと、
を入力することにより、前記特定領域において発生する害の種類および該害の量に関する害発生予測情報、該害が生育する時期に関する害生育予測情報、ならびに、前記特定領域において発生する薬害に関する薬害情報を取得し、
学習済みの第2の学習モデルまたは学習済みの第2の決定木モデルに、前記害発生予測情報、前記害生育予測情報、および、前記薬害情報を入力することにより、前記特定領域に散布される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する、
ように構成される、請求項21から請求項25のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項27】
前記少なくとも1つのプロセッサが、
学習済みの第3の学習モデルまたは学習済みの第3の決定木モデルに、
前記害発生予測情報により示される害に対する薬剤の一般的な効果に関する情報と、
前記特定領域において過去に使用された薬剤の種類および効果に関する情報、前記特定領域の土壌の組成に関する情報、ならびに、前記特定領域の水分保持能力に関する情報、のうちの少なくとも1つと、
を入力することにより、前記特定領域に散布される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する、
ように構成される、請求項26に記載の情報処理装置。
【請求項28】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の情報処理装置を具備する散布装置であって、
当該散布装置を移動させる駆動源および駆動機構と、
各タンクが前記複数の農薬組成物のうちの該各タンクに固有の農薬組成物を収容する、ように構成された複数のタンクと、
該複数のタンクに結合され、該複数のタンクのうちの選択された複数の選択タンクから、各選択タンクに収容される農薬組成物について前記決定された量を計測して取得し、各農薬組成物を混合して薬剤を調製する、ように構成された調製装置と、
該調製装置に結合され、該調製装置により調製された前記薬剤を散布する、ように構成されたノズルと、
を具備する散布装置。
【請求項29】
前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記特定領域の位置を示す第1位置情報を取得し、
当該散布機の現在位置を示す第2位置情報を取得し、
前記第1位置情報により示される前記特定領域の位置と前記第2位置情報により示される前記現在位置との差が閾値以下であるときに、前記調製装置により調製された前記薬剤を放出する旨の信号を前記ノズルから散布する旨を指示する信号を送信する、
ように構成された請求項28に記載の散布装置。
【請求項30】
前記調製装置により調製された前記薬剤は、1~200g/Lまたは1~20%w/wの濃度を有するアニオン分散剤を含み、
前記アニオン分散剤が9~300g/haの施用量で散布される、請求項28または請求項29に記載の散布装置。
【請求項31】
コンピュータにより読み取り可能な命令を実行する少なくとも1つのプロセッサにより実行される方法であって、
水稲が栽培される対象領域に含まれる特定領域について、該特定領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す種類情報、および、前記特定領域において発生した前記少なくとも1つの害の各々の量を示す量情報を取得する段階と、
前記種類情報および前記量情報に基づいて、前記特定領域に散布される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
少なくとも1つのプロセッサにより実行されることにより、
水稲が栽培される対象領域に含まれる特定領域について、該特定領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す種類情報、および、前記特定領域において発生した前記少なくとも1つの害の各々の量を示す量情報を取得し、
前記種類情報および前記量情報に基づいて、前記特定領域に散布される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する、
ように、前記少なくとも1つのプロセッサを機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項33】
少なくとも1つのプロセッサを具備し、
該少なくとも1つのプロセッサが、
種籾が直播種されるまたは種籾が播種された育苗箱から育成した苗が移植される対象領域に含まれる特定領域について、該特定領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す種類情報、および、前記特定領域において発生した前記少なくとも1つの害の各々の量を示す量情報を取得し、
前記種類情報および前記量情報に基づいて、前記特定領域に直播種される種籾または該特定領域に苗を移植するために育苗箱に播種される種籾に処理される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する、
ように構成されることを特徴とする情報処理装置。
【請求項34】
前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記対象領域に含まれる複数の単位領域の各々について、該単位領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す単位種類情報、および、該単位領域において発生した前記少なくとも1つの害の各々の量を示す単位量情報を取得し、
前記単位種類情報および前記単位量情報を用いて、前記対象領域の中から、発生した害の種類および発生した害の量において共通または実質的に共通する複数の単位領域、を含む1つのゾーンを決定し、
該1つのゾーンを前記特定領域として用いることにより、該1つのゾーンに直播種される前記種籾または前記育苗箱に播種される前記種籾に処理される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する、
ように構成される、請求項33に記載の情報処理装置。
【請求項35】
前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記単位種類情報および前記単位量情報を用いて、前記対象領域の中から、各々が複数の単位領域を含む複数のゾーンであって、各ゾーンが発生した害の種類および発生した害の量において共通または実質的に共通する複数の単位領域を含む複数のゾーン、を決定し、
該複数のゾーンの各々を前記特定領域として用いることにより、該複数のゾーンの各々に直播種される前記種籾または前記育苗箱に播種される前記種籾に処理される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する、
ように構成される、請求項34に記載の情報処理装置。
【請求項36】
前記少なくとも1つのプロセッサが、
学習済みの第1の学習モデルまたは学習済みの第1の決定木モデルに、
前記特定領域の土壌の種類に関する土壌情報、前記特定領域において過去に発生した害に関する害発生情報、前記特定領域における薬剤に対する抵抗性を有する害の蔓延状況に関する害蔓延情報、および、前記特定領域において水稲を栽培する期間について予測された気象データに関する気象予測情報、のうちの少なくとも1つ、
を入力することにより、前記特定領域において発生する害の種類および該害の量に関する害発生予測情報、該害が生育する時期に関する害生育予測情報、ならびに、前記特定領域において発生する薬害に関する薬害情報を取得し、
学習済みの第2の学習モデルまたは学習済みの第2の決定木モデルに、
前記害発生予測情報、前記害生育予測情報、および、前記薬害情報を入力することにより、前記特定領域に直播種される前記種籾または前記育苗箱に播種される前記種籾に処理される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する、
ように構成される、請求項33から請求項35のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項37】
コンピュータにより読み取り可能な命令を実行する少なくとも1つのプロセッサにより実行される方法であって、
種籾が直播種されるまたは種籾が播種された育苗箱から育成した種が移植される対象領域に含まれる特定領域について、該特定領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す種類情報、および、前記特定領域において発生した前記少なくとも1つの害の各々の量を示す量情報を取得する段階と、
前記種類情報および前記量情報に基づいて、前記特定領域に直播種される種籾または該特定領域に苗を移植するために育苗箱に播種される種籾に処理される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
少なくとも1つのプロセッサにより実行されることにより、
種籾が直播種されるまたは種籾が播種された育苗箱から育成した苗が移植される対象領域に含まれる特定領域について、該特定領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す種類情報、および、前記特定領域において発生した前記少なくとも1つの害の各々の量を示す量情報を取得し、
前記種類情報および前記量情報に基づいて、前記特定領域に直播種される種籾または該特定領域に苗を移植するために育苗箱に播種される種籾に処理される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する、
ように、前記少なくとも1つのプロセッサを機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬組成物、情報処理装置およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、水稲用に開発された多種多様な農薬製剤が販売されている。かかる農薬製剤には、例えば、除草剤、殺虫剤および殺菌剤が含まれる。
【0003】
除草剤としては、雑草発生前、水稲種子播種又は水稲移植前、播種又は移植直後に散布する初期剤;移植後に散布される初中期一発剤;ならびに、これら初期剤および初中期一発剤では防除できなかった雑草および難防除雑草の防除のために水稲生育中期から後期に散布する後期剤中後期剤など、有効成分および散布適期に応じて数多くの薬剤が開発され、販売されている。また、殺虫剤および殺菌剤としては、種子処理剤、箱施用剤および本田施用剤などが有効成分の特性に応じて開発され、販売されている。
【0004】
効率的な防除の観点から、複数の有効成分を含有する混合剤が開発されており、かかる混合剤を使用することで、多種多様な病害、害虫および/または雑草を効率よく防除することができる。その一方で、必ずしも圃場固有の病害、害虫および/または雑草の発生状況に合致した製品が販売されているとは限らず、時には必要以上の有効成分が散布される現状もあり、環境への負荷が懸念される。このような現状に鑑み、圃場の状況に応じて、単一または複数の有効成分を含有する農薬製剤を適量で施用することは、環境負荷の低減につながるものである。
【0005】
また、圃場の病害、害虫および/または雑草発生状況を的確に把握できなければ、適切な薬剤選定ができず、病害、害虫および/または雑草を完全に防除できない可能性があり、その結果、防除できなかった病害、害虫および/または雑草対策の為、追加的に薬剤を散布することになり、生産者の手間、コストおよび環境負荷が増す可能性がある。さらに、病害、害虫および/または雑草を適切に防除できなかった圃場では、作物植物の生育が不十分となり、減収につながることもある。すなわち、適切な薬剤を、適期に、必要量にて施用することが効率的な農作に必要不可欠である。
【0006】
なお、従来から、無人飛行装置が、カメラにより撮像された農地の画像に対する分析の結果に基づいて処理ユニットにより決定された場所において、液剤を噴射するユニットを作動させる技術が知られている(特許文献7)。しかし、この技術は、水田の病害、害虫および/または雑草発生状況に応じて適切な薬剤を選定するものではない。
【0007】
薬剤の効率的な施用という観点からは、単一の有効成分を含有する農薬製剤を複数選択し、これらを適切な量で混合し、1回で施用することは有効な手段である。しかしながら、農薬製剤の剤型は、粒剤、乳剤、フロアブル製剤および顆粒水和剤等、様々であり、それらを混合して使用する場合にはいくつか問題点がある。例えば、(1)希釈して散布することが可能な農薬製剤型(乳剤、フロアブル剤および顆粒水和剤等)であっても、それらは有効成分毎に最適化された製剤処方であり、組成がそれぞれ異なるため、混合して調製した混合剤を施用することで、必要以上の製剤補助成分である化学物質が環境中に放出される。また、(2)選択した複数の農薬製剤を混合すると、希釈液の物理的性状および化学的性状の変化(例えば、本来生じない希釈液の不安定化、希釈液中での有効成分分解、固形物の沈殿および凝集による散布ノズルつまり等)により、散布が困難となる事例もある。これらの問題点を回避するには、物理的性状および化学的性状が様々である有効成分に対して、使用する補助成分を共通化させた処方の開発が必要である。
【0008】
更に、圃場への効率的な農薬の施用の観点から、例えば、圃場が水田の場合、局所的に農薬を施用し、田面水を利用して、有効成分を水田全体に拡散させることが有効である。有効成分拡散のための技術はすでにいくつか提案されている。例えば、水稲除草剤として、希釈せずに畦畔から施用できる拡散性に優れたフロアブル剤(特許文献1)、水溶性フィルムに梱包された浮遊性粒剤を畦畔から投げ入れるジャンボ剤(特許文献2)などが、開発および販売されている。さらに、これら局所施用に適用される製剤には、施用後に有効成分が十分に水中拡散できるように分散剤が配合されている場合がある(特許文献4、特許文献5および特許文献6)。また、施用方法としては、顆粒水和剤の水口施用(特許文献3)が提案されている。しかしながら、これらに使用される農薬の多くは、複数の農薬製剤を混合して調製した混合剤であり、前述の環境負荷の観点からは好ましくない。また、殺虫剤としては、水面に滴下し油膜を広げることで有効成分を拡散させるサーフ剤などが開発されているが、有機溶剤を使用していることから、このような殺虫剤も環境負荷の観点から好ましくない。
【0009】
さらに、単一の有効成分を含有する農薬製剤を複数選択し、適切な量で混合して施用するに際し、農薬製剤の拡散性を担保することは、田面水を利用して有効成分を水田全体に拡散させるために重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】農薬製剤ガイド/日本農薬学会 農薬製剤・施用法研究会編/1997
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平7-47522号公報
【特許文献2】特許第2957751号公報
【特許文献3】特開2010-083869号公報
【特許文献4】特開2011-126786号公報
【特許文献5】特開2002-338403号公報
【特許文献6】特開2012-077097号公報
【特許文献7】国際公開第2020/225278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、農薬組成物、情報処理装置およびコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様に係る農薬組成物は、「下記成分(a)および(b1)を含む液体農薬組成物、または、下記成分(a)および(b2)を含む固体農薬組成物:
(a)殺虫効果を有する有効成分、殺菌効果を有する有効成分および除草効果を有する有効成分からなる群より選択される少なくとも1つの有効成分、
(b1)1~200g/Lのアニオン分散剤、
(b2)1~20%w/wのアニオン分散剤」であることを特徴とする。
【0014】
一態様に係る情報処理装置は、「少なくとも1つのプロセッサを具備し、該少なくとも1つのプロセッサが、水稲が栽培される対象領域に含まれる特定領域について、該特定領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す種類情報、および、前記特定領域において発生した前記少なくとも1つの害の各々の量を示す量情報を取得し、前記種類情報および前記量情報に基づいて、前記特定領域に散布される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する、ように構成される」ことを特徴とする。
【0015】
一態様に係る方法は、「コンピュータにより読み取り可能な命令を実行する少なくとも1つのプロセッサにより実行される方法であって、水稲が栽培される対象領域に含まれる特定領域について、該特定領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す種類情報、および、前記特定領域において発生した前記少なくとも1つの害の各々の量を示す量情報を取得する段階と、前記種類情報および前記量情報に基づいて、前記特定領域に散布される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する段階と、を含む」ことを特徴とする。
【0016】
一態様に係るコンピュータプログラムは、「少なくとも1つのプロセッサにより実行されることにより、水稲が栽培される対象領域に含まれる特定領域について、該特定領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す種類情報、および、前記特定領域において発生した前記少なくとも1つの害の各々の量を示す量情報を取得し、前記種類情報および前記量情報に基づいて、前記特定領域に散布される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する、ように、前記少なくとも1つのプロセッサを機能させる」ことを特徴とする。
【0017】
別の態様に係る情報処理装置は、「少なくとも1つのプロセッサを具備し、該少なくとも1つのプロセッサが、種籾が直播種されるまたは種籾が播種された育苗箱から育成した苗が移植される対象領域に含まれる特定領域について、該特定領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す種類情報、および、前記特定領域において発生した前記少なくとも1つの害の各々の量を示す量情報を取得し、前記種類情報および前記量情報に基づいて、前記特定領域に直播種される種籾または該特定領域に苗を移植するために育苗箱に播種される種籾に処理される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する、ように構成される」ことを特徴とする。
【0018】
別の態様に係る方法は、「コンピュータにより読み取り可能な命令を実行する少なくとも1つのプロセッサにより実行される方法であって、種籾が直播種されるまたは種籾が播種された育苗箱から育成した苗が移植される対象領域に含まれる特定領域について、該特定領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す種類情報、および、前記特定領域において発生した前記少なくとも1つの害の各々の量を示す量情報を取得する段階と、前記種類情報および前記量情報に基づいて、前記特定領域に直播種される種籾または該特定領域に苗を移植するために育苗箱に播種される種籾に処理される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する段階と、を含む」ことを特徴とする。
【0019】
別の態様に係るコンピュータプログラムは、「少なくとも1つのプロセッサにより実行されることにより、種籾が直播種されるまたは種籾が播種された育苗箱から育成した苗が移植される対象領域に含まれる特定領域について、該特定領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す種類情報、および、前記特定領域において発生した前記少なくとも1つの害の各々の量を示す量情報を取得し、前記種類情報および前記量情報に基づいて、前記特定領域に直播種される種籾または該特定領域に苗を移植するために育苗箱に播種される種籾に処理される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、該複数の農薬組成物の各々の量を決定する、ように、前記少なくとも1つのプロセッサを機能させる」ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、農薬組成物、情報処理装置およびコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、一実施形態に係る決定システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示した決定システムにおいて、サーバ装置10、移動型散布装置20および端末装置30に搭載される情報処理装置10Aのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、図1に示した決定システム1により実行される動作の一例を示すフロー図である。
図4図4は、図3に示した決定システム1により実行される動作のうちの一部(ST100)の動作の一例を具体的に示すフロー図である。
図5図5は、図1に示した決定システムにおいて情報処理装置10Aにより学習モデルを用いて生成される情報の一例を概念的に示す模式図である。
図6図6は、図1に示した決定システムにおいて情報処理装置10Aにより実行されるゾーンの決定手法の一例を示す模式図である。
図7図7は、図3に示した決定システム1により実行される動作のうちの一部(ST200)の動作の一例を具体的に示すフロー図である。
図8図8は、図1に示した移動型散布装置20のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図9図9は、図3に示した決定システム1により実行される動作のうちの一部(ST300)の動作の一例を具体的に示すフロー図である。
図10図10は、図1に示した決定システム1により実行される動作の別の例を示すフロー図である。
図11図11は、図10に示した決定システム1により実行される動作のうちの一部(ST1000)の動作の一例を具体的に示すフロー図である。
図12図12は、図10に示した決定システム1により実行される動作のうちの一部(ST2000)の動作の一例を具体的に示すフロー図である。
図13図13は、ドローン散布による農薬組成物の施用箇所を示す図である。
図14図14は、アニオン分散剤の投入量と発熱との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、セクション<1>では、主に、農薬組成物を混合して薬剤を調製するシステム等について説明し、セクション<2>および<3>では、このシステム等により調製され得る農薬組成物およびこのシステム等を使用することのできる病害、害虫および/または雑草の防除方法等について説明する。
【0023】
<1>混合すべき複数の農薬組成物を決定する決定システム
以下、添付図面を参照して本発明の様々な実施形態を説明する。なお、図面において共通した構成要素には同一の参照符号が付されている。また、或る図面に表現された構成要素が、説明の便宜上、別の図面においては省略されていることがある点に留意されたい。さらにまた、添付した図面が必ずしも正確な縮尺で記載されている訳ではないということに注意されたい。
【0024】
本明細書において記載される、様々なシステム、方法および装置は、いかなる方法によっても限定されるものとして解釈されるべきではない。実際には、本開示は、開示された様々な実施形態の各々、これら様々な実施形態を相互に組み合わせたもの、および、これら様々な実施形態の一部を相互に組み合わせたもの、のうちのあらゆる新規な特徴および態様に向けられている。本明細書において記載される、様々なシステム、方法および装置は、特定の態様、特定の特徴、または、このような特定の態様と特定の特徴とを組み合わせたものに限定されないし、本明細書に記載される物および方法は、1もしくはそれ以上の特定の効果が存在することまたは課題が解決されることを、要求するものでもない。さらには、本明細書において記載された様々な実施形態のうちの様々な特徴もしくは態様、または、そのような特徴もしくは態様の一部は、相互に組み合わせて用いられ得る。
【0025】
本明細書において開示された様々な方法のうちの幾つかの方法の動作が、便宜上、特定の順序に沿って記載されているが、このような手法による記載は、特定の順序が以下特定の文章によって要求されていない限り、上記動作の順序を並び替えることを包含する、と理解すべきである。例えば、順番に記載された複数の動作は、幾つかの場合には、並び替えられるかまたは同時に実行される。さらには、簡略化を目的として、添付図面は、本明細書に記載された様々な事項および方法が他の事項および方法とともに用いられ得るような様々な方法を示していない。
【0026】
本開示の装置または方法に関連して本明細書に提示される、動作理論、科学的原理または他の理論的な記載は、よりよい理解を目的として提供されており、技術的範囲を限定することを意図していない。添付した特許請求の範囲における装置および方法は、このような動作理論により記載される方法により動作する装置および方法に限定されない。
【0027】
本明細書に開示された様々な方法のいずれもが、コンピュータにより読み取り可能な1またはそれ以上の媒体に記憶された、コンピュータにより実行可能な複数の命令を用いて実装され、さらに、コンピュータにおいて実行され得る。上記1またはそれ以上の媒体は、例えば、少なくとも1つの光学媒体ディスク、複数の揮発性メモリ部品、または、複数の不揮発性メモリ部品といったような、非一時的なコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体であり得る。ここで、上記複数の揮発性メモリ部品は、例えばDRAMまたはSRAMを含む。また、上記複数の不揮発性メモリ部品は、例えばハードドライブおよびソリッドステートドライブ(SSD)を含む。さらに、上記コンピュータは、例えば、計算を行うハードウェアを有するスマートフォンおよび他のモバイル装置を含む、市場において入手可能な任意のコンピュータを含む。
【0028】
本明細書において開示された技術を実装するためのこのようなコンピュータにより実行可能な複数の命令のいずれもが、本明細書において開示された様々な実施形態の実装の間において生成され使用される任意のデータとともに、1またはそれ以上のコンピュータにより読み取り可能な媒体(例えば、非一時的なコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体)に記憶され得る。このようなコンピュータにより実行可能な複数の命令は、例えば、個別のソフトウェアアプリケーションの一部であり得るか、または、ウェブブラウザもしくは(リモート計算アプリケーションといったような)他のソフトウェアアプリケーションを介してアクセスまたはダウンロードされるソフトウェアアプリケーションの一部であり得る。このようなソフトウェアは、例えば、(例えば市場において入手可能な任意の好適なコンピュータにおいて実行されるプロセスとしての)単一のローカルコンピュータにおいて、または、1またはそれ以上のネットワークコンピュータを用いて、ネットワーク環境(例えば、インターネット、ワイドエリアネットワーク、ローカルエリアネットワーク、(クラウド計算ネットワークといったような)クライアントサーバネットワーク、または、他のそのようなネットワーク)において、実行され得る。
【0029】
明確化のために、ソフトウェアをベースとした様々な実装のうちの特定の選択された様々な態様のみが記載される。当該分野において周知である他の詳細な事項は省略される。例えば、本明細書において開示された技術は、特定のコンピュータ言語またはプログラムに限定されない。例えば、本明細書において開示された技術は、C、C++、Java(登録商標)、または、他の任意の好適なプログラミング言語で記述されたソフトウェアにより実行され得る。同様に、本明細書において開示された技術は、特定のコンピュータまたは特定のタイプのハードウェアに限定されない。好適なコンピュータおよびハードウェアの特定の詳細な事項は、周知であって、本明細書において詳細に説明する必要はない。
【0030】
さらには、このようなソフトウェアをベースとした様々な実施形態(例えば、本明細書において開示される様々な方法のいずれかをコンピュータに実行させるための、コンピュータにより実行可能な複数の命令を含む)のいずれもが、好適な通信手段により、アップロードされ、ダウンロードされ、または、リモート方式によりアクセスされ得る。このような好適な通信手段は、例えば、インターネット、ワールドワイドウェブ、イントラネット、ソフトウェアアプリケーション、ケーブル(光ファイバケーブルを含む)、磁気通信、電磁気通信(RF通信、マイクロ波通信、赤外線通信を含む)、電子通信、または、他のそのような通信手段を含む。
【0031】
1.決定システムの概要
図1は、一実施形態に係る決定システムの全体構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、決定システム1は、例えば、少なくとも1つのサーバ装置10と、少なくとも1つの移動型散布装置20と、少なくとも1つの端末装置30と、を含むことができる。これらの装置10、20、30は、ネットワーク2を介して相互に接続可能である。
【0032】
なお、図1には、少なくとも1つのサーバ装置10として、一例として、1つのサーバ装置10のみが示されているが、複数のサーバ装置10を利用することも可能である。また、図1には、少なくとも1つの移動型散布装置20として、一例として、1つの移動型散布装置20のみが示されているが、複数の移動型散布装置20を利用することも可能である。同様に、図1には、少なくとも1つの端末装置30として、一例として、1つの端末装置30のみが示されているが、複数の端末装置30を利用することも可能である。
【0033】
ネットワーク2は、携帯電話網、無線ネットワーク、固定電話網、インターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、および/または、イーサネット(登録商標)ネットワークを、これらに限定することなく含むことができる。上記無線ネットワークは、例えば、Bluetooth(登録商標)、(IEEE 802.11a/b/nといったような)WiFi、WiMax、セルラー、衛星、レーザー、赤外線、を介したRF接続を、これらに限定することなく含むことができる。
【0034】
サーバ装置10は、情報処理装置(図示しない)を搭載した装置である。このようなサーバ装置10は、例えば、ウェブサーバ、クラウドサーバ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、または、スーパーコンピュータ等であり得る。
【0035】
移動型散布装置20は、情報処理装置(図示しない)を搭載し、この情報処理装置により制御されて、薬剤を散布する装置である。このような移動型散布装置20は、走行型の散布装置(例えば地面または水面を走行する散布装置等)、または、飛行型の散布装置(例えばドローン型の散布装置等)であり得る。
【0036】
端末装置30は、情報処理装置(図示しない)を搭載した装置である。このような端末装置30は、スマートフォン、フィーチャーフォン、携帯電話、携帯型情報端末、パーソナルコンピュータ、または、タブレット等であり得る。
【0037】
図1に示す決定システムでは、簡潔にいえば、サーバ装置10が、或る圃場(対象領域)に含まれる特定領域(例えば圃場における或る1つの領域)について、この特定領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す種類情報と、この特定領域において発生した上記少なくとも1つの害の各々の量を示す量情報とを、様々な装置から受信して取得することができる。このような様々な装置には、移動型散布装置20、端末装置30、および/または、ネットワーク2に接続可能な図示しないその他の装置が含まれ得る。
【0038】
さらに、サーバ装置10は、このように受信した種類情報および量情報に基づいて、上記特定領域に散布される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、これら複数の農薬組成物の各々の量を決定することができる。このような決定は、サーバ装置10に搭載された情報処理装置(図示しない)により実行され得る。なお、このような決定は、サーバ装置10に搭載された情報処理装置に代えてまたは加えて、移動型散布装置20に搭載された情報処理装置(図示しない)、端末装置30に搭載された情報処理装置(図示しない)、および/または、ネットワーク2に接続可能なその他の装置に搭載された情報処理装置(図示しない)等によっても実行可能である。これを実現するために、当該決定を行う装置は、種類情報および量情報を、ネットワーク2を介して、他の装置(10、20、30等)から受信することができる。或いはまた、当該決定を行う装置は、種類情報および量情報を、この装置に設けられたユーザインターフェイス等を介して、受信することもできる。
【0039】
さらにまた、オプションとして、移動型散布装置20は、上記のように決定された複数の農薬組成物の各々について、上記のように決定された量を混合して薬剤を調製することができる。或いはまた、移動型散布装置20は、このような調製を同様に実行可能な調製装置(図示しない)から、調製された薬剤自体を取得することもできる。これにより、移動型散布装置20は、上記対象領域(圃場等)における上記特定領域(圃場における或る1つの領域)まで移動し、この特定領域に存在する水稲に対して上記薬剤を散布することができる。
【0040】
2.サーバ装置10等に搭載される情報処理装置の構成
サーバ装置10、移動型散布装置20および端末装置30は、情報処理装置10Aを搭載することができる。図2は、一実施形態に係る決定システムにおいて、サーバ装置10、移動型散布装置20および端末装置30に搭載される情報処理装置10Aのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0041】
図2に示すように、情報処理装置10Aは、主に、中央処理装置11と、主記憶装置12と、入出力インターフェイス装置13と、入力装置14と、補助記憶装置15と、出力装置16と、を含むことができる。これらの装置同士は、データバスおよび/または制御バスにより接続されている。
【0042】
中央処理装置11は、「CPU(Central Processing Unit)」と称される、1つのプロセッサである。中央処理装置11は、主記憶装置12に記憶されている命令およびデータに対して演算を行い、その演算の結果を主記憶装置12に記憶させることができる。さらに、中央処理装置11は、入出力インターフェイス装置13を介して、入力装置14、補助記憶装置15および出力装置16等を制御することができる。情報処理装置10Aは、1またはそれ以上のこのような中央処理装置11を含むことが可能である。
【0043】
主記憶装置12は、「メモリ」と称され、入力装置14、補助記憶装置15およびネットワーク400から、入出力インターフェイス装置13を介して受信した命令およびデータ、ならびに、中央処理装置11の演算結果を記憶することができる。主記憶装置12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)および/またはフラッシュメモリ等をこれらに限定することなく含むことができる。
【0044】
補助記憶装置15は、主記憶装置12よりも大きな容量を有する記憶装置である。補助記憶装置は、オペレーティングシステムおよび特定のアプリケーション等を構成する命令およびデータ(コンピュータプログラム)を記憶することができる。この特定のアプリケーションは、サーバ装置10(または移動型散布装置20、端末装置30)に搭載された情報処理装置10Aにより実行されることによって、情報処理装置10を全体としてサーバ装置10(または移動型散布装置20、端末装置30)として機能させることができる。さらに、補助記憶装置15は、中央処理装置11により制御されることにより、これらの命令およびデータ(コンピュータプログラム)を、入出力インターフェイス装置13を介して主記憶装置12に送信することができる。補助記憶装置15は、磁気ディスク装置および/または光ディスク装置等をこれらに限定することなく含むことができる。
【0045】
入力装置14は、外部からデータを取り込む装置であって、少なくとも1つのセンサ、タッチパネル、ボタン、キーボードおよび/またはマウス等をこれらに限定することなく含むことができる。なお、上記少なくとも1つのセンサは、例えば、RGBカメラ、マルチスペクトラムカメラ、ハイパースペクトラムカメラ、および/または、高波長スペクトラムカメラ等を含むことができる。
【0046】
出力装置16は、ディスプレイ装置、タッチパネルおよび/またはプリンタ装置等をこれらに限定することなく含むことができる。
【0047】
このようなハードウェア構成にあっては、中央処理装置11が、補助記憶装置15に記憶された特定のアプリケーションを構成する命令およびデータ(コンピュータプログラム)を順次主記憶装置12にロードし、ロードした命令およびデータを演算することができる。これにより、中央処理装置11は、入出力インターフェイス装置13を介して入力装置14および/または出力装置16を制御し、或いはまた、入出力インターフェイス装置13およびネットワーク2を介して、他の装置(例えば、サーバ装置10、移動型散布装置20および/または端末装置30等)との間で様々な情報の送受信を行うことができる。
【0048】
なお、情報処理装置10Aは、中央処理装置11に代えてまたは中央処理装置11とともに、1またはそれ以上のマイクロプロセッサ、および/または、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)等を含むことも可能である。
【0049】
3.決定システムの動作(その1)
次に、上記構成を有する決定システム1により実行される動作の具体例について、図3を参照して説明する。図3は、図1に示した決定システム1により実行される動作の一例を示すフロー図である。
【0050】
図3に示すように、決定システム1により実行される動作は、大まかにいえば、対象領域(または対象領域に含まれる特定領域)に関する情報を取得するステップ(以下「ST」という。)100と、ST100において取得された情報に基づいて、薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、各農薬組成物の量を決定するST200と、を含むことができる。さらに、オプションとして、決定システム1により実行される動作は、ST200において決定された複数の農薬組成物の各々を、決定された量だけ混合することにより調製された薬剤を、対象領域(または対象領域に含まれる特定領域)に散布するST300と、を含むことができる。
以下、これらST100、ST200、ST300の各々の具体例について順次説明する。
【0051】
3-1.ST100において実行される動作
図4は、図3に示した決定システム1により実行される動作のうちの一部(ST100)の動作の一例を具体的に示すフロー図である。
ここで、対象領域とは、水稲が栽培される領域(例えば、苗が移植される領域、および/または、種籾が直播種される領域を含む)をいい、1つの圃場、1つの圃場における一部の領域、および/または、複数の圃場であり得る。また、害とは、対象領域(もしくは対象領域に育成した水稲)に発生した病害、対象領域(もしくは対象領域に育成した水稲)に発生した害虫、および/または、対象領域に発生した雑草等を、これらに限定することなく含むことができる。
【0052】
まず、ST102において、情報処理装置10Aが、対象領域を撮像した画像を取得することができる。このような画像は、一例として、移動型散布装置20等が対象領域の上方からこの対象領域を撮像することにより取得した画像であり得る(かかる画像は、ネットワーク2を介して情報処理装置10Aに送信され得る)。このような画像は、別の例では、建物、ヘリコプターまたは航空機等に位置するユーザが端末装置30等の入力装置14であるカメラを用いてこの対象領域を撮像することにより取得した画像であり得る(かかる画像は、ネットワーク2を介して情報処理装置10Aに送信され得る)。このような画像は、さらに別の例では、何らかの装置(全国の航空写真を撮像した画像を提供するサーバ装置等)からネットワーク2を介して、情報処理装置10Aが取得した画像であり得る。
【0053】
ST104において、情報処理装置10Aは、ST102で取得した画像を、学習済みの学習モデルに入力することにより、上記画像に含まれるいずれの画素に、いずれの害が発生しているかまたはいずれの害も発生していないかを識別することができる。
【0054】
このような学習済みの学習モデルは、入力層と、出力層と、この入力層とこの出力層との間に配置された複数の中間層と、を含む、機械学習(特に深層学習)を実行可能な学習モデルであり得る。このような学習モデルは、各々が、或る害が発生している稲を撮像した画像(入力データ)と、その画像におけるいずれの画素(1またはそれ以上の画素)にその害が発生しているかを示す情報(出力データ)と、有する多数(例えば数万以上)の教師データを用いて、予め学習を行っている。このような学習モデルは、各教師データにおける入力データを入力したときに出力されるデータと、その教師データにおける出力データと、の誤差を小さくするように、その学習モデルに用いられる多数の係数を最適化することにより、学習を実行することができる。
【0055】
第1の例では、情報処理装置10Aは、このような学習済みの学習モデルを有することができる。第2の例では、情報処理装置10Aは、この情報処理装置10Aを搭載する装置とは別の装置に記憶されたこのような学習済みの学習モデルを、ネットワーク2を介して受信(取得)することができる。第3の例では、情報処理装置10Aは、この情報処理装置10Aを搭載する装置とは別の装置に記憶されたこのような学習済みの学習モデルに対して、ネットワーク2を介して、画像を送信することにより、この学習モデルの出力データを受信(取得)することができる。
【0056】
情報処理装置10Aは、このような学習済みの学習モデルに画像を入力することにより、その画像におけるいずれの画素においていずれの害が発生しているかを示す情報を、この学習モデルから取得することができる。
【0057】
図5は、図1に示した決定システムにおいて情報処理装置10Aにより学習モデルを用いて生成される情報の一例を概念的に示す模式図である。図5には、説明の簡略化のために、対象領域を撮像した画像を学習モデルに入力することによって、その対象領域におけるごく一部の単位領域の各々に対して生成される情報の一例が示されている。
【0058】
図5には、一例として、6つの単位領域120A~120Iのみが示されている。各単位領域は、任意のピクセルにより表現され得るが、この例では、25ピクセル(5ピクセル×5ピクセル)により表現され得る。各単位領域は、この例では、正方形を呈するが、別の例では、多角形、円形、楕円形、台形、菱形等の任意の形状を呈し得る。
【0059】
各単位領域について、各ピクセルには、そのピクセルに対応する位置において発生した害に固有の情報が対応付けられ得る。例えば、単位領域120Aに着目すると、ピクセル120A1に対応する位置には、この位置において発生した第1の害に固有の情報「1」が対応付けられる。ここでは、一例として、合計10個のピクセルに対応する各位置に、この位置において発生した第1の害に固有の情報「1」が対応付けられ得る。なお、第1の害は、対象領域(もしくは対象領域に育成した水稲)に発生した病害、対象領域(もしくは対象領域に育成した水稲)に発生した害虫、および、対象領域に発生した雑草、のうちのいずれかである。
【0060】
また、ピクセル120A2に対応する位置には、一例では、この位置において何らの害も発生していないという事象に固有の情報「ヌル」が対応付けられ得るが、別の例では、この位置において何らの害も発生していないという事象に固有の情報「0」等が対応付けられ得る。
【0061】
さらに例えば、単位領域120Gに着目すると、ピクセル120G1に対応する位置には、この位置において発生した第4の害に固有の情報「4」が対応付けられる。ここでは、一例として、合計5個のピクセルに対応する各位置に、この位置において発生した第4の害に固有の情報「4」が対応付けられ得る。なお、第4の害は、対象領域(もしくは対象領域に育成した水稲)に発生した病害、対象領域(もしくは対象領域に育成した水稲)に発生した害虫、および、対象領域に発生した雑草、のうちのいずれかである。
【0062】
また、ピクセル120G2に対応する位置には、この位置において発生した第5の害に固有の情報「5」が対応付けられる。ここでは、一例として、合計3個のピクセルに対応する各位置に、この位置において発生した第5の害に固有の情報「5」が対応付けられ得る。なお、第4の害は、対象領域(もしくは対象領域に育成した水稲)に発生した病害、対象領域(もしくは対象領域に育成した水稲)に発生した害虫、および、対象領域に発生した雑草、のうちのいずれかである。
【0063】
さらに、ピクセル120G3に対応する位置には、この位置において発生した第6の害に固有の情報「6」が対応付けられる。ここでは、一例として、合計2個のピクセルに対応する各位置に、この位置において発生した第6の害に固有の情報「6」が対応付けられ得る。なお、第6の害は、対象領域(もしくは対象領域に育成した水稲)に発生した病害、対象領域(もしくは対象領域に育成した水稲)に発生した害虫、および、対象領域に発生した雑草、のうちのいずれかである。
【0064】
さらにまた、ピクセル120G4に対応する位置には、一例では、この位置において何らの害も発生していないという事象に固有の情報「ヌル」が対応付けられ得るが、別の例では、この位置において何らの害も発生していないという事象に固有の情報「0」等が対応付けられ得る。
【0065】
他の単位領域については、特に詳細に説明しないが、考え方は、単位領域120Aおよび120Gについて述べたものと同様である。
【0066】
図4に戻り、ST106において、情報処理装置10Aは、ST104において学習モデルから出力された情報(例えば図5に例示した情報)を用いて、対象領域に含まれる複数の単位領域の各々について、この単位領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す「単位種類情報」を取得して(例えば補助記憶装置15に)記憶することができる。
【0067】
図4に示した例に着目すると、情報処理装置10Aは、単位領域120Aについては、この単位領域120Aにおいて発生した害の種類を示す情報「1」(第1の害に対応する情報「1」)を、単位種類情報として取得することができる。情報処理装置10Aは、単位領域120B、120Cの各々についても、この単位領域において発生した害の種類を示す情報「1」を、単位種類情報として取得することができる。
【0068】
また、情報処理装置10Aは、単位領域120Dについては、この単位領域120Dにおいて発生した害の種類を示す情報「2」および情報「3」(第2の害に対応する情報「2」および第3の害に対応する情報「3」)を、単位種類情報として取得することができる。情報処理装置10Aは、単位領域120E、120Fの各々についても、この単位領域において発生した害の種類を示す情報「2」および情報「3」を、単位種類情報として取得することができる。
【0069】
さらに、情報処理装置10Aは、単位領域120Gについては、この単位領域120Gにおいて発生した害の種類を示す情報「4」、情報「5」および情報「6」(第4の害に対応する情報「4」、第5の害に対応する情報「5」および第6の害に対応する情報「6」)を、単位種類情報として取得することができる。情報処理装置10Aは、単位領域120Hについても、この単位領域120Hにおいて発生した害の種類を示す情報「4」、情報「5」および情報「6」を、単位種類情報として取得することができる。
【0070】
さらにまた、情報処理装置10Aは、単位領域120Iについては、この単位領域120Iにおいて何らの害も発生していない事象を示す情報「ヌル」(または「0」等)を、単位種類情報として取得することができる。
【0071】
なお、情報処理装置10Aは、1つの例では、対象領域に含まれるすべての単位領域について、単位種類情報を取得することも可能であるが、別の例では、対象領域に含まれる一部の単位領域(1またはそれ以上の単位領域)の各々について、単位種類情報を取得することも可能である。
【0072】
さらにまた、別の例では、情報処理装置10Aは、対象領域に含まれる特定領域について、この特定領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す「種類情報」を取得することも可能である。例えば、対象領域が1つの圃場であり、特定領域がこの1つの圃場に含まれる一部の領域である場合には、情報処理装置10Aは、この一部の領域について、この一部の領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す種類情報を取得することも可能である。この場合、情報処理装置10Aは、ST104で学習モデルから取得した情報において、当該一部の領域を構成する各ピクセルに対応付けられた情報を検索することにより、上記種類情報を取得することができる。例えば、特定領域が単位領域120Dおよび単位領域120Gにより構成される領域である場合には、情報処理装置10Aは、これらの単位領域において発生した害の種類を示す情報「2」、情報「3」、情報「4」、情報「5」および情報「6」を、種類情報として取得することができる。
【0073】
なお、対象領域を識別する情報およびこの対象領域における特定領域を識別する情報は、例えば、ユーザにより情報処理装置10Aの入力装置14を介して入力され、情報処理装置10Aにより取得され得る。
【0074】
図4に戻り、次に、ST108において、情報処理装置10Aは、ST104において学習モデルから出力された情報(例えば図5に例示した情報)を用いて、対象領域に含まれる複数の単位領域の各々について、この単位領域において発生した少なくとも1つの害の量を決定することができる。これにより、情報処理装置10Aは、対象領域に含まれる複数の単位領域の各々について、この単位領域において発生した少なくとも1つの害の量を示す単位量情報を取得して(例えば補助記憶装置15に)記憶することができる。
【0075】
図4に示した例に着目すると、情報処理装置10Aは、単位領域120Aについては、この単位領域120Aにおいて発生した害の種類を示す情報「1」が10個存在する旨を示す情報「1-10」(第1の害に対応する情報「1」が「10」個存在する旨を示す情報/情報「1」の密度が「10」である旨を示す情報)を、単位量情報として取得することができる。情報処理装置10Aは、単位領域120B、120Cの各々についても、この単位領域120において発生した害の種類を示す情報「1」が10個存在する旨を示す情報「1-10」を、単位量情報として取得することができる。
【0076】
また、情報処理装置10Aは、単位領域120Dについては、この単位領域120Dにおいて発生した害の種類を示す情報「2」が4個存在する旨を示す情報「2-4」(第2の害に対応する情報「2」が「4」個存在する旨を示す情報/情報「2」の密度が「4」である旨を示す情報)およびこの単位領域120Dにおいて発生した害の種類を示す情報「3」が6個存在する旨を示す情報「3-6」(第3の害に対応する情報「3」が「6」個存在する旨を示す情報/情報「3」の密度が「6」である旨を示す情報)を、単位量情報として取得することができる。情報処理装置10Aは、単位領域120E、120Fの各々についても、この単位領域において発生した害の種類を示す情報「2」が4個存在する旨を示す情報「2-4」およびこの単位領域120Dにおいて発生した害の種類を示す情報「3」が6個存在する旨を示す情報「3-6」を、単位量情報として取得することができる。
【0077】
さらに、情報処理装置10Aは、単位領域120Gについては、この単位領域120Gにおいて発生した害の種類を示す情報「4」が5個存在する旨を示す情報「4-5」、この単位領域120Gにおいて発生した害の種類を示す情報「5」が3個存在する旨を示す情報「5-3」、および、この単位領域120Gにおいて発生した害の種類を示す情報「6」が2個存在する旨を示す情報「6-2」を、単位量情報として取得することができる。情報処理装置10Aは、単位領域120Hについても、この単位領域120Hにおいて発生した害の種類を示す情報「4」が5個存在する旨を示す情報「4-5」、この単位領域120Hにおいて発生した害の種類を示す情報「5」が3個存在する旨を示す情報「5-3」、および、この単位領域120Hにおいて発生した害の種類を示す情報「6」が2個存在する旨を示す情報「6-2」を、単位量情報として取得することができる。
【0078】
なお、情報処理装置10Aは、1つの例では、対象領域に含まれるすべての単位領域について、単位量類情報を取得することも可能であるが、別の例では、対象領域に含まれる一部の単位領域(1またはそれ以上の単位領域)の各々について、単位量情報を取得することも可能である。
【0079】
さらにまた、別の例では、情報処理装置10Aは、対象領域に含まれる特定領域について、この特定領域において発生した少なくとも1つの害の量を示す「量情報」を取得することも可能である。例えば、対象領域が1つの圃場であり、特定領域がこの1つの圃場に含まれる一部の領域である場合には、情報処理装置10Aは、この一部の領域について、この一部の領域において発生した少なくとも1つの害の量を示す量情報を取得することも可能である。この場合、情報処理装置10Aは、ST104で学習モデルから取得した情報において、当該一部の領域を構成する各ピクセルに対応付けられた情報を検索することにより、上記種類情報を取得することができる。例えば、特定領域が単位領域120Dおよび単位領域120Gにより構成される領域である場合には、情報処理装置10Aは、以下の情報を量情報として取得することができる。
・これらの単位領域において発生した害の種類を示す情報「2」が4個存在している旨を示す情報「2-4」
・これらの単位領域において発生した害の種類を示す情報「3」が6個存在している旨を示す情報「3-6」
・これらの単位領域において発生した害の種類を示す情報「4」が5個存在している旨を示す情報「4-5」
・これらの単位領域において発生した害の種類を示す情報「5」が3個存在している旨を示す情報「5-3」
・これらの単位領域において発生した害の種類を示す情報「6」が2個存在している旨を示す情報「6-2」
【0080】
再度図4に戻り、これまで、情報処理装置10Aは、一実施形態として、ST102を経て、ST104およびST106において、単位種類情報(または種類情報)を取得し、ST108において、単位量情報(または量情報)を取得する例について説明した。しかし、別の実施形態では、情報処理装置10Aは、ST102およびST104を経由することなく、ST106において、単位種類情報(または種類情報)を取得し、ST108において、単位量情報(または量情報)を取得することも可能である。具体的には、例えば、情報処理装置10Aは、ST106において、ネットワーク2を介して、何らかの装置から、単位種類情報(または種類情報)を取得し、ST108において、ネットワーク2を介して、何らかの装置から、単位量情報(または量情報)を取得することも可能である。この場合、当該何らかの装置は、ST102~ST108に示した処理を実行してこれらの情報を取得(生成)することが可能な他の情報処理装置であり得るし、または、ST102~ST108に示した処理とは異なる他の任意の処理を実行してこれらの情報を取得(生成)することが可能な他の情報処理装置であり得る。
【0081】
次に、オプションとして、ST110において、情報処理装置10Aは、単位種類情報および単位量情報(または種類情報および量情報)を用いて、対象領域の中から少なくとも1つのゾーンを決定することができる。
ここで、ゾーンとは、発生した害の種類および発生した害の量において共通または実質的に共通する複数の単位領域である、ということができる。
【0082】
情報処理装置10Aにより実行されるゾーンの決定手法について、図6を参照して説明する。図6は、図1に示した決定システムにおいて情報処理装置10Aにより実行されるゾーンの決定手法の一例を示す模式図である。この図6は、先に参照した図5に対応して表現されている。
【0083】
まず、単位領域120Aに着目する。単位領域120Aでは、情報「1」が10個存在している。すなわち、単位領域120Aに関する単種類情報が情報「1」を有し、単位領域120Aに関する単位量情報が情報「1-10」を有する。情報処理装置10Aは、他の単位領域に関する単位種類情報および単位量情報を検索することにより、単位領域120Bおよび単位領域120Cの各々に関する単位種類情報がともに情報「1」のみを有し、単位領域120Bおよび単位領域120Cの各々に関する単位量情報がともに情報「1-10」のみを有することを識別することができる。すなわち、情報処理装置10Aは、単位領域120A、120B、120Cは、発生した害の種類および発生した害の量の両方の観点において、相互に共通している、ことを識別することができる。この結果、情報処理装置10Aは、単位領域120A、120B、120Cの全体を含む領域を、第1のゾーン130として決定することができる。
【0084】
次に、単位領域120Dに着目する。単位領域120Dでは、情報「2」が4個存在し、情報「3」が6個存在している。すなわち、単位領域120Dに関する単種類情報が情報「2」および情報「3」を有し、単位領域120Dに関する単位量情報が情報「2-4」および情報「3-6」を有する。情報処理装置10Aは、他の単位領域に関する単位種類情報および単位量情報を検索することにより、単位領域120Eおよび単位領域120Fの各々に関する単位種類情報がともに情報「2」および情報「3」のみを有し、単位領域120Eおよび単位領域120Fの各々に関する単位量情報がともに情報「2-4」および情報「3-6」のみを有することを識別することができる。すなわち、情報処理装置10Aは、単位領域120D、120E、120Fは、発生した害の種類および発生した害の量の両方の観点において、相互に共通している、ことを識別することができる。この結果、情報処理装置10Aは、単位領域120D、120E、120Fの全体を含む領域を、第2のゾーン131として決定することができる。
【0085】
次に、単位領域120Gに着目する。単位領域120Gでは、情報「4」が5個存在し、情報「5」が3個存在し、情報「6」が2個存在している。すなわち、単位領域120Gに関する単種類情報が情報「4」、情報「5」および情報「6」を有し、単位領域120Gに関する単位量情報が情報「4-5」、情報「5-3」および情報「6-2」を有する。情報処理装置10Aは、他の単位領域に関する単位種類情報および単位量情報を検索することにより、単位領域120Hに関する単位種類情報が情報「4」、情報「5」および情報「6」のみを有し、単位領域120Hに関する単位量情報が情報「4-5」、情報「5-3」および情報「6-2」のみを有することを識別することができる。すなわち、情報処理装置10Aは、単位領域120G、120Hは、発生した害の種類および発生した害の量の両方の観点において、相互に共通している、ことを識別することができる。この結果、情報処理装置10Aは、単位領域120G、120Hの全体を含む領域を、第3のゾーン132として決定することができる。
【0086】
なお、図6に示した例では、情報処理装置10Aは、発生した害の種類および発生した害の量において「共通する」複数の領域を識別し、このように識別した複数の領域全体を含む領域を、1つのゾーンとして決定することができる。しかし、別の実施形態では、情報処理装置10Aは、発生した害の種類および発生した害の量において「実質的に共通する」複数の領域を識別し、このように識別した複数の領域全体を含む領域を、1つのゾーンとして決定することもできる。
【0087】
ここで、「実質的に共通する」とは、或る単位領域において発生した害の種類と、別の単位領域において発生した害の種類と、が完全に一致する場合だけでなく、上記或る単位領域において発生した害の種類と、上記別の単位領域において発生した害の種類とが類似している(両方の種類を実質的に同一視することが可能である)場合をも含み得る。
【0088】
また、「実質的に共通する」とは、或る単位領域において発生した害の量(密度)と、別の単位領域において発生した害の量(密度)と、が完全に一致する場合だけでなく、上記或る単位領域において発生した害の量(密度)と、別の単位領域において発生した害の量(密度)との間における誤差が、任意の所定値以下である(両方の量を実質的に同一視することが可能である)場合をも含み得る。
【0089】
図4に戻り、次に、ST112において、情報処理装置10Aは、ST110において決定した各ゾーン(1またはそれ以上のゾーン)を示すゾーン情報を生成して(例えば補助記憶装置15に)記憶することができる。
【0090】
具体的には、情報処理装置10Aは、図6に示した例に着目すると、第1のゾーン130については、この第1のゾーン130が単位領域120A、120B、130Cを含む領域である旨を示すゾーン情報を生成して記憶することができる。また、情報処理装置10Aは、第2のゾーン131については、この第2のゾーン131が単位領域120D、120E、130Fを含む領域である旨を示すゾーン情報を生成して記憶することができる。同様に、情報処理装置10Aは、第3のゾーン132については、この第3のゾーン132が単位領域120G、120Hを含む領域である旨を示すゾーン情報を生成して記憶することができる。
【0091】
後述するように、このようなゾーン情報を用いることにより、移動型散布装置20は、ゾーンに対応して決定された複数の農薬組成物を、そのゾーンに対応して決定された各農薬組成物の量だけ混合した薬剤を、そのゾーンに散布することができる。
【0092】
なお、上述したST110およびST112(図4)における処理について、情報処理装置10Aは、ST200(図3)において実行することも可能である。
【0093】
3-2.ST200において実行される動作
図7は、図3に示した決定システム1により実行される動作のうちの一部(ST200)の動作の一例を具体的に示すフロー図である。情報処理装置10Aは、図7に示す動作を、対象領域に含まれる各特定領域または対象領域に含まれる各ゾーンについて、実行することができる。勿論、情報処理装置10Aは、図7に示す動作を、対象領域に含まれるいずれか1つの特定領域、または、対象領域に含まれるいずれかの1つのゾーンについて、実行することも可能である。
【0094】
まず、ST202において、情報処理装置10Aが、特定領域(例えば、1つの圃場、または、1つの圃場に含まれる一部の領域等)において発生した少なくとも1つの害を示す種類情報、および、その特定領域において発生したこの少なくとも1つの害の各々の量を示す量情報を取得することができる。かかる情報は、情報処理装置10Aは、ST106およびST108において既に情報処理装置10Aにより取得され記されている。
【0095】
ここで、特定領域として、ST110(図4参照)で決定されたゾーンを用いる場合には、情報処理装置10Aは、そのゾーンに対応してST112(図4参照)で記憶されたゾーン情報を取得し、このゾーン情報により識別される各単位領域に対応する単位種類情報および単位量情報を取得することができる。
【0096】
次に、ST204において、情報処理装置10Aは、学習済みの第1の学習モデルまたは学習済みの第1の決定木モデルに入力すべき各種の情報を取得することができる。具体的には、情報処理装置10Aは、以下に示す情報(1)~情報(5)を取得することができる。
【0097】
(1)特定領域(ゾーン)の土壌の種類に関する土壌情報
(2)特定領域(ゾーン)において過去に発生した害に関する害発生情報
(3)特定領域(ゾーン)の土壌に埋没している種子に関する種子埋没情報
(4)特定領域(ゾーン)における薬剤に対する抵抗性を有する害の蔓延状況に関する害蔓延情報
(5)特定領域(ゾーン)において水稲を栽培する期間について予測された気象データに関する気象予測情報
【0098】
情報(1)、すなわち、土壌情報は、例えば、特定領域(ゾーン)の土壌の種類(砂、粘土等)を示す(識別する)情報であり得る。特定領域(ゾーン)の土壌の種類が、その土壌に発生する害、この害の育成の早さ・時期等を左右する可能性を考慮して、この情報(1)が用いられ得る。
【0099】
情報(2)、すなわち、害発生情報は、特定領域(ゾーン)において過去に発生した害を示す(識別する)情報であり得る。特定領域(ゾーン)において既に過去に発生した害は、同一の特定領域(ゾーン)において現在も発生する可能性が高いことを考慮して、この情報(2)が用いられ得る。
【0100】
情報(3)、すなわち、種子埋没情報は、特定領域(ゾーン)において埋没している種子(雑草の種子)を示す(識別する)情報であり得る。特定領域(ゾーン)において或る種子が埋没している場合には、同一の特定領域(ゾーン)においてその種子に対応する雑草が現在も発生する可能性が高いことを考慮して、この情報(3)が用いられ得る。
【0101】
情報(4)、すなわち、害蔓延情報は、特定領域(ゾーン)において薬剤(殺菌剤、殺虫剤および/または除草剤)に対する抵抗性を有するいずれの害が現在蔓延しているかを示す(識別する)情報であり得る。特定領域(ゾーン)を含む地域等において或る抵抗性を有する害が現在蔓延している場合には、同一の特定領域(ゾーン)においてそのような抵抗性を有する害が現在も発生する可能性が高いことを考慮して、この情報(5)が用いられ得る。
【0102】
情報(5)、すなわち、気象予測情報は、特定領域(ゾーン)において水稲を栽培する期間について予測された気象データ(気温、湿度、天候、および/または、降水量等)を示す(識別する)情報であり得る。特定領域(ゾーン)において水稲を栽培する期間におけるこれらの気象データは、同一の特定領域(ゾーン)に発生する害、この害の育成の早さ・時期等を左右する可能性を考慮して、この情報(5)が用いられ得る。
【0103】
以上のような情報は、ユーザが、情報処理装置10Aの出力装置(ディスプレイ等)16に表示されるメニュー画面を利用して、情報処理装置10Aの入力装置14(キーボード、マウス、タッチパネル等)を用いて入力する情報であってもよい。
【0104】
次に、ST206において、情報処理装置10Aは、ST202で取得した情報(種類情報および量情報)と、ST204で取得した情報のうちの少なくとも1つの情報(すなわち、情報(1)~情報(5)のうちの少なくとも1つの情報)とを、学習済みの第1の学習モデルまたは学習済みの第1の決定木モデルに入力することにより、以下の情報(6)~情報(8)を取得することができる。
【0105】
(6)特定領域(ゾーン)において発生する害の種類およびこの害の量に関する害発生予測情報
(7)この害が生育する時期に関する害生育予測情報
(8)特定領域(ゾーン)において発生する薬害に関する薬害情報
【0106】
情報(6)、すなわち、害発生予測情報は、文字通り、特定領域(ゾーン)において発生する害の種類、および、この害の量を示す(識別する)情報であり得る。
【0107】
情報(7)、すなわち、害生育予測情報は、情報(6)に示される害がどのようなタイミングで(どのような早さで、どのような時期に)発生するかを示す(識別する)情報であり得る。
【0108】
情報(8)、すなわち、薬害情報は、特定領域(ゾーン)においてどのような薬害(副作用等)が発生するかを示す(識別する)情報であり得る。
【0109】
第1の学習モデル(入力層、複数の中間層、出力層を有する機械学習/深層学習モデル等)、および、第1の決定木モデルは、各々が、種類情報、量情報、および、情報(1)~情報(5)(入力データ)と、情報(6)~情報(8)(出力データ)と、有する多数(例えば数万以上)の教師データを用いて、予め学習を行っている。このような第1の学習モデルまたは第1の決定木モデルは、各教師データにおける入力データを入力したときに出力されるデータと、その教師データにおける出力データと、の誤差を小さくするように、その第1の学習モデルまたは第1の決定木モデルに用いられる多数の係数(または多数のパラメータ)を最適化することにより、学習を実行することができる。
【0110】
第1の例では、情報処理装置10Aは、このような学習済みの第1の学習モデルおよび学習済みの第1の決定木モデルを有することができる。第2の例では、情報処理装置10Aは、この情報処理装置10Aを搭載する装置とは別の装置に記憶されたこのような学習済みの第1の学習モデルおよび学習済みの第1の決定木モデルを、ネットワーク2を介して受信(取得)することができる。第3の例では、情報処理装置10Aは、この情報処理装置10Aを搭載する装置とは別の装置に記憶されたこのような学習済みの第1の学習モデルまたは学習済みの第1の決定木モデルに対して、ネットワーク2を介して、必要な情報(例えば、情報(1)~情報(5)のうちの少なくとも1つの情報)を送信することにより、この第1の学習モデルまたは第1の決定木モデルの出力データである情報(6)~情報(8)を受信(取得)することができる。
【0111】
次に、ST208において、情報処理装置10Aは、ST206において取得した情報(6)~情報(8)を、学習済みの第2の学習モデルまたは学習済みの第2の決定木モデルに入力することにより、以下に示す情報(9)および情報(10)を取得して(例えば補助記憶装置15に)記憶することができる。
【0112】
(9)特定領域(ゾーン)に散布される薬剤を構成する複数の農薬組成物を示す(識別する)情報
(10)情報(9)に示された複数の農薬組成物の各々の量を示す(識別する)情報
【0113】
また、オプションとして、情報処理装置10Aは、ST206において取得した情報(6)~情報(8)を、学習済みの第2の学習モデルまたは学習済みの第2の決定木モデルに入力することにより、情報(9)および情報(10)に加えて、以下に示す情報(11)および情報(12)のうちの少なくとも一方を取得して(例えば補助記憶装置15に)記憶することもできる。
【0114】
(11)情報(9)および情報(10)に従って混合される薬剤を連続的に散布(処理)する最適な方法に関する最適連続処理情報
(12)情報(9)および情報(10)に従って混合される薬剤を散布(処理)するのに最も適した時期に関する最適処理時期情報
【0115】
情報(11)、すなわち、最適連続処理情報は、情報(9)および情報(10)に従って混合される薬剤を、どのような方法(例えば、薬剤を2週間おきに連続して散布する方法等)で散布(処理)することが最適であるかを示す(識別する)情報であり得る。
【0116】
情報(12)、すなわち、最適処理時期情報は、情報(9)および情報(10)に従って混合される薬剤を、どの時期(例えば、3月等)に散布(処理)することが最適であるかを示す(識別する)情報であり得る。
【0117】
このような第2の学習モデルおよび第2の決定木モデルは、各々が、情報(6)~情報(8)(入力データ)と、情報(9)~情報(12)(出力データ)と、有する多数(例えば数万以上)の教師データを用いて、予め学習を行っている。このような第2の学習モデルまたは第2の決定木モデルは、各教師データにおける入力データを入力したときに出力されるデータと、その教師データにおける出力データと、の誤差を小さくするように、その第2の学習モデルまたは第2の決定木モデルに用いられる多数の係数(または多数のパラメータ)を最適化することにより、学習を実行することができる。
【0118】
第1の例では、情報処理装置10Aは、このような学習済みの第2の学習モデルおよび学習済みの第2の決定木モデルを有することができる。第2の例では、情報処理装置10Aは、この情報処理装置10Aを搭載する装置とは別の装置に記憶されたこのような学習済みの第2の学習モデルおよび学習済みの第2の決定木モデルを、ネットワーク2を介して受信(取得)することができる。第3の例では、情報処理装置10Aは、この情報処理装置10Aを搭載する装置とは別の装置に記憶されたこのような学習済みの第2の学習モデルまたは学習済みの第2の決定木モデルに対して、ネットワーク2を介して、必要な情報(例えば、情報(6)~情報(8))を送信することにより、この第2の学習モデルまたは第2の決定木モデルの出力データである情報(9)~情報(12)を受信(取得)することができる。
【0119】
なお、ST208において、情報処理装置10Aは、取得した情報(9)および情報(10)(さらには情報(11)および/または情報(12))を、出力装置16を介してユーザに表示することも可能である。
【0120】
次に、オプションとしてのST210において、情報処理装置10Aが、学習済みの第3の学習モデルまたは学習済みの第3の決定木モデルに入力すべき各種の情報を取得することができる。具体的には、情報処理装置10Aは、以下に示す情報(13)と、情報(14)~情報(16)のうちの「少なくとも1つ」の情報と、を取得することができる。
【0121】
(13)上述した情報(6)(害発生予測情報)により示される害に対する薬剤の一般的な効果に関する情報
(14)特定領域(ゾーン)において過去に使用された薬剤の種類および効果に関する情報
(15)特定領域(ゾーン)の土壌の組成に関する情報
(16)特定領域(ゾーン)の水分保持能力に関する情報
【0122】
情報(13)は、情報(6)により示される害に対する薬剤の効果として一般的に知られている効果を示す(識別する)情報であり得る。
【0123】
情報(14)は、特定領域(ゾーン)において実際に過去に使用された薬剤の種類、および、その薬剤について実際に過去に得られた効果を示す(識別する)情報であり得る。或る薬剤が或る害に対して一般的には高い効果(または低い効果)を発揮することが知られていたとしても、実際に特定領域(ゾーン)において過去にその薬剤が使用されたにもかかわらず、その薬剤が十分な効果を発揮できなかった(または十分な効果を発揮することができた)等の事実が存在することがある。このような場合を考慮して、この情報(14)が用いられ得る。
【0124】
情報(15)は、特定領域(ゾーン)の土壌の組成を示す(識別する)情報であり得る。特定領域(ゾーン)の土壌の組成がこの対象領域に散布される農薬組成物の効果に影響を与える高い可能性を考慮して、この情報(15)が用いられ得る。
【0125】
情報(16)は、特定領域(ゾーン)の水分保持能力を示す(識別する)情報であり得る。特定領域(ゾーン)の水分保持能力がこの対象領域に散布される農薬組成物の効果に影響を与える高い可能性を考慮して、この情報(16)が用いられ得る。
【0126】
以上のような情報は、ユーザが、情報処理装置10Aの出力装置(ディスプレイ等)16に表示されるメニュー画面を利用して、情報処理装置10Aの入力装置14(キーボード、マウス、タッチパネル等)を用いて入力する情報であってもよい。
【0127】
次に、オプションとしてのST212において、情報処理装置10Aは、ST210において取得した情報、すなわち、情報(13)と、情報(14)~情報(16)のうちの少なくとも1つの情報とを、学習済みの第3の学習モデルまたは学習済みの第3の決定木モデルに入力することにより、上述した以下の情報(9)および情報(10)を取得して(例えば補助記憶装置15に)記憶することができる。この場合、情報(13)は必須の情報であり得る。
【0128】
(9)特定領域(ゾーン)に散布される薬剤を構成する複数の農薬組成物を示す情報
(10)情報(9)に示された複数の農薬組成物の各々の量を示す情報
【0129】
また、オプションとして、情報処理装置10Aは、ST210において取得した情報、すなわち、情報(13)と、情報(14)~情報(16)のうちの少なくとも1つの情報とを、学習済みの第3の学習モデルまたは学習済みの第3の決定木モデルに入力することにより、上述した以下の情報(9)および情報(10)に加えて、さらに情報(11)および情報(12)のうちの少なくとも一方を取得して(例えば補助記憶装置15に)記憶することもできる。この場合、情報(13)は必須の情報であり得る。
【0130】
(9)特定領域(ゾーン)に散布される薬剤を構成する複数の農薬組成物を示す情報
(10)情報(9)に示された複数の農薬組成物の各々の量を示す情報
(11)情報(9)および情報(10)に従って混合される薬剤を連続的に散布(処理)する最適な方法に関する最適連続処理情報
(12)情報(9)および情報(10)に従って混合される薬剤を散布(処理)するのに最も適した時期に関する最適処理時期情報
【0131】
第3の学習モデル(入力層、複数の中間層、出力層を有する機械学習/深層学習モデル等)、および、第3の決定木モデルは、各々が、情報(13)~情報(16)(入力データ)と、情報(9)~情報(12)(出力データ)と、有する多数(例えば数万以上)の教師データを用いて、予め学習を行っている。このような第3の学習モデルまたは第3の決定木モデルは、各教師データにおける入力データを入力したときに出力されるデータと、その教師データにおける出力データと、の誤差を小さくするように、その第3の学習モデルまたは第3の決定木モデルに用いられる多数の係数(または多数のパラメータ)を最適化することにより、学習を実行することができる。
【0132】
第1の例では、情報処理装置10Aは、このような学習済みの第3の学習モデルおよび学習済みの第3の決定木モデルを有することができる。第2の例では、情報処理装置10Aは、この情報処理装置10Aを搭載する装置とは別の装置に記憶されたこのような学習済みの第3の学習モデルおよび学習済みの第3の決定木モデルを、ネットワーク2を介して受信(取得)することができる。第3の例では、情報処理装置10Aは、この情報処理装置10Aを搭載する装置とは別の装置に記憶されたこのような学習済みの第3の学習モデルまたは学習済みの第3の決定木モデルに対して、ネットワーク2を介して、必要な情報(例えば、情報(13)~情報(16))を送信することにより、この第3の学習モデルまたは第3の決定木モデルの出力データである情報(9)~情報(12)を受信(取得)することができる。
【0133】
なお、ST212において、情報処理装置10Aは、取得した情報(9)および情報(10)(さらには情報(11)および/または情報(12))を、出力装置16を介してユーザに表示することも可能である。
【0134】
上述したST208において、情報処理装置10Aは、特定領域に散布される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、各農薬組成物の量を、それぞれ、情報(9)および情報(10)により識別することができる。この時点において、情報処理装置10Aは、一応の目的を達成することができる。しかし、上述したオプションとしてのST210およびST212を実行することにより、情報処理装置10Aは、情報(13)と、情報(14)~情報(16)のうちの少なくとも1つの情報とを、学習済みの第3の学習モデルまたは学習済みの第3の決定木モデルに入力することにより、これらの情報に基づいた、情報(9)および情報(10)を取得することができる。すなわち、情報処理装置10Aは、情報(13)と、情報(14)~情報(16)のうちの少なくとも1つの情報とに基づいて、特定領域に散布される薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、各農薬組成物の量を、取得することができる。この結果、ユーザは、ST208において情報処理装置10Aに示された情報(9)および情報(10)(さらには情報(11)および/または情報(12))と、ST212において情報処理装置10Aに示された情報(9)および情報(10)(さらには情報(11)および/または情報(12))と、を含む2種類の情報を選択肢として認識することができる。
【0135】
3-3.ST300において実行される動作
このST300では、移動型散布装置20が、ST200において決定された各農薬組成物を、決定された量だけ混合して調製された薬剤を、特定領域(またはゾーン)に散布することができる。
このST300において実行される動作を説明する前に、まず、移動型散布装置20が有するハードウェア構成について、図8を参照して簡単に説明する。
【0136】
図8は、図1に示した移動型散布装置20のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図8に示すように、移動型散布装置20は、上述した情報処理装置10Aと、この移動型散布装置20を移動させる駆動源21および駆動機構22と、この移動型散布装置20の現在位置に関する位置情報を取得するGPS(Global Positioning System)ユニット23と、各々が固有の農薬組成物を収容する複数のタンク24と、これら複数のタンク24のうちのいずれか複数の農薬組成物を混合して薬剤を調製する調製装置25と、調製装置25から供給される薬剤を散布する1またはそれ以上のノズル26と、を含むことができる。
【0137】
駆動源21は、情報処理装置10Aによる制御を受けて、移動型散布装置20を移動させるための駆動力を発生させて駆動機構22に提供することが可能な、エンジンおよび/またはモーターであり得る。
【0138】
駆動機構22は、駆動源21から供給される駆動力を移動型散布装置20の推進力に変換する任意の機構であって、ギヤ、シャフト、タイヤ、キャタピラ、および/または、プロペラ等を、これらに限定することなく含むことができる。駆動機構22は、また、情報処理装置10Aによる制御を受けて、移動型散布装置20の移動方向および/移動速度を制御する任意の機構であって、変速機、減速機、操舵機構、フラップ、および/または、ラダー等を、これらに限定することなく含むことができる。
【0139】
GPSユニット23は、情報処理装置10Aによる制御を受けて、周知のGPS技術を利用して移動型散布装置20の現在位置に関する位置情報を情報処理装置10Aに提供することができる。
【0140】
複数のタンク24の各々は、複数の農薬組成物のうち、そのタンクに固有の農薬組成物を収容することができる。
【0141】
調製装置25は、複数のタンク24の各々に対して、この調製装置25が有する、管、弁およびセンサを介して、結合され得る。調製装置25は、情報処理装置10Aによる制御を受けて、複数のタンク24のうちのいずれか複数のタンクから複数の農薬組成物を取得して混合することにより、薬剤を調製することができる。
【0142】
具体的には、調製装置25は、この調製装置25と複数のタンク24の各々とを結合する管に設けられた、情報処理装置10Aによる制御を受けて開閉動作可能な弁、を有することができる。調製装置25は、情報処理装置10Aにより指定された弁を開状態にし、その弁を通過する農薬組成物の量をセンサにより計測することができる。調製装置25は、このセンサにより計測された農薬組成物の量が情報処理装置10Aにより指定された量に達したときに、弁を閉状態に戻すことができる。これにより、調製装置25は、複数のタンク24のうち、情報処理装置10Aに指定(決定)されたいずれか複数のタンクにより収容された農薬組成物を、情報処理装置10Aに指定(決定)された量だけ、取得して混合することにより、薬剤を調製することができる。
【0143】
1またはそれ以上のノズル26の各々は、調製装置25に結合されている。各ノズル26は、情報処理装置10Aによる制御を受けて、調製装置25から供給される薬剤を散布(噴射)することができる。
【0144】
次に、上記構成を有する移動型散布装置20により実行される動作について、図9を参照して説明する。図9は、図3に示した決定システム1により実行される動作のうちの一部(ST300)の動作の一例を具体的に示すフロー図である。
【0145】
まず、ST302において、情報処理装置10Aが、特定領域(または各ゾーン)について、ST200で決定された複数の農薬組成物、および、各農薬組成物の量を、補助記憶装置15からロード(取得)することができる。
【0146】
次に、ST304において、情報処理装置10Aは、特定領域(または各ゾーン)の位置を示す位置情報を取得することができる。この位置情報は、1つの例では、ST102において対象領域を撮像した画像を生成した装置によりこの画像に付与された(対象領域の)位置情報と、この画像から導き出される対象領域に対する特定領域(各ゾーン)の相対的な位置関係と、に基づいて、算出され得る。この位置情報は、別の例では、任意のタイミングにおいて、ユーザにより情報処理装置10Aの入力装置14を介して入力され、情報処理装置10Aにより取得され得る。
【0147】
次に、ST306において、情報処理装置10Aは、まず、GPSユニット23を利用して、移動型散布装置20の現在位置を示す現在位置情報を取得することができる。さらに、情報処理装置10Aは、このように取得した現在位置と、ST304で取得した特定領域(または各ゾーン)の位置とに基づいて、移動ルート(順次通過すべき複数の地点に対応する位置に関する情報)を決定することができる。このような移動ルートは、例えば、周知であるナビゲーションシステムにおいて利用されている技術を用いて決定され得る。ここで、複数のゾーンに対して薬剤を散布するケースでは、情報処理装置10Aは、各ゾーンに含まれる複数の単位領域のすべてを通過するように、移動ルートが決定され得る。例えば、図6に示した例では、第1のゾーン130については、単位領域120A、120B、120Cのすべてを通過するように、第2のゾーン131については、単位領域120D、120E、120Fのすべてを通過するように、第3のゾーン132については、単位領域120G、120Hのすべてを通過するように、移動ルートが決定され得る。
【0148】
ST308において、情報処理装置10Aは、駆動源21および駆動機構22を制御して、移動型散布装置20の移動を開始させることができる。さらに、情報処理装置10Aは、駆動源21および駆動機構22を制御して、ST306で決定された移動ルートに沿って移動型散布装置20を移動させることができる。これは、GPSユニット23から提供される移動型散布装置20の現在位置がST306で決定された移動ルートに沿うように、駆動源21および/または駆動機構22を制御することによって実現可能である。
【0149】
ST310において、情報処理装置10Aは、例えば、特定領域(または各ゾーン)に近づいた状態において、その特定領域(または各ゾーン)に対応して決定された複数の農薬組成物を、決定された各農薬組成物の量だけ混合するように、調製装置25を制御することができる。これにより、調製装置25は、上述した動作を行って、その特定領域(または各ゾーン)について決定された複数の農薬組成物を、決定された各農薬組成物の量だけ混合することにより、その特定領域(または各ゾーン)に対応する薬剤を調製することができる。
【0150】
さらに、情報処理装置10Aは、移動型散布装置20の現在位置と、その特定領域(または各ゾーン)の位置との差が、閾値以下になったときに、ノズルを開状態にする旨を指示する信号を、ノズル26に送信することができる。これにより、ノズル26は、調製装置25から供給される薬剤を散布(噴射)することができる。
【0151】
さらにまた、情報処理装置10Aは、移動型散布装置20の現在位置と、その特定領域(または各ゾーン)の位置との差が、閾値以下である間において、ノズルを開状態にする旨を指示する信号を、ノズル26に送信し続けることができる。これにより、移動型散布装置20は、その特定領域(または各ゾーン)の位置に一致する位置に居る間において、その特定領域に対応する薬剤を散布することができる。
【0152】
この後、情報処理装置10Aは、移動型散布装置20の現在位置と、その特定領域(または各ゾーン)の位置との差が、閾値を上回ったときに、ノズルを閉状態にする旨を指示する信号を、ノズル26に送信することができる。これにより、ノズル26は、薬剤の噴射を停止することができる。
【0153】
移動型散布装置20が、複数の特定領域(または複数のゾーン)に薬剤を散布するケースでは、ST308およびST310は、各特定領域(各ゾーン)について順次実行され得る。
【0154】
なお、以上のとおり説明してきた情報処理装置10Aにより特定領域に対して実行される動作は、情報処理装置10Aによりゾーンに対して実行される動作に当て嵌めて実行され得る。
【0155】
4.決定システムの動作(その2)
ここまで、対象領域に含まれる特定領域(またはゾーン)に散布される薬剤について、この薬剤に含まれるべき複数の農薬組成物および各農薬組成物の量を決定する態様(第1の態様)について、説明してきた。しかし、この第1の態様は、対象領域に含まれる特定領域(またはゾーン)に直播種される種籾(または該特定領域に苗を移植するために育苗箱に播種される種籾)に処理(適用)される薬剤について、この薬剤に含まれるべき複数の農薬組成物および各農薬組成物の量を決定する態様(第2の態様)に対しても、同様に適用可能である。このセクション4において、対象領域とは、種籾が直播種される領域、および/または、種籾が播種された育苗箱から育成した苗が移植される領域をいい、1つの圃場、1つの圃場における一部の領域、および/または、複数の圃場であり得る。
【0156】
以下、冗長な説明を避けるために、第2の態様のうち、上述した第1の態様とは異なる部分のみに着目して、図10を参照して簡単に説明する。図10は、図1に示した決定システム1により実行される動作の別の例を示すフロー図である。
【0157】
図10に示すように、決定システム1により実行される動作は、大まかにいえば、対象領域(または対象領域に含まれる特定領域)に関する情報を取得するST1000と、ST1000において取得された情報に基づいて、対象領域(もしくは対象領域に含まれる特定領域)に直播種される種籾、または、この対象領域(もしくは特定領域)に苗を移植するために育苗箱に播種される種籾に処理される薬剤について、この薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、各農薬組成物の量を決定するST2000と、を含むことができる。さらに、オプションとして、決定システム1により実行される動作は、ST2000において決定された複数の農薬組成物の各々を、決定された量だけ混合することにより調製された薬剤を、対象領域(もしくは対象領域に含まれる特定領域)に直播種される種籾、または、この対象領域(もしくは特定領域)に苗を移植するために育苗箱に播種される種籾に処理するST3000と、を含むことができる。
【0158】
まず、ST1000に着目する。図11は、図10に示した決定システム1により実行される動作のうちの一部(ST1000)の動作の一例を具体的に示すフロー図である。図11に示す動作は、図4に示したST102およびST104を欠くものである。
【0159】
ST1002は、図4に示したST106に対応する。但し、ST1002では、対象領域に含まれる複数の単位領域の各々について、この単位領域において発生した少なくとも1つの害の種類を示す「単位種類情報」は、例えば、単位領域に関連して実際に収集された過去(前年度等)の情報であり得る。このような単位種類情報は、1つの例では、ユーザにより情報処理装置10Aの入力装置14を介して入力され、情報処理装置10Aにより取得され得る。このような単位種類情報は、別の例では、このような情報を収集して記憶する任意の別の装置(サーバ装置等)からネットワーク2を介して、情報処理装置10Aにより取得され得る。
【0160】
ST1004は、図4に示したST108に対応する。但し、ST1004では、対象領域に含まれる複数の単位領域の各々について、この単位領域において発生した少なくとも1つの害の各々の量を示す「単位量情報」は、例えば、過去(前年等)に実際に得られた情報であり得る。このような単位量情報は、1つの例では、ユーザにより情報処理装置10Aの入力装置14を介して入力され、情報処理装置10Aにより取得され得る。このような単位種類情報は、別の例では、このような情報を収集して記憶する任意の別の装置(サーバ装置等)からネットワーク2を介して、情報処理装置10Aにより取得され得る。
【0161】
ST1006およびST1008は、それぞれ、図4に示したST110およびST112に対応する。
【0162】
図10に戻り、次に、ST2000に着目する。図12は、図10に示した決定システム1により実行される動作のうちの一部(ST2000)の動作の一例を具体的に示すフロー図である。
【0163】
ST2002~ST2006は、それぞれ、図7に示したST204~ST208に対応する。以下、ST2002~ST2006について、図7を参照して上述したものと異なる点のみについて説明する。
【0164】
ST2002において、情報処理装置10Aは、学習済みの第1の学習モデルまたは学習済みの第1の決定木モデルに入力すべき以下に示す情報(1)~情報(5)を取得することができる。
【0165】
(1)特定領域(ゾーン)の土壌の種類に関する土壌情報
(2)特定領域(ゾーン)において過去に発生した害に関する害発生情報
(3)特定領域(ゾーン)における薬剤に対する抵抗性を有する害の蔓延状況に関する害蔓延情報
(4)特定領域(ゾーン)において水稲を栽培する期間について予測された気象データに関する気象予測情報
【0166】
これらの情報(1)~情報(4)は、それぞれ、ST204に関連して上述した情報(1)、情報(2)、情報(4)および情報(5)に対応する。
【0167】
次に、ST2004において、情報処理装置10Aは、ST2002で取得した情報のうちの少なくとも1つの情報(すなわち、情報(1)~情報(4)のうちの少なくとも1つの情報)を、学習済みの第1の学習モデルまたは学習済みの第1の決定木モデルに入力することにより、以下の情報(5)~情報(7)を取得することができる。
【0168】
(5)特定領域(ゾーン)において発生する害の種類およびこの害の量に関する害発生予測情報
(6)この害が生育する時期に関する害生育予測情報
(7)特定領域(ゾーン)において発生する薬害に関する薬害情報
【0169】
これらの情報(5)~情報(7)は、それぞれ、ST206に関連して上述した情報(6)~情報(8)に対応する。
【0170】
第1の学習モデル(入力層、複数の中間層、出力層を有する機械学習/深層学習モデル等)、および、第1の決定木モデルは、各々が、情報(1)~情報(4)(入力データ)と、情報(5)~情報(7)(出力データ)と、有する多数(例えば数万以上)の教師データを用いて、予め学習を行っている。このような第1の学習モデルまたは第1の決定木モデルは、各教師データにおける入力データを入力したときに出力されるデータと、その教師データにおける出力データと、の誤差を小さくするように、その第1の学習モデルまたは第1の決定木モデルに用いられる多数の係数(または多数のパラメータ)を最適化することにより、学習を実行することができる。
【0171】
次に、ST2006において、情報処理装置10Aは、ST2004で取得した情報(5)~情報(7)を、学習済みの第2の学習モデルまたは学習済みの第2の決定木モデルに入力することにより、以下に示す情報(8)および情報(9)を取得して(例えば補助記憶装置15に)記憶することができる。
【0172】
(8)特定領域に直播種される種籾に処理される薬剤を構成する複数の農薬組成物を示す情報(または、特定領域に苗を移植するために育苗箱に播種される種籾に処理される薬剤を構成する複数の農薬組成物を示す情報)
(9)情報(8)に示された複数の農薬組成物の各々の量を示す情報
【0173】
このような第2の学習モデルおよび第2の決定木モデルは、各々が、情報(5)~情報(7)(入力データ)と、情報(8)~情報(9)(出力データ)と、有する多数(例えば数万以上)の教師データを用いて、予め学習を行っている。このような第2の学習モデルまたは第2の決定木モデルは、各教師データにおける入力データを入力したときに出力されるデータと、その教師データにおける出力データと、の誤差を小さくするように、その第2の学習モデルまたは第2の決定木モデルに用いられる多数の係数(または多数のパラメータ)を最適化することにより、学習を実行することができる。
【0174】
再度図10に戻り、ST3000では、ST2000において、特定領域(ゾーン)について決定された複数の農薬組成物を、決定された各農薬組成物の量だけ混合して薬剤を調製することができる。一例では、このように調製された薬剤が、特定領域(ゾーン)に直播種される種籾に処理される。このような処理が施された種籾は、特定領域(ゾーン)に播種される。別の例では、このように調製された薬剤が種籾に処理され、このような処理が施された種籾は育苗箱に播種される。この後、この育苗箱において育成した苗が、特定領域(ゾーン)に移植される。
【0175】
なお、以上のとおり説明してきた情報処理装置10Aにより特定領域に対して実行される動作は、情報処理装置10Aによりゾーンに対して実行される動作に当て嵌めて実行され得る。
【0176】
以上説明したとおり、本件出願に開示された様々な実施形態によれば、水稲が栽培される対象領域に含まれる特定領域(ゾーン)に散布される薬剤について、この薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、各農薬組成物の量を、任意のタイミングで決定することができる。また、対象領域に含まれる特定領域(ゾーン)に直播種される種籾、または、この特定領域(ゾーン)に苗を移植するために育苗箱に播種される種籾に処理される薬剤について、この薬剤を構成する複数の農薬組成物、および、各農薬組成物の量を、任意のタイミングで決定することができる。
【0177】
5.変形例
図4を参照して説明した例では、ST102~ST112が、同一の情報処理装置10Aにより実行され得る場合について説明した。しかし、ST102~ST112は、移動型散布装置20に搭載された情報処理装置10A、端末装置30に搭載された情報処理装置10A、サーバ装置10に搭載された情報処理装置10A、および/または、ネットワーク2に接続可能な他の任意の装置(他のサーバ装置等)等、により、分担して実行され得る。この場合、ST102~ST112を分担して実行する各装置は、次の処理を実行する装置に対して、必要な情報を、ネットワーク2を介して送信することができる。このことは、図11に関連して説明した例にも同様に適用可能である。
【0178】
図7を参照して説明した例では、ST202~ST212が、同一の情報処理装置10Aにより実行され得る場合について説明した。しかし、ST202~ST212は、移動型散布装置20に搭載された情報処理装置10A、端末装置30に搭載された情報処理装置10A、サーバ装置10に搭載された情報処理装置10A、および/または、ネットワーク2に接続可能な他の任意の装置(他のサーバ装置等)等、により、分担して実行され得る。この場合、ST202~ST212を分担して実行する各装置は、次の処理を実行する装置に対して、必要な情報を、ネットワーク2を介して送信することができる。このことは、図12に関連して説明した例にも同様に適用可能である。
【0179】
以上、複数の農薬組成物を混合して薬剤を調製する場合について説明してきた。しかし、本件出願に開示された技術は、複数の農薬組成物の中から1つの農薬組成物のみを決定し、選択された1つの農薬組成物を決定された量だけ用いて薬剤を調製する場合にも同様に適用可能である。
この場合、例えば、ST208において説明した学習モデルに用いられる情報(9)および情報(10)は、以下のとおりに変更され得る。
(9)特定領域(ゾーン)に散布される薬剤を構成する1つの農薬組成物を示す情報
(10)情報(9)に示された1つの農薬組成物の量を示す情報
同様に、様々な学習モデルにおいて用いられる「複数の農薬組成物を示す情報」は、「1つの農薬組成物を示す情報」に置き換えられ得るし、「複数の農薬組成物の各々の量を示す情報」は、「1つの農薬組成物の量を示す情報」に置き換えられ得る。
【0180】
発明者らは、本件出願において説明した各学習モデルに入力されるデータとこの学習モデルから出力されるデータとの間に、相関関係があることを確認した結果、各学習データにおいてこのようなデータを用いる構成を採用した。
【0181】
本開示の利益を有する当業者により容易に理解されるように、上述した様々な例は、矛盾の生じさせない限りにおいて、相互に様々なパターンで適切に組み合わせて用いられ得る。
【0182】
<2>農薬組成物
本発明にかかる農薬組成物は、下記成分(a)および(b1)を含む液体農薬組成物、または、下記成分(a)および(b2)を含む固体農薬組成物である:
(a)除草効果を有する有効成分、殺虫効果を有する有効成分および殺菌効果を有する有効成分からなる群より選択される少なくとも1つの有効成分;
(b1)1~200g/Lのアニオン分散剤;
(b2)1~20%w/wのアニオン分散剤。
【0183】
本発明にかかる農薬組成物は、先述の有効成分を1または複数含んでよく、また、アニオン分散剤についても、1または複数を含んでよい。
【0184】
上記のように、アニオン分散剤を特定の含有量で混合することにより、圃場における農薬組成物の十分な分散性を担保することができる。その結果、局所施用による薬害、ならびに、有効成分および補助成分による環境への負荷を抑えることが可能である。
【0185】
農薬組成物が液体農薬組成物である場合、剤型は、例えば、水性懸濁剤または油性懸濁剤である。液体農薬組成物の具体的な剤型としては、例えば、フロアブル製剤(SC:suspension concentrate)が挙げられる。
【0186】
農薬組成物が固体農薬組成物である場合、剤型は、例えば、水和剤および粒剤である。固体農薬組成物の具体的な剤型としては、例えば、顆粒水和剤(WG:water dispersible granule)および浮遊性粒剤が挙げられる。一態様において、固体農薬組成物は、自己拡散性および浮遊性の少なくとも1つを有する水和剤である。かかる特性を有することにより、農薬が散布された圃場内に均一に病害虫雑草を防除することができる。
【0187】
(a)有効成分
本発明にかかる農薬組成物は、(a1)除草効果を有する有効成分、(a2)殺虫効果を有する有効成分および(a3)殺菌効果を有する有効成分からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0188】
(a1)除草効果を有する有効成分
除草効果を有する有効成分としては、例えば、テフリルトリオン、トリアファモン、フェントラザミド、クロメプロップ、オキサジアゾン、イプフェンカルバゾン、カフェンストロール、インダノファン、フェノキサスルホン、メフェナセット、ブタクロール、プレチラクロール、フェンキノトリオン、ベンゾビシクロン、スルコトリオン、メソトリオン、ピラゾレート、ベンゾフェナップ、ピリミスルファン、エトキシスルフロン、ベンスルフロンメチル、プロピリスルフロン、メタゾスルフロン、ペノキススラム、オキサジアルギル、ピラクロニル、ペントキサゾン、フロルピラウキシフェンベンジル、フェノキサプロップエチル、シハロホップブチル、メタミホップ、シクロピリモレート、ジメタメトリン、シメトリン、ベンタゾン、オキサジクロメホン、ブロモブチドおよびテトフルピロリメットが挙げられるが、これらに限定されない。除草効果を有する有効成分は、これら化合物からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0189】
本発明にかかる農薬組成物は、除草効果を有する有効成分(a1)を複数含んでもよい。好ましい態様において、本発明にかかる農薬組成物は、テフリルトリオン、トリアファモン、フェントラザミド、クロメプロップ、オキサジアゾンおよびエトキシスルフロンからなる群より選択される1または複数の除草効果を有する有効成分(a1)を含む。
【0190】
(a2)殺虫効果を有する有効成分
殺虫効果を有する有効成分としては、例えば、イミダクロプリド、チアクロプリド、ジノテフラン、フルピラジフロン、フルピリミン、ニテンピラム、クロチアニジン、スルホキサフロル、エチプロール、フィプロニル、スピノサド、テトラニリプロール、クロラントラニリプロール、シアントラニリプロール、ピメトロジン、トリフルメゾピリム、ベンズピリモキサンおよびオキサゾスルフィルが挙げられるが、これらに限定されない。殺虫効果を有する有効成分は、これら化合物からなる群より選択される少なくとも1つである。本発明にかかる農薬組成物は、殺虫効果を有する有効成分(a2)を複数含んでもよい。
【0191】
(a3)殺菌効果を有する有効成分
殺菌効果を有する有効成分としては、例えば、イソチアニル、プロベナゾール、トリシクラゾール、ジクロベンチアゾクス、ペンフルフェン、チフルザミド、インピルフルキサム、カスガマイシン、バリダマイシン、フサライド、メトミノストロビン、アゾキシストロビンおよびペンシクロンが挙げられるが、これらに限定されない。殺菌効果を有する有効成分は、これら化合物からなる群より選択される少なくとも1つである。本発明にかかる農薬組成物は、殺菌効果を有する有効成分(a3)を複数含んでもよい。
【0192】
本発明にかかる農薬組成物は、上記成分(a1)、(a2)および(a3)からなる群より選択される有効成分を複数含む場合、有効成分について規定する含有量は、各有効成分の含有量の合計である。
【0193】
本発明にかかる農薬組成物が液体農薬組成物である場合、例えば10~700g/L、好ましくは50~600g/L、さらに好ましくは200~600g/Lの有効成分(a)を含む。
【0194】
本発明にかかる農薬組成物が固体農薬組成物である場合、例えば10~70%w/w、好ましくは50~60%w/w、さらに好ましくは20~60%w/wの有効成分(a)を含む。
【0195】
(b)アニオン分散剤
アニオン分散剤としては、例えば、アルキルナフタレンスルホン酸誘導体およびリグニンスルホン酸誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。アニオン分散剤は、合成品であっても市販品であってもよい。アニオン分散剤の市販品であるアルキルナフタレンスルホン酸誘導体として、例えば、デモールSNB、ニューカルゲンPS-P、ニューカルゲンWG-101、ニューカルゲンBX-C、AEROSOL OS、MORWET D425、MORWET IP、SUPRAGIL WP、SUPRAGIL MNS/90、TERSPERSE 2020などが挙げられる。アニオン分散剤の市販品であるリグニンスルホン酸誘導体として、例えば、ニューカルゲンRX-B、ニューカルゲンWG-4、BORRESPERSE CA、BORRESPERSE NA、MARASPERSE CBOS-4、POLYFON H、POLYFON T、POLYFON O、UFOXANE 3A、VANISPERSE CBなどが挙げられる。アニオン分散剤は、先述の化合物からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0196】
本発明にかかる農薬組成物は、アニオン分散剤を複数含む場合、アニオン分散剤について規定する含有量は、各アニオン分散剤の含有量の合計である。
【0197】
本発明にかかる農薬組成物が液体農薬組成物である場合、例えば1~200g/L、好ましくは5~150g/L、より好ましくは50~150g/Lのアニオン分散剤を含む。
【0198】
本発明にかかる農薬組成物が固体農薬組成物である場合、例えば1~20%w/w、好ましくは5~20%w/w、より好ましくは5~15%w/wのアニオン分散剤を含む。
【0199】
好ましい一態様において、本発明にかかる農薬組成物は、圃場への施用時、アニオン分散剤の施用量が9~300g/haとなるように設計されている。かかる施用量とすることにより、単用および混用後の散布液を圃場、特に水田に散布した際、水稲への薬害を回避しつつ、農薬組成物に十分な拡散性能を付与することができる。より好ましい態様において、本発明にかかる農薬組成物は、圃場への施用時、アニオン分散剤の施用量が9~150g/haとなるように設計されている。さらにより好ましい態様において、本発明にかかる農薬組成物は、圃場への施用時、アニオン分散剤の施用量が9~130g/haとなるように設計されている。
【0200】
本発明にかかる農薬組成物は、水田に局所施用した場合でも十分な分散性を担保することができ、有効成分および/または補助成分による環境負荷を抑えることができる。また、使用する補助成分が共通しているため、本発明にかかる農薬組成物を複数混合して施用する場合であっても、必要以上の補助成分を用いることによる環境負荷を低減することができる。
【0201】
本発明にかかる農薬組成物は、補助成分をさらに含んでもよい。補助成分は例えば、界面活性剤、凍結防止剤、増粘剤、防腐剤、消泡剤、薬害軽減剤および担体である。これら補助成分はいずれも、合成品であっても市販品であってもよい。
【0202】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン界面活性剤を使用することができる。本発明にかかる農薬組成物は、1または複数のノニオン界面活性剤を含んでよい。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリアルキレンオキシドブロックポリマー、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルカンジオール、アセチレングリコール、ポリオキシエチレンアセチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタンエステルおよびグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。ノニオン界面活性剤の市販品の具体例としては、サーフィノール104、サーフィノール420、サーフィノール440、ニューカルゲンTG-310、ATLAS G 5000、DOWFAX 100N50、GENAPOL 10500、PLURONIC(登録商標)F127、PLURONIC(登録商標)L62、PLURONIC(登録商標)P105、PLURONIC(登録商標)PE 6200、PLURONIC(登録商標)PE 10500、SYNPERONIC PE/F 127、SOPROPHOR BSU、SOPROPHOR S/40P、STEP-FLOW 26、SYNPERONIC PE/L 62、TERMUL 5429、ULTRARIC PE 62、ULTRARIC PE 105、東邦化学(株)SORPOL Tシリーズ製品、SPAN各種、三菱ケミカル(株)製品リョートーシュガーエステル、第一工業製薬(株)DKエステル製品および花王(株)レオドールSPシリーズ製品などが挙げられる。
【0203】
凍結防止剤としては、例えば、尿素、グリセリン、ポリグリセリンおよびポリグリセリン誘導体、エチレングリコール、プロパンジオールおよびプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0204】
増粘剤の具体例としては、例えば、ゴーセノールGL-05、ダイユータンガム、レオクリスタ、FBP-34 WELAN GUM、KELZAN、KELZAN BT、KUNIPIA F、KUNIPIA G、RHODOPOL G、RHODOPOL 23、RHODOPOL 50 MC、SATIAXANE CX911、VAN GEL B、VEEGUM R、VOLCLAY HPM-20、WELAN GUM BG3810およびEXILVAなどが挙げられる。
【0205】
防腐剤の具体例としては、例えば、バイオホープ、ACTICIDE B 20、BRONOPOL、KATHON CG/ICP、PREVENTOL BIT 20 N、PREVENTOL D 2、PREVENTOL D 7PROXEL GXLおよびPROXEL GXL(S)などが挙げられる。
【0206】
消泡剤としては、シリコーンオイルおよびステアリン酸カルシウムが挙げられる。消泡剤の市販品の具体例としては、例えば、アンチフォームE-20、ANTIFOAM 8830 FOOD GRADE、SAG10、SAG30、SAG1 1572、SILCOLAPSE 426R、SILCOLAPSE 432、SILCOLAPSE454、SILCOLAPSE482、SILFOAM SE2、SILFAR SE 4およびSILFOAM SREなどが挙げられる。
【0207】
担体としては、例えば、タルク、カオリンクレー、シリカ、クレー、チョーク、石英、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ケイ藻土、炭酸カルシウム、樹脂、蝋、水、アルコール、有機溶媒、鉱油および植物油が挙げられ、農薬組成物の剤型に応じて適宜選択される。
【0208】
本発明にかかる農薬組成物が固体農薬組成物である場合、さらに、以下のような成分を含んでもよい:例えば、クエン酸、リンゴ酸、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、アンモニア水、硫酸アンモニウム、結合剤(例えば、デンプン、CMC、PVA、ポリウレタン、PVP、など)、造粒性・崩壊改善剤(例えば、アニオン界面活性剤、崩壊改善剤(例えば、アニオン界面活性剤、CMC)、崩壊拡展剤(例えば、ポリアクリル酸塩)など。
【0209】
本発明の別の側面は、農薬組成物の製造方法に関する。当該製造方法は、有効成分(a)およびアニオン分散剤(b)を混合することを含む。具体的には、農薬組成物の製造方法は:
・有効成分(a)およびアニオン分散剤(b)を混合する第1の混合工程と、
・第1の混合工程で得られた混合物に、補助成分を添加して混合する第2の混合工程と
を含む。
【0210】
本発明にかかる農薬組成物が液体農薬組成物である場合、例えば、有効成分、アニオン分散剤、担体(例えば水)および消泡剤等その他成分を混合し粉砕した後、別途、水、増粘剤および防腐剤を混合したものを添加することにより調製することができる。
【0211】
本発明にかかる農薬組成物が固体農薬組成物である場合、例えば、有効成分、アニオン分散剤、担体(例えばタルクおよび/またはカオリンクレー)およびその他成分を混合し、乾式粉砕した後、粉砕物に、別途、液体湿潤剤および水を混合したものを添加して、混合混練し、造粒、乾燥および篩分することにより調製することができる。例えば、固体農薬組成物が顆粒水和剤(WG)である場合、噴霧乾燥、流動床造粒、パン造粒、高速ミキサーを用いた混合、及び、固形不活性物質を用いない押出など、慣習的な方法によって調製することができる。
【0212】
別の態様において、本発明にかかる農薬組成物の製造方法は、
・有効成分(a)とアニオン分散剤(b)とを混合する混合工程と、
・前記混合工程の後、粉砕を行う粉砕工程と、
・前記粉砕工程の後、アニオン分散剤(b)を更に添加して混合する更なる混合工程と
を含む。このように、アニオン分散剤を、粉砕の前後で分割して添加して混合することにより、粉砕液の粉砕による発熱を回避し、品温を下げることができる。粉砕による発熱は、例えば、10℃未満に抑えることが好ましい。当該製造方法は、SCおよびWGのいずれにも使用することができる。好ましくは、当該製造方法は、SCに使用することができる。
【0213】
本発明にかかる農薬組成物は、本発明に包含される農薬組成物を複数混合して調製した混合剤であってもよい。したがって、本発明のさらに別の側面は、先述の農薬組成物を複数混合することを含む、農薬組成物の製造方法に関する。本発明にかかる農薬組成物を複数混合する場合、使用する補助成分が共通しているため、必要以上の補助成分を用いることによる環境負荷を低減することができる。
【0214】
<3>病害、害虫および/または雑草の防除方法
本発明の別の側面は、先述の農薬組成物を用いた、病害、害虫および/または雑草の防除方法に関する。より具体的には、先述の農薬組成物を1または複数、圃場に施用することを含む、病害、害虫および/または雑草の防除方法に関し、ここで、アニオン分散剤は、例えば9~300g/ha、好ましくは9~150g/ha、より好ましくは9~130g/haの施用量で圃場に施用される。かかる範囲の施用量とすることにより、単用および混用後の散布液を圃場、特に水田に散布した際、農薬組成物に十分な拡散性能を付与することができる。
【0215】
水稲病害としては例えば、イモチ病(Pyricularia oryzae)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0216】
水稲害虫としては例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
半翅目虫:ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)、トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)、ヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus(Fallen))、セジロウンカ(Sogatella furcifera(Horvath))など、
甲虫目:イネドロオイムシ(Oulema oryzae(Kuwayama))、イネミズゾウムシ(Lissorhoptrus oryzophilus Kuschel)など。
【0217】
雑草とは、圃場で成長する作物植物の成長にとって望ましくない植物をいい、「雑草の防除」は、望ましくない植物を防除または当該植物の成長を調節することをいう。雑草を防除する方法において、本発明にかかる農薬組成物を1または複数、雑草(例えば、単子葉植物または双子葉植物の雑草または望ましくない作物植物などの有害植物)、種子(例えば、穀物、種子または塊茎または芽を有するシュート部分などの栄養繁殖体)または作物植物が成長する領域(例えば、栽培下の領域)に施用する。
【0218】
水田雑草としては例えば、以下のものが挙げられるがこれらに限定されない:
以下の属の双子葉植物:タデ属(Polygonum)、イヌガラシ属(Rorippa)、キカシグサ属(Rotala)、アゼナ属(Lindernia)、タウコギ属(Bidens)、アブノメ属(Dopatrium)、タカサブロウ属(Eclipta)、ミゾハコベ属(Elatine)、オオアブノメ属(Gratiola)、アゼトウガラシ属(Lindernia)、ミズキンバイ属(Ludwigia)、セリ属(Oenanthe)、キンポウゲ属(Ranunculus)、サワトウガラシ属(Deinostema)など、
以下の属の単子葉植物:ヒエ属(Echinochloa)、キビ属(Panicum)、スズメノカタビラ属(Poa)、カヤツリグサ属(Cyperus)、ミズアオイ属(Monochoria)、テンツキ属(Fimbristylis)、クワイ属(Sagittaria)、ハリイ属(Eleocharis)、ホタルイ属(Scirpus)、ヘラオモダカ属(Alisma)、イボクサ属(Aneilema)、スブタ属(Blyxa)、ホシクサ属(Eriocaulon)、ヒルムシロ属(Potamogeton)など。
【0219】
本発明にかかる農薬組成物は、より具体的には、例えば、以下の代表的な水田雑草に関して使用することができる:
双子葉植物:キカシグサ(Rotala indica Koehne)、アゼナ(Lindernia procumbens Philcox)、チヨウジタデ(Ludwigia prostrata Roxburgh)、ヒルムシロ(Potamogeton distinctus A. Benn)、ミゾハコベ(Elatine triandra Schk)、セリ(Oenanthe javanica)、
単子葉植物:タイヌビエ(Echinochloa oryzicola Vasing)、コナギ(Monochoria vaginalis Presl)、マツバイ(Eleocharis acicularis L.)、クログワイ(Eleocharis Kuroguwai Ohwi)、タマガヤツリ(Cyperus difformis L.)、ミズガヤツリ(Cyperus serotinus Rottboel)、ウリカワ(Sagittaria pygmaea Miq)、ヘラオモダカ(Alisma canaliculatum A. Br. et Bouche)、ホタルイ(Scirpus juncoides Roxburgh)。
【0220】
本発明にかかる防除方法において、施用はいずれの手段によって行ってもよい。例えば、手動散布、または、有人もしくは無人の航空機および車両などによる自動散布によって行ってもよい。
【0221】
本発明にかかる防除方法に関し、圃場は、好ましくは水田である。また、施用は、好ましくは、水田の水面への適用、より好ましくは、水田の水面への局所適用である。
【0222】
本発明にかかる防除方法において、アニオン分散剤は、好ましくは9~250g/haの施用量で圃場に施用される。かかる範囲の施用量とすることにより、圃場において農薬組成物をより効率的に拡散することができる。
【0223】
また、本発明にかかる防除方法において、有効成分は、例えば5~1000g/ha、好ましくは15~500g/haの施用量で圃場に施用される。一態様において、有効成分は、50~650g/haの施用量で圃場に施用される。有効成分の施用量は、例えば、気候、圃場における病害、害虫および/または雑草の種類、ならびに、施用時期等に応じて、前記範囲から適宜選択することが可能である。
【0224】
本発明にかかる防除方法において、施用する農薬組成物は、例えば、圃場の病害、害虫および/または雑草の発生予測、および/または、その発生状況に基づいて自動選択されるか、または、(例えばユーザにより)選択される。自動選択または選択される農薬組成物は1または複数であってよい。自動選択は、先述の情報処理装置によって行われてもよい。
【0225】
一態様において、本発明にかかる防除方法において、農薬組成物は、自動計測して圃場に施用される。別の一態様において、農薬組成物は複数、自動計測および/または自動混合して圃場に施用される。自動計測および/または自動混合は、先述の情報処理装置10Aおよび/または先述の移動型散布装置20によって行われてもよい。先述の情報処理装置10Aおよび/または先述の移動型散布装置20を使用しない別の一態様において、農薬組成物は、例えばユーザにより器具又は装置を用いて計測して圃場に施用されるか、または、農薬組成物は複数、例えばユーザにより器具又は装置を用いて計測および/または混合して圃場に施用される。
【0226】
本発明の別の側面は、先述の防除方法に使用するためのキットであって、当該キットは、先述の農薬組成物と、容器とを含む。好ましくは、当該キットは、
・先述の複数の農薬組成物と、
・空間的に分離された複数の容器と
を含み、複数の農薬組成物のそれぞれが、前記複数の容器のそれぞれに格納されている。本発明にかかるキットの一例は、図8に示す複数のタンク24である。かかるキットによれば、複数の候補農薬組成物から、圃場の状況に応じて、適切な農薬組成物を適宜選択し、施用することができる。かかるキットは先述の情報処理装置10Aと組み合わせて用いられてもよく、また、先述の移動型散布装置20に組み込んで用いられてもよい。
【0227】
本発明はさらに、病害、害虫および/または雑草を防除するための、先述の農薬組成物の使用に関する。本発明の農薬組成物の使用に関し、一態様において、病害、害虫および/または雑草は、水田に発生する。
【0228】
以上説明したとおり、本発明によれば、優れた拡散性、特には優れた水中拡散性を示す農薬組成物を提供することができるため、局所的な施用においても十分な効果が発揮され、作物植物に対する薬害を回避することができる。
【0229】
また、病害、害虫および/または雑草の発生予察およびその発生状況に基づき、防除したい病害、害虫および/または雑草に応じて、2種以上の農薬組成物を適切な量で混合し、安定な希釈液を得て、圃場(例えば水田)に施用することができる。圃場の状況に応じて、防除のために選定した薬剤を施用することで、過剰な化学物質を環境中に散布することを回避することができる。また、複数の農薬組成物を組み合わせることにより、希釈液の物理的性状および/または化学的性状が安定な農薬組成物、ならびに、異なる物理的性状および化学的性状を有し、異なる病害、害虫および/または雑草を同時に防除することのできる、混合剤としての農薬組成物を提供することができる。かかる農薬組成物は、優れた拡散性によって、有効成分が混合施用された際に、圃場(例えば水田)に均一に広範囲に拡散し、殺虫、殺菌および/または除草効果を発揮することができるため、環境負荷となる過剰な有効成分を散布することを回避しつつ、病害、害虫および/または雑草防除することができる。また、本発明の範囲内の農薬組成物を複数施用することにより、農薬組成物間で補助成分が共通しているため、必要以上の補助成分を用いることを回避することができ、この点からも環境負荷を低減することができる。
【0230】
さらには、情報処理装置および/または散布装置と組み合わせることにより、病害、害虫および/または雑草の発生予察およびその発生状況に基づき、防除したい病害、害虫および/または雑草により適した薬剤の種類および施用量の選択が可能となり、さらに効率的な防除を達成することができる。
【0231】
本出願は、「農薬組成物、情報処理装置およびコンピュータプログラム」と題して2021年11月22日に提出された日本国特許出願第2021-189672に基づいており、この日本国特許出願による優先権の利益を享受する。この日本国特許出願の全体の内容が引用により本明細書に組み入れられる。
【実施例0232】
下記表に示す成分および組成に基づき、水、有効成分、分散剤および消泡剤等のその他成分を混合し、粉砕した後、別途、水、増粘剤および防腐剤を混合したものを加えて混合することにより、実施例および比較例の農薬組成物を調製した。実施例において「投下量」は「施用量」に対応するものとする。表中の略語は以下の通りである。
【0233】
フロアブル製剤(SC:suspension concentrate)は、有効成分、アニオン分散剤、水および消泡剤等その他成分を混合し粉砕した後、別途、水、増粘剤および防腐剤を混合したものを添加することにより調製した。顆粒水和剤(WG:water dispersible granule)は、有効成分、アニオン分散剤、担体およびその他成分を混合し、乾式粉砕した後、粉砕物に、別途、液体湿潤剤および水を混合したものを添加して、混合混練し、造粒、乾燥および篩分することにより調製した。
【0234】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0235】
試験例1A
実施例7および8の農薬組成物ならびに比較例1および2の農薬組成物を、下記表に示す製剤施用量および投下量で水田に局所的に施用した。局所的な施用は、2m×13mプロットでの短辺への一辺処理にて行った。
【0236】
【表2-1】
【0237】
アニオン分散剤の投下量が4g/ha(比較例1)および0.8g/ha(比較例2)の場合、55g/ha(実施例7)および9.167g/ha(実施例8)と比較して、局所的施用(2m×13mプロットでの短辺への一辺処理)で施用箇所の薬害が、より大きかった。これらの結果から、剤型が顆粒水和剤である農薬組成物において、アニオン分散剤は少なくとも9g/ha以上必要であることが示された。
【0238】
試験例1B
次いで、同じ有効成分トリアファモンを含有するが、剤型および分散剤の含有量の異なる実施例8および比較例2を使用して、分散性による効果の相違を試験した。
【0239】
【表2-2】
【0240】
上記結果が示すとおり、有効成分としてトリアファモンを含有する場合、分散剤を0.8g/ha含有する農薬組成物(比較例2)は、施用箇所から離れたところでは効果が不十分であったのに対し、アニオン分散剤を9.167g/ha含有する農薬組成物(実施例8)は、施用箇所から離れたところでも十分な効果を担保することができた。
【0241】
試験例1C
本試験例では、実施例2および比較例2を使用して、分散性による薬害の相違を試験した。実施例2および比較例2を、下記表に示す製剤施用量および投下量で水田に局所的に施用した。局所的な施用は、1m×15mプロットでの短辺への一辺処理にて行った。実施例2および比較例2はいずれも、同じ有効成分トリアファモンを含有するフロアブル製剤であるが、実施例2は比較例2よりも分散剤濃度が高い。
【0242】
【表2-3】
【0243】
圃場への施用時におけるアニオン分散剤の投下量が0.8g/haの場合(比較例2)には、投下量が10g/haの場合(実施例2)と比較して、局所的施用(1m×15mプロットでの短辺への一辺処理)における施用箇所の薬害が、より大きかった。この結果から、圃場への施用時におけるアニオン分散剤は少なくとも10g/ha必要であることが示された。
【0244】
試験例1D
本試験例では、複数の製剤を混用した場合の、分散性による薬害の相違を試験した。実施例2と実施例4とを混用したもの、および、比較例2と比較例3とを混用したものを、下記表に示す製剤施用量および投下量で水田に局所的に施用した。局所的な施用は、1m×15mプロットでの短辺への一辺処理にて行った。実施例2および比較例2はいずれも、有効成分トリアファモンを含有するフロアブル製剤であるが、実施例2は比較例2よりも分散剤濃度が高い。実施例4および比較例3はいずれも、有効成分フェントラザミドを含有するフロアブル製剤であるが、実施例4は比較例3よりも分散剤濃度が高い。
【0245】
【表2-4】
【0246】
圃場への施用時におけるアニオン分散剤の総投下量が8.8g/haの場合(比較例2+比較例3)には、70g/haの場合(実施例2+実施例4)と比較して、局所的施用(1m×15mプロットでの短辺への一辺処理)における施用箇所の薬害が、より大きかった。この結果から、圃場への施用時におけるアニオン分散剤の総投下量は、8.8g/haでは不十分であることが示された。
【0247】
試験例2
複数の農薬組成物を、農薬散布用ドローンを使用して圃場に散布し、処理6週間後のヒエ、コナギおよびホタルイへの効果を試験した。同様に、人による農薬手散布と比較した。使用した農薬組成物、製剤使用量、投下薬量および分散剤投下量は下記表に示すとおりである。また、図13に、ドローン散布飛行ルートを矢印(→)で、効果調査地点を1~12の番号で示した。
【0248】
【表3】
【0249】
上記結果から、ドローン散布でも手散布と同等の効果が得られることが示された。また、異なる有効成分においても類似処方を適用することができ、それら少なくとも1つの有効成分を含有する複数の農薬組成物を混用してもトラブルはなかった。以上より、多様な施用方法および局所施用によっても、十分な効果が得られることが示された。
【0250】
試験例3
有効成分、アニオン分散剤、水および消泡剤等その他成分を混合する際、アニオン分散剤の投入量と粉砕工程中の粉砕液温度との関係を調べた。具体的には、実施例3の農薬組成物において、アニオン分散剤を粉砕の前および後で分割投入し、投入量および発熱の関係を調べた。結果を下記表および図14に示す。
【0251】
【表4-1】
【0252】
【表4-2】
【0253】
上記の結果から、所定の投入量で分散剤を分割投入することで、粉砕液の粉砕時の発熱を回避し、品温を下げることができることが示された。具体的には、アニオン分散剤の1回の投入量が80g/L以上になると、粉砕6分後に10℃以上温度上昇することが示された。
【符号の説明】
【0254】
1 決定システム
2 ネットワーク
10 サーバ装置
20 移動型散布装置
21 駆動源
22 駆動機構
23 GPSユニット
24 複数のタンク
25 調製装置
26 ノズル
30 端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)および(b2)
(a)殺虫効果を有する有効成分、殺菌効果を有する有効成分および除草効果を有する有効成分からなる群より選択される少なくとも1つの有効成分、
(b2)1~20%w/wのアニオン分散剤
を含み、
前記アニオン分散剤として、アルキルナフタレンスルホン酸誘導体およびリグニンスルホン酸誘導体を含む、固体農薬組成物
【請求項2】
圃場への施用時、アニオン分散剤の施用量が9~300g/haとなるように設計されている、請求項1に記載の農薬組成物。
【請求項3】
前記固体農薬組成物が、水和剤または粒剤である、請求項1または2に記載の農薬組成物。
【請求項4】
前記固体農薬組成物が、自己拡散性および浮遊性の少なくとも1つを有する水和剤である、請求項1または2に記載の農薬組成物。
【請求項5】
前記除草効果を有する有効成分が、テフリルトリオン、トリアファモン、フェントラザミド、クロメプロップ、オキサジアゾン、イプフェンカルバゾン、カフェンストロール、インダノファン、フェノキサスルホン、メフェナセット、ブタクロール、プレチラクロール、フェンキノトリオン、ベンゾビシクロン、スルコトリオン、メソトリオン、ピラゾレート、ベンゾフェナップ、ピリミスルファン、エトキシスルフロン、ベンスルフロンメチル、プロピリスルフロン、メタゾスルフロン、ペノキススラム、オキサジアルギル、ピラクロニル、ペントキサゾン、フロルピラウキシフェンベンジル、フェノキサプロップエチル、シハロホップブチル、メタミホップ、シクロピリモレート、ジメタメトリン、シメトリン、ベンタゾン、オキサジクロメホン、ブロモブチドおよびテトフルピロリメットからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1または2に記載の農薬組成物。
【請求項6】
前記殺虫効果を有する有効成分が、イミダクロプリド、チアクロプリド、ジノテフラン、フルピラジフロン、フルピリミン、ニテンピラム、クロチアニジン、スルホキサフロル、エチプロール、フィプロニル、スピノサド、テトラニリプロール、クロラントラニリプロール、シアントラニリプロール、ピメトロジン、トリフルメゾピリム、ベンズピリモキサンおよびオキサゾスルフィルからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1または2に記載の農薬組成物。
【請求項7】
前記殺菌効果を有する有効成分が、イソチアニル、プロベナゾール、トリシクラゾール、ジクロベンチアゾクス、ペンフルフェン、チフルザミド、インピルフルキサム、カスガマイシン、バリダマイシン、フサライド、メトミノストロビン、アゾキシストロビンおよびペンシクロンからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1または2に記載の農薬組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の農薬組成物を1または複数、圃場に施用する、病害、害虫および/または雑草の防除方法であって、
前記アニオン分散剤が9~300g/haの施用量で前記圃場に施用される、防除方法。
【請求項9】
前記アニオン分散剤が9~150g/haの施用量で前記圃場に施用される、請求項に記載の防除方法。
【請求項10】
前記有効成分が、50~650g/haの施用量で前記圃場に施用される、請求項に記載の防除方法。
【請求項11】
前記圃場が水田であり、
前記施用が、水田の水面への局所施用である、請求項に記載の防除方法。
【請求項12】
前記防除方法が、コンピュータにより読み取り可能な命令を実行する少なくとも1つのプロセッサにより実行され、
1または複数の前記農薬組成物、および、該1または複数の前記農薬組成物の各々の量を決定する段階と、
該1または複数の前記農薬組成物が1の前記農薬組成物の場合、該1または複数の前記農薬組成物を計測し、該1または複数の前記農薬組成物が複数の前記農薬組成物の場合、該1または複数の前記農薬組成物を計測および/または混合する段階と、
該1または複数の前記農薬組成物を希釈する段階と、
該1または複数の前記農薬組成物を前記圃場に施用する段階と
を含む、請求項に記載の防除方法。
【請求項13】
前記農薬組成物が、前記圃場の病害、害虫および/または雑草の発生予測、および/または、その発生状況に基づいて自動選択または選択される、請求項に記載の防除方法。
【請求項14】
請求項に記載の防除方法に使用するための、請求項1または2に記載の複数の農薬組成物と、空間的に分離された複数の容器とを含むキットであって、
前記複数の農薬組成物のそれぞれが、前記複数の容器のそれぞれに格納された、キット。
【請求項15】
病害、害虫および/または雑草を防除するための、請求項1または2に記載の農薬組成物の使用。
【請求項16】
前記病害、害虫および/または雑草が水田に発生する、請求項15に記載の農薬組成物の使用。
【請求項17】
請求項1または2に記載の農薬組成物の製造方法であって、
前記有効成分と前記アニオン分散剤とを混合する混合工程と、
前記混合工程の後、粉砕を行う粉砕工程と、
前記粉砕工程の後、前記アニオン分散剤を更に添加して混合する更なる混合工程と
を含む、製造方法。
【請求項18】
請求項1または2に記載の農薬組成物を複数混合することを含む、農薬組成物の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0221
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0221】
本発明にかかる防除方法に関し、圃場は、好ましくは水田である。また、施用は、好ましくは、水田の水面への施用、より好ましくは、水田の水面への局所施用である。