(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148175
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】表示装置および表示装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
G03B 21/62 20140101AFI20241009BHJP
G03B 21/60 20140101ALI20241009BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20241009BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20241009BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20241009BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20241009BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20241009BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
G03B21/62
G03B21/60
G02F1/13 505
G02F1/133 505
G02F1/1343
H04N5/74 C
G03B21/14 Z
G03B21/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109076
(22)【出願日】2024-07-05
(62)【分割の表示】P 2023038395の分割
【原出願日】2012-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 俊博
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 春仁
(57)【要約】
【課題】簡単な回路構成であるとともに、低消費電力化を図ることができる表示装置および表示装置の駆動方法を提供する。
【解決手段】リバースモードのスクリーン21の対向電極26には、光学層の光学状態を変化させる周期の2倍の周期で、正の電圧V11と0ボルトとの間で変化する矩形波電圧を印加し、制御電極27には、対向電極26に印加した矩形波電圧と同じ周期かつ同相でV11と同じ値である正の電圧V12と0ボルトとの間で変化する矩形波電圧に光学層25の光学状態を変化させるタイミングで光学状態が変化する電極間電位差となるパルス電圧を重畳させて印加するように制御する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の印加により光学状態が変化する光学層、および前記光学層に電圧を印加するために前記光学層を挟んで対向配置される第1電極及び第2電極を備えたスクリーンと、
前記スクリーンに投影される映像光の投影期間において、前記第1電極および前記第2電極に所定の電圧を印加し、前記スクリーンを前記映像光を散乱する所定の映像状態と該映像状態と異なる光学状態である非映像状態との間で切り替える制御部と、
を有する表示装置において、
前記制御部が、前記第1電極に、前記光学状態を変化させる周期の整数倍の周期の第1矩形波電圧を印加し、前記第2電極に、前記第1矩形波電圧と同じ周期かつ同じ位相または同じ周期かつ半周期ずれている位相の第2矩形波電圧と、前記光学状態を変化させるタイミングで前記光学状態が変化する電極間電位差とするパルス電圧と、を重畳させて印加することを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像を表示する表示装置および表示装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からプロジェクタ等の光源からの投影映像をスクリーン(投影面)に投影して映像を表示する表示装置が知られている。
【0003】
この種の表示装置のスクリーンには、液晶素子を使用することがある。液層素子(液晶ディスプレイ)は、一般的に直流駆動すると寿命が短くなるため、交流電圧を加えることで駆動する交流電圧駆動が行われている。この交流の印加方式としては、フレーム反転駆動方式、行ライン反転駆動方式、列ライン反転駆動方式およびドット反転駆動方式などが挙げられる(交流駆動の液晶を使用したスクリーンの例として特許文献1を参照)。
【0004】
また、特許文献2には、スクリーンとして透過型の液晶ディスプレイパネルを使用し、スクリーンの透過率を制御して透明状態と不透明状態とを交互に変化させて、透明状態のときにスクリーンの背後に設置されたカメラで鑑賞者の撮影を行い、不透明状態のときにはディプレイとして映像を表示させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開第4229161号公報
【特許文献2】特許第4490357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された透過型の液晶ディスプレイも、駆動方法としては交流駆動が行われる。しかしながら、交流駆動の場合、光学状態を変化させるタイミングの自由度を高くするために、一方の電極を0ボルトに固定して、他方の電極に両極性の交流電圧波形を印加することがあるが、その場合、正の所定電圧+Vと負の所定電圧-Vの2つの電源が必要となり、電源や駆動回路が複雑化するという問題がある。また、駆動電圧の振幅も大きくなってしまうために、消費電力が大きくなってしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑み、例えば、簡単な回路構成であるとともに、低消費電力化を図ることができる表示装置および表示装置の駆動方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の表示装置は、電圧の印加により光学状態が変化する光学層、および前記光学層に電圧を印加するために前記光学層を挟んで対向配置される第1電極及び第2電極を備えたスクリーンと、前記スクリーンに投影される映像光の投影期間において、前記第1電極および前記第2電極に所定の電圧を印加し、前記スクリーンを前記映像光を散乱する所定の映像状態と該映像状態と異なる光学状態である非映像状態との間で切り替える制御部と、を有する表示装置において、前記制御部が、前記第1電極に、前記光学状態を変化させる周期の整数倍の周期の第1矩形波電圧を印加し、前記第2電極に、前記第1矩形波電圧と同じ周期かつ同じ位相または同じ周期かつ半周期ずれている位相の第2矩形波電圧と、前記光学状態を変化させるタイミングで前記光学状態が変化する電極間電位差とするパルス電圧と、を重畳させて印加することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施例にかかる表示装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示されたスクリーンの模式的な断面図である。
【
図3】
図1に示されたスクリーンの光学特性と同期して投射するプロジェクタの説明図である。
【
図4】
図1に示された表示装置における映像光による映像とスクリーンの背景が重なる表示状態の説明図である。
【
図5】
図1に示されたスクリーンがリバースモードで動作する場合の駆動電圧波形を示したタイミングチャートである。
【
図6】
図1に示されたスクリーンがノーマルモードで動作する場合の駆動電圧波形を示したタイミングチャートである。
【
図7】本発明の第2の実施例にかかる表示装置のスクリーンがリバースモードで動作する場合の駆動電圧波形を示したタイミングチャートである。
【
図8】
図7に示されたスクリーンがノーマルモードで動作する場合の駆動電圧波形を示したタイミングチャートである。
【
図9】本発明の第3の実施例にかかる表示装置のスクリーンがリバースモードで動作する場合の駆動電圧波形を示したタイミングチャートである。
【
図10】本発明の第4の実施例にかかる表示装置のスクリーンがリバースモードで動作する場合の駆動電圧波形を示したタイミングチャートである。
【
図11】
図5に示された駆動電圧波形の光学層の素子電圧と平行光線透過率との関係を示したグラフである。
【
図12】
図10に示された駆動電圧波形の光学層の素子電圧と平行光線透過率との関係を示したグラフである。
【
図13】本発明の第5の実施例にかかる表示装置のスクリーンがリバースモードで動作する場合の駆動電圧波形を示したタイミングチャートである。
【
図14】本発明の第6の実施例にかかるスクリーンの模式的な断面図である。
【
図15】
図14に示された複数の制御電極の配置を示すスクリーンの模式的な正面図である。
【
図16】
図14に示されたスクリーンの走査と駆動との同期制御の説明図である。
【
図17】
図14に示されたスクリーンを走査するプロジェクタの説明図である。
【
図18】
図14に示されたスクリーンの走査と駆動の模式的なタイミングチャートである。
【
図19】
図14に示された駆動電圧波形を複数の領域に対して印加した場合を示すタイミングチャートである。
【
図20】本発明の第7の実施例にかかる表示装置のスクリーンがリバースモードで動作する場合の駆動電圧波形を示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態にかかる表示装置を説明する。本発明の一実施形態にかかる表示装置は、電圧の印加により光学状態が変化する光学層、および光学層に電圧を印加するために光学層を挟んで対向配置される第1電極及び第2電極を有するスクリーンの第1電極には、光学層の光学状態を変化させる周期の整数倍の周期の第1矩形波電圧を印加し、第2電極には、第1矩形波電圧と同じ周期かつ位相が同じまたは半周期ずれている第2矩形波電圧に光学層の光学状態を変化させるタイミングで光学状態が変化する電極間電位差となるパルス電圧を重畳させて印加するように制御部が駆動するので、例えば、第1、第2矩形波電圧およびパルス電圧の振幅を所望の光学特性が得られる電極間電位差とすれば、少ない電源(1電源)で駆動するための回路を構成することができるので、簡単な回路構成にすることができる。また、電圧を低下させることができるので、消費電力を低下させることができる。さらに、容易に任意のタイミングで光学層を構成する素子の光学特性を変化させることが可能となる。
【0011】
また、第1電極に印加される第1矩形波電圧と第2電極に印加される第2矩形波電圧が、正または負の電圧および0ボルトを示す電圧で構成され、第2電極に印加される第2矩形波電圧の振幅が、第1矩形波電圧と同じとなっている、または、第1矩形波電圧より小さくなっていてもよい。このようにすることにより、2つの矩形波電圧を片極性の電圧にできるので一つの電極に印加する電圧の振幅を小さくすることができる。また、第1、第2矩形波電圧の振幅を光学状態が変化する電極間電位差とすれば、1電源で駆動するための回路を構成することができるので、簡単な回路構成にすることができる。また、第2矩形波電圧の振幅を小さくすれば、パルス電圧を印加するタイミング以外では小さい電圧で駆動できるので、消費電力を低下させることができる。
【0012】
また、第1電極に印加される第1矩形波電圧と第2電極に印加される第2矩形波電圧が、両極性交流電圧であり、第2電極に印加される第2矩形波電圧の振幅が、第1矩形波電圧と同じとなっている、または、第1矩形波電圧より小さくなっていてもよい。このようにすることにより、2つの矩形波電圧を両極性の電圧にできるので一つの電極に印加する電圧の絶対値を小さくすることができる。第1矩形波電圧と第2矩形波電圧とが同じ振幅の場合は、電源を共通化することができるので、簡単な回路構成にすることができる。また、第2矩形波電圧の振幅が小さい場合は、両極性交流電圧とした場合でも、第1矩形波電圧や第2矩形波電圧の振幅を従来よりも低下させながら光学状態が変化する電極間電位差を生成することができるので、消費電力を低下させることができる。
【0013】
また、第1電極に印加される第1矩形波電圧が、バイアスされた交流電圧であり、第2電極に印加される第2矩形波電圧が、正または負の電圧および0ボルトを示す電圧で構成され、第2電極に印加される第2矩形波電圧の振幅が、第1矩形波電圧より小さく、かつ、振幅の中央値が第1矩形電圧と同じ値であってもよい。このようにすることにより、第1電極をバイアスした分だけ第2電極の振幅を小さくしても光学状態が変化する電極間電位差を生成することができるので、消費電力を低下させることができる。
【0014】
また、パルス電圧が、第2矩形波電圧を構成する2つの電圧値のうち、少なくともいずれか一方と同じ値であってもよい。このようにすることにより、第2矩形波電圧を生成する電源とパルス電圧を形成する電源を共通化することができるので、駆動回路を簡単な回路構成にすることができる。
【0015】
また、パルス電圧が、第1矩形波電圧を構成する2つの電圧値のうち、少なくともいずれか一方と同じ値であってもよい。このようにすることにより、第1矩形波電圧を生成する電源とパルス電圧を形成する電源を共通化することができるので、駆動回路を簡単な回路構成にすることができる。
【0016】
また、パルス電圧の振幅が、第1矩形波電圧の振幅よりも小さくてもよい。このようにすることにより、パルス電圧の振幅を小さくしても、光学状態が変化する電極間電位差を生成することができるので、消費電力を低下させることができる。
【0017】
また、パルス電圧が、第2矩形波電圧の半周期において、複数の電圧値より構成されていてもよい。このようにすることにより、例えば、1つのパルス電圧を段階的に変化させることで、光学層を構成する素子の過渡特性を最適化することができる。
【0018】
また、第1矩形波電圧の周期が、光学層の光学状態を変化させる周期の偶数倍となっていてもよい。このようにすることにより、第1矩形波電圧の波形を映像の同期信号などから生成し易くなり、回路構成を簡単にすることができる。
【0019】
また、第1矩形波電圧および第2矩形波電圧が、この2つの矩形波電圧により生じる電位差により光学層を構成する素子の素子特性が変化せず、電圧を印加しない場合と同じ光学状態となる電圧としてもよい。このようにすることにより、素子の経時変化による劣化を少なくすることができる。
【0020】
また、第2電極が複数の領域に分割されており、制御部が、分割された第2電極の各領域に対応する光学層の光学状態を変化させるタイミングを順次切り替えるようにパルス電圧の印加タイミングを順次切り替えてもよい。このようにすることにより、第2電極が複数の領域に分割されているようなスクリーンにおいて、簡単な回路構成にすることができるとともに、消費電力を低下させることができる。
【0021】
また、第2電極が、短冊状に分割されていてもよい。このようにすることにより、例えば、スクリーンを走査方向に沿って縦に配列することができ、映像の走査順に順次光学状態を変化させることができる。
【0022】
また、制御部が、複数の領域に分割された第2電極に印加するパルス電圧の印加時間を隣接する領域で互いに重なるように制御してもよい。このようにすることにより、次の領域の光学状態が安定してから映像を表示させることができ、輝度ムラなど表示の劣化を抑えることができる。
【0023】
また、制御部が、第2電極に印加するパルス電圧の印加時間を増加または減少させることにより光学層の所望の光学特性維持時間を変化させてもよい。このようにすることにより、各領域の光学状態の保持時間率を任意に変化させることができ、それによってスクリーンの透明度を変化させることができる。
【0024】
また、制御部が、複数の第2電極のうち、光学層の光学特性維持時間が第1矩形波電圧の電圧値変化タイミングを跨ぐ第2電極を検出した場合は、当該第2電極に印加するパルス電圧を、電圧値変化タイミングで第2矩形波電圧の中央値に関して反転するような電圧値に変化させるように制御してもよい。このようにすることにより、複数の領域のうち、光学特性維持時間が第1矩形波電圧の電圧値変化タイミングにかかってしまう領域も設定した時間分の光学特性を維持させることができ、領域によって光学特性維持時間が異なることによる表示のムラなど表示の劣化を防止することができる。
【0025】
また、本発明の一実施形態にかかる表示装置の駆動方法は、電圧の印加により光学状態が変化する光学層、および光学層に電圧を印加するために光学層を挟んで対向配置される第1電極及び第2電極を有するスクリーンの第1電極には、光学層の光学状態を変化させる周期の整数倍の周期の第1矩形波電圧を印加し、第2電極には、第1矩形波電圧と同じ周期かつ位相が同じまたは半周期ずれている第2矩形波電圧に光学層の光学状態を変化させるタイミングで光学状態が変化する電極間電位差となるパルス電圧を重畳させて印加しているので、例えば、第1、第2矩形波電圧およびパルス電圧の振幅を所望の光学特性が得られる電極間電位差とすれば、少ない電源(1電源)で駆動するための回路を構成することができるので、簡単な回路構成にすることができる。また、電圧を低下させることができるので、消費電力を低下させることができる。さらに、容易に任意のタイミングで光学層を構成する素子の光学特性を変化させることが可能となる。
【実施例0026】
本発明の第1の実施例にかかる表示装置1を
図1乃至
図6を参照して説明する。表示装置1は
図1に示すように、プロジェクタ11と、スクリーン21と、同期制御部31と、を備えている。表示装置1は、プロジェクタ11の映像光をスクリーン21で透過散乱する透過型プロジェクション装置である。
【0027】
プロジェクタ11は、走査周期中にスクリーン21上で黒状態(投射光が出ない状態)を順次シフトさせる透過型あるいは反射型液晶ライトバルブなどを使用できるが、これ以外の素子を用いてもよい。また、プロジェクタ11は、映像の走査周期においてラスター走査し、スクリーン21の表示面に映像光を点順次で投影するものでもよい。このプロジェクタ11では、強度変調された光ビームの照射方向を可動ミラーで反射して振るような、例えばレーザプロジェクタなどを用いることができる。このプロジェクタ11は、映像光の照射位置がスクリーン21上の一方向に順次走査されているものと同様に考えることができる。
【0028】
プロジェクタ11は、スクリーン21へ映像情報により変調された映像光を投影できるものであればよい。なお、映像情報は、プロジェクタ11に入力される映像信号から得られる。映像信号には、たとえば、NTSC(National Television Standards Committee
)方式、PAL(Phase Alternation by Line)方式のようなアナログ方式の映像信号、
MPEG-TS(Moving Picture Experts Group - Transport Stream)フォーマット、HDV(High-Definition Video)フォーマットのようなデジタルフォーマットの映像信
号がある。プロジェクタ11には、動画の映像信号だけでなく、たとえばJPEG(Joint Photographic Experts Group)のような静止画の映像信号が入力されてもよい。この場合、プロジェクタ11は、静止画を表示するための同じ映像光で、スクリーン21を繰り返し走査すればよい。
【0029】
スクリーン21は、電圧の印加により光学状態を変化できるものであればよい。スクリーン21の光学状態は、散乱する状態が映像状態であり、それよりも入射光の散乱が小さく且つ平行光線透過率が高い透明な透過状態が非映像状態である。
【0030】
スクリーン21は、例えば、液晶材料を用い、散乱状態と入射光の散乱が小さい透明な透過状態を変化させる調光スクリーンなどでよい。調光スクリーンには、たとえば、高分子分散液晶などの液晶素子を用いたもの、透明セル内の白色粉体を移動させることで散乱状態と入射光の散乱が小さい透明な透過状態を制御する素子などを用いたものなどがある。
【0031】
図2に、光学状態を制御可能なスクリーン21の模式的な断面図を示す。
図2に示したスクリーン21は、一対の透明なガラス板23,24の間に液晶を含む複合材料を挟み込んだ光学層25を有する。一方のガラス板24の光学層25側には、全面に対向電極26が形成される。他方のガラス板23の光学層25側には、全面に制御電極27が配置される。なお、電極26、27と光学層25との間に、絶縁体からなる中間層を形成してもよい。
【0032】
また、対向電極26および制御電極27は、たとえばITO(酸化インジウム・スズ)により、透明電極として形成される。光学層25は、制御電極27と対向電極26との間に配置される。
【0033】
スクリーン21は、制御電極27と対向電極26との間に電位差を生じるように電圧が印加される。なお、以下に説明する駆動波形(駆動電圧波形)は、第2の電極としての制御電極27と第1の電極としての対向電極26に印加する波形(電圧)を示している。光学層25内の液晶の配列状態は、対向電極26と制御電極27の印加電圧により変化する。
【0034】
制御部としての同期制御部31は、映像が投影されるスクリーン21を、投影された映像光を散乱する状態に制御し、投影されていない場合に透過状態に制御する。同期制御部31は、
図1に示したように、プロジェクタ11とスクリーン21とに接続される。同期制御部31は、プロジェクタ11の映像光の投影に同期させて、スクリーン21の光学状態を制御する。プロジェクタ11から同期制御部31へ入力される同期信号は、たとえばプロジェクタ11の走査周期に同期した同期信号などを用いることができる。
【0035】
次に、本実施例にかかる表示装置1において、スクリーン21の光学特性と同期して投射するプロジェクタ11の投影方式を、
図3を参照して説明する。
図3は、プロジェクタ11がインターバルを空けて映像光を投影する方式の説明図である。この場合、スクリーン21には、
図3(B)に示すように、走査周期の一部において短期的に映像光が投影される。スクリーン21は、
図3(C)に示すように、該一部の期間において散乱状態とすればよい。
【0036】
そして、該一部以外の期間において、スクリーン21の平行光線透過率を高くするようにスクリーン21の光学状態を制御すると、走査周期おいて、映像の輝度低下を招くことなく、スクリーン21のシースルー特性が得られる。定常的に映像光を投影する場合に比べ、同一輝度を得るには、1走査周期に対する散乱状態の時間程度のデューティ(図中duty:a)の概ね逆数倍の強さの投影光が必要となる。従って高いシースルー特性を得るには、強力なパルス発光の投影光出力が必要である。
【0037】
このようにプロジェクタ11とスクリーン21を制御することで、スクリーン21は、その背面の物体を認識しうる透明さを有しつつ、常時散乱状態とした場合と同等の明るさで映像光を散乱して透過できる。つまり、背景物体を認識することが可能なシースルー性と、映像の高い視認性とを両立することが可能となる。
【0038】
このプロジェクタ11とスクリーン21の同期制御のための切り替えタイミングの情報は、同期信号としてプロジェクタ11から同期制御部31に送出される。なお、プロジェクタ11および同期制御部31をマイクロ波、赤外線などの電磁波を用いたワイヤレス通信可能とし、これらの同期を得るための情報を無線信号により授受してもよい。
【0039】
表示装置1では、たとえば
図1の設置環境下では、
図4に示したように画像を視認できる。
図4は、映像光による映像とスクリーン21の背景とが重なる表示状態の説明図である。
図4では、スクリーン21の右側に映像光による人物41の像が映り、左側に、スクリーン21の向こう側にある背景としての樹木42を見ることができる。
【0040】
次に、リバースモードで動作するスクリーン21を用いる表示装置1の駆動を説明する。リバースモードで動作するスクリーン21では、電圧を印加していない通常状態において、スクリーン21が透明な透過状態となる。電圧を印加すると、印加電圧に応じた平行光線の散乱率の散乱状態となる。そして、スクリーン21の光学状態は、所定の散乱状態が映像状態に対応し、それよりも平行光線透過率が高い透明な透過状態が非映像状態に対応する。
【0041】
図5に、本実施形態にかかるリバースモードのスクリーン21に同期制御部31が印加する駆動電圧波形と光学状態の関係の一例を示したタイミングチャートを示す。また、駆動電圧波形の横軸は時間、縦軸は電圧である。光線透過率は光学層25の光学状態である。光線透過率の横軸は時間、縦軸は平行光線の透過率である。平行光線透過率が小さいことは散乱が強いことを示している。
【0042】
図5では、第1矩形波電圧である対向電極26に素子特性を変化させる繰返し周期(T)の2倍の周期(2T)の矩形波電圧が印加されている。この素子特性を変化させる繰返し周期とは、例えば1フレーム期間である。対向電極26に印加される矩形波電圧は、0ボルトと正電圧である+V11ボルトの2つの電圧の間を変化するように制御されている。また、対向電極26に印加する矩形波電圧の周期は、素子特性を変化させる繰返し周期の2倍に限らないが、4倍など偶数倍であることが好ましい。
【0043】
一方、第2矩形波電圧である第2電極には、対向電極26と同じ周期かつ同相(電圧が変化するタイミングが同じ)の矩形波電圧に、光学状態を変化させるタイミングでパルス電圧が重畳されている。つまり、光学状態を変化させるタイミング(
図5のT11、T12)で、対向電極26と制御電極27の電極間の電位差を、光学層25の光学状態が変化する(透過状態から散乱状態に変化する)電位差まで増加するようにしている。
図5では、T11、T12で透過状態から散乱状態に変化させている。つまり、このタイミングからパルス電圧の印加時間の間、制御電極27に対応する領域が映像状態になり、映像が投影される。
【0044】
また、制御電極27に印加させる矩形波電圧とパルス電圧は0ボルトと正電圧である+V12ボルトの2つの電圧の間を変化するように制御されている。即ち、T11では+V12ボルトのパルス電圧が印加され、T12では電圧が0ボルトに保持されたパルス電圧が印加されていることから、パルス電圧が制御電極27に印加される矩形波電圧の2つの電圧値(+V12、0)と同じ値となっている。
【0045】
対向電極26および制御電極27に印加する駆動電圧波形の振幅V11及びV12は、光学層25を構成する素子に直流バイアス成分が印加されないように一致している(V11=V12)ことが望ましいが、異なっていても光学層25を構成する素子特性に影響のない範囲で、透明状態を維持できる電位差と散乱状態となる電位差に基づいて適宜設定してもよい。例えば、制御電極27に印加する矩形波電圧の振幅を対向電極に印加する矩形波電圧よりも小さくし、パルス電圧は、光学状態を変化できる電位差となる電圧を印加するようにしてもよい。
【0046】
なお、
図5では、制御電極27に印加するパルス電圧は1フレーム期間(素子特性を変化させる繰返し周期)に1回としたが、2回以上の複数回印加するようにして1フレーム期間に複数回散乱状態に変化させてもよい。勿論以下に説明する第2の実施例以降でも、パルス電圧を素子特性を変化させる繰返し周期に複数回印加してもよいことは言うまでも無い。
【0047】
本実施例によれば、リバースモードのスクリーン21の対向電極26には、光学層の光学状態を変化させる周期の2倍の周期で、正の電圧V11と0ボルトとの間で変化する矩形波電圧を印加し、制御電極27には、対向電極26に印加した矩形波電圧と同じ周期かつ同相でV11と同じ値である正の電圧V12と0ボルトとの間で変化する矩形波電圧に光学層25の光学状態を変化させるタイミングで光学状態が変化する電極間電位差となるパルス電圧を重畳させて印加するように同期制御部31が制御しているので、例えば、2つの矩形波電圧およびパルス電圧の振幅V11、V12を、同じ値であって所望の光学特性が得られる電極間電位差とすれば、1電源で駆動するための回路を構成することができるので、簡単な回路構成にすることができる。また、印加する電圧値を低下させることができるので、消費電力を低下させることができる。
【0048】
また、矩形波電圧を印加しているので、実質的に交流駆動を行っている。また、2つの矩形波電圧を片極性の電圧にできるので一つの電極に印加する電圧の振幅を小さくすることができる。また、矩形波電圧の周期が、光学層25の光学状態を変化させる周期の偶数倍である2倍となっているので、矩形波電圧の波形を映像の同期信号などから生成し易くなる。つまり、対向電極26の矩形波電圧をプロジェクタ11のフレーム周期と同期させれば、散乱状態に変化されるための変調タイミングは、その時間幅を含めて制御電極27の波形により自由度を大きくすることができるため、容易に任意のタイミングで光学層25を構成する素子の光学特性を変化させることが可能となる。
【0049】
また、パルス電圧が、制御電極27に印加される矩形波電圧を構成する2つの電圧値(+V12、0)のうち一方の電圧(+V12)と同じ値であるので、制御電極27に印加する電圧を生成する電源を1つにすることができ、簡単な回路構成にすることができる。
【0050】
なお、上述した実施例では、対向電極26と制御電極27に印加する電圧を0ボルトと正電圧としていたが、0ボルトと負電圧としてもよい。また、パルス電圧が、制御電極27に印加される矩形波電圧を構成する2つの電圧値のうち一方の電圧と同じ値としたが、対向電極26に印加される矩形波電圧を構成する2つの電圧値(+V11、0)のうち一方の電圧と同じ値としてもよい。
【0051】
また、上述した実施例ではリバースモードで動作するスクリーン21で説明したが、
図6に示すように、ノーマルモードで動作するスクリーン21でもよい。ノーマルモードで動作するスクリーン21では、電圧を印加していない通常状態において、スクリーン21が散乱状態となる。電圧を印加すると、印加電圧に応じた平行光線透過率の透明な透過状態となる。
【0052】
ノーマルモードの場合、
図6に示したタイミングチャートのように、対向電極26には、光学層25の光学状態を変化させる周期の2倍の周期の矩形波電圧が印加され、制御電極27には対向電極26と同じ周期かつ逆相(周期が半周期ずれている)の矩形波電圧に、光学状態を変化させるタイミング(T11、T12)でパルス電圧が重畳されている。つまり、光学状態を変化させるタイミング(
図6のT11、T12)で、対向電極26と制御電極27の電極間の電位差を、光学層25の光学状態が変化する(透過状態から散乱状態に変化する)電位差まで減少するようにしている。ここで、
図6のV11とV12は
図6に示したV11及びV12と同じようにV1=V2の関係にある。
一方、制御電極27には、第2矩形波電圧である対向電極26と同じ周期かつ同相の矩形波交流電圧に、光学状態を変化させるタイミングでパルス電圧が重畳されている。制御電極27に印加される矩形交流電圧は、0ボルトを中心として+V22ボルトと-V22ボルトとの間で変化し、パルス電圧も、-V22ボルトまたは+V22ボルトの電圧が印加されている。つまり、本実施例は、対向電極26と制御電極27に印加する駆動電圧波形が両極性交流電圧となっている点が第1の実施例と異なる。
本実施例では、対向電極26に印加される矩形波電圧が両極性交流電圧であり、対向電極26に印加される矩形波電圧の振幅が、制御電極27に印加される矩形波電圧と同じ(V21=V22)になっているので、対向電極26や制御電極27に印加する電圧は実質的に第1実施例の半分となり、小さな電圧で任意のタイミングに素子の光学特性を変化させることが可能となる。
本実施例によれば、対向電極26に印加される矩形波電圧が、両極性交流電圧であり、制御電極27に印加される矩形波電圧の振幅が、対向電極26に印加される矩形波電圧と同じとなっており、かつ、振幅の中央値が同じ値(0ボルト)となっているので、両極性交流電圧とした場合でも、矩形波電圧の絶対値(0ボルトから矩形波を形成する2つの電圧値までの値)を従来よりも低下させながら光学状態が変化する電極間電位差を生成することができるので、消費電力を低下させることができる。