(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148190
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】非接触給電システム、コンピュータプログラム、送電装置および受電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20241010BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20241010BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241010BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20241010BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20241010BHJP
B60L 53/62 20190101ALI20241010BHJP
B60L 53/122 20190101ALI20241010BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/40
H02J7/00 301D
H02J7/00 P
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/62
B60L53/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061075
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 将也
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 侑生
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503DA08
5G503FA06
5G503GB06
5G503GB08
5G503GD03
5H105BB07
5H105CC02
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA11
5H125AC12
5H125AC27
5H125BC05
5H125CC06
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】非接触給電システムにおいて、交流電源装置の出力電力が定格出力電力を超過することを抑制する。
【解決手段】非接触給電システム1000、1000A、1000B、1000C、1000Dであって、交流電源装置110、110Cと、交流電源装置に対して互いに並列に接続された複数の送電装置120、120A、120Bと、送電装置から非接触で給電を受ける受電装置200、200Cと、交流電源装置の出力電圧を制御する電源電圧制御部140と、を備え、電源電圧制御部は、交流電源装置の出力電力が定格出力電力を超過する場合に、許容出力電力を下回るように出力電圧を低下させる一次側電力抑制制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触給電システム(1000、1000A、1000B、1000C、1000D)であって、
予め定められた動作周波数の交流電力を供給する交流電源装置(110、110C)と、
前記交流電源装置に対して互いに並列に接続された複数の送電装置(120、120A、120B)であって、一次側コイル(Ls)と一次側コンデンサ(Cs)とを有する一次側共振回路(10、10A)を有する複数の送電装置と、
前記送電装置から非接触で給電を受ける受電装置(200、200C)であって、
前記一次側コイルと磁気的に結合するための二次側コイル(Lr)と二次側コンデンサ(Cr)とを有する二次側共振回路と、
前記二次側共振回路から出力される交流電力を整流して直流電力に変換する整流回路(230)と、
前記整流回路を制御する受電側制御部(220)と、
前記直流電力が定電流で供給される負荷装置(210)と、
を有する受電装置と、
前記交流電源装置の出力電圧を制御する電源電圧制御部(140)と、
を備え、
前記電源電圧制御部は、前記交流電源装置の出力電力が前記交流電源装置の定格出力電力を超過する場合に、予め設定された許容出力電力を下回るように前記出力電圧を低下させる一次側電力抑制制御を行う、
非接触給電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触給電システムであって、
前記複数の送電装置のそれぞれは、
前記一次側コイルと前記交流電源装置との間に接続され、前記送電装置の状態を送電状態と待機状態との間で切り替えるためのインピーダンス可変素子(20)と、
前記一次側コイルに鎖交する磁束の大きさと、前記一次側コイル近傍の磁束の大きさとのいずれか一方を検出するための一次側検出回路(30)と、
前記一次側検出回路による検出値を利用して、前記インピーダンス可変素子のインピーダンスを変更する一次側制御回路(40)と、
をさらに備え、
前記一次側制御回路は、前記送電装置の状態を、
前記一次側検出回路によって、前記一次側コイルに鎖交する磁束、または、前記一次側コイル近傍の磁束の増加が検出された第1の場合、前記インピーダンス可変素子のインピーダンスを低下させて前記待機状態から前記送電状態に移行させ、
前記一次側検出回路によって、前記一次側コイルに鎖交する磁束、または、前記一次側コイル近傍の磁束の減少が検出された第2の場合、前記インピーダンス可変素子のインピーダンスを増大させて前記送電状態から前記待機状態に移行させる、
非接触給電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の非接触給電システムであって、
前記一次側制御回路は、前記一次側電力抑制制御が行われている場合には、前記第1の場合であっても、前記待機状態から前記送電状態に移行させない、
非接触給電システム。
【請求項4】
請求項3に記載の非接触給電システムであって、
各前記送電装置は、該送電装置に供給される電圧を検出する電圧検出回路(50)をさらに備え、
前記一次側制御回路は、前記電圧検出回路により検出された電圧が予め設定された閾値未満である場合には、前記第1の場合であっても、前記待機状態から前記送電状態に移行させない、
非接触給電システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記電源電圧制御部は、前記一次側電力抑制制御を行っている場合に、前記一次側電力抑制制御を行っていることを前記受電装置に通知する、
非接触給電システム。
【請求項6】
請求項5に記載の非接触給電システムであって、
前記電源電圧制御部は、前記一次側電力抑制制御を行っている場合に、前記受電装置が新たに給電を開始することを禁止する、
非接触給電システム。
【請求項7】
請求項5に記載の非接触給電システムであって、
前記受電側制御部は、前記通知を受信した場合、前記整流回路を制御して前記負荷装置に供給される二次側電力を抑制する二次側電力抑制制御を行うことにより、前記二次側電力抑制制御を行う前の前記二次側電力に対する、前記二次側電力抑制制御を行った後の前記二次側電力の比率が、定められた抑制率となるように前記二次側電力を抑制する、
非接触給電システム。
【請求項8】
請求項7に記載の非接触給電システムであって、
前記抑制率は、前記交流電源装置の定格出力電力を、前記受電装置の定格消費電力に前記受電装置の台数を乗じた値により除した値である、
非接触給電システム。
【請求項9】
請求項7に記載の非接触給電システムであって、
前記抑制率は、前記交流電源装置の定格出力電圧を、現在の前記出力電圧により除した値である、
非接触給電システム。
【請求項10】
非接触給電システムを制御するためのコンピュータプログラムであって、
前記非接触給電システムは、
予め定められた動作周波数の交流電力を供給する交流電源装置と、
前記交流電源装置に対して並列に接続された複数の送電装置であって、一次側コイルと一次側コンデンサとを有する一次側共振回路を有する送電装置と、
前記送電装置から非接触で給電を受ける受電装置であって、
前記一次側コイルと磁気的に結合するための二次側コイルと二次側コンデンサとを有する二次側共振回路と、
前記二次側共振回路から出力される交流電力を整流して直流電力に変換する整流回路と、
前記整流回路を制御する受電側制御部と、
前記直流電力が定電流で供給される負荷装置と、
を有する受電装置と、
を備え、
前記コンピュータプログラムは、
前記交流電源装置の出力電力が前記交流電源装置の定格出力電力を超過する場合に、予め設定された許容出力電力を下回るように前記交流電源装置の出力電圧を低下させる機能を、コンピュータに実現させる、
コンピュータプログラム。
【請求項11】
受電装置に非接触で給電する送電装置であって、
前記送電装置は、一次側コイルと一次側コンデンサとを有する一次側共振回路を有し、予め定められた動作周波数の交流電力を供給する交流電源装置に対して他の送電装置と互いに並列に接続され、
前記受電装置は、
前記一次側コイルと磁気的に結合するための二次側コイルと二次側コンデンサとを有する二次側共振回路と、
前記二次側共振回路から出力される交流電力を整流して直流電力に変換する整流回路と、
前記整流回路を制御する受電側制御部と、
前記直流電力が定電流で供給される負荷装置と、
を有し、
前記交流電源装置は、前記交流電源装置の出力電力が前記交流電源装置の定格出力電力を超過する場合に、予め設定された許容出力電力を下回るように前記交流電源装置の出力電圧を低下させる、
送電装置。
【請求項12】
送電装置から非接触で給電される受電装置であって、
前記送電装置は、一次側コイルと一次側コンデンサとを有する一次側共振回路を有し、予め定められた動作周波数の交流電力を供給する交流電源装置に対して他の前記送電装置と互いに並列に接続され、
前記受電装置は、
前記一次側コイルと磁気的に結合するための二次側コイルと二次側コンデンサとを有する二次側共振回路と、
前記二次側共振回路から出力される交流電力を整流して直流電力に変換する整流回路と、
前記整流回路を制御する受電側制御部と、
前記直流電力が定電流で供給される負荷装置と、
を有し、
前記交流電源装置は、前記交流電源装置の出力電力が前記交流電源装置の定格出力電力を超過する場合に、予め設定された許容出力電力を下回るように前記交流電源装置の出力電圧を低下させる、
受電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触給電システム、コンピュータプログラム、送電装置および受電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送電装置から電力を送電し、受電装置を搭載した車両に対して給電を行う給電システムが知られている。特許文献1に記載の給電システムは、1つの電源に対して複数の送電共振回路を並列に接続して送電装置を構成することにより、大電力の送電を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、給電システムから受電する受電装置の台数が増えると供給電力が電源の定格出力電力を超過し、全ての受電装置への送電が停止するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、非接触給電システム(1000、1000A、1000B、1000C、1000D)が提供される。この非接触給電システムは、予め定められた動作周波数の交流電力を供給する交流電源装置(110、110C)と、前記交流電源装置に対して互いに並列に接続された複数の送電装置(120、120A、120B)であって、一次側コイル(Ls)と一次側コンデンサ(Cs)とを有する一次側共振回路(10、10A)を有する複数の送電装置と、前記送電装置から非接触で給電を受ける受電装置(200、200C)であって、 前記一次側コイルと磁気的に結合するための二次側コイル(Lr)と二次側コンデンサ(Cr)とを有する二次側共振回路と、前記二次側共振回路から出力される交流電力を整流して直流電力に変換する整流回路(230)と、前記整流回路を制御する受電側制御部(220)と、前記直流電力が定電流で供給される負荷装置(210)と、を有する受電装置と、前記交流電源装置の出力電圧を制御する電源電圧制御部(140)と、を備え、前記電源電圧制御部は、前記交流電源装置の出力電力が前記交流電源装置の定格出力電力を超過する場合に、予め設定された許容出力電力を下回るように前記出力電圧を低下させる一次側電力抑制制御を行う。
【0007】
この形態の制御装置によれば、交流電源装置の出力電力が交流電源装置の定格出力電力を超過する場合に、予め設定された許容出力電力を下回るように出力電圧を低下させるので、交流電源装置の出力電力が過大となることにより交流電源装置の動作が停止して、全ての受電装置への送電が停止することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の非接触給電システムの概略構成を示す説明図である。
【
図2】第1実施形態の非接触給電システムの回路構成を示す説明図である。
【
図3】第1実施形態の一次側電力抑制制御の手順を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態の非接触給電システムの回路構成を示す説明図である。
【
図5】第2実施形態の送電状態切替制御の手順を示すフローチャートである。
【
図6】第3実施形態の非接触給電システムの回路構成を示す説明図である。
【
図7】第3実施形態の送電状態切替制御の手順を示すフローチャートである。
【
図8】第4実施形態の二次側電力抑制制御の手順を示すフローチャートである。
【
図9】他の実施形態の非接触給電システムの回路構成を示す説明図である。
【
図10】他の実施形態の非接触給電システムの回路構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A-1.システム構成:
図1に示す本実施形態の非接触給電システム1000は、送電システム100と、受電装置200とを備える。本実施形態では、送電システム100は、走路105の下に埋設されている。受電装置200は、走路105上を走行する移動体としての電動車両202に搭載されている。本実施形態では、電動車両202は、工場や倉庫内を走行するAGV(Automatic Guided Vehicle)として構成されている。
【0010】
非接触給電システム1000において、送電システム100は、走路105上を電動車両202が走行する際に、受電装置200に対して給電を行う。「走路105上を走行」とは、電動車両202が移動している場合の他、搬送物の載せ替え等で搬送ロボットやコンベア等の固定設備付近に電動車両202が停止している場合も含む。
図1において、x軸方向は電動車両202の進行方向を示し、y軸方向は電動車両202の幅方向を示し、z軸方向は鉛直上方向を示す。
【0011】
送電システム100は、交流電源装置110と、複数の送電装置120と、制御装置130とを備える。交流電源装置110は、予め定められた動作周波数の交流電力を供給する。交流電源装置110の具体的な構成については後述する。
【0012】
複数の送電装置120は、走路105の地中においてx軸方向に沿って設置されている。送電装置120は、走路105の地中以外の場所、例えば、搬送設備の側面に設置されていてもよい。また、各送電装置120は、交流電源装置110に対して互いに並列に接続され、交流電源装置110から交流電力を供給される。各送電装置120は、一次側共振回路10を有する。一次側共振回路10は、交流電源装置110から交流電力を供給されて、後述する二次側共振回路240に対して非接触で交流電力を送電する。一次側共振回路10の具体的な構成については後述する。
【0013】
制御装置130は、CPU131と、メモリ132と、通信装置133とを有するコンピュータとして構成されている。CPU131は、メモリ132に予め記憶されたプログラムを実行することにより電源電圧制御部140として機能する。
【0014】
電源電圧制御部140は、交流電源装置110の出力電圧を制御する。より具体的には、交流電源装置110の出力電力が定格出力電力を超過しない場合には、電源電圧制御部140は、予め設定された一定の電圧(以下、「規定電圧」とも呼ぶ)を出力するように交流電源装置110を制御する。本実施形態では、既定電圧は、送電システム100において2台の送電装置120が同時に受電装置200への給電を行う際に、出力電力が定格出力電力を超過しない電圧として設定されている。
【0015】
他方、交流電源装置110の出力電力が定格出力電力を超過する場合には、電源電圧制御部140は、出力電力が許容出力電力を下回るように交流電源装置110の出力電圧を低下させる一次側電力抑制制御を行う。「許容出力電力」は、交流電源装置110が電力供給を継続可能な電力として予め設定された電力を意味する。なお、許容出力電力は、定格出力電力以下の電力として設定されてよく、交流電源装置110が直ちに動作を停止しない程度の大きさであれば、交流電源装置110の定格出力電力よりも大きい電力、例えば定格出力電力よりも数kW程度大きい電力として設定されていてもよい。一次側電力抑制制御において出力される電圧を、以下の説明において「抑制電圧」とも呼ぶ。本実施形態では、抑制電圧は、一次側電力抑制制御の実行中の出力電力が、既定電圧により2台の送電装置120が同時に受電装置200への給電を行う際の出力電力と同等となるように決定されている。一次側電力抑制制御の手順については後述する。なお、抑制電圧は、一次側電力抑制制御の実行中の出力電力が、既定電圧により2台の送電装置120が同時に受電装置200への給電を行う際の出力電力を下回るように決定されていてもよい。
【0016】
受電装置200は、バッテリ210と、補機バッテリ215と、受電側制御部220と、整流回路230と、二次側共振回路240と、DC/DCコンバータ回路260と、インバータ回路270と、モータジェネレータ280と、補機290と、を備える。なお、受電装置200は、補機290を備えなくてもよく、この場合、補機バッテリ215およびDC/DCコンバータ回路260も備えなくてよい。本実施形態では、二次側共振回路240は、走路105に面した位置、例えば、電動車両202の下面に設けられている。なお、送電装置120が、固定設備の側面に配置されている場合には、電動車両202の側面に二次側共振回路240が設けられていても良い。二次側共振回路240の具体的な構成については後述する。
【0017】
二次側共振回路240は、整流回路230に接続されており、二次側共振回路240で受電した交流電力は、整流回路230により直流電力に変換される。整流回路230の出力には、バッテリ210と、DC/DCコンバータ回路260の高圧側と、インバータ回路270と、が接続されている。DC/DCコンバータ回路260の低圧側には、補機バッテリ215と、補機290とが接続されている。インバータ回路270には、モータジェネレータ280が接続されている。整流回路230から出力される直流電力は、バッテリ210の充電や、インバータ回路270を介したモータジェネレータ280の駆動に利用することができる。また、整流回路230から出力される直流電力は、DC/DCコンバータ回路260を用いて降圧することで、補機バッテリ215の充電や、補機290の駆動にも利用可能である。
【0018】
バッテリ210は、モータジェネレータ280を駆動するための比較的高い直流電力、例えば数十Vから数百Vの電圧を出力する2次電池である。モータジェネレータ280は、3相交流モータとして動作し、電動車両202の走行のための駆動力を発生する。モータジェネレータ280は、電動車両202の減速時にはジェネレータとして動作し、電力を回生する。インバータ回路270は、モータジェネレータ280がモータとして動作するとき、バッテリ210の電力を3相交流に変換してモータジェネレータ280に供給する。インバータ回路270は、モータジェネレータ280がジェネレータとして動作するとき、モータジェネレータ280が回生した3相交流を直流に変換してバッテリ210に供給する。なお、バッテリ210は、本開示における「負荷装置」に相当する。
【0019】
DC/DCコンバータ回路260は、バッテリ210の出力を、バッテリ210の出力電圧より低い電圧、例えば12Vに変換して補機バッテリ215及び補機290に供給する。補機バッテリ215は、補機290を駆動するための2次電池であり、その電圧は比較的低い。補機290は、電動車両202の空調装置や電動パワーステアリング装置、ヘッドライト、ウインカ、ワイパー等の周辺装置や電動車両202の様々なアクセサリーを含む。
【0020】
受電側制御部220は、電動車両202内のインバータ回路270の他、各部を制御する。受電側制御部220は、走行中非接触給電を受ける際には、二次側共振回路240を制御して電力を受電する。
【0021】
A-2.回路構成:
図2に示すように、交流電源装置110は、直流電源PSと、インバータ回路INVと、フィルタ回路F11と、電流センサS1とを有する。直流電源PSは、直流電力をインバータ回路INVに供給する。インバータ回路INVは、ブリッジ回路を構成する4つのスイッチング素子Q11~Q14を有する。本実施形態において、スイッチング素子Q1~Q4は、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)により実現されている。インバータ回路INVは、制御装置130によりスイッチング素子Q1~Q4を制御されてデューティ比や位相シフト量を変化させることにより、直流電源PSから供給される直流電力を、予め設定された動作周波数の交流電力であって電源電圧制御部140により指令された電圧の交流電力に変換する。
【0022】
フィルタ回路F11は、インバータ回路INVから入力される交流電力のノイズ成分の通過を抑制し目的の周波数帯の交流電力を通過させるとともに、送電装置120へ一定の大きさの電流を供給する。本実施形態のフィルタ回路F11は、コイルL11とコンデンサC11とが直列に接続されたバンドパスフィルタとして構成されている。
【0023】
電流センサS1は、フィルタ回路F11を通過して交流電源装置110から出力される電流(以下、「出力電流」とも呼ぶ)を検出する。また、電流センサS1は、検出した出力電流を制御装置130に送信する。
【0024】
送電装置120は、一次側コンデンサCsと一次側コイルLsとが直列に接続されてなる一次側共振回路10を有する。本実施形態では、交流電源装置110から送電装置120へ交流電力が供給されている間、一次側共振回路10は、動作周波数にて共振状態となり、受電装置200に電力を供給可能な状態である送電状態となる。一次側共振回路10が送電状態となっているときに、送電装置120ごとに予め定められたエリア(以下、「送電エリア」とも呼ぶ)内に受電装置200が進入してきた場合に、一次側共振回路10は、受電装置200への送電を開始する。
【0025】
受電装置200は、
図1に示す構成に加え、フィルタ回路F21を有する。
図2に示すように、フィルタ回路F21は、二次側共振回路240と整流回路230との間に接続されている。二次側共振回路240は、二次側コイルLrと二次側コンデンサCrとが直列に接続されてなる。本実施形態では、フィルタ回路F21は、コイルL21とコンデンサC21とが直列に接続されたバンドパスフィルタとして構成されている。フィルタ回路F21は、二次側共振回路240から入力される交流電力のノイズ成分の通過を抑制し目的の周波数帯の交流電力を通過させるとともに、整流回路230へ一定の大きさの電流を供給する。
【0026】
本実施形態では、整流回路230は、ブリッジ回路を構成する4つのスイッチング素子Q21~Q24と、平滑コンデンサC22からなる。本実施形態において、スイッチング素子Q21~Q24は、MOSFETにより実現されている。整流回路230は、受電側制御部220によりスイッチング素子Q21~Q24のオン・オフ状態を制御されて、フィルタ回路F21から入力される交流電力を直流電力に変換してバッテリ210に供給する。以下の説明において、バッテリ210に供給される直流電力の大きさを「二次側電力」とも呼ぶ。なお、バッテリ210へ供給される電流の大きさは、フィルタ回路F21と整流回路230により一定となるように制御されている。
【0027】
A-3.一次側電力抑制制御:
電源電圧制御部140は、
図3に示す一次側電力抑制制御を実行することにより、交流電源装置110の出力電力が許容出力電力を超過しないように、交流電源装置110の出力電圧を制御する。一次側電力抑制制御は、送電システム100の起動とともに開始され、送電システム100の起動中繰り返し実行される。
【0028】
ステップS110において、電源電圧制御部140は、電流センサS1により検出された出力電流を電流センサS1から取得して、交流電源装置110の出力電力を算出する。上述のように、交流電源装置110の出力電圧は、電源電圧制御部140により指令された電圧となるように制御されているので、電源電圧制御部140は、電流センサS1より取得した出力電流と、自らが交流電源装置110へ指令した電圧とを利用して、交流電源装置110の出力電力を算出できる。
【0029】
ステップS120において、電源電圧制御部140は、出力電力が定格出力電力を超過しているか否かを判定する。出力電力が定格出力電力を超過していると判定された場合(ステップS120:Yes)、電源電圧制御部140は、上述の抑制電圧を出力するように交流電源装置110を制御する(ステップS130)。出力電力が定格出力電力に対して過大となっている状態が継続すると、交流電源装置110が動作を停止して全ての受電装置200への送電が停止するおそれがある。かかる状況を回避するために、電源電圧制御部140は、上述の許容出力電力を下回るような抑制電圧を出力するように交流電源装置110を制御する。
【0030】
他方、出力電力が定格出力電力を超過していないと判定された場合(ステップS120:No)、電源電圧制御部140は、上述の規定電圧を出力するように交流電源装置110を制御する(ステップS135)。
【0031】
以上説明した実施形態の非接触給電システム1000によれば、交流電源装置110の出力電力が定格出力電力を超過する場合に、許容出力電力を下回るように出力電圧を低下させるので、交流電源装置110の出力電力が過大となることにより交流電源装置110の動作が停止して、全ての受電装置200への送電が停止することを抑制できる。
【0032】
B.第2実施形態:
第2実施形態の非接触給電システム1000Aは、
図4に示すように、送電装置120に代えて送電装置120Aを備える点で、第1実施形態の非接触給電システム1000と異なる。また、第2実施形態の非接触給電システム1000Aは、
図5に示す送電状態切替制御を実行する点で、第1実施形態の非接触給電システム1000と異なる。なお、第2実施形態の非接触給電システム1000Aのシステム構成および一次側電力抑制制御におけるその他の手順は、第1実施形態の非接触給電システム1000と同じであるので、同一の構成および同一の手順には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0033】
B-1.回路構成:
送電システム100Aは、送電装置120に代えて送電装置120Aを備える点で、第1実施形態の送電システム100と異なる。送電装置120Aは、一次側コンデンサCsに代えてインピーダンス可変素子20を有し、一次側コイルLsとインピーダンス可変素子20とにより一次側共振回路10Aを構成する。送電装置120Aは、一次側検出回路30と、一次側制御回路40とをさらに備える。
【0034】
インピーダンス可変素子20は、交流電源装置110と一次側コイルLsとの間に接続されている。インピーダンス可変素子20は、2つのコンデンサ12、コンデンサ13と、スイッチSWとを備える。コンデンサ12と一次側コイルLsとは、直列に接続されている。コンデンサ13とスイッチSWは直列に接続され、直列に接続されたコンデンサ13とスイッチSWは、コンデンサ12と並列に接続されている。スイッチSWは、リレーなどの機械的な接点を外部からの指示により切り替えるものでもよいが、MOS-FETやアナログスイッチなどの半導体素子を用いる構成であってもよい。
【0035】
インピーダンス可変素子20は、スイッチSWのオン・オフを切り替えられることにより、電気容量が変化する。スイッチSWがオンのとき、コンデンサ13は、一次側コイルLsと接続される。このとき、インピーダンス可変素子20の電気容量は、コンデンサ12の電気容量とコンデンサ13の電気容量との合計と等しくなる。また、スイッチSWがオフのとき、コンデンサ13は、一次側コイルLsと切り離される。このとき、インピーダンス可変素子20の電気容量はコンデンサ12の電気容量と等しくなる。このようにインピーダンス可変素子20の電気容量が変化することにより、スイッチSWがオンのときの一次側共振回路10Aのインピーダンスは、スイッチSWがオフのときに比べて低下する。かかる一次側共振回路10Aのインピーダンス変化に伴って、一次側共振回路10Aの共振状態も変化する。本実施形態では、一次側共振回路10Aは、スイッチSWがオンのとき、動作周波数にて共振状態となり送電状態となる。また、一次側共振回路10Aは、スイッチSWがオフのとき動作周波数にて非共振状態となり待機状態となる。待機状態において、送電装置120Aは、送電状態に流れる電流よりも小さい待機電流を一次側コイルLsに流し、送電状態に移行するまで待機する。
【0036】
一次側検出回路30は、1次側コイルに鎖交する磁束の大きさを検出するセンサとして構成されている。本実施形態では、一次側検出回路30は、一次側コイルLsの両端の電圧を検出し、かかる電圧の変化を利用して磁束の大きさを検出する。一次側検出回路30は、検出した磁束の大きさを示す信号を一次側制御回路40に出力する。
【0037】
一次側制御回路40は、一次側検出回路30から出力される信号を利用して、スイッチSWを駆動させてスイッチSWのオン・オフを切り替える。一次側制御回路40における具体的な処理については、後述する送電状態切替制御において説明する。
【0038】
B-2.送電状態切替制御:
送電装置120Aは、送電装置120Aと受電装置200との磁気的な結合の程度に応じて、
図5に示す送電状態切替制御を実行し、送電装置120Aの送電状態を制御する。送電状態切替制御は、送電システム100Aの起動とともに開始され、送電システム100Aの起動中、送電装置120Aごとに並列して繰り返し実行される。
【0039】
ステップS210において、一次側制御回路40は、一次側検出回路30から出力された信号が示す磁束の大きさが予め設定された閾値以上であるか否かを判定する。磁束の大きさは、送電装置120Aと受電装置200との磁気的な結合の程度に応じて変化し、送電装置120Aと受電装置200とが接近するにつれて大きくなる。磁束の大きさの閾値は、受電装置200が送電装置120Aの送電エリアに進入した際の値として、予めシミュレーション等を行うことにより特定され設定されている。一次側制御回路40は、磁束の大きさが閾値未満であると判定されている間(ステップS210:No)、かかる判定を繰り返し実行する。
【0040】
磁束の大きさが閾値以上であると判定された場合(ステップS210:Yes)、一次側制御回路40は、スイッチSWをオンに切り替えて一次側共振回路10Aを送電状態に切り替え、送電装置120Aは送電を開始する(ステップS220)。
【0041】
ステップS230において、一次側制御回路40は、一次側検出回路30から出力された信号が示す磁束の大きさが予め設定された閾値未満であるか否かを判定する。磁束の大きさが閾値以上であると判定されている間(ステップS230:No)、一次側制御回路40は、かかる判定を繰り返し実行し、送電装置120Aは送電を継続する。
【0042】
磁束の大きさが閾値以上であると判定された場合(ステップS230:Yes)、一次側制御回路40は、スイッチSWをオフに切り替えて一次側共振回路10Aを待機状態に切り替え、送電装置120Aは送電を停止する(ステップS240)。その後、一次側制御回路40は、再びステップS210を実行する。
【0043】
以上説明した第2実施形態の非接触給電システム1000Aによれば、一次側検出回路30により磁束の減少が検出された場合には送電状態から待機状態に移行して電流を抑制するので、交流電源装置110の出力電力が過大となることにより交流電源装置110の動作が停止することをさらに抑制できる。
【0044】
C.第3実施形態:
第3実施形態の非接触給電システム1000Bは、
図6に示すように、電圧検出回路50をさらに備える点で、第2実施形態の非接触給電システム1000Aと異なる。また、第3実施形態の非接触給電システム1000Bは、
図7に示すように、送電状態切替制御において、ステップS210の後にステップS215を実行する点で、第2実施形態の非接触給電システム1000Aと異なる。なお、第3実施形態の非接触給電システム1000Bのシステム構成および、一次側電力抑制制御と送電状態切替制御とにおけるその他の手順は、第2実施形態の非接触給電システム1000Aと同じであるので、同一の構成および同一の手順には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0045】
図6に示すように、送電装置120Bは、上述の送電装置120Aの構成に加えて電圧検出回路50を備える点で、第2実施形態の送電装置120Aと異なっている。電圧検出回路50は、インピーダンス可変素子20と交流電源装置110との間において、送電装置120Bへの供給電圧を検出する。また、送電装置120Bは、検出した供給電圧を示す信号を一次側検出回路30へ出力する。
【0046】
図7に示すように、送電状態切替制御において、一次側制御回路40は、ステップS210の後に、電圧検出回路50から出力された信号が示す供給電圧が予め設定された閾値以上であるか否かを判定する(ステップS215)。供給電圧の閾値は、上述の既定電圧と同等の値として設定されている。ここで供給電圧が閾値以上でない場合というのは、上述の一次側電力抑制制御が実行中であり供給電圧が既定電圧を下回っている場合に相当する。
【0047】
供給電圧が閾値以上である場合(ステップS215:Yes)、上述の第2実施形態と同様にステップS220からステップS240を実行した後、一次側制御回路40は、再びステップS210を実行する。他方、供給電圧が閾値未満である場合(ステップS215:No)、ステップS220からステップS240は実行せず、一次側制御回路40は、再びステップS210を実行する。このように、本実施形態の送電状態切替制御においては、供給電圧が閾値未満、言い換えれば上述の一次側電力抑制制御が実行中である場合には、受電装置200が送電装置120Bの送電エリアに進入してきて磁束の大きさが閾値以上となった場合であっても、一次側制御回路40は、送電装置120Bの状態を待機状態から送電状態に移行させない。
【0048】
以上説明した第3実施形態の非接触給電システム1000Bによれば、一次側電力抑制制御が行われている場合には、磁束の増加が検出されても送電装置120Bの状態を待機状態から送電状態に移行させない。これにより、一次側電力抑制制御の実行中に新たな受電装置200の給電が開始されることにより、交流電源装置110の出力電力が過大となり交流電源装置110の動作が停止して、全ての受電装置200への送電が停止することを抑制できる。
【0049】
D.第4実施形態:
第4実施形態の非接触給電システム1000Bは、電源電圧制御部140が受電装置200へ通知を送信する点、および、受電側制御部220が
図8に示す二次側電力抑制制御を実行する点で、第3実施形態の非接触給電システム1000Bと異なる。また、本実施形態では、電源電圧制御部140と受電装置200とは互いに通信可能に構成されている。なお、第4実施形態の非接触給電システム1000Bのシステム構成および、一次側電力抑制制御と送電状態切替制御とにおけるその他の手順は、第3実施形態の非接触給電システム1000Bと同じであるので、同一の構成および同一の手順には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
本実施形態の電源電圧制御部140は、一次側電力抑制制御を実行中であるか否かを示す制御状態信号、および、二次側電力抑制制御における抑制率を示す情報を含む通知を受電装置200へ送信する。「抑制率」は、二次側電力抑制制御による二次側電力の抑制の度合いを示す比率を意味する。より具体的には、抑制率は、二次側電力抑制制御を行う前の二次側電力に対する、二次側電力抑制制御を行った後の二次側電力の比率を意味する。本実施形態では、抑制率は、交流電源装置110の定格出力電力を、予め定められた受電装置200の定格消費電力に現在給電を実行中である受電装置200の台数を乗じた値により除することにより、交流電源装置110によって算出される。電源電圧制御部140は、電流センサS1により検出された出力電流を利用して、現在給電を実行中である受電装置200の台数を特定可能である。出力電流は、給電を実行中である受電装置200の台数に比例して増大するからである。
【0051】
受電装置200は、電源電圧制御部140から通知を受信すると、
図8に示す二次側電力抑制制御を実行する。ステップS310において、受電側制御部220は、受信した通知に含まれる制御状態信号が、一次側電力抑制制御が実行中であることを示しているか否かを判定する。一次側電力抑制制御が実行中でないことを示していると判定された場合(ステップS310:No)、受電装置200は、通常通りの給電を実行し(ステップS334)、二次側電力抑制制御を終了する。
【0052】
一次側電力抑制制御が実行中であると判定された場合(ステップS310:Yes)、受電側制御部220は、二次側共振回路240において給電が実行中であるか否かを判定する(ステップS320)。かかる判定は、例えば、図示しない電圧センサにより二次側コイルLrの両端の電圧を検出し、かかる電圧の変化を利用して行うことができる。
【0053】
給電が実行中である場合(ステップS320:Yes)、受電側制御部220は、整流回路230を制御して、上述の抑制率に従って抑制した二次側電力をバッテリ210に給電する(ステップS330)。より具体的には、受電側制御部220は、整流回路230においてスイッチング素子Q22とスイッチング素子Q24とを同時にオンにする転流モードの期間を調整することにより、抑制した二次側電力をバッテリ210へ給電する。その後、受電装置200は、二次側電力抑制制御を終了する。
【0054】
給電が実行中でない場合(ステップS320:No)、受電側制御部220は、電動車両202の送電エリアへの進入を禁止する(ステップS332)。より具体的には、受電側制御部220は、電動車両202に搭載されて電動車両202の走行を制御する図示しないECUを介して、例えば、送電エリアを迂回して走行するように電動車両202を制御する。このように電動車両202を制御することにより、受電装置200が新たに給電を開始することを禁止できる。その後、受電装置200は、二次側電力抑制制御を終了する。
【0055】
以上説明した第4実施形態の非接触給電システム1000Bによれば、一次側電力抑制制御が実行中であることを示す通知を受信した場合であって、二次側共振回路240において給電が実行中でない場合、受電装置200が新たに給電を開始することを禁止する。これにより、一次側電力抑制制御の実行中に新たな受電装置200の給電が開始されることにより、交流電源装置110の出力電力が過大となり交流電源装置110の動作が停止して、全ての受電装置200への送電が停止することを抑制できる。
【0056】
また、本実施形態の非接触給電システム1000Bは、一次側電力抑制制御が実行中であることを示す通知を受信した場合であって、二次側共振回路240において給電が実行中である場合、定められた抑制率に従って二次側電力を抑制して給電を実行する。これにより、受電装置200への送電を実行中の送電装置120Bを流れる電流が抑制されるので、交流電源装置110の出力電力が過大となり交流電源装置110の動作が停止して、全ての受電装置200への送電が停止することを抑制できる。
【0057】
また、交流電源装置110は、交流電源装置110の定格出力電力を、予め定められた受電装置200の定格消費電力に現在給電を実行中である受電装置200の台数を乗じた値により除した値として抑制率を設定するので、交流電源装置110は、定格出力電力に近い電力を出力できる。これにより、交流電源装置110の出力電力が過度に抑制されて、受電装置200に対する給電効率が低下することを抑制できる。
【0058】
E.第5実施形態:
第5実施形態の非接触給電システム1000Bは、抑制率の算出方法が第4実施形態の非接触給電システム1000Bと異なる。なお、第5実施形態の非接触給電システム1000Bのシステム構成および、一次側電力抑制制御、送電状態切替制御、二次側電力抑制制御におけるその他の手順は、第4実施形態の非接触給電システム1000Bと同じであるので、同一の構成および同一の手順には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
本実施形態では、抑制率は、交流電源装置110の定格出力電圧を、交流電源装置110の現在の出力電圧により除することにより、交流電源装置110によって算出される。交流電源装置110の現在の出力電圧は、送電システム100Bに対して給電を実行中の受電装置200の数が変わらない場合であっても、送電装置120Bと受電装置200との位置関係による一次側コイルLsと二次側コイルLrとの結合係数の変化に伴って変化する。より具体的には、送電装置120と受電装置200とが離れている場合には結合係数が低くなり、受電装置200の定格消費電力よりも低い二次側電力で給電が実行されることとなる。このような場合に、受電装置200の定格消費電力を利用して決定された抑制率に従って受電装置200の二次側電力が抑制されると、二次側電力が過度に抑制されて交流電源装置110の定格出力電力を大きく下回ることとなり、受電装置200に対する給電効率が低下するおそれがある。本実施形態の抑制率の算出方法によれば、各送電装置120Bと各受電装置200との位置関係により変化する結合係数の度合いを反映した、現在の出力電圧を利用して抑制率を算出するので、このような問題を回避できる。
【0060】
以上説明した第5実施形態の非接触給電システム1000Bによれば、交流電源装置110の定格出力電圧を、交流電源装置110の現在の出力電圧により除した値として抑制率を設定するので、交流電源装置110は、現在の出力電力に応じて定格出力電力に近い電力を出力できる。これにより、交流電源装置110の出力電力が過度に抑制されて、受電装置200に対する給電効率が低下することをより抑制できる。
【0061】
F.他の実施形態:
(F1)上記各実施形態において、交流電源装置110はフィルタ回路F11を有し、受電装置200はフィルタ回路F21を有するが、本開示はこれに限定されない。
図9に示す非接触給電システム1000Cのように、非接触給電システムは、フィルタ回路F11に代えてフィルタ回路F12を有する交流電源装置110Cと、フィルタ回路F21に代えてフィルタ回路F22を有する受電装置200Cとを備える構成であってもよい。フィルタ回路F12は、コイルL111とコイルL112とが直列に接続され、コイルL111とコイルL112との間にコンデンサC111が並列に接続されたイミタンスフィルタとして構成されている。フィルタ回路F22は、コイルL121とコイルL122とが直列に接続され、コイルL121とコイルL122との間にコンデンサC121が並列に接続されたイミタンスフィルタとして構成されている。かかる形態の非接触給電システム1000Cによっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0062】
また、
図10に示す非接触給電システム1000Dのように、非接触給電システムは、バンドパスフィルタとして構成されたフィルタ回路F11を有する第1実施形態の交流電源装置110と、イミタンスフィルタとして構成されたF22を有する上述の受電装置200Cと、三次側共振回路300とを備える構成であってもよい。三次側共振回路300は、三次側コイルL311と、三次側コンデンサC311とが直列に接続された閉回路で構成されている。また、三次側共振回路300は、三次側コイルL311が一次側共振回路10の一次側コイルLsおよび二次側共振回路240の二次側コイルLrと磁気的に結合された状態となるように配置されている。かかる形態の非接触給電システム1000Dによっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0063】
(F2)上記各実施形態において、交流電源装置110はフィルタ回路F11を有し、受電装置200はフィルタ回路F21を有するが、本開示はこれに限定されない。非接触給電システム1000により給電される電力が小さい場合には、交流電源装置110と受電装置200とはともにフィルタ回路を有さなくてもよい。かかる形態の非接触給電システム1000によっても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0064】
(F3)上記第2実施形態において一次側制御回路40は、一次側コイルLsの両端の電圧の変化を利用して1次側コイルに鎖交する磁束の大きさを検出するセンサとして構成されているが、本開示はこれに限定されない。例えば、一次側制御回路40は、一次側コイルLsの近傍に配置された検出コイルに流れる電流の変化を利用して、1次側コイル近傍の磁束の大きさを検出してもよい。かかる形態の非接触給電システム1000Aによっても、上記第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0065】
(F4)上記第3実施形態において、一次側検出回路30は、送電装置120Bに供給される電圧を電圧検出回路50により検出することにより、一次側電力抑制制御が実行されているか否かを判定するが、本開示はこれに限定されない。一次側検出回路30は、一次側電力抑制制御を実行中であるか否かを示す制御状態信号を電源電圧制御部140から送信されて、制御状態信号を利用して、一次側電力抑制制御が実行されているか否かを判定してもよい。かかる形態の非接触給電システム1000Bによれば、電圧検出回路50を必要としないので、非接触給電システム1000Bのシステム構成が煩雑になることを抑制できる。
【0066】
(F5)上記第4実施形態において、電源電圧制御部140は、受電側制御部220に直接通知を送信するが、本開示はこれに限定されない。複数の受電装置200を制御する運行システムをさらに備える構成においては、電源電圧制御部140は、運行システムを介して受電側制御部220に対して通知を送信してもよい。かかる形態の非接触給電システム1000Bによっても上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0067】
(F6)上記第4実施形態において、受電側制御部220は、一次側電力抑制制御実行中であって、受電装置200が給電を実行中でない場合には、当該受電装置200が新たに給電を開始することを禁止するが、本開示はこれに限定されない。かかる場合に、当該受電装置200が送電エリアへ進入する際の速度を抑制する制御を行ってもよい。かかる制御を行うことにより、受電装置200が送電エリアに進入して、結合係数が最大となり送電装置120Bを流れる電流が最大となるまでの時間を長くすることができる。つまり、新たに進入した受電装置200への給電により交流電源装置110の出力電力が定格出力電力を超過する前に、他の受電装置200が給電を終了して出力電力が低下する可能性が高められる。そのため、このような制御によっても、交流電源装置110の出力電力が定格出力電力を超過することをより抑制できる。
【0068】
本開示に記載の制御装置130およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置130およびその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置130およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0069】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
(形態1)
非接触給電システム(1000、1000A、1000B、1000C、1000D)であって、
予め定められた動作周波数の交流電力を供給する交流電源装置(110、110C)と、
前記交流電源装置に対して互いに並列に接続された複数の送電装置(120、120A、120B)であって、一次側コイル(Ls)と一次側コンデンサ(Cs)とを有する一次側共振回路(10、10A)を有する複数の送電装置と、
前記送電装置から非接触で給電を受ける受電装置(200、200C)であって、
前記一次側コイルと磁気的に結合するための二次側コイル(Lr)と二次側コンデンサ(Cr)とを有する二次側共振回路と、
前記二次側共振回路から出力される交流電力を整流して直流電力に変換する整流回路(230)と、
前記整流回路を制御する受電側制御部(220)と、
前記直流電力が定電流で供給される負荷装置(210)と、
を有する受電装置と、
前記交流電源装置の出力電圧を制御する電源電圧制御部(140)と、
を備え、
前記電源電圧制御部は、前記交流電源装置の出力電力が前記交流電源装置の定格出力電力を超過する場合に、予め設定された許容出力電力を下回るように前記出力電圧を低下させる一次側電力抑制制御を行う、
非接触給電システム。
(形態2)
形態1に記載の非接触給電システムであって、
前記複数の送電装置のそれぞれは、
前記一次側コイルと前記交流電源装置との間に接続され、前記送電装置の状態を送電状態と待機状態との間で切り替えるためのインピーダンス可変素子(20)と、
前記一次側コイルに鎖交する磁束の大きさと、前記一次側コイル近傍の磁束の大きさとのいずれか一方を検出するための一次側検出回路(30)と、
前記一次側検出回路による検出値を利用して、前記インピーダンス可変素子のインピーダンスを変更する一次側制御回路(40)と、
をさらに備え、
前記一次側制御回路は、前記送電装置の状態を、
前記一次側検出回路によって、前記一次側コイルに鎖交する磁束、または、前記一次側コイル近傍の磁束の増加が検出された第1の場合、前記インピーダンス可変素子のインピーダンスを低下させて前記待機状態から前記送電状態に移行させ、
前記一次側検出回路によって、前記一次側コイルに鎖交する磁束、または、前記一次側コイル近傍の磁束の減少が検出された第2の場合、前記インピーダンス可変素子のインピーダンスを増大させて前記送電状態から前記待機状態に移行させる、
非接触給電システム。
(形態3)
形態2に記載の非接触給電システムであって、
前記一次側制御回路は、前記一次側電力抑制制御が行われている場合には、前記第1の場合であっても、前記待機状態から前記送電状態に移行させない、
非接触給電システム。
(形態4)
形態3に記載の非接触給電システムであって、
各前記送電装置は、該送電装置に供給される電圧を検出する電圧検出回路(50)をさらに備え、
前記一次側制御回路は、前記電圧検出回路により検出された電圧が予め設定された閾値未満である場合には、前記第1の場合であっても、前記待機状態から前記送電状態に移行させない、
非接触給電システム。
(形態5)
形態1から形態4のいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記電源電圧制御部は、前記一次側電力抑制制御を行っている場合に、前記一次側電力抑制制御を行っていることを前記受電装置に通知する、
非接触給電システム。
(形態6)
形態5に記載の非接触給電システムであって、
前記電源電圧制御部は、前記一次側電力抑制制御を行っている場合に、前記受電装置が新たに給電を開始することを禁止する、
非接触給電システム。
(形態7)
形態5または形態6に記載の非接触給電システムであって、
前記受電側制御部は、前記通知を受信した場合、前記整流回路を制御して前記負荷装置に供給される二次側電力を抑制する二次側電力抑制制御を行うことにより、前記二次側電力抑制制御を行う前の前記二次側電力に対する、前記二次側電力抑制制御を行った後の前記二次側電力の比率が、定められた抑制率となるように前記二次側電力を抑制する、
非接触給電システム。
(形態8)
形態7に記載の非接触給電システムであって、
前記抑制率は、前記定格出力電力を、前記受電装置の定格消費電力に前記受電装置の台数を乗じた値により除した値である、
非接触給電システム。
(形態9)
形態7に記載の非接触給電システムであって、
前記抑制率は、前記交流電源装置の定格出力電圧を、現在の前記出力電圧により除した値である、
非接触給電システム。
(形態10)
非接触給電システムを制御するためのコンピュータプログラムであって、
前記非接触給電システムは、
予め定められた動作周波数の交流電力を供給する交流電源装置と、
前記交流電源装置に対して並列に接続された複数の送電装置であって、一次側コイルと一次側コンデンサとを有する一次側共振回路を有する送電装置と、
前記送電装置から非接触で給電を受ける受電装置であって、
前記一次側コイルと磁気的に結合するための二次側コイルと二次側コンデンサとを有する二次側共振回路と、
前記二次側共振回路から出力される交流電力を整流して直流電力に変換する整流回路と、
前記整流回路を制御する受電側制御部と、
前記直流電力が定電流で供給される負荷装置と、
を有する受電装置と、
を備え、
前記コンピュータプログラムは、
前記交流電源装置の出力電力が前記交流電源装置の定格出力電力を超過する場合に、予め設定された許容出力電力を下回るように前記交流電源装置の出力電圧を低下させる機能を、コンピュータに実現させる、
コンピュータプログラム。
(形態11)
受電装置に非接触で給電する送電装置であって、
前記送電装置は、一次側コイルと一次側コンデンサとを有する一次側共振回路を有し、予め定められた動作周波数の交流電力を供給する交流電源装置に対して他の送電装置と互いに並列に接続され、
前記受電装置は、
前記一次側コイルと磁気的に結合するための二次側コイルと二次側コンデンサとを有する二次側共振回路と、
前記二次側共振回路から出力される交流電力を整流して直流電力に変換する整流回路と、
前記整流回路を制御する受電側制御部と、
前記直流電力が定電流で供給される負荷装置と、
を有し、
前記交流電源装置は、前記交流電源装置の出力電力が前記交流電源装置の定格出力電力を超過する場合に、予め設定された許容出力電力を下回るように前記交流電源装置の出力電圧を低下させる、
送電装置。
(形態12)
送電装置から非接触で給電される受電装置であって、
前記送電装置は、一次側コイルと一次側コンデンサとを有する一次側共振回路を有し、予め定められた動作周波数の交流電力を供給する交流電源装置に対して他の前記送電装置と互いに並列に接続され、
前記受電装置は、
前記一次側コイルと磁気的に結合するための二次側コイルと二次側コンデンサとを有する二次側共振回路と、
前記二次側共振回路から出力される交流電力を整流して直流電力に変換する整流回路と、
前記整流回路を制御する受電側制御部と、
前記直流電力が定電流で供給される負荷装置と、
を有し、
前記交流電源装置は、前記交流電源装置の出力電力が前記交流電源装置の定格出力電力を超過する場合に、予め設定された許容出力電力を下回るように前記交流電源装置の出力電圧を低下させる、
受電装置。
【符号の説明】
【0070】
10、10A…一次側共振回路、110、110C…交流電源装置、120、120A、120B…送電装置、140…電源電圧制御部、200、200C…受電装置、210…バッテリ、220…受電側制御部、230…整流回路、240…二次側共振回路、1000、1000A、1000B、1000C、1000D…非接触給電システム、Cr…二次側コンデンサ、Cs…一次側コンデンサ、Lr…二次側コイル、Ls…一次側コイル