(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148199
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】電子レンジ調理用包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
B65D81/34 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061102
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】391013461
【氏名又は名称】フィルネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088948
【弁理士】
【氏名又は名称】間宮 武雄
(72)【発明者】
【氏名】徳永 泰亮
(72)【発明者】
【氏名】川村 茉緒
(72)【発明者】
【氏名】田辺 加琳
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013AA05
3E013AA10
3E013AB01
3E013AE12
3E013BA02
3E013BA24
3E013BA30
3E013BB12
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF80
3E013BG17
3E013BG20
3E013CC12
(57)【要約】
【課題】電子レンジでの食品加熱時における袋外への蒸気の排出や袋内面の吸液の機能を持ち、食品の包装袋としての簡便性や内容物の保護機能に優れ、袋の密封性も良好で、製造・包装の工程上の問題も特に無く、充填適性にも優れ、吸液機能を担う複層構造の不織布における層間?離を起こす心配も無い包装体を提供する。
【解決手段】非通気性の合成樹脂フィルムからなる外面基材2とヒートシール性を有する不織布からなる内面材3とを、溶融樹脂材を介在させて積層し接着させた包装用シート材1を用いて製袋され、ポリオレフィン繊維と吸液性繊維とを1:4~4:1の配合比で混合して形成されたラミネート接着層5と、低融点ポリエステルによる表面被覆が施された芯鞘構造の合成繊維で形成された内容物接触層6との複層構造を有する総目付量25g/m
2~50g/m
2のスパンレース不織布またはサーマルボンド不織布を使用して包装用シート材1を形成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、非通気性の合成樹脂フィルムからなる外面基材とヒートシール性を有する不織布からなる内面材とを、ポリオレフィン系樹脂を含む溶融樹脂材を介在させて積層し接着させた包装用シート材を、前記内面材が内方側となるようにして袋状に形成し、包装用シート材の重なり合った端縁部同士を帯状にヒートシールして、ヒートシール部で閉塞された内容物収容部を有する密閉袋形態とされ、
電子レンジを使用した内容物の加熱に伴って生じる袋内部の圧力上昇による袋の破裂を、前記ヒートシール部の一部における前記内面材同士の接着面が剥離して袋内部の蒸気を袋外部へ逃がすことにより防止するとともに、内容物の加熱に伴って内容物から染み出る油分や水分を前記内面材が吸収するようにした電子レンジ調理用包装体において、
前記包装用シート材の内面材をなす不織布が、総目付量25g/m2~50g/m2で、前記溶融樹脂材側に配置されポリオレフィン繊維またはポリオレフィンによる表面被覆が施された芯鞘構造の合成繊維と吸液性繊維とを1:4~4:1の配合比で混合して形成された吸液性を有するラミネート接着層と、袋内方側に配置され融点100℃~160℃の低融点ポリエステルによる表面被覆が施された芯鞘構造の合成繊維で形成された透湿通気性を有する内容物接触層との、少なくとも2層の複層構造を有するスパンレース不織布またはサーマルボンド不織布であることを特徴とする電子レンジ調理用包装体。
【請求項2】
前記包装用シート材の内面材をなす不織布の内容物接触層は、圧力0.2MPa、時間0.5秒の条件でヒートシールしたときにヒートシール強度を13N/15mm以下で安定させることができるシール温度領域が少なくとも20℃の幅を持ち、かつ、圧力0.2MPa、時間0.5秒の条件でヒートシールし荷重30g、シール幅15mm、シール長さ300mmの条件でホットタック試験したときに剥離距離を20mm以下とすることができるシール温度領域が少なくとも20℃の幅を持った性状を有する請求項1に記載の電子レンジ調理用包装体。
【請求項3】
前記ラミネート接着層の吸液性繊維は、レーヨン繊維および/またはパルプ繊維である請求項1または請求項2に記載の電子レンジ調理用包装体。
【請求項4】
袋形態が、背面シール部を有する縦ピロー状である請求項1または請求項2に記載の電子レンジ調理用包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、包装用シート材を袋状に形成してシート材の重なり合った端縁部をヒートシールし内部に被調理食品を収容して密封する包装体であって、袋を開封することなく電子レンジで袋ごと内容物を加熱したときに、内容物の加熱に伴って生じる袋内部の圧力上昇により袋が破裂して内容物が袋外に飛散するのを防止することができ、また、内容物の加熱に伴って内容物から染み出る油分や水分を袋材が吸収して風味や食感の低下を抑えることができる機能を持った電子レンジ調理用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における時短即食のニーズや電子レンジの普及率の高さにより、袋に包装されたまま電子レンジで加熱して喫食する加工食品が多く販売され消費されている。特に、軟質シート材で製袋された包装体を開封することなくそのまま電子レンジで加熱することができる製品は、その簡便性から年々販売量が増加する傾向にある。この種の加工食品に用いられる電子レンジ調理用包装体には、加熱によって食品から生じた水蒸気により高まった内圧を利用して包装体の一部が開口したり、予め包装体を構成するフィルムに孔が開けられていたりするなど、袋内の水蒸気を袋外へ排出する機能が備わっている。
【0003】
また、包装体を開封することなくそのまま電子レンジで加熱して喫食する加工食品では、その種類によって加熱時に食感や風味が低下することがある。すなわち、一般的に包装用シート材は、水分が浸透しない合成樹脂製であるため、例えば食品が衣の付いた揚げ物惣菜である場合、食品が加熱されることによって生じた水蒸気が凝結し水となって食品に戻され、この結果、揚げ物のカラッとした食感が失われるといったことが起こる。このような現象を避けるため、電子レンジ調理用包装体にあっては、内面素材に吸液性が付与された包装用シート材が用いられたりする。
【0004】
袋外への水蒸気の排出や袋内面の吸液の機能を持った電子レンジ調理用包装体として、例えば、透湿通気および防水機能を有する疎水性熱可塑性樹脂からなるメルトブローン不織布層を中層とし、その外方側に吸水性を有する繊維シート層を、内方側にヒートシール性および透湿性を有する疎水性ポリマーからなる熱接着性スパンボンド不織布層をそれぞれ配し、さらに繊維シート層の外方側に、不通気性および防水性を有するフィルム層とその外方側の化粧用あるいは印刷用の外層を配した5層からなるシート状包装材を用い、スパンボンド不織布層が最内層側となるように食品を内包しヒートシールして形成された食品包装体が提案されている。この食品包装体では、食品を加熱して発生した水蒸気が、スパンボンド不織布層およびメルトブローン不織布層を通過し、フィルム層で通路を断たれて冷却結露しても、フィルム層内面側に接する繊維シート層で吸収されることにより、水蒸気がスパンボンド不織布層内で結露して風味が損なわれる、といったことが防止される。また、電子レンジで食品が加熱され、食品中の水が水蒸気となりまた密封された空気の膨張により包装体が膨張しても、繊維シート層での繊維間接合力が元々弱く、繊維シート層中での密閉性が比較的弱いので、膨張したガス体は、スパンボンド不織布層およびメルトブローン不織布層を通って繊維シート層に入り、この繊維シート層中から包装体外部に逃げるので、包装体が破裂することはない(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、片面が多数の微小な孔を有する熱可塑性樹脂フィルム、逆側の片面が不織布および/または紙からなるシートを袋状に形成した食品加熱用包装体であって、電子レンジで食材を加熱したときに、食材の内部から出てくる油や水分を不織布および/または紙で吸収して、食材の食感を高めることができ、食材から発生する水蒸気圧によって包装体が破裂するのを、熱可塑性樹脂フィルムに穿孔することにより防止するようにした包装体が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3-324654号公報(第3-4頁、
図3)
【特許文献2】特開2016-16064号公報(第5-9頁、
図1、
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された食品包装体は、食品加熱時に食品から発生した水蒸気が冷やされて水滴状となった水分を吸水性繊維シート層が吸収し、食品中の水が水蒸気となりまた密封された空気の膨張により包装体が膨張しても、膨張したガス体を繊維シート層中から袋外部に逃がすことができる。しかしながら、特許文献1に開示の食品包装体は、食品の加熱時にシール部の一部が剥離して開口部を形成する機構ではなく、繊維シート層を通ってガス体を袋外部に逃がすものであるが、繊維シート層は、目付が5g~50gといった薄い層であり、食品から発生した水分を吸収した状態で、層内剥離を生じることなく、ガス体を袋外部にスムーズに逃がすことは難しい。また、特許文献1に開示の食品包装体には、電子レンジで食品を加熱調理した後にシール部を剥離して容易に袋を開封する機構が備わっておらず、電子レンジ調理用包装体としては簡便性に欠けるものである。
【0008】
また、特許文献2に開示された食品加熱用包装体は、食材の内部から出てくる油や水分を不織布および/または紙で吸収し、熱可塑性樹脂フィルムに穿孔することにより、食材から発生する水蒸気圧によって包装体が破裂するのを防止することができる。しかしながら、特許文献2に開示の食品加熱用包装体は、熱可塑性樹脂フィルムに穿孔されており、その熱可塑性樹脂フィルムが外側になるようにシートを袋状に形成した場合、主に中身の内容物を保護する機能を担う外面基材に穿孔されていることは、包装にとって重要な内容物の保護の観点から好ましいことではなく、袋の密封性も低くなる。また、熱可塑性樹脂フィルムが内側になるようにシートを袋状に形成した場合も、不織布や紙を外面材とすることは、同様に好ましいことではない。さらに、穿孔された熱可塑性樹脂フィルムを袋の外面基材とする場合、製造の工程数が増え、また、穿孔された熱可塑性樹脂フィルムが破断し易いことから、シートにテンションをかけることの多い包装体の製造工程や内容物の包装工程においてシートの取扱いに特別な注意を払う必要がある、といった作業工程上の問題がある。
【0009】
さらに、食品包装体のシート材料として使用される不織布は、十分な吸液性を付与するために不織布にパルプ紙を接合した2層以上の複層構造とすることが多い。このような構成とした場合、異なる素材同士では層間の接合強度が高いものにならないことが多く、このため、包装体の製造工程や食品の包装工程において、あるいは、食品の加熱によって袋が膨張したときに、層間剥離(デラミネーション)を起こす心配がある。さらにまた、食品加熱用包装体においては、自動充填包装機を使用して包装体に内容物を充填し包装するときに、ヒートシール直後における袋底部のシール部から内容物が抜け出る、といった充填適性の問題もある。
【0010】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、電子レンジでの食品加熱時における袋外への水蒸気の排出や袋内面の吸液の機能を持った電子レンジ調理用包装体であって、蒸気抜きを確実に行うことができ、食品の加熱調理後には容易に袋を開封することが可能で、消費者のニーズに合った包装体としての簡便性を有し、また、内容物を保護するといった包装体の本来的に重要な機能を具備し、袋の密封性も良好で、包装体の製造や内容物の包装といった作業工程上の問題も特に無く、充填適性にも優れ、さらに、包装用シート材の吸液機能を担う複層構造の不織布における層間の接合強度が高くて層間?離を起こす心配が無い包装体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明では、包装用シート材の内面材を、ヒートシール性を有する不織布で形成し、その不織布を複層構造とし、不織布を構成する各層の組成や性状を適切に設定するとともに、各層を積層する手段を特定することにより、上記課題を解決した。
すなわち、請求項1に係る発明は、少なくとも、非通気性の合成樹脂フィルムからなる外面基材とヒートシール性を有する不織布からなる内面材とを、ポリオレフィン系樹脂を含む溶融樹脂材を介在させて積層し接着させた包装用シート材を、前記内面材が内方側となるようにして袋状に形成し、包装用シート材の重なり合った端縁部同士を帯状にヒートシールして、ヒートシール部で閉塞された内容物収容部を有する密閉袋形態とされ、電子レンジを使用した内容物の加熱に伴って生じる袋内部の圧力上昇による袋の破裂を、前記ヒートシール部の一部における前記内面材同士の接着面が剥離して袋内部の蒸気を袋外部へ逃がすことにより防止するとともに、内容物の加熱に伴って内容物から染み出る油分や水分を前記内面材が吸収するようにした電子レンジ調理用包装体において、前記包装用シート材の内面材をなす不織布を、総目付量25g/m2~50g/m2で、前記溶融樹脂材側に配置されポリオレフィン繊維またはポリオレフィンによる表面被覆が施された芯鞘構造の合成繊維と吸液性繊維とを1:4~4:1の配合比で混合して形成された吸液性を有するラミネート接着層と、袋内方側に配置され融点100℃~160℃の低融点ポリエステルによる表面被覆が施された芯鞘構造の合成繊維で形成された透湿通気性を有する内容物接触層との、少なくとも2層の複層構造を有するスパンレース不織布またはサーマルボンド不織布としたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の包装体において、包装用シート材の内面材をなす不織布の内容物接触層を、圧力0.2MPa、時間0.5秒の条件でヒートシールしたときにヒートシール強度を13N/15mm以下で安定させることができるシール温度領域が少なくとも20℃の幅を持ち、かつ、圧力0.2MPa、時間0.5秒の条件でヒートシールし荷重30g、シール幅15mm、シール長さ300mmの条件でホットタック試験したときに剥離距離を20mm以下とすることができるシール温度領域が少なくとも20℃の幅を持った性状としたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の包装体において、ラミネート接着層の吸液性繊維をレーヨン繊維および/またはパルプ繊維としたことを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の包装体において、袋形態を、背面シール部を有する縦ピロー状としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明の電子レンジ調理用包装体においては、包装用シート材の内面材をなす不織布の総目付量が25g/m2~50g/m2とされていることにより、合成樹脂フィルムからなる外面基材と不織布からなる内面材とを溶融樹脂材で積層し接着する工程において良好な押出ラミネート適性を有するとともに、不織布が十分な吸液性を持ち、かつ、包装体としての適性や包装体製造におけるコストバランスの観点からも好ましい。また、不織布の、溶融樹脂材側に配置されたラミネート接着層が吸液性を有し、袋内方側に配置された内容物接触層が透湿通気性を有することにより、内容物の加熱によって発生する水蒸気は、内容物接触層を通過してラミネート接着層で凝結し、その水分がラミネート接着層で吸収されるとともに、内容物から染み出た余分な油分や水分がラミネート接着層で吸収される。このため、食品の加熱調理によって食品の風味が損なわれることが防止される。そして、ラミネート接着層が、ポリオレフィン繊維またはポリオレフィンによる表面被覆が施された芯鞘構造の合成繊維と吸液性繊維とを1:4~4:1の配合比で混合して形成されていることにより、溶融樹脂材を介在させた外面基材とのラミネート接着力と吸液性とがバランス良くラミネート接着層に付与される。また、内容物接触層が、融点100℃~160℃の低融点ポリエステルによる表面被覆が施された芯鞘構造の合成繊維で形成されていることにより、低温ヒートシール性、広い温度範囲でのヒートシール強度の安定性およびホットタック性が得られる。そして、この包装体では、適切なホットタック性が得られることにより、内容物を自動充填包装するときの充填適性も良好である。さらに、ラミネート接着層と内容物接触層からなる不織布が、スパンレース法またはサーマルボンド法により製造されたスパンレース不織布またはサーマルボンド不織布であることにより、不織布の層同士は容易に剥離することのない強い力で接合されており、このため、包装体の製造工程や食品の包装工程において、あるいは、食品の加熱によって袋が膨張したときに、層間剥離を起こす心配が無い。一方、内容物の加熱に伴って袋内部の圧力が上昇し袋面が膨張したときは、不織布の内容物接触層の層内で凝集破壊が起こり、ヒートシール部の一部における内面材同士の接着面が凝集剥離して袋内部の蒸気を袋外部へ緩やか排出することにより、袋が破裂して内容物が袋外に飛散することが防止される。また、この包装体は、適度なヒートシール強度を持ち、袋の開封時に溶融樹脂材と内面材間や内面材内部で層間?離が発生しないので、食品の加熱調理後には、蒸気抜き個所を起点として容易に袋を開封することができ、食品の種類によっては容器に移し替えることなく喫食することもできる。そして、外面基材が非通気性の合成樹脂フィルムで形成されているので、内容物を保護することができ、袋の密封性も良好である。
したがって、この発明により、食品の加熱時における蒸気抜きを確実に行うことができ、また、食品の加熱調理に伴う風味や食感の低下を抑えることができ、包装体としての簡便性や内容物の保護機能に優れ、袋の密封性も良好で、包装体の製造工程や内容物の包装工程における問題も特に無く、充填適性にも優れ、不織布における層間?離を起こす心配も無い電子レンジ調理用包装体を提供し得たものである。
【0016】
請求項2に係る発明の包装体では、包装用シート材の内面材をなす不織布としての上記機能を十分に発揮することができ、請求項1に係る発明の上記作用効果が確実に奏される。
【0017】
請求項3に係る発明の包装体では、ラミネート接着層の吸液機能を確実に発揮することができる。
【0018】
請求項4に係る発明の包装体では、背面シール部の一部に、内面材同士の接着面が剥離して蒸気抜き口が形成され、食品の加熱調理後には、背面シール部を挟んでその両側位置で袋面を摘み両側に引っ張ることにより、蒸気抜き口を起点として容易に背面シール部を開口させ開封することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の実施形態の1例を示し、電子レンジ調理用包装体を構成する包装用シート材の一部拡大断面図である。
【
図2】
図1に示した包装用シート材を用いて製袋された電子レンジ調理用包装体の1例を示し、縦ピロー型包装袋を背面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
この電子レンジ調理用包装体は、
図1に一部拡大断面図を示した包装用シート材1を用い、それを袋状に形成して製造される。包装用シート材1は、非通気性の合成樹脂フィルムからなる外面基材2とヒートシール性を有する不織布からなる内面材3とを、ポリオレフィン系樹脂を含む溶融樹脂材4を介在させて積層し接着させて構成されている。この包装用シート材1を、内面材3が内方側となるようにして袋状に形成し、包装用シート材1の重なり合った端縁部同士を帯状にヒートシールすることにより包装体が製作される。
図2に包装体の1例を示す。この包装体は、1枚の包装用シート材1の左・右両側をそれぞれ折り返し、折り返された端縁部同士を帯状にヒートシールして背面シール部7を形設し、また、底辺側の重なり合った端縁部同士を帯状にヒートシールして底辺シール部8を形設することにより袋形態とした縦ピロー型包装袋である。上辺側が開口した状態のこの包装体に、開口部を通して食品を挿入し、その後に上辺側の重なり合った端縁部同士をヒートシールすることにより、上辺シール部9、底辺シール部8および背面シール部7で閉塞された内容物収容部10に食品を密封した包装食品が得られる。
【0021】
包装用シート材1の外面基材2は、非通気性の合成樹脂フィルムから形成されるが、その材質は特に限定されず、例えばポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムなどが使用される。
【0022】
外面基材2と内面材3とは押出ラミネート法により積層され、両材2、3を積層して接着させる溶融樹脂材4は、ポリオレフィン系樹脂を含むものであれば特に限定されないが、代表的な例として、低密度ポリエチレンやエチレンと各種成分との共重合体、あるいは、各種構造のポリプロピレンなどが挙げられる。
【0023】
内面材3を構成する不織布は、吸液性を有し押出ラミネートの溶融樹脂材4の層と接するラミネート接着層5と、透湿通気性を有し内容物と接触する袋内面側となりまたヒートシールの接合・接着面となる内容物接触層6との、少なくとも2層の複層構造を有している。内面材3を構成する不織布を、3層、あるいはそれ以上の多層構造とすることもできる。内面材3をなす不織布は、総目付量を25g/m2~50g/m2とし、より好ましくは、30g/m2~50g/m2とする。これにより、外面基材2と内面材3とを溶融樹脂材4で積層し接着する工程における押出ラミネート適性が良好となり、また、内面材3をなす不織布が十分な吸液性を持つことになる。そして、不織布の総目付量が50g/m2以下とされることにより、包装体としての適性や包装体製造におけるコストバランスの点で優れている。
【0024】
ラミネート接着層5は、ポリオレフィン繊維と吸液性繊維とを1:4~4:1の配合比で混合して形成され、あるいは、ポリオレフィンによる表面被覆が施された芯鞘構造の合成繊維と吸液性繊維とを1:4~4:1の配合比で混合して形成されている。このような配合比とすることにより、溶融樹脂材4を介在させた外面基材2とのラミネート接着力と吸液性とがバランス良くラミネート接着層5に付与される。ラミネート接着層5に使用されるポリオレフィン繊維は、また、合成繊維を表面被覆する鞘となるオレフィンは、押出ラミネート法で使用される溶融樹脂材4に合わせて選択され、これにより、汎用的な材料を使用することができるとともに、溶融樹脂材4の層との十分な接着力が得られる。このポリオレフィン繊維また鞘材料となるポリオレフィンとしては、溶融樹脂材4と同様に、ポリオレフィン系樹脂を含むものであれば特に限定されないが、代表的な例として、低密度ポリエチレンやエチレンと各種成分との共重合体、あるいは、各種構造のポリプロピレンなどが挙げられる。ポリオレフィンによる表面被覆が施された芯鞘構造の合成繊維の芯の材料となる合成繊維も特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル繊維などが使用される。また、ラミネート接着層5に使用される吸液性繊維としては、レーヨン繊維やパルプ繊維が不織布の製造で汎用されており、不織布への吸液性の付与に最適であるが、不織布の製造において混合することができる吸液性材料であればレーヨン繊維やパルプ繊維に限定されない。レーヨン繊維やパルプ繊維などの吸液性繊維は、電子レンジで食品を加熱した場合の良好な食感を実現するために、不織布の総目付量25g/m2~50g/m2の不織布のいずれかの層に20%以上配合することが好ましい。
【0025】
内容物接触層6は、融点100℃~160℃の低融点ポリエステルによる表面被覆が施された(低融点ポリエステルを鞘の材料として用いた)芯鞘構造の合成繊維で形成される。これにより、低温ヒートシール性、広い温度範囲でのヒートシール強度の安定性およびホットタック性が得られる。鞘の材料となる低融点ポリエステルの種類や芯の材料となる合成繊維は、いずれも特に限定されないが、例えば、融点100℃~120℃の低融点ポリエチレンテレフタレートを鞘材料とした芯鞘構造の熱可塑性ポリエステル繊維は、低温ヒートシール性や広い温度範囲でのヒートシール強度の安定性、ホットタック性を好適に得ることができる。また、内容物接触層6の性状として、圧力0.2MPa、時間0.5秒の条件でヒートシールしたときにヒートシール強度を13N/15mm以下で安定させることができるシール温度領域が少なくとも20℃の幅を持ち、かつ、圧力0.2MPa、時間0.5秒の条件でヒートシールし荷重30g、シール幅15mm、シール長さ300mmの条件でホットタック試験したときに剥離距離を20mm以下とすることができるシール温度領域が少なくとも20℃の幅を持つことが好適である。内容物接触層6がそのような性状を有することにより、電子レンジで食品を加熱したときに、蒸気抜け音や開封性といった電子レンジ調理適性が得られ、また、包装体に食品を充填するときの充填適性が得られることになる(後述の試験結果を参照)。
【0026】
不織布を製造する方法は数々あるが、この包装体では、スパンレース法またはサーマルボンド法により製造された不織布が使用される。不織布としてスパンレース不織布またはサーマルボンド不織布が用いられていることにより、ラミネート接着層5および内容物接触層6の層同士が容易に剥離することのない強い力で接合され一体化される。このため、包装体の製造工程や食品の包装工程において、あるいは、食品の加熱によって袋が膨張したときに、層間剥離を起こす心配が無くなる。
【0027】
上記した構成の包装用シート材1を使用して製造された包装体(縦ピロー型包装袋)を電子レンジ調理用食品の包装に用いることにより、電子レンジで袋ごと食品を加熱したときに、食品の加熱によって発生する水蒸気は、内容物接触層6を通過してラミネート接着層3で凝結し、その水分がラミネート接着層3で吸収され、また、食品から染み出た余分な油分や水分がラミネート接着層3で吸収される。このため、食品の加熱調理によって食品の風味が損なわれることが防止される。一方、食品の加熱に伴って袋内部の圧力が上昇し袋面が膨張したときは、不織布の内容物接触層6の層内で凝集破壊が起こり、背面シール部7の一部に、内面材3同士の接着面が凝集剥離して蒸気抜き口が形成され、その蒸気抜き口を通って袋内部の蒸気が袋外部へ排出される。このため、袋が破裂して食品の一部が袋外に飛散することが防止される。また、食品の加熱調理後には、背面シール部7を挟んでその両側位置で袋面を摘み両側に引っ張ることにより、蒸気抜き口を起点として容易に背面シール部7を開口させ袋を開封することができる。
【0028】
なお、上記した実施形態では、非通気性の合成樹脂フィルムからなる外面基材2とラミネート接着層5および内容物接触層6の不織布からなる内面材3とを、溶融樹脂材4を介在させて積層し接着させた4層構造の包装用シート材1を示したが、内容物や用途に応じて複数の基材層を積層して外面基材2を構成し、包装用シート材を5層、あるいはそれ以上の多層構造とすることもできる。また、上記実施形態では、包装体として縦ピロー型包装袋を示したが、包装体の形態はそれに限定されない。例えば、1枚の包装用シート材1を二つ折りにして重ね合わせ、それぞれ重なり合った端縁部同士をヒートシールして密閉袋形態に形成する包装袋、2枚の包装用シート材を重ね合わせ、重なり合った端縁部同士をヒートシールして密閉袋形態に形成する包装袋などにも、この発明は適用し得る。
【実施例0029】
次に、実施例によりこの発明をより具体的に説明し、実施例の電子レンジ調理用包装体と複数の比較例の包装体とを比較し評価するために行った試験およびその結果について説明する。
【0030】
[実施例に係る包装用シート材]
片面にコロナ処理が施された12μmの厚みのポリエチレンテレフタレートフィルムを外面基材に用い、ポリプロピレンを芯の材料、ポリエチレンを鞘の材料とした芯鞘構造のポリオレフィン繊維とレーヨン繊維とを1:1の配合比で混合した目付量20g/m2のラミネート接着層と、ポリエチレンテレフタレートを芯の材料、融点110℃の低融点ポリエチレンテレフタレートを鞘の材料とした芯鞘構造のポリエステル繊維からなる目付量20g/m2の内容物接触層とを積層し2層一体化させたスパンレース不織布(総目付量40g/m2)を内面材に用い、外面基材と内面材とを、押出ラミネート法により、押出ポリエチレン層の厚みが15μmとなるようにして貼り合わせ、包装用シート材を作成した。
【0031】
[比較例1の包装用シート材]
片面にコロナ処理が施された12μmの厚みのポリエチレンテレフタレートフィルムを外面基材に用い、目付量20g/m2のパルプ紙と、ポリエステルを芯の材料、ポリエチレンを鞘の材料とした芯鞘構造の合成繊維からなる目付量15g/m2のスパンボンド不織布との間に、ポリエチレン樹脂を押し出して積層し複層一体化させ、穿孔して形成された通気性シートを内面材に用い、外面基材と内面材(通気性シート)とを、押出ラミネート法により、押出ポリエチレン層の厚みが15μmとなるようにして貼り合わせ、包装用シート材を作成した。
【0032】
[比較例2の包装用シート材]
片面にコロナ処理が施された12μmの厚みのポリエチレンテレフタレートフィルムを外面基材に用い、ポリエチレンテレフタレートを芯の材料、低融点ポリエチレンテレフタレートを鞘の材料とした芯鞘構造の熱可塑性ポリエステル繊維とレーヨン繊維とを7:3の配合比で混合した目付量30g/m2の単層の乾式不織布を内面材に用い、外面基材と内面材(乾式不織布)とを、押出ラミネート法により、押出ポリエチレン層の厚みが15μmとなるようにして貼り合わせ、包装用シート材を作成した。
【0033】
[比較例3の包装用シート材]
片面にコロナ処理が施された12μmの厚みのポリエチレンテレフタレートフィルムを外面基材に用い、ポリエチレンテレフタレートを芯の材料、低融点ポリエチレンテレフタレートを鞘の材料とした芯鞘構造の熱可塑性ポリエステル繊維とレーヨン繊維とを4:1の配合比で混合した目付量30g/m2の単層の乾式不織布を内面材に用い、外面基材と内面材(乾式不織布)とを、押出ラミネート法により、押出ポリエチレン層の厚みが15μmとなるようにして貼り合わせ、包装用シート材を作成した。
【0034】
[比較例4の包装用シート材]
片面にコロナ処理が施された12μmの厚みのポリエチレンテレフタレートフィルムを外面基材に用い、ポリエチレンテレフタレートを芯の材料、ポリエチレンを鞘の材料とした芯鞘構造の合成繊維を使用したスパンボンド不織布からなる目付量15g/m2のラミネート接着層と、ポリエチレンテレフタレートを芯の材料、低融点ポリエチレンテレフタレートを鞘の材料とした芯鞘構造のポリエステル繊維とレーヨン繊維とを4:1の配合比で混合したスパンレース不織布からなる目付量30g/m2の内容物接触層とを積層し2層一体化させた不織布を内面材に用い、外面基材と内面材(不織布)とを、押出ラミネート法により、押出ポリエチレン層の厚みが15μmとなるようにして貼り合わせ、包装用シート材を作成した。
【0035】
[比較例5の包装用シート材]
片面にコロナ処理が施された12μmの厚みのポリエチレンテレフタレートフィルムを外面基材に用い、ポリエチレンテレフタレートを芯の材料、低融点ポリエチレンテレフタレートを鞘の材料とした芯鞘構造の熱可塑性ポリエステル繊維からなる目付量30g/m2の単層の乾式不織布を内面材に用い、外面基材と内面材(乾式不織布)とを、押出ラミネート法により、押出ポリエチレン層の厚みが15μmとなるようにして貼り合わせ、包装用シート材を作成した。
【0036】
[比較例6の包装用シート材]
片面にコロナ処理が施された12μmの厚みのポリエチレンテレフタレートフィルムを外面基材に用い、パルプ紙からなる目付量18g/m2のラミネート接着層と、ポリプロピレンを芯の材料、ポリエチレンを鞘の材料とした芯鞘構造のポリオレフィン繊維を使用したスパンボンド不織布からなる目付量10g/m2の内容物接触層とを積層し2層一体化させた通気性シートを内面材に用い、外面基材と内面材(通気性シート)とを、押出ラミネート法により、押出ポリエチレン層の厚みが15μmとなるようにして貼り合わせ、包装用シート材を作成した。
【0037】
[試験1]
上記した実施例に係る包装用シート材ならびに比較例1~3の包装用シート材を用い、2枚の包装用シート材を、内面材同士が接合するように重ね合わせてヒートシールし、ヒートシールされたシートのヒートシール強度を測定した。測定サンプルは、ヒートシールの圧力0.2MPa、時間0.5秒、上部シールバー温度140℃、150℃、160℃、170℃および180℃、下部シールバー温度50℃、測定方向MDの条件で作製し、測定は、JIS Z1707「食品包装用プラスチックフィルム通則」に則して行った。
【0038】
[試験2]
上記実施例に係る包装用シート材ならびに比較例1~3の包装用シート材を用い、包装用シート材を、内面材が内方側となるようにして袋状に形成し重なり合った端縁部同士をヒートシールすることにより縦ピロー型の包装袋(
図2参照)を製作し、この包装袋内に、約5mlの水道水を含ませた十字折りのティッシュペーパを入れ、開口部をヒートシールして密閉した。密閉された包装袋を、袋背面側が天面となるようにして電子レンジ庫内に入れて加熱し、ヒートシール部の一部が剥離してその剥離部分から袋内部の蒸気が袋外部へ抜け出る際に発する音の大きさを官能評価した。また、加熱後に、包装袋の背面シール部を挟んでその両側位置で袋面を摘み両側に引っ張ることにより背面シール部を開口させて開封し、この開封動作を容易に行うことができるかどうかについて官能評価した。試験1、2の結果を表1に示す。表1中、「蒸気抜け音の大きさ」の項目については、〔ほとんど聞こえないくらい小さい音:+〕<++<<〔破裂音のような大きな音:+++〕として評価を行った。また、「背面シール部からの開封性」の項目は、◎:背面シール部の蒸気抜け個所を起点としてスムーズに開封可能、○:背面シール部の蒸気抜け個所において、押出ポリエチレン層と内面材との間でデラミネーションを生じており、その部分の不織布を弱い力で破ることにより開封可能、△:背面シール部の蒸気抜け個所において、内面材(通気性シート)内部で層間剥離を生じており、その部分の不織布を強い力で破ることにより開封可能、として評価を行った。
【0039】
【0040】
表1に試験1の結果を示すとおり、実施例に係る包装用シート材および比較例2、3の包装用シート材は、比較例1の包装用シート材に比べて低温でのヒートシール性に優れており、広いシール温度範囲においてヒートシール強度が安定していた。ここで、自動充填包装において、安定したヒートシール強度を得るためには、低温ヒートシール性と広いシール温度範囲でのヒートシール強度の安定性との両方が備わっていることが重要であると一般的に知られている。これらの特徴が得られるようにするためには、圧力0.2MPa、時間0.5秒の条件でのヒートシール強度においてシール温度140℃で接着性を示すポリエチレンテレフタレートを鞘の材料とした芯鞘構造の合成繊維を内容物接触層に用いるのが好ましいことが分かった。
【0041】
また、表1に試験2の結果を示すとおり、比較例1の包装用シート材を用いて製作した包装袋は、電子レンジでの加熱時に発生する蒸気抜け音が大きく、電子レンジでの加熱後においても袋を開封しにくいという問題があった。これに対して、実施例1に係る包装用シート材や比較例2、3の包装用シート材を用いて製作した包装袋は、蒸気抜け音が小さく、また、電子レンジでの加熱後において、弱い力で袋の開封が可能であった。これらの結果から、包装体に良好な開封性を付与し、電子レンジ加熱時の蒸気抜け音を小さくするためには、圧力0.2MPa、時間0.5秒の条件でのヒートシール強度が10N/15mm程度以下であるのが適当であることが分かった。袋の開封性に関しては、イージーピールフィルムを使用した易開封性包装体や手で開けられることの多いスナック菓子向け包装体などでは、一般的にヒートシール強度が4N/15mm~13N/15mm程度に調整されることが多いが、実施例1、比較例2、3に係る包装袋は、この範囲内でヒートシール強度が推移していた。
【0042】
[試験3]
上記実施例に係る包装用シート材ならびに比較例2、3の包装用シート材を用い、そのシート材を幅20mmの帯状に切断したものを2枚、内面材同士が接合するように重ね合わせ、2枚の帯状シート材を、各端部にそれぞれ荷重30gの分銅を取り付けた状態でヒートシールし、直後にヒートシール部が荷重により剥離した距離を測定することによりホットタック性の試験を行った。測定サンプルは、ヒートシールの圧力0.2MPa、時間0.5秒、上部シールバー温度160℃、170℃、180℃および190℃、下部シールバー温度50℃、シール部の幅15mm、シール部の長さ300mm、測定方向MDの条件で作製した。
【0043】
[試験4]
上記実施例に係る包装用シート材ならびに比較例2、3の包装用シート材を用い、包装用シート材を、内面材が内方側となるようにして袋状に形成し重なり合った端縁部同士をヒートシールすることにより縦ピロー型の包装袋を製作し、自動充填包装機を使用して、袋底部をヒートシールした直後に冷凍ポテトフライを充填し、その充填時に底辺シール部が剥離して内容物が抜け出ないかどうかを確認する充填適性の試験を行った。試験3、4の結果を表2に示す。
【0044】
【0045】
試験1の上記結果からは、実施例に係る包装用シート材および比較例2、3の包装用シート材は、電子レンジ調理用包装体の材料として適切なヒートシール強度を有していたが、表2に試験結果を示すとおり、比較例2の包装用シート材を用いて製作した包装袋は、充填適性の試験で内容物が袋底部から抜け出た。これに対して、実施例、比較例3の各包装用シート材を用いて製作した包装袋は、充填適性の試験でも内容物が抜け出ることはなかった。この結果から、電子レンジで加熱調理される食品の自動充填包装に用いられる包装体として安定した充填適性を得るためには、圧力0.2MPa、時間0.5秒、荷重30g、シール幅15mm、シール長さ300mmの条件においてホットタック性が20mm以下であるのが適当であることが分かった。
【0046】
以上の試験1~4の結果から、包装体に電子レンジ調理適性(蒸気抜け音および開封性)と充填適性を付与するためには、包装用シート材の内面材をなす不織布の内容物接触層の性状として、圧力0.2MPa、時間0.5秒の条件によるヒートシール強度が13N/15mm以下で安定するシール温度領域の幅を少なくとも20℃持ち、かつ、圧力0.2MPa、時間0.5秒、荷重30g、シール幅15mm、シール長さ300mmの条件によるホットタック試験における剥離距離が20mm以下となるシール温度領域の幅を少なくとも20℃持つことが好ましく、この特徴を備えるものとして、低融点ポリエチレンテレフタレートを鞘の材料とした芯鞘構造のポリエステル繊維を内容物接触層に80%以上の割合で使用することが適切であることが分かった。
【0047】
[試験5]
上記実施例に係る包装用シート材ならびに比較例3、4の包装用シート材を用い、包装用シート材を、内面材が内方側となるようにして袋状に形成し重なり合った端縁部同士をヒートシールすることにより縦ピロー型の包装袋を製作し、この包装袋内に、水を含ませた十字折りのティッシュペーパを入れ、開口部をヒートシールして密閉した。密閉された包装袋を電子レンジ庫内に入れて加熱し、ヒートシール部の一部が剥離してその剥離部分から袋内部の蒸気が袋外部へ抜け出た後に、蒸気抜け部周辺の広範囲において、押出ポリエチレン層と内面材との間でデラミネーションが生じていないかどうかを確認した。また、押出ポリエチレン層と内面材と間の剥離強度を測定した。その結果を表3に示す。表3中、「ホットタック性の合否」の項目における比較例4については、後述するように、試験4の上記結果において充填適性が得られなかった比較例2に係る包装袋よりもホットタック性が劣ることから、不合格と判定した。
【0048】
【0049】
試験1~4の上記結果からは、比較例3の包装用シート材は、電子レンジ調理用包装体の材料として適切なヒートシール強度やホットタック性などを有していたが、表3に試験結果を示すとおり、比較例3の包装用シート材を用いて製作した包装袋は、押出ポリエチレン層と内面材(乾式不織布)との接着強度が弱いことから、蒸気抜け部周辺でのデラミネーションが発生し、外観の悪化や袋の開封のし辛さといった課題が残った。
【0050】
比較例4の包装用シート材は、比較例3の包装用シート材の構成に、ポリエチレンを鞘の材料とした芯鞘構造の繊維からなる不織布をラミネート接着層として付加したものに相当するが、このようにラミネート接着層を内面材の押出ポリエチレン層側に配したことにより、押出ポリエチレン層と内面材との接着強度が強くなり、蒸気抜け部周辺でのデラミネーションを生じなかった。一方、ラミネート接着層の介在がその厚み分だけ内容物接触層への熱伝導を阻害し、このため、低融点ポリエチレンテレフタレートを鞘の材料とした芯鞘構造のポリエステル繊維特有のホットタック性が発現されず、包装袋に充填特性を付与するために必要なホットタック性が得られなかった。なお、ラミネート接着層に使用される繊維の目付量を減らすことにより、適切なホットタック性が得られる可能性はあるが、不織布の目付量が少なくなる程、不織布の製造において製品品質を安定させることが難しくなることが知られており、さらに物性面において、繊維量の減少により押出ポリエチレン層と内面材のラミネート接着層間の剥離強度が低下することが明らかであることから、不織布が適度の目付量を保持することが望ましいことは言うまでもない。
【0051】
これに対し、実施例に係る包装用シート材は、内面材をなす不織布を複層にし、ポリエチレンを鞘の材料とした芯鞘構造の繊維をラミネート接着層に使用することにより、押出ポリエチレン層と内面材のラミネート接着層との接着強度が向上し、蒸気抜け部周辺でのデラミネーションの発生を防止することができた。さらに、ラミネート接着層に吸液性繊維(レーヨン繊維)を使用し、内容物接触層には、低融点ポリエチレンテレフタレートを鞘の材料とした芯鞘構造のポリエステル繊維を100%使用したことにより、複層の不織布であっても適切なホットタック性が得られた。
【0052】
[試験6]
上記実施例に係る包装用シート材ならびに比較例3、5の包装用シート材を用い、包装用シート材を、内面材が内方側となるようにして袋状に形成し重なり合った端縁部同士をヒートシールすることにより縦ピロー型の包装袋を製作し、この包装袋に冷凍ポテトフライを充填し、開口部をヒートシールして密閉した。密閉された包装袋を電子レンジで加熱したところ、実施例の包装袋および比較例3に係る包装袋に入れたポテトフライは、カラッとした口当たりで良好な食感であったのに対し、比較例3に係る包装袋に入れたポテトフライは、おおむね良好な食感であったが一部ベタつきが感じられた。この結果から、包装体における吸液性は、ラミネート接着層の吸液性繊維の配合量によって決まるが、加熱調理後の食品においてより良好な食感を実現するためには、総目付量25g/m2~50g/m2の不織布のいずれかの層に、レーヨン繊維やパルプ繊維等の吸液性繊維を20%以上配合することが適当であることが分かった。
【0053】
[その他]
比較例6の包装用シート材の内面材をなす通気性シートは、パルプ紙とスパンボンド不織布とを2層一体化させた構造となっているが、パルプ紙とスパンボンド不織布との接着強度が弱く、押出ラミネート工程におけるロール端部の切り落とし部(トリミング部)を起点にして、パルプ紙とスパンボンド不織布間で層剥離を生じ、機械の一部にシートが巻き付くといった不都合な現象が起こった。これに対し、実施例に係る包装用シート材では、不織布にスパンレース不織布を用いており、層同士(ラミネート接着層と内容物接触層)は容易に剥離することのできない強い力で積層されていることから、トリミングでの不具合は生じなかった。
この発明は、合成樹脂フィルムと不織布とを押出ラミネートして包装用シート材を形成しそのシート材を用いて製袋され内部に加熱調理食品を収容して密封される電子レンジ調理用包装体に係るものであって、袋を開封することなく電子レンジで袋ごと食品を加熱したときに内容物の加熱に伴って発生する蒸気を袋外部へ逃がしたり内容物から染み出る油分や水分を袋材が吸収して風味や食感の低下を抑える機能を持った包装袋を製造する分野や、加熱調理食品を製造して包装する加工食品分野などにおいて、有効に利用される。
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、電子レンジでの食品加熱時における袋外への水蒸気の排出や袋内面の吸液の機能を持った電子レンジ調理用包装体であって、蒸気抜きを確実に行うことができ、食品の加熱調理後には容易に袋を開封することが可能で、消費者のニーズに合った包装体としての簡便性を有し、また、内容物を保護するといった包装体の本来的に重要な機能を具備し、袋の密封性も良好で、包装体の製造や内容物の包装といった作業工程上の問題も特に無く、充填適性にも優れ、さらに、包装用シート材の吸液機能を担う複層構造の不織布における層間の接合強度が高くて層間剥離を起こす心配が無い包装体を提供することを目的とするものである。