(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148200
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】物品の搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 47/86 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
B65G47/86 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061110
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 敦則
(72)【発明者】
【氏名】油井 杉彦
【テーマコード(参考)】
3F072
【Fターム(参考)】
3F072AA07
3F072KC01
3F072KC06
3F072KC11
(57)【要約】
【課題】グリッパの反転に伴う摩耗粉の発生を抑えることができる物品の搬送装置を提供すること。
【解決手段】搬送装置は、駆動源により回転が可能な回転体と、回転体に支持され、かつ、それぞれが容器を把持しながら姿勢が反転可能とされる複数のグリッパと、グリッパの姿勢を反転させる反転機構と、を備える。
反転機構は、磁気反発力または磁気吸引力をグリッパに作用させることにより、グリッパの姿勢を反転させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源により回転が可能な回転体と、
前記回転体に支持され、かつ、それぞれが物品を把持しながら姿勢が反転可能とされる複数のグリッパと、
前記グリッパの前記姿勢を反転させる反転機構と、を備え、
前記反転機構は、
磁気反発力または磁気吸引力を前記グリッパに作用させることにより、前記グリッパの前記姿勢を反転させる、物品の搬送装置。
【請求項2】
前記反転機構は、
前記グリッパを回転可能に支持する反転軸を備え、
前記磁気反発力または前記磁気吸引力により前記グリッパに前記反転軸の周りに回転モーメントを生じさせることにより、前記グリッパの前記姿勢を反転させる、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記反転機構は、
それぞれの前記グリッパに設けられる可動側磁石と、
前記回転体の周囲に沿って設けられる前記グリッパの反転領域に設けられる単数または複数の固定側磁石と、を備え、
前記グリッパの移動に伴って前記可動側磁石と前記固定側磁石とが非接触で対向することにより、前記磁気反発力または前記磁気吸引力が生じる、
請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記反転機構は、
前記グリッパと所定の角度をもって前記グリッパに対して固定される反転アームと、
前記反転アームに固定される前記可動側磁石と、
を備える、
請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記反転機構は、
前記反転軸に固定される前記可動側磁石を備える、
請求項3に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記可動側磁石および前記固定側磁石の一方または双方が永久磁石からなる、
請求項3に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記可動側磁石および前記固定側磁石の一方が永久磁石からなり、
前記可動側磁石および前記固定側磁石の他方が電磁石からなる、
請求項3に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば樹脂製の容器の洗浄および水切りを行うロータリーリンサと称される装置に好適に用いられる物品の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器に飲料などの内容物を充填するシステムは、ロータリーリンサを備える。ロータリーリンサは、回転体の周縁に設けられる複数のグリッパ、チャックなどと称される把持具で容器を把持しながら、洗浄、水切りおよび乾燥などの処理を行う回転式容器洗浄装置である。ロータリーリンサは、搬送されてきた正立状態の容器の一部、例えば首部をグリッパで把持し、グリッパごと反転して倒立させる。ロータリーリンサは、容器を倒立させた後に、グリッパとともに容器を正立状態に反転させて、下流の行程に向けて搬送する。つまり、ロータリーリンサは、搬送装置としての機能を備える。
【0003】
反転機構として、特許文献1が知られている。特許文献1の反転機構は、円周方向に連なり位置が固定されるガイドレールと、ガイドレールに摺動しながらU字状のスライダと、スライダと一体となって反転動作するグリッパと、を備える。ガイドレールの円周方向における軌跡を変化させることにより、ガイドレールを摺動しながら円周方向に移動するスライダの向きを反転させることにより、グリッパを反転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようにガイドレールをスライダが摺動する反転機構は、摺動に伴ってガイドレールおよびスライダが不可避的に摩耗する。この反転機構を備えるロータリーリンサは、摩耗により生じる摩耗粉が容器の内部に入るのを阻止するための要素が必要となる。また、摩耗が進むとガイドレールおよびスライダの交換が必要になるおそれがある。
以上より、本開示は、グリッパの反転に伴う摩耗粉の発生を抑えることができる物品の搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る物品の搬送装置は、
駆動源により回転が可能な回転体と、
回転体に支持され、かつ、それぞれが物品を把持しながら姿勢が反転可能とされる複数のグリッパと、
グリッパの姿勢を反転させる反転機構と、を備える。
本開示の反転機構は、
磁気反発力または磁気吸引力をグリッパに作用させることにより、グリッパの姿勢を反転させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の搬送装置によれば、磁気反発力または磁気吸引力をグリッパに作用させることにより、グリッパの姿勢を反転させることができる。磁気反発力または磁気吸引力はいずれも反転に必要な外力を非接触でグリッパに作用させることができるので、本開示の搬送装置によれば、グリッパの姿勢を反転するのに伴って摩耗粉が発生するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る搬送装置を示す平面図である。
【
図2】実施形態に係る搬送装置を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係るグリッパを示す斜視図(PV)および側面図(SV)である。
【
図4】実施形態に係る固定側磁石の配列例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る反転領域A1および反転領域A2の例を示す平面図である。
【
図6】実施形態に係る反転領域A1および反転領域A2の他の例を示す平面図である。
【
図7】実施形態に係る反転領域A1および反転領域A2の他の例を示す平面図である。
【
図8】実施形態に係るグリッパの他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態について説明する。以下で説明される搬送装置は、物品の一例として例えばロータリーリンサにおいて洗浄対象である容器を、円周をなす搬送路を搬送しながら容器の姿勢を正立から倒立に反転させ、かつ、倒立から正立に反転させる。
なお、実施形態における容器について、正立とは注ぎ口、飲み口などの口部が上方を向く姿勢をいい、その逆に倒立とは口部が下方を向く姿勢をいう。容器を把持するグリッパ自体は、表裏が反転されるだけで、正立および倒立ということはできないが、容器との対応を明確にするために、本開示においては、正立の姿勢の容器を把持するグリッパの姿勢を正立と称し、倒立の姿勢の容器を把持するグリッパの姿勢を倒立と称することにする。
また、実施形態において、上流および下流は、容器が搬送される向きに応じて定められる。ただし、上流および下流は相対的な意味を有している。
【0010】
〔実施形態:
図1,
図2,
図3,
図4〕
実施形態に係る搬送装置1は、可動側磁石MMおよび固定側磁石FMの双方が永久磁石からなり、可動側磁石MMと固定側磁石FMが同じ磁極同士が対向するように反転機構30が構成されている。搬送装置1は、また、容器を把持するグリッパ20と一体的に回転可能とされる反転アーム33に可動側磁石MMが固定される。さらに、搬送装置1は、グリッパ20のそれぞれに可動側磁石MMが設けられ、かつ、複数の固定側磁石FMが一列に並べられている。
【0011】
[搬送装置1の全体構成:
図1,
図2参照]
搬送装置1は、上流側に設けられる搬入回転体101と下流側に設けられる搬出回転体103との間に設けられる。搬送装置1は、回転する搬入回転体101から受け取った容器を回転する搬出回転体103に受け渡すまでの間に、円弧状の経路に沿って容器を搬送しながら容器を2度反転させる。なお、搬入回転体101から搬送装置1が受け取る容器は正立している。2度の反転を行う過程で、搬送装置1がロータリーリンサを構成する場合には、容器は洗浄、乾燥などの処理が行われる。搬入回転体101および搬出回転体103は、スターホィールと称され、図示は省略されるが、その周囲にそれぞれが容器を把持する複数のグリッパが設けられ、搬送装置1と同期して回転する。
搬送装置1は、回転体10と、回転体10に支持され、かつ、それぞれが容器を把持しながら姿勢が反転可能とされる複数のグリッパ20と、グリッパ20の姿勢を反転させる反転機構30と、を備える。グリッパ20は、回転体10の回転に伴って円弧状の軌跡を移動する。
【0012】
[回転体10:
図1,
図2参照]
回転体10は、図示が省略される駆動源により回転軸10Cを中心にして回転可能とされる円形の部材である。
回転体10は、その外周側に複数のグリッパ20が設けられており、複数のグリッパ20を伴って回転する。なお、
図1および
図2において、反転に関わるグリッパ20は記載されるが、他のグリッパ20の記載は省略されている。このグリッパ20が記載されている領域が反転領域A1,A2である。反転領域A1において容器は正立から倒立に反転され、反転領域A2まで倒立のままで搬送されるが、反転領域A2において容器は倒立から正立に反転された後に、容器は搬出回転体103に受け渡れる。回転体10に支持され。の周りであって、反転領域A1,A2のそれぞれに対応して、後述する反転機構30が設けられている。
【0013】
[グリッパ20:
図3参照]
次に、グリッパ20について
図3を参照して説明する。なお、
図3は、反転前が正立の姿勢をなし、反転後が倒立の姿勢をなし、正立の姿勢が実線で示され、倒立の姿勢か仮想線で示されている。また、
図3において、矢印が反転の向きを示している。
グリッパ20は、一対の把持片21,21と、把持片21,21のそれぞれを揺動可能に支持する第1ホルダ23と、第1ホルダ23を揺動可能に支持する第2ホルダ25と、を備える。グリッパ20は、可動側磁石MMおよび固定側磁石FMによる磁力が及ぶ磁界の範囲に置かれて磁化されるのを防ぐために、把持片21,21などの各構成要素は非磁性の金属材料で構成されるのが好ましい。特に耐食性、強度を兼ね備えるオーステナイト系ステンレス鋼、例えばJIS SUS304、SUS316などを用いるが好ましい。なお、揺動とは、一方の向きに回転する動作と他方の向きに回転する動作が交互に繰り返されることをいう。
【0014】
把持片21,21は、それぞれが揺動軸22,22を介して第1ホルダ23に揺動可能に支持されている。把持片21,21は、容器を把持する閉状態と容器の把持を解除する開状態の間を往復動作、つまり揺動運動をする。把持片21,21が揺動運動するための機構はここでは省略されるが、例えばカムを用いる公知の機構を採用できる。
【0015】
第1ホルダ23は、側面視してコ字状またはC字状の形態をなしており、互いに平行をなすように対向して配置される支持体23A,23Bと、支持体23A,23Bの一方端を繋ぐ連結体23Cと、を備える。
連結体23Cを除くと支持体23A,23Bの間は空隙をなし外部に解放されている。把持片21,21は、支持体23A,23Bとの間に一部が配置され、その他の部分が開放されている支持体23A,23Bの他方端(先端)から外部に露出する。連結体23Cには反転軸29が貫通して設けられ、反転軸29は第2ホルダ25に両端支持される。
【0016】
第2ホルダ25は、側面視してコ字状またはC字状の形態をなしており、互いに平行をなすように対向して配置される支持体25A,25Bと、支持体25A,25Bの一方端を繋ぐ連結体25Cと、を備える。
連結体25Cを除くと支持体25A,25Bの間は空隙をなし外部に解放されている。第1ホルダ23は、支持体25A,25Bとの間に連結体23Cが配置され、その他の部分が開放されている支持体25A,25Bから外部に露出する。支持体25A,25Bには内側に配置される連結体23Cを幅方向Yに貫通する反転軸29が両端支持される。これにより、第1ホルダ23および第1ホルダ23に支持される把持片21,21は第2ホルダ25に対して揺動可能とされる。第1ホルダ23および把持片21,21は、
図3に示されるように、反転軸29を中心にして180度だけ回転、つまり反転する。
【0017】
[反転機構30:
図3,
図4参照]
次に、反転機構30について、
図3および
図4を参照して説明する。
反転機構30は、グリッパ20に設けられ回転体10とともに回転移動する可動側要素31と、反転領域A1および反転領域A2の各々に設けられる固定側要素37と、を備える。固定側要素37は反転領域A1(A2)において位置が固定される。反転機構30は、可動側要素31と固定側要素37の間の磁気反発力をグリッパ20に作用させることでグリッパ20を反転させる。
【0018】
[可動側要素31:
図3参照]
可動側要素31は、複数のグリッパ20のそれぞれに設けられる。可動側要素31は、固定側要素37の固定側磁石FMとの間で磁気反発力を生じさせる可動側磁石MMと、可動側磁石MMを支持する反転アーム33と、を備える。可動側磁石MMは、反転アーム33に対して自転できないように、反転アーム33に固定されている。
可動側磁石MMは、一例として直方体状の永久磁石から構成されており、表裏の一方の面側がN極、他方の面側がS極をなす。つまりこの永久磁石は板厚方向に異方性を有する。N極とS極の配置は、可動側磁石MMの表裏の逆であってもよい。ここで、
図3のSVに示されるように、可動側磁石MMと固定側磁石FMで互いに対向する面の磁極は双方ともにN極同士またはS極同士とされる。可動側磁石MMが好適な永久磁石の材質などについては後述する。
【0019】
反転アーム33は、一例として、グリッパ20における第1ホルダ23の支持体23Bに、支持体23Bと直交をなすように固定される。第1ホルダ23が正立状態にあるとき、反転アーム33は鉛直方向Vの下を向いている。第1ホルダ23が倒立状態にあるとき、反転アーム33は鉛直方向Vの上を向いている。なお、可動側磁石MMに固定側磁石FMからの磁力が作用しない自由状態においては、反転アーム33は鉛直方向Vの下向きをなし、グリッパ20は正立の状態にある。可動側磁石MMは、反転アーム33の先端の側に設けられており、第1ホルダ23が正立状態のときに回転体10の内側、つまり回転軸10Cを向く。
【0020】
固定側要素37の固定側磁石FMと可動側磁石MMとの間に磁気反発力が生じると、その磁気反発力は反転アーム33を介してグリッパ20に作用する。つまり、本開示における磁気反発力の作用は、反転アーム33を介してグリッパ20に間接的に外力として作用する。この外力は、反転アーム33が固定される第1ホルダ23が第2揺動軸29により揺動可能とされているため、反転アーム33および第1ホルダ23に回転モーメントが生じ、グリッパ20が反転される。なお、同じ磁力であれば、磁気反発力が生ずる可動側磁石MMから第2揺動軸29までの距離が長ほど、回転モーメントは大きくなる。
【0021】
[可動側要素31の動作および固定側要素37:
図4参照]
固定側要素37は、反転領域A1および反転領域A2のそれぞれに設けられる。
固定側要素37は、複数の固定側磁石FMを備える。複数の固定側磁石FMは、反転領域Aに回転体10およびグリッパ20による容器の搬送方向に沿って列をなして並べられる。ただし、複数の固定側磁石FMは、同一平面上に並べられるのではなく、グリッパ20が反転する過程で反転アーム33に取りけられた可動側磁石MMが移動すべき軌跡に対応する三次元的な軌跡に沿って並べられる。複数の固定側磁石FMは、図示が省略される、表面が連続的に傾く台に載せられると、図示されるように、その表面が水平方向Hに対して傾くために、可動側磁石MMと平行をなさない。しかし、固定側磁石FMが載せられる台の表面形状を、移動する可動側磁石MMと平行をなすようにすることもできる。
【0022】
反転領域A1(A2)における最上流(MU)において可動側磁石MMは、一例として、N極が径方向Rの外側を向き、S極が径方向Rの内側を向いている。このとき、グリッパ20は正立の姿勢にあり、反転アーム33は鉛直方向Vの下を向いており、可動側磁石MMは磁極面MFが鉛直方向Vに平行をなしている。可動側磁石MMは、最上流(MU)から最下流(MD)に向かうのにつれて、鉛直方向Vに対する傾きが大きくなりながらかつ鉛直方向Vの位置が高くなるように移動する。この例においては、最上流(MU)と最下流(MD)の中間地点(MP)において、磁極面MFが鉛直方向Vに対して直交、つまり水平方向Hと平行をなす。中間地点(MP)を過ぎると、可動側磁石MMは水平方向Hに対する傾きを大きくしながらかつ鉛直方向Vの位置が高くなるように最下流(MD)に向けて移動する。反転領域A1における最下流(MD)において可動側磁石MMは、S極が径方向Rの内側を向き、N極が径方向Rの外側を向く。このとき、グリッパ20は倒立の姿勢にあり、反転アーム33は鉛直方向Vの上向きをなす。
【0023】
複数の固定側磁石FMは、以上のように可動側磁石MMが移動、動作することを実現するために、以下のように配列される。
反転領域A1における最上流(MU)において固定側磁石FMは、N極およびS極をなす磁極面が鉛直方向Vに平行をなし、N極が径方向Rの外側を向く。固定側磁石FMは最上流(MU)の側から最下流(MD)に向かうのにつれて、鉛直方向Vに対する傾きを大きくしながらかつ鉛直方向Vの位置が高くなるように配置される。この例においては、最上流(MU)と最下流(MD)の中間地点(MP)において、固定側磁石FMも磁極面MFが鉛直方向Vに対して直交、つまり水平方向Hと平行をなす。中間地点(MP)を過ぎると、固定側磁石FMは水平方向Hに対する傾きを大きくしながらかつ鉛直方向Vの位置が高くなるように最下流(MD)に向けて配置される。反転領域A1における最下流(MD)において固定側磁石FMは、S極が径方向Rの外側を向き、N極が径方向Rの内側を向く。
最上流(MU)から最下流(MD)にかけて、互いに磁気反発力を受ける可動側磁石MMと固定側磁石FMとは所定の間隔を空けて移動する。つまり、可動側磁石MMと固定側磁石FMとが非接触の状態を維持しながら、グリッパ20は正立の姿勢から倒立の姿勢に反転する。グリッパ20の反転に伴って把持される容器も姿勢が正立から倒立に反転される。
【0024】
図4は反転領域A1における固定側磁石FMの配列および可動側磁石MMの動作を示しているが、反転領域A2においても同様に、可動側磁石MMは固定側磁石FMと所定の間隔を空けて移動し、可動側磁石MMと固定側磁石FMとが非接触の状態を維持しながら、グリッパ20は倒立の姿勢から正立の姿勢に反転する。反転領域A1と反転領域A2の間において、倒立状態となったグリッパ20はその姿勢を維持しながら移動する必要があるこの姿勢の維持については、後述する。
【0025】
[効 果]
以上説明した搬送装置1によれば、以下の効果を奏する。以下の効果は、反転機構30の要素である可動側磁石MMと固定側磁石FMとが非接触の状態を維持しながら、グリッパ20が倒立の姿勢から正立の姿勢に反転できることに基づく。
<摩耗粉の発生抑制>
可動側磁石MMと固定側磁石FMの間の磁気的な力、特に磁気反発力を用いてグリッパ20に把持される容器を反転させる。つまり、搬送装置1の反転機構30は摺動のような機械的な接触を伴うことなく反転を実現できるので、従来のガイドレールとスライダの間に生じる摩耗および摩耗粉の発生を抑えることができる。
【0026】
<反転領域の短縮可能性>
スライダとガイドレールが摺動し機械的な接触を伴う従来の反転機構は、スライダとガイドレールとの間の摩擦力が大きくなり齧り(scuffing)、こう着(sticking)などが生じてスライダの移動を妨げるおそれがある。したがって、従来の反転機構は齧り、こう着などが生じない程度にガイドレールの上向きの傾きを抑える必要があり、そうすると反転に要する領域(反転領域)が長くなる。ガイドレールの上向きの傾きは、スライダがガイドレールに沿って移動する軌跡の上向きの傾きである。
【0027】
以上に対して、本実施形態の反転機構30によれば、非接触で反転を実現できるので、齧り、こう着などを考慮する必要がない。したがって、反転機構30によれば、可動側磁石MMが移動する軌跡の上向きの傾きを大きくできるので、反転領域を短くできる。
反転領域を短くできれば、反転領域以外の他の処理が行われる領域を長くできるので、他の処理を無理なく実現できる。または、反転領域を短くできれば、当該搬送装置を構成する回転体の径を短くできるので、搬送装置1が占有するスペースを小さくできる。
【0028】
以上、本開示の実施形態を説明したが、実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0029】
[磁気反発および磁気吸引]
以上説明した実施形態において、固定側磁石FMと可動側磁石MMは、互いに対向する面側の磁極が同じであり、磁気的に互いに反発しあう性質を利用して、グリッパ20を反転させているが、本開示は磁気的に吸引し合う性質を利用して、グリッパ20を反転させることもできる。この磁気吸引力を利用する場合、二つの態様を含む。
一つ目の態様は、固定側および可動側の双方が磁石からなり、固定側磁石FMと可動側磁石MMとが、互いに対向する面側の磁極が異なる。二つ目の態様は、固定側および可動側の一方が磁石からなり他方は軟質磁性体からなる。例えば、固定側磁石FMに対して可動側であるグリッパ20に設けられる磁性体は磁石に吸着される軟質磁性体とされる。軟質磁性体の典型例は、鉄族元素(Fe,Ni,Co)のいずれか一種の金属または複数種の合金である。なお、本開示において、単に磁石というときは、永久磁石および電磁石の双方を含む概念を有している。
【0030】
また、磁気吸引力を利用する場合には、固定側磁石FMと可動側磁石MMとが直に接触しないように配慮する必要がある。接触すると、特に焼結磁石の場合には欠け、割れなどが生じるおそれがあるためである。磁気吸引力を調整することにより、固定側磁石FMと可動側磁石MMとを直に接触させないようにできる。また、固定側磁石FMと可動側磁石MMの一方または双方を可撓性の高い材料からなるケースに収容して囲うことにより、欠け、割れなどが生じるのを防いでもよい。
【0031】
[永久磁石の種類]
本開示に用いられる永久磁石の材質は問われず、フェライト永久磁石、希土類永久磁石などの公知の永久磁石から選択される。
固定側磁石FMおよび可動側磁石MMとして強い磁力が必要な場合には、希土類永久磁石を用いることが好ましい。希土類永久磁石としては、Nd、FeおよびBを主成分とするNd-Fe-B系永久磁石、SmおよびCoを主成分とするSm-Co系永久磁石が典型例として知られるが、本開示においてはいずれをも用いることができる。Nd-Fe-B系永久磁石とSm-Co系永久磁石を比べると、Nd-Fe-B系永久磁石はSm-Co系永久磁石に比べて磁気特性が高い。しかし、Nd-Fe-B系永久磁石は、Sm-Co系永久磁石に比べて耐食性が優れる。Nd-Fe-B系永久磁石はCoに比べて耐食性の劣るFeを多く含むためである。そのために、Nd-Fe-B系永久磁石を用いる場合には、メッキその他の表面処理が施されることが好ましい。メッキする場合には、Niメッキが好適に用いられる。Nd-Fe-B系永久磁石は、Sm-Co系永久磁石に比べてキュリー温度が300℃程度と低いが、ロータリーリンサを含む充填システムの環境下では、磁力の低下はほとんど問題にならない。
【0032】
永久磁石の製造プロセスも任意であり、磁石粉末を焼結して得られる焼結磁石の外に、磁石粉末をプラスチックやゴムなどのバインダと混ぜて固化成形した樹脂結合型磁石(ボンド磁石)を用いることができる。ボンド磁石のいくつかの例を以下に示す。
圧縮成形磁石:磁石粉末と熱硬化性樹脂、例えばエポキシ系樹脂を混合した磁石原料をプレス成形し、熱硬化させた永久磁石。
射出成形磁石:磁石粉末と熱可塑性樹脂を混合した磁石原料を射出成形機と金型を使用し、射出成形した永久磁石。
押出成形磁石:磁石粉末と熱可塑性樹脂を混合した磁石原料を押出成形した永久磁石。
【0033】
反転領域A1および反転領域A2に設けられる複数の固定側磁石FMは、同じ磁力を有する複数の永久磁石から構成されてもよい。この場合、可動側磁石MMとの間の磁気反発力を複数の固定側磁石FMのいずれに対しても同じにすることができる。また、反転領域A1に設けられる複数の固定側磁石FMは、異なる磁力を有する永久磁石から構成されてもよい。この場合、可動側磁石MMとの間の反発力を複数の固定側磁石FMに対して変えることができる。この場合、複数の全てを異なる磁力を有する永久磁石とすることもできるし、一例として複数の永久磁石をいくつかのグループ、例えば3つのグループに分けて、グループごとに磁力を変えてもよい。
【0034】
[固定側磁石FM、可動側磁石MMへの電磁石の利用]
以上の実施形態では固定側磁石FMおよび可動側磁石MMとして永久磁石を用いる例を説明したが、本実施形態は永久磁石に代えて固定側磁石FMおよび可動側磁石MMの一方または双方に電磁石を用いることができる。この場合、固定側磁石FMに電磁石を用いることが好ましい。電磁石は電流を供給する電線などの付帯要素があるために、固定側磁石FMに適用する方が搬送装置1の構成を簡易にできる。
磁石の磁力の強さは磁束密度(T)で表される。電磁石の磁束密度はコイルの巻き数とコイルに供給する電流値に比例する。したがって、電磁石によれば、永久磁石よりも強い磁力を発生させることができる。また、永久磁石の磁力が一定であるのに対して、供給する電流値を変えることにより、電磁石によれば、磁力の強さを変動させることができる。
【0035】
[固定側磁石FM(反転領域A1,A2)配列例:
図5参照]
以上の実施形態における反転領域A1と反転領域A2の間、倒立状態となったグリッパ20はその姿勢を維持しながら移動する必要がある。この姿勢の維持は、磁石からの磁力を用いることができるし、磁力以外の手段を用いることができる。グリッパ20に設けられる可動側要素31(反転アーム33および可動側磁石MM)には、回転体10の回転に伴い、径方向の外側に向けて遠心力が生じる。この遠心力を受ける可動側要素31は径方向の外側に傾転しようとするので、この傾転を止めて倒立状態を維持させたままで、グリッパ20を反転領域A2まで移動させる必要がある。
【0036】
磁力を用いる一例が
図5(上段)に示されている。この例は、ともに複数の固定側磁石FMが配列される反転領域A1と反転領域A2の間に、複数の固定側磁石FMが配列される姿勢維持領域A3が設けられる。姿勢維持領域A3における固定側磁石FMは、反転領域A1の最下流(MD)における固定側磁石FMと同じ姿勢、つまり、鉛直方向Vに沿っている。グリッパ20が姿勢維持領域A3を通過する間、倒立姿勢をなしているグリッパ20の反転アーム33に支持される可動側磁石MMと姿勢維持領域A3の固定側磁石FMとの間に磁気的な反発力が生ずるので、グリッパ20は倒立姿勢が維持される。姿勢維持領域A3に配列される固定側磁石FMは永久磁石および電磁石のいずれであってもよい。
【0037】
磁力以外の手段を用いる一例が
図5(下段)に示されている。この例は、ともに複数の固定側磁石FMが配列される反転領域A1と反転領域A2の間に、可動側要素31が設けられるグリッパ20に磁力を作用させないで姿勢を維持する姿勢維持領域A4が設けられる。姿勢維持領域A3において、可動側要素31(反転アーム33および可動側磁石MM)に負荷される遠心力が生じても、径方向の外側に傾転しないように、可動側要素31を備えるグリッパ20の重心の位置を調整する。つまり、それぞれのグリッパ20における重心を径方向Rの内側に変位させる。例えば、反転アーム33が鉛直方向Vに平行をなすよりも、径方向Rの内側に傾ければよい。
【0038】
[電磁石の利用:
図6]
可動側磁石MMおよび固定側磁石FMの一方または双方に電磁石を用いることができることを先に述べたが、ここでは電磁石を用いる形態の一例を示す。
図6の上側の図は、反転領域A1および反転領域A2のそれぞれの全域に複数の電磁石からなる固定側磁石FMを配列する例を示す。
図6の上側の図は、永久磁石と電磁石を組み合わせる一例を示している。反転領域A1は反転領域A11および反転領域A12から構成され、反転領域A2は反転領域A21および反転領域A22から構成される。反転領域A1および反転領域A2において、反転動作の始まりの部分を含む反転領域A11および反転領域A21は単数または複数の電磁石からなる。反転領域A1および反転領域A2において、反転領域A11および反転領域A21のそれぞれに続く反転領域A12および反転領域A22は複数の永久磁石からなる。
【0039】
正立から倒立までの反転の一連の動作および倒立から正立までの反転の一連の動作において、動作の始まりにそれ以降よりも大きな磁気反発力が必要である。そこで上述の例は、大きな磁力が得られやすい電磁石からなる固定側磁石FMを反転領域A11および反転領域A21に配列する。ただし、これは本開示においてあくまで好ましい形態にすぎず、反転動作の始まりの部分である反転領域A11および反転領域A21に永久磁石を用い、それ以降の反転領域A21および反転領域A22に電磁石を用いることを許容する。
【0040】
[反転の態様:
図7参照]
以上の実施形態において、反転領域A1と反転領域A2はそれぞれ複数の固定側磁石FMを備えており、また、二つの反転領域A1,A2を備えているが本開示は他の態様を含む。
図7の上段は、本開示の例示的な態様として、反転領域A1および反転領域A2のいずれにおいても単一の固定側磁石FMからの磁力を受けることで、グリッパ20が反転する例を示している。単一の固定側磁石FMと可動側磁石MMとの間の磁気反発力でグリッパ20を反転させるには強い磁力が必要であり、固定側磁石FMに電磁石を用いるか、永久磁石を用いるのであればNd-Fe-B系永久磁石を用いるのが好ましい。
【0041】
図7の下段は、本開示の例示的な態様として、4つの反転領域A1,A2,A3,A4を備える例を示している。つまり、本開示の搬送装置において、備えられる反転領域は二つに限るものではなく、一つまたは三つ以上から選択される。4つの反転領域A1,A2,A3,A4は、それぞれ正立から倒立までの反転、倒立から正立までの反転、正立から倒立までの反転、倒立から成立までの反転をなすものとする。また、
図7の下段はその上段を踏襲し、単一の固定側磁石FMからの磁力を受けることでグリッパ20が反転する例を示しているが、本開示においては、複数の固定側磁石FMからの磁力を受けることでグリッパ20が反転してもよい。
【0042】
[可動側磁石MMの装着形態:
図3,
図8]
以上で説明した実施形態において、
図3に示されているように、可動側磁石MMはグリッパ20の支持体23Bに垂直に設けられた反転アーム33に装着されているが、本開は可動側磁石MMの他の装着形態を含む。
【0043】
他の装着形態の一つ目は、
図8の上段に示されているように、可動側磁石MMが反転軸29に固着されている。可動側磁石MMは、横断面が矩形の棒状の永久磁石からなり、反転軸29と固定される側の反対の先端側に磁力に基づく外力が水平方向Hに加えられると可動側磁石MMに回転モーメントが生じ、可動側磁石MMは図中の反時計回りに回転する。可動側磁石MMの回転に伴って反転軸29が図中の反時計回りに回転するので、グリッパ20が反時計回りに反転される。この外力を加えるために、固定側磁石FMが設けられる。可動側磁石MMは一方の面側がS極、他方の面側がN極をなしており、固定側磁石FMは可動側磁石MMに対向する面側がS極をなしている。したがって、可動側磁石MMと固定側磁石FMとの間の磁気反発力が回転モーメント発生の起点となる外力となる。
なお、可動側磁石MMは、固定側磁石FMとの間で磁気的な反発力が生じればよく、先端側をS極、後端側をN極となるように着磁されたものであってもよい。
【0044】
他の装着形態の二つ目は、
図8の下段に示されているように、反転軸29に固着されている反転アーム33の先端に可動側磁石MMが固定されている。この可動側磁石MMは、直方体状の永久磁石からなる。二つ目の形態においても、可動側磁石MMと固定側磁石FMとの間の磁気的な反発力MFが回転モーメント発生の起点となる外力Fとなる。
【0045】
実施形態および二つの装着形態に共通するのは、グリッパ20を反転させるモーメントが磁力により生じていることである。つまり、反転機構30は、グリッパ20の反転軸29の周りに回転モーメントが生ずることにより、グリッパ20が反転される。
【0046】
[可動側磁石MM,固定側磁石FMの形状]
互いに磁気反発力または磁気吸引力が生ずる限り、可動側磁石MMおよび固定側磁石FMの形状は以上の横断面が矩形の直方体状に限るものではない。例えば、横断面が楕円形(円形含む)の永久磁石、横断面が矩形以外の多角形、例えば正六角形の永久磁石を採用できる。
【0047】
[付記]
本開示によれば、以下の搬送装置(1)が特定される。なお、特定事項2以降は、それ以前の特定事項の全てに適用できる。
<特定事項1>
物品の搬送装置(1)は、
駆動源により回転が可能な回転体(10)と、
回転体(10)の周縁において、それぞれが物品を把持しながら姿勢を反転可能な複数のグリッパ(20)と、
グリッパの姿勢を反転させる反転機構(30)と、を備える。
反転機構(30)は、
磁気反発力または磁気吸引力をグリッパ(20)に作用させることにより、グリッパ(20)の姿勢を反転させる。
【0048】
<特定事項2>
反転機構(30)は、好ましくは、
グリッパ(20)を回転可能に支持する反転軸(29)を備え、
磁気反発力または磁気吸引力によりグリッパ(20)に反転軸(29)の周りに回転モーメントを生じさせることにより、グリッパ(20)の姿勢を反転させる。
【0049】
<特定事項3>
反転機構(30)は、好ましくは、
それぞれのグリッパ(20)に設けられる可動側磁石(MM)と、
回転体(10)の周囲に沿って設けられるグリッパ(20)の反転領域に設けられる単数または複数の固定側磁石(FM)と、を備え、
グリッパ(20)の移動に伴って可動側磁石(MM)と固定側磁石(FM)とが非接触で対向することにより、磁気反発力または磁気吸引力が生じる。
【0050】
<特定事項4>
反転機構(30)は、好ましくは、
グリッパ(20)と所定の角度をもってグリッパ(20)に対して固定される反転アーム(33)と、
反転アーム(33)に固定される可動側磁石(MM)と、を備える。
【0051】
<特定事項5>
反転機構(30)は、好ましくは、反転軸(31)に固定される可動側磁石(MM)を備える。
【0052】
<特定事項6>
好ましくは、可動側磁石(MM)および固定側磁石(FM)の一方または双方が永久磁石からなる。
【0053】
<特定事項7>
好ましくは、可動側磁石(MM)および固定側磁石(FM)の一方が永久磁石からなり、
可動側磁石(MM)および固定側磁石(FM)の他方が電磁石からなる。
【符号の説明】
【0054】
1 搬送装置
10 回転体
10C 回転軸
20 グリッパ
21 把持片
22 揺動軸
23 第1ホルダ
23A,23B 支持体
23C 連結体
25 第2ホルダ
25A,25B 支持体
25C 連結体
29 反転軸
30 反転機構
31 可動側要素
33 反転アーム
37 固定側要素
101 搬入回転体
103 搬出回転体
A1,A2 反転領域
MM 可動側磁石
FM 固定側磁石
V 鉛直方向
H 水平方向
Y 幅方向