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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148201
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】半導体パワーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241010BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/48 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061114
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 勝志
(72)【発明者】
【氏名】宮路 仁崇
(57)【要約】
【課題】小型化及び高電圧化しつつ、電極の角部及び角部の周囲の電界を抑制した半導体パワーモジュールを得ること。
【解決手段】異なる電位をそれぞれが有し、隙間を介して重なり合った複数の電極を備え、複数の電極が重なり合った方向に見て、複数の電極のそれぞれは、3つ以上の角部を有し、隣り合った2つの電極における、一方の電極の角部の少なくとも一部は、他方の電極よりも外側に設けられ、他方の電極の角部の少なくとも一部は、一方の電極よりも外側に設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる電位をそれぞれが有し、隙間を介して重なり合った複数の電極を備え、
前記複数の電極が重なり合った方向に見て、
前記複数の電極のそれぞれは、3つ以上の角部を有し、
隣り合った2つの前記電極における、
一方の前記電極の角部の少なくとも一部は、他方の前記電極よりも外側に設けられ、
前記他方の電極の角部の少なくとも一部は、前記一方の電極よりも外側に設けられている半導体パワーモジュール。
【請求項2】
前記複数の電極のそれぞれは、板状に形成され、
前記複数の電極が重なり合った方向に見て、隣り合った2つの前記電極のそれぞれにおける前記角部の両側の辺の部分は、重複しており、
前記隣り合った2つの電極のそれぞれにおいて、
前記一方の角部の第一の部分が前記他方の角部の第一の部分よりも外側になり、前記他方の角部の第二の部分が前記一方の角部の第二の部分よりも外側になるように、一方の前記角部の形状と他方の前記角部の形状とが異なっている請求項1に記載の半導体パワーモジュール。
【請求項3】
前記隣り合った2つの電極のそれぞれにおける、前記角部の形状は、楕円弧形状であり、前記楕円弧形状の曲率開始点から曲率中心点までの第一距離と、曲率終了点から前記曲率中心点までの第二距離とが異なっており、
前記第一距離及び前記第二距離のうち、距離が長いほうを長半径とし、距離が短いほうを短半径とし、
前記隣り合った2つの電極のそれぞれにおける前記長半径は、前記複数の電極が重なり合った方向に見て、交差している請求項2に記載の半導体パワーモジュール。
【請求項4】
前記隣り合った2つの電極のそれぞれにおける、前記短半径に対する前記長半径の比が3以下である請求項3に記載の半導体パワーモジュール。
【請求項5】
前記複数の電極のそれぞれは、板状に形成され、前記角部の形状は、円弧形状又は楕円弧形状で、同形状であり、
前記隣り合った2つの電極のそれぞれにおける、
前記一方の電極の前記角部の両側の辺の延長線の交点を第一交点とし、前記他方の電極の前記角部の両側の辺の延長線の交点を第二交点とし、隣接した前記第一交点と前記第二交点との間の距離を交点間距離とし、
前記交点間距離は、0よりも大きい値を有し、
前記隣り合った2つの電極のそれぞれにおける前記角部の電界と前記交点間距離との関係が指数関数又は対数関数で示されている請求項1に記載の半導体パワーモジュール。
【請求項6】
前記一方の電極又は前記他方の電極の前記角部における電界を、前記一方の電極と前記他方の電極とが重なり合った方向に見て、双方の電極の前記角部が重複した時の前記角部における電界である重複電界で除した値をyとし、
前記角部の形状が円弧形状の場合は前記交点間距離を曲率半径で除した値、又は前記角部の形状が楕円弧形状の場合は前記交点間距離を長半径で除した値をxとし、
前記指数関数又は対数関数が、
y=(1-0.4)×exp(-x/5)+0.4
又は、
x=5×ln{(1-0.4)/(y-0.4)}
である請求項5に記載の半導体パワーモジュール。
【請求項7】
板状に形成され、並べて配置されたヒートスプレッダである第1のヒートスプレッダ、及び第2のヒートスプレッダと、
板状に形成され、前記第1のヒートスプレッダの一方の面に接合されたパワー半導体素子である第1のパワー半導体素子、及び前記第2のヒートスプレッダの一方の面に接合されたパワー半導体素子である第2のパワー半導体素子と、
板状に形成され、前記第1のヒートスプレッダの他方の面に絶縁層を介して接合された導電層である第1の導電層、及び前記第2のヒートスプレッダの他方の面に絶縁層を介して接合された導電層である第2の導電層と、
他方の面が、前記第1のヒートスプレッダの一方の面に接合された第1のリードフレームと、
前記ヒートスプレッダが並べられた方向に延出し、他方の面の一端が、前記第1のパワー半導体素子の一方の面に接合され、他方の面の他端が、前記第2のヒートスプレッダの一方の面に接合された第2のリードフレームと、
前記ヒートスプレッダが並べられた方向に延出し、他方の面の一端が、前記第2のパワー半導体素子の一方の面に接合され、他方の面の少なくとも一部が前記第2のリードフレームの一方の面に隙間を空けて重ねて配置された第3のリードフレームと、を備え、
前記ヒートスプレッダと前記導電層、及び前記第2のリードフレームと前記第3のリードフレームの一方又は双方が、前記隣り合った2つの電極である請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体パワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、半導体パワーモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を搭載した半導体パワーモジュールとして、半導体素子をエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で封止したトランスファーモールド型の半導体パワーモジュール、及び半導体素子をゲル状の樹脂で封止したゲル封止型の半導体パワーモジュールが用いられている。特にトランスファーモールド型の半導体パワーモジュールは、小型で信頼性に優れているため、電力制御などに広く用いられている。
【0003】
このような半導体パワーモジュールの内部では、電位差がある電極対で絶縁破壊が起きないように電極間に絶縁体を設けて電極対の絶縁を確保している。絶縁を確保する箇所は、例えば、ヒートスプレッダと冷却器との間、及び重なって配置されたリードフレームの間である。このような絶縁が必要な箇所で半導体パワーモジュールの小型化及び高電圧化を単純に進めると、これらの箇所でより高い電界が発生してしまう。特に、電極の角部は電界が高くなり、絶縁性能の低下を招くため、電極の角部では小型化及び高電圧化が困難になるという課題があった。
【0004】
また、電流が逆向きに流れるリードフレームを上下に重なるように近接配置することにより、この領域においてインダクタンスを相互に打ち消し合い、半導体パワーモジュールの内部インダクタンスを低減し、半導体パワーモジュールの使用電圧の高周波化に伴うインピーダンス損失を低減する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。この技術において、インダクタンス低減の効果が得られるまで電極を近接させる必要がある。電極を近接しすぎると電極間の電界が絶縁体の破壊電界強度以上になるため、電極間で絶縁破壊を起こす可能性がある。そのため、ある一定以上の距離を電極間で確保する必要があり、インダクタンス低減の効果が十分に得られないという課題があった。
【0005】
これらの課題を解決するために、電位差がある電極対において、一方の電極を他方の電極よりも迫り出すことによって、一方の電極の角部の周囲の電界を緩和した半導体パワーモジュールが開示されている(例えば、特許文献2)。また、一方の電極を他方の電極よりも迫り出すと共に、迫り出した部分に封止樹脂よりも低い誘電率の絶縁体を充填することで電界を緩和する半導体パワーモジュールが開示されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-137283号公報
【特許文献2】特開2019-197816号公報
【特許文献3】特開2012-9815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2における半導体パワーモジュールの構成では、迫り出した一方の電極の角部の周囲の電界を緩和することはできる。しかしながら、迫り出した一方の電極と重なった他方の電極の角部の周囲の電界は、一方の電極と他方の電極の角部が平面視で重複した場合よりも高くなる。他方の電極の角部の周囲の電界が高くなるため、他方の電極の角部の周囲で絶縁性能が低下するので、半導体パワーモジュールの小型化及び高電圧化が困難になるという課題があった。
【0008】
上記特許文献3における半導体パワーモジュールの構成では、一方の電極の角部と他方の電極とが平面視で重複しているが、封止樹脂よりも低い誘電率の絶縁体が充填されているため、電極の角部の周囲の電界を抑制することができる。しかしながら、封止樹脂よりも低い誘電率の絶縁体を充填することが必要であり、製造工程が増えてコストアップすると共に、封止樹脂に加えて絶縁体の充填が必要になるため、ボイド等の絶縁欠陥の発生確率が上がるので、半導体パワーモジュールの絶縁性能の低下のリスクが高くなるという課題があった。
【0009】
そこで、本願は、小型化及び高電圧化しつつ、電極の角部及び角部の周囲の電界を抑制した半導体パワーモジュールを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に開示される半導体パワーモジュールは、異なる電位をそれぞれが有し、隙間を介して重なり合った複数の電極を備え、複数の電極が重なり合った方向に見て、複数の電極のそれぞれは、3つ以上の角部を有し、隣り合った2つの電極における、一方の電極の角部の少なくとも一部は、他方の電極よりも外側に設けられ、他方の電極の角部の少なくとも一部は、一方の電極よりも外側に設けられているものである。
【発明の効果】
【0011】
本願に開示される半導体パワーモジュールによれば、異なる電位をそれぞれが有し、隙間を介して重なり合った複数の電極を備え、複数の電極が重なり合った方向に見て、複数の電極のそれぞれは、3つ以上の角部を有し、隣り合った2つの電極における、一方の電極の角部の少なくとも一部は、他方の電極よりも外側に設けられ、他方の電極の角部の少なくとも一部は、一方の電極よりも外側に設けられているため、一方の電極の角部が、隣り合った2つの電極が重なり合った方向に見て、他方の電極に重なっておらず、他方の電極の角部が、隣り合った2つの電極が重なり合った方向に見て、一方の電極に重なっていないので、双方の電極において、電極の角部及び角部の周囲の電界を抑制することができる。電極の角部及び角部の周囲の電界が抑制されるので、半導体パワーモジュールを高電圧化することができる。また、特許文献3のように追加の絶縁体が不要なため、製造工程が増えること及びボイド等の絶縁欠陥の発生確率が上がることがないので、半導体パワーモジュールを小型化及び高電圧化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る半導体パワーモジュールの概略を示す平面図である。
図2】実施の形態1に係る半導体パワーモジュールの概略を示す別の平面図である。
図3図1のA-A断面位置で切断した半導体パワーモジュールの概略を示す断面図である。
図4】比較例の半導体パワーモジュールの電極を示す平面図である。
図5】比較例の電極の角部の規格化した電界値を示す図である。
図6】比較例の半導体パワーモジュールの電極の周囲の等電位線図である。
図7】実施の形態1に係る半導体パワーモジュールの隣り合った2つの電極の角部を示す平面図である。
図8】実施の形態1に係る半導体パワーモジュールの電極の角部の規格化した電界値を示す図である。
図9】実施の形態2に係る半導体パワーモジュールの隣り合った2つの電極を示す平面図である。
図10】実施の形態2に係る半導体パワーモジュールの隣り合った2つの電極の角部を示す平面図である。
図11】実施の形態2に係る半導体パワーモジュールの隣り合った2つの電極の角部の移動を説明する図である。
図12】実施の形態2に係る半導体パワーモジュールの電極の角部の規格化した電界値を示す図である。
図13図11のC-C断面位置で切断した箇所における電極の周囲の等電位線図である。
図14】実施の形態2に係る半導体パワーモジュールの電極の角部の規格化した電界値の近似曲線を示す図である。
図15】実施の形態2に係る別の半導体パワーモジュールの隣り合った2つの電極を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願の実施の形態による半導体パワーモジュールを図に基づいて説明する。なお、各図において同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る半導体パワーモジュール101の概略を示す平面図で、封止樹脂12を取り除いて示した図、図2は半導体パワーモジュール101の概略を示す別の平面図で、図1から第3のリードフレーム7を取り除いて示した図、図3図1のA-A断面位置で切断した半導体パワーモジュール101の概略を示す断面図である。電力変換用の半導体パワーモジュール101は、主に所望の電力を直流ないしは交流電圧に変換する電力変換装置に搭載される。半導体パワーモジュール101は、内部にパワー半導体素子を有する。パワー半導体素子のスイッチング動作により、半導体パワーモジュール101は電力を変換する。
【0015】
<半導体パワーモジュール101>
半導体パワーモジュール101は、図3に示すように、ヒートスプレッダ、パワー半導体素子、導電層、リードフレーム、及び封止樹脂12を備える。本実施の形態では、半導体パワーモジュール101の外形は、封止樹脂12により直方体状に形成されている。ヒートスプレッダは、板状に形成され、並べて配置された第1のヒートスプレッダ2、及び第2のヒートスプレッダ5である。パワー半導体素子は、板状に形成され、第1のヒートスプレッダ2の一方の面に接合された第1のパワー半導体素子3、及び第2のヒートスプレッダ5の一方の面に接合された第2のパワー半導体素子6である。導電層は、板状に形成され、第1のヒートスプレッダ2の他方の面に絶縁層である第1の絶縁層8を介して接合された第1の導電層9、及び第2のヒートスプレッダ5の他方の面に絶縁層である第2の絶縁層10を介して接合された第2の導電層11である。
【0016】
リードフレームは、配線部材である。リードフレームは、他方の面が、第1のヒートスプレッダ2の一方の面に接合された第1のリードフレーム1と、ヒートスプレッダが並べられた方向に延出し、他方の面の一端が、第1のパワー半導体素子3の一方の面に接合され、他方の面の他端が、第2のヒートスプレッダ5の一方の面に接合された第2のリードフレーム4と、ヒートスプレッダが並べられた方向に延出し、他方の面の一端が、第2のパワー半導体素子6の一方の面に接合され、他方の面の少なくとも一部が第2のリードフレーム4の一方の面に隙間を空けて重ねて配置された第3のリードフレーム7である。
【0017】
なお、以下の説明では、図3に示す半導体パワーモジュール101の上側の面を半導体パワーモジュール101の一方の面101a、半導体パワーモジュール101の下側の面を半導体パワーモジュール101の他方の面101bと呼ぶ。ただし、一方の面101aは、半導体パワーモジュール101の使用時に上側に配置される面に限るものではなく、他方の面101bは、半導体パワーモジュール101の使用時に下側に配置される面に限るものではない。図1及び図2は、図3に示す半導体パワーモジュール101を一方の面101aの側から見た平面図であり、封止樹脂12を取り除いたときの内部構成を示す。図1から図3における破線は、封止樹脂12の外形を示している。
【0018】
半導体パワーモジュール101を構成する各部材の詳細について説明する。第1のヒートスプレッダ2及び第2のヒートスプレッダ5は、半導体パワーモジュール101全体の土台となる平板状の部材である。本実施の形態では、図1に示すように、第1のヒートスプレッダ2及び第2のヒートスプレッダ5の形状は、一方の面101aに垂直に見て、矩形である。第1のヒートスプレッダ2及び第2のヒートスプレッダ5の形状は矩形に限るものではなく、例えば、矩形以外の多角形であっても構わない。本実施の形態では、第1のヒートスプレッダ2及び第2のヒートスプレッダ5の形状が矩形であるため、第1のヒートスプレッダ2及び第2のヒートスプレッダ5のそれぞれは、一方の面101aに垂直に見て、4つの角部を有する。第1のヒートスプレッダ2における左下の角部を、角部2cとする。
【0019】
図3に示すように、第1のヒートスプレッダ2の一方の面である第一面2aに垂直な方向を高さ方向(以下、Z方向と称する)とするとき、第1のヒートスプレッダ2と第2のヒートスプレッダ5のZ方向の寸法は等しい。第1のヒートスプレッダ2の第一面2aと第2のヒートスプレッダ5の一方の面である第一面5aとは同一平面内にあり、第1のヒートスプレッダ2の他方の面である第二面2bと第2のヒートスプレッダ5の他方の面である第二面5bとは同一平面内にある。第1のヒートスプレッダ2と第2のヒートスプレッダ5の高さはこれに限るものではなく、第1のヒートスプレッダ2と第2のヒートスプレッダ5の高さが異なっていても構わない。
【0020】
ヒートスプレッダの材料には、電気的特性及び機械的特性に優れた金属が用いられる。ヒートスプレッダの材料は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、及び金(Au)のいずれか、あるいは2種以上の金属を含む合金、あるいは炭化珪素とアルミニウムとを含む複合材(Al-SiC)が好適である。ただし、第1のヒートスプレッダ2及び第2のヒートスプレッダ5の材料は、これらに限るものではない。
【0021】
第1のパワー半導体素子3は、第1のヒートスプレッダ2の第一面2aに接合され、第2のパワー半導体素子6は、第2のヒートスプレッダ5の第一面5aに接合されている。パワー半導体素子は、例えば、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ、Insulated Gate Bipolar Transistor)、FWD(Free Wheel Diode)、MOSFET(金属酸化膜型電界効果トランジスタ、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。IGBT、MOSFETは、一般的にゲート、ソース、ドレイン(あるいはゲート、エミッタ、コレクタ)の3つの電極を有する。パワー半導体素子は、ゲートに印加する電圧であるゲート電圧を変化させることにより、ソース(エミッタ)とドレイン(コレクタ)との間に流れる大電流を制御する。図では制御電極であるゲート、及びゲートに接続される制御配線は省略している。
【0022】
本実施の形態では、図2に示すように、パワー半導体素子の形状は、一方の面101aに垂直に見て、矩形であり、第1のヒートスプレッダ2に一つの第1のパワー半導体素子3が配置され、第2のヒートスプレッダ5に一つの第2のパワー半導体素子6が配置されている。パワー半導体素子の種類、形状、及び個数はこれに限るものではなく、パワー半導体素子の形状は矩形以外の形状でもよく、パワー半導体素子の個数はヒートスプレッダのそれぞれに複数配置しても構わない。
【0023】
第1のリードフレーム1は、図3に示すように、一方の端部の他方の面が第1のヒートスプレッダの第一面2aに接合され、他方の端部が封止樹脂12から露出している。第2のリードフレーム4は、一方の端部の他方の面が第1のパワー半導体素子3の一方の面の表面電極に接合され、他方の端部の他方の面が第2のヒートスプレッダ5の第一面5aに接合されている。第3のリードフレーム7は、一方の端部の他方の面が第2のパワー半導体素子6の一方の面の表面電極に接合され、他方の端部が封止樹脂12から露出している。リードフレームの材料には、電気伝導性が高い金属が用いられる。リードフレームの材料は、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、又はこれらの金属の少なくとも一方を含む合金が好適である。ただし、リードフレームの材料は、これらに限るものではない。
【0024】
第1の絶縁層8は、第1のヒートスプレッダ2の第二面2bに配置され、第2の絶縁層10は、第2のヒートスプレッダ5の第二面5bに配置されている。絶縁層の形状は、一方の面101aに垂直に見て、矩形である。絶縁層の形状は、これに限るものではない。図3に示すように、第1の絶縁層8と第2の絶縁層10のZ方向の寸法は等しく、それぞれの一方の面と他方の面は同一平面内にある。第1の絶縁層8と第2の絶縁層10の高さはこれに限るものではなく、第1の絶縁層8と第2の絶縁層10の高さが異なっていても構わない。絶縁層の材料は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、ゴム材、又はセラミックである。絶縁層の材料は、これらに限るものではなく、他の材料であっても構わない。
【0025】
第1の導電層9は、第1の絶縁層8の他方の面に配置され、第2の導電層11は、第2の絶縁層10の他方の面に配置されている。導電層の形状は、一方の面101aに垂直に見て、矩形である。導電層の形状は、これに限るものではない。図3に示すように、第1の導電層9と第2の導電層11のZ方向の寸法は等しく、それぞれの一方の面と他方の面は同一平面内にある。第1の導電層9と第2の導電層11の高さはこれに限るものではなく、第1の導電層9と第2の導電層11の高さが異なっていても構わない。導電層の材料には、電気伝導性が高い金属が用いられる。導電層の材料は、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、又はこれらの金属の少なくとも一方を含む合金等が好適である。ただし、導電層の材料は、これらに限るものではない。
【0026】
ヒートスプレッダとパワー半導体素子との接合、ヒートスプレッダとリードフレームとの接合、及びパワー半導体素子とリードフレームとの接合は、接合材を介して行われる(接合材は図示せず)。接合材には、例えば、鉛(Pb)及びスズ(Sn)を含有する高温用はんだ、銀(Ag)ナノ粒子ペースト、又は銀粒子及びエポキシ樹脂を含む導電性接着材が用いられる。なお、接合材の種類は、これらに限るものではない。
【0027】
封止樹脂12は、第1のリードフレーム1及び第3のリードフレーム7の一部を露出させた状態で、ヒートスプレッダ、パワー半導体素子、絶縁層、導電層、及びリードフレームを封止する。封止樹脂12の材料は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、又はゴム材である。また、封止樹脂12は、複数の樹脂材料、例えば、ゲル状のシリコン樹脂とエポキシ樹脂とを重ねることにより構成されても構わない。なお、封止樹脂12の種類は、これらに限るものではない。封止樹脂12により封止された半導体パワーモジュール101の外形は、直方体状であるが、半導体パワーモジュール101の外形は、直方体状に限るものではない。本実施の形態では、導電層の他方の面は封止樹脂12から露出し、導電層の他方の面は冷却器(図示せず)に接合される。このように構成することで、半導体パワーモジュール101を効率よく冷却することができる。
【0028】
次に、半導体パワーモジュール101の各構成要素が有する電位について、図3を用いて説明する。第1のヒートスプレッダ2は、第2のヒートスプレッダ5とは異なる電位を有している。例えば、第1のヒートスプレッダ2はP側電位、第2のヒートスプレッダ5はAC側電位を有している。
【0029】
リードフレームのそれぞれは、接合されたヒートスプレッダ、又は接合されたパワー半導体素子の電極と等しい電位を有する。第1のヒートスプレッダ2がP側電位、第2のヒートスプレッダ5がAC側電位を有している場合、第1のヒートスプレッダ2に接合された第1のリードフレーム1はP側電位を有し、第2のヒートスプレッダ5に接合された第2のリードフレーム4はAC側電位を有する。また、第2のパワー半導体素子6の一方の面の電極に接合された第3のリードフレーム7は、N側電位を有している。また、導電層は、接地電位を有する。
【0030】
つまり、ヒートスプレッダと導電層との間、及び第2のリードフレーム4と第3のリードフレーム7との間には電位差があり、ヒートスプレッダと導電層、及び第2のリードフレーム4と第3のリードフレーム7は、間隔を空けて重なり合う、隣り合った2つの電極である。特に、電界の特性上、これらの電極の角部には等電位線が集中しやすいため、これらの電極の角部において電界が高くなる。
【0031】
<比較例>
本願の要部の説明に先立ち、比較例について説明する。図4は比較例の半導体パワーモジュールにおける、重ねて配置された2つの電極を示す平面図、図5は比較例の電極の角部の規格化した電界値を示す図、図6は比較例の半導体パワーモジュールの電極の角部の周囲の等電位線図で、図4のB-B断面位置で切断した際の電極の角部の等電位線図である。図4において、実線で示した上部電極と破線で示した下部電極とは、隙間を空けて重ねて配置されている。上部電極と下部電極は異なる電位を有し、上部電極が高圧側、下部電極が低圧側である。電極面に垂直に見て、下部電極は上部電極よりも内側に設けられ、上部電極の角部と下部電極の角部は重なっておらず、上部電極の角部は下部電極の角部よりも外側に迫り出している。
【0032】
図5の横軸は、下部電極と上部電極の間の距離を規格化した値で、0は双方が重なっている状態である。図5の縦軸は、下部電極と上部電極の角部が重なった際の電界を1として規格化した下部電極の角部の部分(図4の星で示した部分)の電界である。図5より、下部電極を上部電極の内側に移動させると、下部電極の角部の電界は互いの角部を揃えた状態よりも電界が高くなっていることがわかる。図6より、一方の電極を他方の電極の内側に移動させた場合、内側の電極の端部に等電位線が集中して内側の電極の端部の電界が高くなることがわかる。つまり、一方の電極の角部が、電極面に垂直に見て他方の電極に重なった場合、一方の電極の角部の周囲の電界が高くなり、電界が高くなった箇所で絶縁性能が低下する。そのため、半導体パワーモジュールの小型化及び高電圧化が困難になる。
【0033】
<電極の角部の電界緩和構造>
本願の要部である電極の角部の電界緩和構造として、隣り合った2つの電極の角部の配置の構成について説明する。図7は実施の形態1に係る半導体パワーモジュール101の隣り合った2つの電極の角部を示す平面図で、図1に示した第1のヒートスプレッダ2の角部2cの周囲を拡大して示した図、図8は半導体パワーモジュール101の電極の角部の規格化した電界値を示す図である。図7では、第1のヒートスプレッダ2と第1の導電層9のみを示している。図7に示した第1の導電層9の角部を角部9cとする。
【0034】
半導体パワーモジュール101は、異なる電位をそれぞれが有し、隙間を介して重なり合った複数の電極を備える。複数の電極が重なり合った方向に見て、複数の電極のそれぞれは、3つ以上の角部を有する。本実施の形態では、複数の電極は、ヒートスプレッダ、導電層、ヒートスプレッダである。また、隣り合った2つの電極は、ヒートスプレッダと導電層、及び第2のリードフレーム4と第3のリードフレーム7である。これらの電極は、複数の電極が重なり合った方向に見て、矩形に形成されている。そのため、複数の電極が重なり合った方向に見て、これらの電極のそれぞれは、4つの角部を有する。複数の電極のそれぞれが有する角部の個数は4つに限るものではなく、3つ又は5つ以上であっても構わない。
【0035】
複数の電極が重なり合った方向に見て、隣り合った2つの電極における、一方の電極の角部の少なくとも一部は、他方の電極よりも外側に設けられ、他方の電極の角部の少なくとも一部は、一方の電極よりも外側に設けられている。このように構成することで、一方の電極の角部が、電極面に垂直に見て他方の電極に重なっておらず、他方の電極の角部が、電極面に垂直に見て一方の電極に重なっていないため、双方の電極において、電極の角部及び角部の周囲の電界を抑制することができる。電極の角部及び角部の周囲の電界が抑制されるので、半導体パワーモジュールを高電圧化することができる。また、特許文献3のように追加の絶縁体が不要なため、製造工程が増えること及びボイド等の絶縁欠陥の発生確率が上がることがないので、半導体パワーモジュールを小型化及び高電圧化することができる。以下、本実施の形態における電界緩和構造の詳細について述べる。
【0036】
複数の電極のそれぞれは、板状に形成され、図7に示すように、複数の電極が重なり合った方向に見て、隣り合った2つの電極のそれぞれにおける角部の両側の辺の部分は、重複している。隣り合った2つの電極のそれぞれにおいて、一方の角部の第一の部分が他方の角部の第一の部分よりも外側になり、他方の角部の第二の部分が一方の角部の第二の部分よりも外側になるように、一方の角部の形状と他方の角部の形状とが異なっている。図7において、一方の角部である角部2cの第一の部分2c1が他方の角部である角部9cの第一の部分9c1よりも外側になり、角部9cの第二の部分9c2が角部2cの第二の部分2c2よりも外側になっている。
【0037】
このように構成することで、複数の電極が重なり合った方向に見て、隣り合った2つの電極のそれぞれにおける角部の両側の辺の部分が重複しているため、封止樹脂12による半導体パワーモジュール101の成形時に、複雑な構造の治具を電極の固定に用いることなく、電極の角部の周囲の電界を抑制することができる。複雑な構造の治具が不要なため、半導体パワーモジュール101の生産性を向上させることができる。
【0038】
図7に示す本実施の形態では、隣り合った2つの電極のそれぞれにおける、角部2c、9cの形状は、楕円弧形状である。角部2c、9cのそれぞれにおいて、楕円弧形状の曲率開始点から曲率中心点までの第一距離と、曲率終了点から曲率中心点までの第二距離とが異なっている。第一距離及び第二距離のうち、距離が長いほうを長半径とし、距離が短いほうを短半径とする。図7において重なった辺の一方を第一辺13とし、重なった辺の他方を第二辺14とする。角部2cの長半径ACは第二辺14に平行で、角部2cの短半径BCは第一辺13に平行である。角部9cの長半径B´C´は第一辺13に平行で、角部9cの短半径A´C´は第二辺14に平行である。隣り合った2つの電極のそれぞれにおける長半径は、複数の電極が重なり合った方向に見て、交差している。
【0039】
このように構成することで、一方の角部である角部2cの第一の部分2c1が他方の角部である角部9cの第一の部分9c1よりも外側になり、角部9cの第二の部分9c2が角部2cの第二の部分2c2よりも外側になる形状を容易に作製することができる。双方の電極において、電極の角部及び角部の周囲の電界を抑制する電極の形状を容易に作製できるので、半導体パワーモジュール101の生産性を向上させることができる。また、複数の電極が重なり合った方向に見て、隣り合った2つの電極のそれぞれにおける角部の両側の辺の部分が重複しているため、封止樹脂12による半導体パワーモジュール101の成形時に、複雑な構造の治具を電極の固定に用いることなく、電極の角部の周囲の電界を抑制することができる。
【0040】
図8の横軸は、短半径に対する長半径の比である。横軸が1のときは、角部2c、9cの形状が円弧形状の場合である。図8の縦軸は、角部2c、9cが重なった際の電界、つまり角部2c、9cの形状が円弧形状の場合の電界を1として規格化した角部2cの電界である。角部9cの電界も図8と同様の傾向を示す。図8より、短半径に対する長半径の比が1より大きく3以下であれば、角部2c、9cが重なった際の電界よりも角部2c、9cの電界が小さくなることがわかる。そのため、隣り合った2つの電極のそれぞれにおける、短半径に対する長半径の比が3以下であることが望ましい。このように構成することで、角部2c、9cが重なった際の電界よりも角部2c、9cの電界を確実に小さくすることができる。
【0041】
なお、図7に示していないその他の角部においても、同様に隣り合った電極の角部の形状がそれぞれ異なっている。また、第2のリードフレーム4と第3のリードフレーム7の電極対の角部に関しても、一方の電極の角部の特に尖った部分が、電極面に垂直に見て、他方の電極が重ならないような角部の形状を形成することができる。つまり、ヒートスプレッダと導電層、及び第2のリードフレーム4と第3のリードフレーム7の一方又は双方が、隣り合った2つの電極である。このように構成することで、第2のリードフレーム4と第3のリードフレーム7との間においても、電極の角部及び角部の周囲の電界を抑制することができる。
【0042】
以上のように、実施の形態1による半導体パワーモジュール101において、異なる電位をそれぞれが有し、隙間を介して重なり合った複数の電極を備え、複数の電極が重なり合った方向に見て、複数の電極のそれぞれは、3つ以上の角部を有し、隣り合った2つの電極における、一方の電極の角部の少なくとも一部は、他方の電極よりも外側に設けられ、他方の電極の角部の少なくとも一部は、一方の電極よりも外側に設けられているため、一方の電極の角部が、隣り合った2つの電極が重なり合った方向に見て、他方の電極に重なっておらず、他方の電極の角部が、隣り合った2つの電極が重なり合った方向に見て、一方の電極に重なっていないので、双方の電極において、電極の角部及び角部の周囲の電界を抑制することができる。電極の角部及び角部の周囲の電界が抑制されるので、半導体パワーモジュール101を高電圧化することができる。また、特許文献3のように追加の絶縁体が不要なため、製造工程が増えること及びボイド等の絶縁欠陥の発生確率が上がることがないので、半導体パワーモジュール101を小型化及び高電圧化することができる。さらに、電界緩和効果が望めるため、電界が高くなるひとつの原因であるバリのバリ取り工程を削減でき、半導体パワーモジュール101のタクトタイムを短縮することができる。同時に、半導体パワーモジュール101の使用電圧の高周波化に伴うインピーダンス損失を低減することができる。
【0043】
複数の電極のそれぞれは、板状に形成され、複数の電極が重なり合った方向に見て、隣り合った2つの電極のそれぞれにおける角部の両側の辺の部分は、重複しており、隣り合った2つの電極のそれぞれにおいて、一方の角部の第一の部分が他方の角部の第一の部分よりも外側になり、他方の角部の第二の部分が一方の角部の第二の部分よりも外側になるように、一方の角部の形状と他方の角部の形状とが異なっている場合、複数の電極が重なり合った方向に見て、隣り合った2つの電極のそれぞれにおける角部の両側の辺の部分が重複しているため、封止樹脂12による半導体パワーモジュール101の成形時に、複雑な構造の治具を電極の固定に用いることなく、電極の角部の周囲の電界を抑制することができる。複雑な構造の治具が不要なため、半導体パワーモジュール101の生産性を向上させることができる。
【0044】
隣り合った2つの電極のそれぞれにおける、角部の形状は、楕円弧形状であり、楕円弧形状の曲率開始点から曲率中心点までの第一距離と、曲率終了点から曲率中心点までの第二距離とが異なっており、第一距離及び第二距離のうち、距離が長いほうを長半径とし、距離が短いほうを短半径とし、隣り合った2つの電極のそれぞれにおける長半径は、複数の電極が重なり合った方向に見て、交差している場合、一方の角部である角部2cの第一の部分2c1が他方の角部である角部9cの第一の部分9c1よりも外側になり、角部9cの第二の部分9c2が角部2cの第二の部分2c2よりも外側になる形状を容易に作製することができる。双方の電極において、電極の角部の周囲の電界を抑制する電極の形状を容易に作製できるので、半導体パワーモジュール101の生産性を向上させることができる。また、複数の電極が重なり合った方向に見て、隣り合った2つの電極のそれぞれにおける角部の両側の辺の部分が重複しているため、封止樹脂12による半導体パワーモジュール101の成形時に、複雑な構造の治具を電極の固定に用いることなく、電極の角部の周囲の電界を抑制することができる。
【0045】
隣り合った2つの電極のそれぞれにおける、短半径に対する長半径の比が3以下である場合、角部2c、9cが重なった際の電界よりも角部2c、9cの電界を確実に小さくすることができる。また、半導体パワーモジュール101において、ヒートスプレッダと導電層、及び第2のリードフレーム4と第3のリードフレーム7の一方又は双方が、上述したように角部を配置した隣り合った2つの電極である場合、ヒートスプレッダと導電層、及び第2のリードフレーム4と第3のリードフレーム7の一方又は双方の角部の周囲の電界を抑制することができる。
【0046】
実施の形態2.
実施の形態2に係る半導体パワーモジュール101について説明する。図9は実施の形態2に係る半導体パワーモジュール101の隣り合った2つの電極を示す平面図で、図1に示した第1のヒートスプレッダ2と第1の導電層9とを透過させて示した図、図10は半導体パワーモジュール101の隣り合った2つの電極の角部を示す平面図で、第1のヒートスプレッダ2の角部2cと第1の導電層9の角部9cとを透過させて示した図、図11は半導体パワーモジュールの隣り合った2つの電極の角部の移動を説明する図、図12は半導体パワーモジュール101の電極の角部の規格化した電界値を示す図、図13図11のC-C断面位置で切断した箇所における電極の周囲の等電位線図、図14は半導体パワーモジュール101の電極の角部の規格化した電界値の近似曲線を示す図である。実施の形態2に係る半導体パワーモジュール101は、隣り合った2つの電極の角部の形状が同形状に構成されている。
【0047】
複数の電極のそれぞれは、板状に形成され、角部の形状は、円弧形状又は楕円弧形状で、同形状である。隣り合った2つの電極のそれぞれにおける、一方の電極の角部の両側の辺の延長線の交点を第一交点とし、他方の電極の角部の両側の辺の延長線の交点を第二交点とし、隣接した第一交点と第二交点との間の距離を交点間距離とする。交点間距離は、0よりも大きい値を有する。隣り合った2つの電極のそれぞれにおける角部の電界と交点間距離との関係が指数関数又は対数関数で示されている。
【0048】
本実施の形態における具体的な構成について、図9図10を用いて説明する。これらの図では、複数の電極は、第1のヒートスプレッダ2と第1の導電層9である。第1のヒートスプレッダ2の角部2cと第1の導電層9の角部9cの形状は円弧形状で、同形状である。図9に示すように、第1のヒートスプレッダ2の一方の対向した2辺である辺2d1、2d2を、第1の導電層9の一方の対向した2辺である辺9d1、9d2よりも長くし、第1のヒートスプレッダ2の他方の対向した2辺である辺2d3、2d4を、第1の導電層9の他方の対向した2辺である辺9d3、9d4よりも短くする。このように構成することで、第1のヒートスプレッダ2と第1の導電層9が重なり合った方向に見て、第1のヒートスプレッダ2の角部の少なくとも一部は、第1の導電層9よりも外側に設けられ、第1の導電層9の角部の少なくとも一部は、第1のヒートスプレッダ2よりも外側に設けられる。
【0049】
第1のヒートスプレッダ2の角部2cの両側の辺の延長線の交点を第一交点D1とし、第1の導電層9の角部9cの両側の辺の延長線の交点を第二交点D2とする。第一交点D1と第二交点D2との間の距離である交点間距離Eは0よりも大きい値を有する。角部2c、9cの電界と交点間距離Eとの関係が指数関数又は対数関数で示される。
【0050】
このように構成することで、交点間距離が0よりも大きい値を有すると共に、隣り合った2つの電極のそれぞれにおける角部の電界と交点間距離Eとの関係が指数関数又は対数関数で示されるため、一方の電極の角部が、隣り合った2つの電極が重なり合った方向に見て、他方の電極に重なっておらず、他方の電極の角部が、隣り合った2つの電極が重なり合った方向に見て、一方の電極に重なっていないので、双方の電極において、電極の角部及び角部の周囲の電界を抑制することができる。また、双方の電極において、電極の角部の電界と交点間距離Eとの関係が示された指数関数又は対数関数により、電極の角部の電界と交点間距離Eとの関係を容易に調整することができる。また、角部の形状が、円弧形状又は楕円弧形状で、同形状であるため、電極の製造工程が簡略化されるので、半導体パワーモジュール101のタクトタイムを短縮することができる。以下、本実施の形態における電界緩和構造の詳細について述べる。
【0051】
図12の横軸は、図11における上部電極と下部電極との間の交点間距離を角部の形状の曲率半径,又は長半径で除して規格化した値である。横軸が0のときは、上部電極と下部電極の角部の双方が重なっている状態である。図11では、上部電極及び下部電極は円弧形状なため、交点間距離を曲率半径で除して規格化している。図12の縦軸は、下部電極と上部電極の角部が重なった際の電界を1として規格化した上部電極の角部の部分(図11の星で示した部分)の電界である。下部電極の電界についても図12と同様の傾向を示す。図12から、交点間距離が長くなることで、それぞれの電極の電界が低くなることがわかる。これは、図13に示すように、一方の電極の角部が他方の電極と重ならないことで等電位線が集中することがないためである。
【0052】
上述した指数関数及び対数関数について説明する。一方の電極又は他方の電極の角部における電界を、一方の電極と他方の電極とが重なり合った方向に見て、双方の電極の角部が重複した時の角部における電界である重複電界で除した値をyとし、角部の形状が円弧形状の場合は交点間距離を曲率半径で除した値、又は角部の形状が楕円弧形状の場合は交点間距離を長半径で除した値をxとする。このとき、上述した指数関数又は対数関数は、
y=(1-0.4)×exp(-x/5)+0.4 ・・・(1)
又は、
x=5×ln{(1-0.4)/(y-0.4)} ・・・(2)
である。
【0053】
図14図12で規格化した電界値の近似曲線と近似式を示す図である。近似式のxは、図12の横軸の値に相当する。近似式のyは、図12の縦軸の値に相当する。このように指数関数及び対数関数を(1)式又は(2)式に示した近似式で表すことで、ある所望の電界に対して、上記の近似式を満たすように交点間距離を容易に決定することができる。交点間距離が容易に決定されるので、角部に発生する電界を容易に所望の電界とすることができる。
【0054】
なお、図10に示していないその他の角部においても、同様に交点間距離が0よりも大きい値を有している。また、第2のリードフレーム4と第3のリードフレーム7の電極対の角部に関しても、交点間距離が0よりも大きい値を有することができる。つまり、ヒートスプレッダと導電層、及び第2のリードフレーム4と第3のリードフレーム7の一方又は双方が、隣り合った2つの電極である。このように構成することで、第2のリードフレーム4と第3のリードフレーム7との間においても、角部に発生する電界を容易に所望の電界とすることができる。
【0055】
交点間距離が0よりも大きい値を有した半導体パワーモジュール101の隣り合った2つの電極の構成は、図9に示した構成に限るものではなく、図15に示した構成であっても構わない。図15は実施の形態2に係る別の半導体パワーモジュール101の隣り合った2つの電極を示す平面図で、第1のヒートスプレッダ2と第1の導電層9とを透過させて示した図である。第1のヒートスプレッダ2と第1の導電層9は、第1のヒートスプレッダ2と第1の導電層9とが重なり合った方向に見て、同形状である。第1のヒートスプレッダ2と第1の導電層9とが重なり合った方向に見て、図15は、第1のヒートスプレッダ2と第1の導電層9との角部が重なり合った状態から何れかの電極を回転させて双方の角部が重ならないようにした構成である。このような配置でも、一方の電極の角部が、隣り合った2つの電極が重なり合った方向に見て、他方の電極に重なっておらず、他方の電極の角部が、隣り合った2つの電極が重なり合った方向に見て、一方の電極に重なっていない構成を形成することができる。
【0056】
以上のように、複数の電極のそれぞれが板状に形成され、角部の形状が円弧形状又は楕円弧形状で、同形状であり、隣り合った2つの電極のそれぞれにおける、一方の電極の角部の両側の辺の延長線の交点を第一交点とし、他方の電極の角部の両側の辺の延長線の交点を第二交点とし、隣接した第一交点と第二交点との間の距離を交点間距離とし、交点間距離が0よりも大きい値を有し、隣り合った2つの電極のそれぞれにおける角部の電界と交点間距離との関係が指数関数又は対数関数で示されているため、一方の電極の角部が、隣り合った2つの電極が重なり合った方向に見て、他方の電極に重なっておらず、他方の電極の角部が、隣り合った2つの電極が重なり合った方向に見て、一方の電極に重なっていないので、双方の電極において、電極の角部及び角部の周囲の電界を抑制することができる。また、双方の電極において、電極の角部の電界と交点間距離Eとの関係が示された指数関数又は対数関数により、電極の角部の電界と交点間距離Eとの関係を容易に調整することができる。また、角部の形状が、円弧形状又は楕円弧形状で、同形状であるため、電極の製造工程が簡略化されるので、半導体パワーモジュール101のタクトタイムを短縮することができる。半導体パワーモジュール101のタクトタイムが短縮されるので、半導体パワーモジュール101の生産性を向上させることができる。
【0057】
一方の電極又は他方の電極の角部における電界を、一方の電極と他方の電極とが重なり合った方向に見て、双方の電極の角部が重複した時の角部における電界である重複電界で除した値をyとし、角部の形状が円弧形状の場合は交点間距離を曲率半径で除した値、又は角部の形状が楕円弧形状の場合は交点間距離を長半径で除した値をxとし、上述した指数関数又は対数関数が、y=(1-0.4)×exp(-x/5)+0.4、又は、x=5×ln{(1-0.4)/(y-0.4)}である場合、このように指数関数及び対数関数を近似式で表すことで、ある所望の電界に対して、上記の近似式を満たすように交点間距離を容易に決定することができる。交点間距離が容易に決定されるので、角部に発生する電界を容易に所望の電界とすることができる。
【0058】
また本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0059】
1 第1のリードフレーム、2 第1のヒートスプレッダ、2a 第一面、2b 第二面、2c 角部、2c1 第一の部分、2c2 第二の部分、2d1、2d2、2d3、2d4 辺、3 第1のパワー半導体素子、4 第2のリードフレーム、5 第2のヒートスプレッダ、5a 第一面、5b 第二面、6 第2のパワー半導体素子、7 第3のリードフレーム、8 第1の絶縁層、9 第1の導電層、9c 角部、9c1 第一の部分、9c2 第二の部分、9d1、9d2、9d3、9d4 辺、10 第2の絶縁層、11 第2の導電層、12 封止樹脂、13 第一辺、14 第二辺、101 半導体パワーモジュール、101a 一方の面、101b 他方の面、D1 第一交点、D2 第二交点、E 交点間距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15