(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148203
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】欠陥検査装置及び欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20241010BHJP
C30B 29/36 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H01L21/66 L
C30B29/36 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061116
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】藤木 翔太
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 新斗
【テーマコード(参考)】
4G077
4M106
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB01
4G077BE08
4G077GA02
4G077GA06
4G077HA06
4M106AA01
4M106BA05
4M106BA07
4M106BA08
4M106CA18
4M106CB19
4M106DH12
4M106DH31
(57)【要約】
【課題】SiCエピタキシャルウェハにおけるBPDを判別することができる欠陥検査装置及び欠陥検査方法を提供する。
【解決手段】本実施形態にかかる欠陥検査装置1は、SiC基板51、SiC基板51上に形成されたバッファ層52、及び、バッファ層52上に形成されたドリフト層53を含む試料50に励起光ELを照射する照射光学系10と、試料50から発生したフォトルミネッセンス光PLを透過させる波長帯域を制御するフィルタ部20と、フィルタ部20を透過したフォトルミネッセンス光PLを検出する検出光学系30と、検出されたフォトルミネッセンス光PLから画像を形成し、形成された画像に撮像された欠陥を判別する画像処理部40と、を備え、画像処理部は、欠陥の長さが、L1=(D1+D2)/tanθかL2=D2/tanθかに基づいて欠陥を判別する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素基板、炭化ケイ素基板上に形成されたバッファ層、及び、バッファ層上に形成されたドリフト層を含む試料に励起光を照射する照射光学系と、
前記試料から発生したフォトルミネッセンス光を透過させる波長帯域を制御するフィルタ部と、
前記フィルタ部を透過した前記フォトルミネッセンス光を検出する検出光学系と、
検出された前記フォトルミネッセンス光から画像を形成し、形成された前記画像に撮像された欠陥を判別する画像処理部と、
を備え、
前記フィルタ部は、前記フォトルミネッセンス光における420nm以上430nm以下を含む前記波長帯域を透過させ、
前記ドリフト層の厚さをD1とし、前記バッファ層の厚さをD2とし、オフセット角をθとし、第1長さ及び第2長さをそれぞれ以下で示すL1及びL2とした場合に、
L1=(D1+D2)/tanθ
L2=D2/tanθ
前記画像処理部は、
前記欠陥の長さが前記第1長さを含む所定の第1範囲に属する場合に、前記欠陥を、前記バッファ層から前記ドリフト層につながる基底面転位を含む前記欠陥と判別し、
前記欠陥の前記長さが前記第2長さを含む所定の第2範囲であって、前記第1範囲と異なる前記第2範囲に属する場合に、前記欠陥を、前記バッファ層における前記基底面転位及び前記ドリフト層における刃状転位を含む前記欠陥と判別する、
欠陥検査装置。
【請求項2】
前記フィルタ部は、透過させる前記波長帯域を、420nm以上430nm以下を含む前記波長帯域から近赤外光を含む前記波長帯域に変更し、
前記検出光学系は、変更した前記フィルタ部を透過した前記近赤外光を検出し、
前記画像処理部は、
検出された前記近赤外光から近赤外画像を形成し、形成された前記近赤外画像に撮像された前記欠陥を判別する際に、第3長さを以下で示すL3とした場合に、
L3=D1/tanθ
前記欠陥の長さが前記第3長さを含む所定の第3範囲であって、前記第1範囲及び前記第2範囲と異なる前記第3範囲に属する場合に、前記欠陥を、前記ドリフト層における前記基底面転位を含む前記欠陥と判別する、
請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記第1範囲に属する前記長さの前記欠陥の数と、前記第3範囲に属する前記長さの前記欠陥の前記数とを比較することにより、判別した前記欠陥の精度を算出する、
請求項2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記第1範囲に属する複数の前記欠陥、及び、前記第2範囲に属する複数の前記欠陥を学習データとしてあらかじめ機械学習させたアルゴリズムを用いることにより、前記画像に撮像された前記欠陥を判別する、
請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記ドリフト層の不純物濃度は、1×1015cm-3以上5×1017cm-3未満であり、
前記バッファ層の前記不純物濃度は、5×1017cm-3以上1×1019cm-3以下である、
請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
炭化ケイ素基板、炭化ケイ素基板上に形成されたバッファ層、及び、バッファ層上に形成されたドリフト層を含む試料に励起光を照射するステップと、
透過させる波長帯域を制御するフィルタ部に、前記試料から発生したフォトルミネッセンス光を透過させるステップと、
前記フィルタ部を透過した前記フォトルミネッセンス光を検出するステップと、
検出された前記フォトルミネッセンス光から画像を形成するステップと、
形成された前記画像に撮像された欠陥を判別するステップと、
を備え、
前記フォトルミネッセンス光を透過させるステップにおいて、
前記フィルタ部は、前記フォトルミネッセンス光における420nm以上430nm以下を含む前記波長帯域を透過させ、
前記欠陥を判別するステップにおいて、
前記ドリフト層の厚さをD1とし、前記バッファ層の厚さをD2とし、オフセット角をθとし、第1長さ及び第2長さをそれぞれ以下で示すL1及びL2とした場合に、
L1=(D1+D2)/tanθ
L2=D2/tanθ
前記欠陥の長さが前記第1長さを含む所定の第1範囲に属する場合に、前記欠陥を、前記バッファ層から前記ドリフト層につながる基底面転位を含む前記欠陥と判別し、
前記欠陥の前記長さが前記第2長さを含む所定の第2範囲であって、前記第1範囲と異なる前記第2範囲に属する場合に、前記欠陥を、前記バッファ層における前記基底面転位及び前記ドリフト層における刃状転位を含む前記欠陥と判別する、
欠陥検査方法。
【請求項7】
前記欠陥を判別するステップの後で、前記フィルタ部に透過させる前記波長帯域を、420nm以上430nm以下を含む前記波長帯域から近赤外光を含む前記波長帯域に変更するステップと、
変更した前記フィルタ部を透過した近赤外光を検出するステップと、
検出された前記近赤外光から近赤外画像を形成するステップと、
形成された前記近赤外画像に撮像された前記欠陥を判別するステップと、
をさらに備え、
前記近赤外画像に撮像された前記欠陥を判別するステップにおいて、
第3長さを以下で示すL3とした場合に、
L3=D1/tanθ
前記近赤外画像に撮像された前記欠陥の長さが前記第3長さを含む所定の第3範囲であって、前記第1範囲及び前記第2範囲と異なる前記第3範囲に属する場合に、前記欠陥を、前記ドリフト層における前記基底面転位を含む前記欠陥と判別する、
請求項6に記載の欠陥検査方法。
【請求項8】
前記第1範囲に属する前記長さの前記欠陥の数と、前記第3範囲に属する前記長さの前記欠陥の前記数とを比較することにより、判別した前記欠陥の精度を算出するステップをさらに備えた
請求項7に記載の欠陥検査方法。
【請求項9】
前記欠陥を判別するステップにおいて、
前記第1範囲に属する複数の前記欠陥、及び、前記第2範囲に属する複数の前記欠陥を学習データとしてあらかじめ機械学習させたアルゴリズムを用いることにより、前記画像に撮像された前記欠陥を判別する、
請求項6に記載の欠陥検査方法。
【請求項10】
前記ドリフト層の不純物濃度は、1×1015cm-3以上5×1017cm-3未満であり、
前記バッファ層の前記不純物濃度は、5×1017cm-3以上1×1019cm-3以下である、
請求項6に記載の欠陥検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、欠陥検査装置及び欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(Silicon Carbide、以下、SiCと呼ぶ。)は、優れた物理的特性及び熱的特性を有するので、高耐圧で低損失の半導体デバイスの製造にとって有用である。SiCエピタキシャルウェハは、SiC基板上にSiCを含むエピタキシャル層を形成したウェハである。SiCエピタキシャルウェハを用いた半導体デバイスの製造工程において、製造上の歩留りを改良するためには、エピタキシャル層に存在する欠陥を検出すること及び検出された欠陥を分類することが極めて重要である。特に、基底面転位(Basal Plane Dislocation、以下、BPDと呼ぶ。)は、SiCエピタキシャルウェハに半導体デバイスを製造する際、半導体デバイスの性能に致命的な悪影響を及ぼすキラー欠陥となる。このため、BPDを他の欠陥から区別して検出することが強く望まれている。
【0003】
SiC基板上にSiCを含むドリフト層を形成させたSiCエピタキシャルウェハにおいて、ドリフト層におけるBPDの発生を防ぐために、ドリフト層とSiC基板との間に高濃度に不純物をドーピングしたバッファ層を挟んだ構造をとる場合がある。このような構造とすることにより、バッファ層におけるBPDを、バッファ層とドリフト層との界面で、貫通刃状転位(Threading Edge Dislocation、以下、TEDと呼ぶ。)に変換することができる。キラー欠陥となるのは、一般的に、ドリフト層におけるBPDである。したがって、バッファ層におけるBPDをドリフト層でTEDに変換することにより、ドリフト層におけるキラー欠陥の発生を抑制することができる。
【0004】
しかしながら、長期信頼性を考慮すると、バッファ層とドリフト層との界面で、TEDに変換されたバッファ層のみに存在するBPDも検出することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015―119056号公報
【特許文献2】特許第6999212号公報
【特許文献3】特開2019-099438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、SiCエピタキシャルウェハに紫外光を照射し、発生したフォトルミネッセンス光から欠陥を検出する欠陥検査装置が記載されている。特許文献1の欠陥検査装置は、フォトルミネッセンス光における近赤外光の波長帯域の画像から、ドリフト層におけるBPDを検出する。しかしながら、特許文献1の欠陥検査装置は、バッファ層におけるBPDを検出することが困難である。
【0007】
特許文献2には、ドリフト層及びバッファ層におけるBPDを、ショックレー型積層欠陥(Shockley type Stachking Fault、以下、SSFと呼ぶ。)に変換し、変換したSSFからのフォトルミネッセンス光によってBPDを検出することが記載されている。特許文献2の手法は、バッファ層におけるBPDを検出することができるが、BPDをSSFに変換する必要があり、検査にかかるプロセスが非常に煩雑である。
【0008】
特許文献3には、高濃度のエピタキシャル層におけるBPDを、430nm以下の波長帯域を透過させたフォトルミネッセンス光により検出することが記載されている。特許文献3の欠陥検査装置は、高濃度のエピタキシャル層におけるBPDを、周囲に比べて黒い線状の欠陥として検出することができる。しかしながら、検出されたBPDとドリフト層におけるTEDとの関係については何ら記載されていない。
【0009】
SiCエピタキシャルウェハにおいて、BPDがバッファ層からドリフト層までつながっているのか、バッファ層のみに存在するのか判別することが所望されている。
【0010】
本開示は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、SiCエピタキシャルウェハにおけるBPDを判別することができる欠陥検査装置及び欠陥検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態の一態様にかかる欠陥検査装置は、炭化ケイ素基板、炭化ケイ素基板上に形成されたバッファ層、及び、バッファ層上に形成されたドリフト層を含む試料に励起光を照射する照射光学系と、前記試料から発生したフォトルミネッセンス光を透過させる波長帯域を制御するフィルタ部と、前記フィルタ部を透過した前記フォトルミネッセンス光を検出する検出光学系と、検出された前記フォトルミネッセンス光から画像を形成し、形成された前記画像に撮像された欠陥を判別する画像処理部と、を備え、前記フィルタ部は、前記フォトルミネッセンス光における420nm以上430nm以下を含む前記波長帯域を透過させ、前記ドリフト層の厚さをD1とし、前記バッファ層の厚さをD2とし、オフセット角をθとし、第1長さ及び第2長さをそれぞれ以下で示すL1及びL2とした場合に、
L1=(D1+D2)/tanθ
L2=D2/tanθ
前記画像処理部は、前記欠陥の長さが前記第1長さを含む所定の第1範囲に属する場合に、前記欠陥を、前記バッファ層から前記ドリフト層につながる基底面転位を含む前記欠陥と判別し、前記欠陥の前記長さが前記第2長さを含む所定の第2範囲であって、前記第1範囲と異なる前記第2範囲に属する場合に、前記欠陥を、前記バッファ層における前記基底面転位及び前記ドリフト層における刃状転位を含む前記欠陥と判別する。
【0012】
上記の欠陥検査装置では、前記フィルタ部は、透過させる前記波長帯域を、420nm以上430nm以下を含む前記波長帯域から近赤外光を含む前記波長帯域に変更し、前記検出光学系は、変更した前記フィルタ部を透過した前記近赤外光を検出し、前記画像処理部は、検出された前記近赤外光から近赤外画像を形成し、形成された前記近赤外画像に撮像された前記欠陥を判別する際に、第3長さを以下で示すL3とした場合に、
L3=D1/tanθ
前記欠陥の長さが前記第3長さを含む所定の第3範囲であって、前記第1範囲及び前記第2範囲と異なる前記第3範囲に属する場合に、前記欠陥を、前記ドリフト層における前記基底面転位を含む前記欠陥と判別してもよい。
【0013】
上記の欠陥検査装置では、前記画像処理部は、前記第1範囲に属する前記長さの前記欠陥の数と、前記第3範囲に属する前記長さの前記欠陥の前記数とを比較することにより、判別した前記欠陥の精度を算出してもよい。
【0014】
上記の欠陥検査装置では、前記画像処理部は、前記第1範囲に属する複数の前記欠陥、及び、前記第2範囲に属する複数の前記欠陥を学習データとしてあらかじめ機械学習させたアルゴリズムを用いることにより、前記画像に撮像された前記欠陥を判別してもよい。
【0015】
上記の欠陥検査装置では、前記ドリフト層の不純物濃度は、1×1015cm-3以上5×1017cm-3未満であり、前記バッファ層の前記不純物濃度は、5×1017cm-3以上1×1019cm-3以下でもよい。
【0016】
本実施形態の一態様にかかる欠陥検査方法は、炭化ケイ素基板、炭化ケイ素基板上に形成されたバッファ層、及び、バッファ層上に形成されたドリフト層を含む試料に励起光を照射するステップと、透過させる波長帯域を制御するフィルタ部に、前記試料から発生したフォトルミネッセンス光を透過させるステップと、前記フィルタ部を透過した前記フォトルミネッセンス光を検出するステップと、検出された前記フォトルミネッセンス光から画像を形成するステップと、形成された前記画像に撮像された欠陥を判別するステップと、を備え、前記フォトルミネッセンス光を透過させるステップにおいて、前記フィルタ部は、前記フォトルミネッセンス光における420nm以上430nm以下を含む前記波長帯域を透過させ、前記欠陥を判別するステップにおいて、前記ドリフト層の厚さをD1とし、前記バッファ層の厚さをD2とし、オフセット角をθとし、第1長さ及び第2長さをそれぞれ以下で示すL1及びL2とした場合に、
L1=(D1+D2)/tanθ
L2=D2/tanθ
前記欠陥の長さが前記第1長さを含む所定の第1範囲に属する場合に、前記欠陥を、前記バッファ層から前記ドリフト層につながる基底面転位を含む前記欠陥と判別し、前記欠陥の前記長さが前記第2長さを含む所定の第2範囲であって、前記第1範囲と異なる前記第2範囲に属する場合に、前記欠陥を、前記バッファ層における前記基底面転位及び前記ドリフト層における刃状転位を含む前記欠陥と判別する。
【0017】
上記の欠陥検査方法では、前記欠陥を判別するステップの後で、前記フィルタ部に透過させる前記波長帯域を、420nm以上430nm以下を含む前記波長帯域から近赤外光を含む前記波長帯域に変更するステップと、変更した前記フィルタ部を透過した近赤外光を検出するステップと、検出された前記近赤外光から近赤外画像を形成するステップと、形成された前記近赤外画像に撮像された前記欠陥を判別するステップと、をさらに備え、前記近赤外画像に撮像された前記欠陥を判別するステップにおいて、第3長さを以下で示すL3とした場合に、
L3=D1/tanθ
前記近赤外画像に撮像された前記欠陥の長さが前記第3長さを含む所定の第3範囲であって、前記第1範囲及び前記第2範囲と異なる前記第3範囲に属する場合に、前記欠陥を、前記ドリフト層における前記基底面転位を含む前記欠陥と判別してもよい。
【0018】
上記の欠陥検査方法では、前記第1範囲に属する前記長さの前記欠陥の数と、前記第3範囲に属する前記長さの前記欠陥の前記数とを比較することにより、判別した前記欠陥の精度を算出するステップをさらに備えてもよい。
【0019】
上記の欠陥検査方法では、前記第1範囲に属する複数の前記欠陥、及び、前記第2範囲に属する複数の前記欠陥を学習データとしてあらかじめ機械学習させたアルゴリズムを用いることにより、前記画像に撮像された前記欠陥を判別してもよい。
【0020】
上記の欠陥検査方法では、前記ドリフト層の不純物濃度は、1×1015cm-3以上5×1017cm-3未満であり、前記バッファ層の前記不純物濃度は、5×1017cm-3以上1×1019cm-3以下でもよい。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、SiCエピタキシャルウェハにおけるBPDを判別することができる欠陥検査装置及び欠陥検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態1に係る欠陥検査装置を例示した構成図である。
【
図2】実施形態1に係る欠陥検査装置において、検査対象となる試料を例示した断面図である。
【
図3】実施形態1に係る欠陥検査装置において、画像処理部が形成した画像を例示した模式図である。
【
図4】実施形態1に係る欠陥検査方法を例示したフローチャート図である。
【
図5】実施形態2に係る欠陥検査装置を例示した構成図である。
【
図6】実施形態2に係る欠陥検査装置において、画像処理部が形成した画像を例示した模式図である。
【
図7】実施形態1に係る欠陥検査装置及び実施形態2に係る欠陥検査装置で撮像された欠陥におけるBPDの見え方を例示した図である。
【
図8】実施形態2に係る欠陥検査方法を例示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明は、本開示の好適な実施形態を示すものであって、本開示の範囲が以下の実施形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0024】
(実施形態1)
実施形態1に係る欠陥検査装置及び欠陥検査方法を説明する。
図1は、実施形態1に係る欠陥検査装置1を例示した構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る欠陥検査装置1は、照射光学系10、フィルタ部20、検出光学系30、画像処理部40を備えている。
【0025】
照射光学系10は、ステージ60上に載置された試料50に励起光ELを照射する。照射光学系10は、光源11を含んでもよい。また、照射光学系10は、フィルタ、ミラー及びレンズ等の光学部材を含んでもよい。照射光学系10は、試料50となるSiCエピタキシャルウェハに向けて励起光ELを照射する。励起光ELは、例えば、SiCエピタキシャルウェハからフォトルミネッセンス光PLを発生させる紫外光を含んでもよい。すなわち、励起光ELは、SiCの禁制帯幅のエネルギーよりも大きいエネルギーを有している。
【0026】
例えば、励起光ELは、He-Cdレーザから生成される320nmの波長を有するレーザ光でもよいし、YAGレーザから生成される266nmの波長を有する第4高調波レーザ光でもよい。また、励起光ELは、水銀キセノンランプから生成される紫外光でもよい。照射光学系10は、フィルタによって、励起光ELにおける所定の波長帯域を透過させてもよい。例えば、光源11が水銀キセノンランプの場合には、励起光ELは、フィルタを透過させた313nmの波長を有するビームを含んでもよい。照射光学系10は、光源11から出射した励起光ELが試料50を照射するまでの光路上に、ミラー及びレンズ等の光学部材を有してもよい。例えば、ガルバノミラー等を用いることにより、励起光ELで試料50の検査面を走査させてもよい。または、ステージ60を移動させることにより、励起光ELで試料50の検査面を走査させてもよい。
【0027】
ここで、欠陥検査装置1の説明の便宜のために、XYZ直交座標軸系を導入する。ステージ60の上面に直交する方向をZ軸方向とし、ステージ60の上面に平行な面をXY面とする。例えば、+Z軸方向を上方とし、-Z軸方向を下方とする。なお、上方及び下方は、欠陥検査装置1の説明の便宜のための方向であり、実際の欠陥検査装置1が配置される方向を示すものではない。
【0028】
フィルタ部20は、試料50から発生したフォトルミネッセンス光PLを透過させる波長帯域を制御する。具体的には、例えば、フィルタ部20は、フォトルミネッセンス光PPにおける420nm以上430nm以下を含む波長帯域を透過させるフィルタ21を有してもよい。フィルタ21は、フォトルミネッセンス光P1における420nm以上430nm以下を含む波長帯域を透過させる。例えば、フィルタ21は、中心波長425±13nmを含む波長帯域を透過させてもよいし、中心波長425±5nmを含む波長帯域を透過させてもよい。
【0029】
また、フィルタ部20は、近赤外光を含む波長帯域を透過させるフィルタ22を含んでもよい。フィルタ22は、例えば、700nm~1100nmを含む波長帯域を透過させる。フィルタ部20は、検出する波長帯域に応じて、フィルタ21またはフィルタ22を選択してもよい。
【0030】
検出光学系30は、検出器31を含む。検出光学系30は、フィルタ部20を透過したフォトルミネッセンス光P1を検出する。なお、検出光学系30は、検出器31の他に、フィルタ部20を透過したフォトルミネッセンス光P1を検出器31に導くレンズ及びミラー等の光学部材を含んでもよい。
【0031】
検出器31は、CCD(Charged-coupled devices)、CMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)等の固体撮像素子を二次元アレイ状に配列したイメージセンサを含んでもよいし、複数の撮像素子が一列に並んだラインセンサを含んでもよい。
【0032】
画像処理部40は、検出光学系30によって検出されたフォトルミネッセンス光PLから画像を形成する。そして、画像処理部40は、形成された画像に撮像された欠陥を判別する。画像処理部40は、例えば、CPU、メモリ、ストレージ等を有するコンピュータである。画像処理部40は、画像を表示させるためのディスプレイ等を含む入出力手段を有してもよい。
【0033】
図2は、実施形態1に係る欠陥検査装置1において、検査対象となる試料50を例示した断面図である。
図2に示すように、試料50は、SiC基板51、バッファ層52及びドリフト層53を含む。試料50は、SiC基板51、バッファ層52及びドリフト層53が積層された構造を有する。バッファ層52は、SiC基板51上に形成され、ドリフト層53は、バッファ層52上に形成されている。よって、バッファ層52は、SiC基板51とドリフト層53との間に配置されている。
【0034】
SiC基板51は、エピタキシャル成長法によるバッファ層52及びドリフト層53の薄膜製造のための下地となる。SiC基板51は、SiC単結晶(4H-SiC)を含む基板である。SiC基板51の作製方法は、特に問わない。例えば、SiC基板51は、昇華法等で得られたSiCインゴットをスライスすることで得られる。SiC基板51には、BPDが(0001)面(c面)に沿って存在してもよい。
【0035】
バッファ層52及びドリフト層53は、エピタキシャル成長法によりSiC基板51上に堆積されたSiC単結晶(4H-SiC)を含む薄膜である。バッファ層52及びドリフト層53を含むエピタキシャル層は、具体的には、例えば、(0001)面から<11-20>方向にオフセット角を有する面を成長面とするSiC基板51上に形成されてもよい。エピタキシャル層は、SiC基板51上にステップフロー成長(原子ステップからの横方向成長)させた4H-SiCとしてもよい。
【0036】
バッファ層52は、SiC基板51上に高濃度の不純物を含むエピタキシャル層をエピタキシャル成長させた層である。ドープする不純物は、窒素、ホウ素、チタン、バナジウム、アルミニウム、ガリウム、リン等を用いてもよい。バッファ層52は、例えば、パワーデバイスにおいてドリフト層53への小数キャリアの到達を抑制するように機能する。バッファ層52を積層することで、BPDを有するバイポーラデバイスの順方向に電流を流した場合に、その少数キャリアがSiC基板51に存在するBPDまで到達することを防ぐことができる。
【0037】
ドリフト層53は、バッファ層52上に低濃度の不純物を含むエピタキシャル層をエピタキシャル成長させた層である。ドープする不純物は、前述のバッファ層52と同様に、窒素、ホウ素、チタン、バナジウム、アルミニウム、ガリウム、リン等を用いてもよい。ドリフト層53は、不純物がバッファ層52よりも低濃度にドープされており、例えば、SiC-MOSFETのドリフト層として機能する。
【0038】
バッファ層52の不純物濃度は、1×1018cm-3以上が好ましい。例えば、バッファ層52の不純物濃度は、5×1017cm-3以上1×1019cm-3以下である。ドリフト層の不純物濃度は、1×1016cm-3程度が好ましい。例えば、ドリフト層の不純物濃度は、1×1015cm-3以上5×1017cm-3未満である。
【0039】
バッファ層52の厚さD2は、例えば、1μmである。なお、バッファ層52の厚さD2は、1μmに限らない。ドリフト層53の厚さD1は、例えば、10μmである。なお、ドリフト層53の厚さD1は、10μmに限らない。ドリフト層53の厚さD1は、バッファ層52の厚さD2と異なることが望ましい。例えば、ドリフト層53の厚さD1は、バッファ層52の厚さD2よりも大きいことが望ましいが、これにこだわらない。
【0040】
試料50では、BPDの一部は、ドリフト層53まで継承されている。つまり、試料50に形成される欠陥K1は、例えば、バッファ層52からドリフト層53につながるBPDを含む。具体的には、欠陥K1は、SiC基板51からバッファ層52を通り、ドリフト層53に達するBPDを含んでいる。このような欠陥K1において、BPDが延びる方向とSiC基板51の上面(基底面と呼ぶ。)とのなす角は、オフセット角θである。つまり、BPDは、基底面に対してオフセット角θの方向に延びている。ドリフト層53まで継承されたBPDは、試料50への励起光ELの照射により生成されるキャリアの再結合により波長710nmのフォトルミネッセンス光PLを発光する。
【0041】
一方、BPDがバッファ層52とドリフト層53との界面54においてTEDに変換される場合がある。この場合には、試料50に形成される欠陥K2は、バッファ層52におけるBPD及びドリフト層53におけるTEDを含む。具体的には、欠陥K2は、バッファ層52におけるBPD、及び、バッファ層52とドリフト層53との界面54でBPDから変換されたTEDを含んでいる。欠陥K2において、バッファ層52におけるBPDが延びる方向と基底面とのなす角は、オフセット角θである。界面54で変換される前のバッファ層102中のBPDは、バッファ層52におけるキャリア寿命が短いため、試料50に励起光ELが照射されてもフォトルミネッセンス光PLを発光しない。
【0042】
図3は、実施形態1に係る欠陥検査装置1において、画像処理部40が形成した画像を例示した模式図である。
図3は、試料50のフォトルミネッセンス光PLから形成された+Z軸方向から撮像された画像である。例えば、
図3は、検査時の1視野を示しており、1.75mm□または1.5mm□である。
【0043】
図3に示すように、420nm以上430nm以下を含む波長帯域を透過させたフォトルミネッセンス光PLから画像を形成した場合において、画像には、周囲に比べて暗く(黒く)長い線状の欠陥及び短い線状の欠陥が観察される。例えば、黒い線状の欠陥は、Y軸方向に延びている。Y軸方向において、長い線状の欠陥の長さを第1長さL1と呼ぶ。短い線状の欠陥の長さを第2長さL2と呼ぶ。
【0044】
ここで、ドリフト層53の厚さをD1とし、バッファ層52の厚さをD2とし、オフセット角をθとし、第1長さ及び第2長さをそれぞれ以下の(1)式及び(2)式で示すL1及びL2とする。なお、ドリフト層53の厚さD1と、バッファ層52の厚さD2とは異なることが望ましいが、同じ厚さでもよい。
【0045】
L1=(D1+D2)/tanθ (1)
L2=D2/tanθ (2)
【0046】
そうすると、長さが第1長さL1の欠陥は、バッファ層52からドリフト層53につながるBPDを含む欠陥K1に対応する。長さが第2長さL2の欠陥は、バッファ層52におけるBPD及びドリフト層53におけるTEDを含む欠陥K2に対応する。そこで、画像処理部40は、画像に撮像された欠陥の長さが第1長さL1の場合に、当該欠陥を、バッファ層52からドリフト層53につながるBPDを含む欠陥K1と判別する。一方、画像処理部40は、画像に撮像された欠陥の長さが第2長さの場合に、当該欠陥を、バッファ層52におけるBPD及びドリフト層53におけるTEDを含む欠陥K2と判別する。
【0047】
なお、欠陥K1の長さは、第1長さL1に限らず、バッファ層52及びドリフト層53を形成する際に発生する厚さのバラツキ等による不可避の誤差を含んだ第1長さL1を含んでもよい。欠陥K2の長さも同様に、第2長さL2に限らず、不可避の誤差を含んだ第2長さL2を含んでもよい。不可避の誤差は、バッファ層52及びドリフト層53の形成時の厚さ等の条件によるが、例えば、第1長さL1及び第2長さL2の±10%でもよいし、±5%でもよい。
【0048】
したがって、画像処理部40は、画像に撮像された欠陥の長さが第1長さL1を含む所定の第1範囲に属する場合に、当該欠陥を、バッファ層52からドリフト層53につながるBPDを含む欠陥K1と判別する。また、画像処理部40は、画像に撮像された欠陥の長さが第2長さL2を含む所定の第2範囲であって、第1範囲と異なる第2範囲に属する場合に、当該欠陥を、バッファ層52におけるBPD及びドリフト層53におけるTEDを含む欠陥K2と判別する。第1範囲は、不可避の誤差を含んだ第1長さL1の範囲であり、例えば、(第1長さ-不可避の誤差)から(第1長さL1+不可避の誤差)までの範囲である。第2範囲は、不可避の誤差を含んだ第2長さL2の範囲であり、例えば、(第2長さL2-不可避の誤差)から(第2長さL2+不可避の誤差)までの範囲である。
【0049】
欠陥の長さの算出方法は、画像処理部40によって欠陥として検出された領域のピクセル数から算出してもよい。また、画像処理部40は、第1範囲に属する複数の欠陥K1、及び、第2範囲に属する複数の欠陥K2を学習データとしてあらかじめ機械学習させたアルゴリズムを用いることにより、画像に撮像された欠陥を判別してもよい。
【0050】
次に、本実施形態の欠陥検査方法を説明する。
図4は、実施形態1に係る欠陥検査方法を例示したフローチャート図である。
図4に示すように、本実施形態の欠陥検査方法は、試料50に励起光ELを照射するステップS11、フィルタ部20にフォトルミネッセンス光PLを透過させるステップS12、フォトルミネッセンス光PLを検出するステップS13、フォトルミネッセンス光PLから画像を形成するステップS14、及び、画像に撮像された欠陥を判別するステップS15を備えている。
【0051】
まず、ステップS11に示すように、試料50に励起光ELを照射する。試料50は、SiC基板51、SiC基板51上に形成されたバッファ層52、及び、バッファ層52上に形成されたドリフト層53を含んでいる。ドリフト層の不純物濃度は、例えば、1×1015cm-3以上5×1017cm-3未満であり、バッファ層の前記不純物濃度は、例えば、5×1017cm-3以上1×1019cm-3以下である。よって、バッファ層52の不純物濃度は、ドリフト層53の不純物濃度よりも大きい。励起光ELは、照射光学系10によって照射される。照射光学系10は、励起光ELで試料50を走査してもよい。ステージ60の移動によって、励起光ELで試料50を走査してもよい。励起光ELを照射された試料50は、フォトルミネッセンス光PLを発生する。
【0052】
次に、ステップS12に示すように、フィルタ部20に試料50から発生したフォトルミネッセンス光PLを透過させる。具体的には、透過させる波長帯域を制御するフィルタ部20に、試料50から発生したフォトルミネッセンス光PLを透過させる。例えば、フィルタ部20は、フィルタ21によって、フォトルミネッセンス光PLにおける420nm以上430nm以下を含む波長帯域を透過させる。
【0053】
次に、ステップS13に示すように、フィルタ部20を透過したフォトルミネッセンス光P1を検出する。例えば、検出光学系30における検出器31は、フィルタ21を透過したフォトルミネッセンス光PLを検出する。
【0054】
次に、ステップS14に示すように、検出されたフォトルミネッセンス光PLから画像を形成する。具体的には、画像処理部40は、検出器31を含む検出光学系30によって検出されたフォトルミネッセンス光PLから画像を形成する。
【0055】
次に、ステップS15に示すように、形成された画像に撮像された欠陥を判別する。例えば、画像処理部40は、画像に撮像された欠陥の長さが第1長さL1を含む所定の第1範囲に属する場合に、当該欠陥を、バッファ層52からドリフト層53につながるBPDを含む欠陥K1と判別してもよい。また、画像処理部40は、画像に撮像された欠陥の長さが第2長さL2を含む所定の第2範囲であって、第1範囲と異なる第2範囲に属する場合に、当該欠陥を、バッファ層52におけるBPD及びドリフト層53におけるTEDを含む欠陥K2と判別してもよい。このようにして、SiCエピタキシャルウェハの欠陥を検査することができる。
【0056】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の欠陥検査装置1は、フィルタ21を透過させた420nm以上430nm以下を含む波長帯域を有するフォトルミネッセンス光P1から画像を形成する。よって、画像処理部40は、形成した画像において、エピタキシャル層に形成されたBPDを、黒い線状の欠陥として検出することができる。また、画像処理部40は、画像に撮像された欠陥の長さによって、当該欠陥を判別することができる。これにより、SiCエピタキシャルウェハの欠陥を判別することができる。
【0057】
また、欠陥検査装置1は、バッファ層52のBPDを判別することができる。よって、バッファ層52とドリフト層53との界面54で、TEDに変換されたバッファ層52のみに存在するBPDを判別することができ、ドリフト層53のデバイス特性を向上させることができる。
【0058】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る欠陥検査装置を説明する。本実施形態の欠陥検査装置は、フィルタ部20が透過させるフォトルミネッセンス光P1の波長帯域を、420nm以上430nm以下を含む波長帯域から、近赤外光を含む波長帯域に変更する。
図5は、実施形態2に係る欠陥検査装置を例示した構成図である。
図5に示すように、本実施形態の欠陥検査装置2は、前述の欠陥検査装置1に比べて、フィルタ部20におけるフィルタ21をフィルタ22に変更する。
【0059】
検出光学系30は、変更したフィルタ部20を透過した近赤外光を含むフォトルミネッセンス光PLを検出する。画像処理部40は、検出された近赤外光を含むフォトルミネッセンス光PLから画像を形成する。近赤外光を含むフォトルミネッセンス光PLから形成された画像を近赤外画像と呼ぶ。画像処理部40は、近赤外画像に撮像された欠陥を判別する。
【0060】
図6は、実施形態2に係る欠陥検査装置2において、画像処理部40が形成した画像を例示した模式図である。
図6は、試料50における
図3と同じ位置を撮像された図となっている。
図6に示すように、画像処理部40は、近赤外光を含む波長帯域を透過させたフォトルミネッセンス光PLから近赤外画像を形成する。この場合において、近赤外画像には、線状の欠陥が観察される。線状の欠陥の長さを第3長さL3と呼ぶ。
図6では、説明の便宜のために、近赤外画像における線状の欠陥を
図3と同様に黒い線で示している。
【0061】
バッファ層52におけるBPDは、近赤外画像に撮像されない。ドリフト層53におけるTEDは、近赤外画像に撮像されない。一方、ドリフト層53におけるBPDは、近赤外画像に撮像されている。
【0062】
ここで、ドリフト層53の厚さをD1とし、バッファ層52の厚さをD2とし、オフセット角をθとし、第3長さを以下の(3)式で示すL3とする。なお、ドリフト層53の厚さD1と、バッファ層52の厚さD2とは異なることが望ましい。
【0063】
L3=D1/tanθ (3)
【0064】
そうすると、長さが第3長さL3の欠陥は、ドリフト層53におけるBPDを含む欠陥K3に対応する。画像処理部40は、欠陥の長さが第3長さL3の場合に、当該欠陥を、ドリフト層53におけるBPDを含む欠陥K3と判別する。欠陥K3の長さは、第3長さL3に限らず、バッファ層52及びドリフト層53を形成する際に発生する厚さのバラツキ等による不可避の誤差を含んだ第3長さL3を含んでもよい。したがって、画像処理部40は、近赤外画像に撮像された欠陥の長さが第3長さL3を含む所定の第3範囲であって、第1範囲及び第2範囲と異なる第3範囲に属する場合に、当該欠陥を、ドリフト層53におけるBPDを含む欠陥K3と判別する。
【0065】
図7は、実施形態1に係る欠陥検査装置1及び実施形態2に係る欠陥検査装置2で撮像された欠陥K1~欠陥K2におけるBPDの見え方を例示した図である。
図3及び
図7に示すように、420nm以上430nm以下を含む波長帯域を透過させた場合には、欠陥K1及び欠陥K2がともに画像に撮像されている。一方、
図6及び
図7に示すように、近赤外光を含む波長帯域を透過させた場合には、欠陥K3が近赤外画像に撮像される。欠陥K1及び欠陥K2は、近赤外画像に撮像されない。なお、欠陥K3は、欠陥K1から欠陥K2の部分を引いたものである。よって、第3長さL3は、第1長さL1と第2長さL2との差になっている。
【0066】
また、画像処理部40は、第1範囲に属する長さの欠陥K1の数と、第3範囲に属する長さの欠陥K3の数とを比較することにより、判別した欠陥の精度を算出してもよい。欠陥K1と数と欠陥K3とが近いほど、欠陥を判別した精度は高いことを示している。
【0067】
次に、本実施形態の欠陥検査方法を説明する。
図8は、実施形態2に係る欠陥検査方法を例示したフローチャート図である。
図8に示すように、本実施形態の欠陥検査方法は、前述のステップS11~ステップS15に加えて、フィルタ部20に透過させる波長帯域を近赤外光に変更するステップS16、近赤外光を検出するステップS17、近赤外光から近赤外画像を形成するステップS18、画像に表示された欠陥を判別するステップS19を備えている。
【0068】
ステップS16に示すように、欠陥を判別するステップS15の後で、フィルタ部20に透過させる波長帯域を、420nm以上430nm以下を含む波長帯域から近赤外光を含む波長帯域に変更する。具体的には、フィルタ部20において、フィルタ21からフィルタ22に変更する。
【0069】
次に、ステップS17に示すように、変更したフィルタ部20を透過した近赤外光を検出する。具体的には、検出光学系30における検出器31は、フィルタ部20におけるフィルタ22を透過した近赤外光を検出する。
【0070】
次に、ステップS18に示すように、画像処理部40は、検出光学系30によって検出された近赤外光から近赤外画像を形成する。
【0071】
次に、ステップS19に示すように、画像処理部40は、近赤外画像に撮像された欠陥を判別する。具体的には、画像処理部40は、近赤外画像に撮像された欠陥の長さが第3長さL3を含む所定の第3範囲に属する場合に、当該欠陥を、ドリフト層53におけるBPDを含む欠陥K3と判別する。このようにして、欠陥を判別することにより、SiCエピタキシャルウェハを検査することができる。
【0072】
なお、ステップS19の後に、第1範囲に属する長さの欠陥K1の数と、第3範囲に属する長さの欠陥K3の数とを比較することにより、判別した欠陥の精度を算出するステップをさらに備えてもよい。
【0073】
本実施形態によれば、欠陥検査装置2は、近赤外画像に撮像された欠陥K3を判別することができる。これにより、ドリフト層53におけるBPDを検出することができる。また、420nm以上430nm以下を含む波長帯域を透過させた画像に撮像された欠陥K1と、近赤外画像に撮像された欠陥K3とを対比させることができ、欠陥の検出率を向上させることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1の記載に含まれている。
【0074】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。また、実施形態1及び2の各構成を組み合わせたものも本開示の技術思想の範囲である。
【符号の説明】
【0075】
1、2 欠陥検査装置
10 照射光学系
11 光源
20 フィルタ部
21、22 フィルタ
30 検出光学系
31 検出器
40 画像処理部
50 試料
51 SiC基板
52 バッファ層
53 ドリフト層
54 界面
60 ステージ
D1、D2 厚さ
EL 励起光
K1、K2、K3 欠陥
L1 第1長さ
L2 第2長さ
PL フォトルミネッセンス光