(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148204
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】プラントの監視制御支援装置及びプラントの監視制御支援方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
G05B23/02 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061118
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100200218
【弁理士】
【氏名又は名称】沼尾 吉照
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 良陽
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EA04
3C223EB01
3C223FF09
3C223FF17
3C223FF26
3C223FF42
3C223FF43
3C223GG01
3C223HH02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熟練オペレータの機器操作技術を若手オペレータに正しく継承することができるプラントの監視制御支援装置を提供する。
【解決手段】プラントにおける各センサから入力される情報に基づいてプラントの事象を認識する事象認識部と、プラントの事象とその事象に対応して過去に操作された機器の操作内容が記憶されたデータベースと、前記データベースを検索して過去に操作された操作内容を検出する検出部と、前記検出部にて検出された情報を表示するガイダンス表示部と、プラントの機器の操作を入力する操作入力部と、前記操作入力部で操作された内容が過去に操作された操作内容と異なる場合、その操作根拠を入力する根拠入力部と、前記操作根拠をその操作内容と共に前記データベースに記憶するデータベース更新部とを有する監視制御支援装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントにおける各センサから入力される情報に基づいてプラントの事象を認識する事
象認識部と、
プラントの事象とその事象に対応して過去に操作された機器の操作内容が記憶されたデ
ータベースと、
前記事象認識部で認識した事象に基づいて、前記データベースを検索して過去に操作さ
れた操作内容を検出する検出部と、
前記検出部にて検出された情報を表示するガイダンス表示部と、
オペレータによって操作され、プラントの機器の操作内容を入力する操作入力部と、
前記操作入力部で操作された内容が過去に操作された操作内容と異なる場合、その操作
根拠を入力する根拠入力部と、
前記根拠入力部で入力された操作根拠をその操作内容と共に前記データベースに記憶す
るデータベース更新部と、
を有するプラントの監視制御支援装置。
【請求項2】
前記検出部は、実際の操作に基づく次の操作内容をさらに検出する、
請求項1に記載のプラントの監視制御支援装置。
【請求項3】
プラントにおける各センサから入力される情報に基づいてプラントの事象を認識し、デ
ータベースに記憶されたプラントの事象とその事象に対応して過去に操作された機器の操
作内容を検出し、検出された情報を表示し、検出された情報に基づいてオペレータによっ
て操作された内容が過去に操作された操作内容と異なる場合、その操作根拠を入力するこ
とで、その操作根拠をその操作内容と共にデータベースに記憶する、
プラントの監視制御支援方法。
【請求項4】
実際の操作に基づく次の操作内容をさらに検出する、
請求項3に記載のプラントの監視制御支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラントの監視制御支援装置及びプラントの監視制御支援方法に
関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道プラント等のプラントの監視制御は中央監視制御装置にて行い、オペレータは
中央監視制御装置にあるプラントフロー画面にて、プラントや機器の状態を監視し必要に
応じた機器操作(運転/停止操作等)を行っている。
【0003】
こで、上記機器操作はオペレータ判断にて行われ、プラントに適した機器操作はオペレ
ータの経験に依存する部分がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-159675号公報
【特許文献2】特開2011-159103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年はコスト削減等を理由に、オペレータの人員が減少傾向にあるうえ
で、さらに、高齢化によって経験豊富な熟練オペレータの数も少なくなってきている。そ
のため、熟練オペレータの機器操作技術が若手オペレータへ継承されずに、若手オペレー
タが、プラントの事象に対して適切な操作を出来ない可能性がある。
【0006】
また、特許文献1には適切なプラントの運転を支援するプラント運転支援装置であって
、AI技術(機械学習やニューラルネットワーク)を利用すること、操作対象機器に対す
る操作量を含む過去操作等の操作履歴データを学習すること、それらの情報をオペレータ
へ提供することなどが記載されているが、情報提供のみでは技術継承の観点では不十分で
ある。
【0007】
さらに、特許文献2には操作ガイダンス情報が理解しやすい態様で出力される旨の記載
があるが、これは該当する算出式が推奨値を導き出す目的、理由又は効果などを表す情報
であって、機器操作が必要である根拠が理解されず、機器操作技術が次世代へ正しく継承
できない。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、必要な機器操作の情報を提供する事で、若
手オペレータでも適切な機器操作を行う事が可能となり、熟練オペレータの機器操作技術
を若手オペレータに正しく継承することができるプラントの監視制御支援装置及びプラン
トの監視制御支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、実施形態のプラントの監視制御支援装置は、プラントにお
ける各センサから入力される情報に基づいてプラントの事象を認識する事象認識部と、プ
ラントの事象とその事象に対応して過去に操作された機器の操作内容が記憶されたデータ
ベースと、前記事象認識部で認識した事象に基づいて、前記データベースを検索して過去
に操作された操作内容を検出する検出部と、前記検出部にて検出された情報を表示するガ
イダンス表示部と、オペレータによって操作され、プラントの機器の操作を入力する操作
入力部と、前記操作入力部で操作された内容が過去に操作された操作内容と異なる場合、
その操作根拠を入力する根拠入力部と、前記根拠入力部で入力された操作根拠をその操作
内容と共に前記データベースに記憶するデータベース更新部とを有する。
【0010】
また、実施形態のプラントの監視制御支援方法は、プラントにおける各センサから入力
される情報に基づいてプラントの事象を認識し、データベースに記憶されたプラントの事
象とその事象に対応して過去に操作された機器の操作内容を検出し、検出された情報を表
示し、検出された情報に基づいてオペレータによって操作された内容が過去に操作された
操作内容と異なる場合、その操作根拠を入力することで、その操作根拠をその操作内容と
共にデータベースに記憶する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るプラントの監視制御支援装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための実施形態について説明する。
【0013】
実施形態に係るプラントの監視制御支援装置の構成を
図1に示し、実施形態に係るシス
テムフローを
図2に示す。また後述する根拠入力部16の入力例を
図3に示す。
【0014】
まず、
図1を参照して実施形態に係るプラント監視制御支援装置の構成を説明する。
【0015】
実施形態に係るプラント監視制御支援装置10は、事象認識部11と、データベース1
2と、検出部13と、ガイダンス表示部14と、操作入力部15と、根拠入力部16と、
データベース更新部17とにより構成される。
【0016】
事象認識部11は、プラント内の各設備に設置されている計測器、センサ等から得られ
る情報からプラント全体の事象を認識する。ここで、認識されたプラント全体の事象に基
づいてオペレータは何らかの操作を行う。
【0017】
データベース12は、前述したプラント全体の事象に基づいて過去に実際に行われたオ
ペレータの操作内容及び操作時のプラントの全体の事象を併せて記憶する記憶部である。
また、後述する根拠入力部16に入力されたその操作内容を選択した根拠についても併せ
て記憶する。さらに、実際の操作に基づく次の操作があった場合は、実際の操作内容、そ
の次の操作内容についても根拠と共に記憶する。
【0018】
例えば、
図3に示すように、プラントの状況、そのプラント状況に伴う機器操作内容及
びその操作根拠を対応付けて記憶する。形式は、1対1での対応形式に限らず、プラント
状況、機器操作内容及びその根拠が紐づけされている形式であれば構わない。
【0019】
検出部13は前述したデータベース12に記憶されている過去の操作内容の中から、現
在のプラント全体の事象と同様の事象の時に行われた操作内容及びその根拠を検索して、
検出する。ここで、現在のプラント全体の事象と同様の事象とは、プラント内の各設備に
設置されている計測器、センサ等から得られる情報が最も近しい事象のことをいう。
【0020】
さらに、検出部13は、データベース12に記憶されている実際に行われた操作内容に
対応して次に行われた操作内容についても検出することができる。
【0021】
例えば、
図3における番号1の操作は通常操作であって、水需要増加を事象認識部11
にて認識されると、検出部13にてこの番号1の操作が検出され、ガイダンス表示部14
に表示される。さらに、
図3における番号3の操作は経験による予測操作であって、
図3
における番号1の操作が行われた場合、検出部13にて
図3における番号3の操作が検出
されガイダンス表示部14に表示される。これは、熟練オペレータであれば、経験から図
3における番号1の操作後に配水流量増加に伴って配水池の水位低下を予測し、前以って
配水ポンプを起動する事が出来るが、若手オペレータには難しいため、若手オペレータを
支援するためのものである。
【0022】
ガイダンス表示部14は、前述した検出部13で検出されたプラント全体の事象、操作
内容及びその根拠をガイダンス形式で表示する。過去に行われた操作内容の根拠が表示さ
れ、オペレータがその内容を確認することによって、熟練オペレータの操作根拠を理解す
ることが可能となり、若手オペレータへの技術継承が可能となる。
【0023】
操作入力部15は、いわゆるコントローラであって、オペレータが実際に操作する機器
である。例えば、設備に付属しているものであっても良いし、オペレータが手持ちで持て
るものであっても構わない。操作入力部15に入力された操作内容の通りに機器は操作さ
れ、その操作内容がデータベース12に記憶される。
【0024】
根拠入力部16は、プラント全体の事象に基づいて行われた操作内容について、その操
作をしたオペレータ自身でその根拠を入力する。入力形式は、例えば、
図3のような表形
式であって、事象若しくは行った操作内容、操作根拠が紐づくような記載である。
【0025】
次に、
図2を参照して実施形態に係る監視制御支援方法のシステムフローについて説明
する。
【0026】
まず、事象認識部11はプラント内の設備に設置されているセンサ等の情報から、プラ
ント全体の事象を認識する(S110)。
【0027】
次に、検出部13が、認識されたプラント全体の事象と同様のプラント全体の事象をデ
ータベース12に記憶された過去の情報から検索する(S120)。
【0028】
上記検索にて、現在のプラント全体の事象と同様のプラント状況が見つからなかった場
合(S120のNo)、ガイダンス表示無しで機器を実際に操作する(S130)。機器
を操作しない場合(S130のNo)、システムフローは終了する。機器を操作する場合
(S130のYes)、プラント全体の事象、その操作内容及びその操作内容の根拠を操
作入力部15及び根拠入力部16から入力され、データベース12に記憶されることで(
S140)、システムフローは終了する。
【0029】
前述した検索にて、現在のプラント全体の事象と同様のプラント状況が見つかった場合
(S120のYes)、検索された過去のプラント全体の状況に対して行われた操作があ
るかを検索する(S125)。検索の結果、行われた操作が無かったとき(S125のN
o)、ガイダンス表示無しで機器を実際に操作する(S130)。機器を操作しない場合
(S130のNo)、システムフローは終了する。機器を操作した場合(S130のYe
s)、プラント全体の事象、その操作内容及びその操作内容の根拠を操作入力部15及び
根拠入力部16から入力し、データベース12に記憶することで(S140)、システム
フローは終了する。
【0030】
一方、検索の結果、行われた操作があったとき(S125のYes)、その時に行われ
た操作内容及びその根拠をガイダンス表示する(S150)。
【0031】
ガイダンス表示部14に過去の操作内容及びその根拠が表示されるが、実際に機器を操
作しない場合(S160のNo)は、システムフローは終了する。実際に機器を操作する
場合(S160のYes)は、その操作内容が過去の操作内容と同一でない場合はS14
0へ移行(S170のNo)し、操作入力部15及び根拠入力部16から入力された操作
内容とその操作根拠がデータベース更新部17によってデータベース12に記憶される。
【0032】
その操作内容が過去の操作内容と同一の場合(S170のYes)、さらに関連する機
器操作の有無が確認される(S180)。関連する機器操作が有る場合(S180のYe
s)、S150のステップに戻ってフローが繰り返される。
【0033】
このように、過去の操作内容と異なる操作がなされた場合は、その操作を行った根拠が
根拠入力部16から入力されることで、データベース更新部17がデータベース12を更
新する。ステップS180で関連する機器操作が無かった時は(S180のNo)、シス
テムフローは終了する。
【0034】
以上より、実施形態によれば、以下に示すような効果が得られる。
【0035】
必要な機器操作の情報を提供する事で、適切な機器操作を行う事が可能となり、過去に
行った操作と異なる操作を行ったときは、その操作内容と根拠とを入力することで、デー
タベースを逐一更新することができるので、熟練オペレータの機器操作技術を若手オペレ
ータに正しく継承することができる。
【0036】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明
の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で
実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、
変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとと
もに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
10…監視制御支援装置、11…事象認識部、12…データベース、13…検出部、14
…ガイダンス表示部、15…操作入力部、16…根拠入力部、17…データベース更新部