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  • 特開-結露防止システム及び結露防止方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148205
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】結露防止システム及び結露防止方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 5/06 20060101AFI20241010BHJP
   H02B 1/20 20060101ALI20241010BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H02G5/06 311W
H02B1/20 F
H05K7/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061119
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100200218
【弁理士】
【氏名又は名称】沼尾 吉照
(72)【発明者】
【氏名】藤野 誠司
【テーマコード(参考)】
5E322
5G016
5G365
【Fターム(参考)】
5E322BA02
5E322BA05
5E322EA03
5G016DA41
5G365AA01
5G365CA01
5G365CD06
5G365CD07
(57)【要約】
【課題】閉鎖母線の筐体内部の結露防止のためにスペースヒータを設置する場合は、前記
筐体の容積に応じたスペースヒータが必要となり、スペースヒータ用の電源を考慮した電
源設備も必要となる。
【解決手段】電気回路を構成する導体21と、その導体21を内部に収納する筐体25と
を有する閉鎖母線10と、前記閉鎖母線10の前記筐体25内に乾燥空気を送気する乾燥
空気送気装置14と、前記閉鎖母線10内に収納された導体21の通電状態を検知する通
電検知装置13と、前記通電検知装置13から前記導体21の通電状態が伝送されると、
前記乾燥空気送気装置14を起動又は停止させる制御装置16とを備えた結露防止システ
ム。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路を構成する導体と、その導体を内部に収納する筐体とを有する閉鎖母線と、
前記筐体内に乾燥空気を送気する乾燥空気送気装置と、
前記筐体内に収納された導体の通電状態を検知する通電検知装置と、
前記通電検知装置から前記導体の通電状態が伝送されると、前記乾燥空気送気装置を起
動又は停止させる制御装置と、
を備えた結露防止システム。
【請求項2】
前記筐体の内部の湿度を計測する湿度センサを更に備え、
前記制御装置は、前記湿度センサで測定された前記筐体の内部の湿度が所定の閾値より高
い場合、前記乾燥空気送気装置を起動させ、前記閾値以下の場合、前記乾燥空気送気装置
を停止する、
請求項1に記載の結露防止システム。
【請求項3】
乾燥空気を所定の圧力で貯留し、前記乾燥空気送気装置が作動しない場合に貯留された
前記乾燥空気を前記筐体内に送気する乾燥空気貯留タンクを、
更に備えた請求項1又は請求項2に記載の結露防止システム。
【請求項4】
前記筐体に設置され、前記筐体の内部に乾燥空気を送気可能で、前記筐体の内部から外
部への気流が阻止された第1の逆止弁と、
前記筐体の内部から前記筐体の外部への気流が許容され、前記筐体の外部から内部への
気流が阻止された第2の逆止弁と、
を更に備えた請求項1又は請求項2に記載の結露防止システム。
【請求項5】
電気回路を構成する導体を筐体内部に収納する閉鎖母線において、前記導体の通電状態
を検知する通電検知装置が、前記導体の通電が遮断されていることを検知すると制御装置
が、乾燥空気を前記筐体内に送気する乾燥空気送気装置を起動させ、前記導体が通電状態
であることを前記通電検知装置が検知すると、前記制御装置が前記乾燥空気送気装置を停
止する、
結露防止方法。
【請求項6】
前記筐体内の湿度を計測する湿度センサを更に備え、
前記制御装置は、前記湿度センサで測定された前記筐体内部の湿度が所定の閾値より高い
場合、前記乾燥空気送気装置を起動させ、前記閾値以下の場合、前記乾燥空気送気装置を
停止する、
請求項5に記載の結露防止方法。
【請求項7】
乾燥空気を所定の圧力で貯留し、前記乾燥空気送気装置が作動しない場合に貯留された
前記乾燥空気を前記筐体内部に送気する乾燥空気貯留タンクを更に備える、
請求項5又は請求項6に記載の結露防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、結露防止システム及び結露防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所や変電施設、或いはビルや工場内の高圧電力幹線に使用される閉鎖母線は、各電
気設備を繋げて大電流を流す必要がある電力用幹線部材のひとつであって、その内部に有
する導体を通電させることで電気的に回路を構成する。
【0003】
図1に、上述した各電気設備の概略構成図を示す。図1には、第1の電気設備11及び
第2の電気設備12とその間を接続する閉鎖母線10の構成が示されており、各電気設備
11,12を電気的に接続する役割を担うのが閉鎖母線10である。
【0004】
閉鎖母線内の導体に通電すると回路に電流が流れ、導体の持つ抵抗値により導体は発熱
することから電気設備間を接続する閉鎖母線の内部は外部の温度より高くなり相対湿度が
下がる。
【0005】
一方、閉鎖母線内の導体の通電が遮断された後に閉鎖母線内部の温度が降下する過程に
おいて閉鎖母線内部の相対湿度が上がる場合がある。特に、屋外に設置される閉鎖母線は
、相対湿度が上がることで閉鎖母線内面に結露現象が発生する。
【0006】
この結露が解消されない状態で再度閉鎖母線内の導体に通電した場合に閉鎖母線内部で
電気事故が発生する虞があるため、閉鎖母線内部にスペースヒータを設置し結露の発生を
防いでいる。
【0007】
図2に、上述したスペースヒータを設置した閉鎖母線の断面概略図を示す。図2には閉
鎖母線10内の導体21、スペースヒータ22及びスペースヒータ用ケーブル23が示さ
れており、スペースヒータ22は閉鎖母線10の内部であって、導体21と干渉しないよ
うなスペースに設置される。なお、スペースヒータは別電源で動作するため、スペースヒ
ータ用ケーブル23も必要となる。
【0008】
また、特許文献1には、屋外の閉鎖母線において、圧縮空気供給装置から乾燥空気を閉
鎖母線内に常時供給し、閉鎖母線内を大気圧以上に保持することで雨水の侵入を防ぎ、雨
水の滞留に伴う閉鎖母線内の湿度の上昇による結露を防ぐ母線装置について記載がある。
【0009】
特許文献2には、閉鎖母線内に湿度センサを設けて、閉鎖母線内の湿度が閾値を超える
と乾燥空気が閉鎖母線内に送気されて、湿度の高い空気が排気されることで結露を防ぐ閉
鎖母線について記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001-136640号公報
【特許文献2】実開昭60-38025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、閉鎖母線内部にスペースヒータを設置する場合は、閉鎖母線の容積に応じたス
ペースヒータが必要となり、スペースヒータ用の電源を考慮した電源設備も必要となる。
【0012】
特許文献1においては、乾燥空気が閉鎖母線内に常時供給されている。常時運転される
ことによって、電気代や設備劣化の助長による設備更新頻度の高まり等によって費用が嵩
むという問題がある。
【0013】
また、特許文献2においては、閉鎖母線内の湿度が閾値を超えないと乾燥空気が閉鎖母
線内に供給されないため、閉鎖母線内の導体の通電が遮断されて、閉鎖母線内の温度が降
下することに伴う相対湿度上昇による結露に対しては適切に乾燥空気が送気されない問題
もある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、上記課題を解決するために、実施形態の結露防止システムは、電気回路を構成
する導体と、その導体を内部に収納する筐体とを有する閉鎖母線と、前記閉鎖母線の前記
筐体内に乾燥空気を送気する乾燥空気送気装置と、前記閉鎖母線内に収納された導体の通
電状態を検知する通電検知装置と、前記通電検知装置から前記導体の通電状態が伝送され
ると、前記乾燥空気送気装置を起動又は停止させる制御装置とを備えている。
【0015】
また、実施形態の結露防止方法は、電気回路を構成する導体を筐体内部に収納する閉鎖
母線において、前記導体の通電状態を検知する通電検知装置が、前記導体の通電が遮断さ
れていることを検知すると制御装置が、乾燥空気を前記筐体内に送気する乾燥空気送気装
置を起動させ、前記導体が通電状態であることを前記通電検知装置が検知すると、前記制
御装置が前記乾燥空気送気装置を停止する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】電気設備と閉鎖母線の構成概略図
図2】スペースヒータを設置した閉鎖母線断面概略図
図3】実施形態に係る結露防止システム構成図
図4】実施形態に係る結露防止システムにおける閉鎖母線概略断面図
図5】系統における閉鎖母線及び遮断器の概略図
図6】実施形態に係るフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して発明を実施するための実施形態について説明する。
【0018】
実施形態に係る結露防止システム構成図を図3、実施形態に係る結露防止システムにお
ける閉鎖母線概略断面図を図4、系統における閉鎖母線及び遮断器の概略図を図5、実施
形態に係るフローチャートを図6に示す。
【0019】
実施形態は、第1の電気設備11、第2の電気設備12、第1の電気設備11と第2の
電気設備12とを電気的に接続する閉鎖母線10、通電検知装置13、乾燥空気送気装置
14、乾燥空気貯留タンク15、制御装置16を有する。閉鎖母線10には、導体21、
湿度センサ24、第1の逆止弁26、第2の逆止弁27が備えられている。
【0020】
閉鎖母線10は、導体21と、内部に導体21を収納する筐体25で構成され、導体2
1に通電させることで電気回路を構成するものである。実施形態における閉鎖母線システ
ムは、乾燥空気を閉鎖母線10の筐体25内(以降、単に閉鎖母線10内と記載する場合
もある)に送気するための乾燥空気送気装置14と、乾燥空気送気装置14からの乾燥空
気を閉鎖母線10の筐体25の内部に送気するための送気管17とを有する。筐体25の
一端側(図4では筐体の幅方向の一端となっているが、実際は図3に於ける閉鎖母線10
の長さ方向の一端、すなわち図中右端)の送気管17と筐体25との接続部には、送気管
17から筐体25の内部への送気(気流)は可能であるが、筐体内部から筐体外部へ、す
なわち筐体25の内部から外部への気流を阻止する第1の逆止弁26が設けられている。
【0021】
また、筐体25の他端側(図3の左側端)には、筐体25の内部から筐体25の外部へ
の気流が許容され、筐体25の外部から内部への気流が阻止された第2の逆止弁27が設
けられている。第1の逆止弁26は、乾燥空気送気装置14から筐体25内に送気された
空気がこの部分で外部に漏れないことで、乾燥空気が筐体の一端から他端に向かって流れ
ることで、筐体25内部の全域に亘って、乾燥状態を維持できるようにするためである。
【0022】
また、第2の逆止弁27は乾燥空気送気装置14から筐体25の内部に送気された乾燥
空気を筐体25の他端から外部に放出することで乾燥空気の流れをスムーズにすることと
、外部からの湿った空気が筐体25内部に侵入するのを防止するためである。
【0023】
ここで、当該逆止弁の構造はスプリング式、ボール式、スイング式等乾燥空気が一方通
行でしか流れないものであればいずれの形式であっても構わない。
【0024】
湿度センサ24は筐体25の内部の湿度を計測し、後述する制御装置16に筐体25の
内部の湿度を伝送する。
【0025】
通電検知装置13は、閉鎖母線10の筐体25内の導体21の通電状態、すなわち閉鎖
母線10の筐体25内の導体21に通電しているか否かを検知する。実施形態においては
、例えば、閉鎖母線10の両端には、図5に示すように第1の遮断器31と第2の遮断器
32が設置されており、これらの遮断器の開閉によって閉鎖母線10の筐体25内の導体
21の通電状態が管理されている。通電検知装置13はこれらの遮断器の開閉を検知して
、閉鎖母線10の筐体25内の導体21の通電状態を検知する。つまり、第1の遮断器3
1又は第2の遮断器32のいずれか一方若しくは両方が開状態である場合は閉鎖母線10
の筐体25内の導体21の通電が遮断されていると検知することになる。
【0026】
なお、実施形態においては、遮断器31,32の開閉状態によって通電状態を検知して
いるが、これは電流計等その他の通電状態を認識できる方法を用いても良い。
【0027】
乾燥空気送気装置14は、閉鎖母線10の筐体25の内部へ乾燥空気を送気するための
乾燥空気を製造、圧縮、送風する。実施形態においては、乾燥空気送気装置14は乾燥空
気貯留タンク15を備えている。乾燥空気貯留タンク15は、乾燥空気送気装置14によ
って製造された乾燥空気を所定の圧力をもって貯留することができる。乾燥空気貯留タン
ク15はコンプレッサ等によって常時一定圧力で蓄圧されている状態であって、これは、
乾燥空気送気装置14が停電等のなんらかの理由で動作しなくなった場合でも乾燥空気貯
留タンク15に貯留された乾燥空気を閉鎖母線10の筐体25内へ送気可能とするためで
ある。
【0028】
制御装置16は、通電検知装置13から閉鎖母線10の筐体25内の導体21の通電状
態についての信号を受信する。制御装置16は、閉鎖母線10内の導体21の通電が遮断
されている信号を受信した場合には、乾燥空気送気装置14を起動させ、閉鎖母線10の
筐体25の内部に乾燥空気を送気する。閉鎖母線10の筐体25内の導体21が通電して
いる信号を受信した場合には、乾燥空気送気装置14の動作を停止させる。
【0029】
次に、実施形態に係る結露防止方法のシステムフローについて、図6のフローチャート
を参照して説明する。
【0030】
まず、閉鎖母線10の筐体25内の導体21の通電が遮断されていること、すなわち実
施形態においては閉鎖母線10の前後に設置されている遮断器31,32が“開”状態で
あることを通電検知装置13が検知する(S101)。
【0031】
続いて、通電検知装置13によって閉鎖母線10の筐体25内の導体21の通電が遮断
されている信号が制御装置16に伝送される(S102)。制御装置16はこの信号によ
って、乾燥空気送気装置14を起動する(S103)。閉鎖母線10の筐体25内の導体
21の通電が遮断されて閉鎖母線10の筐体25内部の温度降下に伴う相対湿度の低下よ
り前に乾燥空気を送気することによって、相対湿度低下による結露を防ぐことができる。
【0032】
次に、閉鎖母線10の筐体25内の導体21が通電状態であること、すなわち遮断器3
1,32が“閉”状態であることを通電検知装置13が検知し(S104)、その信号が
制御装置16に伝送される(S105)。
【0033】
さらに、閉鎖母線10の筐体25内部の湿度を湿度センサ24が測定する(S106)
。測定された湿度が閾値以下である場合(S107のYes)はその湿度情報が制御装置
16に伝送され(S108)、制御装置16が乾燥空気送気装置14を停止する(S10
9)。乾燥空気送気装置14が停止することによって、不必要な電気代の発生を防止する
ことが出来る。
【0034】
湿度センサ24によって測定された湿度が閾値よりも高い場合(S107のNo)、制
御装置16は乾燥空気送気装置14の運転を継続する(S103)。
【0035】
以上より、実施形態によれば、以下に示すような効果が得られる。
【0036】
閉鎖母線の筐体の容積に応じたスペースヒータ及びスペースヒータ用の電源設備を削減
することができる。
【0037】
また、乾燥空気送気装置の常時運転を避けることによって、電気代や設備劣化の助長に
よる設備更新頻度の高まり等によって費用が嵩むという問題も解消する。
【0038】
さらに、適切なタイミング(閉鎖母線筐体内の導体の通電が遮断されたタイミング)に
乾燥空気が送気されるため、閉鎖母線内の温度降下に伴う相対湿度上昇による結露も防ぐ
ことができる。
【0039】
加えて、乾燥空気送気装置が作動しない場合も乾燥空気貯留タンクによって閉鎖母線内
に乾燥空気を送気できるため、停電、断線等で乾燥空気送気装置が動作しないといった問
題も解消することができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり
、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な
形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き
換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれ
るとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
10…閉鎖母線、11…第1の電気設備、12…第2の電気設備、13…通電検知装置、
14…乾燥空気送気装置、15…乾燥空気貯留タンク、16…制御装置、17…送気管、
21…導体、22…スペースヒータ、23…スペースヒータ用ケーブル、24…湿度セン
サ、25…筐体、26…第1の逆止弁、27…第2の逆止弁、31,32…遮断器
図1
図2
図3
図4
図5
図6