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特開2024-148206異音検知装置、管理システム、異音検知方法、及び余寿命予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148206
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】異音検知装置、管理システム、異音検知方法、及び余寿命予測方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20241010BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20241010BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061120
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100141232
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 達
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 章
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】冷却ユニットの稼働履歴の管理の負担を軽減し、異常検知のために用いられるセンサの設置位置に対する制約を緩和する。
【解決手段】収音部41と検知部42とを備える異音検知装置40を冷凍機10に備える。収音部41は、冷却ユニット30の動作音を収音する。検知部42は、冷却ユニット30における異音の発生を、当該動作音を用いて検知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ユニットの動作音を収音する収音部と、
前記冷却ユニットにおける異音の発生を、前記動作音を用いて検知する検知部と、
を備えることを特徴とする異音検知装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記動作音の入力と、正常動作時における前記冷却ユニットの動作音を用いて教師なし学習させたオートエンコーダへの前記入力に対する出力との差異の大きさに基づいて、前記異音の発生の検知を行うことを特徴とする請求項1に記載の異音検知装置。
【請求項3】
前記検知部が前記異音の発生の検知に用いる閾値が前記冷却ユニットの種別毎に格納されている閾値マスタデータベースを更に備え、
前記検知部は、前記収音部が前記動作音を収音した前記冷却ユニットの種別についての前記閾値を前記閾値マスタデータベースから取得し、取得した前記閾値よりも前記差異が大きいかどうかを判定することによって、前記異音の発生の検知を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の異音検知装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記動作音をスペクトログラム変換する変換部を備え、前記変換部による変換後の前記動作音を用いて前記異音の発生を検知することを特徴とする請求項2に記載の異音検知装置。
【請求項5】
請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の異音検知装置が備えている前記検知部が前記異音の発生を検知した日時に基づいて、前記異音の発生が検知された前記冷却ユニットが故障して動作の停止に至る停止日時を予測する予測部を備えることを特徴する管理システム。
【請求項6】
前記冷却ユニットの余寿命が前記冷却ユニットの種別毎に格納されている余寿命マスタデータベースを更に備え、
前記予測部は、前記検知部が前記異音の発生を検知した前記冷却ユニットの種別についての前記余寿命を前記余寿命マスタデータベースから取得し、取得した前記余寿命を用いて前記停止日時を予測する、
ことを特徴とする請求項5に記載の管理システム。
【請求項7】
前記予測部は、前記検知部が前記異音の発生を検知した日時から前記余寿命が経過した日時を前記停止日時の予測結果とすることを特徴とする請求項6に記載の管理システム。
【請求項8】
前記余寿命マスタデータベースには、更に、前記冷却ユニットの修理に要する修理時間が前記冷却ユニットの種別毎に格納されており、
前記管理システムは、前記検知部が前記異音の発生を検知した前記冷却ユニットについての前記修理時間を前記余寿命マスタデータベースから取得して、前記予測部が予測した前記停止日時と共に表示する表示部を更に備える、
ことを特徴とする請求項7に記載の管理システム。
【請求項9】
冷却ユニットの動作音を収音部が収音し、
前記冷却ユニットにおける異音の発生を、前記動作音を用いて検知部が検知する、
ことを特徴とする異音検知方法。
【請求項10】
収音部が冷却ユニットの動作音を収音し、
前記冷却ユニットにおける異音の発生を、前記動作音を用いて検知部が検知し、
前記異音の発生後の前記冷却ユニットの余寿命を、前記異音の発生が検知された日時に基づいて予測部が予測する、
ことを特徴とする余寿命予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機の保守管理の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
対象機器に含まれる冷却部品の寿命を、冷却部品の稼働時間と周囲温度との関係性に基づいて予測する技術が幾つか知られている(例えば、特許文献1~特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-101822号公報
【特許文献2】特開2010-25439号公報
【特許文献3】特開平11-142028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した技術では、稼働時間を知るために、対象機器への導入時期などといった冷却部品の稼働履歴を対象機器毎に管理する必要があり、また、異常検知のために用いられる温度センサの設置位置に対し、良好な精度を得るために厳しい制約を受けることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のひとつでは、異音検知装置が、冷却ユニットの動作音を収音する収音部と、当該冷却ユニットにおける異音の発生を、当該動作音を用いて検知する検知部と、を備える。
【0006】
また、実施形態のひとつでは、上述した異音検知装置が備えている検知部が異音の発生を検知した日時に基づいて、当該異音の発生が検知された冷却ユニットが故障して動作の停止に至る停止日時を予測する予測部を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記の態様によれば、冷却ユニットの稼働履歴の管理の負担が軽減され、また、異常検知のために用いられるセンサである収音部の設置位置に対して高い自由度が与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の一例としての異音検知装置及び管理システムの構成を示す図である。
図2】検知部の構成例を示す図である。
図3】閾値マスタDBの格納データの一例を示す図である。
図4】余寿命マスタDBの格納データの一例を示す図である。
図5】異常検知DBの格納データの一例を示す図である。
図6】予測部により生成される画面データで表される画面の例である。
図7】情報処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
図8】異音検知処理の処理内容を示したフローチャートである。
図9】故障停止日時予測処理の処理内容を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。
【0010】
まず、図1について説明する。図1は、実施形態の一例としての異音検知装置40及び管理システム20の構成を示す図である。
【0011】
図1には、冷凍機10と、冷凍機10の保守管理のために利用される管理システム20とが示されている。
【0012】
冷凍機10は、物品の冷却に用いられる装置であって、例えば、冷凍庫、冷蔵庫、冷凍ショーケースや自動販売機などである。冷凍機10は冷却ユニット30と異音検知装置40を備えている。
【0013】
冷却ユニット30は、冷凍機10に備えられている不図示の物品収納庫の庫内の冷却を行うものであり、圧縮器31と凝縮器32と膨張弁33と蒸発器34とが、冷媒が流れる配管35によって環状に接続されて構成されている。
【0014】
圧縮器31は、配管35を介して蒸発器34から送られてくる冷媒を圧縮することによって高温高圧の冷媒にして凝縮器32に送り出す。
【0015】
凝縮器32は、配管35を介して圧縮器31から送られてくる冷媒の熱を放出させることで冷媒を凝縮させ、液化した冷媒を膨張弁33に送り出す。
【0016】
膨張弁33は、配管35を介して凝縮器32から送られてくる冷媒を減圧することによって低温低圧の冷媒にして蒸発器34に送り出す。
【0017】
蒸発器34は、物品収納庫の庫内を冷却して当該庫内の雰囲気から熱を奪うことによって、配管35を介して膨張弁33から送られてくる冷媒を蒸発させ、気化した冷媒を圧縮器31に送り出す。
【0018】
冷却ユニット30は、このような冷凍サイクルを提供することによって、物品収納庫の庫内の冷却を行う。
【0019】
異音検知装置40は収音部41と検知部42と閾値マスタデータベース43とを備えている。なお、以下の説明では、閾値マスタデータベース43を「閾値マスタDB43」と称することとする。
【0020】
収音部41は、冷却ユニット30の動作音、すなわち、動作中の冷却ユニット30から発せられる音を収音して、当該動作音を表している動作音信号を出力するものであり、例えばマイクロフォンである。
【0021】
検知部42は、冷却ユニット30における異音の発生を、収音部41により収音された動作音を用いて検知する。この検知部42の詳細については後述する。
【0022】
閾値マスタDB43には、検知部42による異音の発生の検知において用いられる閾値が、冷却ユニット30の種別毎に予め格納されている。
【0023】
管理システム20はサーバ50とユーザ端末60とを備えている。サーバ50及びユーザ端末60と、冷凍機10が備えている異音検知装置40とはいずれも通信ネットワーク70に接続されており、通信ネットワーク70を介して各種のデータを相互に授受することが可能である。なお、通信ネットワーク70は、例えば、ローカルエリアネットワーク(Local Area Network)やインターネット(Internet)である。
【0024】
サーバ50は、予測部51と余寿命マスタデータベース52と異常検知データベース53とを備えている装置である。なお、以下の説明では、余寿命マスタデータベース52を「余寿命マスタDB52」と称することとし、異常検知データベース53を「異常検知DB53」と称することとする。
【0025】
予測部51は、冷却ユニット30における異音の発生を検知部42が検知した日時に基づいて、当該異音の発生が検知された冷却ユニット30が故障して動作の停止に至る停止日時を予測する。この予測部51の詳細は後述する。
【0026】
余寿命マスタDB52には、異常動作が検知されてから動作停止に至るまでの冷却ユニット30の余寿命が、冷却ユニット30の種別毎に予め格納されている。
【0027】
異常検知DB53には、検知された冷却ユニット30の異常動作に関する情報が予測部51によって格納される。
【0028】
ユーザ端末60は、冷凍機10の保守管理の担当者であるユーザにより用いられる装置であって、サーバ50から送られてくる画面データで表される画面を表示する表示部61を備えている。
【0029】
次に、異音検知装置40が備えている検知部42の詳細について、図2に示す構成例を用いて説明する。
【0030】
図2の構成例では、検知部42が変換部42-1とオートエンコーダ(自己符号化器)42-2とを備えている。
【0031】
変換部42-1は、収音部41から出力される動作音信号をスペクトログラム変換することによって、当該動作音信号についてのスペクトログラム画像を得る。スペクトログラム画像は、時間と周波数と信号成分の強さとの3つの要素が表される画像である。
【0032】
オートエンコーダ42-2は、3層ニューラルネットワークを用いて構成されるモデルであり、入力と出力とに同一のデータを適用して教師なし学習をさせることで、入力データの圧縮によって抽出される特徴から圧縮前の元のデータの復元を行うものである。本実施形態では、正常動作時の冷却ユニット30の動作音信号についてのスペクトログラム画像を学習データとして用いて教師なし学習を十分に行わせたオートエンコーダ42-2を用いる。
【0033】
検知部42は、冷却ユニット30の動作音信号についてのスペクトログラム画像の入力と、オートエンコーダ42-2への当該入力に対して出力される再構成画像との差異の大きさに応じた指標である異常スコアの算出を行う。本実施形態では、オートエンコーダ42-2についての入力と出力とである、スペクトログラム画像と再構成画像とが一致する場合には異常スコアの値が「0.0」となり、両者の差異が最大の場合には異常スコアの値が「1.0」となるようにする。例えば、スペクトログラム画像と再構成画像とをそれぞれベクトル化して2つのベクトルのコサイン類似度を算出し、当該コサイン類似度の値域(+1.0~-1.0)を線形変換して異常スコアの値域(0.0~1.0)に対応付けるようにしてもよい。
【0034】
検知部42は、このようにして得られた異常スコアと閾値との大小比較を行う。検知部42は、この異常スコアとの大小比較の対象として用いる閾値を、閾値マスタDB43から取得する。
【0035】
図3は、閾値マスタDB43の格納データの一例を示している。
【0036】
閾値マスタDB43には、冷却ユニット30のメーカー名(製造会社名)及び型式名を表すデータに、当該冷却ユニット30についての閾値が対応付けられて予め格納されている。この閾値の値は、例えば、当該冷却ユニット30についての過去の稼働データを収集して分析することによって求めるようにすればよい。なお、冷却ユニット30のメーカー名及び型式名を表すデータは、冷却ユニット30の種別を示す情報の一例である。
【0037】
検知部42は、冷凍機10に設置されている冷却ユニット30の種別に対応付けられている閾値を閾値マスタDB43から取得し、異常スコアとの大小比較を行う。ここで、異常スコアが閾値よりも大きい場合には、冷却ユニット30での異音の発生を検知したと判断し、冷却ユニット30の動作異常の検知の通知を、通信ネットワーク70を介して管理システム20のサーバ50へ送付する。この通知には、異音の発生が検知された冷却ユニット30が設置されている冷凍機10のシリアルナンバー(製造番号)、当該冷却ユニット30のメーカー名、当該冷却ユニット30の型式名、及び、異音の発生を検知した日時の各情報が含まれる。
【0038】
次に、サーバ50が備えている予測部51の詳細について説明する。
【0039】
予測部51は、異音検知装置40が備えている検知部42から送られてくる動作異常の検知の通知を受け取ると、異音の発生が検知された冷却ユニット30についての余寿命及び修理時間の情報を余寿命マスタDB52から取得する。
【0040】
図4は、余寿命マスタDB52の格納データの一例を示している。
【0041】
余寿命マスタDB52には、冷却ユニット30の種別を示す情報である、冷却ユニット30のメーカー名及び型式名を表すデータに、当該種別の冷却ユニット30についての余寿命と修理時間とが対応付けられて予め格納されている。前述したように、冷却ユニット30のメーカー名及び型式名を表すデータは、冷却ユニット30の種別を示す情報の一例である。
【0042】
冷却ユニット30の修理時間とは、例えば、冷凍機10の運転を停止させて、部品交換等の冷却ユニット30に対する修理作業を行い、その後に冷凍機10の運転を再開させるまでに要する時間である。冷却ユニット30についての余寿命及び修理時間のそれぞれの値は、例えば、当該種別の冷却ユニット30についての過去の稼働データや修理実績のデータを収集して分析することによって求めるようにすればよい。
【0043】
予測部51は、異音の発生が検知された冷却ユニット30についての余寿命及び修理時間の情報を取得すると、これらのデータを、異音検知装置40から受け取った動作異常の検知の通知に含まれている情報と対応付けて異常検知DB53に格納する。
【0044】
図5は、異常検知DB53の格納データの一例を示している。
【0045】
異常検知DB53において、「異常検知日時」、「冷凍機シリアルナンバー」、「冷却ユニットメーカー」、及び「型式」の各フィールドには、検知部42から送られてくる動作異常の検知の通知に含まれているそれぞれの情報が格納される。また、「余寿命」及び「修理時間」の各フィールドには、余寿命マスタDB52から取得されたそれぞれの情報が格納される。なお、「No.」のフィールドには各レコードの識別番号が格納される。
【0046】
また、予測部51は、検知部42から送られてくる動作異常の検知の通知に含まれている情報と、余寿命マスタDB52から取得した情報とを用いて、異音の発生が検知された冷却ユニット30が故障して動作の停止に至る停止日時の予測を行う。より具体的には、予測部51は、当該通知に含まれている情報である異音の発生を検知した日時と、余寿命マスタDB52から取得した情報である余寿命とを用いて、異音の発生を検知した日時から余寿命が経過した日時を故障停止予測日時として算出する。
【0047】
予測部51は、更に、検知部42から送られてくる動作異常の検知の通知に含まれている情報と、余寿命マスタDB52から取得した情報と、上述のようにして算出した故障停止予測日時とを表示する画面を表す画面データを生成する。生成した画面データはサーバ50から通信ネットワーク70を介してユーザ端末60へ送付される。ユーザ端末60では、当該画面データで表される画面を、ユーザ端末60が備えている表示部61に表示させる処理が行われる。
【0048】
図6は、予測部51により生成される画面データで表される画面の例を示している。
【0049】
図6に示されている「故障検知並びに寿命予測判定結果表示」画面は、冷凍機10が自動販売機である場合の画面例である。この画面例において、「自販機シリアルナンバー」、「冷却ユニットメーカー」、及び「形式」の各欄と「異常」の欄とにそれぞれ示されている情報は、検知部42から送られてくる動作異常の検知の通知に含まれていた情報である。また、「余寿命時間」及び「修理時間」の各欄に示されている情報は、余寿命マスタDB52から取得した情報である。そして、「故障停止予測日時」に示されている情報は、予測部51により予測された、異音の発生が検知された冷却ユニット30が故障して動作の停止に至る停止日時を示している。
【0050】
なお、図6に例示した画面の各欄に示されている値は、図5に示した異常検知DB53の格納データ例において、太枠で囲まれているレコードの各データに対応している。ユーザは、表示部61に表示される当該画面で提示される各種の情報を参考にして、冷凍機10の修理予定計画の策定や、冷却ユニット30についての補修用部品の手配などを行う。
【0051】
次に図7について説明する。図7は、情報処理装置80(コンピュータ)のハードウェア構成例を示している。この情報処理装置80を用いて、図1における異音検知装置40やサーバ50を構成してもよい。
【0052】
図7において、情報処理装置80は、CPU81、メモリ82、入力装置83、表示装置84、補助記憶装置85、及び通信I/F86を備えている。これらの構成要素はいずれも内部バス87に接続されており、相互にデータの授受を行うことが可能である。なお、「CPU」とはセントラルプロセシングユニット(Central Processing Unit)の略称である。また、「I/F」とはインタフェース(Interface)の略称である。
【0053】
CPU81は、メモリ82を利用してプログラムを実行することにより、例えば、異音検知装置40における検知部42やサーバ50における予測部51がそれぞれ有している各種の機能を提供する。
【0054】
メモリ82は、例えば半導体メモリであり、RAM領域及びROM領域を含む。RAM領域は、CPU81が各種のプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に記憶しておく記憶領域として利用される。ROM領域は、CPU81が実行する各種のプログラムやデータが保存される領域であり、例えば不揮発性メモリが用いられる。なお、「RAM」とはランダムアクセスメモリ(Random Access Memory)の略称である。また、「ROM」とはリードオンリメモリ(Read Only Memory)の略称である。
【0055】
入力装置83は、例えば、キーボードやポインティングデバイス等であり、ユーザからの指示又は情報の入力に用いられる。なお、情報処理装置80が異音検知装置40として用いられる場合には、入力装置83は、収音部41から出力される動作音信号を取り込むインタフェースとしての機能を提供する。
【0056】
表示装置84は、例えば、ユーザへの問い合わせ又は指示や、処理結果の表示出力に用いられる。
【0057】
補助記憶装置85は、磁気ディスク装置、光ディスク装置、光磁気ディスク装置等であり、例えば、ハードディスクドライブやフラッシュメモリであってもよい。情報処理装置80は、補助記憶装置85にプログラム及びデータを格納しておき、それらをメモリ82にロードして使用することができる。情報処理装置80を用いて異音検知装置40を構成する場合には、補助記憶装置85が閾値マスタDB43としての機能を提供する。また、情報処理装置80を用いてサーバ50を構成する場合には、補助記憶装置85が余寿命マスタDB52と異常検知DB53とのそれぞれとしての機能を提供する。
【0058】
通信I/F86は、例えば、必要に応じてCPU81から送られてくる指示に従い、通信ネットワーク70を介してデータを送受信する。
【0059】
図7に示した情報処理装置80は、以上のようなハードウェア構成を有している。なお、情報処理装置80が図7の構成要素の全てを含む必要はなく、用途又は条件に応じて一部の構成要素を省略することも可能である。例えば、情報処理装置80を用いて異音検知装置40を構成する場合には、表示装置84を省略してもよい。
【0060】
また、図7の構成を有する情報処理装置80を用いてユーザ端末60を構成するようにしてもよい。このようにする場合には、例えば、サーバ50から送られてくる画面データを通信I/F86に受信させて、当該画面データで表されている画面を表示装置84に表示させる処理をCPU81に行わせるプログラムを作成してCPU81に実行させればよい。
【0061】
次に図8について説明する。図8は、異音検知処理の処理内容を示したフローチャートである。
【0062】
異音検知処理は異音検知装置40における検知部42によって行われる処理である。なお、この異音検知処理をCPU81に行わせる場合には、異音検知処理の処理内容を記述した異音検知プログラムを作成し、当該プログラムをCPU81に実行させるようにすればよい。
【0063】
図8の処理が開始されると、まず、S101において、冷凍機10に備えられている冷却ユニット30の種別の情報を取得する処理が行われる。前述したように、冷却ユニット30の種別の情報とは、本実施形態においては冷却ユニット30のメーカー名及び型式名をそれぞれ表すデータである。このデータは、例えば、冷却ユニット30が備える不図示の記憶素子に記憶されているものとする。この場合には、S101の処理では、この記憶素子から当該データを読み出す処理が行われる。
【0064】
S102では、S101の処理により取得された冷却ユニット30の種別の情報に対応付けられている閾値を、閾値マスタDB43から取得する処理が行われる。
【0065】
S103では、収音部41から出力される、冷却ユニット30についての動作音信号を取得する処理が行われる。
【0066】
S104では、S103の処理により取得された動作音信号をスペクトログラム変換する処理が行われる。
【0067】
S105では、S104の処理により得られた動作音信号のスペクトログラム画像データをオートエンコーダ42-2のプロセスに入力して、当該プロセスを実行させる処理が行われる。
【0068】
なお、オートエンコーダ42-2として機能する、正常動作時の冷却ユニット30の動作音信号のスペクトログラム画像を用いて教師なし学習を十分に行わせたニューラルネットワークのプロセスがCPU81上で実行可能であるとする。
【0069】
S106では、S105の処理による入力に対してオートエンコーダ42-2のプロセスから出力される再構成画像データを取得する処理が行われる。
【0070】
S107では、S105の処理により入力したスペクトログラム画像データと、S106の処理により取得した再構成画像データとを用いて、各データで表されている画像の差異の大きさに応じた異常スコアを前述したようにして算出する処理が行われる。
【0071】
S108では、S107の処理により算出された異常スコアが、S102の処理により取得された閾値よりも大きいか否かを判定する処理が行われる。この判定処理において、異常スコアが閾値よりも大きいと判定されたとき(判定結果がYESのとき)には、冷却ユニット30での異音の発生が検知されたと判断されて、S109に処理を進める。一方、異常スコアが閾値よりも大きくはないと判定されたとき(判定結果がNOのとき)には、冷却ユニット30での異音の発生は検知されていないと判断されて、S103へと処理が戻り、後続する動作音信号に対してS103以降の処理が改めて行われる。
【0072】
S109では、冷却ユニット30の動作異常の検知の通知を、通信ネットワーク70を介して管理システム20のサーバ50へ送付する処理が行われる。前述したように、この通知には、異音の発生が検知された冷却ユニット30が設置されている冷凍機10のシリアルナンバー、当該冷却ユニット30のメーカー名、当該冷却ユニット30の型式名、異音の発生を検知した日時の各情報が含まれる。
【0073】
上述したS109の処理が完了すると、S103へと処理が戻り、後続する動作音信号に対してS103以降の処理が改めて行われる。
【0074】
以上までの処理が異音検知処理である。この処理を検知部42が行うことによって、冷却ユニット30における異音の発生の検知が、収音部41が収音した冷却ユニット30の動作音を用いて行われる。
【0075】
次に図9について説明する。図9は、故障停止日時予測処理の処理内容を示したフローチャートである。
【0076】
故障停止日時予測処理はサーバ50における予測部51によって行われる処理である。なお、この故障停止日時予測処理をCPU81に行わせる場合には、故障停止日時予測処理の処理内容を記述した故障停止日時予測プログラムを作成し、当該プログラムをCPU81に実行させるようにすればよい。
【0077】
図9の処理が開始されると、まず、S201において、異音検知装置40の検知部42から送られてくる、冷却ユニット30の動作異常の検知の通知を受信したか否かを判定する処理が行われる。この判定処理において、動作異常の検知の通知を受信したと判定されたとき(判定結果がYESのとき)にはS202に処理を進める。一方、この判定処理において、動作異常の検知の通知を受信していないと判定されたとき(判定結果がNOのとき)には、当該通知を受信したと判定されるまで、このS201の判定処理が繰り返される。
【0078】
S202では、S201の処理により受信されたと判定された通知に含まれている冷却ユニット30の種別の情報に対応付けられている余寿命と修理時間との情報を余寿命マスタDB52から取得する処理が行われる。前述したように、本実施形態における冷却ユニット30の種別の情報とは、冷却ユニット30のメーカー名及び型式名をそれぞれ表すデータである。
【0079】
S203では、S201の処理により受信されたと判定された通知に含まれている情報と、S202の処理により取得した余寿命及び修理時間との情報とを対応付けて異常検知DB53に格納する処理が行われる。
【0080】
S204では、S201の処理により受信されたと判定された通知に含まれている情報で示されている異音発生の検知日時から、S202の処理により取得した情報で示されている余寿命が経過した日時を、故障停止の予測結果として算出する処理が行われる。この処理により算出される予測結果が、図6に例示した画面における故障停止予測日時となる。
【0081】
S205では、S201の処理により受信されたと判定された通知に含まれている情報と、S202の処理により取得した情報と、S204の処理により算出した故障停止予測日時とを表示する画面についての画面データを生成する処理が行われる。この処理により、例えば、図6に示した「故障検知並びに寿命予測判定結果表示」画面を表す画面データが生成される。
【0082】
S206では、S205の処理により作成された画面データをユーザ端末60へ宛てて送付して、当該画面データで表されている画面を表示部61で表示させる処理が行われる。
【0083】
上述したS206の処理が完了すると、動作異常の検知の通知の新たな受信に備えるために、S201へと処理が戻る。
【0084】
以上までの処理が故障停止日時予測処理である。この処理を予測部51が行うことによって、異音の発生が検知された冷却ユニット30が故障して動作の停止に至る停止日時の予測が、当該異音の発生を検知部42が検知した日時に基づいて行われる。
【0085】
図1に示した構成では、以上のようにして、冷却ユニット30の動作音を用いて冷却ユニット30の異常の検知が行われるので、冷凍機10への導入時期なとどといった冷却ユニット30の加増履歴の管理は不要である。また、収音部41の設置位置が多少異なったとしても収音される冷却ユニット30の動作音に大きな違いは生じないので、異常検知のために用いられるセンサである収音部41の設置位置に対して高い自由度が与えられる。
【0086】
以上、開示の実施形態とその利点について詳しく説明したが、当業者は、特許請求の範囲に明確に記載した本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、追加、省略をすることができるであろう。
【0087】
例えば、図1において、検知部42及び閾値マスタDB43を、冷凍機10内の異音検知装置40に備える代わりに、管理システム20内のサーバ50に備えるようにしてもよい。このようにする場合には、収音部41から出力される、冷却ユニット30についての動作音信号を、通信ネットワーク70を介してサーバ50に送付するようにして、異音の発生の検知をサーバ50で行うようにすればよい。
【0088】
また、例えば、図1において、サーバ50の各構成要素を異音検知装置40内に備えるようにして、冷却ユニット30についての停止日時の予測を異音検知装置40で行うようにしてもよい。
【0089】
また、例えば、異音発生の検知の手法として、オートエンコーダ42-2を用いる代わりに、例えば、GMM(Gaussian Mixture Model、混合ガウスモデル)などといった、異常検知に用いられる他の機械学習モデルを用いてもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 冷凍機
20 管理システム
30 冷却ユニット
31 圧縮器
32 凝縮器
33 膨張弁
34 蒸発器
35 配管
40 異音検知装置
41 収音部
42 検知部
43 閾値マスタDB
50 サーバ
51 予測部
52 余寿命マスタDB
53 異常検知DB
60 ユーザ端末
61 表示部
70 通信ネットワーク
80 情報処理装置
81 CPU
82 メモリ
83 入力装置
84 表示装置
85 補助記憶装置
86 通信I/F
87 内部バス
図1
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