(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148208
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】受光素子及び受光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/10 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
H01L31/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061126
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】副島 成雅
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 健次
(72)【発明者】
【氏名】田村 伸一
(72)【発明者】
【氏名】明石 照久
【テーマコード(参考)】
5F149
【Fターム(参考)】
5F149AA02
5F149AB02
5F149BA01
5F149CB07
5F149CB10
5F149DA44
5F149GA03
5F149HA13
5F149XB15
5F149XB36
(57)【要約】
【課題】受光感度の高い受光素子、及びかかる受光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様によれば、受光素子が提供される。この受光素子は、第1の導電型の基板と、基板上に設けられ、基板のバンドギャップより狭いバンドギャップを有する受光膜とを備える。受光膜は、第1の導電型の第1の領域と、第1の領域に接する、第1の導電型と異なる第2の導電型の第2の領域とを有し、第1の領域と第2の領域との界面の法線は、基板と受光膜との界面の法線と交差する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子であって、
第1の導電型の基板と、
前記基板上に設けられ、前記基板のバンドギャップより狭いバンドギャップを有する受光膜とを備え、
前記受光膜は、第1の導電型の第1の領域と、前記第1の領域に接する、前記第1の導電型と異なる第2の導電型の第2の領域とを有し、前記第1の領域と前記第2の領域との界面の法線は、前記基板と前記受光膜との界面の法線と交差する、受光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の受光素子において、
前記第1の領域と前記第2の領域との界面は、前記受光膜の前記基板側の面及び前記基板と反対側の面の双方に達している、受光素子。
【請求項3】
請求項1に記載の受光素子において、
前記第1の領域と前記第2の領域との界面を複数有する、受光素子。
【請求項4】
請求項1に記載の受光素子において、
前記第1の導電型がn型であり、前記第2の導電型がp型である、受光素子。
【請求項5】
請求項1に記載の受光素子において、
前記受光膜は、Ge及びGeSnの少なくとも一方で構成されている、受光素子。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の受光素子を製造する方法であって、
前記第1の導電型の基板を準備する第1の工程と、
前記基板の一方の面側に、スパッタリング法により前記第1の領域及び前記第2の領域を形成して、前記受光膜を得る第2の工程とを含む、受光素子の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の受光素子の製造方法において、
前記第2の工程において、前記第1の領域及び前記第2の領域の少なくとも一方は、前記スパッタリング法により被膜を形成した後、前記第1の導電型又は前記第2の導電型の不純物を前記被膜に導入することにより形成される、受光素子の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の受光素子の製造方法において、
前記不純物の前記被膜への導入は、前記不純物のイオンを注入することにより行われる、受光素子の製造方法。
【請求項9】
請求項6に記載の受光素子の製造方法において、
前記第2の工程において、前記第1の領域及び前記第2の領域の少なくとも一方は、前記第1の導電型又は前記第2の導電型の不純物を含有する材料を前記スパッタリング法により供給して形成される、受光素子の製造方法。
【請求項10】
請求項6に記載の受光素子の製造方法において、
さらに、前記第2の工程に先立って、前記基板上に絶縁膜を形成する工程と、
前記受光膜と前記基板が接する領域の前記絶縁膜を除去する工程とを含む、受光素子の製造方法。
【請求項11】
請求項6に記載の受光素子の製造方法において、
さらに、前記第2の工程に先立って、前記基板の表面に第1の導電型の拡散領域及び第2の導電型の拡散領域をそれぞれ形成する工程を含む、受光素子の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の受光素子の製造方法において、
さらに、前記第2の工程の後、前記受光膜を被覆する第2の絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の絶縁膜及び前記絶縁膜を貫通し、前記第1の導電型の拡散領域及び前記第2の導電型の拡散領域をそれぞれ露出させる貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔内に導電体を形成する工程とを含む、受光素子の製造方法。
【請求項13】
請求項6に記載の受光素子の製造方法において、
さらに、前記第2の工程の後、前記受光膜の前記基板と反対側に表面保護膜を形成する工程を含む、受光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子及び受光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲルマニウム(p型)とシリコン(n型)とのヘテロ接合を利用した受光素子が検討されている。この受光素子では、受光膜として機能するゲルマニウムに、ゲルマニウムのバンドギャップよりも大きなエネルギーを持つ光が照射されると、キャリアが励起されて光電流が生じる。
しかしながら、ゲルマニウムとシリコンとのヘテロ接合は、高濃度接合となり、リーク電流が多くなってしまう。そこで、ヘテロ接合の領域の面積を、ゲルマニウムの受光膜の面積よりも小さくすることにより、リーク電流を抑制した受光素子が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、かかる受光素子においても、光電変換に寄与する受光膜中の空乏層は、ゲルマニウムとシリコンとの界面のみにしか存在しないため、受光感度を向上させるのには限界がある。
特に、ゲルマニウム側の界面には結晶欠陥が多いため、これに起因したアクセプタが多数存在することで正孔濃度が高い。かかる界面に空乏層が形成されるため、空乏層の幅が狭くなったり、受光により励起された電子-正孔対の寿命も短くなり易い。このような観点からも、受光素子の受光感度を向上させ難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では上記事情に鑑み、受光感度の高い受光素子、及びかかる受光素子の製造方法を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、受光素子が提供される。この受光素子は、第1の導電型の基板と、基板上に設けられ、基板のバンドギャップより狭いバンドギャップを有する受光膜とを備える。受光膜は、第1の導電型の第1の領域と、第1の領域に接する、第1の導電型と異なる第2の導電型の第2の領域とを有し、第1の領域と第2の領域との界面の法線は、基板と受光膜との界面の法線と交差する。
【0007】
かかる態様によれば、空乏層が形成される領域を増やすことにより、出力電流が増加した受光感度の高い受光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)は、本発明の受光素子の第1実施形態を示す平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA-A線断面図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の受光素子の第2実施形態を示す平面図、
図3(b)は、
図3(a)のC-C線断面図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の受光素子の第3実施形態を示す平面図、
図5(b)は、
図5(a)のE-E線断面図である。
【
図6】
図6は、受光素子の一例の製造方法(製造方法A)を示す概略図である。
【
図7】
図7は、受光素子の一例の他の製造方法(製造方法B)を示す概略図である。
【
図8】
図8は、実施例及び比較例の受光素子について生成される光電流のシミュレーションに関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の受光素子及び受光素子の製造方法ついて、図示の好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
<第1実施形態>
まず、本発明の受光素子の第1実施形態について説明する。
図1(a)は、本発明の受光素子の第1実施形態を示す平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA-A線断面図である。
図2は、
図1(a)のB-B線断面図である。なお、以下の説明では、
図1及び
図2中の上側を「上」又は「上方」とも言い、下側を「下」又は「下方」とも言う。また、以下の断面を示す図では、図面が煩雑となるのを避けるため、断面を示すハッチングを省略している。
【0011】
第1実施形態では、第1の導電型がn型であり、第2の導電型がp型である場合について説明する。
図1及び
図2に示す受光素子1は、n型(第1の導電型)の基板2と、基板2上に設けられ、基板2のバンドギャップより狭いバンドギャップを有する受光膜3とを備えている。また、図示しないが、所定の箇所には、基板2に接触する一対の金属配線(導電体)が設けられている。
基板2には、例えば、シリコン(Si)基板、シリコンカーバイド(SiC)基板、シリコンゲルマニウム(SiGe)基板等を使用することができる。これらの中でも、基板2には、シリコン基板が好適に使用される。
【0012】
基板2はn型であり、n型の不純物には好ましくはリン(P)が使用される。
また、
図1(b)に示すように、基板2の上面には、例えば、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)のようなp型の不純物のイオンを注入することにより導入して、n型と異なるp型の拡散領域22が形成されている。したがって、基板2の主たる部分21はn型であり、部分的に形成された拡散領域22はp型である。
なお、
図1(b)には示されていないが、基板2の上面には、n型の不純物の濃度を高めたn型の拡散領域も形成されている(
図6及び
図7参照)。これらの拡散領域に金属配線が接続されている。
【0013】
受光膜3は、基板2のバンドギャップより狭いバンドギャップを有している。
受光膜3の構成材料は、基板2の種類との関係で適宜選択されるため、特に限定されない。基板2がシリコン基板の場合、受光膜3の構成材料(半導体材料)としては、例えば、ゲルマニウム(Ge)、ゲルマニウムスズ(GeSn)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、ヒ化インジウム(InAs)等が挙げられる。これらの半導体材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、受光膜3は、Ge及びGeSnの少なくとも一方で構成されていることが好ましい。かかる半導体材料を使用することにより、より長波長側の波長の光を使用して光電変換することができる。
【0014】
また、
図1(a)に示すように、受光膜3は、2つのn型の第1の領域31と、第1の領域31に接するp型の第2の領域32とを有している。これにより、受光膜3中にpn接合を形成することができる。なお、上記半導体材料を使用することにより、受光膜3中に第1の領域31と第2の領域32とを形成し易い。
各第1の領域31は、
図1(a)及び(b)に示すように、平面視においてほぼ長方形状をなし、受光膜3の左右方向の中央部に形成されている。また、第2の領域32は、各第1の領域31の周囲を囲むように形成されている。
【0015】
各第1の領域31は、基板2の主たる部分21にのみ接触し、第2の領域32は、基板2の主たる部分21及び拡散領域22の双方に接触している。
そして、
図1(b)に示すように、本発明では、第1の領域31と第2の領域32との界面312の法線N3が、基板2と受光膜3との界面23の法線N2と交差するように構成している。換言すれば、第1の領域31と第2の領域32との界面312が、基板2と受光膜3との界面23と交差するように構成している。
【0016】
これにより、
図2に示すように、基板2と受光膜3との界面23における空乏層D2のみならず、第1の領域31と第2の領域32との界面312における空乏層D3を形成することができる。このため、光電変換を行う領域(光エネルギを電荷に変換する領域)を増大させることができる。換言すれば、受光膜3の光電変換に寄与しない領域を減少させることができる。その結果、受光素子1の受光感度が高まり、光電変換効率を向上させることができる。
特に、空乏層D3は、受光膜3の厚さ方向に延在するため、受光する光が通過する領域の面積を十分に確保することができ、受光素子1の受光感度をより高めることができる。
【0017】
かかる観点から、法線N3と法線N2とのなす角度(
図1(b)中のθ)は、特に限定されないが、70°以上程度であることが好ましく、75°以上程度であることがより好ましく、80°以上程度であることがさらに好ましく、85°以上程度であることが特に好ましく、90°以上程度(鈍角)であってもよい。
かかる構成により、第1の領域31と第2の領域32との界面312は、受光膜3の下面(基板側の面)30a及び上面30b(基板2と反対側の面)の双方に達している。これにより、受光する光を空乏層D3に確実に通過させる(導入する)ことができるとともに、通過する領域の面積をさらに増大させることができる。よって、受光素子1の受光感度をさらに高めることができる。
【0018】
この場合、受光膜3中に形成されたp型の第2の領域32は、基板2と受光膜3との界面23から離間した領域(すなわち、上面30b側の領域)において、特に、結晶欠陥が少なく、アクセプタ濃度が低い。このため、
図2に示すように、空乏層D3が上面30bに向かうにつれて広くなっており、光電変換を行う領域が増大している。かかる観点からも、受光素子1は、優れた受光感度が得られている。
また、受光膜3の厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上程度であることが好ましく、0.5μm以上程度であることがより好ましく、1μm以上程度であることがさらに好ましい。この場合、受光素子1の受光感度を十分に高めることができる。
【0019】
上述したように、各第1の領域31の平面視形状は、ほぼ長方形状をなしている。このため、1つの第1の領域31に対して4つの界面312が存在し、合計で8つの界面312が存在する。このように、受光素子1は、第1の領域31と第2の領域32との界面312を複数有することが好ましい。この場合、界面312の数を適宜設定することにより、受光素子1の受光感度を調整することができる。
なお、第1の領域31の平面視形状は、長方形状(矩形状)に限らず、例えば、三角形状、正方形状、五角形状、六角形のような多角形状、円形状、楕円形状、凹凸形状(異形状)等であってもよい。
第1実施形態の好ましい具体例としては、例えば、基板2(主たる部分21)をn型のSi基板(n-Si)とし、拡散領域22をBが導入された領域(p+領域)とし、第1の領域31をn型のGe領域(n-Ge)とし、第2の領域32をp型のGe領域(p-Ge)とした例が挙げられる。
【0020】
<第2実施形態>
次に、本発明の受光素子の第2実施形態について説明する。
以下、第2実施形態の受光素子について、第1実施形態の受光素子との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図3(a)は、本発明の受光素子の第2実施形態を示す平面図、
図3(b)は、
図3(a)のC-C線断面図である。
図4は、
図3(a)のD-D線断面図である。
【0021】
第2実施形態の受光素子1では、第1の導電型がp型であり、第2の導電型がn型であり、それ以外は、第1実施形態の受光素子1と同様である。
基板2はp型であり、p型の不純物には好ましくはホウ素(B)が使用される。
図3(a)及び(b)に示すように、基板2の上面の中央部には、例えば、リン(P)のようなn型の不純物のイオンを注入することにより導入して、p型と異なるn型の2つの拡散領域22が形成されている。また、2つの拡散領域22は、基板2の上面の右端部において互いに接続されている。したがって、基板2の主たる部分21はp型であり、部分的に形成された拡散領域22はn型である。
【0022】
各拡散領域22の平面視で輪郭より内側に接触してn型の第2の領域32が設けられ、各第2の領域32の周囲にp型の第1の領域31が設けられている。かかる構成により、第1の領域31は、基板2の主たる部分21に接触するとともに、第2の領域32から露出する拡散領域22にも接触している。
かかる構成によっても、
図4に示すように、空乏層D3を上面30bに向かうにつれて広げることができるため、受光素子1の光電変換効率を十分に高めることができる。
第2実施形態の好ましい具体例としては、例えば、基板2(主たる部分21)をp型のSi基板(p-Si)とし、拡散領域22をPが導入された領域(n
+領域)とし、第1の領域31をp型のGe領域(p-Ge)とし、第2の領域32をn型のGe領域(n-Ge)とした例が挙げられる。
【0023】
<第3実施形態>
次に、本発明の受光素子の第3実施形態について説明する。
以下、第3実施形態の受光素子について、第1実施形態の受光素子との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図5(a)は、本発明の受光素子の第3実施形態を示す平面図、
図5(b)は、
図5(a)のE-E線断面図である。
【0024】
第3実施形態の受光素子1では、基板2と受光膜3との間の所定の領域に、追加の絶縁膜4が設けられ、それ以外は、第1実施形態の受光素子1と同様である。
絶縁膜4の構成材料(絶縁材料)としては、例えば、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SiN)等が挙げられる。これらの絶縁材料は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
かかる構成とすることにより、n型の基板2とp型の第2の領域32との接触面積を低減することができる。このため、pn接合に逆バイアスを印加した際のリーク電流の発生を抑制することができる。よって、受光素子1の受光感度をより高めることができる。
第3実施形態の好ましい具体例としては、例えば、基板2(主たる部分21)をn型のSi基板(n-Si)とし、拡散領域22をBが導入された領域(p+領域)とし、第1の領域31をn型のGe領域(n-Ge)とし、第2の領域32をp型のGe領域(p-Ge)とし、絶縁膜をSiO2膜とした例が挙げられる。
【0026】
第3の実施形態の受光素子1は、さらに、基板2の上面に形成されたn型の拡散領域(n
+領域)、受光膜3を含め基板2の上面側の部材を覆う第2の絶縁膜と、金属配線と、表面保護膜とを有していてもよい。
以下、かかる構成の受光素子1の製造方法について説明する。
図6は、受光素子の一例の製造方法(製造方法A)を示す概略図である。
図7は、受光素子の一例の他の製造方法(製造方法B)を示す概略図である。
【0027】
(製造方法A)
まず、受光素子1の製造方法Aについて説明する。
[1]まず、
図6(a)に示すように、基板2としてn型のSi基板(n-Si)を準備する(基板準備工程:第1の工程)。
[2]次に、
図6(b)に示すように、基板2の上面に、p型の不純物のイオンを注入することにより導入して、p型(第2の導電型)の拡散領域(p
+領域)22を形成するとともに、n型の不純物のイオンを注入することにより導入して、n型(第1の導電型)の拡散領域(n
+領域)24を形成する。
【0028】
[3]次に、
図6(c)に示すように、基板2の上面全体に絶縁膜4を形成する。この絶縁膜4は、例えば、熱酸化法、物理的気相成膜法(蒸着法、CVD法、スパッタリング法)等により形成することができる。
[4]次に、
図6(d)に示すように、受光膜3と基板2が接する領域の絶縁膜4を除去する。絶縁膜4の除去は、ドライエッチング法、ウェットエッチング法により行うことができる。
[5]次に、基板2の上面(一方の面)側に、スパッタリング法によりn型の第1の領域31(n-Ge)及びp型の第2の領域32(p-Ge)を形成して、受光膜3を得る(第2の工程)。
[5-1]まず、
図6(e)に示すように、真性又はp型の半導体材料(i又はp-Ge)をスパッタリング法により供給して被膜30を形成する。
【0029】
[5-2]次いで、
図6(f)に示すように、被膜30の不要な部分を除去する。被膜30の除去は、マスクを用いて、ドライエッチング法、ウェットエッチング法により行うことができる。
なお、真性半導体材料を使用した場合、本工程[5-2]の前又は後に、p型の不純物のイオンを被膜30に注入することにより導入して、p型の被膜30(p-Ge)とすることができる。
[5-3]その後、
図6(g)に示すように、被膜30を被覆するレジストを形成する。このとき、被膜30の所定の部分がレジストから露出するようにする。なお、レジスト材料には、ポジ型又はネガ型のいずれを使用してもよい。
【0030】
次いで、レジストから露出する部分の被膜30に、n型の不純物のイオンを被膜30に注入することにより導入して、n型の第1の領域31(n-Ge)を形成する。また、被膜30の残りの部分がp型の第2の領域32(p-Ge)となる。
すなわち、本工程[2](第2の工程)において、第1の領域31(n-Ge)及び第2の領域32(p-Ge)の少なくとも一方は、スパッタリング法により被膜30を形成した後、n型(第1の導電型)又はp型(第2の導電型)の不純物を被膜30に導入することにより形成される。
【0031】
[6]次に、
図6(h)に示すように、レジストを除去した後、受光膜3を被覆する第2の絶縁膜5を形成する。レジストの除去は、例えば、溶剤への溶解等により行うことができる、また、第2の絶縁膜5は、例えば、物理的気相成膜法(蒸着法、CVD法、スパッタリング法)等により形成することができる。
[7]次いで、
図6(h)に示すように、第2の絶縁膜5及び絶縁膜4を貫通し、n型の拡散領域24及びp型の拡散領域22をそれぞれ露出させる貫通孔6を形成する。この貫通孔6は、例えば、レーザー加工等により形成することができる。
【0032】
[8]その後、
図6(h)に示すように、貫通孔6を充填し、かつ第2の絶縁膜5から突出するように、金属配線(導電体)7を形成する。この金属配線7は、例えば、物理的気相成膜法(蒸着法、CVD法、スパッタリング法)、電解メッキ法、無電解メッキ法、液滴吐出法等により形成することができる。金属配線7の構成材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケルのような導電性材料が挙げられる。
[9]最後に、
図6(h)に示すように、受光膜3の基板2と反対側に、金属配線7及び第2の絶縁膜5を覆うように、表面保護膜8を形成する。この表面保護膜8は、例えば、物理的気相成膜法(蒸着法、CVD法、スパッタリング法)、塗布法等等により形成することができる。表面保護膜8の構成材料としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンのような透光性材料が挙げられる。
【0033】
(製造方法B)
次に、受光素子1の製造方法Bについて説明する。
[1']まず、
図7(a)に示すように、前記工程[1]と同様の工程を行う。
[2']次に、
図7(b)に示すように、前記工程[2]と同様の工程を行う。
[3']次に、
図7(c)に示すように、前記工程[3]と同様の工程を行う。
[4']次に、
図7(d)に示すように、前記工程[4]と同様の工程を行う。
【0034】
[5']次に、基板2の上面(一方の面)側に、スパッタリング法によりn型の第1の領域31(n-Ge)及びp型の第2の領域32(p-Ge)を形成して、受光膜3を得る(第2の工程)。
[5'-1]まず、
図7(e)に示すように、前記工程[5-1]と同様の工程を行う。
[5'-2]次いで、
図7(f)に示すように、形成すべき第1の領域31に対応する形状のレジストを被膜30上に形成した後、このレジストをマスクとして用いて、被膜30の不要な部分を除去する。なお、レジスト材料には、ポジ型又はネガ型のいずれを使用してもよい。また、被膜30の除去は、ドライエッチング法、ウェットエッチング法により行うことができる。
なお、真性半導体を使用した場合、本工程[5'-2]の前又は後に、p型の不純物のイオンを被膜30に注入することにより導入して、p型の被膜30(p-Ge)とすることができる。
【0035】
[5'-3]その後、
図7(g1)に示すように、レジストを除去した後、第1の領域31を被覆する第2の領域32となる第2の被膜300をスパッタリング法により形成する。レジストの除去は、例えば、溶剤への溶解等により行うことができる、また、第2の被膜300は、例えば、物理的気相成膜法(蒸着法、CVD法、スパッタリング法)等により形成することができる。第2の被膜300の構成材料には、n型(第1の導電型)の不純物を含有する材料が用いられる。
さらに、
図7(g2)に示すように、第2の被膜300の不要な部分を除去する。第2の被膜300の除去は、マスクを用いて、ドライエッチング法、ウェットエッチング法により行うことができる。
【0036】
すなわち、本工程[5'](第2の工程)において、第1の領域31(n-Ge)及び第2の領域32(p-Ge)の少なくとも一方は、n型(第1の導電型)又はp型(第2の導電型)の不純物を含有する材料をスパッタリング法により供給して形成される。
[6']~[9']次に、
図7(h)に示すように、前記工程[6]~[9]と同様の工程を行う。
【0037】
以上、本発明の受光素子及び受光素子の製造方法について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、本発明の受光素子は、同様の機能が発揮される任意の構成と置換されてもよく、任意の目的の機能を発揮する構成を追加するようにしてもよく、不要な構成を削除するようにしてもよい。
また、本発明の受光素子の製造方法は、同様の機能が発揮される任意の工程と置換されてもよく、任意の目的の機能を発揮する工程を追加するようにしてもよく、不要な工程を削除するようにしてもよい。
なお、上記第1~第3実施形態のいずれにおいても、受光膜3中のn型の領域の数は2つであるが、3つ以上とすることもできる。受光膜3中のn型の領域の数を増加させることにより、受光領域(pn接合の領域)を増大させて受光感度をさらに高めることができる。
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0038】
(1)受光素子であって、第1の導電型の基板と、前記基板上に設けられ、前記基板のバンドギャップより狭いバンドギャップを有する受光膜とを備え、前記受光膜は、第1の導電型の第1の領域と、前記第1の領域に接する、前記第1の導電型と異なる第2の導電型の第2の領域とを有し、前記第1の領域と前記第2の領域との界面の法線は、前記基板と前記受光膜との界面の法線と交差する、受光素子。
【0039】
(2)上記(1)に記載の受光素子において、前記第1の領域と前記第2の領域との界面は、前記受光膜の前記基板側の面及び前記基板と反対側の面の双方に達している、受光素子。
【0040】
(3)上記(1)又は(2)に記載の受光素子において、前記第1の領域と前記第2の領域との界面を複数有する、受光素子。
【0041】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の受光素子において、前記第1の導電型がn型であり、前記第2の導電型がp型である、受光素子。
【0042】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の受光素子において、前記受光膜は、Ge及びGeSnの少なくとも一方で構成されている、受光素子。
【0043】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の受光素子を製造する方法であって、前記第1の導電型の基板を準備する第1の工程と、前記基板の一方の面側に、スパッタリング法により前記第1の領域及び前記第2の領域を形成して、前記受光膜を得る第2の工程とを含む、受光素子の製造方法。
【0044】
(7)上記(6)に記載の受光素子の製造方法において、前記第2の工程において、前記第1の領域及び前記第2の領域の少なくとも一方は、前記スパッタリング法により被膜を形成した後、前記第1の導電型又は前記第2の導電型の不純物を前記被膜に導入することにより形成される、受光素子の製造方法。
【0045】
(8)上記(7)に記載の受光素子の製造方法において、前記不純物の前記被膜への導入は、前記不純物のイオンを注入することにより行われる、受光素子の製造方法。
【0046】
(9)上記(6)~(8)のいずれか1つに記載の受光素子の製造方法において、前記第2の工程において、前記第1の領域及び前記第2の領域の少なくとも一方は、前記第1の導電型又は前記第2の導電型の不純物を含有する材料を前記スパッタリング法により供給して形成される、受光素子の製造方法。
【0047】
(10)上記(6)~(9)のいずれか1つに記載の受光素子の製造方法において、さらに、前記第2の工程に先立って、前記基板上に絶縁膜を形成する工程と、前記受光膜と前記基板が接する領域の前記絶縁膜を除去する工程とを含む、受光素子の製造方法。
【0048】
(11)上記(6)~(10)のいずれか1つに記載の受光素子の製造方法において、さらに、前記第2の工程に先立って、前記基板の表面に第1の導電型の拡散領域及び第2の導電型の拡散領域をそれぞれ形成する工程を含む、受光素子の製造方法。
【0049】
(12)上記(11)に記載の受光素子の製造方法において、さらに、前記第2の工程の後、前記受光膜を被覆する第2の絶縁膜を形成する工程と、前記第2の絶縁膜及び前記絶縁膜を貫通し、前記第1の導電型の拡散領域及び前記第2の導電型の拡散領域をそれぞれ露出させる貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔内に導電体を形成する工程とを含む、受光素子の製造方法。
【0050】
(13)上記(6)~(12)のいずれか1つに記載の受光素子の製造方法において、さらに、前記第2の工程の後、前記受光膜の前記基板と反対側に表面保護膜を形成する工程を含む、受光素子の製造方法。
もちろん、この限りではない。
【0051】
最後に、本開示に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例0052】
以下、実施例により本発明の内容を更に具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
図8は、実施例及び比較例の受光素子について生成される光電流のシミュレーションに関する図である。
(実施例)
図8(a)に示す構成の受光素子について生成される光電流のシミュレーションを行った。
基板をn型のSi基板とし、受光膜をn型の第1の領域及びp型の第2の領域を有するGe膜とした。
受光膜の厚さは、1μmとし、第1の領域と第2の領域との界面の法線と、基板と受光膜との界面の法線とのなす角度を90°とした。
また、Ge膜のSi基板との界面のホール密度を1×10
18cm
-3とした。
【0053】
(比較例)
図8(b)に示す構成の受光素子について生成される光電流のシミュレーションを行った。
受光膜を単一のp型のGe膜とした以外は、実施例と同様である。
実施例及び比較例の受光素子に対して、1Vの逆バイアスを印加した状態で、放射強度0.001W/cm
2の光を照射するものとした。
その結果を、
図8(c)のグラフに示す。
【0054】
図8(c)に示すように、n型のSi基板の不純物濃度が5×10
14cm
-3と、4×10
15cm
-3とのいずれの場合も、実施例の受光素子では、比較例の受光素子に比較して光電流が増加しており、受光感度が向上することが確認された。
また、受光膜中のn型の領域の数を増加させることにより、pn接合の領域を増大させて受光感度をさらに高めることも可能である。