(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148211
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】滑車昇降式シェルター扉
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20241010BHJP
E04H 9/12 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E04H9/12
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061130
(22)【出願日】2023-04-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196106
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 一直
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA07
2E139AA15
2E139AA30
2E139AB24
2E139AC26
(57)【要約】
【課題】簡単な設備で容易に地上と地下シェルター間を往来できる滑車昇降式シェルター扉を提供する。
【解決手段】シェルター扉1は、シェルター100の天井101に設けられた開口部110を開閉するための扉本体10、支柱12を介して扉本体10に接続する昇降台20、滑車装置70、滑車装置70に接続する錘部W、錘部Wに接続する駆動部60を備える。さらに、扉本体10および昇降台20の昇降方向D1への移動を誘導する誘導装置50を備える。扉本体10が開口部110を閉鎖している状態で、駆動部としてのウインチ60を駆動して、錘部Wを床102から天井101の方向に移動させると、扉本体10および昇降台20は同期して天井101から床102の方向に向かって昇降方向D1に移動する。これにより、扉本体10は開口部110を開閉する。昇降台20と天井101がほぼ面一となったとき、扉本体10および昇降台20の上昇は制限される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルターの天井に設けられる開口部を開閉する扉本体と、
前記シェルターの床に対向して設けられ、支柱を介して前記扉に接続する昇降台と、
力の作用する方向を変換する滑車装置と、
前記滑車装置に接続する錘部と、
前記錘部に接続する駆動部と、を備え、
前記開口部を閉鎖した状態で、前記駆動部を駆動して、前記錘部を前記天井から前記床の方向に移動させたとき、前記扉本体および前記昇降台は同期して前記床から前記天井の方向に向かって昇降方向に移動して前記扉本体は前記開口部を開放し、
前記開口部を開放した状態で、前記駆動部を駆動して、前記錘部を前記床から前記天井の方向に移動させたとき、前記扉本体および前記昇降台は同期して前記天井から前記床の方向に向かって昇降方向に移動して前記扉本体は前記開口部を閉鎖する滑車昇降式シェルター扉。
【請求項2】
前記昇降台と前記天井との間の段差が解消されたとき、前記昇降装置の前記床から前記天井に向かう昇降方向の移動を制限するストッパーをさらに備える請求項1に記載の滑車昇降式シェルター扉。
【請求項3】
前記扉本体および前記昇降台の昇降方向への移動を誘導する誘導装置をさらに備え、
前記誘導装置は、昇降方向に延びるガイドレールと、前記昇降台に取り付けられるスライド部を有し、
前記スライド部は、前記ガイドレールに嵌合した状態で昇降方向にスライドできる請求項1に記載の滑車昇降式シェルター扉。
【請求項4】
前記滑車装置は、前記天井に取付けられた一対の天井第1シーブと、前記昇降台に取り付けられた一対の昇降台第1シーブと、滑車第1ワイヤーとを有し、
前記錘部は、前記滑車第1ワイヤーのそれぞれの端部に接続する一対の錘を有し、
前記駆動部は一対の前記錘のそれぞれに接続する一対の駆動源を有し、
前記滑車第1ワイヤーは、一方の前記錘に接続し、一方の前記天井第1シーブを経由し、さらに一対の前記昇降台第1シーブを経由し、さらに他方の前記天井第1シーブを経由して他方の前記錘に接続する請求項1に記載の滑車昇降式シェルター扉。
【請求項5】
対向して設けられる二組のトラス部材をさらに備え、
前記扉本体、前記昇降台、前記支柱、および前記トラス部材は協働してトラス構造を構成する請求項1に記載の滑車昇降式シェルター扉。
【請求項6】
前記滑車装置は、前記トラス構造の下端交差部に取り付けられた昇降台第2シーブと、前記天井に取り付けられた天井第2シーブと、滑車第2ワイヤーとを有し、
前記滑車第2ワイヤーの一端は前記天井に接続し、前記昇降台第2シーブ、前記天井第2シーブを経由して他端は前記錘部に接続する請求項5に記載の滑車昇降式シェルター扉。
【請求項7】
前記扉本体は、コンクリート製、鉄筋コンクリート製、およびコンクリートと鋼の合成構造より成る一群から選択された一つとなる重量扉である請求項1~6のいずれか1項に記載の滑車昇降式シェルター扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内側に設けられる滑車装置によって開閉する滑車昇降式シェルター扉に関する。
【背景技術】
【0002】
地下シェルターは、本体が地下に埋設されることから、津波、火災などの自然災害に対して極めて安全に避難できる施設である。また、放射線遮蔽性能を容易に高めることが可能であることから、核シェルターとしての利用も期待できる。
【0003】
しかし、地下シェルターの出入りは、重量のあるシェルター扉を開閉して、さらに昇降を伴うことが一般的である。重量のあるシェルター扉の開閉は、多大な労力を要すると考えられる。また、昇降は階段やタラップを利用するのが一般的であり、高齢者の方々や、歩行が不自由な方々には負担が大きなことも事実である。
【0004】
特許文献1は、パンタグラフ式のリフトを利用して人や物資の安全かつ容易で迅速な避難移動を可能にした防災地下シェルターが提案されている。この地下シェルターは、地上面から掘り込まれた埋設ピット内に設置されるシェルタードッグユニットと、シェルタードッグユニット地上出入口と地下シェルタードッグ地下出入口との間にエレベーターがパンタグラフ式リフト機構で構成されるエレベーター、およびエレベーターを駆動させる蓄電バッテリーが設けられている。さらに、蓄電池の全電力消費時又は商用電源の停電時に手動でクランクを回して空気濾過システムを作動させるバックアップ装置が設けられている。
【0005】
特許文献2は、上部が開放され、四方が壁から成る地下に埋設されたコンクリート製のシェルタードッグに連結した地下シェルターにおいて、シェルタードッグ内の内周寄りの床に固定された1本又は複数本のシェルターレールに沿って昇降駆動装置により上下移動ができる筐体を設けた地下シェルターが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-90876号公報
【特許文献2】特開2014-198984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で提案されている発明は、地下シェルター内の地下空間に移動しようとすると、防水装甲ドアを開放してエレベーターに乗り込んだ後に、解放した防水装甲ドアを再び閉じてエレベーターで降下する手順を踏む必要がある。さらにエレベーターで降下した後に、中仕切りドアを開閉することを要する。上述のように、地上から地下空間への移動は多くの手順を踏む必要がある。また、防水装甲ドアは、爆風に伴う衝撃波・風圧・振動・放射線・爆弾の破片・ダスト・ガス・火災及び熱・電磁波・洪水に対し、内部を防護する性能を有するものであることから重量の重い扉であると考えられる。このような重量扉の開閉は、手足の不自由な方々にとっては大きな負担となる。特許文献2についは、シェルタードックそのものを昇降させる仕組みであることから、地下シェルターを構成するそれぞれの設備の大規模化は避けられない。
【0008】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、簡単な設備で容易に地上と地下シェルター間を往来できるリフトアップ式シェルター扉を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための発明は、滑車昇降式シェルター扉であって、シェルターの天井に設けられる開口部を開閉する扉本体と、シェルターの床に対向して設けられ、支柱を介して扉に接続する昇降台と、力の作用する方向を変換する滑車装置と、滑車装置に接続する錘部と、錘部に接続する駆動部とを備え、開口部を閉鎖した状態で、駆動部を駆動して、錘部を天井から床の方向に移動させたとき、扉本体および昇降台は同期して床から天井の方向に向かって昇降方向に移動して扉本体は開口部を開放し、開口部を開放した状態で、駆動部を駆動して、錘部を床から天井の方向に移動させたとき、扉本体および昇降台は同期して天井から床の方向に向かって昇降方向に移動して扉本体は開口部を閉鎖する。
【0010】
この構成よれば、扉本体の移動は滑車装置と錘部を利用して行われるので、錘部の重量を適切に設定することで、扉本体を昇降方向に移動させるときの駆動部の負荷の低減を図ることができる。
【0011】
好ましくは、昇降台と前記天井との間の段差が解消されたとき、昇降装置の床から天井に向かう昇降方向の移動を制限するストッパーをさらに備えることである。
【0012】
この構成によれば、ストッパーによって、昇降台と前記天井との間の段差が解消されたとき、特段の操作を必要とすることなく昇降装置の床から天井に向かう昇降方向の移動が制限できるので、天井から昇降台へ、あるいは昇降台から天井への移動が容易になる。
【0013】
好ましくは、扉本体および昇降台の昇降方向への移動を誘導する誘導装置をさらに備え、誘導装置は、昇降方向に延びるガイドレールと、昇降台に取り付けられるスライド部を有し、スライド部は、ガイドレールに嵌合した状態でスライドできることである。
【0014】
この構成によれば扉本体および昇降台の昇降方向への移動を誘導する誘導装置をさらに備え、誘導装置は、昇降方向に延びるガイドレールと、昇降台に取り付けられるスライド部を有し、スライド部は、ガイドレールに嵌合した状態で昇降方向にスライドできるので、扉本体および昇降台の円滑な昇降が可能となる。また、昇降中の地震力などによる不意な外力がスライド部に負荷された場合でも、昇降台の昇降方向以外の不要な変位は抑制される。
【0015】
好ましくは、滑車装置は、天井に取付けられた一対の天井第1シーブと、昇降台に取り付けられた一対の昇降台第1シーブと、滑車第1ワイヤーとを有し、錘部は、滑車第1ワイヤーのそれぞれの端部に接続する一対の錘を有し、駆動部は一対の錘のそれぞれに接続する一対の駆動源を有し、滑車第1ワイヤーは、一方の錘に接続し、一方の天井第1シーブを経由し、さらに一対の昇降台第1シーブを経由し、さらに他方の天井第1シーブを経由して他方の錘に接続することである。
【0016】
この構成によれば、滑車装置はいわゆる動滑車であることから、扉本体等を昇降させるときの駆動部の駆動力の低減を図ることができる。また、錘を用いて扉本体等の重量のバランスを図ることで、駆動部の駆動力のさらなる低減を図ることができる。
【0017】
好ましくは、対向して設けられる二組のトラス部材をさらに備え、扉本体、昇降台、支柱、およびトラス部材は協働してトラス構造を構成することである。
【0018】
この構成によれば、扉本体、昇降台、支柱、およびトラス部材は協働してトラス構造を構成するので、昇降中の扉本体と昇降台の相対変位を抑制することができる。
【0019】
好ましくは、滑車装置は、トラス構造の下端交差部に取り付けられた昇降台第2シーブと、天井に取り付けられた天井第2シーブと、滑車第2ワイヤーとを有し、滑車第2ワイヤーの一端は天井に接続し、昇降台第2シーブ、前記天井第2シーブを経由して他端は前記錘部に接続することである。
【0020】
この構成によれば、滑車装置はいわゆる動滑車であることから、扉本体等を昇降させるときの駆動部の駆動力の低減を図ることができる。また、錘を用いて扉本体等の重量のバランスを図ることで、駆動部の駆動力のさらなる低減を図ることができる。
【0021】
上述の扉本体は、コンクリート製、鉄筋コンクリート製、およびコンクリートと鋼の合成構造より成る一群から選択された一つとなる重量扉である。
【0022】
扉本体を、コンクリート製、鉄筋コンクリート製、およびコンクリートと鋼の合成構造より成る一群から選択された一つとなる重量扉とすることで、その重量効果によって意図しない不用意な開閉を防止できる。さらに、扉本体の強度を容易に高めることができるとともに、高い放射線遮蔽性能を容易に具備できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態1における扉本体が開口部を開放する状態の正面断面図である。
【
図2】同、開口部を閉鎖する状態の正面断面図である。
【
図5】本実施形態2における扉本体が開口部を開放する状態の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1~3を参照して本発明の滑車昇降式シェルター扉1(以後、シェルター扉1と記す。)の実施形態1を詳述する。
【0025】
図1、2に示す通り、シェルター扉1は、シェルター100の天井101に設けられた開口部110を開閉するための扉本体10、支柱12を介して扉本体10に接続する昇降台20、力の作用する方向を変換する滑車装置70、滑車装置70に接続する錘部W、錘部Wに接続するウインチ60(駆動部、駆動源)を備えている。さらに、扉本体10および昇降台20の昇降方向D1への移動を誘導する誘導装置50を備えている。シェルター100は一部または全部が地下120に設けられている、いわゆる地下シェルターである。
【0026】
扉本体10が上限位置で開口部110を開放している状態で(
図1参照)、ウインチ60を駆動して、錘部Wを床102から天井101の方向に移動させると、扉本体10および昇降台20は同期して天井101から床102の方向に向かって昇降方向D1に沿って下降移動する。これにより、扉本体10は下限位置に到達して開口部110を閉鎖する(
図2参照)。また、扉本体10が下限位置で開口部110を閉鎖している状態で、ウインチ60を駆動して、錘部Wを天井101から床102の方向に移動させると、扉本体10および昇降台20は同期して床102から天井101の方向に向かって昇降方向D1に沿って上限位置まで上昇移動する。これにより、扉本体10は開口部110を開放する。閉扉時の下限位置で昇降台20の上面と天井101の上面とがほぼ面一となったとき、すなわち、閉扉時に昇降台20と天井101との間の段差が解消されたとき、扉本体10および昇降台20の下降移動は制限される。ここで、「ほぼ面一」とは、当該技術分野における社会通念上の段差も含み、例えば0~10mm程度の範囲内での段差を含み、段差の全くないフラットな面一も含む概念とする。また、バリアーフリーなどを考慮しない場合には、「ほぼ面一」に限らず、大なり小なりの段差があってもよい(以下同じ)。
【0027】
扉本体10は、平面視矩形の平板であり、外縁上端部は突出して階段形状をなしている。また、突出した部分の下面に、突出下面11が設けられている。一方で、開口部110は外縁下端部が突出して、扉本体10の外縁上端部に対応する形状となる階段形状をなしている。また、また突出した部分の上面に、突出上面111が設けられている。突出上面111と突出下面11が接触することで、扉本体10の下降移動は下限位置で制限されて、開口部110は扉本体10によって閉鎖される。突出下面11と突出上面111との間に生じる隙間の水密性能を向上させるために、突出下面11、あるいは突出上面111のいずれかにパッキン等(図示略)をシール部材として装着することが好ましい。
【0028】
扉本体10と天井101は、厚さがほぼ同じであり、開口部110が扉本体10によって閉鎖されたとき、天井101の上面と扉本体10の上面は、ほぼ面一となっている。
【0029】
扉本体10は、鉄筋コンクリート製を例示するが、これに限るものではない。コンクリート製、鋼製、コンクリートと鋼板の構成構造のいずれかであってもよい。扉本体10の厚さとしては、20cm~40cmであることが好ましい。より好ましくは30cm~40cmである。これにより所定の放射線遮蔽性能を具備できる。
【0030】
昇降台20は、平面視矩形の平板であり、支柱12を介して扉本体10と接続している。支柱12は昇降台20の四隅に設けられて、昇降方向D1に延びており、扉本体10の四隅に接続している。列状に並ぶ支柱12と支柱12との間に、手摺13が設けられている。手摺13は、昇降時における昇降台20からの落下防止を目的としたものである。
【0031】
昇降台20の外縁端部に、渡り板21の一側端部が枢支部(図示略)により回動可能に接続している。昇降台20が上昇して、天井101の上面とほぼ面一となったとき、すなわち昇降台20と天井101の段差が解消されたとき、渡り板21を天井101の方向に回動することで、渡り板21を昇降台20と天井101との間に架け渡すことができる(
図1に実線と一点鎖線で示す渡り板21参照)。これにより、昇降台20と天井101との間に生じる隙間を塞ぐことができて、天井101から昇降台20へ、あるいは昇降台20から天井101への円滑な移動が可能となる。
【0032】
滑車装置70は、一対の天井第1シーブ71a、71b、および一対の昇降台第1シーブ72a、72bを有している。
図3に示す通り、一対の天井第1シーブ71a、71bの各外輪、および一対の昇降台第1シーブ72a、72bの各外輪は、天井101に対して垂直であって扉本体10の短手方向Eの両端の中心を通過する仮想平面S上に配置されている。
【0033】
一対の天井第1シーブ71a、71bは、開口部110を挟んで天井101の下面に取り付けられている。また、一対の昇降台第1シーブ72a、72bは、昇降台20の下面で長手方向のそれぞれの端部の下面に取り付けられている。すなわち、平面視で一対の天井第1シーブ71a、71bは、一対の昇降台第1シーブ72a、72bを挟んだ状態になっている。
【0034】
一対の天井第1シーブ71a、71bと一対の昇降台第1シーブ72a、72bとの間に第1滑車ワイヤー75が架け渡されている。具体的には第1滑車ワイヤー75は、天井第1シーブ71a、71bの上端部に接しており、昇降台第1シーブ72a、72bの下端部に接している。これにより、一対の天井第1シーブ71a、71b、一対の昇降台第1シーブ72a、72b、および第1滑車ワイヤー75で動滑車を構成し、第1滑車ワイヤー75の各端部を天井101から床102に向かって移動させることで扉本体10、昇降台20は同期して床102から天井101に向かって昇降方向D1に沿って上昇移動する。
【0035】
錘部Wは一対の錘Wa、Wbを有しており、それぞれの錘Wa、Wbは、第1滑車ワイヤー75のそれぞれの端部に接続している。錘部Wは、昇降構造部LSが上昇(床102から天井101に向かって昇降方向D1に移動)するときに要する、昇降構造部LSへの上昇付勢力を低減するためのものである。すなわち、各シーブ(71a、71b、72a、72b)が
図1のように配置された状態で、錘部Wの重量が、昇降構造部LSの重量の50%を超えるときは、錘部Wに特段の負荷をかけなくても、昇降構造部LSは上昇する。錘部Wの重量は、錘部Wに負荷をかけない状態で、昇降構造部LSが昇降方向D1に上昇しない重量に設定することが好ましい。すなわち、昇降構造部LSの重量の50%の重量を超えないことが好ましい。より好ましくは、昇降構造部LSの重量の40%~45%である。なお、昇降構造部LSとは、扉本体10と同期して上昇・下降する構造の部分である。具体的には、扉本体10、支柱12、昇降台20、一対の昇降台第1シーブ72a、72b等で構成されている。
【0036】
図示左右に配置された一対のウインチ60のそれぞれは、一対の錘Wa、Wbのそれぞれに接続している。ウインチ60を駆動してワイヤー61を巻き上げることで、昇降構造部LSは昇降方向D1に沿って上昇し、ワイヤー61を巻き戻すことで昇降構造部LSは自重も働いて昇降方向D1に沿って下降する。一対のウインチ60は同時に駆動してもよいし、一方のウインチ60を最初に駆動した後に、時間差をもって他方のウインチ60を駆動してもよい。
【0037】
扉本体10が開口部110を開放して上限位置に達したとき、あるいは開口部110を閉鎖して下限位置に達したとき、ウインチ60の駆動を停止する近接センサやリミットスイッチを備えることが好ましい。
【0038】
前述の誘導装置50は、昇降構造部LSを昇降方向D1に円滑に昇降さるための装置であり、4本のガイドレール51と、4本のガイドレール51に沿ってスライド可能に接続するスライド部22を有している。ガイドレール51は、ガイド凹部25に嵌合されて昇降方向D1に沿って延びるガイド凸部55を有する部材であり、ガイドレール51の一端は天井101に、他端は床102にそれぞれ固定されている。
【0039】
スライド部22は、昇降台20の四隅下端部から床102の方向に向かって延びる部材であり、
図4に示す通り、ガイド凸部55を覆う状態でガイドレール51に沿ってスライド可能に嵌め込まれるガイド凹部25を有している。ガイド凹部25がガイド凸部55に嵌め込まれることで、仮に昇降台20の昇降途中に、スライド部22に不測の外力が負荷されたときでも、スライド部22の昇降方向D1以外の不要な移動は制限される。
【0040】
ガイドレール51の上端部にストッパー58が装着されている。扉本体10が上限位置に達したとき、スライド部22がストッパー58に当接する。この時、昇降台20は天井101とほぼ面一となる高さから上方の上限位置に離れ、スライド部22の上昇変位は制限される。なお、ストッパー58とスライド部22との間に、圧縮コイルスプリングやゴム部材などの緩衝材を設けストッパー58に対するスライド部22のあたりを緩和させることが好ましい。
【0041】
図5、6を参照して、シェルター扉1の実施形態2について詳述する。実施形態1と実施形態2は共通する構成が含まれることから、主に異なる構成について説明する。また、実施形態1と同様の構成については同じ符号を付し、異なる構成については200番台の符号を付す。
【0042】
実施形態2は、昇降台20と扉本体10の一体化を図るために、二組のトラス構造280が対向して設けられている。トラス構造280はトラス部材281、昇降台20、扉本体10、および支柱12で構成されている。トラス部材281は、垂直材282と斜材283を有している。垂直材282の下端部と斜材283の下端部が交差する交差部に昇降台第2シーブ272が取付けられている。
【0043】
滑車装置230は、天井第2シーブ271、昇降台第2シーブ272、および滑車第2ワイヤー275を有している。天井101に天井第2シーブ271が取付けられている。昇降台第2シーブ272と天井第2シーブ271は滑車第2ワイヤー275を介して接続している。滑車第2ワイヤー275の一端は天井101の下面に固定され、中間部が昇降台第2シーブ272の下端部および、天井第2シーブ271の上端部を経由して下端が錘部Wに接続している。なお、上述の一端、中間部および下端といった呼称は、滑車第2ワイヤー275に帰属するものである。
【0044】
実施形態1と同様な機能を有する誘導装置250は、
図6に示す構成となっている。ガイドレール251は、円筒を用いており、スライド部222はガイドレールの外周部に環状に設けられる円環を用いている。さらに、スライド部222は、ベアリング等(図示略)を介してガイドレール251に接続する構造としてもよい。
【0045】
錘部Wは、ウインチ60を駆動してワイヤー261を巻き取り、巻き戻しすることで、昇降方向D1に昇降する。具体的には、ワイヤー261を巻き取ることで錘部Wは降下し、同時に昇降構造部LS200は上昇する。ワイヤー261を巻き戻すことで、錘部Wは上昇し、同時に昇降構造部LS200は自重の作用も働いて降下する。本実施形態2では、天井第2シーブ271と昇降台第2シーブ272の2台の滑車を設けたことから、昇降構造部LS200の昇降高さは、ワイヤー261の巻き取り・巻き戻し長さの二分の一となるが、昇降構造部LS200へ加えるウインチ60の駆動力は半分で済む(ただし、仕事量としては変わらない)。
【0046】
本実施形態は例示であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。例えば、駆動部や駆動源としては、ウインチ60の替わりに油圧ジャッキ等を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係るリフトアップ式昇降装置は、歩行が困難で車椅子での移動を余儀なくされる方々も、容易に、しかも短時間にシェルターに避難できることから産業用の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0048】
1 :シェルター扉
10 :扉本体
12 :支柱
20 :昇降台
22、222 :スライド部
30、230 :滑車装置
50、251 :誘導装置
51、251 :ガイドレール
58 :ストッパー
60 :ウインチ(駆動部、駆動源)
71a、71b :天井第1シーブ
72a、72b :昇降台第1シーブ
75 :滑車第1ワイヤー
100 :シェルター
101 :天井
102 :床
110 :開口部
271 :天井第2シーブ
272 :昇降台第2シーブ
275 :滑車第2ワイヤー
TS200 :トラス構造
D1 :昇降方向
【手続補正書】
【提出日】2023-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
シェルターの天井に設けられる開口部を開閉する扉本体と、
前記シェルターの床に対向して設けられ、支柱を介して前記扉本体に接続する昇降台と、
力の作用する方向を変換する滑車装置と、
前記滑車装置に接続する錘部と、
前記錘部に接続する駆動部と、を備え、
前記開口部を閉鎖した状態で、前記駆動部を駆動して、前記錘部を前記天井から前記床の方向に移動させたとき、前記扉本体および前記昇降台は同期して前記床から前記天井の方向に向かって昇降方向に移動して前記扉本体は前記開口部を開放し、
前記開口部を開放した状態で、前記駆動部を駆動して、前記錘部を前記床から前記天井の方向に移動させたとき、前記扉本体および前記昇降台は同期して前記天井から前記床の方向に向かって昇降方向に移動して前記扉本体は前記開口部を閉鎖する滑車昇降式シェルター扉。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
前記昇降台と前記天井との間の段差が解消されたとき、前記昇降台の前記床から前記天井に向かう昇降方向の移動を制限するストッパーをさらに備える請求項1に記載の滑車昇降式シェルター扉。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記課題を解決するための発明は、滑車昇降式シェルター扉であって、シェルターの天井に設けられる開口部を開閉する扉本体と、シェルターの床に対向して設けられ、支柱を介して扉本体に接続する昇降台と、力の作用する方向を変換する滑車装置と、滑車装置に接続する錘部と、錘部に接続する駆動部とを備え、開口部を閉鎖した状態で、駆動部を駆動して、錘部を天井から床の方向に移動させたとき、扉本体および昇降台は同期して床から天井の方向に向かって昇降方向に移動して扉本体は開口部を開放し、開口部を開放した状態で 、駆動部を駆動して、錘部を床から天井の方向に移動させたとき、扉本体および昇降台は同期して天井から床の方向に向かって昇降方向に移動して扉本体は開口部を閉鎖する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
好ましくは、昇降台と前記天井との間の段差が解消されたとき、昇降台の床から天井に向かう昇降方向の移動を制限するストッパーをさらに備えることである。