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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148225
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】給水システム
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/044 20060101AFI20241010BHJP
   E03C 1/05 20060101ALI20241010BHJP
   E03C 1/042 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
E03C1/044
E03C1/05
E03C1/042 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061168
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】出雲 洋助
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BB02
2D060BC02
2D060BC11
2D060BC12
2D060BE11
2D060BE15
2D060BF03
2D060CA04
2D060CA09
(57)【要約】
【課題】ユーザーが指定する温度の水を自動的に且つ迅速に供給することができる給水システムを提供することを目的とする。
【解決手段】給水システムは、冷温水を吐出する蛇口と、お湯を生成する給湯機と、給湯機と蛇口とを接続し、給湯機にて生成されたお湯が流れるお湯配管と、水道管と蛇口とを接続し、水が流れる水配管と、お湯配管を流れるお湯の流量を調整する第1流量調整弁と、水配管を流れる水の流量を調整する第2流量調整弁と、給湯機の出口におけるお湯の温度である出口温度と蛇口の入口におけるお湯の温度である入口温度との温度差、及びユーザーにより指定された指定温度に基づき、第1流量調整弁及び第2流量調整弁を制御する制御装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷温水を吐出する蛇口と、
お湯を生成する給湯機と、
前記給湯機と前記蛇口とを接続し、前記給湯機にて生成された前記お湯が流れるお湯配管と、
水道管と前記蛇口とを接続し、水が流れる水配管と、
前記お湯配管を流れる前記お湯の流量を調整する第1流量調整弁と、
前記水配管を流れる前記水の流量を調整する第2流量調整弁と、
前記給湯機の出口における前記お湯の温度である出口温度と前記蛇口の入口における前記お湯の温度である入口温度との温度差、及びユーザーにより指定された指定温度に基づき、前記第1流量調整弁及び前記第2流量調整弁を制御する制御装置と、を備える給水システム。
【請求項2】
前記制御装置は、過去に測定された複数の前記出口温度及び複数の前記入口温度から前記温度差を予測する請求項1に記載の給水システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記出口温度が第1温度以上であるか否かを判定し、
前記出口温度が前記第1温度以上である場合、第1給水処理を実施し、
前記出口温度が前記第1温度未満である場合、前記第1給水処理とは異なる第2給水処理又は第3給水処理を実施するものであり、
前記第1温度は、前記指定温度に前記温度差を加算したものである請求項1又は2に記載の給水システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記お湯配管を流れる前記お湯の流量の上限値が前記ユーザーによって指定される指定流量以上であるか否かを判定し、
前記上限値が前記指定流量以上である場合、前記第2給水処理を実施し、
前記上限値が前記指定流量未満である場合、前記第2給水処理とは異なる前記第3給水処理を実施する請求項3に記載の給水システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1給水処理において、
前記お湯の流量を1としたときの、前記指定温度を満たす前記水の流量の比率を求め、
前記比率に基づき前記第1流量調整弁及び前記第2流量調整弁を制御する請求項3に記載の給水システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第2給水処理において、
前記出口温度が前記第1温度以上となるまで前記給湯機の沸き上げを行い、
前記出口温度が前記第1温度以上となった場合に、前記第1流量調整弁を開とし、前記第2流量調整弁を閉のままとする請求項4に記載の給水システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第3給水処理において、
前記出口温度が前記第1温度よりも高い第2温度以上となるまで前記給湯機の沸き上げを行い、
前記出口温度が前記第2温度以上となった場合に、前記第1流量調整弁を全開とし、前記指定流量に基づいて前記第2流量調整弁を制御する請求項4に記載の給水システム。
【請求項8】
前記蛇口は、
前記ユーザーによって操作されるレバーと、
前記レバーの位置によって切替えられる切替スイッチと、を備え、
前記切替スイッチは、前記レバーの操作に応じた手動給水と、前記制御装置による自動給水とを切替えるものである請求項1又は2に記載の給水システム。
【請求項9】
前記蛇口の吐出口からの垂直方向の距離を測定する測距センサと、
前記蛇口から吐出される前記冷温水の流量を測定する給水流量センサと、をさらに備え、
前記制御装置は、前記測距センサ及び前記給水流量センサの測定結果に基づき、給水される容器を推定する請求項1又は2に記載の給水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷温水を供給する給水システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蛇口から自動的に給水を行うことができる給水システムが知られている。例えば、特許文献1には、水道の蛇口に着脱される蛇口ボディ部の水路を開閉する電磁給水弁と、水路における水の流量を検出する流量センサと、流量センサからの検出情報に基づいて電磁給水弁を制御する制御部とを備え、給水量を自動で制御する給水システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-286682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、蛇口から、水だけでなくお湯及び水とお湯を混合した温水を供給する給水システムも知られている。このような給水システムにおいて、温度に応じて予め決められた水とお湯の混合比率によってお湯と水を混合すると、水の温度又は外気温度の影響によってユーザーによって指定された温度の水を供給できない場合がある。また、蛇口に温度センサを設けて指定温度となるようフィードバック制御を行って混合比率を調整する場合は、ユーザーによって指定された温度の水を供給するまでに時間がかかり、無駄な排水が発生してしまうといった問題がある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するものであり、ユーザーが指定する温度の水を自動的に且つ迅速に供給することができる給水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る給水システムは、冷温水を吐出する蛇口と、お湯を生成する給湯機と、給湯機と蛇口とを接続し、給湯機にて生成されたお湯が流れるお湯配管と、水道管と蛇口とを接続し、水が流れる水配管と、お湯配管を流れるお湯の流量を調整する第1流量調整弁と、水配管を流れる水の流量を調整する第2流量調整弁と、給湯機の出口におけるお湯の温度である出口温度と蛇口の入口におけるお湯の温度である入口温度との温度差、及びユーザーにより指定された指定温度に基づき、第1流量調整弁及び第2流量調整弁を制御する制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示における給水システムによれば、給湯機の出口から蛇口の入口までのお湯の温度差及び指定温度に基づきお湯と水の流量を調整することで、ユーザーが指定する温度の水を自動的に且つ迅速に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る給水システムの概略構成図である。
図2】実施の形態1に係る蛇口の構造を説明する図である。
図3】実施の形態1のレバーによる給水方法の切り替えを説明する図である。
図4】実施の形態1に係る蛇口が備える切替スイッチの一例を示す図である。
図5】実施の形態1に係る蛇口が備える切替スイッチの別の例を示す図である。
図6】実施の形態1に係る給水システムの制御ブロック図である。
図7】実施の形態1に係る給水システムによる自動給水の流れを示すフローチャートである。
図8】実施の形態1における第1給水処理の流れを示すフローチャートである。
図9】実施の形態1における第2給水処理の流れを示すフローチャートである。
図10】実施の形態1における第3給水処理の流れを示すフローチャートである。
図11】実施の形態2に係る蛇口の構造を説明する図である。
図12】実施の形態2に係る給水システムの制御ブロック図である。
図13】ある容器における流量と水位の増加速度とを示す図である。
図14】別の容器における流量と水位の増加速度とを示す図である。
図15】容器内に内容物がある場合における流量と水位の増加速度とを示す図である。
図16】変形例1に係る蛇口の構造を説明する図である。
図17】変形例2に係る蛇口の構造を説明する図である。
図18】変形例3に係る蛇口周辺の構成図である。
図19】変形例4に係る給水システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る給水システム100の実施の形態を、図面を参照して説明する。各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係又は形状等が実際のものとは異なる場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る給水システム100の概略構成図である。図1に示すように、給水システム100は、蛇口1と、お湯を生成する給湯機2と、給湯機2で生成されたお湯が流れるお湯配管3と、水が流れる水配管4と、制御装置5と、リモートコントローラ6と、を備える。また、給水システム100は、お湯配管3に設けられた出口温度センサ31、止水弁32、入口温度センサ33、及び第1流量調整弁34と、水配管4に設けられた元栓41、止水弁42、水温度センサ43、及び第2流量調整弁44と、を備える。
【0011】
蛇口1は、キッチン又は洗面台などに設置され、冷温水を供給するものである。なお、以降の説明において、給水システム100に流れる水を区別するため、水配管4を流れる温度調整が行われていない水を「水」とし、給湯機2にて加熱され、お湯配管3を流れる水を「お湯」とする。また、蛇口1から吐出される、水、お湯、又は水とお湯の混合水を「冷温水」という。
【0012】
本実施の形態の蛇口1は、手動給水と自動給水とが可能となっている。手動給水は、ユーザーが蛇口1のレバー12(図2)を手で操作することによって給水の開始と、停止と、給水温度及び給水流量の調整と、を行うものである。自動給水は、ユーザーが蛇口1のレバー12を手で操作することなく、自動的に給水の開始と、停止と、給水温度及び給水流量の調整と、を行うものである。手動給水及び自動給水については、後ほど詳述する。
【0013】
給湯機2は、水配管4から供給される水を加熱して、お湯を生成し、生成したお湯をお湯配管3に供給する。給湯機2は、例えば水を加熱するヒートポンプユニットと、ヒートポンプユニットで加熱されたお湯を貯留する貯湯タンクとを備えたヒートポンプ式の給湯機である。なお、給湯機2の種類はヒートポンプ式に限定されるものではなく、電熱ヒータによって貯湯タンクの水を加熱する電熱ヒータ式の給湯機などであってもよい。
【0014】
お湯配管3は、給湯機2の出口と蛇口1の入口とを接続する配管である。出口温度センサ31は、例えばサーミスタであり、お湯配管3の給湯機2側の端部に配置され、給湯機2にて生成されたお湯の温度を測定し、制御装置5に送信する。
【0015】
止水弁32は、蛇口1が設けられたシンクの下に配置される開閉装置である。止水弁32が開放されている場合、お湯配管3のお湯が蛇口1に供給され、止水弁32が閉じられた場合、お湯配管3のお湯の蛇口1への供給が遮断される。止水弁32は、ユーザーによって手動で開閉され、通常は開状態となっている。
【0016】
入口温度センサ33は、例えばサーミスタであり、蛇口1が設けられたシンクの下であって、止水弁32の下流に配置される。入口温度センサ33は、蛇口1の入口におけるお湯の温度を測定し、制御装置5に送信する。以降の説明において、出口温度センサ31で測定された温度を「出口温度Tout」とし、入口温度センサ33によって測定された温度を「入口温度Tin」とする。
【0017】
第1流量調整弁34は、例えば電磁弁であり、蛇口1が設けられたシンクの下であって、止水弁32の下流に配置される。手動給水の場合、第1流量調整弁34は全開とされる。自動給水の場合、制御装置5によって第1流量調整弁34の開度又はON/OFF時間が制御されることで、お湯配管3から蛇口1に供給されるお湯の流量が調整される。
【0018】
水配管4は、水道管と蛇口1の入口とを接続する配管である。元栓41は、水配管4の水道管側の端部に配置される開閉装置である。元栓41が開放されている場合、水道管の水が水配管4に供給され、元栓41が閉じられた場合、水道管の水の水配管4への供給が遮断される。元栓41は、ユーザーによって手動で開閉され、通常は開状態となっている。
【0019】
止水弁42は、蛇口1が設けられたシンクの下に配置される開閉装置である。止水弁42が開放されている場合、水配管4の水が蛇口1に供給され、止水弁42が閉じられた場合、水配管4の水の蛇口1への供給が遮断される。止水弁42は、ユーザーによって手動で開閉され、通常は開状態となっている。
【0020】
水温度センサ43は、例えばサーミスタであり、蛇口1が設けられたシンクの下であって、止水弁42の下流に配置される。水温度センサ43は、蛇口1の入口における水の温度を測定し、制御装置5に送信する。以降の説明において、水温度センサ43で測定された温度を「水温度Tw」とする。
【0021】
第2流量調整弁44は、例えば電磁弁であり、蛇口1が設けられたシンクの下であって、止水弁42の下流に配置される。手動給水の場合、第2流量調整弁44は全開とされる。自動給水の場合、制御装置5によって第2流量調整弁44の開度又はON/OFF時間が制御されることで、水配管4から蛇口1に供給される水の流量が調整される。
【0022】
制御装置5は、給水システム100が自動給水を行う場合の給水システム100の動作を制御する。制御装置5は、例えばCPUなどのプロセッサと、プロセッサで実行されるソフトウェア及び各種機器からの信号に含まれる命令又はデータを記憶するメモリとにより構成される。なお、制御装置5は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアにより構成されてもよい。
【0023】
リモートコントローラ6は、蛇口1の近傍の壁面等に設置され、給水システム100の運転状態を表示する表示部と、給水システム100が自動給水を行う場合のユーザーの操作を受け付ける操作部と、を備えている。ユーザーは、リモートコントローラ6を操作して、自動給水の場合の給水温度(℃)、給水量(m)及び給水流量(m/sec)を入力する。以降の説明において、ユーザーによって入力された自動給水の場合の給水温度を「指定温度Ts」とし、給水量を「指定水量Ms」とし、給水流量を「指定流量Qs」とする。リモートコントローラ6は、制御装置5と有線又は無線通信可能に接続されており、リモートコントローラ6に入力された指定温度Ts、指定水量Ms、及び指定流量Qsなどの情報は、制御装置5に送信される。
【0024】
(蛇口1の構造)
続いて、本実施の形態1の給水システム100における蛇口1の構造について説明する。図2は、実施の形態1に係る蛇口1の構造を説明する図である。本実施の形態における蛇口1は、シングルレバーの混合栓である。図2に示すように、蛇口1は、本体11と、レバー12とからなる。
【0025】
本体11は、キッチンのシンク等に取り付けられている。本体11の内部には、お湯配管3及び水配管4と接続され、手動給水の場合にお湯と水とを混合して給水温度と給水流量を調整するカートリッジ111が設けられている。自動給水の場合、カートリッジ111は全開とされ、お湯配管3及び水配管4から供給される冷温水をそのまま通過させる。また、本体11には、水を吐出する吐出口112と、近接センサ113と、給水流量センサ114と、給水温度センサ115と、が設けられている。
【0026】
近接センサ113は、例えば赤外線センサであり、非接触で検出物体が近づいたことを検出する。近接センサ113の検出結果は、制御装置5に送信され、自動給水時の給水開始のトリガとして用いられる。図2において、近接センサ113は、蛇口1の吐出口112の近傍に設けられているが、シンクの足元などに設けられてもよい。又は、蛇口1の吐出口112の近傍と、シンクの足元との両方に設けられてもよい。近接センサ113の検出結果を自動給水時の給水開始のトリガとして用いることで、ユーザーがレバー12に触れずに給水を開始できるため、手が汚れて物に触りたくない場合でも給水が可能となる。これにより、キッチンを清潔に保ち、手が濡れたままでもキッチンでの家事以外に従事することができる。
【0027】
給水流量センサ114は、蛇口1の吐出口112の直前に配置され、吐出口112から吐出される冷温水の流量を測定し、制御装置5に送信する。給水流量センサ114としては、超音波、電磁式、コリオリ式、熱式、カルマン渦式、羽根車式、浮き子式、又は差圧式のセンサが用いられる。
【0028】
給水温度センサ115は、例えばサーミスタであり、給水流量センサ114の近傍に設けられている。給水温度センサ115は、吐出口112から吐出される冷温水の温度を測定し、制御装置5に送信する。
【0029】
レバー12は、本体11の上部に設けられ、ユーザーによって上下方向及び本体11の軸を中心とした周方向に動かすことができるよう構成される。レバー12の内部には、レバー12の上下方向の移動と連動して手動給水と自動給水とを切り替える切替スイッチ121が設けられている。図3は、実施の形態1のレバー12による給水方法の切り替えを説明する図である。図3においてレバー12が破線で示される位置にある場合を状態A、実線で示される位置にある場合を状態B、一点鎖線で示される位置にある場合を状態Cとする。
【0030】
レバー12が状態Bの場合は、手動給水の状態であって、且つ給水が停止された状態である。また、レバー12が状態Aの場合は、手動給水の状態であって、且つ給水が開始された状態である。状態Aの場合は、レバー12の動きとカートリッジ111とが連動して、手動によって給水流量及び給水温度が調整される。例えば、レバー12の上方向への移動量に応じて、給水流量が変化する。具体的には、レバー12を上に移動させるほど、給水流量が増加する。また、レバー12を周方向に移動させることで、給水温度が調整される。
【0031】
レバー12が状態Cの場合は、切替スイッチ121により自動給水に切替られた状態である。この場合は、近接センサ113によって物体(例えばユーザーの手)が近付いたことが検出された場合に、給水が開始され、ユーザーによって入力された指定温度Tsの冷温水が、指定流量Qsで、指定水量Msだけ供給される。この場合の、給水量、給水流量及び給水温度の調整は、制御装置5によって、第1流量調整弁34及び第2流量調整弁44が制御されることで実施される。
【0032】
図4は、実施の形態1に係る蛇口1が備える切替スイッチ121の一例を示す図である。切替スイッチ121は、例えばバネ式のスイッチである。この場合、レバー12が状態Bの位置からさらに下方に移動されると、レバー12を固定するレバー固定具120が切替スイッチ121のバネに接触する。そして、バネの反発力よりも強い力でレバー12が下方に押されることで、切替スイッチ121の接点が切り替わる。これにより、蛇口1の給水方法が手動給水から自動給水に切り替わり、レバー12は状態Cの位置に保持される。また、状態Cの位置にあるレバー12をさらに下方に移動させることで、切替スイッチ121の接点が再び切り替わる。これにより、蛇口1の給水方法が自動給水から手動給水に切り替わり、レバー12は状態Bの位置で保持される。
【0033】
図5は、実施の形態1に係る蛇口1が備える切替スイッチ121の別の例を示す図である。切替スイッチ121は、例えばトグルスイッチであってもよい。図5に示すように、レバー固定具120が、トグルスイッチの軸となる。この場合、レバー12が状態Bの位置からさらに下方へ移動されると、レバー固定具120によって切替スイッチ121の接点が切り替わる。これにより、蛇口1の給水方法が手動給水から自動給水に切り替わり、レバー12は状態Cの位置に保持される。また、状態Cの位置にあるレバー12を上方に移動させることで、切替スイッチ121の接点が再び切り替わる。これにより、蛇口1の給水方法が自動給水から手動給水に切り替わり、レバー12は状態Bの位置で保持される。また、図5の構成の場合、状態Bの位置にあるレバー12が上方に移動された場合には、切替スイッチ121が機能しないよう構成される。
【0034】
なお、上記ではレバー12を状態Bの位置から下方に移動させることで切替スイッチ121を切替える構成としたが、レバー12を状態Aの位置からさらに上方に移動させることで切替スイッチ121を切替える構成としてもよい。ただし、レバー12を、蛇口1から水が出ない状態Bから状態Cに移動させて給水方法を切替えることで、手動給水と自動給水とを切り替える際に無駄な排水の発生を防ぐことができる。このように、本実施の形態では、レバー12の操作によって簡単に手動給水と自動給水とを切替えることができ、操作性が向上する。
【0035】
(給水システムの動作)
続いて、給水システム100の自動給水時の動作について説明する。図6は、実施の形態1に係る給水システム100の制御ブロック図である。図6に示すように、制御装置5は、記憶部51と、学習部52と、給水制御部53とを有する。記憶部51は、例えば、ROM又はフラッシュメモリ等の不揮発性の半導体メモリ、RAM等の揮発性の半導体メモリ、又はHDD等である。学習部52及び給水制御部53は、制御装置5のプロセッサがプログラムを実行することにより実現される機能部である。又は、学習部52及び給水制御部53の少なくとも何れかを、ASIC又はFPGAなどの処理回路で実現してもよい。
【0036】
記憶部51は、制御装置5が自動給水を実施する際に実行されるプログラム及びプログラムに用いられる情報を記憶する。例えば、記憶部51は、ユーザーによってリモートコントローラ6を介して入力された指定温度Ts、指定水量Ms及び指定流量Qs、学習部52によって学習された予測温度差ΔT、並びに閾値として用いられる各種温度などを記憶する。
【0037】
学習部52は、給湯機2の出口におけるお湯の温度と、蛇口1の入口におけるお湯の温度との温度差を学習して予測温度差ΔTを求め、記憶部51に記憶する。詳しくは、学習部52は、過去の自動給水時における出口温度Toutと、入口温度Tinとの温度差と、環境温度とを学習し、環境温度ごとの予測温度差ΔTを求める。環境温度は、水温度Tw又は外気温度である。外気温度は、図示しない外部機器又は外気温度センサから取得される。学習部52は、過去の自動給水時における環境温度ごとの温度差の平均値を環境温度ごとの予測温度差ΔTとして記憶部51に記憶する。また、学習部52は、自動給水を行う度に環境温度ごとの温度差の平均値を求め、記憶部51に記憶されている予測温度差ΔTと新たに求めた平均値とを平均化することで、予測温度差ΔTを更新する。
【0038】
給水制御部53は、ユーザーにより入力された指定温度Ts及び指定水量Msの冷温水を、指定流量Qsで供給するために、第1流量調整弁34、第2流量調整弁44及び給湯機2を制御する。給水制御部53は、指定温度Ts、指定水量Ms及び指定流量Qs、並びに各温度センサ及び給水流量センサ114の測定結果に基づき、お湯及び水の流量を決定し、第1流量調整弁34、第2流量調整弁44及び給湯機2を制御する。
【0039】
図7は、実施の形態1に係る給水システム100による自動給水の流れを示すフローチャートである。まず、制御装置5の給水制御部53は、給水方法が自動給水であるか否かを判断する(S1)。給水方法が自動給水であるか否かは、切替スイッチ121の状態によって判断される。
【0040】
自動給水でない場合は(S1:NO)、自動給水に切り替えられるまで待機する。この場合、レバー12の操作に基づく手動給水が行われ、第1流量調整弁34及び第2流量調整弁44は全開とされる。一方、自動給水に切り替えられた場合(S1:YES)、給水制御部53は、第1流量調整弁34及び第2流量調整弁44を全閉とし、記憶部51から予測温度差ΔTを取得する(S2)。詳しくは、給水制御部53は、水温度センサ43で測定された水温度Tw又は外気温度を環境温度として取得し、環境温度に対応する予測温度差ΔTを記憶部51から読み出す。
【0041】
そして、給水制御部53は、出口温度センサ31で測定された給湯機2の出口におけるお湯の出口温度Toutが第1温度T1以上であるか否かを判断する(S3)。第1温度T1は、指定温度Tsに予測温度差ΔTを加算した温度である。そして、お湯の出口温度Toutが第1温度T1以上である場合(S3:YES)、給水制御部53は、第1給水処理を行う(S4)。
【0042】
図8は、実施の形態1における第1給水処理の流れを示すフローチャートである。第1給水処理において、給水制御部53は、水配管4を流れる水の流量係数αを算出する(S41)。水の流量係数αは、お湯配管3を流れるお湯の流量を1としたときの、指定温度Tsを満たす水配管4を流れる水の流量の比率であり、下記の式(1)で表される。なお、式(1)において、Toutは出口温度センサ31で測定された給湯機2の出口におけるお湯の出口温度であり、Tsは指定温度であり、Twは水温度センサ43によって測定された水配管4を流れる水の温度であり、ΔTは予測温度差である。
α=(Tout-(Ts+ΔT))/(Ts-Tw)・・・(1)
【0043】
そして、給水制御部53は水の流量係数αを用いて、お湯配管3を流れるお湯の流量Qhと、水配管4を流れる水の流量Qwとを算出する(S42)。お湯の流量Qhは下記の式(2)から求められ、水の流量Qwは下記の式(3)から求められる。なお、式(2)において、Qsは指定流量である。
Qh=Qs/(1+α)・・・(2)
Qw=Qh×α ・・・(3)
【0044】
そして、給水制御部53は、給水を開始するか否かを判断する(S43)。給水制御部53は、近接センサ113によって物体の接近が検出された場合に、給水を開始すると判断する。給水を開始しない場合は(S43:NO)、第1流量調整弁34及び第2流量調整弁44を閉じたまま待機する。そして、給水の開始が指示された場合は(S43:YES)、求められた流量Qh及びQwのお湯と水が流れるよう第1流量調整弁34及び第2流量調整弁44を制御する(S44)。なお、このとき、指定温度Tsが60℃以上の場合は、給水制御部53は、まず第2流量調整弁44を開いてから第1流量調整弁34を開くように制御する。これにより、給水温度が高温になる速度が緩やかになり、意図せず高温の水が蛇口1から吐出されることを抑制することができる。
【0045】
上記のように、給湯機2の出口温度Toutが第1温度T1以上の場合は、第1給水処理において、お湯と水の流量をそれぞれ求めて第1流量調整弁34及び第2流量調整弁44が制御される。これにより、給湯機2の出口から蛇口1の入口までの間にお湯の温度が低下した場合も、指定流量Qs及び指定温度Tsを満たす給水を行うことができる。
【0046】
図7に戻って、出口温度Toutが第1温度T1未満の場合(S3:NO)、給水制御部53は、給湯機2から供給可能なお湯の流量の上限値Qmaxが、ユーザーによって入力された指定流量Qs以上であるか否かを判断する(S5)。給湯機2から供給可能なお湯の流量の上限値Qmaxは、給湯機2及びお湯配管3の仕様により予め決められた値であり、記憶部51に記憶されている。お湯の流量の上限値Qmaxが指定流量Qs以上である場合(S5:YES)、給水制御部53は、第2給水処理を行う(S6)。
【0047】
図9は、実施の形態1における第2給水処理の流れを示すフローチャートである。第2給水処理において、給水制御部53は、給湯機2においてお湯の沸き上げを行う(S61)。例えば、給湯機2がヒートポンプ式の給湯機である場合、給水制御部53は、ヒートポンプユニットの圧縮機を駆動させ、貯湯タンク内のお湯の温度を上昇させる。そして、給水制御部53は、給湯機2の出口温度Toutが第1温度T1以上となったか否かを判断する(S62)。
【0048】
給水制御部53は、出口温度Toutが第1温度T1以上となるまで給湯機2の沸き上げを行う。そして、出口温度Toutが第1温度T1以上となった場合(S62:YES)、給水制御部53は、給水を開始するか否かを判断する(S63)。給水制御部53は、近接センサ113によって物体の接近が検出された場合に、給水を開始すると判断する。
【0049】
給水を開始しない場合は(S63:NO)、出口温度Toutを第1温度T1以上に維持しつつ、第1流量調整弁34及び第2流量調整弁44を閉じたまま待機する。そして、給水の開始が指示された場合(S63:YES)、給水制御部53は、第1流量調整弁34を制御する(S64)。このとき、第2流量調整弁44は閉じたままとされる。また、第1流量調整弁34は、指定流量Qsのお湯が流れるように、開度又はON/OFF時間が制御される。
【0050】
上記のように、給湯機2の出口温度Toutが第1温度T1未満であって、お湯の流量の上限値Qmaxが指定流量Qs以上の場合は、第2給水処理において、給湯機2を制御してお湯の温度を第1温度T1まで上昇させた上で、お湯のみが供給される。これにより、給湯機2の出口から蛇口1の入口までの間にお湯の温度が低下した場合も、指定流量Qs及び指定温度Tsを満たす給水を行うことができる。
【0051】
図7に戻って、出口温度Toutが第1温度T1未満の場合であって(S3:NO)、且つお湯の流量の上限値Qmaxが指定流量Qs未満である場合(S5:NO)、給水制御部53は、第3給水処理を行う(S7)。
【0052】
図10は、実施の形態1における第3給水処理の流れを示すフローチャートである。第3給水処理において、給水制御部53は、給湯機2においてお湯の沸き上げを行う(S71)。例えば、給湯機2がヒートポンプ式の給湯機である場合、給水制御部53は、ヒートポンプユニットの圧縮機を駆動させ、貯湯タンク内のお湯の温度を上昇させる。そして、給水制御部53は、給湯機2の出口温度Toutが第2温度T2以上であるか否かを判断する(S72)。第2温度T2は、第1温度T1より高い温度であり、下記の式(4)から求められる。
T2=(Qs×Ts-(Qs-Qmax)×Tw)/Qmax+ΔT・・・(4)
【0053】
給水制御部53は、出口温度Toutが第2温度T2以上となるまで給湯機2の沸き上げを行う。そして、出口温度Toutが第2温度T2以上となった場合(S72:YES)、給水制御部53は、給水を開始するか否かを判断する(S73)。給水制御部53は、近接センサ113によって物体の接近が検出された場合に、給水を開始すると判断する。
【0054】
給水を開始しない場合は(S73:NO)、出口温度Toutを維持しつつ、第1流量調整弁34及び第2流量調整弁44を閉じたまま待機する。そして、給水の開始が指示された場合(S73:YES)、給水制御部53は、第1流量調整弁34及び第2流量調整弁44を制御する(S74)。このとき、給水制御部53は、第1流量調整弁34を全開とし、水の流量がQs-Qmaxとなるよう第2流量調整弁44の開度又はON/OFF時間が制御される。
【0055】
上記のように、給湯機2の出口温度Toutが第1温度T1未満であって、お湯の流量が指定流量Qsに満たない場合は、第3給水処理において、給湯機2を制御してお湯の第2温度T2まで上昇させた上で、お湯と水とを混合させて供給する。これにより、給湯機2の出口から蛇口1の入口までの間にお湯の温度が低下した場合であって、お湯の流量が足らない場合も、指定流量Qs及び指定温度Tsを満たす給水を行うことができる。
【0056】
なお、第2給水処理及び第3給水処理を行う場合、ユーザーが所望する温度のお湯が作れるまでの時間をリモートコントローラ6の表示部等に表示し、お湯が作られたタイミングを表示又は音声で通知してもよい。
【0057】
図7に戻って、第1~第3給水処理による給水が開始されると、学習部52は、お湯の出口温度Toutと、入口温度Tinと、環境温度(水温度Tw又は外気温度)とを複数回取得し、環境温度ごとの出口温度Toutと入口温度Tinとの差を学習する(S8)。ここで学習された温度差が、予測温度差ΔTとして記憶部51に記憶される。又は、ここで学習された温度差と、記憶部51に記憶された予測温度差ΔTとに基づき、予測温度差ΔTが更新される。
【0058】
また、給水制御部53は、蛇口1に設けられた給水温度センサ115により測定された給水温度Teと、指定温度Tsとの差に基づき、第1流量調整弁34及び第2流量調整弁44をフィードバック制御する(S9)。具体的には、給水温度センサ115により測定された給水温度Teが指定温度Tsよりも低い場合は、お湯の割合が増えるように第1流量調整弁34及び第2流量調整弁44を制御する。また、給水温度センサ115により測定された給水温度Teが指定温度Tsよりも高い場合は、水の割合が増えるように第1流量調整弁34及び第2流量調整弁44を制御する。
【0059】
そして、給水制御部53は、蛇口1から吐出された給水量Meが指定水量Ms以上となったか否かを判断する(S10)。蛇口1から吐出された給水量Meは、蛇口1に設けられた給水流量センサ114の測定結果と、給水開始からの給水時間によって求められる。蛇口1から吐出された給水量Meが指定水量Ms未満の場合は(S10:NO)、給水を継続する。一方、蛇口1から吐出された給水量Meが指定水量Ms以上となった場合は(S10:YES)、給水を停止する(S11)。ここでは、給水制御部53は、開となっている第1流量調整弁34及び第2流量調整弁44を閉じる。これにより、指定流量Qs及び指定温度Tsを満たす指定水量Msの給水を自動的に行うことができる。
【0060】
以上のように、本実施の形態の給水システム100によると、ユーザーが指定する流量及び温度の水を自動的に供給することができる。また、給湯機2から蛇口1までのお湯の温度低下を示す予測温度差ΔTを予測し、予測温度差ΔTを踏まえた温度制御を行うことで、ユーザーが指定する温度の冷温水を迅速に供給することができる。また、給湯機2の出口における出口温度Tout、指定温度Ts、及び指定流量Qsに基づいて、給湯機2の沸き上げの有無及び沸き上げ温度を判断することで、給湯機2を効率よく運転することができる。
【0061】
実施の形態2.
実施の形態2について説明する。実施の形態2の給水システム100Aは、蛇口1Aが測距センサ116を備える点において、実施の形態1と相違する。実施の形態2に係る給水システム100Aのその他の構成は実施の形態1と同じである。以下、実施の形態1と構成の異なる点について説明し、実施の形態1と同様の構成については説明を省略する。
【0062】
図11は、実施の形態2に係る蛇口1Aの構造を説明する図である。図11に示すように、本実施の形態の蛇口1Aの吐出口112の近傍には、非接触で垂直方向の距離を計測する測距センサ116が設けられている。測距センサ116としては、超音波式、電波式、レーザー式、放射線式又は光学式のセンサが用いられる。測距センサ116は、吐出口112から供給される冷温水を溜める容器の水面までの距離を測定する。測距センサ116によって測定された距離は、制御装置5に送信される。
【0063】
図12は、実施の形態2に係る給水システム100Aの制御ブロック図である。図12に示すように、本実施の形態の制御装置5Aは、記憶部51と、学習部52と、給水制御部53と、に加え、容器推定部54を有する。容器推定部54は、制御装置5Aのプロセッサがプログラムを実行することにより実現される機能部である。又は、容器推定部54を、ASIC又はFPGAなどの処理回路で実現してもよい。
【0064】
容器推定部54は、測距センサ116の測定結果及び給水流量センサ114の測定結果に基づき、蛇口1から給水されている容器を推定する。同じ容器において、給水流量が一定の場合、水位hの増加速度は、容器の断面積によって決まる。断面積が小さければ、水位hの増加速度は大きくなり、断面積が大きくなると水位hの増加速度は小さくなる。図13は、ある容器C1における流量と水位の増加速度とを示す図である。図13の例では、容器C1の領域A1の断面積は、領域A2及びA3の断面積より大きいため、容器C1の領域A1における水位hの増加速度は領域A2及びA3の水位hの増加速度よりも小さくなっている。
【0065】
同じ容器が、同じ傾きで配置されている場合、水位hの増加速度は同じになる。また、所定の水位まで水を溜めるのに必要な時間は流量Qに比例する。図13に示すように、流量2Qの場合、流量Qの場合と比べて同じ水位まで水を溜めるのに必要な時間は2倍となる。
【0066】
また、容器の形状が異なると水位hの上昇傾向は異なる。図14は、別の容器における流量と水位の増加速度とを示す図である。図14に示すように、容器C2の水位hの上昇傾向は、図13に示す容器C1の水位hの上昇傾向と異なる。そのため、容器推定部54は、給水流量センサ114により測定された流量Qと、測距センサ116により測定された水位hとから増加速度を求め、増加速度の傾向に基づき容器を推定する。具体的には、記憶部51には、容器ごとの基準流量Qbにおける増加速度が予め記憶されている。そして、容器推定部54は、給水の際に給水流量センサ114によって測定された流量Qeと、測距センサ116で測定された水面までの距離の変化と、を用いて基準流量Qbにおける増加速度を算出する。そして、容器推定部54は、記憶部51に記憶される増加速度のうち、算出された増加速度と同じ増加速度を有する容器を、給水している容器であると推定する。
【0067】
容器が推定することができれば、その容器の水位hにおいてどれだけの水が入っているかを推定することができる。そのため、例えば米をといだあとにとぎ汁が残った状態からでも追加で必要な給水量を推定することができる。図15は、容器内に内容物がある場合における流量と水位の増加速度とを示す図である。図15に示すように、容器C2に内容物が収容された状態から給水が開始された場合も、その後の領域A3における水位hの増加速度に基づき、容器推定部54は、容器C2を推定することができる。そして、容器C2が推定されることで、測距センサ116で測定された距離から求められる水位hに基づいて現在の容器C2内に収容された水の量を推定することができる。
【0068】
また、容器推定部54は、水位hが一定時間上昇しなくなった位置を容器の縁として推定してもよい。容器の縁を推定することで、測距センサ116で測定された距離から求められる水位hに基づいて、容器から水があふれているか否かを判定することができる。そして、容器から水があふれているにもかかわらず、ユーザーが吐出口112からの給水を停止しない場合、リモートコントローラ6から表示又は音声で警告したり、自動で止水したりしてもよい。
【0069】
以上のように、本実施の形態の給水システム100Aによると、ユーザーが指定する流量及び温度の水を迅速に供給することに加え、容器を自動的に推定し、容器の容量に応じた給水を行うことができる。
【0070】
以上が実施の形態の説明であるが、上記の実施の形態は変形及び組み合わせることが可能である。図16は、変形例1に係る蛇口1Bの構造を説明する図である。図16に示すように、蛇口1Bは、本体11の下部に給水流量センサ114及び給水温度センサ115を備えてもよい。図17は、変形例2に係る蛇口1Cの構造を説明する図である。図17に示すように、蛇口1Cは、本体11の下部にレバー12を備えてもよい。
【0071】
また、給水システム100は、音声に応じて自動給水の際の給水を開始及び停止してもよい。図18は、変形例3に係る蛇口1周辺の構成図である。図18に示すように、蛇口1の周囲の壁面に配置したリモートコントローラ6Aに、操作表示部60と、スピーカー61と、マイク62とを備えてもよい。この場合、ユーザーが音声で給水の開始及び停止を指示すると、マイク62にて音声を検出し、制御装置5に指示信号を送信する。制御装置5は、マイク62から送信された指示信号に基づいて、自動給水の際の給水の開始及び停止を行う。これにより子育て又は介護などで手が離せない状況においても、所望の温度の冷温水を得ることができる。なお、操作表示部60、スピーカー61、及びマイク62は、リモートコントローラ6Aに内蔵されるものに限定されず、外付けの機器として制御装置5と通信可能に接続されてもよい。
【0072】
さらに、給水システム100は、外部機器からの指示信号に応じて自動給水の際の給水を開始及び停止してもよい。図19は、変形例4に係る給水システム100Bの概略構成図である。図19に示すように、制御装置5は、インターネットなどのネットワーク200を介して外部機器300と通信を行う通信部55を有してもよい。そして、蛇口1から離れた場所にいるユーザーが、スマートフォン又はスマートウォッチなどの外部機器300からネットワーク200を介して制御装置5に給水開始及び停止の指示を行ってもよい。この場合、給水制御部53は、近接センサ113の検出結果ではなく、外部機器300からの指示信号を給水開始のトリガとする。これにより、ユーザーが蛇口1の位置まで移動することなく、冷温水の供給を受けることができる。また、この場合は、給水開始前に、外部機器300のスピーカーから水又はお湯が出るタイミングをユーザーに知らせてもよい。
【0073】
また、上記実施の形態においては、学習部52は、過去の自動給水時における出口温度Toutと、入口温度Tinとの温度差と、環境温度とを学習し、環境温度ごとの予測温度差ΔTを求めることとしたが、予測温度差ΔTの学習はこれに限定されるものではない。ここで、配管を流れる水の熱漏洩量qは、下記の式(5)から求められる。
q=(Ta-Tb)/[{1/(h1×A)}+{L/(K×A)}+{1/(h2×A)}]・・・(5)
【0074】
式(5)のTaは配管を流れる水の温度であり、Tbは配管の外(空気又は断熱材)の環境温度であり、Lは配管の厚みであり、Aは配管の流路の表面積である。また、Kは配管の熱伝導率であり、h1は水の熱伝達率であり、h2は配管の外の熱伝達率である。式(5)におけるL、A及びKは配管の仕様により一義的に決まるものであるが、Ta、Tb、h1及びh2は状況に応じて変化し、これらの変化により熱漏洩量qも変化する。
【0075】
水の熱伝達率h1は、水が自然対流している場合は(2.8~5.8)×10[W/m・K]であり、水が強制対流されている場合は(2.8~5.8)×10[W/m・K]となる。すなわち、水の熱伝達率h1は、配管を流れる水の速度によって異なる。配管を流れる水の速度は、水の流量及び配管径から求められる。そこで、学習部52において、環境温度に加えて、又は環境温度に替えて、お湯配管3を流れるお湯の流量Qhを学習して予測温度差ΔTを求めてもよい。
【0076】
この場合は、お湯配管3に流量センサを設け、お湯配管3を流れるお湯の流量Qhを測定して制御装置5に送信する。学習部52は、過去の自動給水時における環境温度とお湯の流量Qhの組み合わせごとの温度差の平均値を環境温度とお湯の流量Qhの組み合わせごとの予測温度差ΔTとして記憶部51に記憶し、更新する。そして、給水制御部53は、環境温度及びお湯の流量Qhを取得し、この組み合わせに対応する予測温度差ΔTを記憶部51から読み出して自動給水時の制御を行う。又は、学習部52は、実施の形態1と同様に環境温度ごとの予測温度差ΔTを学習し、給水制御部53においてお湯の流量Qhに応じて予測温度差ΔTを補正してもよい。
【0077】
また、自動給水の際の指定温度Ts、指定流量Qs、及び指定水量Msは、ユーザーによって入力されるものに限定されない。例えば、制御装置5は、通信部55を介してクラウド等の外部情報網にアクセスし、外部情報網から指定温度Ts、指定流量Qs及び指定水量Msを取得して、記憶部51に記憶してもよい。これによりインターネット又はクラウド上の情報をもとに調理等に適切な温度及び量の冷温水を得ることができる。また、ユーザーが調理したい分量(人数)を入力することで、インターネット等で得た調理に適切な水の量と人数の関係からユーザーに必要な水量を計算してユーザーに提案してもよい。
【0078】
さらに、上記実施の形態では、給水流量センサ114の測定結果は、自動給水時の給水量Meの判断及び容器の推定に用いられるものとしたが、これらに限定されるものではない。例えば、給水流量センサ114において、手動給水の場合も自動給水の場合も、常時吐出する冷温水の量を測定し、記憶部51に記憶し、リモートコントローラ6に表示してもよい。これにより、1日又は1ヶ月など、一定の期間での水の使用量を把握することができ、ユーザーが使用料を減らすように意識することで、節水効果を得られる。
【0079】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0080】
(付記1)
冷温水を吐出する蛇口と、
お湯を生成する給湯機と、
前記給湯機と前記蛇口とを接続し、前記給湯機にて生成された前記お湯が流れるお湯配管と、
水道管と前記蛇口とを接続し、水が流れる水配管と、
前記お湯配管を流れる前記お湯の流量を調整する第1流量調整弁と、
前記水配管を流れる前記水の流量を調整する第2流量調整弁と、
前記給湯機の出口における前記お湯の温度である出口温度と前記蛇口の入口における前記お湯の温度である入口温度との温度差、及びユーザーにより指定された指定温度に基づき、前記第1流量調整弁及び前記第2流量調整弁を制御する制御装置と、を備える給水システム。
(付記2)
前記制御装置は、過去に測定された複数の前記出口温度及び複数の前記入口温度から前記温度差を予測する付記1に記載の給水システム。
(付記3)
前記制御装置は、
前記出口温度が第1温度以上であるか否かを判定し、
前記出口温度が前記第1温度以上である場合、第1給水処理を実施し、
前記出口温度が前記第1温度未満である場合、前記第1給水処理とは異なる第2給水処理又は第3給水処理を実施するものであり、
前記第1温度は、前記指定温度に前記温度差を加算したものである付記1又は2に記載の給水システム。
(付記4)
前記制御装置は、
前記お湯配管を流れる前記お湯の流量の上限値が前記ユーザーによって指定される指定流量以上であるか否かを判定し、
前記上限値が前記指定流量以上である場合、前記第2給水処理を実施し、
前記上限値が前記指定流量未満である場合、前記第2給水処理とは異なる前記第3給水処理を実施する付記3に記載の給水システム。
(付記5)
前記制御装置は、前記第1給水処理において、
前記お湯の流量を1としたときの、前記指定温度を満たす前記水の流量の比率を求め、
前記比率に基づき前記第1流量調整弁及び前記第2流量調整弁を制御する付記3又は4に記載の給水システム。
(付記6)
前記制御装置は、前記第2給水処理において、
前記出口温度が前記第1温度以上となるまで前記給湯機の沸き上げを行い、
前記出口温度が前記第1温度以上となった場合に、前記第1流量調整弁を開とし、前記第2流量調整弁を閉のままとする付記3~5の何れか一つに記載の給水システム。
(付記7)
前記制御装置は、前記第3給水処理において、
前記出口温度が前記第1温度よりも高い第2温度以上となるまで前記給湯機の沸き上げを行い、
前記出口温度が前記第2温度以上となった場合に、前記第1流量調整弁を全開とし、前記指定流量に基づいて前記第2流量調整弁を制御する付記3~6の何れか一つに記載の給水システム。
(付記8)
前記蛇口は、
前記ユーザーによって操作されるレバーと、
前記レバーの位置によって切替えられる切替スイッチと、を備え、
前記切替スイッチは、前記レバーの操作に応じた手動給水と、前記制御装置による自動給水とを切替えるものである付記1~7の何れか一つに記載の給水システム。
(付記9)
前記蛇口の吐出口からの垂直方向の距離を測定する測距センサと、
前記蛇口から吐出される前記冷温水の流量を測定する給水流量センサと、をさらに備え、
前記制御装置は、前記測距センサ及び前記給水流量センサの測定結果に基づき、給水される容器を推定する付記1~8の何れか一つに記載の給水システム。
【符号の説明】
【0081】
1、1A、1B、1C 蛇口、2 給湯機、3 お湯配管、4 水配管、5、5A 制御装置、6、6A リモートコントローラ、11 本体、12 レバー、31 出口温度センサ、32 止水弁、33 入口温度センサ、34 第1流量調整弁、41 元栓、42 止水弁、43 水温度センサ、44 第2流量調整弁、51 記憶部、52 学習部、53 給水制御部、54 容器推定部、55 通信部、60 操作表示部、61 スピーカー、62 マイク、100、100A、100B 給水システム、111 カートリッジ、112 吐出口、113 近接センサ、114 給水流量センサ、115 給水温度センサ、116 測距センサ、120 レバー固定具、121 切替スイッチ、200 ネットワーク、300 外部機器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19