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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148236
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】穀粒乾燥機
(51)【国際特許分類】
   F26B 25/22 20060101AFI20241010BHJP
   F26B 9/06 20060101ALI20241010BHJP
   F26B 25/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
F26B25/22 B
F26B9/06 B
F26B25/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061186
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 通和
(72)【発明者】
【氏名】大家 生裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 廉
(72)【発明者】
【氏名】二宮 伸治
(72)【発明者】
【氏名】薬内 裕人
(72)【発明者】
【氏名】武井 澄人
(72)【発明者】
【氏名】森川 英昭
(72)【発明者】
【氏名】西野 栄治
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 啓市
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA07
3L113AB03
3L113AC04
3L113AC51
3L113AC67
3L113AC82
3L113BA03
3L113CA02
3L113CA03
3L113CB38
3L113DA10
3L113DA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、貯留室に溜めた穀粒を循環しながら乾燥する穀粒乾燥機において、収穫した穀粒の品位を評価して、乾燥運転を効率的に行ったり、乾燥後の後処理を迅速に行ったり出来るようにすることを課題とする。
【解決手段】貯留室1へ穀粒を張り込んで乾燥室2を流下しながら循環して乾燥する穀粒乾燥機において、穀粒の張り込み中に水分計で複数回水分率を計測し、平均水分率や水分率バラツキ等の乾燥前水分率データを表示器に表示することを特徴とする穀粒乾燥機とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥機タンク底部の4か所に重量検出装置を備え、貯留室(1)へ穀粒を張り込んで乾燥室(2)を流下しながら循環して乾燥する穀粒乾燥機において、穀粒の張り込み中に水分計(11)で複数回水分率を計測し、所定重量ごとに平均水分率や水分率バラツキ等の乾燥前水分率データを表示器(29)に表示することを特徴とする穀粒乾燥機。
【請求項2】
貯留室(1)に所定深さ間隔で穀粒を検知する複数の張込センサ(31)を設け、該張込センサ(31)が穀粒の堆積を検出する度にその時点での穀粒重量と堆積量で嵩密度を算出し、表示器(29)に表示することを特徴とする請求項1に記載の穀粒乾燥機。
【請求項3】
予め穀粒品種ごとの乾燥前水分率と嵩密度の標準データを登録し、新たに算出した乾燥前水分率と嵩密度のデータを標準データと比較し、出来具合を表示器(29)に表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の穀粒乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒を溜めて循環しながら乾燥する穀粒乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
穀粒乾燥機は、圃場でコンバインにより収穫した穀粒を所定の水分率まで乾燥して、籾摺り機に送ったり保存収蔵したりする作業に使われる。
【0003】
特許第6881235号公報に記載の穀粒乾燥機は、穀粒乾燥機の貯留室に溜めた穀粒に未熟米や屑米が多く含まれていることを検出すると、乾燥運転前に未熟米やワラ屑等を除去する通風循環を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6881235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
穀粒乾燥機の乾燥運転前には未熟米や屑米を除去するだけでなく、穀粒の水分率などが分かると乾燥運転に要する作業時間が分かり、乾燥後の後処理の計画を立て易い。
【0006】
本発明は、貯留室に溜めた穀粒を循環しながら乾燥する穀粒乾燥機において、収穫した穀粒の品位を評価して、乾燥運転を効率的に行ったり、乾燥後の後処理を迅速に行ったり出来るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
請求項1の発明は、乾燥機タンク底部の4か所に重量検出装置を備え、貯留室1へ穀粒を張り込んで乾燥室2を流下しながら循環して乾燥する穀粒乾燥機において、穀粒の張り込み中に水分計11で複数回水分率を計測し、所定重量ごとに平均水分率や水分率バラツキ等の乾燥前水分率データを表示器29に表示することを特徴とする穀粒乾燥機とする。
【0009】
請求項2の発明は、貯留室1に所定深さ間隔で穀粒を検知する複数の張込センサ31を設け、該張込センサ31が穀粒の堆積を検出する度にその時点での穀粒重量と堆積量で
嵩密度を算出し、表示器29に表示することを特徴とする請求項1に記載の穀粒乾燥機とする。
【0010】
請求項3の発明は、予め穀粒品種ごとの乾燥前水分率と嵩密度の標準データを登録し、新たに算出した乾燥前水分率データと嵩密度の標準データと比較し、出来具合を表示器29に表示することを特徴とする請求項1に記載の穀粒乾燥機とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明で、穀粒乾燥機を使用する作業者は、穀粒の張り込み作業が終わって乾燥運転をする前に表示器29の乾燥前水分率データを見て、どの程度の乾燥時間が必要かが推測出来て作業計画を作成出来る。
【0012】
請求項2の発明で、作業者は、貯留室1の張込センサ31設置間隔毎の穀粒堆積量で嵩密度を知ることで、圃場の収穫作業の良好や穀粒の出来具合を推測出来て、収穫作業中の作業者に連絡して収穫作業の精度を修正できる。
【0013】
請求項3の発明で、作業者は乾燥運転の前に、乾燥前水分率データと標準データの比較で、収穫穀粒の出来具合を知って、乾燥運転にどの程度の運転時間を要するかが推測出来て、全体の作業計画が立て易い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態にかかる穀粒乾燥機の斜視図である。
図2】同上、側面から見た穀粒乾燥機の内部を説明する図である。
図3】同上、正面から見た穀粒乾燥機の内部を説明する図である。
図4】同上穀粒乾燥機の循環機構を示す図である。
図5】同上穀粒乾燥機の操作盤図である。
図6】同上穀粒乾燥機の昇降機に取り付けられている水分計の内部を説明する図である。
図7】同上穀粒乾燥機のブロック図である。
図8】同上穀粒乾燥機の動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態の穀粒乾燥機について説明する。
【0016】
図1から図7に示すように、箱体H内に穀粒を貯留する貯留室1と、穀粒を乾燥する乾燥室2を設ける。乾燥室2は燃焼バーナ17による熱風が通過する熱風室3と、熱風及び穀粒が通過する流下通路4と流下通路4を通過した熱風が排風ファン5で吸引される排風室6を設ける。
【0017】
乾燥室2の下部には、乾燥室2内の穀粒を繰り出すロータリバルブ7を設け、ロータリバルブ7の下方には、穀粒を正面側に移送する下部ラセン8を設ける。箱体Hの正面側には穀粒を揚穀するバケット9a式の昇降機9を設け、箱体Hの上部には昇降機9で揚穀された穀粒を貯留室1へ移送する上部ラセン10を設ける。上部ラセン10の移送終端側には穀粒を貯留室1内に拡散する拡散羽根15を設ける。本実施の形態では下部ラセン8と、昇降機9と、上部ラセン10と、拡散羽根15と、ロータリバルブ7の駆動により穀粒を循環させる循環式の穀粒乾燥機であり、前述の循環させるための部材を総称して循環機構Jと呼ぶ。箱体Hの天井部には上部ラセン10で移送する穀粒に混じる塵埃やわら屑等を吸引して機外に排出する排塵機33を設ける。さらに、熱風室3内には熱風の温度を測定する加熱温度センサ18を設け、制御部Sに計測温度を入力する。
【0018】
昇降機9には昇穀中にバケット9aから毀れた穀粒を収容し、水分値を測定する水分計11を設ける。水分計11は一対の圧砕ロール11aで穀粒を圧砕して水分を測定し、測定した水分率を制御部Sに入力する。
【0019】
箱体Hの底部には重量計12を設ける。重量計12は箱体Hの四隅に設け、張込穀粒の張込重量を算出して制御部Sに入力する。重量計12として具体的には例えばロードセルを利用する。なお、重量計12は穀粒の重量変動を測定するが、急激な重量変動は地震発生の可能性ありと制御部Sから報知するようにしても良い。
【0020】
また、乾燥前の穀粒重量から乾燥後の穀粒重量を減算してその間の水分減少量を使用した燃料で除すると、乾燥に要する単位燃料あたりの水分除去量(徐水率(kg/kg))として算出表示することも出来る。
【0021】
貯留室1には一定間隔で覗き窓32a~32cを設け、その内部に張込穀粒を検出する張込センサ31a~31cを一定間隔で設け、穀粒が張り込まれるとその穀粒上面を検出することで張込センサ31a~31c毎の穀粒の嵩を制御部Sに入力する。なお、覗き窓32a~32cには通風を窓に吹き付けて付着する粉塵を除去したり、照明を取り付けて外部から溜った穀粒を確認し易くしたりすると良い。また、張込センサ31として貯留室1にレーザー距離センサを組み込んだ一対のセンサ棒を設けて穀粒を検出するようにすると、穀粒の拡散よって堆積面の検出が妨げられない。
【0022】
箱体Hの正面側には制御部Sを内蔵する操作盤13を設ける。操作盤13には、昇降機9の下部に設ける張込ホッパ14に張り込んだ穀粒を昇降機9及び上部ラセン10で貯留室1に移送する張込運転をするための張込スイッチ20と、排風ファン5と循環機構Jを駆動して穀粒を通風しながら循環運転させるための通風スイッチ21と、燃焼バーナ17と排風ファン5と循環機構Jを駆動して穀粒の乾燥運転を行う乾燥スイッチ22と、乾燥運転終了後に循環機構Jを駆動すると共に、昇降機9の上部の排出シャッタ16を排出側に切り換えて張込穀粒を機外に排出する排出運転を行う排出スイッチ23と、リセットスイッチ35を設ける。さらに、張込運転、通風運転、乾燥運転、排出運転を停止させる停止スイッチ24、穀粒乾燥機を再起動させるリセットスイッチ35を設ける。
【0023】
また、目標とする水分値を設定する目標水分設定スイッチ25と、乾燥速度を設定する乾燥速度設定スイッチ26と、穀粒品種を設定する穀粒品種設定スイッチ27を画面28に設ける。さらに、画面28には、穀粒の張り込み時に水分計11が計測する水分率を張込センサ31a~31cの張り込み検出時の乾燥前水分率データとして表示器29に表示して、作業者が圃場の穀粒出来具合や収穫作業の良し悪しを判断する材料に出来る。
【0024】
重量計12による乾燥運転から水分計11による乾燥運転に切り換る設定水分値を変更するための設定水分値調節スイッチ30また、画面28は、前述の目標水分値等の乾燥運転条件を設定する画面と、乾燥運転中の各種情報を表示する画面に切換え可能に構成している。
【0025】
また、特に乾燥運転中に表示が必要な熱風温度・水分値・残り乾燥運転時間を交互に表示するインジケータ式の表示器29を設ける。表示器29は張込センサ31a~31cが穀粒の張り込みを検出した時点での穀粒堆積量と重量で算出する嵩密度も表示する。
【0026】
次に、張込運転について図8に基づいて説明する。
【0027】
張込スイッチ20をONすると、下部ラセン8と、昇降機9と上部ラセン10と排塵機33と拡散羽根15が駆動を開始し、張込穀粒が貯留室1に張り込まれる。オペレータはあらかじめ穀粒品種設定スイッチ27で張込穀粒の品種を設定する。張込運転中は重量計12が重量を検知して重量値を画面28に表示している。張込運転中に水分計11が穀粒無を検出すると、張込運転が停止する。このとき、オペレータが次の穀粒の張り込みのために張込スイッチ20をONすると次の張込運転がなされるが、所定時間内に張込スイッチのONがなければ張込センサ31が検出を開始し、当該時点での張込穀粒の嵩を検出する。この張込センサ31の嵩の値と重量計12による重量値が、あらかじめ設定している対応関係に無いと制御部Sが判別すると、異常を表示する。特に、重量値に対して嵩の値が設定範囲よりも高いとわら屑や塵埃や未熟米が多いと判別し、ゴミ取りモードへの移行を促す表示を行う。ゴミ取りモードスイッチ34をONすると循環機構Jが駆動を開始し、そのときの張込量に応じた時間、通風運転がなされる。通風運転により、塵埃やわら屑や未熟米が排塵機33で吸引除去することができる。ゴミ取りモードスイッチ34をONすると、制御部Sから通信で例えばコンバインで刈り取り作業をするオペレータの携帯端末Tにその旨を送信することで、コンバイン(図示せず)のオペレータにコンバインにおける脱穀等が不良である旨の注意を促すことができる。コンバインの制御部と穀粒乾燥機の制御部Sを通信で接続し、前述の注意を促すこともできる。
【0028】
張込センサ31の嵩の値と重量計12による重量値の対応関係は穀粒品種によってあらかじめ制御部Sに設定している。これは、穀粒品種によって嵩密度が異なるためである。
【0029】
また、ゴミ取りモードによる通風運転中に重量計12の重量値が通風運転前よりも増加した場合に異常を表示する。これは、外気湿度が高いために穀粒が吸湿しているために生じるものであり、穀粒の胴割れのリスクが生じる。このリスクを低減することができる。
重量値に対して嵩の値が低い場合には、例えば、品種の誤設定である場合であるか、拡散羽根15の拡散不良による可能性があり、その旨を表示してオペレータに確認を促すことができる。
【0030】
なお、乾燥が終了するまでにかかった時間が予測表示と違う場合は、記録して次の予測時間表示を前回の終了時間を参考にして修正して表示すると良い。
【0031】
乾燥作業が終了しても排出までに時間がある場合は、一定時間ごとに循環運転をして水分率が設定した水分率よりも0.5%以上異なる場合には追い乾燥をする。
【符号の説明】
【0032】
1 貯留室
2 乾燥室
17 燃焼バーナ
18 加熱温度センサ
19 駆動停止スイッチ
35 リセットスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8