IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 井関農機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-作業車両 図1
  • 特開-作業車両 図2
  • 特開-作業車両 図3
  • 特開-作業車両 図4
  • 特開-作業車両 図5
  • 特開-作業車両 図6
  • 特開-作業車両 図7
  • 特開-作業車両 図8
  • 特開-作業車両 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148237
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20240101AFI20241010BHJP
【FI】
B60K35/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061188
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池内 伸明
(72)【発明者】
【氏名】櫻本 睦貴
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA21
3D344AB04
3D344AD02
3D344AD05
3D344AD13
(57)【要約】
【課題】定速走行が可能な作業車両において運転者が主変速設定操作に混乱を生じにくい作業車両を提供する。
【解決手段】主変速レバー35の操作位置を検出する主変速レバー位置センサ35sを設け、この主変速レバー位置センサ35sによって検出された操作位置に基づいて主変速装置72を変速出力するよう構成し、この操作位置をメータパネル100に表示する構成とした作業車両において、主変速レバー35の操作位置を記憶するメモリスイッチ52を設け、メモリスイッチ52操作に基づく記憶操作位置をメータパネル100に表示する。
【選択図】 図7


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主変速レバー(35)の操作位置を検出する主変速レバー位置センサ(35s)を設け、この主変速レバー位置センサ(35s)によって検出された操作位置に基づいて主変速装置(72)を変速出力するよう構成し、この操作位置をメータパネル(100)に表示する構成とした作業車両において、主変速レバー(35)の操作位置を記憶するメモリスイッチ(52)を設け、メモリスイッチ(52)操作に基づく記憶操作位置をメータパネル(100)に表示することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
記憶した主変速レバー(35)の操作位置と主変速レバーセンサ(35s)が検出した主変速レバー(35)の操作位置が略一致すると、メータパネル(100)における主変速レバー(35)の操作位置の表示状態または記憶した主変速レバー(35)の操作位置の表示状態を変更する構成とした請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
主変速レバー(35)の操作位置の記憶は、メモリスイッチ(52)が操作される前の所定時間内に主変速レバー(35)の操作が検出されている場合は、主変速レバー(35)の操作位置記憶を実行させない構成とした請求項1又は請求項2に記載の作業車両。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農用トラクタのような作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
無段変速装置を備え、無段階に変速操作する主変速レバーが操作されたときに操作速度および操作量に応じて変速時の加速度および減速度を制御する作業車両の変速制御装置が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-298050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、主変速レバーの操作量に応じて加減速具合を変化させることができ、操作フィーリングを向上するものである。
【0005】
また、トラクタ等の農用作業車両は一般的に作業走行時に定速で走行することが多く、予め設定された速度にワンタッチで制御する定速走行スイッチを有するものがある。
【0006】
しかしながら、この技術では、主変速レバーの位置と変速の状況が一致せず、運転者が混乱することがあった。
【0007】
本発明は、定速走行が可能な作業車両において運転者が主変速設定操作に混乱を生じにくい作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、主変速レバー35の操作位置を検出する主変速レバー位置センサ35sを設け、この主変速レバー位置センサ35sによって検出された操作位置に基づいて主変速装置72を変速出力するよう構成し、この操作位置をメータパネル100に表示する構成とした作業車両において、主変速レバー35の操作位置を記憶するメモリスイッチ52を設け、メモリスイッチ52操作に基づく記憶操作位置をメータパネル100に表示する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、記憶した主変速レバー35の操作位置と主変速レバーセンサ35sが検出した主変速レバー35の操作位置が略一致すると、メータパネル100における主変速レバー35の操作位置の表示状態または記憶した主変速レバー35の操作位置の表示状態を変更する構成とした。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、主変速レバー35の操作位置の記憶は、メモリスイッチ52が操作される前の所定時間内に主変速レバー35の操作が検出されている場合は、主変速レバー35の操作位置記憶を実行させない構成とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、記憶した変速操作位置で作業を行う場合には作業者は現在の変速位置と記憶した変速位置のずれを容易に把握でき、作業速設定の際の混乱を防止できる。
【0012】
請求項2に記載の発明によると、請求項1に記載の効果に加え、記憶した操作位置に主変速レバー35を手動操作で変速するときに、メータパネル100の表示状態を変更することで操作位置が略一致していることを注視することなく容易に把握できる。
【0013】
請求項3に記載の発明によると、請求項1又は請求項2に記載の効果に加え、
操作中に記憶すると意図しない変速位置で記憶される可能性や、誤操作の可能性があるが、記憶前に操作されていた場合は記憶を受け付けないようにすることで確実に操作者の意図を反映した変速位置を記憶できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態にかかる農用トラクタの側面図である。
図2】同農用トラクタの伝動機構概要図である。
図3】同農用トラクタのメータパネル正面図である。
図4】同農用トラクタのアームレスト及び操作パネルの平面図である。
図5図4の斜視図である。
図6】同農用トラクタの制御ブロック図である。
図7】(A)、(B)同農用トラクタのメータパネルの液晶表示部の表示一例を示す正面図である。
図8】同農用トラクタのフローチャートである。
図9】同農用トラクタの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は、トラクタを示すものであり、この走行車体1前部のボンネット2内部にディーゼルエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケース3内の変速装置70に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪4及び後輪5に伝えるようにしている。エンジンEの後方に前輪4を操舵するステアリングハンドル6が装備され、更に、その後方には運転席7が設置されている。ミッションケース3の後上部には油圧シリンダケース8を備え、このシリンダケース8の左右両側には、油圧昇降機構の一部を構成するリフトアーム9が回動自在に取り付けられている。リフトアーム9は昇降用油圧シリンダ10の伸縮作動により上下動する。車体後部には、トップリンク11と左右のロアーリンク12からなる3点リンク機構を設け、同リンク機構にロータリ作業機Rを装着し、リフトロッド13を介してロアーリンク12をリフトアーム9に連結することにより、作業機Rを昇降可能に構成している。
【0017】
図2に基づき変速装置70について説明する。エンジンEの回転動力は、出力軸71を介して主変速装置としての無段変速装置72に伝達される。無段変速装置72は、油圧ポンプ73と油圧モータ74のHST部72aと、遊星ギア変速機構部72bとからなる油圧機械式無段変速装置(HMT)72としている。
【0018】
HST部72a油圧ポンプ73の斜板を連動するトラニオン軸75の回動角を変更することにより油圧モータ74の出力回転数を無段階に変更できる構成とされ、トラニオン軸75の回動角は電動モータ76の回転に基づく。なお、トラニオン軸75の回動角を検出するトラニオン軸角度検出センサ77を備え、後述主変速レバー35の操作量に応じて上記電動モータ76を駆動すべく出力することによってトラニオン軸75の回動角を適宜に変更できる構成である。
【0019】
前記HST部72aの油圧モータ74の回転はモータ出力軸78を介して遊星ギア変速機構部72bのサンギア79を回転する。遊星ギア80を支持するキャリア81は、前記HST部72aの油圧ポンプ73出力軸82に一体の伝動ギア83の回転に連動しており、遊星ギア80を所定にサンギア79回りを公転させる。その合成された回転によって内歯ギア84が所定に減速回転されHMT出力軸85を無段階に回転連動する構成である。
【0020】
前記HMT出力軸85の回転は、油圧クラッチ形態の前後進クラッチ86cによって正回転又は逆回転に変換される構成である。なお、前後進クラッチ86cのクラッチ切替はステアリングハンドル6近傍の前後進レバー86操作に基づく。そして前後進出力軸87の回転は副変速装置88を連動する。
【0021】
副変速装置88cは、前後出力軸87とドライブ軸89との間に3組の変速ギア群を備え副変速レバー88によるクラッチ部摺動操作によって低速、中速、高速の3段に切替できる構成である。その操作位置は副変速レバーセンサ88sによって検出できる。
【0022】
前記ドライブ軸89の回転動力は後輪差動ギア機構90を経由して左右後輪5に伝達される。そして、ドライブ軸89の回転は中間ギア91を経由して油圧クラッチ形態の4WDクラッチ部92に伝達され、前輪差動ギア機構93を経由して左右前輪4を駆動できる。なお、4WDクラッチ部92の切替によって4輪駆動、前輪増速駆動、後輪のみの2輪駆動に切り替わる構成である。
【0023】
前記HST部72aの油圧ポンプ73出力軸82の回転は、PTO系伝動に供される。すなわちこの出力軸82はPTOカウンタ軸94のPTOクラッチ95用ギアを連動し、PTOカウンタ軸94及びこれと並行のPTO連動軸96との間に構成される変速部97によって所定変速段に設定された回転がPTO軸98に伝達される構成である。
【0024】
前記ハンドル6や運転席7等は、キャビン16によって覆われている。キャビン16は、例えば防振ゴム等の弾性部材を介して車体に固定されてあり、車体の振動がキャビン16に伝達されにくくしている。
【0025】
尚キャビン16は、フロア17と、フロア17左右前部に立設した前部支柱18と、運転席7の後部左右に立設した後部支柱19と、前後中間部に立設する中間支柱20と、これら支柱上端同士を接続する上フレーム21とによって一体化した枠組み構成とし、ルーフ22で覆われている。そして、前記運転席7を支持するボックス状のシートフレーム23、運転席7後面を囲う後部プレート24、後輪5の上部を覆う左右フェンダ25等を剛体化して強度を確保し、さらに、前後側面にはガラス窓部を構成し、左右開閉ドア26部から昇降できる。
【0026】
前記ステアリングハンドル6を支持する支持フレームの上面には、図3に示すメータパネル100を設け、左側にはエンジン回転計100a、各種機能表示灯群100b、ウインカ100c等を表示できる。さらにメータパネル100中央には、カラー液晶表示部101を備え、車速、PTO回転数、水温表示、燃料残量表示等のほか、後述主変速レバー35の操作位置を表示できるようになっている(図7)。
【0027】
次いで、キャビン16内の運転席7近傍の操作部構成について説明する。図4図5に示すように、運転席7の一側(図例では右側)に、上下回動可能にアームレスト30を設ける。アームレスト30は、運転席7側部付近に設けるブラケット部材31に横軸芯回りに回動自在に連結されていて、後半部の肘置き部32と前半部の操作系配置部33とに区分される。肘置き部32には上面にクッション材を張設してなる。
【0028】
前半部の操作系配置部33は、操作部を外側操作部33Aと内側操作部33Bに分ける仕切り部33Cを形成する。そして、外側操作部33Aに作業機R昇降用の作業機昇降操作具としての作業機昇降レバー34を前後動操作可能に設け、内側操作部33Bに主変速レバー35を前後動操作可能に設けている。このうち、作業機昇降レバー34を前方に傾倒操作すると作業機Rは降下し、後方に傾倒操作すると作業機Rは上昇する構成である。なお、作業機昇降レバー34の前方傾倒角度の調整によって降下姿勢の作業機R高さを設定できる所謂ポジションコントロールレバーの機能を併せ有するものである。主変速レバー35は、直線的に移動しながら無段変速機構72を低速側から高速側に、又その逆に操作できるもので、前傾側から後傾側に移行する毎に順次低速側に切り替わる構成としている。なお後傾斜端部にクランク状操作によって移行できるアクセル変速位置を設定する。アクセル変速位置にセットすると、アクセルペダル踏込み量とエンジン回転数の検出による演算で所定変速段に切り替わる構成である。
【0029】
前記主変速レバー35の操作位置は、主変速レバー位置センサ35sによって検出される構成である。そして制御部Cはこの検出された操作位置を入力し前記電動モータ76へ回転制御出力することによりトラニオン軸75回転角度を制御できる。
【0030】
そして、前記主変速レバー位置センサ35sの操作位置検出に基づいて、前記カラー液晶表示部101の区分された一区画(以下、車速表示区画)101aにおいて、その操作位置を高い棒グラフ状に表記し相対速度が低速側から高速側に移動するにつれてグラフ高さが高くなるように表示する構成としている。また、現在操作位置から低速側は濃い色表記(α)とし現在位置から高速限界位置までは淡い色表記(β)に設定して現在変速位置と共に変速余裕域が目視できるよう構成している。なお、該区画101aに同時に表示される文字表記は、副変速レバー88の変速位置、「高」「中」「低」及び「中立(N)」を示している。
【0031】
前記主変速レバー35の後方には車速規制スイッチ36を配置している。このスイッチ36をONすると、検出車速が例えは時速15kmを超えないよう変速段を演算して所定低速側に自動切換えできるよう構成している。
【0032】
運転作業者は、右手操作で仕切り部33Cを探り、作業機Rを昇降操作する場合は、作業機昇降レバー34を仕切り部33C外側にて探り、変速操作するときは主変速レバー35を仕切り部33C内側にて探るもので、仕切り部33Cの存在によって目視せずとも容易に所定の操作レバーに触って操作することができる。仕切り部33Cの湾曲する頂部形状は、作業機昇降レバー34及び主変速レバー35の操作部よりも高くなるように成形されている。
【0033】
次に前記フェンダ25のうち、前記アームレスト30に近い右側フェンダ25の上部に構成される操作パネル37構成について説明する。フェンダ上面の操作パネル37部は、キャビン16の前記中間支柱20の内側近傍から前方所定範囲におよび、複数の領域に区分されている。すなわち、前記アームレスト30の外側操作部33Aに接近する第一領域37A,その後方で若干高さの高い上辺から傾斜状に配置の第二領域37B、第二領域37Bの上辺と中間支柱20内壁との間に前部が傾斜凸条37Cpに形成される第三領域37C、第三領域37Cの傾斜凸条37Cpの前方で若干低い第四領域37D等を備える。
【0034】
前記第一領域37Aには、PTOスイッチ38、耕深調整ダイヤル39、アクセルメモリ40、メモリ調整スイッチ41、ノークラスイッチ42等を配設している。なお、PTOスイッチ38は、PTO軸の回転・停止を手動操作し、耕深調整ダイヤル39は自動耕深制御モード実行中における耕耘深さを設定する。アクセルメモリ40はシーソースイッチ形態を採用しており予め設定した2つのエンジン回転速度にワンタッチ操作で変更するもので、旋回時など作業の中断・再開する場合に利用する。メモリ調整スイッチ41もシーソースイッチ形態を採用しアクセルメモリの設定エンジン回転速度を任意に増減できる。ノークラスイッチ42はノークラッチブレーキ停止機能をONでき、この機能はブレーキペダルを踏むだけで車体の減速・停止を行うことができ、車体停止後ブレーキペダルを開放するだけでそのまま車体を発進させることができるものである。
【0035】
前記第一領域37Aは、前記アームレスト30の肘置き部32と略同等の高さ位置に設けられる。
【0036】
傾斜状の前記第二領域37Bには、電子油圧操作ボックス43を備え、カバー44で開閉できる構成としている。電子油圧操作ボックス43には、図4に示すように、2WDや4WD等の走行切換スイッチ、バックアップ・オートリフト・オートブレーキ等の作業時設定スイッチ、ポジション・ドラフト選択のオート切換、作業機の絶対水平・機体平行・機体傾斜の水平切換等その他設定スイッチ、を備えている。この第二領域37Bは、第一領域37Aよりもやや高い位置に設定されている。
【0037】
前記第三領域37Cには、中間支柱20の内側近傍に2連の外部油圧操作レバー45,45を配置し、その前方の傾斜凸条37Cpの傾斜面46に後述自動操舵モードの自動直進制御機能に付随して各種スイッチを配置している。例えばサブモニタ54のホーム画面呼出スイッチ47,画面切替スイッチ48、位置補正スイッチ49を備えている。
【0038】
前記第四領域37Dには、PTO切換スイッチ50、ワンタッチ耕耘ダイヤル51、主変速メモリスイッチ52、こだわり切替スイッチ53を備える。このうちPTO切換スイッチ50は、作業機Rが上昇し始めるとPTO軸回転を自動停止させ所定に下降すると再び回転させるPTO回転自動モードとこれらを実行しない手動モードとに選択設定できる。ワンタッチ耕耘ダイヤル51は、前記電子油圧操作ボックス43の各種スイッチと対応し、耕耘作業と道路走行に変更する場合に、駆動状態や各種制御設定をワンタッチで適正な状態に設定することができる。主変速メモリスイッチ52は、後述のように、副変速レバーの設定位置に対応して適正な主変速位置への切換を容易化する。こだわり切替スイッチ53は、所定の作業における前記電子油圧操作ボックス43の各種スイッチ設定の記憶値を呼び出す。第四領域37Dは第一領域37Aに連続状に設けられる。
【0039】
主変速メモリスイッチ52について、詳細に説明する。図8に示すように、各種スイッチ・センサ類の検出値を入力し(S101)、メモリスイッチ52を長押しすると(S102)、主変速メモリ設定モードに入る。次いで前後進レバー位置センサ86sの検出により前後進レバー86が前進位置にあり、副変速レバー位置センサ88sの検出により副変速レバー88が中立位置以外にあり、車速センサ102によって予め設定した車速X(km/h)以上である場合に(S103~S105)、主変速メモリ設定の条件が整ったと判定され、主変速レバーセンサ35s及び副変速レバーセンサ88sのそれぞれ操作位置を読み込み記憶する(S106,S107)。そしてメモリ位置表示出力される(S108,S109)。具体的には、前記カラー液晶表示部101の車速表示区画101aに、記憶された操作位置が縦線表記(γ)される。
【0040】
したがって、作業者は、車速表示区画101aの縦線表記(γ)を目視しながら現在の操作レバー35操作位置を確認し、表示にずれがあるときは(図7(A))、目標の記憶操作位置に達するように主変速レバー35操作し、現在速度を表す主変速レバー35の操作位置つまり濃い色表記(α)の端部を縦線表記(γ)に一致させる(図7(B))。目標を視認し易く作業者の運転操作に関する負担を軽減できる。
【0041】
作業終了しメモリ設定を解除する場合は、前後進レバー86を中立位置としメモリスイッチ52を長押しすることでメモリクリアできる(S110~S112)。
【0042】
ところで、前記S110で未だ前進側操作の場合は、作業継続と判定されS108に戻ってメモリ内容を継続する。一方後進側操作の場合は、メモリ位置表示出力をオフし画面から削除し、前進再開すればS108に戻って再度メモリ位置表示する(S113,S114)。
【0043】
上記のように、無段変速装置70を所定の変速位置に操作する主変速レバー35の位置を主変速レバーセンサ35sで検出できるように構成しその変速位置をメータパネルに表示し、かつ主変速レバー35操作位置の検出に基づいて無段変速装置70を所定変速位置に制御する構成としたトラクタにおいて、所定条件のもとに主変速メモリ設定モードに移行した場合であって、メモリスイッチ52操作によって当該車速に対応すべく変速操作位置を記憶できるよう構成し、そしてその記憶した変速操作位置をメータパネル100、すなわち図例ではカラー液晶表示部101に表示できるように構成したものであるから、記憶した変速操作位置で作業を行う場合には作業者は現在の変速位置と記憶した変速位置のずれを容易に把握でき、作業速設定の際の混乱を防止できる。
【0044】
また、表示された変速操作位置に主変速レバー35操作による変速位置が一致した場合に、主変速レバー35の操作位置の表示状態又は記憶した主変速レバー35の操作位置の表示状態を変更するよう構成する。例えば、現在速度を表す主変速レバー35の操作位置つまり濃い色(α)が異なる色に変更表示したり、記憶された主変速レバー35操作位置に対応する縦線表記(γ)の色を変更する等である。このように構成すると、記憶した操作位置に主変速レバー35を手動操作で変速するときに、パネルの表示状態を変更することで操作位置が略一致していることを注視することなく容易に把握できる。
【0045】
なお、前記の実施例では主変速レバー35は無段変速装置70の変速操作を行うもので、無段階操作であるから有段操作のように明確な変速段の認識が行えず的確な主変速レバー35操作は至難であるが記憶した主変速レバー35操作位置を表示することにより無段変速操作を容易化できる。
【0046】
さらに、主変速レバー35の操作位置の記憶は、メモリスイッチ52が操作される前の所定時間内に主変速レバー35の操作が検出されている場合は、主変速レバー35の操作位置記憶を実行させない構成としている。したがって、操作中に記憶すると意図しない変速位置で記憶される可能性や、誤操作の可能性があるが、記憶前に操作されていた場合は記憶を受け付けないようにすることで確実に操作者の意図を反映した変速位置を記憶できる。
【0047】
図9は、低速車マーク105の改良装着構造を示すものである。低速車マークはトラクタが公道を走行する際に装着が義務付けされているが、大型のマーク板体を後方から視認できるよう装着する。一般には機体背面の左右中央に配置している。ところが、公道走行中は、右端に近いほど後続車による視認性が良好となる。しかし圃場内作業中は視認性の確保は問題とならず、後部装着の作業機状態の確認のためには左端に寄せて待機させるのがよい。このため、低速車マーク105を左右移動手段106に装着して右端又は左端に移動させるよう構成する。なお、左右移動手段106としては、螺旋軸(図示せず)の正逆回転によってこの螺旋軸に螺合するベース部材106aを左右移動可能に構成し、螺旋軸端には正逆連動する電動モータ(図示せず)を設ける構成としている。
【符号の説明】
【0048】
35 主変速レバー
35s 主変速レバー位置センサ
52 主変速メモリスイッチ(メモリスイッチ)
72 主変速装置
100 メータパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9