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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014824
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】航空機用の支持構造体
(51)【国際特許分類】
   B64C 1/00 20060101AFI20240125BHJP
   B64C 3/18 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B64C1/00 A
B64C3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023118251
(22)【出願日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】17/869,918
(32)【優先日】2022-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(74)【代理人】
【識別番号】100217467
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴崎 一磨
(74)【代理人】
【識別番号】100228706
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 皓太
(72)【発明者】
【氏名】ビクトリア エー. クラーク
(72)【発明者】
【氏名】オラフ ウェックナー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ ディー. スミス
(72)【発明者】
【氏名】シンシア ティー. パリッシュ
(72)【発明者】
【氏名】エリック エー. フィリップス
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ジェイ. ディートリック
(72)【発明者】
【氏名】アンディ アン キュー. リー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフ イー. バーンズ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】丸穴を備えた航空機用の支持構造体を提供する。
【解決手段】航空機用の支持構造体20は、長手方向32を規定する長手軸28、及び前記長手軸28に直交する横断軸30を有する、略平面状の形状の構造部材21と、前記長手方向32に沿って形成された複数の丸穴40と、を含む。各丸穴40は、長径に沿った長軸46、及び、前記長軸46に直交するとともに、前記長径より短い短径に沿った短軸48を有する。各丸穴40は、当該丸穴の長軸46が前記構造部材21の長手軸32に対して0度超且つ90度未満の回転角度を成すように配向されている。前記構造部材21は、前記長手軸28又は前記横断軸30に対して非平行な主荷重方向70で当該構造部材21に作用する1つ又は複数の外部荷重に耐えるように構成されている。各丸穴40は、当該穴の長軸46が主荷重方向70と略平行になるように配向されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を規定する長手軸、及び前記長手軸に直交する横断軸を有する、略平面状の形状の構造部材と、
前記長手方向に沿って形成された複数の丸穴であって、各々が、長径に沿った長軸、及び前記長軸に直交するとともに前記長径より短い短径に沿った短軸を有する丸穴と、を具備し、
前記丸穴の各々は、当該丸穴の前記長軸が前記構造部材の前記長手軸に対して0度超且つ90度未満の回転角度を成すように配向されている、航空機用の支持構造体。
【請求項2】
前記丸穴の各々は、所与の形状を有しており、各形状が、楕円形、グロジンスキー輪郭面で形成された穴、卵形、丸長方形、長円形、丸菱形、又は丸台形である、請求項1に記載の支持構造体。
【請求項3】
前記構造部材の略平面状の形状は、略平坦な形状又は略湾曲した形状であり、前記構造部材の前記長手軸は、直線状の軸又は湾曲した軸である、請求項1に記載の支持構造体。
【請求項4】
前記丸穴の各々は、当該丸穴の前記短軸が前記構造部材の前記横断軸に対して0度超且つ90度未満の回転角度を成すように配向されている、請求項1に記載の支持構造体。
【請求項5】
前記構造部材は、翼ボックス部材である、請求項1に記載の支持構造体。
【請求項6】
前記翼ボックス部材は、リブ、スパー、上面外板、及び下面外板のうちの1つであり、前記丸穴の各々は、前記翼ボックス部材を貫通するアクセスホールである、請求項5に記載の支持構造体。
【請求項7】
前記構造部材は、胴体外板であり、前記丸穴の各々は、前記胴体外板を貫通する窓穴である、請求項1に記載の支持構造体。
【請求項8】
前記構造部材は、前記長手軸又は前記横断軸に対して非平行な主荷重方向で当該構造部材に作用する1つ又は複数の外部荷重に耐えるように構成されており、前記丸穴の各々は、当該穴の前記長軸が前記主荷重方向に対して0度超且つ45度未満の回転角度を成すように配向されている、請求項1に記載の支持構造体。
【請求項9】
前記構造部材は、前記長手軸又は前記横断軸に対して非平行な主荷重方向で当該構造部材に作用する1つ又は複数の外部荷重に耐えるように構成されており、前記丸穴の各々は、当該穴の前記長軸が前記主荷重方向と平行になるように配向されている、請求項1に記載の支持構造体。
【請求項10】
前記構造部材は、1つ又は複数の外部部材との接続部位となるように構成された複数の取付点であって、前記外部部材から1つ又は複数の外部荷重を受けるように構成された複数の取付点を含む、請求項9に記載の支持構造体。
【請求項11】
長手方向を規定する長手軸、及び前記長手軸に直交する横断軸を有する、略平面状の形状の構造部材であって、1つ又は複数の外部部材との接続部位となるように構成されているとともに、前記長手軸又は前記横断軸に対して非平行な主荷重方向で前記外部部材から作用する1つ又は複数の外部荷重を受けるように構成された複数の取付点を含む構造部材と、
前記長手方向に沿って形成された複数の丸穴であって、各々が、長径に沿った長軸、及び前記長軸に直交するとともに前記長径より短い短径に沿った短軸を有する丸穴と、を具備し、
前記丸穴の各々は、当該穴の前記長軸が前記主荷重方向と平行になるように配向されている、航空機用の支持構造体。
【請求項12】
前記丸穴の各々は、所与の形状を有しており、各形状が、楕円形、グロジンスキー輪郭面で形成された穴、卵形、角丸長方形、長円形、角丸菱形、又は角丸台形である、請求項11に記載の支持構造体。
【請求項13】
前記構造部材の略平面状の形状は、略平坦な形状又は略湾曲した形状であり、前記構造部材の前記長手軸は、直線状の軸又は湾曲した軸である、請求項11に記載の支持構造体。
【請求項14】
前記丸穴の各々は、当該穴の前記長軸が前記主荷重方向に対して0度超且つ45度未満の回転角度を成すように配向されている、請求項11に記載の支持構造体。
【請求項15】
前記構造部材は、リブ、スパー、上面外板、及び下面外板のうちの1つを含む翼ボックス部材であり、前記丸穴の各々は、前記翼ボックス部材を貫通するアクセスホールである、請求項11に記載の支持構造体。
【請求項16】
前記構造部材は、胴体外板であり、前記丸穴の各々は、前記胴体外板を貫通する窓穴である、請求項11に記載の支持構造体。
【請求項17】
長手方向を規定する長手軸、及び前記長手軸に直交する横断軸を有する、略平面状の形状の構造部材であって、1つ又は複数の外部部材との接続部位となるように構成されているとともに、前記長手軸又は前記横断軸に対して非平行な主荷重方向で前記外部部材から作用する1つ又は複数の外部荷重を受けるように構成された複数の取付点を含む構造部材と、
前記長手方向に沿って形成された複数の略楕円形の穴であって、各々が、長径に沿った長軸、及び前記長軸に直交するとともに前記長径より短い短径に沿った短軸を有する略楕円形の穴を具備し、
前記略楕円形の穴の各々は、当該穴の前記長軸が前記主荷重方向と平行になるように配向されており、
前記構造部材は、
リブ、スパー、上面外板、及び下面外板のうちの1つを含む翼ボックス部材であって、前記穴の各々が当該翼ボックス部材を貫通するアクセスホールとして設けられた構成であるか、或いは、
胴体外板であって、前記穴の各々が前記胴体外板を貫通する窓穴として設けられた構成である、
航空機の翼ボックス又は胴体用の支持構造体。
【請求項18】
前記略楕円形の穴の各々は、所与の形状を有しており、各形状が、楕円形、グロジンスキー輪郭面で形成された穴、卵形、角丸長方形、又は長円形である、請求項17に記載の支持構造体。
【請求項19】
前記構造部材の略平面状の形状は、略平坦な形状又は略湾曲した形状であり、前記構造部材の前記長手軸は、直線状の軸又は湾曲した軸である、請求項17に記載の支持構造体。
【請求項20】
前記略楕円形の穴の各々は、当該穴の前記長軸が前記主荷重方向に対して0度超且つ45度未満の回転角度を成すように配向されている、請求項17に記載の支持構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、航空機用の支持構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
固定翼機には、翼を構成する翼ボックスなる構造体を有するものがある。翼ボックスは、リブ、スパー、及びストリンガで構成された骨組みやフレームと、これを覆う上面外板及び下面外板を含む。
【0003】
リブやスパー、また特に下面外板は、所定数の丸形状の貫通孔をアクセスホールとして有する設計であることが多い。アクセスホールは、油圧、電気、及び燃料系統の配管を通したり、航空機翼の点検や修理の作業担当者が内部にアクセスしたりするために利用される。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態によれば、航空機用の支持構造体は、長手軸及び当該長手軸に直交する横断軸を有する略平面状の形状の構造部材と、前記構造部材の長手方向に沿って形成された複数の丸穴と、を具備する。前記丸穴の各々は、長径に沿った長軸、及び前記長軸に直交するとともに前記長径より短い短径に沿った短軸を有しており、前記丸穴の各々は、当該丸穴の前記長軸が前記構造部材の前記長手軸に対して0度超且つ90度未満の回転角度を成すように配向されている。
【0005】
前記丸穴の各々は、所与の形状を有しており、各形状が、楕円形、グロジンスキー輪郭面で形成された穴、卵形、角丸長方形、長円形、角丸菱形、又は角丸台形である。前記構造部材の略平面状の形状は、略平坦な形状又は略湾曲した形状であり、前記構造部材の前記長手軸は、直線状の軸又は湾曲した軸である。加えて、前記丸穴の各々は、当該丸穴の前記長軸が前記構造部材の前記長手軸に対して0度超且つ90度未満の回転角度を成すように配向されている。
【0006】
本実施形態では、前記構造部材は、翼ボックス部材である。より具体的には、前記翼ボックス部材は、リブ、スパー、上面外板、及び下面外板のうちの1つであり、前記丸穴の各々は、前記翼ボックス部材を貫通するアクセスホールである。代替的に、前記構造部材は、胴体外板であり、前記丸穴の各々は、前記胴体外板を貫通する窓穴である。
【0007】
前記構造部材は、前記長手軸又は前記横断軸に対して非平行な主荷重方向で当該構造部材に作用する1つ又は複数の外部荷重に耐えるように構成されている。この構成では、前記丸穴の各々は、当該穴の前記長軸が前記主荷重方向に対して0度超且つ45度未満の回転角度を成すように配向されているか、或いは、当該穴の前記長軸が前記主荷重方向と平行になるように配向されている。前記構造部材は、さらに、1つ又は複数の外部部材との接続部位となるように構成された複数の取付点であって、前記外部部材から1つ又は複数の外部荷重を受けるように構成された複数の取付点を含む。
【0008】
他の実施形態によれば、航空機用の支持構造体は、長手軸及び当該長手軸に直交する横断軸を有する略平面状の形状の構造部材であって、1つ又は複数の外部部材との接続部位となるように構成されているとともに、前記長手軸又は前記横断軸に対して非平行な主荷重方向で前記外部部材から作用する1つ又は複数の外部荷重を受けるように構成された複数の取付点を含む構造部材と、前記構造部材の長手方向に沿って形成されており、各々が、長径に沿った長軸、及び前記長軸に直交するとともに前記長径より短い短径に沿った短軸を有する複数の丸穴と、を具備し、前記穴の前記長軸が前記主荷重方向と平行になるように配向されている。
【0009】
本実施形態では、前記丸穴の各々は、所与の形状を有しており、各形状が、楕円形、グロジンスキー輪郭面で形成された穴、卵形、角丸長方形、長円形、角丸菱形、又は角丸台形である。前記構造部材の略平面状の形状は、略平坦な形状又は略湾曲した形状であり、前記構造部材の前記長手軸は、直線状の軸又は湾曲した軸である。前記丸穴の各々は、当該穴の前記長軸が前記主荷重方向に対して0度超且つ45度未満の回転角度を成すように配向されている。前記構造部材は、リブ、スパー、上面外板、及び下面外板のうちの1つを含む翼ボックス部材であり、前記丸穴の各々は、前記翼ボックス部材を貫通するアクセスホールである。代替的に、前記構造部材は、胴体外板であり、前記丸穴の各々は、前記胴体外板を貫通する窓穴である。
【0010】
さらに他の実施形態によれば、航空機の翼ボックス又は胴体用の支持構造体は、長手軸及び当該長手軸に直交する横断軸を有する略平面状の形状の構造部材であって、1つ又は複数の外部部材との接続部位となるように構成されているとともに、前記長手軸又は前記横断軸に対して非平行な主荷重方向で前記外部部材から作用する1つ又は複数の外部荷重を受けるように構成された複数の取付点を含む構造部材と、前記構造部材の長手方向に沿って形成された複数の略楕円形の穴であって、各々が、長径に沿った長軸、及び前記長軸に直交するとともに前記長径より短い短径に沿った短軸を有する複数の略楕円形の穴と、を具備する。前記略楕円形の穴の各々は、当該穴の前記長軸が前記主荷重方向と平行になるように配向されており、前記構造部材は、(i)リブ、スパー、上面外板、及び下面外板のうちの1つを含む翼ボックス部材であって、前記穴の各々が当該翼ボックス部材を貫通するアクセスホールとして設けられた構成であるか、或いは、(ii)胴体外板であって、前記穴の各々が前記胴体外板を貫通する窓穴として設けられた構成である。
【0011】
前記略楕円形の穴の各々は、所与の形状を有しており、各形状が、楕円形、グロジンスキー輪郭面で形成された穴、卵形、角丸長方形、又は長円形である。前記構造部材の略平面状の形状は、略平坦な形状又は略湾曲した形状であり、前記構造部材の前記長手軸は、直線状の軸又は湾曲した軸である。前記略楕円形の穴の各々は、当該穴の前記長軸が前記主荷重方向に対して0度超且つ45度未満の回転角度を成すように配向されている。
【0012】
本願教示における上述の特徴及び効果やその他の特徴及び効果は、添付の特許請求の範囲に定義される本願教示を実施するためのベストモード他の実施形態の詳細な説明と、添付図面を参照すれば明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来の配向で設けられた丸形状のアクセスホールを有する構造部材の概略立面図である。
図2】本開示の配向で設けられた丸形状のアクセスホールを有する支持構造体の概略立面図である。
図3図2に示す支持構造体の概略立面図であって、複数の荷重点に作用する外部荷重が示されている。
図4】略平坦な平面形状を有し、長手軸が弧状に延びる支持構造体の概略立面図である。
図5】略湾曲した平面形状を有し、長手軸が弧状に延びる支持構造体の概略斜視図である。
図6】グロジンスキー輪郭面を模式的に表した図である。
図7-13】アクセスホールの様々な丸形状として、楕円形、グロジンスキー輪郭面で形成された穴、卵形、角丸長方形、長円形、角丸菱形、及び角丸台形を示す立面図である。
図14】本開示の実施例における要素、特徴、及び特性の様々な組み合わせを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付図面を参照して、航空機用の支持構造体20(例えば、図2を参照)の様々な実施形態について説明する。図面全体を通して、同様の部材には同様の参照符号が用いられている。
【0015】
図1は、従来の構造部材10を示す概略立面図であって、所定数の丸穴(rounded hole)15が従来の配向で配置されている。構造部材10は、略平面的な形状であって、長手方向(longitudinal direction)12(図では、左右方向)に延びる長手軸(longitudinal axis)11と、横断方向(transverse direction)14(図では、上下方向)に延びる横断軸(transverse axis)13を有している。横断軸13及び横断方向14は、それぞれ長手軸11及び長手方向12に対して垂直であり、直交している。構造部材10の形状が略平面的であるので、構造部材10の厚み(図には表れていないが、紙面の前後に延びている)は、構造部材10の全体の長さ及び高さよりもはるかに小さい。
【0016】
丸穴15の各々は、当該穴15の長径(major length)Lmajに沿った長軸(major axis)16と、当該穴15の短径(minor length)Lminに沿った短軸(minor axis)17を有しており、長軸16と短軸17は、互いに直交している。各穴15の重心18は、当該穴15の長軸16と短軸17の交点に規定される。この従来の構造部材10においては、各丸穴15の長軸16は、構造部材の長手軸11に整列する又は平行な配向であり、各丸穴15の短軸17は、構造部材の横断軸13に整列する又は平行な配向である。構造部材10のこの構成を、例えば、航空機翼の下面外板に採用する場合、各穴15は、長軸16が下面外板の長手軸11に整列するように配置され、これらの穴15をアクセスホールとして使用することで、構造部材10の内部に収容されて外板に覆われた油圧系、機械系、電気系の各部材に作業担当者がアクセスすることができる。図示の例では、下面外板の長手方向12に沿って延びるストリンガ19が配置されており、複数の丸穴15も、同じく長手方向12に沿って(よって、長手軸11に沿って)配置されている。アクセスホールである丸穴15には、当該穴15と同様の形状のドア(図示せず)を被せて固定することで蓋をする構成でもよい。
【0017】
このような従来の構成の構造部材10は、図2図3に示す本開示の第1実施形態の支持構造体20とは対照的である。これらの概略立面図に示す支持構造体20が有する丸穴40は、図1に示す配向とは意図的に大きく異なる配向で配置されている。
【0018】
係る相違点の説明の前に、従来の構造部材10と本実施形態の支持構造体20との類似点について説明する。例えば、図2図3に示す支持構造体20は、構造部材10と同様に、略平面的な形状22を有する構造部材21を含んでおり、当該構造部材21の長さに沿った長手軸28と、この長手軸28に直交するとともに、当該構造部材21の幅に沿った横断軸30と、を有する。この長手軸28が長手方向32を規定し、横断軸30が横断方向34を規定する。(なお、航空機の翼端と翼端を結ぶ軸を、従来から「横軸(transverse axis)」(又は、左右方向軸)と呼ぶことがあるが、本明細書に記載の横断軸(transverse axis)30は、これとは異なる。同様に、横断方向(transverse direction)34は、航空機の「横軸」に平行な航空機の横方向(transverse direction)(例えば、左舷と右舷の方向)とは、異なる。)また、構造部材21には、長手方向32に沿って複数の丸穴40が形成されている。図2図3に示す支持構造体20の各丸穴40は、図1に示す従来の構造部材10の丸穴15と同様に、長径Lmajに沿った長軸46と、この長軸46に直交するとともに、長径Lmajより短い短径Lmin(即ち、Lmin<Lmaj)に沿った短軸48を有する。各丸穴40の長軸46と短軸48は、当該穴の重心41で交差する。
【0019】
ただし、支持構造体20では、各丸穴40の長軸46は、構造部材21の長手軸28に整列する配向や平行な配向ではない。丸穴40の長軸46は、構造部材21の長手軸28から意図的に回転させた配向となるように配置されている。具体的には、各長軸46は、構造部材の長手軸28に対して、0度超且つ90度未満の回転角度を成すように配向されている。
【0020】
従来とは異なる配向で穴40を配置する目的は、図2図3から読み取ることができる。具体的には、図3は、図2の支持構造体20と併せて、構造部材21における複数の荷重点又は取付点72に作用する様々な外部荷重又は外力Fを示している。これらの外部荷重Fは、構造部材21の取付点又は荷重点72に外部部材74(図2図3には示されていないが、図14に示されている)が取り付けられることにより生じる荷重である。支持構造体20は、様々な種類の部材60の形態を取ることができる。例えば、長手方向32に延びる支持ストリンガ69を有する航空機翼の下面外板68の形態や、リブ63、スパー64、及び上面外板66など(図2図3には示されていないが、図14に示されている)、翼を支持して翼ボックスを形成する翼ボックス部材62の形態を取ることができる。翼ボックス部材62は、下面外板68上の様々な取付点72おいて下面外板68に取り付け可能であり、下面外板68の取付点72に力Fを作用させる外部部材74として機能しうる。なお、図2図3に示す外力Fの各ベクトルを足し合わせると、これらの外力は、構造部材21の質量中心29に作用する単一の力とみなすことができる。この単一の力を、主荷重70と呼び、その作用方向を主荷重方向(PLD)71とする。図2に示す様に、主荷重70のPLD71は、主荷重70と構造部材21の長手軸28との間に形成されるPLD角度θPLDで規定される。
【0021】
図2図3では、複数の外力Fが合成されて、構造部材21にPLD71の方向で作用する単一の主荷重70として示されているので、丸穴40の長軸46がいずれもPLD71と同一の方向を指すように(即ち平行に)配向されていることが分かる。例えば、図2に示す様に、各丸穴40の長軸46は、構造部材の長手軸28に対して第1回転角度θ1を成しており、この第1回転角度θ1は、PLD角度θPLDと合同(即ち、θ1≡θPLD)である。よって、丸穴40の長軸46は、PLD71に整列する又は平行な配向である。
【0022】
丸穴40の長軸46をPLD71に整列する配向とする理由の1つは、構造部材21及び支持構造体20の全体で外部荷重Fをより効率的に負担するためである。また、このような配向とすることにより、外力Fに対する所望の耐性を維持しつつ、構造部材21/支持構造体20の軽量化が可能になる。
【0023】
多くの場合、取付点/荷重点72、外部負荷Fの大きさ及び方向、並びに、支持構造体20の直ぐ周辺に位置する他の構造体との近接具合は、穴40の長軸46がPLD71に対して完全に整列する/平行になる配向とすることが可能な状態である。しかしながら、場合によっては、近接する他の構造体(例えば、油圧ライン、支持部材、モータ、電気ケーブル束など)が妨げとなって、1つ又は複数の穴40について、長軸46がPLD71に完全に整列するように配向できなかったり、そのような構造体からの押圧などの影響によって、1つ又は複数の穴40について、長軸46がPLD71と完全に整列する/平行になるように配向できなかったりする状態がありうる。例えば、1つ又は複数の丸穴40は、長軸46がPLD71から何度か回転された配向で配置されるが、このときの第1回転角度θ1がPLD角度θPLDと異なる(即ち、θ1≠θPLD)場合がある。1つ又は複数の丸穴40は、例えば、長軸46がPLD71から5度離れた方向、PLD71から10度離れた方向、PLD71から15度離れた方向、PLD71から20度離れた方向、PLD71から25度離れた方向、PLD71から30度離れた方向、PLD71から35度離れた方向、PLD71から40度離れた方向、PLD71から45度離れた方向などを指すように配置されうる。また、この他にも、PLD71から1度刻み、2度刻み、3度刻み、或いは4度刻みの角度離れた方向や、PLD71から6度刻み、7度刻み、8度刻み、或いは9度刻みの角度離れた方向を指すように配置されうる。
【0024】
よって、各丸穴40は、長軸46がPLD71に完全に整列する/平行な配向であってもよいし、あるいは、PLD71に対して所与の回転角度(ただし、90度未満)を成す配向であってもよい。本開示の支持構造体20は、主荷重70/PLD71が支持構造体20の長手軸28に整列しない場合や平行でない場合、つまり、主荷重70/PLD71が長手軸28に対して所与の角度を成す方向を指す場合にも使用可能であるので、このような場合には、丸穴40も、長軸46が構造部材21の長手軸28に対して0度超且つ90度未満の回転角度を成すように配置されうる。同様に、各丸穴40は、短軸48がPLD71に対して完全に垂直な又は直交する配向でもよいし、PLD71に対して完全に垂直な配向に対して所与の角度(0度超且つ90度未満)回転された配向でもよい。各丸穴40は、短軸48が横断軸30に対して第2回転角度θ2を成すような配向でもよい。つまり、丸穴40は、短軸48が横断軸30に完全に整列する(第2回転角度θ2と横断軸30との差が、実質的に0度である)配向でもよいし、或いは、短軸48が横断軸30に対して0度超且つ90度未満の角度回転された(第2回転角度θ2と横断軸30の間の差が、前出の角度である)配向でもよい。
【0025】
構造部材21に設けられる丸穴40は、すべてが同じ形状50であってもよいし、複数の異なる形状50であってもよい。場合によっては、すべての丸穴40が、他のいずれの丸穴40とも異なる独自の形状50を有していてもよい。各穴40が「丸形状」であるとは、つまり、穴40の形状50が鋭い急峻な角部は含んでおらず、代わりに、アールを付けた緩やかな輪郭や隅部(fillet)を有することを意味する。これにより、アールを付けた角部や隅部に対する応力集中係数KTを低減することができる。形状50としては、図7図13に示す様に、例えば、楕円形51(図7)、グロジンスキー輪郭面で形成された穴(Grodzinski-profiled hole)52(図8)、卵形53(図9)、角丸長方形54(図10)、長円形(stadium)55(図11)、角丸菱形56(図12)、又は、角丸台形57(図13)が挙げられる。なお、図8に示すグロジンスキー輪郭面で形成された穴52は、グロジンスキー輪郭面ノッチ(Grodzinski-profiled notch)59を4つ組み合わせることで構成される。図6は、そのようなグロジンスキー輪郭面ノッチ59の1つを示している。このようなノッチ59を形成するには、図示のように、水平軸に沿った所与の長さXと、垂直軸に沿った所与の高さY(Xとは異なる)を選択し、選択した長さXと高さYのそれぞれを同じ数の等間隔の目盛り(この例では、12個)で分割し、次いで、水平部分の各目盛りと、これに対応する垂直部分の目盛りとを選択的に線で結ぶ。この結果、図示のようなグリッドが形成され、このグリッドに現れる曲線状のエッジにより、特徴的なグロジンスキー輪郭面が規定される。さらに、図7図13に示す様に、各形状50は、長軸46と、この長軸46に直交する又は垂直である短軸48を有する。これらの丸穴40は、以下に説明するように、構造部材21の使用目的に応じて、アクセスホール42や窓穴44として使用される。
【0026】
図4は、支持構造体20の他の実施形態を示す図であり、この支持構造体は、航空機翼の翼ボックスに用いられるリブ63の全体形状を有する。この構造部材21は、3つの丸穴40a、40b、40cを有しており、これらの穴の長軸46a、46b、46cは、いずれも主荷重70/PLD71と同じ方向を指している。図2図3の支持構造体20と同様に、図4の支持構造体20も略平面的な形状22を有しており、具体的には、略平坦な平面形状24を有している。これに対し、図5の支持構造体20は、略平面的な形状22を有しており、具体的には、略湾曲した平面形状26を有している。図2図3に示される構造部材21の長手軸28は、直線状の長手軸28sであるが、図5に示される構造部材21の長手軸28は、湾曲した長手軸28cである。さらに、図2図3では、横断軸30は直線状であるが、図5では、横断軸30は湾曲している。
【0027】
図4に示される構造部材21の長手軸28は、直線状の長手軸28s(翼弦線とも呼ばれる)、又は、湾曲した長手軸28c(平均キャンバー線とも呼ばれる)のいずれかである。どちらの場合も、丸穴40a、40b、40cは、構造部材21の長手軸28に沿って配置される。(なお、3つのうちの2つの丸穴40a、40bの中心41a、41bは、長手軸28c上に位置しており、もう1つの丸穴40cの中心41cは、直線状の長手軸28sと湾曲した長手軸28cとの間に位置している。)
【0028】
図14は、支持構造体20の様々な要素、特徴、特性の組み合わせを示すブロック図であり、組み合わせ方によって、航空機99における外部部材74との接続部位となる胴体外板61又は翼ボックス部材62として機能する支持構造体の1つ又は複数の実施形態が提供される。いくつかの実施形態では、構造部材21は、リブ63、スパー64、上面外板66、又は下面外板68などの翼ボックス部材62であり、各丸穴40は、翼ボックス部材62を貫通するアクセスホール42である。代替的な例では、構造部材21は、胴体外板61であり、丸穴40は、胴体外板61を貫通する窓穴44である。また、このブロック図は、略平面的な形状22は、例えば、略平坦な平面形状24又は略湾曲した平面形状26であり、長手軸28は、例えば、直線的な長手軸28s又は湾曲した長手軸28cであり、各丸穴40の形状50は、例えば、楕円形51、グロジンスキー曲面で形成された穴52、卵形53、丸長方形54、長円形55、丸菱形56、丸台形57、又は、その他の丸形状58であることを示している。
【0029】
上述したように、構造部材21は、長手軸28又は横断軸30に対して非平行な主荷重方向71で当該構造部材21に作用する1つ又は複数の外部負荷Fに耐えるように構成されている。この構成においては、各丸穴40は、長軸46が主荷重方向71に対して0度超かつ45度未満の回転角度を成すように配向される。或いは、各丸穴40は、長軸46が主荷重方向71に平行になるように配向される。構造部材21には、さらに、1つ又は複数の外部部材74との接続部位となり、当該外部部材74からの外部負荷Fを受けるように構成された複数の取付点72が設けられている。
【0030】
他の実施形態によれば、航空機99用の支持構造体20は、長手方向32を規定する長手軸28及び当該長手軸28に直交する横断軸30を有する、略平面状の形状22の構造部材21を含む。構造部材21は、複数の取付点72を含み、これら取付点は、1つ又は複数の外部部材74との接続部位となるように構成されているとともに、長手軸28又は横断軸30に対して非平行な主荷重方向71で外部部材74から構造部材21に作用する1つ又は複数の外部荷重Fを受けるように構成されている。支持構造体20は、さらに、長手方向32に沿って形成された複数の丸穴40を有する。各丸穴40は、長径Lmajに沿った長軸46と、長軸46に直交するとともに、長径Lmajより短い短径Lminに沿った短軸48を有する。丸穴40の各々は、当該穴の長軸46が主荷重方向71に平行になるように配向されている。
【0031】
この実施形態では、丸穴40は、各々が所与の形状50を有しており、各形状50は、楕円形51、グロジンスキー輪郭面で形成された穴52、卵形53、丸長方形54、長円形55、丸菱形56、又は丸台形57である。構造部材21が有する略平面状の形状22は、略平坦な平面形状24又は略湾曲した平面形状26であり、構造部材21の長手軸28は、直線状の長手軸28s又は湾曲した長手軸28cである。丸穴40の各々は、当該穴の長軸46が主荷重方向71に対して0度超且つ45度未満の回転角度を成すように配向されている。構造部材21は、例えば、リブ63、スパー64、上面外板66、又は下面外板68のうちの1つを含む翼ボックス部材62であり、各丸穴40は、翼ボックス部材62を貫通するアクセスホール42である。代替的な例では、構造部材21は、胴体外板61であり、丸穴40は、胴体外板61を貫通する窓穴44である。
【0032】
さらに他の実施形態によれば、航空機99の翼ボックス又は胴体用の支持構造体20は、長手方向32を規定する長手軸28、及び前記長手軸28に直交する横断軸30を有する、略平面状の形状22の構造部材21を含む。構造部材21は、複数の取付点72を含み、これら取付点は、1つ又は複数の外部部材74との接続部位となるように構成されているとともに、長手軸28又は横断軸30に対して非平行な主荷重方向71で外部部材74から構造部材21に作用する1つ又は複数の外部荷重Fを受けるように構成されている。支持構造体20は、さらに、構造部材21の長手方向32に沿って形成された複数の略楕円形の穴40を有する。略楕円形の各穴40は、長径Lmajに沿った長軸46と、長軸46に直交するとともに、長径Lmajより短い短径Lminに沿った短軸48と、を有する。略楕円形の穴40の各々は、当該穴の長軸46が主荷重方向71と平行になるように配向されている。構造部材21は、(i)リブ63、スパー64、上面外板66、及び下面外板68のうちの1つを含む翼ボックス部材62であって、丸穴40の各々が、翼ボックス部材62を貫通するアクセスホール42として設けられた構成であるか、或いは、(ii)胴体外板61であって、丸穴40の各々が胴体外板61を貫通する窓穴44として設けられた構成である。
【0033】
略楕円形の穴40は、各々が所与の形状50を有しており、各形状50が、楕円形51、グロジンスキー輪郭面で形成された穴52、卵形53、丸長方形54、又は長円形55である。構造部材21における略平面状の形状22は、略平坦な平面形状又は略湾曲した平面形状であり、構造部材21の長手軸28は、直線状の長手軸又は湾曲した長手軸である。略楕円形の穴40の各々は、当該穴の長軸46が主荷重方向71に対して0度超且つ45度未満の回転角度を成すように配向されている。
【0034】
上述の説明は、例示を目的としたものであって、限定を課すものではない。本明細書に記載した寸法や材料の種類は、例示を目的としたものであって、なんら限定を課すものではなく、例示的な実施形態に過ぎない。添付の請求の範囲の記載において、「第1」、「第2」、「上」、「下」などの用語が用いられている場合、これらの用語は、単に標識として用いられているにすぎず、これらの用語の対象物に何ら数的な要件や位置的な要件を課すものではない。本明細書において、単数形で記載されている要素やステップは、特段の記載がない限り、複数の要素やステップを排除するものではない。加えて、「A及びBのうちの少なくとも1つ」という表現、並びに、「A及び/又はB」という表現は、いずれも、「Aのみ」、「Bのみ」、又は、「AとBの両方」を意味するとして解釈されるべきである。加えて、特段の記載がない限り、特定の性質を有する1つ又は複数の要素を「具備する/含む」又は「有する」実施形態は、そのような性質を備えない同様の要素を付加的に含みうる。また、「実質的に」及び「概ね/略」など、大まかに説明する副詞が形容詞を修飾する場合、これらの副詞は、「ほとんど」、「主に」、「大部分は」、「著しい程度に」、「高い度合いで」、及び/又は、「100%の可能性のうちの少なくとも51%から99%」などを意味するものであり、必ずしも「完全に」、「完璧に」、「厳密に」、「すべて」、又は「100%」を意味するものではない。加えて、本明細書に「近傍の」なる用語が、ある物体やその一部分の位置を説明するために、及び/又は、2つの物体やそれらの一部分の位置関係を説明するために用いられている場合、当該用語は、「近く」、「隣接」、「接近」、「付近」、「その位置に」などを意味する。
【0035】
上述の説明は、ベストモードを含む例を用いて記載されており、当業者が本開示の装置、システム、物質の組成、及び方法の作製及び使用を実施することを可能にするものである。ただし、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲、及びその均等範囲によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-13】
図14
【外国語明細書】