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特開2024-148251X線コンピュータ断層撮影装置、制御方法、および制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148251
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】X線コンピュータ断層撮影装置、制御方法、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
A61B6/03 321K
A61B6/03 360G
A61B6/03 371
A61B6/03 377
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061222
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津雪 昌快
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093BA17
4C093CA13
4C093CA23
4C093CA34
4C093CA35
4C093EC47
4C093ED07
4C093FA15
4C093FA36
4C093FA43
4C093FA44
4C093FA54
4C093FA55
4C093FA58
4C093FB09
4C093FC30
4C093FF21
4C093FF42
4C093FF46
(57)【要約】
【課題】ニードルなどの医用器具の位置の変更に合わせて、医用器具の位置の把握に適切な断面画像を撮影または表示すること。
【解決手段】本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、取得部と、画像処理部と、表示部と、を有する。取得部は、被検体に対する検査または治療に用いられる医用器具の位置と前記医用器具の姿勢とを含む位置姿勢情報を取得する。画像処理部は、前記被検体に対するX線スキャンに基づいて得られるボリュームデータと前記位置姿勢情報とに基づいて、前記医用器具を示す領域を含む少なくとも一つの断面に対応する断面画像を生成する。表示部は、前記断面画像を表示する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対する検査または治療に用いられる医用器具の位置と前記医用器具の姿勢とを含む位置姿勢情報を取得する取得部と、
前記被検体に対するX線スキャンに基づいて得られるボリュームデータと前記位置姿勢情報とに基づいて、前記医用器具を示す領域を含む少なくとも一つの断面に対応する断面画像を生成する画像処理部と、
前記断面画像を表示する表示部と、
を備えるX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記少なくとも一つの断面は、直交2断面であって、
前記画像処理部は、前記ボリュームデータと前記位置姿勢情報とに基づいて、前記直交2断面に対応する2つの断面画像を生成し、
前記表示部は、前記2つの断面画像を表示する、
請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの断面は、前記被検体が載置された天板の長軸方向に直交する第1の断面と、前記第1の断面に直交する第2の断面と、前記第1の断面と前記第2の断面とに直交する第3の断面とのうちいずれかに直交する断面を含み、
前記画像処理部は、前記ボリュームデータと前記位置姿勢情報とに基づいて、前記少なくとも一つの断面画像を生成し、
前記表示部は、前記少なくとも一つの断面画像を表示する、
請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
前記位置姿勢情報に基づいて、前記被検体への更なるX線スキャンに関するスキャン範囲を、前記医用器具を含むように調整する調整部と、
前記調整されたスキャン範囲で、前記被検体に対して前記更なるX線スキャンを実行するスキャン制御部と、
を備える請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記調整部は、前記スキャン範囲の調整において、前記位置姿勢情報に基づいて、前記被検体が載置された天板の移動量を決定し、
前記表示部は、前記天板の移動に関するユーザへの確認の画面を表示し、
前記天板の移動が許可された場合、前記スキャン制御部は、前記決定された移動量で前記天板を移動させる、
請求項4に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記スキャン制御部の制御の下で前記X線スキャンを実行する撮像装置をさらに備え、
前記調整部は、前記位置姿勢情報に基づいて、前記撮像装置のチルト角と前記医用器具の長軸方向とを揃え、
前記スキャン制御部は、前記撮像装置を前記チルト角で傾け、前記調整されたスキャン範囲で前記更なるX線スキャンを実行する、
請求項4に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記スキャン制御部の制御の下で前記X線スキャンを実行する撮像装置をさらに備え、
前記調整部は、前記医用器具の方向に対して所定の範囲でずらした角度を、前記撮像装置のチルト角として決定し、
前記スキャン制御部は、前記決定されたチルト角で前記撮像装置を傾け、前記調整されたスキャン範囲で前記更なるX線スキャンを実行する、
請求項4に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記調整部は、前記位置姿勢情報に基づいて、前記スキャン範囲において前記被検体が載置された天板の長軸方向に沿った中心位置に前記医用器具が位置するように、前記天板の位置を決定し、
前記スキャン制御部は、前記決定された位置に前記天板を移動させて、前記調整されたスキャン範囲で前記更なるX線スキャンを実行する、
請求項4に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
前記調整部は、前記被検体への連続撮影中において、前記医用器具の先端と前記先端の到達の目標位置との差異が所定の閾値を下回った場合、前記位置姿勢情報に基づいて、前記被検体への更なるX線スキャンに関するスキャン条件と前記スキャン範囲とのうち少なくとも一つを調整し、
前記スキャン制御部は、前記調整されたスキャン範囲と前記調整されたスキャン条件とを用いて、前記更なるX線スキャンを実行する、
請求項4、6乃至8のいずれか一項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
前記調整部は、前記被検体への連続撮影中において、前記位置姿勢情報に基づいて、前記被検体への更なるX線スキャンに関するスキャン条件と前記スキャン範囲とのうち少なくとも一つを逐次調整し、
前記スキャン制御部は、前記調整されたスキャン範囲と前記調整されたスキャン条件とを用いて、前記更なるX線スキャンを実行する、
請求項4、6乃至8のいずれか一項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
前記調整部は、前記位置姿勢情報に基づいて、前記被検体の内部における前記医用器具が撮影できるように、前記スキャン範囲を調整する、
請求項4、5および8のいずれか一項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項12】
前記位置姿勢情報に基づいて、前記被検体への更なるX線スキャンに関するスキャン条件を調整する調整部と、
前記調整されたスキャン条件で、前記被検体に対して前記更なるX線スキャンを実行するスキャン制御部と、
を備える請求項4、5および8のいずれか一項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項13】
前記位置姿勢情報に基づいて、前記被検体への更なるX線スキャンにより再構成されるボリュームデータの再構成条件を調整する調整部と、
前記更なるX線スキャンにより収集されたデータと前記調整された再構成条件とに基づいて、前記更なるX線スキャンに対応するボリュームデータを再構成する再構成処理部と、
をさらに備える請求項4、5および8のいずれか一項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項14】
前記位置姿勢情報に基づいて、前記医用器具の長軸方向と直交する管球角度から少なくとも一つのビューで、透視投影を実行するスキャン制御部をさらに備える、
請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項15】
前記位置姿勢情報に基づいて、前記医用器具において天板と反対側の端部側に対向する回転フレーム上の位置から、前記医用器具の長軸方向に沿って前記端部側に向けて少なくとも一つの透視投影を実行するスキャン制御部をさらに備える、
請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項16】
前記位置姿勢情報に基づいて、前記医用器具において天板と反対側の端部側に対向する回転フレーム上の位置を中心として前記回転フレーム上の立体視用の2つの位置から、少なくとも一つの透視投影を実行するスキャン制御部をさらに備える、
請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項17】
前記位置姿勢情報に基づいて、前記透視投影に関する撮影条件を調整する調整部をさらに備え、
前記スキャン制御部は、前記調整された撮影条件で前記透視投影を実行する、
を備える請求項14乃至16のいずれか一項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項18】
前記画像処理部は、前記位置姿勢情報と前記ボリュームデータとに基づいて、透過像および/またはレンダリング画像を生成し、
前記表示部は、生成された前記透過像および/または前記レンダリング画像を表示する、
請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項19】
前記被検体への連続撮影中において、前記医用器具の先端と前記先端の到達の目標位置との差異が所定の閾値を下回った場合、前記位置姿勢情報に基づいて、透視投影に関する撮影条件と透視投影に関する撮影位置とのうち少なくとも一つを調整する調整部をさらに備え、
前記スキャン制御部は、前記調整された撮影条件と前記調整された撮影位置とを用いて、前記透視投影を実行する、
請求項14乃至16のいずれか一項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項20】
前記被検体への連続撮影中において、前記位置姿勢情報に基づいて、透視投影に関する撮影条件と透視投影に関する撮影位置とのうち少なくとも一つを逐次調整する調整部をさらに備え、
し、
前記スキャン制御部は、前記調整された撮影条件と前記調整された撮影位置とを用いて、前記透視投影を実行する、
請求項14乃至16のいずれか一項に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項21】
被検体に対する検査または治療に用いられる医用器具の位置および姿勢をセンシングし、
前記位置と前記姿勢とを含む位置姿勢情報を取得し、
前記被検体に対するX線スキャンに基づいて得られるボリュームデータと前記位置姿勢情報とに基づいて、前記医用器具を示す領域を含む少なくとも一つの断面に対応する断面画像を生成し、
前記断面画像を表示すること、
を備える制御方法。
【請求項22】
コンピュータに、
被検体に対する検査または治療に用いられる医用器具の位置および姿勢をセンシングし、
前記位置と前記姿勢とを含む位置姿勢情報を取得し、
前記被検体に対するX線スキャンに基づいて得られるボリュームデータと前記位置姿勢情報とに基づいて、前記医用器具を示す領域を含む少なくとも一つの断面に対応する断面画像を生成し、
前記断面画像を表示すること、
を実現させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、X線コンピュータ断層撮影装置、制御方法、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT(Computed Tomography)装置と呼ぶ)を用いた透視(CT透視(CTF:computed tomography fluoroscopy)ともいう)に関する技術、およびCT透視において用いられるニードルの位置を検出する技術がある。CT透視においてニードルなどのデバイスの位置をユーザが把握するために、従来、ユーザは、複数のアキシャル画像を並べて当該複数のアキシャル画像におけるニードルの位置を観察していた。このため、事前に得られたX線CT装置による画像または磁気共鳴イメージング装置による画像に対して、ニードルなどのデバイスに設けたセンサから位置・姿勢の情報を得て、ニードルを含む断面を表示する技術が提案されている。
【0003】
しかしながら、X線CT装置による撮影スライスや表示と、スキャン範囲などが連動せずユーザが手動で設定する必要があるという問題がある。また、複数のアキシャル画像を参照して、術者による操作によりニードルの位置が変更された後において、スキャン範囲(位置、チルト、幅など)が最適とは限らない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5835976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、ニードルなどの医用器具の位置の変更に合わせて、医用器具の位置の把握に適切な断面画像を撮影または表示することにある。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、取得部と、画像処理部と、表示部と、を有する。取得部は、被検体に対する検査または治療に用いられる医用器具の位置と前記医用器具の姿勢とを含む位置姿勢情報を取得する。画像処理部は、前記被検体に対するX線スキャンに基づいて得られるボリュームデータと前記位置姿勢情報とに基づいて、前記医用器具を示す領域を含む少なくとも一つの断面に対応する断面画像を生成する。表示部は、前記断面画像を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図。
図2図2は、実施形態に係る医用器具とX線CT装置との構成及び機能の一例を示す図。
図3図3は、実施形態に係る医用器具の外観の一例を示す図。
図4図4は、実施形態に係り、医用器具の位置及び姿勢の特定方法を説明するための斜視図。
図5図5は、実施形態に係り、制御処理の手順の一例を示すフローチャートを示す図。
図6図6は、実施形態に係り、計画用画像における穿刺計画の一例を示す図。
図7図7は、実施形態に係り、ディスプレイに表示される3つの断面画像とスキャン範囲との一例を示す図。
図8図8は、実施形態に係り、ニードルの移動前後におけるニードルの位置関係の一例を示す図。
図9図9は、実施形態に係り、スキャン範囲の調整の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、X線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT(Computed Tomography)装置と呼ぶ)、制御方法、および制御プログラムの実施形態について詳細に説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。説明を具体的にするために、実施形態に係るX線CT装置は、積分型のX線CT装置として説明するが、これに限定されず、光子計数型のX線CT装置として実現されてもよい。また、実施形態により実現される後述の制御処理における画像処理の部分は、例えば、医用画像表示処理を実行する医用画像処理サーバ(ワークステーションなど)、PACS(Picture Archiving and Communication System)サーバ、読影端末等により実現されてもよい。
【0009】
実施形態に係るX線CTシステムは、医用器具と、当該医用器具とを通信可能なように接続されるX線CT装置とを備える。以下、特に言及しない限り、実施形態に係るX線CTシステムは、医用器具とともに使用されるX線CT装置である場合を例にとって説明する。このとき、X線CT装置は、医用器具と撮像装置とコンソール装置と寝台装置とを有する。なお、X線CT装置によるデータ収集方式には、X線源とX線検出器とが一体として被検体の周囲を回転する回転/回転(R-R:Rotate/Rotate)方式や、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(S-R:Stationary/Rotate)方式等の様々な方式がある。いずれの方式でも本実施形態に適用可能である。以下、実施形態に係るX線CT装置では、第3世代の回転/回転方式を採用する場合を例にとって説明する。
【0010】
撮像装置は、X線管と、X線検出器と、X線管及びX線検出器を対向配置して回転する回転フレームと、回転フレームを保持する固定フレームとを備える架台装置であり、X線の検出データを取得する。コンソール装置は、撮像装置の動作を制御するとともに、撮像装置によって取得されたデータに基づいて画像データを生成する。
【0011】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るX線CT装置40の全体構成を示す図である。図2は、実施形態に係る医用器具10とX線CT装置40との構成及び機能の一例を示す図である。図1に示すように、X線CT装置40は、医用器具10と、撮像装置50と、寝台装置60と、コンソール装置(例えば、画像処理装置)70とを備える。撮像装置50と、寝台装置60とは、検査室に設置される。図1では、X線CT装置40の構成には、医用器具10が含まれているため、X線CT装置40は、X線CTシステムと称されてもよい。また、図1に示すX線CT装置40の構成には医用器具10が含まれていなくてもよい。このとき、X線CT装置40は、医用器具10から送信された情報を受信する。
【0012】
撮像装置50は、後述の制御装置55による制御の下で、被検体Pに対するX線スキャンを実行する。撮像装置50は、寝台装置60に載置された撮像対象の被検体Pに関するX線の検出データ(「純生データ」とも呼ばれる)を取得する。コンソール装置70は、複数ビュー分の検出データに対して前処理を施すことで生データを生成し、生データに対して再構成処理を施すことでCT画像データを再構成して表示する。撮像装置50における構成要素については、後ほど説明する。
【0013】
なお、図1において、説明の便宜上、撮像装置50を左側の上下に複数描画しているが、実際の構成としては、撮像装置50は1つである。撮像装置50は、架台、架台装置、架台部、またはガントリと称されてもよい。
【0014】
医用器具10は、バイオプシ(biopsy:生体組織採取検査(生検))に用いられるニードル11とニードルホルダ12とを含むニードル装置、アブレーションに用いるニードルなどである。なお、医用器具10は、上記に限定されず、例えば、ニードルガイド機能をもった超音波プローブであってもよい。医用器具10は、バイオプシに用いるニードル11と、ニードルホルダ12とを備えものとして説明する。また、ニードルホルダ12は、センサ13と、メモリ14と、ネットワークインターフェース15と、処理回路16とを備える。
【0015】
図3は、医用器具10の外観の一例を示す図である。医用器具10のニードルホルダ12は、図3(A)に示すように、センサ13(例えば、3個の面視野のセンサ13a~13c、又は、3個の点視野のセンサ13d~13f)と、メモリ14と、ネットワークインターフェース15と、処理回路16とを備える。または、ニードルホルダ12は、図3(B)に示すように、センサ13と、メモリ14と、ネットワークインターフェース15と、処理回路16とを備える筐体Uを、ニードルホルダ本体Vに、脱着可能なように取り付けた構造である。また、ニードルホルダ12は、図3(C)に示すように、センサ13(例えば、1個の面視野のセンサ13d)と、メモリ14と、ネットワークインターフェース15と、処理回路16とを備える構造をとる場合もある。なお、図3(B)に示すニードルホルダ本体Vに、図3(C)に示す1個の面視野のセンサ13dが設けられていてもよい。
【0016】
ニードル11は、検査又は治療において、被検体(例えば、患者P)の体外から血管又は体腔内や内臓に刺される注射針であり、穿刺針とも呼ばれる。ニードル11は、検査のため被検体Pから組織などを採取したり、体内にたまった体液や膿を排出したり、治療のため薬物を注入したりするためのものである。
【0017】
ニードルホルダ12は、ニードル11を当該ニードル11の長軸方向に進退可能なようにニードル11を保持する。ニードルホルダ12のセンサ13は、ニードルホルダ12に設けられ、医用器具10の周辺の既知の空間情報をセンシングする。ニードルホルダ12を使用する検査室には、固定され変位しない内壁、天井、及び什器等の固定部や、チルト可能な撮像装置50の外部カバー及びボア境界壁等の変位後の位置を特定可能な可動部が存在する。センサ13は、固定部又は可動部に設けられる特徴点、パターン、走査される輝点を、既知の空間情報としてセンシングする。
【0018】
センサ13は、1個以上のカメラ等の面視野のセンサ(つまり、2次元センサ)を備えるか、又は、3個以上のPD(Photodiode)等の点視野のセンサ(つまり、1次元センサ)を備える。前者について、例えば、検査室内を広く捉えるには画角が狭いカメラがセンサ13として使用される場合、センサ13は、複数のカメラ、例えば、3個のカメラ13a~13c(図3(A),(B)に図示)を備える。3個のカメラ13a~13cを備える場合、3個のカメラ13a~13cの視野範囲で3点を検知すればよいので、1個の場合より固定部や位置特定可能な可動部が術者等によって隠れる可能性が低くなるという利点がある。一方で、例えば、検査室内を広く捉えるには画角の広いカメラ(広角レンズ等のレンズを備えたカメラ)がセンサ13として設けられる場合、センサ13は、1個以上のカメラ、例えば、1個のカメラ13d(図3(C)に図示)を備える。画角の広い1個のカメラ13dを用いる場合も、3個のカメラ13a~13c(図3(A),(B)に図示)を用いる場合と同様に基線を長めにとることができるので、測位精度を向上することができるという利点がある。以下、センサ13がカメラを備える場合の例として、3個のカメラ13a~13cを備える場合について説明するが、3個の場合に限定されるものではない。
【0019】
処理回路16は、特定機能161により、3個のカメラ13a~13cによって取得された光学画像に含まれる既知の空間座標(3個以上の特徴点の座標)に基づいて、医用器具10の位置及び姿勢を特定する。医用器具10の位置及び姿勢の特定については、図4を用いて後述する。なお、医用器具10の位置及び姿勢の特定は、上記に限定されず、3個のカメラ13a~13cによって取得された光学画像に含まれる既知の空間座標(パターンの3個以上の変化点の座標)に基づいて、医用器具10の位置及び姿勢を特定してもよい。
【0020】
また、センサ13は、画角が極小の3個のカメラ13a~13cを備えてもよい。このとき、空間座標は、既知の多数の点内で多数の図形(星形、四角形、丸形等を形作る輝点群)を形成される。3個のカメラ13a~13cの各カメラが、多数の図形の中から所定の図形を検知することで、医用器具10の位置及び姿勢を特定してもよい。例えば、カメラ13aが星形の図形を検知し、カメラ13bが四角形の図形を検知し、カメラ13aが丸形の図形を検知すると、検知した図形の種類に応じて、検知した図形の位置をそれぞれ特定することができる。それにより、カメラ13a~31cの視線方向をそれぞれ特定することができるため、医用器具10の位置及び姿勢を特定することができる。なお、極小の画角とは、1個の図形を捉えることができる程度の画角を意味する。
【0021】
他方、センサ13としてPDが使用される場合、検査室内を広く捉えるために、センサ13は、3個以上のPD、例えば、3個のPD13e~13g(図3(A),(B)に図示)を備えてもよい。このとき、空間座標が既知の多数の点内で1つの輝点が走査される。そして、3個のPD13e~13gの各PDが、走査される輝点の中から所定の輝点を検知することで、特定機能161は、医用器具10の位置及び姿勢を特定する。例えば、PD13e~13gが輝点を検知すると、検知した時刻に応じて、検知した輝点の位置をそれぞれ特定することができる。これにより、PD13e~31gの視線方向をそれぞれ特定することができるため、医用器具10の位置及び姿勢を特定することができる。
【0022】
ニードルホルダ12におけるメモリ14は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって構成される。メモリ14は、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬型メディアによって構成されてもよい。メモリ14は、処理回路16において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータを記憶する。
【0023】
ニードルホルダ12におけるネットワークインターフェース15は、パラレル接続仕様やシリアル接続仕様に合わせたコネクタによって構成される。ネットワークインターフェース15は、ネットワーク上の外部装置(例えば、X線CT装置40)と情報の送受信を、無線又は有線で行なう。
【0024】
ニードルホルダ12における処理回路16は、医用器具10の全体の動作を制御する。処理回路16は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、又はGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサの他、ASIC、及び、プログラマブル論理デバイス等を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field ProgrammableGate Array)等が挙げられる。
【0025】
また、処理回路16は、単一の回路によって構成されてもよいし、複数の独立した処理回路要素の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、メモリは処理回路要素ごとに個別に設けられてもよいし、単一のメモリが複数の処理回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
【0026】
処理回路16は、メモリ14に記憶された、又は、処理回路16内に直接組み込まれたコンピュータプログラムを読み出して実行することで、特定機能161と、ニードル制御機能163とを実現する。なお、特定機能161と、ニードル制御機能163との全部又は一部は、コンピュータプログラムの実行により実現される場合に限定されるものではなく、医用器具10にASIC等の回路として備えられる場合であってもよい。また、特定機能161により実現される処理は、X線CT装置40における処理回路75に搭載されてもよい。このとき、センサからの出力は、ネットワークインターフェース115を介して、X線CT装置40に送信される。
【0027】
処理回路16は、特定機能161により、センサ13からのセンシング結果を取得する。特定機能161は、取得されたセンシング結果に基づいて、当該医用器具10の位置及び姿勢を特定する。例えば、特定機能161は、センサ13としての面視野のカメラ13a~13c、又は、カメラ13dが検知する特徴点等の座標に基づいて、当該医用器具10の位置及び姿勢を特定する。なお、特定機能161は、センサ13としての点視野PD13e~13gが検知する輝点の座標に基づいて、当該医用器具10の位置及び姿勢を特定してもよい。これらにより、特定機能161は、当該医用器具10の位置及び姿勢に関する位置姿勢情報(位置姿勢データと称されてもよい)を生成する。特定機能161は、生成された位置姿勢情報を、ネットワークインターフェース15を介して、X線CT装置40に送信する。
【0028】
処理回路16は、ニードル制御機能163により、ニードル11のニードルホルダ12に対する進退動を制御する。なお、ニードル11の種類によってはニードルホルダ12に対する進退動を行わない場合がある。このとき、ニードル制御機能163は不要である。
【0029】
以下、図4を用いて、特定機能161による医用器具10の位置及び姿勢の特定の一例について説明する。図4は、医用器具10の位置及び姿勢の特定方法を説明するための斜視図である。
【0030】
図4に示すように、検査室内に、撮像装置50と、被検体Pが載置された寝台装置60が配置される。ユーザ(例えば術者)は、自信が把持する医用器具10の位置及び姿勢を調整しながら、被検体Pに対してニードル11を穿刺する。このとき、カメラ13a~13c(図3(A)に図示)が、検査室内の特徴点を認識する。これにより、特定機能161は、センシング結果として、カメラ13a~13cから、既知の空間情報をもつ特徴点を含む光学画像を取得する。特定機能161は、光学画像に含まれる特徴点に基づいて、検査室内における医用器具10の位置及び姿勢を特定する。
【0031】
特徴点は、例えば、既知の空間情報をもつ固定部上の点、及び/又は、既知の空間情報とそれからの変位量を算出可能な可動部上の点である。特定機能161は、可動部上の点の変位量を、可動部の駆動機構のロータリエンコンダの出力(医用画像診断装置から取得)に基づいて求めることができる。また、固定部は、内壁(又は天井)の角C1や、什器Bの角C2等である。可動部は、チルト可能な撮像装置50の外部カバー上の点C3及びボア(空洞)境界壁等である。なお、特徴点の座標は、予め取得(校正)してメモリ14に記憶させておけばよい。
【0032】
医用器具10の位置及び姿勢を特定は、例えば、カメラ13a~13cにより取得された光学画像のパターンサーチにより行われる。カメラ13a~13cで取得された各光学画像には、内壁又は天井に設けられる3個以上、例えば3個の特徴点に基づく図形を含む。パターンサーチにおいて、特定機能161は、各光学画像を、テンプレート画像のサーチ領域内を一定間隔(ステップ幅)でスライド及び回転させ、相関値が最大の位置及び角度を探すことで、カメラ13a~13cそれぞれの空間位置、つまり、医用器具10の空間位置を特定するとともに、カメラ13a~13cそれぞれの空間位置に基づき医用器具10の姿勢を特定する。又は、特定機能161は、3個の特徴点を含む多数の光学画像と、各光学画像に対応するカメラ13a~13cの空間位置とを学習させた学習済みモデルに新規の光学画像を入力することで、新規の光学画像に対応するカメラ13a~13cの空間位置、つまり、医用器具10の空間位置を特定してもよい。
【0033】
なお、特定機能161は、カメラ13a~13cの視野範囲にどのような領域を含むか、という情報を用いて3点の特徴点までの距離を測定することで、医用器具10の位置及び姿勢を特定してもよい。また、前述したように画角が広いカメラであれば、センサ13は1つのカメラ13d(図3(C)に図示)であってもよい。広角レンズを備えたカメラ13dを用いると視野が広がるため、3個のカメラ13a~13cを用いる場合と同様に基線長を長くできるというメリットがある。この場合、医用器具10の多様な位置及び姿勢の場合における多様なテンプレート画像を準備することで、特定機能161は、各テンプレート画像を用いたパターンサーチによりカメラ13d、つまり、医用器具10の位置を特定するとともに、医用器具10の姿勢を特定する。すなわち、特定機能161は、ニードル11の位置および姿勢を検出する。
【0034】
以上、医用器具10の構成の一例について説明した。なお、医用器具10の位置および姿勢を特定する手法は、医用器具10にセンサ13を搭載する上記例に限定されない。例えば、医用器具10におけるセンサ13の位置に、センサ13の代わりに光学マーカーが搭載されてもよい。このとき、センサ13は、例えば光学カメラとして、検査室における固定部(例えば天井)および/可動部に設けられ、ニードルホルダ12における各種構成要素は、検査室またはX線CT装置40に搭載される。このような場合、センサ13は、ニードルホルダ12に搭載された光学マーカーをセンシング(認識)する。これにより、特定機能161は、ニードル11の位置および姿勢を特定(把握)する。すなわち、医用器具10はニードルと光学マーカーとを有し、天井カメラなどによりニードル11の位置および姿勢が捕捉される。なお、ニードル11の位置および姿勢の検出は、上記に限定されず他の方法で実現されたてもよい。
【0035】
撮像装置50は、X線源(例えば、X線管)51と、X線検出器52と、回転フレーム(回転部)53と、X線高電圧装置54と、制御装置55と、ウェッジ56と、コリメータ57と、データ収集回路(DAS:Data Acquisition System)58とを備える。
【0036】
X線管51は、回転フレーム53に備えられる。X線管51は、X線高電圧装置54からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。例えば、X線管51には、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。なお、実施形態においては、一管球型のX線CT装置にも、X線管とX線検出器との複数のペアを回転リングに搭載したいわゆる多管球型のX線CT装置にも適用可能である。また、X線を発生させるX線源は、X線管51に限定されるものではない。例えば、X線管51に替えて、電子銃から発生した電子ビームを収束させるフォーカスコイル、電磁偏向させる偏向コイル、患者Pの半周を囲い偏向した電子ビームが衝突することによってX線を発生させるターゲットリングを含む第5世代方式によりX線を発生させてもよい。
【0037】
X線検出器52は、X線管51に対向するように回転フレーム53に備えられる。X線検出器52は、X線管51から照射されたX線を検出し、当該X線量に対応した検出データを電気信号としてDAS58に出力する。X線検出器52は、例えば、X線管51の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。X線検出器52は、例えば、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向、row方向)に複数配列された構造を有する。
【0038】
X線検出器52は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有し、シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。なお、X線検出器52は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であってもよい。
【0039】
回転フレーム53は、X線管51とX線検出器52とを対向支持する。回転フレーム53は、後述する制御装置55による制御の下、X線管51及びX線検出器52を一体として回転させる円環状のフレームである。なお、回転フレーム53は、X線管51及びX線検出器52に加えて、X線高電圧装置54やDAS58を更に備えて支持する場合もある。また、回転フレーム53は、回転部の一例である。
【0040】
このように、X線CT装置40は、X線管51とX線検出器52とを対向させて支持する回転フレーム53を被検体Pの周りに回転させることで、複数ビュー、即ち、被検体Pの360°分の検出データを収集する。なお、CT画像データの再構成方式は、360°分の検出データを用いるフルスキャン再構成方式には限定されない。例えば、X線CT装置40は、半周(180°)+ファン角度分の検出データに基づいてCT画像データを再構成するハーフ再構成方式を採ってもよい。
【0041】
X線高電圧装置54は、回転フレーム53、又は、回転フレーム53を回転可能に支持する非回転部分(例えば図示しない固定フレーム)に備えられる。X線高電圧装置54は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有する。X線高電圧装置54は、後述する制御装置55による制御の下、X線管51に印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置(図示省略)と、後述する制御装置55による制御の下、X線管51が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置(図示省略)を有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、図1において、説明の便宜上、X線高電圧装置54が、X線管51に対してx軸の正方向の位置に配置されているが、X線管51に対してx軸の負方向の位置に配置されてもよい。
【0042】
制御装置55は、処理回路及びメモリと、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。処理回路及びメモリのハードウェア構成については、図2に示す医用器具10の処理回路16及びメモリ14と同等であるので説明を省略する。制御装置55は、コンソール装置70又は撮像装置50に取り付けられた、後述する入力インターフェースからの入力信号を受けて、撮像装置50及び寝台装置60の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置55は、入力信号を受けて回転フレーム53を回転させる制御や、撮像装置50、つまり架台装置をチルトさせる制御や、寝台装置60及び天板63を動作させる制御を行う。
【0043】
撮像装置50をチルトさせる制御は、撮像装置50に取り付けられた入力インターフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置55がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム53を回転させることによって実現される。なお、制御装置55は撮像装置50に設けられてもよいし、コンソール装置70に設けられてもよい。また、制御装置55は、コンソール装置70や撮像装置50に取り付けられた、入力インターフェースから入力された撮像条件に基づいて、X線管51の回転角度や、後述するウェッジ56及びコリメータ57の動作を制御してもよい。制御装置55は、スキャン制御部の一例である。
【0044】
ウェッジ56は、X線管51のX線出射側に配置されるように回転フレーム53に備えられる。ウェッジ56は、制御装置55による制御の下、X線管51から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ56は、X線管51から被検体Pに照射されるX線が予め定められた分布になるように、X線管51から照射されたX線を透過して減衰させるフィルタである。例えば、ウェッジ56(ウェッジフィルタ(Wedge Filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter))は、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
【0045】
コリメータ57は、X線絞り又はスリットとも呼ばれ、X線管51のX線出射側に配置されるように回転フレーム53に備えられる。コリメータ57は、制御装置55による制御の下、ウェッジ56を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組合せによってX線の照射開口を形成する。
【0046】
DAS58は、回転フレーム53に備えられる。DAS58は、制御装置55による制御の下、X線検出器52の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、制御装置55による制御の下、電気信号をデジタル信号に変換するA/D(Analog to Digital)変換器とを有し、増幅及びデジタル変換後の検出データを生成する。DAS58によって生成された、複数ビュー分の検出データは、コンソール装置70に転送される。
【0047】
ここで、DAS58によって生成された検出データは、回転フレーム53に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から光通信によって撮像装置50の固定フレームに設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置70に転送される。なお、回転フレーム53から撮像装置50の固定フレームへの検出データの送信方法は、前述の光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。
【0048】
寝台装置60は、基台61と、寝台駆動装置62と、天板63と、支持フレーム64とを備える。寝台装置60は、スキャン対象の被検体Pを載置し、制御装置55による制御の下、患者Pを移動させる装置である。基台61は、支持フレーム64を鉛直方向(y軸方向)に昇降可能に支持する筐体である。寝台駆動装置62は、基台61を鉛直方向(y軸方向)に移動させるモータ又はアクチュエータである。天板63は、支持フレーム64の上面に設けられ、患者Pを載置可能な形状を有する板である。天板63は、天板63の長軸方向(z軸方向)に移動させるモータ又はアクチュエータである天板駆動装置により、移動可能な機構を有する。
【0049】
なお、天板駆動装置は、天板63に加え、支持フレーム64を天板63の長軸方向(z軸方向)に移動させてもよい。また、天板駆動装置は、寝台装置60の基台61ごと移動させてもよい。本実施形態を立位CTに応用する場合、天板63に相当する患者移動機構を移動する方式であってもよい。また、ヘリカルスキャンや位置決め等のためのスキャノ撮像等、撮像装置50の撮像系と天板63の位置関係の相対的な変更を伴う撮像を実行する場合は、当該位置関係の相対的な変更は天板63の駆動によって行われてもよいし、撮像装置50の固定部の走行によって行われてもよく、またそれらの複合によって行われてもよい。
【0050】
コンソール装置70は、コンピュータとしての構成を備え、メモリ71と、ディスプレイ72と、入力インターフェース73と、ネットワークインターフェース74と、処理回路75とを備える。なお、コンソール装置70は、撮像装置50とは別体として説明するが、撮像装置50にコンソール装置70又はコンソール装置70の各構成要素の一部が含まれてもよい。また、以下の説明では、コンソール装置70が単一のコンソールで全ての機能を実行するものとするが、これらの機能は、複数のコンソールが実行してもよい。
【0051】
メモリ71は、図2に示すメモリ14と同等のハードウェア構成を備える。本実施形態に係る各種プログラムを記憶する。例えば、メモリ41は、処理回路44により実行されるシステム制御機能751、前処理機能752、再構成処理機能753、取得機能754、画像処理機能755、および調整機能756各々の実行に関するプログラムを記憶する。また、メモリ41は、所定の閾値を記憶する。所定の閾値については、後ほど説明する。また、メモリ71に記憶されるOSに、術者等の操作者に対するディスプレイ72への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース73によって行うことができるGUI(Graphic UserInterface)を含めることもできる。メモリ71は、記憶部の一例である。
【0052】
ディスプレイ72は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ72は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等である。また、ディスプレイ72は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置70本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしてもよい。また、ディスプレイ42は、撮像装置50に設けられてもよい。ディスプレイ72は、表示部の一例である。
【0053】
入力インターフェース73は、技師等の操作者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等によって実現される。入力デバイスが術者等の操作者から入力操作を受け付けると、入力回路は当該入力操作に応じた電気信号を生成して処理回路75に出力する。
【0054】
また、入力インターフェース73は、撮像装置50に設けられてもよい。また、入力インターフェース73は、コンソール装置70本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されてもよい。なお、本実施形態において、入力インターフェース73は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース73の例に含まれる。入力インターフェース43は、入力部に相当する。
【0055】
ネットワークインターフェース74は、図2に示すネットワークインターフェース15と同等のハードウェア構成を備え、ネットワーク上の外部装置と情報の送受信を無線又は有線で行なう。なお、ネットワークインターフェース74は、入力部及び出力部の一例である。
【0056】
処理回路75は、例えば、図2に示す処理回路16と同等のハードウェア構成を備える。処理回路75は、入力インターフェース73から出力される入力操作の電気信号に応じて、X線CT装置40の全体の動作を制御する。処理回路75は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、システム制御機能751、前処理機能752、再構成処理機能753、取得機能754、画像処理機能755、および、調整機能756に関する処理を実行する。処理回路75は、処理部に対応する。
【0057】
システム制御機能751、前処理機能752、再構成処理機能753、取得機能754、画像処理機能755、および調整機能756各々を実現する処理回路75は、システム制御部、前処理部、再構成処理部、取得部、画像処理部、調整部に相当する。なお、機能751~756は、単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能751~756を実現するものとしても構わない。
【0058】
処理回路75は、システム制御機能751により、入力インターフェース73を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、処理回路75の各機能を制御する。具体的には、システム制御機能751は、メモリ71に記憶されている制御プログラムを読み出して処理回路75内のメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線CT装置40の各部を制御する。例えば、処理回路75は、入力インターフェース73を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、処理回路75の各機能を制御する。なお、システム制御機能751により実現される処理内容は、制御装置55により実現されてもよい。このとき、制御装置55とシステム制御機能751とをまとめて、スキャン制御部と称されてもよい。
【0059】
処理回路75は、前処理機能752により、DAS58から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施したデータを生成する。一例として、前処理前のデータを投影データ、前処理後のデータを生データと称する。
【0060】
処理回路75は、再構成処理機能753により、前処理機能752にて生成された生データに対して、フィルタ補正逆投影法(FBP法:Filtered Back Projection)または逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。再構成処理機能753は、再構されたCT画像データをメモリ71に格納する。再構成処理機能753により実現される再構成処理は、既知の技術が適用可能であるため、説明は省略する。
【0061】
処理回路44は、取得機能754により、被検体Pに対する検査または治療に用いられる医用器具10の位置と当該医用器具10の姿勢とを含む位置姿勢情報を取得する。位置姿勢情報は、医用器具10の位置と当該医用器具10の姿勢との検知により生成される。例えば、取得機能754は、特定機能161により生成された医用器具10の位置と当該医用器具10の姿勢とを示す位置姿勢情報を、ネットワークインターフェース15、74を介して、医用器具10から取得する。取得機能754は、取得された位置姿勢情報を、メモリ71に記憶させる。
【0062】
処理回路75は、画像処理機能755により、例えば、入力インターフェース73を介したユーザの指示により、再構成X線CT画像データ(ボリュームデータ)に対して各種画像処理を実行する。例えば、当該画像処理は、例えば、ボリュームデータに対する断面変換処理(Multi Planar Reconstruction:MPR)、レンダリング処理など、既知の画像処理が利用可能である。画像処理機能755は、画像処理により生成された医用画像を、メモリ71に記憶させる。
【0063】
例えば、処理回路75は、画像処理機能755により、被検体Pに対するX線スキャンに基づいて得られるボリュームデータと位置姿勢情報とに基づいて、医用器具10を示す領域を含む少なくとも一つの断面に対応する断面画像を生成する。このとき、ディスプレイ72は、生成された断面画像を表示する。
【0064】
当該少なくとも一つの断面は、例えば、2つの直交2断面である。この場合、処理回路75は、画像処理機能755により、ボリュームデータと位置姿勢情報とに基づいて、当該直交2断面に対応する2つの断面画像を生成する。このとき、このとき、ディスプレイ72は、生成された2つの断面画像を表示する。
【0065】
なお、上記少なくとも一つの断面は、被検体Pが載置された天板63の長軸方向に直交する第1の断面と、当該第1の断面に直交する第2の断面と、当該第1の断面と当該第2の断面とに直交する第3の断面とのうちいずれかの断面で含んでもよい。第1の断面と第2の断面と第2の断面とは、互いに直交する3断面に対応する。このとき、画像処理機能755は、ボリュームデータと位置姿勢情報とに基づいて、当該少なくとも一つの断面に対応する断面画像を生成する。次いで、ディスプレイ72は、生成された少なくとも一つの断面画像を表示する。
【0066】
また、画像処理機能755は、位置姿勢情報とボリュームデータとに基づいて、透過像および/またはレンダリング画像を生成してもよい。透過像およびレンダリング画像の生成に関する視線方向は、例えば、医用器具10の長軸方向である。また、透過像およびレンダリング画像の生成に関する視点の位置は、例えば、ニードルホルダ12のニードル11側とは反対側の端部(以下、ホルダ端部と呼ぶ)から、視線方向に沿ってニードル11から離れた位置に設定される。すなわち、画像処理機能755は、医用器具10の長軸方向上であってホルダ端部の後ろ側を視点とし、医用器具10の長軸方向に沿ってニードルホルダ12からニードル11へ向かう方向を視線方向として、透過像および/またはレンダリング画像を生成する。視線方向は、ニードル11の刺入方向に相当する。このため、透過像およびレンダリング画像は、ニードル11の刺入方向に沿って、ニードルホルダ12からニードル11を見た画像に相当する。ディスプレイ72は、生成された透過像および/またはレンダリング画像を表示する。
【0067】
処理回路75は、調整機能756により、位置姿勢情報に基づいて、被検体Pへの更なるX線スキャンに関するスキャン範囲を、医用器具10を含むように調整する。例えば、調整機能756は、位置姿勢情報におけるホルダ端部の位置とニードル11の刺入方向(医用器具10の姿勢)と、予めメモリ71に記憶された医用器具10の全長(以下、器具長と呼ぶ)と、に基づいて、医用器具10が含まれるように、スキャン範囲を調整する。これにより、調整されたスキャン範囲には、医用器具10が含まれることとなる。このとき、制御装置55は、調整されたスキャン範囲で、被検体Pに対して更なるX線スキャンを実行する。
【0068】
なお、調整機能756は、位置姿勢情報に基づいて、スキャン範囲に被検体Pの内部における医用器具10が撮影できるように、スキャン範囲を調整してもよい。例えば、調整機能756は、位置姿勢情報における医用器具10の位置(例えば、ホルダ端部)と医用器具10の姿勢(例えば、水平面に対するニードル11の傾き)と被検体Pの体厚とに基づいて、被検体Pへの医用器具10の刺入方向と刺入位置とを特定する。被検体Pの体厚は、例えば、被検体Pに対する治療計画において、被検体Pに対するX線スキャンにより計測され、メモリ71に予め記憶される。
【0069】
次いで、調整機能756は、器具長と、刺入方向と、刺入位置と、ホルダ端部とに基づいて被検体Pの内部におけるニードル11(以下、体内ニードルと呼ぶ)を特定する。続いて、調整機能756は、体内ニードルが含まれるようにスキャン範囲を調整する。これらにより、調整機能756は、スキャン範囲に被検体Pの体外に突出した医用器具10の一部(例えば、ニードルホルダ12とニードル11の一部)を、スキャン範囲から除外するようにして、スキャン範囲を調整する。
【0070】
これらの場合、制御装置55は、調整されたスキャン範囲で、被検体Pに対して更なるX線スキャンを実行する。具体的には、調整機能756は、スキャン範囲の調整において、被検体Pが載置された天板63の移動量を決定する。このとき、ディスプレイ72は、天板63の移動に関する確認の画面を表示する。なお、天板63の移動に関する確認は、ディスプレイ72への表示に限定されず、音声または他の出力などであってもよい。天板63の移動が許可された場合、制御装置55は、決定された移動量で天板63を移動させ、被検体Pに対して更なるX線スキャンを実行する。
【0071】
また、処理回路75は、調整機能756により、位置姿勢情報に基づいて、撮像装置50のチルト角と医用器具10の長軸方向とを揃えてもよい。例えば、調整機能756は、位置姿勢情報に基づいて、刺入方向と刺入位置とを特定する。次いで。調整機能756は、特定された刺入方向および刺入位置に基づいて、刺入位置における刺入方向を示す角度を、チルト角として設定する。続いて、制御装置55は、設置されたチルト角で撮像装置50を傾け、調整されたスキャン範囲で上記更なるX線スキャンを実行する。
【0072】
また、処理回路75は、調整機能756により、医用器具10の方向に対して所定の範囲でずらした角度を、撮像装置50のチルト角として決定してもよい。所定の範囲は、例えば、ニードル11によるメタルアーチファクト(金属アーチファクト)が低減される角度の範囲である。所定の範囲は、例えば、予め設定されてメモリ71に記憶される。なお、所定の範囲は、X線による医用器具10の投影において、医用器具10におけるニードル11の先端が弁別できる角度の範囲であってもよい。ニードル11の先端は、例えば、位置姿勢情報における医用器具10のホルダ端部の位置と、位置姿勢情報における医用器具10の水平面に対する傾き(医用器具10の姿勢)と、予めメモリ71に記憶された医用器具10の全長とにより、調整機能756により計算される。例えば、調整機能756は、医用器具10の姿勢とニードル11の先端と、隣接する2つのX線検出素子の間隔とに基づいて、上記ずらした角度を計算してもよい。制御装置55は、決定されたチルト角で撮像装置50を傾け、調整されたスキャン範囲で更なるX線スキャンを実行する。
【0073】
上記撮像装置50のチルトでは、被検体PへのX線の照射範囲を低減することができるが、チルト角によってはアーチファクトが発生しやすくなる。このため、調整機能756は、撮像装置50のチルト前後において照射範囲が変わらないなら、なるべくアーチファクトを減らすようなチルト角を設定する。または、調整機能756は、アーチファクトの発生が問題ないチルト角なら、できるだけ照射範囲を減らすようなチルト角を設定してもよい。なお、アーチファクトの発生と照射範囲の低減との両立が困難であれば、調整機能756は、線量低減優先(照射範囲およびチルト角の調整)または画質優先(チルト角の調整なし)の選択(preference)に応じて、スキャン範囲を調整してもよい。線量低減優先または画質優先は、入力インターフェース73を介したユーザの指示により選択されてもよいし、ユーザごとおよび/病院ごとに予め設定されてメモリ71に記憶されてもよい。
【0074】
また、処理回路75は、調整機能756により、位置姿勢情報に基づいて、スキャン範囲において被検体Pが載置された天板63の長軸方向(z軸)に沿った中心位置に医用器具10が位置するように、天板63の位置を決定してもよい。スキャン範囲における中心位置は、例えば、z軸方向に沿ったスキャン範囲の幅の中点に相当する。具体的には、上述のように、調整機能756は、位置姿勢情報と医用器具10の全長とに基づいて、ニードル11の先端の位置を特定する。次いで調整機能756は、z軸方向に沿ったスキャン範囲の幅の中点にニードル11の先端が位置するように、天板63の位置を決定する。続いて、制御装置55は、決定された天板63の位置に天板63を移動させて、調整されたスキャン範囲で更なるX線スキャンを実行する。
【0075】
また、処理回路75は、調整機能756により、位置姿勢情報に基づいて、被検体Pへの更なるX線スキャンに関するスキャン条件を調整する。スキャン条件は、例えば、管電圧、管電流、管電流時間積、解像度などである。管電圧、管電流、管電流時間積は、例えば、ニードル11の先端の到達目標である臓器の性状、ニードル11の材質に応じて予め設定される。スキャン条件の調整は、例えば、臓器が軟部組織である場合、管電圧を下げること(低kV)に対応する。また、スキャン条件の調整は、到達目標にニードル11が近づいた場合、解像度を向上させること(通常解像度から高解像度への移行)に対応する。解像度の向上は、X線出力を上げること(管電圧、管電流、管電流時間積などの増加、またはフィルタの調整など)に対応する。また、スキャン条件の調整は、ニードル11の材質が金属であった場合、スキャン条件の調整は、管電圧および管電流を上げることに対応する。位置姿勢情報とスキャン条件とは、予め対応付けられて、メモリ71に記憶される。
【0076】
例えば、調整機能756は、上述のように算出された医用器具10の先端と当該先端の到達の目標位置との差異(医用器具10の先端と当該目標位置との距離)を計算する。目標位置は、医用器具10を用いた被検体Pに対する治療計画において設定されたニードル11の先端位置であって、例えば、被検体Pの臓器内に設定される。目標位置は、当該治療計画時に、メモリ71に記憶される。スキャン条件と、医用器具10の先端と当該目標位置との距離と、ニードル11の種別(太さ、材質、長さ、本数など)は、例えば対応表(Look Up Table)として関連付けられて、メモリ71に記憶される。
【0077】
具体的には、調整機能756は、位置姿勢情報に基づいて、医用器具10の先端と当該目標位置との距離を計算する。次いで、調整機能756は、計算された距離およびニードル11の種別などを対応表と照合することで、スキャン条件を調整する。例えば、距離が所定の距離以下となれば、調整機能756は、解像度を向上させるようにスキャン条件を調整する。これらにより、位置姿勢情報に基づいて、スキャン条件が調整される。続いて、制御装置55は、調整されたスキャン条件で、被検体Pに対して更なるX線スキャンを実行する。
【0078】
また、処理回路75は、調整機能756により、位置姿勢情報に基づいて、被検体Pへの更なるX線スキャンにより再構成されるボリュームデータの再構成条件を調整する。再構成条件の調整は、例えば、再構成処理における金属アーチファクト(メタルアーチファクト)低減処理を実行の有無である。なお、再構成条件の調整は、金属アーチファクト低減処理の実行の有無に限定されず、再構成関数の調整であってもよい。例えば、ニードル11の材質が金属である場合、調整機能756は、再構成処理において、金属アーチファクト低減処理を実行するように再構成条件を調整する。なお、再構成処理における金属アーチファクト低減処理は、ニードル11の材質が金属であって、かつニードル11の刺入方向と撮像装置50のチルト角が略同一である場合であってもよい。また、所定の長さに亘ってニードル11が照射範囲に位置している場合、調整機能756は、ニードル11の検出を容易にするため、管電圧(kV)を上げるようにスキャン条件を調整する。
【0079】
すなわち、再構成条件の調整は、ニードル11の材質が金属である場合、ニードル11の刺入方向と撮像装置50のチルト角とに応じて、金属アーチファクト(メタルアーチファクト)低減処理の有無を調整してもよい。処理回路75は、再構成処理機能753により、更なるX線スキャンにより収集されたデータと調整された再構成条件とに基づいて、更なるX線スキャンに対応するボリュームデータを再構成する。
【0080】
以上、実施形態に係るX線CT装置40の構成について説明した。以下、医用器具10の動作に応じてX線CT装置40により実行される処理(以下、制御処理と呼ぶ)の手順について、図5を用いて説明する。制御処理は、例えば、医用器具10の動作に応じて、ユーザに適切な画像を表示する処理、およびスキャン条件とスキャン範囲と再構成条件とのうち少なくとも一つを調整する処理とを有する。
【0081】
図5は、制御処理の手順の一例を示すフローチャートを示す図である。以下、説明を具体的にするために、調整対象は、スキャン条件とスキャン範囲と再構成条件とであるものとする。また、説明を具体的にするために、図5では、ニードル11の経路の計画から、ニードル11を用いた検査の終了までの処理の手順を説明している。
【0082】
(制御処理)
(ステップS501)
制御装置55は、システム制御機能751による制御の下で、被検体Pに対するニードル11の経路の計画用スキャンを、被検体Pに対して実行する。処理回路75は、前処理機能752により、計画用スキャンにおいて収集された投影データに対して前処理を施し、生データを生成する。処理回路75は、再構成処理機能753により、生データに対しえ再構成処理を実行してボリュームデータを生成する。処理回路75は、画像処理機能755により、ボリュームデータに基づいて計画用画像を生成する。
【0083】
(ステップS502)
ユーザは、計画用画像を用いて、被検体Pにおけるニードル11の経路を計画する。図6は、計画用画像PPIにおける穿刺計画の一例を示す図である。図6に示すように、計画用画像PPIにおいてニードル11の経路NPが設定される。図6における経路NPの先端が目標位置TPに対応する。
【0084】
(ステップS503)
制御装置55は、システム制御機能751による制御の下で、被検体Pに対するCT透視(CTF:computed tomography fluoroscopy)を開始する。次いで、ニードル11が被検体Pに刺入される。このとき、位置姿勢情報の取得、すなわちニードル11のセンシングが開始される。処理回路75は、取得機能754により、位置姿勢情報を取得する。処理回路75は、再構成処理機能753により、被検体に対するX線スキャンに基づいてボリュームデータを再構成する。
【0085】
(ステップS504)
処理回路75は、画像処理機能755により、被検体に対するX線スキャンに基づいて得られたボリュームデータと位置姿勢情報とに基づいて、医用器具を示す領域を含む少なくとも一つの断面に対応する断面画像を生成する。ディスプレイ72は、当該生成された断面画像を表示する。これらにより、CT透視により生成された断面画像がディスプレイ72に表示される。なお、ディスプレイ72に表示される画像は、断面画像に限定されない。例えば、画像処理機能755は、位置姿勢情報とボリュームデータとに基づいて、ホルダ端部側であって医用器具10の長軸方向に沿った位置から、透過像および/またはレンダリング画像を生成してもよい。このとき、ディスプレイ72は、過像および/またはレンダリング画像を表示する。
【0086】
図7は、ディスプレイ72に表示される3つの断面画像CI1、CI2、CI3とスキャン範囲SRとの一例を示す図である。図7に示すように、スキャン範囲SRに対応するボリュームデータから3つの断面画像CI1、CI2、CI3が生成される。図7に示すように、3つの断面画像CI1、CI2、CI3には、ニードル11が表示される。
【0087】
断面画像CI1は、ニードル11の長軸方向を含む面のうち、xy面に直交するオブリーク断面に対応する。断面画像CI2は、ニードル11の長軸方向を含む面のうち、yz面に直交するオブリーク断面に対応する。断面画像CI3は、ニードル11の後方から見た断面画像である。すなわち、生成される断面画像は、xy面、yz面、zx面のいずれかに直交するオブリーク断面に対応する。また、断面画像CI3は、医用器具10の長軸方向上であってホルダ端部の後ろ側を視点とし、医用器具10の長軸方向に沿ってニードルホルダ12からニードル11へ向かう方向を視線方向として、当該視線方向に直交する断面に対応する。なお、断面画像CI3の代わりに、上記視点と上記視線方向とを用いた透過像および/またはレンダリング画像が生成、表示されてもよい。
【0088】
(ステップS505)
目標位置TPにニードル11があれば(ステップS505のYes)、ステップS506の処理が実行される。目標位置TPにニードル11が無ければ(ステップS505のNo)、ステップS507の処理が実行される。
【0089】
(ステップS506)
ユーザは、ニードル11を用いて被検体Pに対する検査(アブレーション、バイオプシ(生検))などを実行する。本ステップにより制御処理は終了する。
【0090】
(ステップS507)
ユーザは、ニードルホルダ12を介してニードル11の移動を実行する。図8は、ニードル11の移動前後におけるニードル11の位置関係の一例を示す図である。図8における実線SIは、移動前のニードル11の位置を3次元的に示していている。図8における破線DIは、移動後のニードル11の位置を3次元的に示していている。図8に示すように、移動前後において、3次元的なニードル11の位置は異なるものとなる。
【0091】
(ステップS508)
処理回路75は、調整機能756により、位置姿勢情報に基づいて、スキャン範囲とスキャン条件と再構成条件とのうち少なくとも一つを調整する。図9は、スキャン範囲SRの調整の一例を示す図である。図9におけるTCは、ニードル11の先端がスキャン範囲SRの中央に位置するように、スキャン範囲SRを調整した一例を示している。図9におけるPNは、ニードル11と同じ角度にスキャン範囲をチルトさせるように、スキャン範囲SRを調整した一例を示している。図9におけるSSRは、ニードル11の角度よりずらした所定の範囲の角度でずらすように、スキャン範囲SRを調整した一例を示している。
【0092】
なお、スキャン範囲の調整は上記に限定されず、例えば、スキャン範囲SRに被検体Pの内部における医用器具10が撮影できるように、スキャン範囲SRを調整してもよい。また、スキャン範囲の調整により天板63を移動させる必要が生じた場合、調整機能756は、スキャン範囲の調整において、被検体Pが載置された天板63の移動量を決定する。このとき、ディスプレイ72は、天板63の移動に関する確認の画面を表示する。天板63の移動が許可された場合、制御装置55は、決定された移動量で天板63を移動させる。次いで、ステップS509の処理が実行される。
【0093】
また、調整機能756は、上述のように、スキャン範囲SRの調整のほかにスキャン条件および/または再構成受件を調整してもよい。例えば、調整機能756は、位置姿勢情報に基づいて、被検体Pへの更なるX線スキャンに関するスキャン条件(管電圧、管電流、管電流時間積、解像度など)を調整する。また、調整機能756は、位置姿勢情報に基づいて、再構成条件(金属アーチファクト(メタルアーチファクト)低減処理を実行の有無、再構成関数など)を調整する。
【0094】
(ステップS509)
制御装置55は、調整されたスキャン条件および/またはスキャン範囲で、被検体Pに対して更なるX線スキャン(CT透視)を実行する。
【0095】
(ステップS510)
処理回路75は、再構成処理機能753により、更なるX線スキャンにより収集されたデータと調整された再構成条件とに基づいて、更なるX線スキャンに対応するボリュームデータを再構成する。本ステップに続いて、ステップS504の処理が繰り返される。以上の手順により、制御処理は完了する。
【0096】
以上に述べた実施形態に係るX線CT装置40は、被検体Pに対する検査または治療に用いられる医用器具10の位置と当該医用器具10の姿勢とを含む位置姿勢情報を取得し、被検体Pに対するX線スキャンに基づいて得られるボリュームデータと位置姿勢情報とに基づいて、医用器具10を示す領域を含む少なくとも一つの断面に対応する断面画像を生成し、生成された断面画像を表示する。例えば、当該少なくとも一つの断面は、2つの直交2断面であってもよく、実施形態に係るX線CT装置40は、ボリュームデータと位置姿勢情報とに基づいて、直交2断面に対応する2つの断面画像を生成し、生成された2つの断面画像を表示する。
【0097】
また、上記少なくとも一つの断面は、被検体Pが載置された天板63の長軸方向に直交する第1の断面と、当該第1の断面に直交する第2の断面と、当該第1の断面と前記第2の断面とに直交する第3の断面のいずれかに直交する断面を含み、実施形態に係るX線CT装置40は、ボリュームデータと位置姿勢情報とに基づいて、当該少なくとも一つの面に対応する断面画像を生成し、生成された少なくとも一つの断面画像を表示する。
【0098】
これらのことから、実施形態に係るX線CT装置40によれば、ユーザによる断面の設定などの煩雑な操作なしに、ニードル11の移動に合わせて、医用器具10の位置の把握に適切な断面画像を表示することができる。また、実施形態に係るX線CT装置40は、生成された画像においてニードル11をソフトにより検索することなく、ニードル11の表示に適した画像を生成および表示できるため、当該ソフトによる検索時間の削減により検査のスループットを向上させることができる。
【0099】
また、実施形態に係るX線CT装置40は、位置姿勢情報に基づいて、被検体Pへの更なるX線スキャンに関するスキャン範囲を、医用器具10を含むように調整する。例えば、実施形態に係るX線CT装置40は、位置姿勢情報に基づいて、撮像装置50のチルト角と医用器具10の長軸方向とを揃え、撮像装置50を当該チルト角で傾け、調整されたスキャン範囲SRで更なるX線スキャンを実行する。これらにより、実施形態に係るX線CT装置40によれば、更なるX線スキャンの前にスキャン範囲SRを狭めることができるため、被検体Pへの被ばくを低減することができる。
【0100】
また、実施形態に係るX線CT装置40は、医用器具10の方向に対して所定の範囲でずらした角度を、撮像装置50のチルト角として決定し、決定されたチルト角で撮像装置50を傾け、調整されたスキャン範囲SRで更なるX線スキャンを実行する。これにより、実施形態に係るX線CT装置40によれば、更なるX線スキャンの前にスキャン範囲SRを狭めつつ、金属アーチファクトの影響を受けにくい画像、例えばニードル11に起因する金属アーチファクト低減した画像を生成して表示することができる。
【0101】
また、実施形態に係るX線CT装置40は、位置姿勢情報に基づいて、スキャン範囲において被検体Pが載置された天板63の長軸方向に沿った中心位置に医用器具10が位置するように、天板63の位置を決定し、決定された位置に天板63を移動させて、調整されたスキャン範囲SRで更なるX線スキャンを実行する。これにより、実施形態に係るX線CT装置40によれば、ユーザは、ニードル11の先端を中心として、当該先端の前後のスライスに関して同程度の間隔でニードル11を確認することができる。
【0102】
また、実施形態に係るX線CT装置40は、前記位置姿勢情報に基づいて、被検体Pの内部における医用器具10が撮影できるように、スキャン範囲SRを調整する。これにより、実施形態に係るX線CT装置40によれば、被検体Pの体外にあるニードル11をスキャン範囲に含めることなくスキャン範囲SRをさらに狭めることができ、被検体Pへの被ばくをさらに低減することができる。
【0103】
また、例えば、実施形態に係るX線CT装置40は、スキャン範囲SRの調整において、位置姿勢情報に基づいて、被検体Pが載置された天板63の移動量を決定し、天板63の移動に関する確認の画面をディスプレイ72に表示し、天板63の移動が許可された場合、決定された移動量で天板63を移動させ調整されたスキャン範囲SRで、被検体Pに対して更なるX線スキャンを実行する。これにより、実施形態に係るX線CT装置40によれば、ユーザに天板63の移動を事前に確認することができ、検査時における安全性を向上させることができる。
【0104】
また、実施形態に係るX線CT装置40は、被検体Pへの更なるX線スキャンに関するスキャン条件を調整し、調整されたスキャン条件で、被検体Pに対して更なるX線スキャンを実行する。これにより、実施形態に係るX線CT装置40によれば、更なるX線スキャンの開始前において、医用器具10の先端と当該目標位置との距離、目標位置における臓器の性状、ニードル11の材質、被検体P内におけるニードル11の長さなどに応じて、最適なスキャン条件を設定することができる。このため、実施形態に係るX線CT装置40によれば、被ばく低減と画質向上とを両立して、更なるX線スキャンを実行することができる。
【0105】
また、実施形態に係るX線CT装置40は、位置姿勢情報に基づいて、被検体Pへの更なるX線スキャンにより再構成されるボリュームデータの再構成条件を調整し、更なるX線スキャンにより収集されたデータと前記調整された再構成条件とに基づいて、更なるX線スキャンに対応するボリュームデータを再構成する。これにより、実施形態に係るX線CT装置40によれば、比較的重い処理である金属アーチファクト低減処理のON/OFFを自動的に設定することができ、操作性を向上させることができる。
【0106】
以上のことから、本実施形態に係るX線CT装置40によれば、ニードル11の位置およびニードル11の姿勢に応じて、ニードル11などの必要な範囲をスキャン範囲に含めて、スキャン範囲を適切に調整(スキャン範囲の位置、チルト、幅など)することができるため、被検体Pへの被ばくを低減しつつ、かつアーチファクトが少ない最適な画像をユーザに提供することができる。これにより、本実施形態に係るX線CT装置40によれば、ユーザは、快適に穿刺などの手技を行うことができる。このため、本実施形態に係るX線CT装置40によれば、被検体Pに関する検査のスループットを向上、すなわち被検体Pの検査効率を向上させることができる。
【0107】
(第1応用例)
本応用例は、被検体Pへの連続撮影中において、医用器具10の先端と当該先端の到達の目標位置との距離が所定の閾値を下回った場合、位置姿勢情報に基づいてスキャン条件と前記スキャン範囲とのうち少なくとも一つを調整することにある。当該閾値は、予め設定されてメモリ71に記憶される。なお、当該閾値は、ユーザにより入力インターフェース73を介して適宜調整可能である。連続撮影とは、例えば、被検体Pに対するCT透視(CTF)である。
【0108】
処理回路75は、調整機能756により、被検体Pへの連続撮影中において、医用器具10の先端と当該先端の到達の目標位置との差異が所定の閾値を下回った場合、位置姿勢情報に基づいて被検体Pへの更なるX線スキャンに関するスキャン条件と前記スキャン範囲とのうち少なくとも一つを調整する。なお、調整機能756は、当該差異が所定の閾値を下回った場合、位置姿勢情報に基づいて再構成条件をさらに調整してもよい。これらの調整の内容は実施形態と同様なため、説明は省略する。制御装置55は、調整されたスキャン範囲と調整されたスキャン条件とを用いて、更なるX線スキャンを実行する。
【0109】
以上に述べた実施形態の第1応用例に係るX線CT装置40によれば、医用器具10の先端と当該目標位置とが所定の閾値を下回って近づいた場合、スキャン条件とスキャン範囲と再構成条件とのうち少なくとも一つを、被ばく低減、画質、ニードル11の位置および姿勢に応じて最適なものに調整することができる。これにより、実施形態の第1応用例に係るX線CT装置40によれば、医用器具10の先端と当該目標位置に近づくと各種調整に関する制御が実行されるため、ユーザによる操作性を向上させることができる。他の効果は実施形態と同様なこのため、説明は省略する。
【0110】
(第2応用例)
本応用例は、CT透視による被検体Pへの連続撮影中において、位置姿勢情報に基づいて、被検体Pへの更なるX線スキャンに関するスキャン条件と前記スキャン範囲とのうち少なくとも一つを逐次調整することにある。すなわち、本応用例では、連続的な動画撮影(CTF)において、ニードル11の位置および姿勢に追従して、1フレームごとに上記調整が実行される。
【0111】
処理回路75は、調整機能756により、被検体Pへの連続撮影中において、位置姿勢情報に基づいて被検体Pへの更なるX線スキャンに関するスキャン条件とスキャン範囲とのうち少なくとも一つを逐次調整する。なお、調整機能756は、位置姿勢情報に基づいて再構成条件をさらに逐次調整してもよい。これらの調整の内容は実施形態と同様なため、説明は省略する。制御装置55は、調整されたスキャン範囲と調整されたスキャン条件とを用いて、更なるX線スキャンを実行する。
【0112】
以上に述べた実施形態の第2応用例に係るX線CT装置40によれば、スキャン条件とスキャン範囲と再構成条件とのうち少なくとも一つを、被ばく低減、画質、ニードル11の位置および姿勢に応じて最適なものに逐次調整することができる。これにより、実施形態の第2応用例に係るX線CT装置40によれば、被検体Pに対するX線スキャンごとに上記条件を逐次調整できるため、X線スキャンごとに最適な条件でCT透視を実行することができる。他の効果は実施形態と同様なこのため、説明は省略する。
【0113】
(第3応用例)
本応用例は、X線検出器52が面検出器である場合、1ビューがX線撮影画像に相当することを利用するものである。具体的には、本応用例は、CT透視(連続的な動画撮影)の実行中において、透視投影(X線撮影)を実行する。具体的には、制御装置55は、位置姿勢情報に基づいて、医用器具10の長軸方向と直交する管球角度から少なくとも一つのビューで、透視投影を実行する。医用器具10の長軸方向と直交する管球角度は、例えば、非チルト時での鉛直方向を基準として、医用器具10の長軸方向に直交する方向における管球(X線管51の焦点)の位置を示す角度である。
【0114】
処理回路75は、調整機能756により、位置姿勢情報に基づいて、上述した刺入方向を算出する。次いで、調整機能756は、算出された刺入方向を用いて、管球角度を決定する。続いて、制御装置55は、決定された管球角度から少なくとも一つのビューで、被検体Pに対してX線撮影を実行する。処理回路75は、画像処理機能755により、前処理後の生データに基づいて、X線撮影画像を生成する。ディスプレイ72は、生成されたX線撮影画像を表示する。
【0115】
以上に述べた実施形態の第3応用例に係るX線CT装置40によれば、ニードル11の刺入方向とは直交する方向から被検体Pに対してX線撮影を実行することができる。このため、本応用例に係るX線CT装置40によれば、CT透視の実行中において少なくとも一つのビューに対応するX線撮影画像を、ニードル11の認識に適した画像としてユーザに提供(表示)することができる。これにより、本応用例に係るX線CT装置40によれば、ユーザは目標位置とニードル11との位置関係を容易に把握することができるため、被検体Pに関する検査のスループットを向上、すなわち被検体Pの検査効率を向上させることができる。
【0116】
(第4応用例)
本応用例は、第3応用例と同様に、1ビューがX線撮影画像に相当することを利用するものである。具体的には、本応用例は、CT透視(連続的な動画撮影)の実行中において、透視投影(X線撮影)を実行する。具体的には、制御装置55は、位置姿勢情報に基づいて、医用器具10において天板63と反対側の端部(ホルダ端部)側に対向する回転フレーム53上の位置から、医用器具10の長軸方向に沿ってホルダ端部に向けて少なくとも一つの透視投影を実行する。
【0117】
処理回路75は、調整機能756により、位置姿勢情報に基づいて、ホルダ端部の位置と医用器具10の長軸方向とを特定する。調整機能756は、ホルダ端部の位置に対向する回転フレーム53上の位置を特定する。なお、医用器具10の長軸方向(刺入方向)が鉛直方向から傾いている場合、調整機能756は、撮像装置50のチルトを加味して、回転フレーム53上の位置を特定する。次いで、制御装置55は、特定された回転フレーム53上の位置から、医用器具10の長軸方向に沿ってホルダ端部に向けて少なくとも一つのX線撮影を実行する。処理回路75は、画像処理機能755により、前処理後の生データに基づいて、X線撮影画像を生成する。ディスプレイ72は、生成されたX線撮影画像を表示する。
【0118】
以上に述べた実施形態の第4応用例に係るX線CT装置40によれば、ホルダ端部に向けて刺入方向に沿って被検体Pに対してX線撮影を実行することができる。このため、本応用例に係るX線CT装置40によれば、CT透視の実行中において少なくとも一つのビューに対応するX線撮影画像を、ニードル11の進行方向の認識に適した画像としてユーザに提供(表示)することができる。これにより、本応用例に係るX線CT装置40によれば、被検体Pに関する検査のスループットを向上、すなわち被検体Pの検査効率を向上させることができる。
【0119】
(第5応用例)
本応用例は、第3応用例と同様に、1ビューがX線撮影画像に相当することを利用するものである。具体的には、本応用例は、CT透視(連続的な動画撮影)の実行中において、立体視用の透視投影(X線撮影)を実行する。具体的には、制御装置55は、位置姿勢情報に基づいて、医用器具10において天板63と反対側の端部(ホルダ端部)側に対向する回転フレーム53上の位置を中心として回転フレーム53上の立体視用の2つの位置から、少なくとも一つの透視投影を実行する。医用器具10において天板63と反対側の端部(ホルダ端部)側に対向する回転フレーム53上の位置の特定の処理は、第4の変形例と同様なため説明は省略する。
【0120】
処理回路75は、調整機能756により、医用器具10において天板63と反対側の端部(ホルダ端部)側に対向する回転フレーム53上の位置を中心として、回転フレーム53上の立体視用の2つの位置を特定する。立体視用の2つの位置の間隔は、視差に相当する。次いで、制御装置55は、回転フレーム53上の2つの位置から、少なくとも一つのX線撮影を実行する。処理回路75は、画像処理機能755により、2つの位置各々に関して、前処理後の生データに基づいて、X線撮影画像を生成する。ディスプレイ72は、2つの位置に対応する2つのX線撮影画像を表示する。
【0121】
以上に述べた実施形態の第5応用例に係るX線CT装置40によれば、ホルダ端部に対向する回転フレーム53上の位置を中心として回転フレーム53上の立体視用の2つの位置から、少なくとも一つの透視投影を実行することができる。このため、本応用例に係るX線CT装置40によれば、CT透視の実行中において少なくとも一つのビューに対応する立体視用のX線撮影画像を、ニードル11の進行方向の認識に適した立体視用の画像としてユーザに提供(表示)することができる。これにより、本応用例に係るX線CT装置40によれば、被検体Pに関する検査のスループットを向上、すなわち被検体Pの検査効率を向上させることができる。
【0122】
(第6応用例)
本応用例は、第3乃至第5応用例における透視投影(X線撮影)に関する撮影条件を、位置姿勢情報に基づいて、調整することにある。調整機能756は、位置姿勢情報に基づいて、透視投影に関する撮影条件を調整する。撮影条件の調整は、例えば、管電圧、管電流、管電流時間積、解像度などである。例えば、透視撮影において被検体Pを透過するX線のパス長(透過長)が、管球位置すなわち被検体Pの体厚に応じて変化するため、これらの調整は、実施形態に記載の調整に加えて透過長を加味して、最適化される。
【0123】
これにより、本応用例によれば、ニードル11の位置およびニードル11の姿勢に応じて、X線撮影の開始前において、医用器具10の先端と当該目標位置との距離、目標位置における臓器の性状、ニードル11の材質、被検体P内におけるニードル11の長さなどに応じて、最適な撮影条件を設定することができる。このため、実施形態に係るX線CT装置40によれば、被ばく低減と画質向上とを両立して、透視投影(X線撮影)を実行することができる。
【0124】
(第7応用例)
本応用例は、被検体Pへの連続撮影中において、医用器具10の先端と当該先端の到達の目標位置との距離が所定の閾値を下回った場合、位置姿勢情報に基づいて透視投影に関する撮影条件と透視投影に関する撮影位置とのうち少なくとも一つを調整することにある。当該閾値は、予め設定されてメモリ71に記憶される。なお、当該閾値は、ユーザにより入力インターフェース73を介して適宜調整可能である。連続撮影とは、例えば、被検体Pに対するCT透視(CTF)である。撮影位置の調整は、実施形態におけるスキャン範囲の設定に準拠するため、説明は省略する。
【0125】
処理回路75は、調整機能756により、被検体Pへの連続撮影中において、医用器具10の先端と当該先端の到達の目標位置との差異が所定の閾値を下回った場合、位置姿勢情報に基づいて被検体Pへの透視投影に関する撮影条件と当該透視投影に関する撮影位置とのうち少なくとも一つを調整する。これらの調整の内容は実施形態と同様なため、説明は省略する。制御装置55は、調整された撮影条件と調整された撮影位置とを用いて、透視投影を実行する。
【0126】
以上に述べた実施形態の第7応用例に係るX線CT装置40によれば、医用器具10の先端と当該目標位置とが所定の閾値を下回って近づいた場合、透視投影に関する撮影条件と透視投影に関する撮影位置とのうち少なくとも一つを、被ばく低減、画質、ニードル11の位置および姿勢に応じて最適なものに調整することができる。これにより、実施形態の第7応用例に係るX線CT装置40によれば、医用器具10の先端と当該目標位置に近づくと各種調整に関する制御が実行されるため、ユーザによる操作性を向上させることができる。他の効果は実施形態と同様なこのため、説明は省略する。
【0127】
(第8応用例)
本応用例は、CT透視による被検体Pへの連続撮影中において、位置姿勢情報に基づいて、透視投影に関する撮影条件と透視投影に関する撮影位置とのうち少なくとも一つを逐次調整することにある。すなわち、本応用例では、連続的な動画撮影(CTF)において、ニードル11の位置および姿勢に追従して、1フレームごとに上記調整が実行される。
【0128】
処理回路75は、調整機能756により、被検体Pへの連続撮影中において、位置姿勢情報に基づいて透視投影に関する撮影条件と透視投影に関する撮影位置とのうち少なくとも一つを逐次調整する。これらの調整の内容は実施形態および第7応用例と同様なため、説明は省略する。制御装置55は前記調整された撮影条件と前記調整された撮影位置とを用いて、透視撮影を実行する。
【0129】
以上に述べた実施形態の第8応用例に係るX線CT装置40によれば、透視投影に関する撮影条件と透視投影に関する撮影位置とのうち少なくとも一つを、被ばく低減、画質、ニードル11の位置および姿勢に応じて最適なものに逐次調整することができる。これにより、実施形態の第8応用例に係るX線CT装置40によれば、被検体Pに対するX線スキャンごとに上記条件を逐次調整できるため、X線スキャンごとに最適な条件で透視投影を実行することができる。他の効果は実施形態と同様なこのため、説明は省略する。
【0130】
実施形態における技術的思想を制御方法で実現する場合、当該制御方法は、被検体Pに対する検査または治療に用いられる医用器具10の位置および姿勢をセンシングし、センシングされた位置とセンシングされた姿勢とを含む位置姿勢情報を取得し、被検体Pに対するX線スキャンに基づいて得られるボリュームデータと位置姿勢情報とに基づいて、医用器具10を示す領域を含む少なくとも一つの断面に対応する断面画像を生成し、生成された断面画像を表示する。制御方法により実行される制御処理の手順および効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0131】
実施形態における技術的思想を制御プログラムで実現する場合、当該制御プログラムは、コンピュータに、被検体Pに対する検査または治療に用いられる医用器具10の位置および姿勢をセンシングし、センシングされた位置とセンシングされた姿勢とに関する位置姿勢情報を取得し、被検体Pに対するX線スキャンにより再構成されたボリュームデータと位置姿勢情報とに基づいて、医用器具10を示す領域を含む少なくとも一つの断面に対応する断面画像を生成し、生成された断面画像を表示すること、を実現させる。
【0132】
例えば、通常のX線CT装置などにおけるコンピュータに医用画像補正プログラムをインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても、上記医用器具10を用いることによって制御処理を実現することができる。このとき、コンピュータに当該制御処理を実行させることのできる制御プログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。制御プログラムにおける処理手順および効果は、実施形態と同様なため、説明は省略する。
【0133】
以上説明した少なくとも1つの実施形態または応用例によれば、ニードル11などの医用器具10の位置の変更に合わせて、医用器具10の位置の把握に適切な断面画像を撮影または表示することができる。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0135】
10 医用器具
11 ニードル
12 ニードルホルダ
13 センサ
14 メモリ
15 ネットワークインターフェース
16 処理回路
40 X線CT装置
50 撮像装置
51 X線管
52 X線検出器
53 回転フレーム
54 X線高電圧装置
55 制御装置
56 ウェッジ
57 コリメータ
58 DAS(Data Acquisition System)
60 寝台装置
61 基台
62 寝台駆動装置
63 天板
64 支持フレーム
70 コンソール装置
71 メモリ
72 ディスプレイ
73 入力インターフェース
74 ネットワークインターフェース
75 処理回路
751 システム制御機能
752 前処理機能
753 再構成処理機能
754 取得機能
755 画像処理機能
756 調整機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9