(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148256
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】防爆部材
(51)【国際特許分類】
H01M 50/342 20210101AFI20241010BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241010BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20241010BHJP
H01G 9/12 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H01M50/342 101
C09J7/38
H01G11/78
H01G9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061233
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100219531
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 麻美
(72)【発明者】
【氏名】宮垣 晶
(72)【発明者】
【氏名】福田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】矢野 陽三
【テーマコード(参考)】
4J004
5E078
5H012
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004FA08
5E078AA11
5E078HA24
5H012DD01
5H012EE01
5H012FF08
(57)【要約】
【課題】密閉型バッテリーパックの安全性を確保することに適した新たな防爆部材を提供する。
【解決手段】筐体の開口を覆う状態で前記筐体に対して固定する配置に適した防爆部材であって、前記配置において前記開口を通過して前記筐体の内部に異物が侵入することを抑制する膜と、粘接着剤層と、を備える。前記粘接着剤層の第一面は、前記膜の周縁部において前記膜に接続され、又は前記周縁部において前記膜に接続されたベース部材に接続される。前記第一面と反対側を向く前記粘接着剤層の第二面は、前記配置において前記開口を囲むように前記筐体に対して固定される。前記粘接着剤層は、加熱により粘接着力が低下する熱応答性を有する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の開口を覆う状態で前記筐体に対して固定する配置に適した防爆部材であって、
前記配置において前記開口を通過して前記筐体の内部に異物が侵入することを抑制する膜と、粘接着剤層と、を備え、
前記粘接着剤層の第一面は、前記膜の周縁部において前記膜に接続され、又は前記周縁部において前記膜に接続されたベース部材に接続され、
前記第一面と反対側を向く前記粘接着剤層の第二面は、前記配置において前記開口を囲むように前記筐体に対して固定され、
前記粘接着剤層が、加熱により粘接着力が低下する熱応答性を有する、
防爆部材。
【請求項2】
前記粘接着剤層は、i)前記第一面、ii)前記第二面、及びiii)前記粘接着剤層に含まれる基材に接する内部面からなる群から選択される少なくとも1つにおいて、前記熱応答性を有する、
請求項1に記載の防爆部材。
【請求項3】
前記熱応答性により、前記粘接着剤層は、160℃の雰囲気下において粘接着力を実質的に喪失する、
請求項1に記載の防爆部材。
【請求項4】
下記剥離試験により求めた、前記粘接着剤層の160℃における剥離時間が60秒以下である、
請求項3に記載の防爆部材。
<剥離試験>
前記粘接着剤層を備えた片面粘接着テープをアルミニウム試験板に直接貼り付けたサンプル体を、ホットプレートの加熱面に前記粘接着剤層が接するように載置する。このとき、前記アルミニウム試験板の上面の水平位置を基準位置と定義する。前記加熱面を100℃から180℃まで加熱し、前記アルミニウム試験板の前記上面が前記基準位置を超えた時間を、その温度における前記剥離時間とする。
【請求項5】
下記引きはがし粘着力試験により求めた、前記粘接着剤層のアルミニウム試験板に対する初期の粘接着力が0.5N/20mm以上である、
請求項1に記載の防爆部材。
<引きはがし粘着力試験>
前記粘接着剤層を備えた片面粘接着テープに対してJIS Z0237:2009に定められた「ステンレス試験板に対する180°引きはがし粘着力試験」を実施する。ただし、前記ステンレス試験板に代えて前記アルミニウム試験板を使用する。測定された引きはがし粘着力を前記初期の粘接着力とする。
【請求項6】
前記粘接着剤層は、熱発泡剤を含有する、
請求項1に記載の防爆部材。
【請求項7】
前記粘接着剤層は、a)単層、b)前記基材と粘接着剤部とを含む片面粘接着テープ、又はc)前記基材と、前記基材を挟持する第一粘接着剤部及び第二粘接着剤部と、を含む両面粘接着テープ、である、
請求項2に記載の防爆部材。
【請求項8】
前記ベース部材と、
前記膜の表面に直交し、かつ、前記配置において前記筐体の外部から前記内部に向かう
方向に沿って観察したときに、前記膜の表面を覆い、かつ前記膜の表面から離間すると共に、前記ベース部材に接続された、カバー部材と、を備えた、
請求項1に記載の防爆部材。
【請求項9】
前記膜が通気膜であり、
前記通気膜は、前記周縁部に囲まれた通気部を有する、
請求項1に記載の防爆部材。
【請求項10】
前記膜の厚さ方向の通気度が、JIS L1096:2010に定められた通気性測定A法(フラジール形法)に準拠して測定したフラジール数で表示して、0.001cm3/(cm2・秒)超かつ18.8cm3/(cm2・秒)以下である、
請求項1に記載の防爆部材。
【請求項11】
前記膜は、多孔膜又は無孔膜である、
請求項1に記載の防爆部材。
【請求項12】
前記粘接着剤層の前記第二面に接合された剥離ライナーを備えた、
請求項1に記載の防爆部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防爆部材に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉された筐体の内部に電池又はコンデンサを収容した密閉型バッテリーパックが広く使用されている。このような密閉型バッテリーパックでは、電解液の化学反応等により筐体の内部でガスが発生することがある。筐体の内部でガスが発生すると、筐体の内圧が上昇し、筐体が変形したり破裂したりすることが知られている。そのため、従来、密閉型バッテリーパックには、筐体に設けたガス排出孔を防爆弁により閉塞する技術が採用されている。防爆弁では、筐体の内圧が所定の値に達すると、弁が開放する、又は、薄膜の弁が開裂する。これにより、筐体の内部からガスを排出できるので、筐体の変形又は破裂が回避される。例えば、特許文献1には、密閉型電気化学デバイスの封口板のガス排出孔を防爆弁体により閉塞し、デバイスの内圧が上昇した際に防爆弁体が破断してガスを排出する防爆弁構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の防爆弁は、筐体の内圧の上昇をトリガーとしているため、通常の運転時における筐体の内外圧差の変動により誤作動を起こすことがある。
【0005】
そこで、本発明は、密閉型バッテリーパックの安全性を確保することに適した新たな防爆部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、筐体の内部の温度上昇に伴う筐体の温度上昇をトリガーとすることにより、上記目的が達成されることを見出した。
【0007】
本発明は、
筐体の開口を覆う状態で前記筐体に対して固定する配置に適した防爆部材であって、
前記配置において前記開口を通過して前記筐体の内部に異物が侵入することを抑制する膜と、粘接着剤層と、を備え、
前記粘接着剤層の第一面は、前記膜の周縁部において前記膜に接続され、又は前記周縁部において前記膜に接続されたベース部材に接続され、
前記第一面と反対側を向く前記粘接着剤層の第二面は、前記配置において前記開口を囲むように前記筐体に対して固定され、
前記粘接着剤層が、加熱により粘接着力が低下する熱応答性を有する、
防爆部材、
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、密閉型バッテリーパックの安全性を確保することに適した新たな防爆部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、第1実施形態の防爆部材の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1Aの防爆部材が筐体の開口を覆う状態で筐体に対して固定された状態の一例を示す断面図である。
【
図3A】
図3Aは、第1実施形態の防爆部材の変形例1を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3Aの防爆部材が筐体の開口を覆う状態で筐体に対して固定された状態の一例を示す断面図である。
【
図5A】
図5Aは、第1実施形態の防爆部材の変形例2を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図5Aの防爆部材が筐体の開口を覆う状態で筐体に対して固定された状態の一例を示す断面図である。
【
図7A】
図7Aは、第2実施形態の防爆部材の一例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図7Aの防爆部材が筐体の開口を覆う状態で筐体に対して固定された状態の一例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、剥離試験を説明するための模式的な側面図である。
【
図10】
図10は、引きはがし粘着力試験を説明するための模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1態様にかかる防爆部材は、
筐体の開口を覆う状態で前記筐体に対して固定する配置に適した防爆部材であって、
前記配置において前記開口を通過して前記筐体の内部に異物が侵入することを抑制する膜と、粘接着剤層と、を備え、
前記粘接着剤層の第一面は、前記膜の周縁部において前記膜に接続され、又は前記周縁部において前記膜に接続されたベース部材に接続され、
前記第一面と反対側を向く前記粘接着剤層の第二面は、前記配置において前記開口を囲むように前記筐体に対して固定され、
前記粘接着剤層が、加熱により粘接着力が低下する熱応答性を有する。
【0011】
本発明の第2態様において、例えば、第1態様にかかる防爆部材では、前記粘接着剤層は、i)前記第一面、ii)前記第二面、及びiii)前記粘接着剤層に含まれる基材に接する内部面からなる群から選択される少なくとも1つにおいて、前記熱応答性を有する。
【0012】
本発明の第3態様において、例えば、第1又は第2態様にかかる防爆部材では、前記熱応答性により、前記粘接着剤層は、160℃の雰囲気下において粘接着力を実質的に喪失する。
【0013】
本発明の第4態様において、例えば、第3態様にかかる防爆部材では、下記剥離試験により求めた、前記粘接着剤層の160℃における剥離時間が60秒以下である。
<剥離試験>
前記粘接着剤層を備えた片面粘接着テープをアルミニウム試験板に直接貼り付けたサンプル体を、ホットプレートの加熱面に前記粘接着剤層が接するように載置する。このとき、前記アルミニウム試験板の上面の水平位置を基準位置と定義する。前記加熱面を100℃から180℃まで加熱し、前記アルミニウム試験板の前記上面が前記基準位置を超えた
時間を、その温度における前記剥離時間とする。
【0014】
本発明の第5態様において、例えば、第1~第4態様のいずれか1つにかかる防爆部材では、下記引きはがし粘着力試験により求めた、前記粘接着剤層のアルミニウム試験板に対する初期の粘接着力が0.5N/20mm以上である。
<引きはがし粘着力試験>
前記粘接着剤層を備えた片面粘接着テープに対してJIS Z0237:2009に定められた「ステンレス試験板に対する180°引きはがし粘着力試験」を実施する。ただし、前記ステンレス試験板に代えて前記アルミニウム試験板を使用する。測定された引きはがし粘着力を前記初期の粘接着力とする。
【0015】
本発明の第6態様において、例えば、第1~第5態様のいずれか1つにかかる防爆部材では、前記粘接着剤層は、熱発泡剤を含有する。
【0016】
本発明の第7態様において、例えば、第2態様にかかる防爆部材では、前記粘接着剤層は、a)単層、b)前記基材と粘接着剤部とを含む片面粘接着テープ、又はc)前記基材と、前記基材を挟持する第一粘接着剤部及び第二粘接着剤部と、を含む両面粘接着テープ、である。
【0017】
本発明の第8態様において、例えば、第1~第7態様のいずれか1つにかかる防爆部材は、前記ベース部材と、前記膜の表面に直交し、かつ、前記配置において前記筐体の外部から前記内部に向かう方向に沿って観察したときに、前記膜の表面を覆い、かつ前記膜の表面から離間すると共に、前記ベース部材に接続された、カバー部材と、を備える。
【0018】
本発明の第9態様において、例えば、第1~第8態様のいずれか1つにかかる防爆部材では、前記膜が通気膜であり、前記通気膜は、前記周縁部に囲まれた通気部を有する。
【0019】
本発明の第10態様において、例えば、第1~第9態様のいずれか1つにかかる防爆部材では、前記膜の厚さ方向の通気度が、JIS L1096:2010に定められた通気性測定A法(フラジール形法)に準拠して測定したフラジール数で表示して、0.001cm3/(cm2・秒)超かつ18.8cm3/(cm2・秒)以下である。
【0020】
本発明の第11態様において、例えば、第1~第10態様のいずれか1つにかかる防爆部材では、前記膜は、多孔膜又は無孔膜である。
【0021】
本発明の第12態様において、例えば、第1~第11態様のいずれか1つにかかる防爆部材は、前記粘接着剤層の前記第二面に接合された剥離ライナーを備える。
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0023】
[防爆部材]
本実施形態の防爆部材は、筐体70の開口71を覆う状態で筐体に対して固定する配置Pに適した防爆部材である。当該防爆部材は、配置Pにおいて開口71を通過して筐体70の内部72に異物が侵入することを抑制する膜1、及び粘接着剤層2を備える。粘接着剤層2の第一面2aは、膜1の周縁部11において膜1に接続され、又は膜1の周縁部11において膜1に接続されたベース部材3に接続されている。粘接着剤層2の第一面2aと反対側を向く粘接着剤層2の第二面2bは、配置Pにおいて開口71を囲むように筐体70に対して固定されている。粘接着剤層2は、加熱により粘接着力が低下する熱応答性を有する。本明細書において、「熱応答性」とは、加熱により粘接着力が低下する性質で
あって、より具体的には、常温環境下では十分な粘接着力を発揮する一方で、例えば80℃以上、さらに100℃以上に加熱されると粘接着力が低下する性質を意味する。なお、膜1の抑制対象である異物は、例えば、塵、埃等の固形物である。ただし、異物は、固形物に加え、水、油等の液体を含んでいてもよい。
【0024】
本実施形態の防爆部材は、このような構造であることにより、筐体70の内部72の温度が上昇すると、粘接着剤層2の粘接着力の低下が生じ、少なくとも膜1を含む一部、又はその全体が被着体(例えば筐体70)から自動的に脱離(自然剥離)することが可能となる。防爆部材の膜1の脱離により、例えば、筐体70の内部72で発生したガスを開口71から排出させることができる。このように、本実施形態の防爆部材は、筐体70の内圧の上昇をトリガーとする従来の防爆弁とは異なり、筐体70の内部72の温度上昇に伴う筐体70の温度上昇をトリガーとするので、通常の運転時における筐体70の内圧の変動等による内外圧差の変動による誤作動が回避される。
【0025】
また、密閉型バッテリーパックでは、過充電等による筐体の内部の温度上昇により電池が熱暴走を起こすことがある。電池が熱暴走を起こすと、筐体の内部の温度が急激に上昇し、発火に至ること、あるいは、筐体の内部の温度の急激な上昇に伴い、筐体の内圧が上昇し、結果として筐体が変形したり破裂したりすることがある。電池の熱暴走による筐体の内部の温度の急激な上昇は、筐体の内圧が上昇する前に起こる。そのため、従来の防爆弁では、これらの危険を十分に回避することができない。しかし、本実施形態の防爆部材によれば、筐体70の内部72の温度上昇により電池が熱暴走を起こした場合であっても、筐体70の内圧の過度の上昇を待たずに防爆部材の膜1を脱離することができる。
【0026】
以下では、第1実施形態として、粘接着剤層2の第一面2aが膜1の周縁部11において膜1に接続されている防爆部材10を説明する。第2実施形態として、粘接着剤層2の第一面2aが膜1の周縁部11において膜1に接続されたベース部材3に接続されている防爆部材40を説明する。
【0027】
<第1実施形態>
第1実施形態の防爆部材の一例を
図1A~1Bに示す。
図1A~1Bに示す防爆部材10は、筐体70の開口71を覆う状態で筐体70に対して固定する配置Pに適した防爆部材である。防爆部材10は、配置Pにおいて開口71を通過して筐体70の内部72に異物が侵入することを抑制する膜1、及び粘接着剤層2を備える。
【0028】
図2は、防爆部材10が筐体70の開口71を覆う状態で筐体70に対して固定された状態の一例を示す断面図である。すなわち、
図2に示す防爆部材10は、配置Pの状態にある。
【0029】
粘接着剤層2は、膜1に接する第一面2aと、第一面2aと反対側を向く第二面2bとを有する。本実施形態において、粘接着剤層2の第一面2aは、膜1の周縁部11に沿うように膜1に接続されている。粘接着剤層2の第二面2bは、配置Pにおいて開口71を囲むように筐体70に対して固定される。
【0030】
図1A~1Bに示す例では、粘接着剤層2は単層である。本実施形態において、粘接着剤層2は、a)単層であってもよく、b)基材と粘接着剤部とを含む片面粘接着テープであってもよく、c)基材及び基材を挟持する第一粘接着剤部及び第二粘接着剤部を含む両面粘接着テープであってもよい。すなわち、粘接着剤層2において、基材は任意に選択して設置されるものであり、あってもなくてもよい。b)及びc)の粘接着剤層2については、後述する変形例1及び2において説明する。
【0031】
粘接着剤層2が単層である場合、粘接着剤層2は、第一面2a及び第二面2bからなる群から選択される少なくとも1つにおいて、熱応答性を有していてもよい。例えば、粘接着剤層2の第一面2aが熱応答性を有する場合、筐体70の内部72の温度上昇に伴い筐体70の温度が上昇すると、第一面2aにおいて粘接着力の低下が生じることで、防爆部材10の膜1が被着体から自動的に脱離することが可能となる。例えば、粘接着剤層2の第二面2bが熱応答性を有する場合、筐体70の内部72の温度上昇に伴い筐体70の温度が上昇すると、第二面2bにおいて粘接着力の低下が生じることで、防爆部材10の膜1が被着体から自動的に脱離することが可能となる。
【0032】
熱応答性により、粘接着剤層2は、160℃の雰囲気下において粘接着力を実質的に喪失してもよい。本明細書において、「N℃の雰囲気下において粘接着力を実質的に喪失する」とは、N℃の雰囲気下において、粘接着剤層2の粘接着力が低下し、防爆部材10の膜1が被着体から自動的に脱離することが可能となる状態を意味する。「防爆部材10の膜1が被着体から自動的に脱離することが可能となる状態」とは、例えば、防爆部材10の膜1が自重により被着体から脱落することが可能となる状態である。
【0033】
熱応答性により、粘接着剤層2は、140℃の雰囲気下において粘接着力を実質的に喪失してもよく、130℃の雰囲気下において粘接着力を実質的に喪失してもよく、120℃の雰囲気下において粘接着力を実質的に喪失してもよく、100℃の雰囲気下において粘接着力を実質的に喪失してもよく、さらに90℃の雰囲気下において粘接着力を実質的に喪失してもよい。
【0034】
防爆部材10において、下記剥離試験により求めた、粘接着剤層2の160℃における剥離時間T160が60秒以下であってもよい。時間T160は、40秒以下であってもよく、さらに30秒以下であってもよい。剥離時間T160の下限は特に制限されない。剥離時間T160の下限は、例えば5秒であってもよい。
【0035】
<剥離試験>
図9は、剥離試験を説明するための模式的な側面図である。まず、粘接着剤層2を備えた片面粘接着テープ2
tをアルミニウム試験板81に直接貼り付けることにより、サンプル体SB
1を得る。次に、ホットプレート90の加熱面90sに粘接着剤層2が接するようにサンプル体SB
1を載置する。このとき、アルミニウム試験板81の上面81sの水平位置を基準位置h
0と定義する(
図9の(A)参照)。次に、加熱面90sを100℃から180℃まで加熱し、アルミニウム試験板81の上面81sが基準位置h
0を超えた時間を、N℃(N=100~180)における剥離時間T
Nとする(
図7の(B)参照)。
【0036】
サンプル体SB1は、以下の方法により作製できる。厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを基材22とする。基材22に厚さ35μmの粘接着剤部を形成し、片面粘接着テープ2tを作製する。片面粘接着テープ2tを幅20mm、長さ40mmのサイズに切断する。切断した片面粘接着テープ2tを、厚さ0.5mm、幅40mm、長さ125mmのサイズのアルミニウム試験板81に直接貼り付ける。このようにして、サンプル体SB1が得られる。
【0037】
上記剥離試験は、加熱に伴い膨張して剥離性を示す粘接着剤層2に適したものであって、熱応答性の種類に応じ、異なる剥離試験を用いてもよい。
【0038】
なお、本発明者らの検討によれば、粘接着剤層2のステンレス試験板に対する剥離時間TN及び鉄試験板に対する剥離時間TNは、アルミニウム試験板に対する剥離時間TNと同程度でありうる。例えば、粘接着剤層2のアルミニウム試験板に対する剥離時間T160が
9秒であるとき、ステンレス試験板に対する剥離時間T160及び鉄試験板に対する剥離時間T160は10秒程度でありうる。
【0039】
防爆部材10において、上記剥離試験により求めた、粘接着剤層2の90℃における剥離時間T90が60秒以下であってもよい。なお、本実施形態において、T90≦60(秒)を満たす場合、必ず、T160≦60(秒)が満たされる。90℃の雰囲気下において粘接着力を実質的に喪失する粘接着剤層2は、さらに高い温度である160℃の雰囲気下では、必ず、粘接着力を実質的に喪失しているためである。剥離時間T90は、40秒以下であってもよく、さらに30秒以下であってもよい。剥離時間T90の下限は特に制限されない。剥離時間T90の下限は、例えば5秒であってもよい。
【0040】
防爆部材10において、下記引きはがし粘着力試験により求めた、粘接着剤層2のアルミニウム試験板に対する初期の粘接着力F0が0.5N/20mm以上であってもよい。
【0041】
<引きはがし粘着力試験>
図10は、引きはがし粘着力試験を説明するための模式的な側面図である。まず、幅20mm、長さ140mmのサイズに切断した片面粘接着テープ2
tを準備する。片面粘接着テープ2
tは、剥離試験で説明した方法と同様の方法により作製できる。次に、アルミニウム試験板82に粘接着剤層2が接するように片面粘接着テープ2
tを載置し、JIS
Z0237:2009に定められた質量2kgの手動ローラを一往復させ、片面粘接着テープ2
tとアルミニウム試験板82とを接合させ、サンプル体SB
2を得る。その後、接合させたサンプル体SB
2を25℃の環境下に20~40分放置して接合を安定させる。得られたサンプル体SB
2を恒温槽付き引張試験機(島津製作所社製、商品名「島津オートグラフAG-120kN」)にセットし、JIS Z0237:2009に定められた「ステンレス試験板に対する180°引きはがし粘着力試験」を実施する。ただし、ステンレス試験板に代えてアルミニウム試験板(厚さ0.5mm、幅40mm、長さ125mm)を使用する。測定された引きはがし粘着力を初期の粘接着力F
0(N/20mm)とする。具体的には、引張試験機の上部チャック91にアルミニウム試験板82の一端を固定すると共に、片面粘接着テープ2
tの一端部を180°折り返して、引張試験装置の下部チャック92に固定する。次に、片面粘接着テープ2
tをサンプル体SB
2から長さ方向に引き剥がす180°引きはがし試験を実施する。サンプル体SB
2からアルミニウム試験板82を引き剥がした時の荷重を測定し、その際の最大荷重(測定初期のピークトップを除いた荷重の最大値)を求める。この最大荷重をテープ幅で除したものを粘接着力F
0(N/20mm)とする。
【0042】
なお、本発明者らの検討によれば、粘接着剤層2のステンレス試験板に対する粘接着力F0及び鉄試験板に対する粘接着力F0は、アルミニウム試験板に対する粘接着力F0よりも大きくなりうる。例えば、粘接着剤層2のアルミニウム試験板に対する初期の粘接着力F0が3.0N/20mmであるとき、ステンレス試験板に対する粘接着力F0及び鉄試験板に対する粘接着力F0は、3.0N/20mよりも大きく、5.0N/20m以上でありうる。
【0043】
防爆部材10において、粘接着力F0は、2.0N/20mm以上であってもよく、2.5N/20mm以上であってもよく、3N/20mm以上であってもよい。粘接着力F0の上限は特に制限されない。粘接着力F0の上限は、例えば40N/20mmであってもよく、30N/20mmであってもよい。
【0044】
[粘接着剤層]
粘接着剤層2は、加熱により粘接着力が低下する熱応答性を有する。このような構造であることにより、筐体70の内部72の温度上昇に伴い筐体70の温度が上昇すると、粘
接着剤層2の粘接着力の低下が生じ、防爆部材10の膜1が被着体から自動的に脱離することが可能となる。防爆部材10の膜1が脱離することにより、例えば、筐体70の内部72で発生したガスを開口71から排出させることができる。
【0045】
本明細書において、「粘接着」は、「粘着」または「接着」を意味する。例えば、「粘接着剤層」は、「粘着剤層」または「接着剤層」を意味する。「粘接着力」は、「粘着力」または「接着力」を意味する。
【0046】
本明細書において、「粘着」(Pressure-sensitive Adhesive)とは、JISで規定されているように、接着の一種であって、一時的な接着であり、わずかな圧力を加えただけで接着できる性質をいう。また、凝集力と弾性を有しているため、強く接着する反面、硬い平滑面からは剥がすこともできる性質をいう。粘着剤は柔らかい固体であり、接着剤のように状態の変化を起こさない。粘着剤は、そのままの状態で被着体に濡れ、剥離に抵抗するため、被着体同士を貼り合わせると瞬時に実用に耐える接着力を発揮できる。すなわち、粘着剤は、被着体に濡れていくための液体の性質(流動性)と、剥離に抵抗する固体の性質(凝集力)とを併せ持つ。粘着剤は、柔らかい固体であるので、圧力を加えたり、時間をかけたりすることによって、徐々に被着体への接触面積が増えていく。そして、この柔らかさを長時間保つことができるため、剥がしたい時に剥がせるという性質を有する。
【0047】
本明細書において、「接着」(Adhesive)とは、JISで規定されているように、同種または異種の固体の面と面を貼り合わせて一体化できる性質をいう。接着剤は、被着体同士を貼り合わせる時には流動性のある液体であり、被着体に濡れ、なじんでいく。その後、加熱や化学反応により固体に変化し、被着体同士の界面で強固に結びつき、剥離に抵抗する力を発揮する。すなわち、接着剤は、液体で濡れ、固体で接着する。
【0048】
粘接着剤層2は、例えば、熱により膨張する材料により構成される熱膨張性の粘接着剤層、熱により収縮する材料により構成される熱収縮性の粘接着剤層、熱により溶融する材料により構成される熱溶融性の粘接着剤層、熱により昇華する材料により構成される熱昇華性の粘接着剤層、又は熱により分解される材料により構成される熱分解性の粘接着剤層であってもよい。
【0049】
本発明の効果をより発現させうる点で、粘接着剤層2としては、粘着剤層が好ましく、熱膨張性の粘着剤層がより好ましい。
【0050】
粘接着剤層2は、熱発泡剤を含有していてもよい。熱発泡剤によって、粘接着剤層2に熱応答性が付与されていてもよい。
【0051】
熱発泡剤は、典型定には、熱膨張性微小球を含む。粘接着剤層2が熱発泡剤を含有する場合には、防爆部材10を被着体に固定した後、加熱により、熱発泡剤に含まれる熱膨張性微小球が発泡及び/又は膨張することにより、粘接着剤層2と被着体との接着面積が減少する。これにより、粘接着剤層2の粘接着力の低下が生じ、防爆部材10の膜1の自動的な脱離が可能となる。
【0052】
(熱膨張性微小球)
熱膨張性微小球は特に制限されず、公知の熱膨張性微小球から適宜選択することができ、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。熱膨張性微小球としては、例えば、プロパン、プロピレン、ブテン、ノルマルブタン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、メタンのハロゲン化物、テトラアルキルシラン等の低沸点液体、及び、加熱により
熱分解してガス状になるアゾジカルボンアミド等の加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻形成物質に内包させた微小球を使用できる。
【0053】
殻形成物質は、例えば、ラジカル重合可能な単量体の重合体により構成される。単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のカルボン酸単量体;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレンモノマー;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等のアミド単量体;又はこれらの混合物等が挙げられる。殻形成物質は、熱溶融性物質又は熱膨張で破壊する物質等から構成される。
【0054】
殻形成物質は、1種類以上の物質による共重合体によって構成されてもよい。共重合体としては、例えば、塩化ビニリデン-メタクリル酸メチル-アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル-アクリロニトリル-メタクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-メタクリロニトリル-イタコン酸共重合体等が挙げられる。熱膨張性微小球は、慣用の方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法等により製造できる。
【0055】
熱膨張性微小球として、例えば、松本油脂製薬社製のマツモトマイクロスフェアー(F-36、F-50、FN-100SS)等の市販品を使用できる。
【0056】
熱膨張性微小球として、上記以外のものも用いることができる。このような熱膨張性微小球としては、例えば、種々の無機系発泡剤、有機系発泡剤等が挙げられる。無機系発泡剤の代表的な例としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水酸化ホウ素ナトリウム、各種アジド類等が挙げられる。また、有機系発泡剤の代表的な例としては、水;トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等の塩フッ化アルカン系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等のヒドラジン系化合物;p-トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物;5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物;N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド等のN-ニトロソ系化合物等が挙げられる。
【0057】
熱膨張性微小球は、加熱により粘接着剤層2の粘接着力を効率よく低下させる観点から、体積膨張率が5倍以上、さらに7倍以上、特に10倍以上となるまで破裂しない適度の強度を有することが好ましい。熱膨張性微小球の配合量は、粘接着剤層2の膨張倍率及び/又は粘接着力の低下性等に応じて適宜設定しうる。熱膨張性微小球の配合量は、粘接着剤層2を形成するベースポリマー100重量部に対して、例えば、1~150重量部、好ましくは10~130重量部、さらに好ましくは25~100重量部である。
【0058】
粘接着剤層2は、粘接着性を有する粘接着剤をさらに含有している。加熱前の適度な粘接着力と加熱後の粘接着力とのバランスの観点から、粘接着剤としては粘着剤が好ましく
、25~150℃における動的弾性率が5kPa~1MPaの範囲にあるポリマーをベースとした粘着剤がより好ましい。以下、粘着剤について詳述する。
【0059】
(粘着剤)
粘着剤としては、加熱時に熱膨張性微小球の発泡及び/又は膨張を可及的に拘束しないものが好ましい。このような粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリ-プ特性改良型粘着剤、放射線硬化型粘着剤等の公知の粘着剤が挙げられる。粘着剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる(例えば、特開昭56-61468号公報、特開昭63-17981号公報等参照)。
【0060】
粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤を好適に用いることができ、特にアクリル系粘着剤を好適に用いることができる。アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系重合体(単独重合体又は共重合体)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤が挙げられる。このようなアクリル系粘着剤における(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等のアルキル基の炭素数が1~20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を挙げることができる。本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味する。これらのなかでも、アルキル基の炭素数が4~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、アクリル系粘着剤を構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、50~100重量%であることが好ましく、より好ましくは70~100重量%である。
【0061】
アクリル系重合体は、凝集力、耐熱性、架橋性等の改質を目的として、必要に応じて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分に対応する単位を含んでいてもよい。このような単量体成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリル
アミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等の(N-置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクルロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル樹脂系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等の多官能モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分は1種又は2種以上を使用できる。単量体成分は、凝集力や架橋性を向上させる観点から、ヒドロキシル基含有モノマー又はカルボキシル基含有モノマーが好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル又はアクリル酸である。ヒドロキシル基含有モノマーの含有量は、アクリル系重合体を構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、10重量%未満が好ましく、より好ましくは8重量%以下であり、特に好ましくは5重量%以下である。カルボキシル基含有モノマーの含有量は、アクリル系粘着剤を構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、20重量%未満が好ましく、より好ましくは5重量%以下である。
【0062】
ゴム系粘着剤としては、天然ゴムや各種の合成ゴム、例えば、ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエン(SB)ゴム、スチレン・イソプレン(SI)ゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)ゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレン;これらの変性体当をベースポリマーとしたゴム系粘着剤が挙げられる。
【0063】
さらに、粘着剤は、架橋剤、粘着付与樹脂、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電剤
、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0064】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤等が挙げられる。架橋剤として、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤を好適に用いることができる。
【0065】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、コロネートHX)等のイソシアネート付加物等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。イソシアネート系架橋剤の配合量は、粘着剤に求められる粘着力に応じて適宜設定しうる。イソシアネート系架橋剤の配合量は、粘着剤を構成するベースポリマー100重量部に対して、例えば、0.1~20重量部、好ましくは0.5~10重量部である。
【0066】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製、テトラッドC)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、エポライト1600)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、エポライト1500NP)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、エポライト40E)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、エポライト70P)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、エピオールE-400)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、エピオールP-200)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、デナコールEX-611)、グリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、デナコールEX-314)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、デナコールEX-512)、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル等の分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂等が挙げられる。これらの架橋剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。エポキシ系架橋剤の配合量は、粘着剤に求められる粘着力に応じて適宜設定しうる。エポキシ系架橋剤の配合量は、粘着剤を構成するベースポリマー100重量部に対して、例えば、0.01~10重量部、好ましくは0.03~5重量部である。
【0067】
可塑剤は特に限定されないが、例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、アジピン酸系可塑剤等を用いることができ、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤を好適に用いることができる。可塑剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。トリ
メリット酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリメリット酸トリ(n-オクチル)、トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル)、トリメリット酸トリイソオクチル、トリメリット酸トリイソノニル、トリメリット酸トリイソデシル等のトリメリット酸トリアルキルエステル等が挙げられる。ピロメリット酸エステル系可塑剤としては、例えば、ピロメリット酸テトラ(n-オクチル)、ピロメリット酸テトラ(2-エチルヘキシル)等のピロメリット酸テトラアルキルエステル等が挙げられる。可塑剤の配合量は、目的に応じて適宜に設定しうる。可塑剤の配合量は、粘着剤を構成するベースポリマー100重量部に対して、例えば、1~20重量部、好ましくは1~5重量部である。
【0068】
粘着付与樹脂を選択する際には、粘着剤と相溶性が悪いものではなく、相溶性に優れるものを選択する必要がある。粘着剤に対して相溶性が悪い粘着付与樹脂を配合すると、粘着剤中には粘着剤と粘着付与樹脂が相溶してなる相溶部分だけでなく、粘着剤と粘着付与樹脂が分離してなる非相溶の部分ができる。すなわち、粘着剤表面には局所的にガラス転移温度(Tg)が高い粘着付与樹脂のドメインが生じ、部分的に粘着力が低い表面が生じることになる。そのため、粘着力が低い粘着付与樹脂のドメイン部分が露出してなる表面では、被加工体の微小部材は弱い粘着力により粘着剤層表面に接合されるので、ダイシング等の加工の際に振動により剥離しやすくなる。この傾向は、特に切断後の被加工体が小さくなればなるほど、被加工体の大きさに対する該粘着付与樹脂のドメイン部分の大きくなるので顕著となる。このため、単に粘着付与樹脂を増やして粘着力を向上させても、その粘着付与樹脂が粘着剤に対して相溶性が良くなければ、その粘着力は粘着剤面全体の平均値ともいうべき物性であるため、粘着剤層表面をミクロでみたときの面内物性のばらつきに起因するチップ飛びは解消できない。
【0069】
粘着付与樹脂としては、ロジン由来のロジン樹脂類、ピネン等のテルペンから誘導されたテルペン樹脂類、石油留分由来の脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂等が使用可能ではある。ロジンフェノール、テルペンフェノール等のフェノール基を共重合した、テルペンフェノール系樹脂、ロジンフェノール系樹脂等の粘着付与樹脂が好ましい。ロジンフェノール、特にテルペンフェノールの分子構造は、立体的に込み合っておらず、フェノール基の持つ水酸基とアクリル粘着剤中のエステル基が相互作用しやすいため相溶性が向上する。具体的に使用可能な粘着付与樹脂は、テルペンフェノール系樹脂としては、ヤスハラケミカル社製のYSポリスターS145、荒川化学社製のタマノル901が挙げられる。ロジンフェノール系樹脂としては、住友ベークライト社製のスミライトレジンPR-12603が挙げられる。一方、ロジンエステル系樹脂では、その構造に含まれるエステル基とアクリル粘着剤中のエステル基の分子間相互作用による相溶が期待されるが、ロジンエステル系樹脂の組成物は脂環構造を有しているため、テルペンフェノール樹脂等と比較して立体的に込み合っており、官能基による相互作用の影響は低くなる。また、粘着剤と樹脂の相溶性の指標として水酸基価、酸価等を用いることができる。水酸基の高い樹脂では、水酸基とアクリル粘着剤中のエステル基との相互作用が期待され、また酸価が高い樹脂では、その構造中にカルボキシル基を含む割合が高くなり、アクリル粘着剤中のエステル基と分子間相互作用できるため、結果として相溶性が向上する。立体的に込み合った構造を持つロジンエステル系樹脂でも、酸価又は水酸基価が高ければ、アクリル粘着剤中のエステル基と分子間相互作用できる確率が高まるため、相溶性は向上する。例えば、ロジンエステル系樹脂の荒川化学社製のスーパーエステルA115が使用可能である。相溶性の向上が期待される水酸基価の数値は、45以上、より好ましくは70以上であり、酸価の数値は、15以上、より好ましくは40以上である。また、粘着付与樹脂の配合量は、粘着剤を構成するベースポリマー100重量部に対して、例えば、5~100重量部、好ましくは10~50重量部である。
【0070】
[膜]
膜1は通気膜であってもよい。膜1が通気膜である場合、膜1は、周縁部11に囲まれ
た通気部12を有する。膜1が通気膜であると、防爆部材10に内圧調整機能を付与することができる。
【0071】
膜1の厚さ方向の通気度は、JIS L1096:2010に定められた通気性測定A法(フラジール形法)に準拠して測定したフラジール数で表示して、0.001cm3/(cm2・秒)超かつ18.8cm3/(cm2・秒)以下であってもよい。
【0072】
膜1の厚さ方向の通気度の下限は、0.01cm3/(cm2・秒)であってもよく、0.1cm3/(cm2・秒)であってもよく、さらに0.2cm3/(cm2・秒)であってもよい。
【0073】
膜1は、多孔膜であってもよく、無孔膜であってもよい。膜1が多孔膜である場合、膜1は、通気膜として機能しうる。
【0074】
膜1として、樹脂又は金属から構成される織布、不織布、メッシュ又はネット、あるいは樹脂多孔質膜を使用できる。例えば、膜1は、樹脂多孔質膜と、通気性を有する補強層とを積層した構造を有していてもよい。補強層により、膜1の強度を向上できる。樹脂多孔質膜は、例えば、公知の延伸法、又は抽出法により製造できるフッ素樹脂多孔体、及びポリオレフィン多孔体である。フッ素樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTEF)、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体である。ポリオレフィンを構成するモノマーは、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチルペンテン-1,1ブテンであり、これらのモノマーのホモポリマー又はコポリマーであるポリオレフィンを膜1に使用できる。ポリアクリロニトリル、ナイロン、又はポリ乳酸を用いたナノファイバーフィルム多孔体を膜1に使用してもよい。防爆部材10に内圧調整機能を付与する場合には、小面積で通気性を確保でき、筐体70の内部72への異物の侵入を防ぐ能力が高いPTFE多孔体を膜1に使用することが好ましい。PTFE多孔体の平均孔径は、好ましくは0.01μm以上10μm以下である。補強層は、例えば、樹脂又は金属から構成される織布、不織布、メッシュ、ネット、スポンジ、フォーム、及び多孔体である。樹脂多孔質膜と補強層とは、接着剤ラミネート、熱ラミネート、加熱溶着、超音波溶着、接着剤による接着等の手法により積層できる。
【0075】
膜1には、撥液処理が施されていてもよい。撥液処理は、表面張力の小さな物質を含む撥液剤を膜1に塗布し、塗布により形成された塗布膜を乾燥させることで実施できる。撥液剤は、例えば、パーフルオロアルキル基を有する高分子を上記物質として含む。撥液剤の塗布は、例えば、エアスプレー法、静電スプレー法、ディップコート法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンフローコート法、含浸法等により実施できる。
【0076】
膜1の厚さは、1~1000μm、好ましくは3~600μmである。
【0077】
粘接着剤層2の厚さは、3~300μm、好ましくは5~150μm、さらに好ましくは10~100μmである。このような構造によれば、粘接着剤層2が被着体の表面形状に追従して大きい粘接着面積を提供する働きと、粘接着剤層2が三次元的構造変化することによるウネリ構造形成を助長する働きとを発現することができる。
【0078】
図1A~1Bに示すように、防爆部材10は、粘接着剤層2の第二面2bに接合された剥離ライナー5を備えていてもよい。このような構造であることにより、防爆部材10を筐体70へ固定するまでの間、粘接着剤層2の粘接着力を保護することができる。剥離ライナー5は、該粘接着剤層2を利用する際に剥がされる。剥離ライナー5は、必要に応じ
て設置されるものであり、あってもなくてもよい。
【0079】
[剥離ライナー]
剥離ライナー5は、両面が離型面となっているものであってもよく、一方の面(片面)のみが離型面となっているものであってもよい。
【0080】
剥離ライナー5としては、公知又は慣用の剥離紙等を使用できる。具体的には、剥離ライナー5としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤により表面処理されたプラスチックフィルム又は紙等の剥離剤層を有する基材;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系ポリマーからなる低接着性基材;オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)等の無極性ポリマーからなる低接着性基材等を使用できる。剥離剤層を有する基材では、剥離剤層表面が離型面であり、低接着性基材では、低接着性基材の表面が離型面である。剥離ライナー5は、公知又は慣用の方法により形成することができる。また、剥離ライナー5の厚さ等は特に制限されない。
【0081】
図1A~1Bに示す例では、防爆部材10は円盤形状を有している。しかし、防爆部材10の形状は、
図1A~1Bに示す例に限られない。防爆部材10の形状は、例えば、矩形状であってもよく、多角形状であってもよい。
【0082】
なお、防爆部材10が固定される筐体70は、例えば、樹脂、金属、又はこれらの複合材料により構成されうる。筐体70は、金属により構成されていてもよい。金属として、例えば、ステンレス、アルミニウム、鉄が挙げられる。筐体70は、樹脂により構成されていてもよい。樹脂として、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)が挙げられる。
【0083】
<変形例1>
第1実施形態の防爆部材の変形例1を
図3A~3Bに示す。
図3A~3Bに示す防爆部材20は、粘接着剤層2が、基材22と粘接着剤部21とを含む片面粘接着テープであること以外は、上述した防爆部材10と同一の構成を有する。そのため、以下では、防爆部材20について、防爆部材10と同じ要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0084】
図4は、防爆部材20が筐体70の開口71を覆う状態で筐体70に対して固定された状態の一例を示す断面図である。すなわち、
図4に示す防爆部材20は、配置Pの状態にある。
【0085】
変形例1では、粘接着剤層2の第一面2aに相当する基材22の第一面22aが、膜1の周縁部11に沿うように膜1に接続されている。
図4に示すように、粘接着剤層2の第二面2bに相当する粘接着剤部21の第二面21bは、配置Pにおいて開口71を囲むように筐体70に対して固定される。
【0086】
粘接着剤層2が片面粘接着テープである場合、粘接着剤層2は、粘接着剤部21の第一面21a及び粘接着剤部21の第二面21bからなる群から選択される少なくとも1つにおいて、熱応答性を有していてもよい。例えば、粘接着剤部21の第一面21aが熱応答性を有する場合、筐体70の内部72の温度上昇に伴い筐体70の温度が上昇すると、粘接着剤部21の第一面21aにおいて粘接着力の低下が生じることで、防爆部材20の膜1が被着体から自動的に脱離することが可能となる。例えば、粘接着剤部21の第二面21bが熱応答性を有する場合、筐体70の内部72の温度上昇に伴い筐体70の温度が上
昇すると、第二面21bにおいて粘接着力の低下が生じることで、防爆部材20の膜1が被着体から自動的に脱離することが可能となる。
【0087】
防爆部材20では、粘接着剤部21が熱発泡剤を含有していてもよい。熱発泡剤によって、粘接着剤部21に熱応答性が付与されていてもよい。
【0088】
基材22は、片面粘接着テープの支持体として用いられうる。基材22としては、例えば、プラスチックのフィルム又はシート等のプラスチック系基材、不織布、金属箔、紙、布、ゴムシート等のゴム系基材、発泡シート等の発泡体、これらの積層体(特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体、プラスチックフィルム同士の積層体等)等の薄葉体を使用できる。基材22として、特にプラスチックのフィルム又はシート等のプラスチック系基材を好適に使用できる。
【0089】
プラスチック系基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステルフィルム、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα-オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂、ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂、ポリイミド(PI)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム、フッ素フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム等が挙げられる。これらの素材は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0090】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとしては、東レ社製のルミラー、帝人デュポンフィルム社製のテイジンテトロンフィルム、メリネックス、三菱樹脂社製のダイアホイル等が使用できる。ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムとしては、帝人デュポンフィルム社製のテオネックス等が使用できる。ポリイミド(PI)フィルムとしては、東レデュポン社製のカプトン、カネカ社製のアピカル、宇部興産社製のユーピレックス等が使用できる。ポリプロピレン(PP)フィルムとしては、東レ社製のトレファン、サン・トックス社製のサントックス、東洋紡績社製のパイレンフィルム等が使用できる。ポリ塩化ビニル(PVC)フィルムとしては、三菱樹脂社製のアルトロン、アキレス社製のアキレスタイプC+等が使用できる。ポリエチレン(PE)フィルムとしては、大倉工業社製のNSO等が使用できる。ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルムとしては、東レ社製のトレリナ等が使用できる。フッ素フィルムとしては、東レ社製のトヨフロン、デュポン社製のテドラーフィルム等が使用できる。なお、基材22として、プラスチック系基材が用いられている場合は、延伸処理等により伸び率等の変形性を制御していてもよい。
【0091】
不織布としては、耐熱性を有する天然繊維による不織布を好適に使用でき、なかでもマニラ麻を含む不織布を好適に使用できる。合成樹脂不織布としては、例えば、ポリプロピレン樹脂不織布、ポリエチレン樹脂不織布、エステル系樹脂不織布等が挙げられる。
【0092】
金属箔としては、特に限定されず、銅箔、ステンレス箔、アルミニウム箔等の一般的な金属箔の他、厚みを有する銀、鉄、ニッケルとクロムとの合金等、各種材質からなるものを使用できる。
【0093】
紙としては、特に限定されないが、一般に、和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等を使用できる。
【0094】
基材22の厚さは、強度、柔軟性、使用目的等に応じて適宜設定しうる。基材22の厚
さは、、例えば、1~1000μm、好ましくは1~500μm、さらに好ましくは3~300μm、特に好ましくは5~250μmであるが、これらに限定されない。基材22は、単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。
【0095】
基材22は、基材22の第一面22aを介して、接着剤(不図示)により膜1に貼り付けられていてもよい。接着剤としてば、例えば、上記粘着剤に使用した樹脂を基剤としたものを使用することができる。
【0096】
<変形例2>
第1実施形態の防爆部材の変形例2を
図5A~5Bに示す。
図5A~5Bに示す防爆部材30は、粘接着剤層2が、基材22と、基材22を挟持する第一粘接着剤部211及び第二粘接着剤部212とを含む両面粘接着テープであること以外は、上述した防爆部材10と同一の構成を有する。そのため、以下では、防爆部材30について、防爆部材10と同じ要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0097】
図6は、防爆部材30が筐体70の開口71を覆う状態で筐体70に対して固定された状態の一例を示す断面図である。すなわち、
図6に示す防爆部材30は、配置Pの状態にある。
【0098】
変形例2では、粘接着剤層2の第一面2aに相当する第二粘接着剤部212の第一面212aが、膜1の周縁部11に沿うように膜1に接続されている。
図6に示すように、粘接着剤部21の第一面21aに相当する第一粘接着剤部211の第二面211bは、配置Pにおいて開口71を囲むように筐体70に対して固定される。
【0099】
図5A~5Bに示す例では、粘接着剤層2は、基材22と、基材22を挟持する第一粘接着剤部211及び第二粘接着剤部212とを含む両面粘接着テープである。粘接着剤層2は、第二粘接着剤212を介して膜1に接合されている。
【0100】
粘接着剤層2が両面粘接着テープである場合、粘接着剤層2は、第一粘接着剤部211の第一面211a、第一粘接着剤部211の第二面211b、第二粘接着剤部212の第一面212a、及び第二粘接着剤部212の第二面212bからなる群から選択される少なくとも1つにおいて、熱応答性を有していてもよい。例えば、第一粘接着剤部211の第二面211bが熱応答性を有する場合、筐体70の内部72の温度上昇に伴い筐体70の温度が上昇すると、第一粘接着剤部211の第二面211bにおいて粘接着力の低下が生じることで、防爆部材30の膜1が被着体から自動的に脱離することが可能となる。例えば、第二粘接着剤部212の第二面212bが熱応答性を有する場合、筐体70の内部72の温度上昇に伴い筐体70の温度が上昇すると、第二粘接着剤部212の第二面212bにおいて粘接着力の低下が生じることで、防爆部材30の膜1が被着体から自動的に脱離することが可能となる。
【0101】
防爆部材30では、第一粘接着剤部211及び第二粘接着剤部212からなる群から選択される少なくとも1つが熱発泡剤を含有していてもよい。熱発泡剤によって、第一粘接着剤部211及び第二粘接着剤部212からなる群から選択される少なくとも1つに熱応答性が付与されていてもよい。
【0102】
基材22を構成する材料として、変形例1で説明した材料と同じものを使用できる。
【0103】
[防爆部材の製造方法]
上述した防爆部材10、20、及び30は、例えば、以下の方法により作製することができる。
【0104】
防爆部材10は、例えば、必要に応じて溶媒を用いて粘着剤及び熱発泡剤としての熱膨張性微小球を含むコーティング液を調製し、コーティング液を膜1の上に塗布し、乾燥させることにより作製できる。防爆部材10は、コーティング液を剥離紙の上に塗布し、粘接着剤層2を形成した後、粘接着剤層2を膜1に転写することによっても作製できる。
【0105】
防爆部材20は、例えば、上記コーティング液を基材22の上に塗布し、基材22と粘接着剤部21とを含む片面粘接着テープを形成した後、粘着剤又は接着剤により片面粘接着テープを膜1に接合することにより作製できる。
【0106】
防爆部材30は、例えば、上記コーティング液を基材22の上下に塗布し、基材22と、基材22を挟持する第一粘接着剤部211及び第二粘接着剤部212と、を含む両面粘接着テープを形成した後、第二粘接着剤部212を介して両面粘接着テープを膜1に接合することにより作製できる。
【0107】
なお、膜1は、例えば、以下の方法により作製することができる。以下に記載の方法は、膜1がPTE多孔質膜である場合の例である。
【0108】
(PTFE多孔質膜の作製)
まず、PTFE微粉末に液状潤滑剤を加えた混合物を押出法および圧延法の少なくとも1つの方法により未焼成状態で所定方向に延びるシート状に成形してシート状成形体を得る。
【0109】
PTFE微粉末は、特に制限されるものではなく、種々の市販のものを使用できる。例えば、ポリフロンF104(ダイキン工業社製)、フルオンCD-123(旭硝子社製)、テフロン(登録商標)6J(三井・デュポンフロロケミカル社製)等が挙げられる。
【0110】
液状潤滑剤は、PTFE微粉末を濡らすことができ、蒸発、抽出等の方法によって除去できるものであれば特に制限されない。例えば、炭化水素類の流動パラフィン、ナフサ、トルエン、キシレンが挙げられ、他にもアルコール類、ケトン類、エステル類、フッ素系溶剤が挙げられる。また、これらの2種類以上の混合物を使用してもよい。潤滑剤の添加量は、シート状成形体の成形方法によって異なるが、通常、PTFE微粉末100重量部に対して約5~50重量部である。
【0111】
PTFE微粉末に液状潤滑剤を加えた混合物を所定方向に延びるシート状に成形する方法の一例としては、液状潤滑剤を加えたPTFE微粉末をシリンダーで圧縮し、ラム押出機で押し出してシート状に成形した後に、ロール対で適当な厚み(通常、50~500μm)に圧延する。
【0112】
その後、液状潤滑剤を含んだシート状成形体を、液状潤滑剤が蒸発しない温度、通常は常温でシート状成形体の長手方向と直交する幅方向に予備延伸する。このときの延伸倍率は、1.5~20倍が好ましい。なお、予備延伸は、液状潤滑剤で満たされた浴槽中で行ってもよい。
【0113】
予備延伸後は、加熱法または抽出法によりシート状成形体から液状潤滑剤を除去してシート状成形体を乾燥させる。
【0114】
次に、液状潤滑剤が除去されたシート状成形体を、PTFEの融点以上の温度で長手方向(前記の所定方向)に延伸する。このときの延伸倍率は、40~200倍が好ましい。40倍よりも低い倍率では、最終的に得られるPTFE多孔質膜中に見られるフィブリル
長さが短くなり、平均孔径が小さくなって高い通気性が得られ難くなるからである。また、倍率が高くなりすぎると、シート状成形体の破断が起こり、PTFE多孔質膜を得ることができない。より好ましい延伸倍率は60~160倍である。
【0115】
その後、長手方向に延伸されたシート状成形体を、通常40~400℃で幅方向に延伸する。このときの延伸倍率は、3~40倍が好ましい。また、延伸時の温度は、高通気性を得るため、および延伸時の破断を防ぐために、100~300℃がより好ましい。
【0116】
工業的には、工程数が少ない方が好ましいが、上記の長手方向および幅方向への延伸を複数回に分けて行ってもよい。また、最初に長手方向に延伸すれば、その後の長手方向または幅方向への延伸順序や組み合わせは特に制限されない。以上の工程により、PTFE多孔質膜が得られる。
【0117】
<第2実施形態>
第2実施形態の防爆部材の一例を
図7A~7Bに示す。
図7A~7Bに示す防爆部材40は、筐体70の開口71を覆う状態で筐体70に対して固定する配置Pに適した防爆部材である。防爆部材40では、粘接着剤層2の第一面2aが、膜1の周縁部11において膜1に接続されたベース部材3に接続されている。以下では、防爆部材40について、防爆部材10と同じ要素には同じ符号を付し、説明を省略することがある。
【0118】
図8は、防爆部材40が筐体70の開口71を覆う状態で筐体70に対して固定された状態の一例を示す断面図である。すなわち、
図8に示す防爆部材40は、配置Pの状態にある。
【0119】
粘接着剤層2は、加熱により粘接着力が低下する熱応答性を有する。このような構造であることにより、筐体70の内部72の温度上昇に伴い筐体70の温度が上昇すると、粘接着剤層2の粘接着力の低下が生じ、防爆部材40の膜1が被着体から自動的に脱離することが可能となる。防爆部材40の膜1が脱離することにより、例えば、筐体70の内部72で発生したガスを開口71から排出させることができる。
【0120】
防爆部材40は、ベース部材3を備える。
図7A~7Bに示すように、ベース部材3の中央部には貫通孔31が形成されている。膜1は、貫通孔31を被覆するようにベース部材3に配置されている。
【0121】
防爆部材40は、膜1を保護するカバー部材4をさらに備える。カバー部材4は、膜1を覆うようにベース部材3に配置されている。カバー部材4は、膜1の表面に直交し、かつ、配置Pにおいて筐体70の外部73から内部72に向かう方向に沿って観察したときに、膜1の表面を覆い、かつ膜1の表面から離間すると共に、ベース部材3に接続されている。カバー部材4により、外部73から飛来した異物による膜1の破損が回避される。
【0122】
図7A~7Bに示すように、カバー部材4の側面には、複数の開口部41が設けられていてもよい。このような構造であることにより、カバー部材4の内部72に侵入した異物を開口部41から排出できる。
【0123】
膜1はベース部材3に接合されていてもよい。ベース部材3への膜1の接合は、熱溶着法、超音波溶着法、レーザー溶着法等の各種の溶着法により実施できる。膜1をベース部材3とともにインサート成形することで、ベース部材3に膜1を配置してもよい。
【0124】
ベース部材3及びカバー部材4は、例えば、樹脂から構成される。樹脂から構成されるこれらの部材は、成形性が良好である。これらの部材は、射出成形、圧縮成形、粉末成形
等の公知の成形法により形成できる。量産性を向上できることから、ベース部材3及びカバー部材4は、射出成形により成形されることが好ましい。ベース部材3及びカバー部材4を構成する樹脂は、典型的には、熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂は、例えば、ナイロン等のポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンエーテル(PPE)である。ベース部材3及びカバー部材4を構成する樹脂は、カーボンブラック、チタンホワイト等の顔料類;ガラス粒子、ガラス繊維等の補強用フィラー類;及び撥水材といった添加剤を含んでいてもよい。上記各部材の表面には、撥液処理がなされていてもよい。撥液処理は、膜1の撥液処理法として上述した方法、電着塗装法、あるいはプラズマ重合による被膜形成等により実施できる。
【0125】
カバー部材4は、ベース部材3の周縁部においてベース部材3と接合されていてもよい。ベース部材3へのカバー部材4の接合は、熱溶着法、超音波溶着法、レーザー溶着法等の各種の溶着法により実施できる。
【0126】
防爆部材40の粘接着剤層2として、第1実施形態の変形例1及び変形例2で説明した構造を有する粘接着剤層2を使用してもよい。すなわち、防爆部材40の粘接着剤層2は、a)単層であってもよく、b)基材と粘接着剤部とを含む片面粘接着テープであってもよく、c)基材と、基材を挟持する第一粘接着剤部及び第二粘接着剤部とを含む両面粘接着テープ、であってもよい。
【0127】
図7A~7Bに示す例では、防爆部材40は略円盤形状を有している。しかし、防爆部材40の形状は、
図7A~7Bに示す例に限られない。防爆部材40の形状は、例えば、矩形状であってもよく、多角形状であってもよい。
【0128】
上述した各実施形態に関する説明は、技術的に矛盾しない限り、相互に適用されうる。さらに、上述した各実施形態及び各変形例は、技術的に矛盾しない限り、相互に組み合わされてもよい。
【実施例0129】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0130】
本実施例で作製した膜について、膜の厚さ方向の通気度は、上述の方法により評価した。本実施例で作製した防爆部材について、初期の粘接着力F0及びN℃における剥離時間TNは、上述の方法により評価した。
【0131】
[膜の作製]
(膜a)
PTFE微粉末(ダイキン工業社製、ポリフロンF-104)100重量部に対して、液状潤滑剤(ジャパンエナジー社製、n-ドデカン)20重量部を均一に混合し、シリンダーに圧縮した後にラム押出機で押し出し、所定方向に延びるシート状成形体を得た。このシート状成形体を液状潤滑剤を含んだ状態で金属製圧延ロール間に通し、厚さ300μmに圧延した。次いで、シート状成形体を150℃に加熱することにより液状潤滑剤を除去し、シート状成形体を乾燥させた。このシート状成形体を、370℃で長手方向に4倍の倍率で延伸して、PTFE多孔質膜を得た。このようにして得られたPTFE多孔質膜を膜aとした。膜aの厚さは250μmであった。膜aの厚さ方向の通気度は、0.2cm3/(cm2・秒)であった。
【0132】
(膜b)
長手方向の延伸倍率を2倍にしたこと以外は、膜aと同様の方法によりPTFE多孔質膜を得た。このようにして得られたPTFE多孔質膜を膜bとした。膜bの厚さは280μmであった。膜bの厚さ方向の通気度は、0.001cm3/(cm2・秒)であった。
【0133】
(膜c)
長手方向の延伸倍率を20倍にしたこと以外は、膜aと同様の方法によりPTFE多孔質膜を得た。このようにして得られたPTFE多孔質膜を膜cとした。膜cの厚さは200μmであった。膜cの厚さ方向の通気度は、15.4cm3/(cm2・秒)であった。
【0134】
(膜d)
PETフィルム(東レ社製、ルミラー ♯38-S10)を膜dとした。膜dの厚さは38μmであった。膜dの厚さ方向の通気度は、0cm3/(cm2・秒)であった。
【0135】
(膜e)
膜cを挟むように補強層を200℃でラミネートすることにより、補強層、膜c、及び補強層からなる積層体を作製した。このようにして得られた積層体を膜eとした。補強層として、不織布(東レ社製、アクスター H1020-8T)を使用した。補強層の厚さは100μmであった。膜eの厚さは400μmであった。膜eの厚さ方向の通気度は、10.8cm3/(cm2・秒)であった。
【0136】
[粘着剤層の作製]
(片面粘着テープA)
アクリル系共重合体(アクリル酸エチル:アクリル酸2エチルヘキシル:ヒドロキシエチルアクリレート:メタクリル酸メチル=70重量部:30重量部:5重量部:6重量部)100重量部に、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL)2重量部、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(ヤスハラケミカル社製、YSポリスターS145、水酸基価100mgKOH/g、酸価2mgKOH/g)30重量部に、熱膨張性微小球(松本油脂製薬社製、マツモトマイクロスフェアー:F-30)35重量部を配合してなるトルエン溶液を調整した。基材としてのPETフィルム(東レ社製、ルミラー ♯38-S10)上に乾燥後の厚みが35μmとなるようにトルエン溶液を塗布し、基材と粘着剤部とを含む粘着剤層(片面粘着テープ)を作製した。このようにして得られた片面粘着テープを片面粘着テープAとした。基材の厚さは38μmであり、粘着剤部の厚さは35μmであった。
【0137】
(片面粘着テープB1)
熱膨張性微小球(松本油脂製薬社製、マツモトマイクロスフェアー:F-50)を使用したこと以外は、片面粘着テープAと同様の方法により粘着剤層(片面粘着テープ)を得た。このようにして得られた片面粘着テープを片面粘着テープB1とした。基材の厚さは38μmであり、粘着剤部の厚さは35μmであった。
【0138】
(片面粘着テープB2)
熱膨張性微小球(松本油脂製薬社製、マツモトマイクロスフェアー:F-50)を使用したことおよび、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、コロネートL)を1重量部としたこと以外は、片面粘着テープAと同様の方法により粘着剤層(片面粘着テープ)を得た。このようにして得られた片面粘着テープを片面粘着テープB2とした。基材の厚さは38μmであり、粘着剤部の厚さは35μmであった。
【0139】
(片面粘着テープC)
熱膨張性微小球を松本油脂製薬社製、マツモトマイクロスフェアー:FN-100SS
)を使用したこと以外は、片面粘着テープAと同様の方法により粘着剤層(片面粘着テープ)を得た。このようにして得られた片面粘着テープを片面粘着テープCとした。基材の厚さは38μmであり、粘着剤部の厚さは35μmであった。
【0140】
[実施例1]
膜aに基材が接するように、膜aの一方の主面に片面粘着テープAを接合した。このようにして得られた部材を実施例1の防爆部材とした。接合には、両面粘着テープ(日東電工社製、No.5000NS)を使用した。実施例1の防爆部材について、粘着剤層の初期の粘接着力F0及び粘着剤層のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、実施例1では、剥離試験において、アルミニウム試験板に代えてステンレス試験板(SUS304、表面仕上げBA、厚さ0.5mm、幅40mm、長さ125mm)を使用した。引きはがし粘着力試験において、アルミニウム試験板に代えてステンレス試験板(SUS304、表面仕上げBA、厚さ0.5mm、幅40mm、長さ125mm)を使用した。結果を表1に示す。
【0141】
[実施例2]
実施例2の防爆部材として、実施例1の防爆部材と同じものを使用した。実施例2の防爆部材について、粘着剤層の初期の粘接着力F0及び粘着剤層のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、実施例2では、剥離試験において、上述の方法とおり、アルミニウム試験板(厚さ0.5mm、幅40mm、長さ125mm)を使用した。引きはがし粘着力試験において、上述の方法とおり、アルミニウム試験板(厚さ0.5mm、幅40mm、長さ125mm)を使用した。結果を表1に示す。
【0142】
[実施例3]
実施例3の防爆部材として、実施例1の防爆部材と同じものを使用した。実施例3の防爆部材について、粘着層の初期の粘接着力F0及び粘着剤層のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、実施例3では、剥離試験において、アルミニウム試験板に代えて鉄試験板(厚さ0.5mm、幅40mm、長さ125mm)を使用した。引きはがし粘着力試験において、アルミニウム試験板に代えて鉄試験板(厚さ0.5mm、幅40mm、長さ125mm)を使用した。結果を表1に示す。
【0143】
[実施例4]
膜aに基材が接するように、膜aの一方の主面に片面粘着テープB1を接合した。このようにして得られた部材を実施例4の防爆部材とした。接合には、両面粘着テープ(日東電工社製、No.5000NS)を使用した。実施例4の防爆部材について、粘着剤層の初期の粘接着力F0及び粘着剤層のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、実施例4では、剥離試験及び引きはがし粘着力試験において、実施例1と同様に、アルミニウム試験板に代えてステンレス試験板を使用した。結果を表1に示す。
【0144】
[実施例5]
実施例5の防爆部材として、実施例4の防爆部材と同じものを使用した。実施例5の防爆部材について、粘着剤層の初期の粘接着力F0及び粘着剤層のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、実施例5では、剥離試験及び引きはがし粘着力試験において、実施例2と同様に、アルミニウム試験板を使用した。結果を表1に示す。
【0145】
[実施例6]
実施例6の防爆部材として、実施例4の防爆部材と同じものを使用した。実施例6の防爆部材について、粘着剤層の初期の粘接着力F0及び粘着剤層のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、実施例6では、剥離試験及び引きはがし粘着力試験において、実施例3と同様に、アルミニウム試験板に代えて鉄試験板を使用した。結果を表1に示す。
【0146】
[実施例7]
膜aに基材が接するように、膜aの一方の主面に片面粘着テープB2を接合した。このようにして得られた部材を実施例7の防爆部材とした。接合には、両面粘着テープ(日東電工社製、No.5000NS)を使用した。実施例7の防爆部材について、粘着剤層の初期の粘接着力F0及び粘着剤層のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、実施例7では、剥離試験及び引きはがし粘着力試験において、実施例2と同様に、アルミニウム試験板を使用した。結果を表1に示す。
【0147】
[実施例8]
膜aに基材が接するように、膜aの一方の主面に片面粘着テープCを接合した。このようにして得られた部材を実施例8の防爆部材とした。接合には、両面粘着テープ(日東電工社製、No.5000NS)を使用した。実施例8の防爆部材について、粘着剤層の初期の粘接着力F0及び粘着剤層のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、実施例8では、剥離試験及び引きはがし粘着力試験において、実施例1と同様に、アルミニウム試験板に代えてステンレス試験板を使用した。結果を表1に示す。
【0148】
[実施例9]
実施例9の防爆部材として、実施例8の防爆部材と同じものを使用した。実施例9の防爆部材について、粘着剤層の初期の粘接着力F0及び粘着剤層のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、実施例9では、剥離試験及び引きはがし粘着力試験において、実施例2と同様に、アルミニウム試験板を使用した。結果を表1に示す。
【0149】
[実施例10]
実施例10の防爆部材として、実施例8の防爆部材と同じものを使用した。実施例10の防爆部材について、粘着剤層の初期の粘接着力F0及び粘着剤層のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、実施例10では、剥離試験及び引きはがし粘着力試験において、実施例3と同様に、アルミニウム試験板に代えて鉄試験板を使用した。結果を表1に示す。
【0150】
[実施例11]
膜bに基材が接するように、膜bの一方の主面に片面粘着テープAを接合した。このようにして得られた部材を実施例11の防爆部材とした。接合には、両面粘着テープ(日東電工社製、No.5000NS)を使用した。実施例11の防爆部材について、粘着剤層の初期の粘接着力F0及び粘着剤層のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、実施例11では、剥離試験及び引きはがし粘着力試験において、実施例1と同様に、アルミニウム試験板に代えてステンレス試験板を使用した。結果を表1に示す。
【0151】
[実施例12]
膜cに基材が接するように、膜cの一方の主面に片面粘着テープAを接合した。このようにして得られた部材を実施例12の防爆部材とした。接合には、両面粘着テープ(日東電工社製、No.5000NS)を使用した。実施例12の防爆部材について、粘着剤層の初期の粘接着力F0及び粘着剤層のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、実施例12では、剥離試験及び引きはがし粘着力試験において、実施例1と同様に、アルミニウム試験板に代えてステンレス試験板を使用した。結果を表1に示す。
【0152】
[実施例13]
膜dに基材が接するように、膜dの一方の主面に片面粘着テープAを接合した。このようにして得られた部材を実施例13の防爆部材とした。接合には、両面粘着テープ(日東電工社製、No.5000NS)を使用した。実施例13の防爆部材について、粘着剤層
の初期の粘接着力F0及び粘着剤層のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、実施例13では、剥離試験及び引きはがし粘着力試験において、実施例1と同様に、アルミニウム試験板に代えてステンレス試験板を使用した。結果を表1に示す。
【0153】
[実施例14]
膜eに基材が接するように、膜eの一方の主面に片面粘着テープAを接合した。このようにして得られた部材を実施例14の防爆部材とした。接合には、両面粘着テープ(日東電工社製、No.5000NS)を使用した。実施例14の防爆部材について、粘着剤層の初期の粘接着力F0及び粘着剤層のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、実施例14では、剥離試験及び引きはがし粘着力試験において、実施例1と同様に、アルミニウム試験板に代えてステンレス試験板を使用した。結果を表1に示す。
【0154】
[比較例1]
膜aの一方の主面に両面粘着テープ(日東電工社製、No.5000NS)を貼り付けることにより得た部材を比較例1の防爆部材とした。すなわち、比較例1では、片面粘着テープを使用せず、両面粘着テープによって試験板に膜aを直接接合した。比較例1の防爆部材について、両面粘着テープによる粘着剤部の初期の粘接着力F0及び粘着剤部のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、比較例1では、剥離試験及び引きはがし粘着力試験において、実施例1と同様に、アルミニウム試験板に代えてステンレス試験板を使用した。結果を表1に示す。
【0155】
[比較例2]
比較例2の防爆部材として、比較例1の防爆部材と同じものを使用した。比較例2の防爆部材について、粘着剤部の初期の粘接着力F0及び粘着剤部のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、比較例2では、剥離試験及び引きはがし粘着力試験において、実施例2と同様に、アルミニウム試験板を使用した。結果を表1に示す。
【0156】
[比較例3]
比較例3の防爆部材として、比較例1の防爆部材と同じものを使用した。比較例3の防爆部材について、粘着剤部の初期の粘接着力F0及び粘着剤部のN℃における剥離時間TNを測定した。ただし、比較例3では、剥離試験及び引きはがし粘着力試験において、実施例3と同様に、アルミニウム試験板に代えて鉄試験板を使用した。結果を表1に示す。
【0157】
【0158】
実施例の剥離時間TNと比較例の剥離時間TNとの比較から分かるように、実施例1~14の防爆部材は、比較例1~3の防爆部材よりも優れた熱応答性を示した。具体的には、比較例1~3の防爆部材では、160℃における剥離時間T60が120秒より大きかったのに対して、実施例1~13の防爆部材では、160℃における剥離時間T60が60秒以下であった。表1に示す結果から、実施例1~13の防爆部材では、熱応答性により、粘
着剤層は、160℃の雰囲気下において粘接着力を実質的に喪失していたことが理解される。
【0159】
例えば、実施例1~3の比較から分かるように、粘着層のステンレス試験板に対する剥離時間TN及び鉄試験板に対する剥離時間TNは、アルミニウム試験板に対する剥離時間TNと同程度であった。例えば、粘着層のアルミニウム試験板に対する剥離時間T160が9秒であったのに対して(実施例2)、ステンレス試験板に対する剥離時間T160は10秒であり(実施例1)、鉄試験板に対する剥離時間T160は10秒であった(実施例3)。
【0160】
一方で、例えば、実施例1~3の比較から分かるように、粘着剤層のステンレス試験板に対する粘接着力F0及び鉄試験板に対する粘接着力F0は、アルミニウム試験板に対する粘接着力F0よりも大きかった。例えば、粘着層のアルミニウム試験板に対する初期の粘接着力F0が1.0N/20mmであったのに対して(実施例2)、ステンレス試験板に対する粘接着力F0は1.3N/20mmであり(実施例1)、鉄試験板に対する粘接着力F0は1.2N/20mmであった(実施例3)。