(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014826
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】巨視的医療撮像装置のためのキャリブレーションユニット、巨視的医療撮像キャリブレーションシステム及びキャリブレーションユニットの使用
(51)【国際特許分類】
A61B 1/24 20060101AFI20240125BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240125BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20240125BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61B1/24
G01N21/64 F
A61B1/00 630
A61B1/00 650
A61B1/00 511
A61C19/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023118277
(22)【出願日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】22186088
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ヨナス ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ライムンド ティヒー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー グロッセ-ホーンブリンク
(72)【発明者】
【氏名】アルバート デ ヨセリン デ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】エリック ファン デン フーヴェル
【テーマコード(参考)】
2G043
4C052
4C161
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043DA09
2G043EA01
2G043FA01
2G043KA02
2G043NA13
4C052NN03
4C052NN04
4C052NN05
4C052NN15
4C052NN16
4C161AA08
4C161CC06
4C161GG11
4C161JJ11
4C161LL01
4C161QQ04
4C161QQ06
4C161WW17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】巨視的医療撮像装置のキャリブレーションのためのキャリブレーションユニットを提供する。
【解決手段】キャリブレーションユニット28は、撮像装置に向けて光学的に向けられるように構成された前面42を有する本体40を備える。さらに、第1のタイプの蛍光材料54が本体の第1のセクター48に配置される。さらに、第2のタイプの蛍光材料が本体の第2のセクター56に配置される。第2のタイプの蛍光材料に対して代替的に又は追加的に、不透明非蛍光材料68が本体の第3のセクター66に配置される。さらに、巨視的歯科撮像キャリブレーションシステムが示される。さらに、巨視的歯科撮像装置のキャリブレーションに対する、上述のようなキャリブレーションユニットの使用が説明される。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巨視的医療撮像装置(14)のキャリブレーション、特に巨視的歯科撮像装置(14)のキャリブレーションのためのキャリブレーションユニット(28)であって、前記撮像装置(14)に光学的に向けられるように構成された前面(42)を有する本体(40)を備え、
第1のタイプの蛍光材料(54)が前記本体(40)の第1のセクター(48)に配置され、また
a. 第2のタイプの蛍光材料(58)が前記本体(40)の第2のセクター(56)に配置され、前記第1のセクター(48)と前記第2のセクター(56)とは互いに別個のものであり、前記第1のタイプの前記蛍光材料(54)は前記第2のタイプの前記蛍光材料(58)とは異なる、及び/又は
b. 不透明非蛍光材料(68)が前記本体(40)の第3のセクター(66)に配置され、前記第3のセクター(66)は、前記第1のセクター(48)及び前記第2のセクター(56)の各々とは別個のものである、キャリブレーションユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のキャリブレーションユニット(28)において、透光性材料(64)が前記本体の(40)第4のセクター(60)に配置され、前記第4のセクター(60)は前記第1のセクター(48)、前記第2のセクター(56)、及び前記第3のセクター(66)の各々とは別個のものである、キャリブレーションユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のキャリブレーションユニット(28)において、前記第1のセクター(48)、前記第2のセクター(56)及び前記第3のセクター(66)のうちの少なくとも1つが、前記第4のセクター(60)によって少なくとも部分的に囲まれる、キャリブレーションユニット。
【請求項4】
請求項1~3のうち何れか1項に記載のキャリブレーションユニット(28)において、前記本体(40)は少なくとも1つの補助セクター(70)を備え、前記第1のタイプの前記蛍光材料(54)、前記第2のタイプの前記蛍光材料(58)又は前記不透明非蛍光材料(68)が前記補助セクター(70)内に配置される、キャリブレーションユニット。
【請求項5】
請求項1~4のうち何れか1項に記載のキャリブレーションユニット(28)において、前記第1のセクター(48)、前記第2のセクター(56)、前記第3のセクター(66)、前記第4のセクター(60)、及び前記補助セクター(70)のうちの少なくとも1つが、前記本体(40)の層として形成され、前記層は前記前面(42)に対して平行に延在する、キャリブレーションユニット。
【請求項6】
請求項5に記載のキャリブレーションユニット(28)において、前記層は、前記前面(42)から距離を置いて配置される、キャリブレーションユニット。
【請求項7】
請求項1~4のうち何れか1項に記載のキャリブレーションユニット(28)において、前記第1のセクター(48)、前記第2のセクター(56)、前記第3のセクター(66)、及び前記補助セクター(70)のうちの少なくとも1つが、円柱形状、円錐形状、多面体形状、又は楕円体形状である、キャリブレーションユニット。
【請求項8】
請求項7に記載のキャリブレーションユニット(28)において、前記前面(42)は前記第1のセクター(48)、前記第2のセクター(56)、前記第3のセクター(66)、及び前記補助セクター(70)のうちの少なくとも1つの端面と一致する、キャリブレーションユニット。
【請求項9】
請求項7に記載のキャリブレーションユニット(28)において、前記第1のセクター(48)、前記第2のセクター(56)、前記第3のセクター(66)及び前記補助セクター(70)のうちの少なくとも1つの前記前面(42)に向けられる端面は、前記前面(42)から距離(d)を置いて配置される、キャリブレーションユニット。
【請求項10】
請求項1~9のうち何れか1項に記載のキャリブレーションユニット(28)において、前記第1のタイプの前記蛍光材料は緑色蛍光材料である、キャリブレーションユニット。
【請求項11】
請求項1~10のうち何れか1項に記載のキャリブレーションユニット(28)であって、前記第2のタイプの前記蛍光材料は赤色の蛍光材料である、キャリブレーションユニット。
【請求項12】
請求項1~11のうち何れか1項に記載のキャリブレーションユニット(28)において、前記第1のセクター(48)、前記第2のセクター(56)、前記第3のセクター(66)、前記第4のセクター(60)及び前記補助セクター(70)のうちの少なくとも1つは、歯科修復材料(52)を備える、キャリブレーションユニット。
【請求項13】
少なくとも1つの撮像装置(14)と、請求項1~12のうち何れか1項に記載の少なくとも1つのキャリブレーションユニット(28)と、少なくとも1つの励起装置(18)とを備える、巨視的医療撮像キャリブレーションシステム(10)、特に巨視的歯科撮像キャリブレーションシステム(10)であって、
前記少なくとも1つの励起装置(18)は、前記第1のタイプの前記蛍光材料(54)の蛍光を励起するように構成され、
前記撮像装置(14)は、前記第1のタイプの前記蛍光材料(54)の励起放出を撮影するように構成される、
巨視的医療撮像キャリブレーションシステム。
【請求項14】
請求項13に記載の巨視的医療撮像キャリブレーション装置(10)において、前記撮像装置(14)は、口腔内カメラ、口腔外カメラ及び口腔内スキャナのうちの1つである、巨視的医療撮像キャリブレーション装置。
【請求項15】
巨視的医療撮像装置(14)のキャリブレーション、特に巨視的歯科撮像装置(14)のキャリブレーションのための、請求項1~12の何れか1項に記載のキャリブレーションユニット(28)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巨視的医療撮像装置のキャリブレーション(較正)、特に巨視的歯科撮像装置のキャリブレーションのためのキャリブレーションユニットを対象とする。
【0002】
本発明はさらに、巨視的医療撮像キャリブレーションシステム、特に巨視的歯科撮像キャリブレーションシステムに関する。
【0003】
本発明はさらに、上記のようなキャリブレーションユニットの使用をも対象とする。
【0004】
上述の撮像装置を巨視的と称したのは、微視的撮像装置又は単に顕微鏡に対する差異化として理解されたい。したがって、本発明は微視的撮像装置に関するものではない。
【背景技術】
【0005】
巨視的医療撮像装置、特に巨視的歯科撮像装置が知られている。このような装置は、人体又はその一部の画像を撮影するために使用される。画像の内容が分析される場合があり、そうすることによって、画像中の特定の疾患又は病原体が認識される場合がある。医療撮像装置が歯科撮像装置である場合には、特に人間の口腔又はその一部の画像を撮影するように適合化される。
【0006】
巨視的歯科撮像装置の文脈では、口内カメラ、口外カメラ、及びいわゆる口内スキャナが口腔又はその一部の画像を撮影するための撮像装置として使用される場合がある。
【0007】
このような撮像装置は口内環境の白色光画像を生成するために使用される場合がある。
【0008】
さらに、健全な歯だけでなく、ある種の歯科病原菌も蛍光性のものであることが知られている。この文脈では蛍光とは、光又はより一般的には電磁放射によって励起されたときに光又はより一般的には電磁放射を放出する材料の能力として理解される。このような材料は、励起光又は励起放射線を少なくとも部分的に吸収する。ほとんどの場合、放出された光又は放射線は、吸収された光又は放射線よりも長い波長を有する。この効果に基づいて口腔又はその一部の蛍光画像を撮ることもできる。
【0009】
どちらのタイプの画像も診断の補助に用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、特に高画質の蛍光画像を得ることができるように、巨視的歯科撮像装置をさらに改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、巨視的医療撮像装置、特に巨視的歯科撮像装置のキャリブレーションのためのキャリブレーションユニットによって解決される。前記キャリブレーションユニットは、前記撮像装置に光学的に向けられるように構成された前面を有する本体を備える。第1のタイプの蛍光材料が前記本体の第1のセクターに配置される。さらに、第2のタイプの蛍光材料が前記本体の第2のセクターに配置される。前記第1のセクターと前記第2のセクターとは互いに別個のものであり、前記第1のタイプの前記蛍光材料は前記第2のタイプの前記蛍光材料と異なる。前記第2のセクター及び前記第2のタイプの前記蛍光材料に加え又はその代わりに、不透明非蛍光材料が前記本体の第3のセクターに配置される。前記第3のセクターは、前記第1のセクター及び前記第2のセクターの各々とは別個のものである。なお、第1、第2及び第3という用語は、説明を容易にするだけのために使用されていることに留意されたい。これらの用語は、特定の数字の材料又はセクターを意味しない。セクターは、前記本体の体積部分として理解される。前記セクターはどのような形状でもよい。このようなキャリブレーションユニットを使用して、前記巨視的医療撮像装置、特に前記巨視的歯科撮像装置は、前記キャリブレーションユニットによって表されるグランドトゥルースに対してキャリブレーションされ得る。したがって、2つ以上の巨視的医療撮像装置又は2つ以上の巨視的歯科撮像装置が、同一又は類似のキャリブレーションユニットを用いてキャリブレーションされる場合、これらの撮像装置によって生成される画像の比較可能性が向上する。すなわち、ある撮像装置で撮影された画像を、他の撮像装置で撮影された画像と高い信頼性で比較することができる。また、巨視的医療撮像装置や巨視的歯科撮像装置は、時間が経過すれば1回より大きい回数のキャリブレーションが行われる場合があるため、キャリブレーションユニットを用いることで異なる時点で撮影された画像の比較可能性も向上する。つまり、キャリブレーションユニットを使用することで、撮影された画像が時間や装置間で比較可能になるという効果がある。さらに、キャリブレーションされた撮像装置で撮影した画像を定量的に解析することもできる。巨視的歯科撮像装置の場合、画像に表れる歯科的病原菌を定量化することができる。これにより、画像に基づく診断が強化される。以上の説明にしたがって、キャリブレーションユニットを使用することで、定量分析も時間又は装置の相互間で比較可能になる。このように、巨視的医療撮像装置又は巨視的歯科撮像装置によって撮影される画像の品質が向上する。
【0012】
この文脈において、第1のタイプの前記蛍光材料、第2のタイプの前記蛍光材料及び/又は不透明非蛍光材料は、これらの材料が人体の健全な部分又は広範な疾患若しくは病原体により不健全である生体部分の何れかの光学特性を模倣するように選択してもよい。
【0013】
巨視的歯科撮像装置の文脈において、前記第1のタイプの前記蛍光材料は、健全な歯の蛍光特性を模倣してもよい。なお、健全な歯は、UVスペクトル又は青色スペクトルの光、例えば200nm~500nmの波長を有する光を用いて励起されると緑色スペクトルの光を発する。
【0014】
前記第2のタイプの前記蛍光材料は、第1の歯科的病原体の蛍光特性を模倣してもよく、前記不透明非蛍光材料は、第2の歯科的病原体の光学特性を模倣してもよい。例として、前記第2のタイプの前記蛍光材料は、むし歯病変の蛍光特性を模倣することができる。健全な歯と比較して、むし歯病変のある歯の蛍光発光は、紫外線、青色又は緑色スペクトルの光を用いて励起されたときに、赤色スペクトルへのシフトを示す。進行したむし歯病変は、むし歯細菌が産生するポルフィリンの存在により、明るい赤色の蛍光を示す。歯石や歯垢も同様である。
【0015】
前記不透明非蛍光材料は、いわゆる白斑病変の光学的特性を模倣してもよい。健全な歯と比較して、白斑病変のある歯の発光は、罹患したエナメル質での光の散乱により緑色蛍光の減少を示す。
【0016】
上述の全ての実施例において、キャリブレーションユニットにより巨視的医療撮像装置の極めて精密なキャリブレーション(較正)が可能となる。これは、キャリブレーションユニットが、実際の使用例に対応する又は近い蛍光特性を提供するように設計されていることによる。つまり、撮像装置が較正される波長又はスペクトルは、撮像装置の使用中に撮影される必要がある波長又はスペクトルに等しい又は近い。
【0017】
一実施形態によれば、透光性材料が前記本体の第4のセクターに配置される。前記第4のセクターは、前記第1のセクター、前記第2のセクター、及び前記第3のセクターの各々とは別個のものである。好ましくは、前記透光性材料は透明でもある。この場合、前記透光性材料は、同じく透明であるエナメル質を模倣するために使用できる。その結果、歯科的用途では、歯の表面の下、すなわちエナメル質の下で発生する病原体又は疾患を、キャリブレーションユニットによって模倣することができる。したがって、当該キャリブレーションユニットを使用して、表面下の病原菌又は疾患を高い信頼性で検出できるように撮像装置をキャリブレーションできる。
【0018】
一実施例において、前記第1のセクター、前記第2のセクター、及び前記第3のセクターのうちの少なくとも1つは、前記第4のセクターによって少なくとも部分的に囲まれる。この文脈において、前記第4のセクターの前記透光性又は透明材料は、残りのセクター、すなわち前記第1のセクター、前記第2のセクター、前記第3のセクター、又はその任意の組み合わせ、の一部又は全部を一緒に保持するためにも使用してもよい。さらに、この構成は、高度にコンパクトなキャリブレーションユニットの実現につながる。
【0019】
一変形例によれば、前記本体は少なくとも1つの補助セクターを備え、前記第1のタイプの前記蛍光材料、前記第2のタイプの前記蛍光材料、又は前記不透明非蛍光材料は、前記補助セクター内に配置される。言い換えれば、前記第1のタイプの前記蛍光材料、前記第2のタイプの前記蛍光材料、又は前記不透明非蛍光材料は、追加のセクターに配置されてもよい。前記補助セクターは他のすべてのセクターとは別個のものであると理解される。その結果、当該キャリブレーションユニットを使用してキャリブレーションを実行する場合、補助セクターの材料に関するキャリブレーションは、異なる位置に配置された2つのセクターに基づくことができる。その結果、撮像装置の視野に亘るキャリブレーションの均一性を高めることができる。
【0020】
本発明は、前記第1のタイプの蛍光材料及び前記第2のタイプの蛍光材料に限定されないことに留意されたい。用途によっては、撮像に使用される人体の光学的効果を模倣するのに適した光学特性を有するさらなるタイプの追加の蛍光材料を使用することも可能である。
【0021】
前記第1のセクター、前記第2のセクター、前記第3のセクター、前記第4のセクター、及び前記補助セクターのうちの少なくとも1つは、前記本体の層として形成されてもよい。この層は、前記前面に対して平行に延在してもよい。このような層は、効率的な方法で製造され得る。さらに、前記セクターの1つを層の形態で設けることにより、キャリブレーションユニットがコンパクトになる。
【0022】
前記層は、前記前面から距離を置いて配置されてもよい。したがって、歯科的用途では、歯の表面下で発生する病原体又は疾患は、このような層として形成される前記セクターの前記材料によって模倣されてもよい。一般的な医療用途においても同様である。当該キャリブレーションユニットを使用することにより、表面下の病原体又は疾患を高い信頼性で検出できるように、撮像装置をキャリブレーションできる。好ましくは、前記前面とそのような層との間に形成される空間は、透光性又は透明材料、例えば前記第4のセクターの前記透光性又は透明材料で充填されてもよい。
【0023】
前記第1のセクター、前記第2のセクター、前記第3のセクター、及び前記補助セクターのうちの少なくとも1つが、円柱形状、円錐形状、多面体形状、又は楕円体形状であってもよい。このような形状を用いることにより、前記第1のセクター、前記第2のセクター、前記第3のセクター、及び前記補助セクターの前記うちの少なくとも1つを前記第4のセクターに埋め込むことが容易になり、コンパクトなキャリブレーションユニットが形成されると同時に、キャリブレーションのターゲットの種類が比較的多くなる。
【0024】
この文脈において、前記前面は前記第1のセクター、前記第2のセクター、前記第3のセクター、及び前記補助セクターのうちの少なくとも1つの端面と一致してもよい。これは、当該キャリブレーションユニットを使用してキャリブレーションされる撮像装置の視点から、前記第1のセクター、前記第2のセクター、前記第3のセクター、及び前記補助セクターのうちの少なくとも1つの端面が覆われていないことを意味する。このようなセクターは、人体の一部の表面、特に歯の表面に通常発生する病原体又は疾患を模倣するために使用され得る。これにより、キャリブレーションの信頼性が向上する。
【0025】
一変形例によれば、前記第1のセクター、前記第2のセクター、前記第3のセクター、及び前記補助セクターのうちの少なくとも1つの端面と一致する前記前面の一部は、局所的に湾曲する。前記前面の前記一部は、凸状に湾曲してもよく、すなわち当該キャリブレーションユニットの外側に向かって膨らんでもよい。あるいは、前記前面の前記一部は凹状に湾曲してもよく、すなわち当該キャリブレーションユニットに窪みを形成してもよい。前記前面が前記第1のセクター、前記第2のセクター、前記第3のセクター、及び前記補助セクターのうちの少なくとも1つの端面と一致する前記前面の前記部分は、代わりに複数の湾曲した部分、例えば複数の外側に向かって膨出する部分、又は複数の窪みを含んでもよい。ある部分は外側に向かって膨らみ、ある部分は窪みを形成することも可能である。人間の歯にもこぶや窪みがあるため、キャリブレーションの信頼性がさらに向上する。
【0026】
一代替例において、前記第1のセクター、前記第2のセクター、前記第3のセクター、及び前記補助セクターのうちの少なくとも1つの前記前面に向けられる端面は、前記前面から距離を置いて配置されてもよい。したがって、歯科的用途では、歯の表面下で発生する病原体又は疾患は、そのような端面を有する前記セクターの材料によって模倣されてもよい。一般的な医療用途においても同様である。キャリブレーションユニットを使用することにより、表面下の病原菌又は疾患を高い信頼性で検出できるように、撮像装置をキャリブレーションすることができる。好ましくは、前記前面とそのような端面との間に形成される空間は、透光性又は透明材料、例えば前記第4のセクターの前記透光性又は透明材料で充填され得る。
【0027】
好ましい実施例において、前記第1のセクターは、前記前面から距離を置いて配置され前記本体の全幅を覆う層として形成される。この例では、前記第4のセクターも層として形成することができ、前記第4のセクターは、前記前面と前記第1のセクターとの間の空間を完全に満たす。前記第2のセクターは、前記第4のセクターの中に完全に又は部分的に埋め込まれていてもよい。さらに、代替的に又は追加的に、前記第3のセクターは、前記第4のセクターの中に完全に又は部分的に埋め込まれていてもよい。さらに、代替的又は追加的に、少なくとも1つの前記補助セクターが前記第4のセクターに全部又は部分的に埋め込まれていてもよい。このようなキャリブレーションユニットは、複数のキャリブレーションのターゲットを提供すると同時に、コンパクトで製造が容易である。
【0028】
一実施例において、前記第1のタイプの前記蛍光材料は緑色蛍光材料である。すでに述べたように、健全な歯も緑色蛍光材料を含む。したがって、緑色蛍光材料は、健全な歯の蛍光特性を模倣するのに特に適している。したがって、本発明によるキャリブレーションユニットによってキャリブレーションされた撮像装置は、高い信頼性で健全な歯を検出できる。
【0029】
別の実施例において、前記第2のタイプの前記蛍光材料は赤色蛍光材料である。すでに述べたように、むし歯病変も赤色蛍光材料を含む。したがって、赤色蛍光材料は、むし歯病変の蛍光特性を模倣するのに特に適している。したがって、本発明によるキャリブレーションユニットによってキャリブレーションされた撮像装置は、高い信頼性でむし歯病変を検出できる。
【0030】
一実施形態によれば、前記第1のセクター、前記第2のセクター、前記第3のセクター、前記第4のセクター及び前記補助セクターのうちの少なくとも1つは歯科修復材料を備える。前記歯科修復材料は、通常、天然の歯科材料の特性を模倣する。したがって、キャリブレーションユニットの材料は、検査される材料に類似する。これにより画質が向上する。
【0031】
前記歯科修復材料は、光硬化性材料又は光重合性材料であってもよい。このような材料は、青色光又は紫外線によって硬化する。このような材料の例は、Tetric Prime、Petric EvoFlow、Tetric Powerfill、Tetric Powerflow、及びTetric EvoCeramである。これらの材料はすべて、Ivoclar Vivadent AG(リヒテンシュタイン)の市販品である。
【0032】
前記歯科修復材料は、金属、セラミック、ガラス、ガラスセラミックなどの無機材料であってもよい。このような材料の例は、IPS e.max CAD、IPS e.max ZirCAD Prime、IPS Empress CAD及びIPS InLineである。これらの材料はすべて、Ivoclar Vivadent AG(リヒテンシュタイン)の市販品である。
【0033】
前記歯科修復材料は、二成分系材料であってもよい。このような材料では、2つの成分が混合されると酸化還元反応を開始する。このような材料の例は、Variolink及びTeliolinkである。これらの材料もIvoclar Vivadent AG(リヒテンシュタイン)の市販品である。
【0034】
前記歯科修復材料は、熱硬化性材料であってもよい。このような材料は、硬化させるために加熱する必要がある。このような材料の例としては、Ivoclar Vivadent AG(リヒテンシュタイン)の市販品であるSR Ivocapがある。さらなる例としては、コロンビアのNew Stetic S.A.の市販品であるOpti-Cryl及びVeracrylがある。
【0035】
上記の材料はすべて、ある形状で硬化させることができる。その後、硬化した材料は、所望の最終形状に到達するために、例えばフライス加工、穴あけ加工又は研削加工などの機械加工工程又は切削工程を施してもよい。
【0036】
さらなる実施例において、前記歯科修復材料は硬化前の材料である。このような材料は通常、ある形状で硬化される。その後、当該材料は、例えば機械加工又は切削によって減法的に処理できる。このような材料の例としては、Ivoclar Vivadent AG(リヒテンシュタイン)の市販品であるTetric CADがある。
【0037】
特定の歯科修復材料である上記の材料の代替例として、異なる種類のプラスチック材料を使用してもよい。好ましくは、プラスチック材料は射出成形及び/又は3D印刷に適している。このような材料の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリオキシメチレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。シリコーンも使用できる。
【0038】
特定の歯科修復材料である上記の材料のさらなる代替例として、異なる種類の無機材料も使用してもよい。好ましくは、無機材料は、フライス削り及び/又は研削によって機械加工可能であるか、又はホットプレス技術の使用により粘性流動を介して加工可能である。このような材料の例としては、ケイ酸リチウムガラスセラミックス、アルミノケイ酸リチウムガラスセラミックス、リューサイトガラスセラミックスを含むケイ酸塩ガラス及びガラスセラミックス、ならびにZrO2、Al2O3及び長石セラミックスを含む酸化物セラミックスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
第1のタイプの蛍光材料として、又は第2のタイプの蛍光材料として、リン光物質を使用してもよい。例えば緑色スペクトルで発光するリン光物質としては、金、銅又はアルミニウムが添加された硫化亜鉛、例えばZnS:Cu+、ZnS:Au+、ZnS:Al3+が挙げられる。赤色スペクトルで発光するリン光物質としては、例えば、ユウロピウムが添加された酸化イットリウム、例えば、Y2O2:Eu3+が挙げられる。
【0040】
前記第1のタイプの前記蛍光材料又は前記第2のタイプの前記蛍光材料は、歯科修復材料に埋め込むことができる。
【0041】
前記第1のセクター、前記第2のセクター、及び前記第3のセクターのうちの少なくとも1つは、顔料を含むこともできる。これらは非蛍光性であるが、顔料を供給することは、蛍光撮像に加えて白色光撮像を使用する場合に有用である。既知の顔料がキャリブレーションユニットに供給される場合、キャリブレーション中にカラーバランス、特にホワイトバランスを実行することができる。白色顔料の例としては、二酸化チタンや酸化亜鉛が挙げられる。
【0042】
この問題は、加えて巨視的医療撮像キャリブレーションシステム、特に巨視的歯科撮像キャリブレーションシステムによって解決される。前記巨視的医療撮像キャリブレーションシステムは、少なくとも1つの撮像装置と、本発明による少なくとも1つのキャリブレーションユニットと、少なくとも1つの励起装置とを備える。前記少なくとも1つの励起装置は、前記第1のタイプの前記蛍光材料の蛍光を励起するように構成される。さらに、前記撮像装置は、前記第1のタイプの前記蛍光材料の励起放出を撮影するように構成される。巨視的医療撮像キャリブレーションシステムは、巨視的医療撮像装置をキャリブレーションするためのシステムである。同様に、巨視的歯科撮像キャリブレーションシステムは、巨視的歯科撮像装置をキャリブレーションするためのシステムである。ここでも、巨視的という用語は、微視的撮像装置又は単に顕微鏡に対する差異化として使用される。このような巨視的医療撮像キャリブレーションシステム、特に巨視的歯科撮像キャリブレーションシステムを用いると、撮像装置は、キャリブレーションユニットによって表されるグランドトゥルースに対してキャリブレーションすることができる。したがって、2つ以上の撮像装置が同一又は類似のキャリブレーションユニットを用いてキャリブレーションされると、これらの撮像装置によって生成される画像の比較可能性が向上する。すなわち、ある撮像装置で撮影された画像を、他の撮像装置で撮影された画像と高い信頼性で比較することができる。また、撮像装置のキャリブレーションは経時的に複数回行われる可能性があるため、異なる時点で撮影された画像の比較可能性も向上する。さらに、キャリブレーションされた撮像装置で撮影された画像を定量的に解析することもできる。巨視的歯科撮像装置の場合、画像に表れる歯科的病原体を定量化できる。これにより、画像に基づく診断が強化される。以上の説明にしたがって、キャリブレーションユニットを使用することで、定量分析も時間又は装置の相互間で比較可能になる。このように、巨視的医療撮像装置又は巨視的歯科撮像装置によって撮影される画像の品質が向上する。
【0043】
前記撮像装置と前記励起装置が別個の装置として導入されていることに留意されたい。これは一つの変形例に過ぎない。また、前記撮像装置と前記励起装置とを一体的に1つの装置に形成させることも可能である。このような装置は、カメラ装置又は蛍光撮像システムと呼ばれることがある。
【0044】
さらに、本発明による巨視的医療撮像キャリブレーションシステムは、ホワイトバランスを実行するように構成することもできることに留意されたい。この文脈において、前記撮像装置は、白色光画像を撮影するように構成される。前記不透明非蛍光材料からなる前記キャリブレーションユニットの前記セクターは、この目的のために使用されてもよい。あるいは、キャリブレーションユニットに白色バランシングセクターを設けてもよい。このような白色バランシングセクターは、白色バランシングを実行するように特に適合化されていてもよい。
【0045】
変形例では、少なくとも1つの励起装置は、さらに、第2のタイプの蛍光材料の蛍光を励起するように構成されてもよい。さらに、撮像装置は、第2のタイプの蛍光材料の励起発光を撮影するように構成されてもよい。したがって、第2のタイプの蛍光材料の蛍光に関連する蛍光イメージング機能もキャリブレーションされ得る。その結果、蛍光画像の品質がさらに向上する。
【0046】
さらなる代替案では、2つの別々の励起装置が設けられ、励起装置の一方は、第1のタイプの蛍光材料の蛍光を励起するように構成され、励起装置の他方は、第2のタイプの蛍光材料の蛍光を励起するように構成される。
【0047】
前記キャリブレーションユニットが、第1のタイプの蛍光材料を有するセクターと、第2のタイプの蛍光材料を有するセクターとを備える場合、撮像装置をキャリブレーションするための方法は、前記第1のタイプの前記蛍光材料を励起するステップと、前記第1のタイプの前記蛍光材料の励起放出を撮影するステップと、必要であれば、少なくとも1つの前記撮像装置の設定を適合させるステップと、その後に、前記第2のタイプの前記蛍光材料を励起するステップと、前記第2のタイプの前記蛍光材料の励起放出を撮影するステップと、必要であれば、少なくとも1つの前記撮像装置の設定を適合させるステップと、を備える。言い換えれば、前記第1のタイプの前記蛍光材料と前記第2のタイプの前記蛍光材料とがその後に励起される。上記の例では、前記第1のタイプの前記蛍光材料は前記第2のタイプの前記蛍光材料よりも先に励起される。もちろん、この順序を逆にすることもできる。順次に励起することにより、前記第1のタイプの前記蛍光材料からの前記蛍光と前記第2のタイプの前記蛍光材料からの蛍光とが互いに影響しないため、高品質のキャリブレーション結果を得ることができる。一代替例においては、前記第1のタイプの前記蛍光材料と前記第2のタイプの前記蛍光材料は一緒に励起される。この場合の代替例において、これらの材料の一方の蛍光のみが第1のステップで撮影され、他方の材料の蛍光は第2のステップで撮影される。このためにフィルターが使用してもよい。他の代替例においては、両方の材料の蛍光は一緒に撮影される。材料の蛍光発光は異なる波長によって特徴付けられるので、発光を互いに分離するために1つ以上のフィルターを使用してもよい。また、このような変形例により、高品質のキャリブレーションが可能になる。
【0048】
この文脈において、撮像装置は、口腔内カメラ、口腔外カメラ及び口腔内スキャナの1つであり得る。このような撮像装置は、歯科診断に使用するのに適している。
【0049】
この問題は、巨視的医療撮像装置、特に巨視的歯科撮像装置のキャリブレーションのための本発明によるキャリブレーションユニットの使用によってさらに解決される。このようなキャリブレーションユニットを使用することで、巨視的医療撮像装置、特に巨視的歯科撮像装置は、キャリブレーションユニットによって表されるグランドトゥルースに対してキャリブレーションすることができる。したがって、2つ以上の巨視的医療撮像装置又は2つ以上の巨視的歯科撮像装置が、同一又は類似のキャリブレーションユニットを用いてキャリブレーションされる場合、これらの撮像装置によって生成される画像の比較可能性が向上する。すなわち、ある撮像装置で撮影された画像を、他の撮像装置で撮影された画像と高い信頼性で比較することができる。また、巨視的医療撮像装置や巨視的歯科撮像装置は、時間が経過すれば1回より大きい回数のキャリブレーションが行われる場合があるため、キャリブレーションユニットを用いることで、異なる時点で撮影された画像の比較可能性も向上する。つまり、キャリブレーションユニットを使用することで、撮影された画像が時間や装置間で比較可能になるという効果がある。さらに、キャリブレーションした撮像装置で撮影した画像を定量的に解析することもできる。巨視的歯科撮像装置の場合、画像に表れる歯科的病原体を定量化することができる。これにより、画像に基づく診断が強化される。以上の説明にしたがって、キャリブレーションユニットにより、定量分析も時間や装置間で比較できるようになる。このように、巨視的医療撮像装置又は巨視的歯科撮像装置によって撮影される画像の品質が向上する。
【0050】
前記キャリブレーションユニットの使用中、周辺光が前記キャリブレーションユニットと前記撮像装置との光学的相互作用に影響を及ぼすのを遮断する必要があることが理解される。周辺光を遮断することで、キャリブレーションの品質がさらに向上する。
【0051】
前記キャリブレーションユニットを用いて実行されるキャリブレーションは、画素サイズのキャリブレーション、色の感度のキャリブレーション、及び色の強度のキャリブレーションのうちの少なくとも1つであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
以下、本発明の実施例を図面につき説明する。
【
図1】本発明によるキャリブレーションユニットを備える本発明による巨視的医療撮像キャリブレーションシステムを示す図である。
【
図2】
図1に示す巨視的医療撮像キャリブレーションシステムの撮像装置の細部を示す図である。
【
図3】本発明によるキャリブレーションユニットを備える本発明による巨視的医療撮像キャリブレーションシステムの代替例を示す図である。
【
図4】
図1~
図3に示す撮像装置の置き換えとして用いられる撮像装置の代替例を示す図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るキャリブレーションユニットを示す斜視図である。
【
図6】
図5に示すキャリブレーションユニットの頂面図である。
【
図7】
図5に示すキャリブレーションユニットの平面VIIに沿った断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係るキャリブレーションユニットを示す斜視図である。
【
図9】
図8に示すキャリブレーションユニットの頂面図である。
【
図10】
図8に示すキャリブレーションユニットの平面Xに沿った断面図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係るキャリブレーションユニットを示す斜視図である。
【
図12】
図11に示すキャリブレーションユニットの平面図である。
【
図13】
図11に示すキャリブレーションユニットの平面XIIIに沿った断面図である。
【
図14】本発明の第1実施形態に係るキャリブレーションユニットを示す斜視図である。
【
図15】
図14に示すキャリブレーションユニットの頂面図である。
【
図16】
図14に示すキャリブレーションユニットの平面XVIに沿った断面図である。
【
図17】
図14に示すキャリブレーションユニットの平面XVIIに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、巨視的医療撮像キャリブレーションシステム10であり、図面に示す実施例では巨視的歯科撮像キャリブレーションシステム10を示す。なお、巨視的医療撮像キャリブレーションシステム及び巨視的歯科撮像キャリブレーションシステムには、同一の参照符号を用いる。
【0054】
巨視的歯科撮像キャリブレーションシステム10は、カメラ装置12を備える。
【0055】
カメラ装置12は画像取得光学系16を有する撮像装置14と励起装置18とを組み合わせたものである。本実施例では、励起装置は複数の励起ダイオード20を有する(
図2参照)。
【0056】
図1及び
図2に示すカメラ装置12は口腔外カメラである。
【0057】
巨視的歯科撮像キャリブレーションシステム10は、
図1に示す実施例において掩蔽ボックス24として実現される掩蔽装置22を備える。
【0058】
掩蔽装置22は、キャリブレーションユニット28を収容する容器26とカメラ装置12の一部を受け入れる開口30を有する。
【0059】
さらに、掩蔽装置22は、光を通さない多数の壁32を備える。壁22は開口30を除く全ての側面で容器26を囲む。したがって、掩蔽装置22は、周辺光がカメラ装置12、特にキャリブレーションユニット28を使用する撮像装置14のキャリブレーションに影響を及ぼすのを防止できる。
【0060】
図1の実施例では、掩蔽装置22の上側に示される1つの壁32は、容器26内にキャリブレーションユニット28を配置するため、及び容器26からキャリブレーションユニット28を引き出すために選択的に開くことができるように、隣接する壁32にヒンジ連結されている。
【0061】
図1では、上壁は掩蔽装置22の内部が見えるようにあたかも透明であるかのように示される。上壁は閉じた状態にある。
【0062】
また、上壁の開放状態は破線で示される。
【0063】
図3は、歯科撮像キャリブレーションシステム10の変形例を示す。
【0064】
この変形例は、掩蔽装置22が光を通さない可撓性材料で作成された掩蔽スリーブ34として形成される点でのみ
図1に示す変形例と異なる。
【0065】
掩蔽スリーブ34は、閉鎖端部36及び閉鎖端部36の反対側に配置された開放端部38を有する。
【0066】
使用の際には、キャリブレーションユニット28は掩蔽スリーブ34の内部で閉鎖端部36に近接配置され、カメラ装置12の一部は開放端部38に受容される。したがって、掩蔽スリーブ34も、周辺光がカメラ装置12、特にキャリブレーションユニット28を使用する撮像装置14のキャリブレーションに影響を及ぼすのを防止できる。
【0067】
図4は口腔内カメラとして形成されるカメラ装置12の代替例を示す。
【0068】
図4のカメラ装置12も、画像取得光学系16を有する撮像装置14と励起装置18とを組み合わせたものである。ここでも、励起装置18は複数の励起ダイオード20を有する。
【0069】
図4のカメラ装置12は、
図1~
図3に示されるカメラ装置12の代わりに使用してもよいと理解される。
図4のカメラ装置を使用する際、画像取得光学系16及び励起ダイオード20を備えるカメラ装置12の端部は、開口30を貫通させて掩蔽ボックス24の内側に配置する、又は開放端部38から挿入して掩蔽スリーブ34の内部に配置する。
【0070】
全ての変形例の巨視的歯科撮像キャリブレーションシステム10は、
図1及び
図3においてのみ概略的に示されているキャリブレーションユニット28も備える。
【0071】
以下、キャリブレーションユニット28の異なる実施形態について、
図5~
図17につき説明する。
【0072】
キャリブレーションユニット28の第1の実施形態を
図5~
図7に示す。
【0073】
この実施形態では、キャリブレーションユニット28は、概ね円形ディスクとしての形状を有する本体40を備える。
【0074】
本体40は、
図5の表示では上面である前面42と、
図5の表示では下面である後面44を有する。
【0075】
前面42と後面44との間に、断面が円形で管の形状を有する側面46が延びている。
【0076】
前面42は、撮像装置14、すなわちカメラ装置12に光学的に向けられるように構成される(
図1及び
図3も参照)。
【0077】
キャリブレーションユニット28は、第1のセクター48を備える。
【0078】
この実施形態では、第1のセクターは本体40の層として形成されている。
【0079】
この層はリング状をなし、その中心に開口50を有する。
【0080】
第1のセクター48は、前面42に平行に且つ後面44に平行に延在している。
【0081】
同時に、本体40の後面44は第1のセクター48の下側面によって形成され、すなわち第1のセクター48は本体40の下端部に配置される。
【0082】
環状層として形成されている第1のセクター48の厚さは、ディスク状本体40の厚さのほぼ半分にわたる。したがって、第1のセクター48は、前面42から距離を置いて配置される。
【0083】
この実施例では、第1のセクター48は、第1のタイプの蛍光材料の粒子54が埋め込まれた歯科修復材料52から作成される。より良好な視認性のために、第1のタイプの蛍光材料の一部の粒子54のみに参照符号が付される。
【0084】
歯科修復材料は、象牙質の代わりとなる材料である。
【0085】
第1のタイプの蛍光材料54は、緑色蛍光材料である。
【0086】
キャリブレーションユニット28は、第2のセクター56も備える。
【0087】
第2のセクター56は円柱の形状を有する。
【0088】
円柱の直径は開口50の直径に合致し、第2のセクター56を形成する円柱は、第2のセクター56の下面が後面44に一致するように開口50内に配置される。
【0089】
また、第2のセクター56を形成する円柱の上端面は前面42に一致する。
【0090】
したがって、第2のセクター56は、後面44と前面42との間に及んでいる。言い換えれば、第2のセクター56を形成する円柱の高さは、本体40の厚さに合致する。
【0091】
この実施例では、第2のセクター56は、第2のタイプの蛍光材料の粒子58が埋め込まれた歯科修復材料52から作成される。より良好な視認性のために、第2のタイプの蛍光材料の一部の粒子58のみに参照符号が付されている。
【0092】
第2のタイプの蛍光材料58は赤色蛍光材料である。
【0093】
したがって、第2のタイプの蛍光材料58は、第1のタイプの蛍光材料54とは異なる。
【0094】
さらに、キャリブレーションユニット28は、第4のセクター60を備える。
【0095】
なお、セクターを第1、第2、第4としたのは、説明を容易にするだけのためである。具体的なセクターの数を意味するものではない。
【0096】
第4のセクター60も本体40の層として形成されている。
【0097】
層はリング状で、中央に開口62を有する。
【0098】
第1のセクター48及び第4のセクター60とは合同状態に配置されている。
【0099】
つまり、第1のセクター48及び第4のセクター60の外径は同一である。また、開口50及び開口62の直径も同一である。
【0100】
第4のセクター60は、前面42と平行に且つ後面44と平行に延在している。
【0101】
同時に、本体40の前面42は第4のセクター60の上側面によって形成される。第4のセクター60の下側面は、第1のセクター48の上側面と一致する。
【0102】
したがって、環状層として形成される第4のセクター60の厚さも、ディスク状本体40の厚さのほぼ半分にわたる。
【0103】
第2のセクター56は開口62に貫通する。言い換えれば、第4のセクター60は第2のセクター56を部分的に取り囲んでいる。
【0104】
この実施例では、第4のセクターは透光性材料64、特に透明材料から作成されている。
【0105】
第1のセクター48、第2のセクター56、及び第4のセクター60は、互いに別個のものであることに留意されたい。
【0106】
第1の実施形態によるキャリブレーションユニット28において、第1のセクター48は健全な歯を模倣する。第2のセクター56は、むし歯病変を模倣し、第4のセクター60は、エナメル質を模倣する。
【0107】
このようなキャリブレーションユニット28を用いることにより、撮像装置14を信頼性高くキャリブレーションできる。
【0108】
キャリブレーションユニット28の第2の実施形態を
図8~
図10に示す。
【0109】
以下では、第1の実施形態との相違点のみを説明する。同一又は対応する要素には同一の参照符号を付している。
【0110】
第2の実施形態は、第2のセクター56の上端面が前面42から距離dを置いて配置されている点で第1の実施形態と異なる。従って、円柱形状である第2のセクター56の高さは、本体40の厚さよりも短い。
【0111】
第2のセクター56の上端面と前面42との間の空間は、このとき第4のセクター60の一部を形成し、透光性、より具体的には透明な材料64で満たされている。言い換えれば、開口62はこのとき止まり穴となっている。
【0112】
そのため、第2のセクター56は、第4のセクター60の一部で覆われているにもかかわらず、
図8及び
図9では見えるようになっている。
【0113】
第2の実施形態によるキャリブレーションユニット28では、第1のセクター48はやはり健全な歯を模倣し、第4のセクター60はエナメル質を模倣する。
【0114】
第2のセクター56は、表面下のむし歯病変を模倣している。このような病変はエナメル質に覆われている。
【0115】
第2の実施形態のキャリブレーションユニット28を用いても、撮像装置14を信頼性高くキャリブレーションできる。
【0116】
キャリブレーションユニット28の第3の実施形態を
図11~
図13に示す。
【0117】
ここでも、第1の実施形態と第2の実施形態に関する相違点のみを説明する。同一又は対応する要素には同一の参照符号を付している。
【0118】
第1及び第2の実施形態と比較して、今は第1のセクター48はディスク状であり、すなわち、第1のセクター48は開口50を有していない。
【0119】
第4のセクター60は、第1の実施形態の第4のセクター60に対応する。
【0120】
しかし、第2のセクター56の代わりに第3のセクター66が設けられる。
【0121】
第3のセクター66は円柱状で、第4のセクター60の開口62に配置される。
【0122】
第3のセクター66は開口62を完全に埋める。
【0123】
第3のセクター66の上端面は前面42と一致する。第3のセクター66の下端面は第4のセクター60の下端面と一致する。
【0124】
本実施例では、第3のセクター66は不透明非蛍光材料68から作られている。
【0125】
第3のセクター66は、第1のセクター48及び第4のセクター60とは別個のものであることに留意されたい。
【0126】
第3の実施形態によるキャリブレーションユニット28において、第1のセクター48は健全な歯を模倣する。第3のセクター66は白斑病変を模倣し、第4のセクター60はエナメル質を模倣する。
【0127】
このようなキャリブレーションユニット28を用いることにより、撮像装置14を信頼性高くキャリブレーションできる。
【0128】
キャリブレーションユニット28の第4の実施形態を
図14~
図17に示す。
【0129】
これまでと同様に、先の実施形態との相違点のみを説明する。同一又は対応する要素には同一の参照符号を付している。
【0130】
第4の実施形態によるキャリブレーションユニット28は、キャリブレーションユニットの第3の実施形態の第1のセクターに対応する第1のセクター48を備え、すなわち、キャリブレーションユニット28の第4の実施形態の第1のセクター48は、開口のないディスク状である。
【0131】
また、第4の実施態様に係るキャリブレーションユニット28は、第3の実施態様の第3のセクター66に対応する第3のセクター66を備える。したがって、第3のセクター66は円柱形状であり、キャリブレーションユニット28内の中央に配置される。
【0132】
加えて、第4の実施形態によるキャリブレーションユニット28は、合計4つの第2のセクター56から構成される。
【0133】
第2のセクター56の第1のペアP1は、キャリブレーションユニット28の第1の直径D1上に配置され、第1のペアP1の一部を形成する一方の第2のセクター56は、第3のセクター66と側面46との間における第3のセクター66の第1の側面側に配置される。第1のペアP1の一部を形成する他方の第2のセクター56は、第3のセクター66と側面46との間の第3のセクター66の反対側面の側に配置される。
【0134】
第1のペアP1の第2のセクター56は、それぞれ円柱の形状を有する。
【0135】
第1のペアP1の第2のセクター56の上端面は前面42と一致する。第1のペアP1の第2のセクター56の下端面は、第1のセクター48の上端面と一致する。
【0136】
第2のセクター56の第2のペアP2は、キャリブレーションユニット28の第2の直径D2上に配置される。
【0137】
第2の直径D2は、第1の直径D1に対してほぼ直交して延在する。
【0138】
第2のペアP2の一部を形成する一方の第2のセクター56は、第3のセクター66と側面46との間における第3のセクター66の第1の側面側に配置されている。第2のペアP2の一部を形成する他方の第2のセクター56は、第3のセクター66と側面46との間における第3のセクター66の反対側面の側に配置される。
【0139】
第2のペアP2の第2のセクター56は、それぞれ円柱の形状を有する。
【0140】
第2のペアP2の第2のセクター56の上端面は、前面42から距離dを置いて配置されている(キャリブレーションユニット28の第2の実施形態参照)。第1のペアの第2のセクター56の下端面は、第1のセクター48の上端面と一致する。
【0141】
全ての第2のセクター56の直径はほぼ同一である。
【0142】
第4実施形態のキャリブレーションユニット28を第1及び第2実施形態のキャリブレーションユニットと比較すると、第4実施形態のキャリブレーションユニット28は、さらに3つの第2のセクター56を含んで構成されている。そのため、第2~第4の第2のセクター56は、補助セクター70と呼ぶこともできる。
【0143】
第4の実施形態のキャリブレーションユニット28は、第4のセクター60も備える。第4のセクター60は、先の実施形態と同様に層として形成される。
【0144】
第4の実施形態では、第4のセクター60は5つの開口からなり、中央の開口62は第3の実施形態と同様に第3のセクター66を収容する。
【0145】
残りの開口72、74、76、78はそれぞれ第2のセクター56の各1つを収容する。
【0146】
この文脈において、開口72、74は、それぞれ第1のペアP1の第2のセクター56を収容する。これらの開口は貫通孔として形成される。
【0147】
開口76、78は、それぞれ第2のペアP2の第2のセクター56を受け入れる。これらの開口は止まり穴として形成される。
【0148】
第4の実施形態によるキャリブレーションユニット28では、第1のセクター48は健全な歯を模倣する。第3のセクター66は白斑病変を模倣し、第4のセクター60はエナメル質を模倣する。
【0149】
第1のペアP1の第2のセクター56は表面のむし歯病変を模倣し、第2のペアP2の第2のセクター56は表面下のむし歯病変を模倣する。
【0150】
このようなキャリブレーションユニット28を用いると、撮像装置14を信頼性高くキャリブレーションすることができる。補助セクター70により、キャリブレーションは撮像装置14の視野に亘って特に均一である。
【0151】
上記全ての実施形態のキャリブレーションユニット28は、カメラ装置12、より詳細には撮像装置14をキャリブレーションするために使用できる。
【0152】
このため、励起装置18は、第1のタイプの蛍光材料54及び第2のタイプの蛍光材料58の蛍光を励起するように構成される。
【0153】
さらに、撮像装置14は、第1のタイプの蛍光材料54及び第2のタイプの蛍光材料58の励起発光を撮影するように構成されている。
【0154】
カメラ装置12をキャリブレーションするために第1、第2及び第4の実施形態によるキャリブレーションユニット28を使用する場合、励起装置18を使用して、第1のタイプの蛍光材料54及び第2のタイプの蛍光材料58の両方が励起される。
【0155】
第1のステップでは、撮像装置14を用いて第1のタイプの蛍光材料54の励起発光のみを撮影されてもよい。
【0156】
第2のステップでは、撮像装置14を用いて第2のタイプの蛍光材料58の励起発光のみを撮影されてもよい。
【0157】
蛍光材料54、58の1つの励起発光のみを撮影するために、フィルターを使用してもよい。
【0158】
キャリブレーションユニット28を用いて実行されるキャリブレーションは、画素サイズのキャリブレーション、色の感度のキャリブレーション、及び色の強度のキャリブレーションのうちの少なくとも1つであってよい。
【符号の説明】
【0159】
10 巨視的医療撮像キャリブレーションシステム、巨視的歯科撮像キャリブレーションシステム
12 カメラ装置
14 撮像装置
16 画像取得光学系
18 励起装置
20 励起ダイオード
22 掩蔽装置
24 掩蔽ボックス
26 容器
28 キャリブレーションユニット
30 開口
32 壁
34 掩蔽スリーブ
36 掩蔽スリーブの閉鎖端部
38 掩蔽スリーブの開放端部
40 キャリブレーションユニットの本体
42 前面
44 後面
46 側面
48 第1のセクター
50 開口
52 歯科修復材料
54 第1のタイプの蛍光材料
56 第2のセクター
58 第2のタイプの蛍光材料
60 第4のセクター
62 開口
64 透光性材料
66 第3のセクター
68 不透明非蛍光材料
70 補助セクター
72 開口
74 開口
76 開口
78 開口
d 距離
D1 第1の直径
D2 第2の直径
P1 第1のペア
P2 第2のペア
【外国語明細書】