(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148262
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】木製柱用柱脚構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/26 20060101AFI20241010BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
E04B1/26 E
E04B1/58 511L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061254
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】木下 康仁
(72)【発明者】
【氏名】須賀 順子
(72)【発明者】
【氏名】木原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】内山 元希
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA45
2E125AB11
2E125AB12
2E125AB13
2E125AC23
2E125AG03
2E125AG13
2E125AG28
2E125BB02
2E125BB22
2E125BB31
2E125BD01
2E125BE04
2E125BE08
2E125BF01
2E125CA05
2E125CA13
2E125CA78
2E125CA81
(57)【要約】
【課題】構成の簡略化や建て方時の施工性の向上を図るとともに、アンカーボルトの引き抜き抵抗力を良好に確保しながら、地震時等に木製柱に水平力が作用した際にプレート部が曲げ変形するのを抑制して当該水平力に適切に抵抗する。
【解決手段】木製柱2xが柱脚用金物31を用いて基礎41上に設置されている木製柱用柱脚構造であって、柱脚用金物31には、基礎41上に配置されるプレート部31Aと、木製柱2xに差し込まれる差込部31Bとが備えられ、プレート部31Aは、水平力抵抗方向Xの両端部にアンカーボルト33が固定され、且つ、その水平力抵抗方向Xの中間部に差込部31Bが配設される形態で、差込部31Bとアンカーボルト33とが水平力抵抗方向Xに並ぶように配設され、プレート部31Aには、水平力抵抗方向Xに延在してプレート部31Bの曲げ変形に抵抗するリブプレート31Dが備えられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製柱が柱脚用金物を用いて基礎上に設置されている木製柱用柱脚構造であって、
前記柱脚用金物には、基礎上に配置されるプレート部と、そのプレート部から上方側に延びて前記木製柱に差し込まれる差込部とが備えられ、
前記プレート部は、前記木製柱の配設部位よりも外方側に延出する外方延出部位が備えられ、その外方延出部位に基礎に定着されるアンカーボルトが固定され、
前記プレート部は、前記木製柱が水平力に抵抗する水平力抵抗方向の両端部にアンカーボルトが固定され、且つ、その水平力抵抗方向の中間部に差込部が配設される形態で、差込部とアンカーボルトとが水平力抵抗方向に並ぶように配設され、
前記プレート部には、前記水平力抵抗方向に延在して前記プレート部の曲げ変形に抵抗するリブプレートが備えられている木製柱用柱脚構造。
【請求項2】
前記リブプレートは、前記プレート部において前記水平力抵抗方向に直交する直交方向に間隔を空けて複数備えられ、
前記複数のリブプレートとして、前記直交方向で前記木製柱の配設部位よりも外方側に外れた外側部に配置される第1リブプレートと、前記直交方向で木製柱の配設部位と重複する中間部に配置される第2リブプレートとが備えられている請求項1記載の木製柱用柱脚構造。
【請求項3】
前記木製柱は、前記直交方向に複数の長方形断面の木材を非接着で積層して構成され、
前記第2リブプレートは、前記プレート部における前記直交方向で前記木材どうしの境界に対応する部位に配置されている請求項2記載の木製柱用柱脚構造。
【請求項4】
前記木製柱は、前記プレート部において前記水平力抵抗方向に直交する直交方向に複数の長方形断面の木材を非接着で積層して構成され、
前記差込部及び前記アンカーボルトは、前記プレート部において前記木製柱を構成する複数の木材の夫々に対応して前記直交方向で区分される個別木材対応領域部位の夫々に配設されている請求項1~3のいずれか1項に記載の木製柱用柱脚構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製柱用柱脚構造に関し、特に、木製柱が柱脚用金物を用いて基礎上に設置されている木製柱用柱脚構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の木製柱用柱脚構造としては、略同じ大きさの水平な上部プレート部と下部プレート部との間にリブプレートを設けて箱状とした柱脚用金物を用いて木製柱を基礎上に設置するものが広く用いられている(例えば、特許文献1の
図1、
図2、特許文献2の
図1、
図2を参照)。
【0003】
この木製用柱脚構造では、柱脚用金物の下部プレートが基礎上に配置され、その下部プレートに対して基礎に定着されるアンカーボルトが固定されることで、柱脚用金物が基礎上に固定されている。また、柱脚用金物の上部プレートの上面に木製柱が配置され、その上部プレートから上方側に延びるガセットプレートやラグスクリューなどの差込部を木製柱に差し込むことで、木製柱が柱脚用金物に固定されている。
しかしながら、特許文献1では、下部プレート部に加えて、上部プレート部も設けなければならず、柱脚用金物を構成するプレート部が多いことから、溶接等の製作の手間が多いという問題があった。また、建て方時において、柱脚用金物の下部プレートに固定するアンカーボルトが上部プレートやそれに固定された木製柱によって作業者の視線から遮られ易く、その結果、作業中にアンカーボルトが見え難くなって施工性が低下するという問題もあった。しかも、アンカーボルトの上方側が上部プレート部等によって遮られているので、アンカーボルトの締結作業等も行い難く、この点でも施工性が低下するという問題が生じる。
【0004】
そこで、基礎上に配置される水平な一枚のプレート部を主要構成とする柱脚用金物を用いて木製柱を基礎上に設置する木製用柱脚構造が提案されている(特許文献2の
図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-107456号公報
【特許文献2】特開2008-255627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の
図4記載の柱脚用金物には、基礎上に配置されるプレート部と、そのプレート部から上方側に延びて木製柱に差し込まれる差込部とが備えられ、プレート部は、木製柱の配設部位よりも外方側に延出する外方延出部位が備えられ、その外方延出部位に基礎に定着されるアンカーボルトが固定されている。
そのため、柱脚用金物を構成するプレートが少なくて済み、溶接等の製作の手間を少なくして構成の簡略化を図ることができる。更に、アンカーボルトが木製柱の配設部位よりも外方側に延出する外方延出部位に固定されるので、建て方時に、アンカーボルトが見え易くなり、施工性の向上を図ることができる。
【0007】
また、この柱脚用金物のプレート部は、木製柱が水平力に抵抗する水平力抵抗方向の両端部にアンカーボルトが固定され、且つ、その水平力抵抗方向の中間部に差込部が配設される形態で、差込部とアンカーボルトとが水平力抵抗方向に並ぶように配設されている。
そのため、木製柱に作用する水平力が、プレート部の水平力抵抗方向の中間部で水平力抵抗方向に直交する直交方向を回転軸とする曲げ応力として作用することに対して、その曲げ応力により引き抜き力を受けるアンカーボルトの設置間隔を、水平力抵抗方向に沿うプレート部の両端部間の広い間隔とすることができ、アンカーボルトの引き抜き抵抗力を良好に確保することができる。
しかしながら、箱状の柱脚用金物に比べてプレート部が少ない分だけプレート部の曲げ耐力が低くなり、その結果、地震時等に木製柱に水平力が作用した際、プレート部が曲げ変形して当該水平力に適切に抵抗できない事態が生じることも考えられる。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、構成の簡略化や建て方時の施工性の向上を図るとともに、アンカーボルトの引き抜き抵抗力を良好に確保しながら、地震時等に木製柱に水平力が作用した際にプレート部が曲げ変形するのを抑制して当該水平力に適切に抵抗することのできる木製柱用柱脚構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、木製柱が柱脚用金物を用いて基礎上に設置されている木製柱用柱脚構造であって、
前記柱脚用金物には、基礎上に配置されるプレート部と、そのプレート部から上方側に延びて木製柱に差し込まれる差込部とが備えられ、
前記プレート部は、木製柱の配設部位よりも外方側に延出する外方延出部位が備えられ、その外方延出部位に基礎に定着されるアンカーボルトが固定され、
前記プレート部は、木製柱が水平力に抵抗する水平力抵抗方向の両端部にアンカーボルトが固定され、且つ、その水平力抵抗方向の中間部に差込部が配設される形態で、差込部とアンカーボルトとが水平力抵抗方向に並ぶように配設され、
前記プレート部には、前記水平力抵抗方向に延在してプレート部の曲げ変形に抵抗するリブプレートが備えられている点にある。
【0010】
本構成によれば、柱脚用金物を構成するプレート部を少なくすることで構成の簡略化や建て方時の施工性の向上を図ることができるとともに、アンカーボルトの設置間隔を水平力抵抗方向に沿うプレート部の両端部間の広い間隔とすることでアンカーボルトの引き抜き抵抗力を良好に確保することができる。
そして、基礎上に配置されるプレート部には、水平力抵抗方向に延在してプレート部の曲げ変形に抵抗するリブプレートが備えられているので、地震時等に木製柱に水平力が作用した際にプレート部が曲げ変形するのをリブプレートにより効果的に抑制して当該水平力に適切に抵抗することができる。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、前記リブプレートは、前記プレート部において前記水平力抵抗方向に直交する直交方向に間隔を空けて複数備えられ、
前記複数のリブプレートとして、当該直交方向で木製柱の配設部位よりも外方側に外れた外側部に配置される第1リブプレートと、当該直交方向で木製柱の配設部位と重複する中間部に配置される第2リブプレートとが備えられている点にある。
【0012】
本構成によれば、プレート部の水平力抵抗方向に直交する直交方向に間隔を空けて備えられる複数のリブプレートとして、当該直交方向で木製柱の配設部位よりも外方側に外れた外側部の第1プレートに加えて、当該直交方向で木製柱の配設部位と重複する中間部の第2リブプレートが備えられているので、木製柱の配設部位も有効に活用してプレート部全体に複数のリブプレートを分散して備えさせることができ、地震時等に木製柱に水平力が作用した際にプレート部が曲げ変形するのを更に効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明の第3特徴構成は、前記木製柱は、前記直交方向に複数の長方形断面の木材を非接着で積層して構成され、
前記第2リブプレートは、前記プレート部における前記直交方向で前記木材どうしの境界に対応する部位に配置されている点にある。
【0014】
本構成によれば、木製柱を個別の長方形断面の木材の集合体として簡易に構成しながら、その個別の長方形断面の木材の各々の強軸方向を前記水平力抵抗方向に沿う方向とすることができる。よって、個別の長方形断面の木材の各々について、水平力抵抗方向の水平力に対する断面二次モーメントを大きく確保することができ、それらの木材の集合体である木製柱を効率良く構成することができる。
しかも、プレート部における木製柱の配設部位に備えられる第2リブプレートが、プレート部における直交方向で木製柱を構成する木材どうしの境界に対応する部位に配置されているので、第2リブプレートが差込部の木材への差し込みの邪魔になるのを抑制することができ、木製柱を構成する木材の夫々に対して差込部を適切に差し込むことができる。
【0015】
本発明の第4特徴構成は、前記木製柱は、前記プレート部において前記水平力抵抗方向に直交する直交方向に複数の長方形断面の木材を非接着で積層して構成され、
前記差込部及び前記アンカーボルトは、前記プレート部において前記木製柱を構成する複数の木材の夫々に対応して前記直交方向で区分される個別木材対応領域部位の夫々に配設されている点にある。
【0016】
本構成によれば、木製柱を個別の長方形断面の木材の集合体として簡易に構成しながら、その個別の長方形断面の木材の各々の強軸方向を水平力抵抗方向に沿う方向とすることができる。よって、個別の長方形断面の木材の各々について、水平力抵抗方向の水平力に対する断面二次モーメントを大きく確保することができ、それらの木材の集合体である木製柱を効率良く構成することができる。
そして、差込部及びアンカーボルトは、プレート部において木製柱を構成する複数の木材の夫々に対応して直交方向で区分される個別木材対応領域部位の夫々に配設されているので、木製柱を構成する複数の木材の夫々に作用する水平力を個別木材対応領域部位の夫々に配設された差込部及びアンカーボルトを介して基礎に効率よく伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図5】(a)柱脚構造を模式的に示す側面図、(b)b-b断面図、(c)c-c断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の木製用柱脚構造が採用された木造二方向ラーメン架構の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1、
図2、
図3に示すように、木造二方向ラーメン架構には、平面視でX方向に延在する木製のX方向梁1xが木製のX方向柱(木製柱に相当)2xに半剛接合されてX方向に沿うラーメン構面を構成する複数のX方向ラーメン架構部Rx(
図1、
図3参照)と、平面視でX方向に交差するY方向に延在する木製のY方向梁1yが木製のY方向柱2y(木製柱に相当)に半剛接合されてY方向に沿うラーメン構面を構成する複数のY方向ラーメン架構部Ry(
図1、
図2参照)とが備えられている。X方向ラーメン架構部RxやY方向ラーメン架構部Ryは、多くは複数層の梁を有する複数階に亘る架構部として構成されている。
【0019】
本実施形態では、X方向柱2xは、
図4に示すように、X方向を強軸方向(長辺方向)とする長方形の断面形状を有してX方向の水平力に好適に抵抗する長方形断面柱Pとして構成されている。また、Y方向柱2yは、Y方向を強軸方向(長辺方向)とする長方形の断面形状を有してY方向の水平力に好適に抵抗する長方形断面柱P(
図1の右上)として構成されている。
図1に示すように、X方向柱2xやY方向柱2yは、X方向ラーメン架構部RxやY方向ラーメン架構部Ryだけでなく、X方向柱2xとY方向柱2yとにX方向梁1x又はY方向梁1yが架設されている複合架構部Rfにも配置されている。例えば、X方向柱2x及びY方向柱2yは、
図2、
図3に示すように、梁が柱の側面に接合される所謂柱勝ち接合用の柱として構成され、多くは複数階に亘る通し柱等として構成されている。
【0020】
そして、詳細は後述するが、X方向ラーメン架構部Rxや複合架構部RfのX方向柱2xに対してY方向梁1yがピン接合され、Y方向ラーメン架構部Ryや複合架構部RfのY方向柱2yに対してX方向梁1xがピン接合されている。このようにして、複数のX方向ラーメン架構部Rxと複数のY方向ラーメン架構部Ryとが一体的に組み合わせられている。
なお、
図1中に点線で示すように、この木造二方向ラーメン架構には、水平力に対する抵抗力を効率良く補完するべく、Y方向を強軸方向(長辺方向)とする長方形の断面形状を有してY方向の水平力に好適に抵抗するY方向耐震間柱(木製柱に相当)3yや、X方向を強軸方向(長辺方向)とする長方形の断面形状を有してX方向の水平力に好適に抵抗するX方向耐震間柱(木製柱に相当)3xが適宜の箇所に設けられている。ちなみに、X方向耐震間柱3xやY方向耐震間柱3yも、X方向柱2xやY方向柱2yと同様、長方形断面柱P(
図4参照)として構成され、後述するように、それの弱軸方向(短辺方向)に複数の扁平な長方形断面を有する木材Mを非接着で積層し、例えばボルト・ナット等の締結手段にて固定して構成されている。
【0021】
次に、本実施形態で採用される柱や梁の詳細構成、及び、それらの接合構造(半剛接合やピン接合)について
図4を参照して説明を加える。この
図4では、X方向を水平力抵抗方向として、X方向梁1xとX方向柱2xとが半剛接合され、そのX方向柱2xにY方向梁1yがピン接合される場合を例示しているが、Y方向を水平力抵抗方向として、Y方向梁1yとY方向柱2yとが半剛接合され、そのY方向柱2yにX方向梁1xがピン接合される場合も構造は同様である。
【0022】
半剛接合は、ピン接合よりも固定度が高くて剛接合よりも固定度が低いものの、架構の構造計算上は剛接合と見做される接合構造である。本実施形態では、
図4に示すように、例えば、X方向柱2xとX方向梁1xとに亘って貫通形成された貫通孔21に対してホームコネクター(登録商標)などの棒状の中空式金物22を挿入し、その中空式金物22の内部と外部とに接着剤を充填して硬化させることで、X方向柱2xとX方向梁1xとを半剛接合している。なお、中空式金物22に代えて異形鉄筋等を用いて半剛接合してもよく、半剛接合可能な各種の接合構造を採用することができる。
【0023】
図4に示すように、X方向柱2xは、それが配置されるラーメン構面に沿う方向(X方向)を強軸方向とする長方形断面柱Pに構成され、この長方形断面柱Pは、それの弱軸方向(短辺方向、水平力抵抗方向に直交する直交方向に相当)に複数(図示例では3つ)の扁平な長方形断面を有する木材Mを非接着で積層し、例えば複数の木材Mをボルト・ナット等の締結手段にて固定して構成されている。また、X方向梁1xは、X方向柱2xに対応し、梁幅方向に複数(図示例では3つ)の扁平な長方形断面を有する木材Mを非接着で積層し、例えば複数の木材Mをボルト・ナット等の締結手段にて固定して構成されている。そのため、本実施形態では、X方向柱2xの木材Mの夫々とX方向梁1xの木材Mの夫々とを上述した接合構造にて半剛接合している。
【0024】
ピン接合は、架構の構造計算上、曲げモーメントを略伝達しないと見做せる固定度の低い接合構造である。本実施形態では、例えば、
図4に示すように、X方向柱2xの短辺方向(図中の上下方向の)の両側面に貫通ボルト11等で取り付けたプレセッター(登録商標)などの平面視でコの字状の取付金具12をY方向梁1yの端面に埋め込むとともに、その埋め込み状態のコの字状の取付金具12を横断する状態にドリフトピン(図示省略)などをY方向梁1yに打ち込むことで、X方向柱2xとY方向梁1yをピン接合している。
なお、この接合構造に代えて、L字状のガセットプレートをX方向柱2xとY方向梁1yとに亘らせる状態で配置した上でビス等で固定することで、X方向柱2xとY方向梁1yをピン接合するようにしてもよく、ピン接合可能な各種の接合構造を採用することができる。
【0025】
図4に示すように、Y方向梁1yは、梁幅方向に複数(図示例では二つ)の扁平な長方形断面を有する木材Mを非接着で積層し、例えば複数の木材Mをボルト・ナット等の締結手段にて固定して構成されている。そのため、本実施形態では、X方向柱2xとY方向梁1yの木材Mの夫々とを上述した接合構造にてピン接合している。
【0026】
次に、長方形断面柱Pの柱脚構造(木製柱用柱脚構造に相当)について
図5を参照して説明を加える。この
図5では、長方形断面柱Pとして水平力抵抗方向をX方向とするX方向柱2xを例示している。
【0027】
図5(a)に示すように、長方形断面柱Pは、鋼材製の柱脚用金物31を用いて基礎41上に設置されている。柱脚用金物31には、基礎41上に略水平に配置される平板状の長方形状のプレート部31Aと、そのプレート部31Aの長手方向(図中X方向、前記水平力抵抗方向)の中間部から上方側に延び、当該中間部に配設される長方形断面柱Pの下端部の貫通孔32に差し込まれる複数の差込部31Bとが備えられている。柱脚用金物31は、1つのプレート部31Aを備えるだけであるので、柱脚用金物31を構成するプレート部を少なくすることで構成の簡略化や建て方時の施工性の向上を図ることができる。
【0028】
プレート部31Aにおいて、長方形断面柱Pの配設部位よりも長手方向(図中X方向)の両外方側に延出する外方延出部位31aには、例えば基礎41に定着されるアンカーボルト33の頭部が挿通可能な挿通部(図示省略)が形成されている。そして、それら挿通部に挿通されたアンカーボルト33の頭部にナット34等を締結し、外方延出部位31aにアンカーボルト33を固定することで、柱脚用金物31が基礎41上に固定されている。
【0029】
つまり、プレート部31Aは、長方形断面柱Pの前記水平力抵抗方向(強軸方向(長辺方向))を長手方向(図中X方向)として、その長手方向の両端部にアンカーボルト33が固定され、且つ、その長手方向の中間部に差込部31Bが配設される形態で、差込部31Bとアンカーボルト33とが長手方向に並ぶように配設されている。
【0030】
そのため、長方形断面柱Pの前記水平力抵抗方向強軸方向に作用する水平力が、プレート部31Aの長手方向の中間部で短手方向を回転軸とする曲げ応力として作用することに対して、その曲げ応力により引き抜き力を受けるアンカーボルト33の設置間隔を、前記水平力抵抗方向に沿うプレート部31Aの長手方向の両端部間の広い間隔とすることができ、アンカーボルト33の引き抜き抵抗力を良好に確保することができる。
【0031】
複数の差込部31Bは、例えばホームコネクター(登録商標)などの棒状の中空式金物にて構成され、その下端部をプレート部31Aに溶接等で固定することで、柱脚用金物31に一体的に備えられている。中空式金物からなる複数の差込部31Bを長方形断面柱Pの下端部の貫通孔32に差し込み、その複数の差込部31Bの内部と外部とに接着剤(図示省略)を充填して硬化させることで、柱脚用金物31と長方形断面柱Pとが固定されている。
【0032】
更に、プレート部31Aには、水平力抵抗方向に沿う長手方向(図中X方向)の全長又は略全長に延在してプレート部31Aの曲げ変形に抵抗するリブプレート31Dが備えられている。そのため、地震時等に長方形断面柱Pに水平力が作用した際に長方形断面柱Pからプレート部31Aに作用する曲げ応力によってプレート部31Aが曲げ変形するのをリブプレート31Dにより防止することができ、プレート部31Aを通じて曲げ応力を基礎41に適切に伝達することができる。
【0033】
リブプレート31Dは、
図5(b)及び
図5(c)に示すように、プレート部31Aの短手方向(図中Y方向、前記水平力抵抗方向に直交する直交方向に相当)に間隔を空けて複数備えられている。具体的には、複数のリブプレート31Dとして、プレート部31Aの短手方向の両外側の二つの第1リブプレート31bと、プレート部31Aの短手方向の中間部の二つの第2リブプレート31cとが備えられている。
【0034】
プレート部31Aの短手方向の両外側の二つの第1リブプレート31bは、プレート部31Aの長方形断面柱Pの配設部位よりも短手方向の両外側に外れた両外側部に配置されている。具体的には、第1リブプレート31bは、短手方向で長方形断面柱Pの外面と間隔を空けた部位に配置されている。
他方、プレート部31Aの短手方向の中間部の二つの第2リブプレート31cは、プレート部31Aの長方形断面柱Pの配設部位と重複する中間部に配置されている。具体的には、第2リブプレート31cは、長方形断面柱Pがプレート部31Aの短手方向(図中Y方向)に3つの木材Mを非接着で積層して構成されていることに対応し、プレート部31Aの中間部において短手方向で長方形断面柱Pを構成する複数の木材Mの境界に対応する部位に配置されている。
【0035】
このように、長方形断面柱Pの配設部位も有効に活用してプレート部31Aの全体に複数のリブプレート31Dを分散して備えさせているので、地震時等に長方形断面柱Pに水平力が作用した際にプレート部31Aが曲げ変形するのを更に効果的に抑制することができる。
【0036】
更に、本実施形態では、上述の如く、長方形断面柱Pが、プレート部31Aの短手方向(図中Y方向)に3つの木材Mを非接着で積層して構成されていることに対応し、3つのプレート部31Aにおいて、長方形断面柱Pを構成する木材Mの夫々に対応して短手方向に区分される3つ(複数の一例)の個別木材対応領域部位A(具体的には、短手方向の中間部の二つの第2リブプレート31cで仕切られた3つの領域部位)の夫々に、アンカーボルト33と差込部31Bが配設されている。
つまり、プレート部31Aの3つの個別木材対応領域部位Aの夫々がアンカーボルト33にて基礎41上に固定され、且つ、差込部31Bにて木材Mが固定されているので、長方形断面柱Pを構成する3つの木材Mの夫々に作用する水平力を個別木材対応領域部位Aの夫々に配設された差込部31B及びアンカーボルト33を介して基礎41に効率よく伝達することができる。
【0037】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0038】
(1)前述の実施形態では、木製柱が、長方形断面柱Pとして構成されている場合を例に示したが、正方形断面柱や円形断面柱として構成されていてもよい。
【0039】
(2)前述の実施形態では、柱脚用金物31のプレート部31Aに、長方形断面柱Pが3つの木材Mを非接着で積層して構成されていることに対応して、3つの個別木材対応領域部位Aが設けられている場合を例に示したが、長方形断面柱Pを構成する木材Mの数は2つや4つ以上であってもよい。また、個別木材対応領域部位Aの数も2つや4つ以上であってもよく、長方形断面柱Pを構成する木材Mの数に対応する数又はそれ以上であればよい。
【0040】
(3)前述の実施形態では、柱脚用金物31のプレート部31Aに設けられる複数のリブプレート31Dとして、複数の第1リブプレート31bと複数の第2リブプレート31cを例に示したが、いずれか一方であってもよい。
【0041】
(4)前述の実施形態では、上記第1リブプレート31bが、柱脚用金物31のプレート部31Aの短手方向で長方形断面柱Pの配設部位よりも両外方側に外れた両外側部に設けられている場合を例に示したが、一方の外側部だけに設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
2x X方向柱(木製柱)
2y Y方向柱(木製柱)
3x X方向耐震間柱(木製柱)
3y Y方向耐震間柱(木製柱)
31 柱脚用金物
31A プレート部
31B 差込部
31D リブプレート
31a 外方延出部位
31b 第1リブプレート
31c 第2リブプレート
33 アンカーボルト
41 基礎
A 個別木材対応領域部位
M 木材
P 長方形断面柱(木製柱)