(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148265
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】射出成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/28 20060101AFI20241010BHJP
B29C 45/13 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B29C45/28
B29C45/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061259
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕児
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK02
4F202CK06
4F202CK90
4F202CS10
4F206JA07
4F206JB21
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN14
4F206JN15
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】量産効率の高い射出成形装置を提供する。
【解決手段】それぞれ異なる樹脂材を射出する複数の射出ノズルP1,P2と、各射出ノズルP1,P2にそれぞれ対応したスプルー22,23を複数有する板状のランナープレート3と、ランナープレート3に対して離接可能に配置され、ランナー成形面32、キャビティ面34及びゲート36を有する板状のキャビティプレート4と、ラキャビティプレート4に対して離接可能に配置され、キャビティ面34と対向配置されるコア5と、を有し、ランナープレート3は、各スプルー22,23に対応する貫通孔51を備え当該貫通孔51を移動させることでスプルー22,23を選択的に開閉する板状の切替プレート6を備えていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形品を成形する射出成形装置であって、
それぞれ異なる樹脂材を射出する複数の射出ノズルと、
各前記射出ノズルにそれぞれ対応したスプルーを複数有する板状のランナープレートと、
前記ランナープレートに対して離接可能に配置され、前記樹脂材を充填してランナーを形成するランナー成形面、樹脂成形製品を形成するキャビティ面及び前記ランナー成形面から前記キャビティ面へ向けて貫通し、各前記射出ノズルから射出される樹脂材の通り道を統合してなるゲートを有する板状のキャビティプレートと、
前記キャビティプレートに対して離接可能に配置され、前記キャビティ面と対向配置されるコアと、を有し、
前記ランナープレートは、各前記スプルーに対応する貫通孔を備え当該貫通孔を移動させることで前記スプルーを選択的に開閉する板状の切替プレートを備えていることを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
前記切替プレートは、回転移動又はスライド移動することを特徴とする請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項3】
前記ランナープレートと前記射出ノズルの間に固定取付プレートを有し、
前記固定取付プレートは、各射出ノズルが配置される複数のノズル配置部と、各前記ノズル配置部から各前記スプルーに連通する複数の連通孔と、を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の射出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック等の樹脂を成形する技術として射出成形装置が知られている。特許文献1の射出成形装置は、1個の溶融樹脂射出用ノズルを有する射出バレル内を進退し、溶融樹脂を射出、計量するプランジャと、プランジャを進退させる駆動装置を備えている。また、特許文献1の射出成形装置は、射出バレルの周りに複数個設けられ、樹脂材料供給口にホッパを夫々備えた第1加熱バレルと、第1加熱バレル内に回転自在に夫々挿着されたスクリュとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の射出成形装置において、例えば、樹脂成形品の色や材種を変える場合、当該装置の内部を大量の洗浄剤を用いてその都度洗浄しなければならない。そのため、当該洗浄作業が煩雑になり、量産効率の面で改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、量産効率の高い射出成形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、樹脂成形品を成形する射出成形装置であって、それぞれ異なる樹脂材を射出する複数の射出ノズルと、各前記射出ノズルにそれぞれ対応したスプルーを複数有する板状のランナープレートと、前記ランナープレートに対して離接可能に配置され、前記樹脂材を充填してランナーを形成するランナー成形面、樹脂成形製品を形成するキャビティ面及び前記ランナー成形面から前記キャビティ面へ向けて貫通し、各前記射出ノズルから射出される樹脂材の通り道を統合してなるゲートを有する板状のキャビティプレートと、前記キャビティプレートに対して離接可能に配置され、前記キャビティ面と対向配置されるコアと、を有し、前記ランナープレートは、各前記スプルーに対応する貫通孔を備え当該貫通孔を移動させることで前記スプルーを選択的に開閉する板状の切替プレートを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ランナープレートとキャビティプレートとの間を離接させることで、冷却固化したランナーを容易に除去することができる。また、スプルー、ランナー成形面及びゲートが連通しているため、各部位に残存して冷却固化したライナーを容易に取り出しやすい。これにより、スプルー、ランナー成形面及びゲートの清掃を省略するか、清掃を簡易に行うことができる。また、切替プレートを備えているため、樹脂の色替え又は材種替えを容易に行うことができる。
【0008】
また、前記切替プレートは、回転移動又はスライド移動することが好ましい。
本発明によれば、切り替え作業を容易に行うことができる。
【0009】
また、前記ランナープレートと前記射出ノズルの間に固定取付プレートを有し、前記固定取付プレートは、各射出ノズルが配置される複数のノズル配置部と、各前記ノズル配置部から各前記スプルーに連通する複数の連通孔と、を有することが好ましい。
【0010】
本発明によれば、固定取付プレートにノズル配置部及び連通孔を備えているため、射出ノズルから射出される樹脂をスムーズに前記貫通孔に導くことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、量産効率の高い射出成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る射出成形装置の縦断面図(樹脂材充填前)である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る射出成形装置の縦断面図(樹脂材充填後)である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る射出成形装置の切替プレートの平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る射出成形装置の脱型後の断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る射出成形装置の縦断面図(色替え工程後)である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る射出成形装置の切替プレートの平面図(色替え工程後)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る射出成形装置の縦断面図(樹脂材充填前)である。この射出成形装置1は、溶融した樹脂材を成形して樹脂成形品101(
図4参照)を製造する装置である。射出成形装置1は、
図1で右側から順に、射出ノズルP1,P2と、固定取付プレート2と、ランナープレート3と、キャビティプレート4と、コア5とを備えている。なお、説明における上下、左右は
図1の状態に従う。当該方向は、説明の便宜上用いるものであって、本発明の方向を限定するものではない。
【0014】
射出ノズルP1,P2は、色又は材種の異なる樹脂材が射出されるノズルである。本実施形態では、射出ノズルP1,P2に対して任意に樹脂材が射出するようになっている。
【0015】
固定取付プレート2は、射出ノズルP1,P2とランナープレート3との間に配設される板状の部材である。固定取付プレート2は、左右方向に連通する連通孔11,12と、ノズル配置部14,15とを備えている。連通孔11は、射出ノズルP1の開口に連続する位置に設けられている。連通孔12は、射出ノズルP2の開口に連続する位置に設けられている。ノズル配置部14は、連通孔11に連続し、射出ノズルP1の先端形状に合わせて凹んで形成されている。同様にノズル配置部15は、連通孔12に連続し、射出ノズルP2の先端形状に合わせて凹んで形成されている。ノズル配置部14,15には、射出ノズルP1,P2がそれぞれ当接して配置される。
【0016】
なお、固定取付プレート2に対して連通孔11,12は一体的に設けられていてもよいが、本実施形態のように別部材で形成してもよい。これにより、連通孔11,12を備えた当該部材を固定取付プレート2から取り外してメンテナンスなどを容易に行うことができる。また、連通孔11,12は、一定の大きさの孔でもよいが、本実施形態のように樹脂材の流通方向に向けて徐々に拡径するようにしてもよい。
【0017】
ランナープレート3は、固定取付プレート2とキャビティプレート4との間に配設された板状の部材である。ランナープレート3の右側の対向面27は、固定取付プレート2の左側の対向面18と接触している。ランナープレート3は、固定取付プレート2と面接触又は離間可能になっている。
【0018】
ランナープレート3は、凹部21に配置された切替プレート6と、スプルー22,23とを備えている。凹部21は、固定取付プレート2側に開放した円柱状の中空部を備えている。切替プレート6は、円板状を呈し、凹部21に回転可能に配置されている。切替プレート6は、板厚方向に貫通する貫通孔51が形成されている。貫通孔51は、切替プレート6が回転した際に連通孔11,12にそれぞれ連通する位置に設けられている。貫通孔51は、一定の大きさの孔でもよいが、本実施形態のように樹脂材の流通方向に向けて徐々に拡径するようにしてもよい。
【0019】
切替プレート6は、その中心に連結される回転軸7を介してアクチュエータ8に接続されている。アクチュエータ8は、制御部(図示省略)の制御信号に基づいて回転駆動可能に形成されている。
【0020】
スプルー22は、連通孔11に対応する位置において、切替プレート6に隣接して形成されている。スプルー22は、連通孔11側から対向面28まで貫通している。
図1の状態では、スプルー22は貫通孔51と連通している。
【0021】
スプルー23は、連通孔12に対応する位置において、切替プレート6に隣接して形成されている。スプルー23は、連通孔12側から対向面28まで貫通している。
図1の状態では、スプルー23は切替プレート6に塞がれている。
【0022】
なお、ランナープレート3に対してスプルー22,23は一体的に設けられていてもよいが、本実施形態のように別部材で形成してもよい。これにより、スプルー22,23を備えた当該部材をランナープレート3から取り外してメンテナンスなどを容易に行うことができる。また、スプルー22,23は、一定の大きさの孔でもよいが、本実施形態のように樹脂材の流通方向に向けて徐々に拡径するようにしてもよい。
【0023】
キャビティプレート4は、ランナープレート3とコア5との間に配設された板状の部材である。キャビティプレート4の右側の対向面31は、ランナープレート3の左側の対向面28と接触している。キャビティプレート4は、ランナープレート3と面接触又は離間可能になっている。
【0024】
キャビティプレート4は、ランナー成形面32と、キャビティ面34と、ゲート36と、を備えている。ランナー成形面32は、後記するランナー111(
図4参照)が成形される部位であって、ランナープレート3側に開放され凹状を呈する。キャビティ面34は、後記する樹脂成形品101(
図4参照)が成形される部位であって、コア5側に開放され凹状を呈する。
【0025】
ゲート36は、ランナー成形面32からキャビティ面34に連通する孔である。ゲート36は、樹脂材の流通方向に向けて徐々に縮径するように形成されている。ゲート36は、射出ノズルP1(又は射出ノズルP2)から射出される樹脂材の通り道を統合する部位である。
【0026】
コア5は、キャビティプレート4の左側に配設された板状の部材である。コア5の右側の対向面41は、キャビティプレート4の左側の対向面35と接触している。コア5は、キャビティプレート4と面接触又は離間可能になっている。コア5のキャビティプレート4側の面には、コア成形面55が形成されている。コア成形面55は、キャビティ面34に対応するように、キャビティ面34側に突出して形成されている。キャビティ面34とコア成形面55とで樹脂成形品101が成形されるキャビティが形成されている。
【0027】
次に、射出成形装置1を用いた樹脂成形方法について説明する。ここでは、最初にA色の樹脂成形品101を形成した後、B色の樹脂成形品を形成する場合を例示する。本実施形態の樹脂成形方法では、型締め工程と、射出工程と、固化工程と、脱型工程と、取出工程と、型締め工程(色替え工程)と、射出工程と、固化工程と、脱型工程と、取出工程と、を行う。
【0028】
型締め工程では、
図1に示すように、固定取付プレート2と、ランナープレート3と、キャビティプレート4と、コア5とを接触させ、型締めする。この時、貫通孔51は、
図1(
図3も参照)に示すように、連通孔11及びスプルー22と連通するように位置させる。
【0029】
射出工程では、射出ノズルP1から溶融したA色の樹脂材Z1を射出する。これにより、
図2に示すように、射出成形装置1の各空間にA色の樹脂材Z1が充填される。
【0030】
固化工程では、所定の期間冷却させ、樹脂材を固化させる。
脱型工程では、
図4に示すように、ランナープレート3と、キャビティプレート4と、コア5とを離間させ脱型する。
【0031】
取出工程では、
図4に示すように、樹脂成形品101及びランナー111を取り出す。樹脂成形品101からランナー111を除去することで、A色の樹脂成形品101を得ることができる。ランナー111は、ランナー本体部112と、第1ランナー肢部113、第2ランナー肢部114及び第3ランナー肢部115を備えている。
【0032】
ランナー本体部112は、ランナー成形面32と対向面28とで成形された部位である。第1ランナー肢部113は、スプルー22、貫通孔51及び連通孔11で成形された部位である。第2ランナー肢部114は、スプルー23で成形された部位である。第3ランナー肢部115は、ゲート36で成形された部位である。
【0033】
型締め工程(色替え工程)では、
図5に示すように、再度固定取付プレート2と、ランナープレート3と、キャビティプレート4と、コア5とを接触させ、型締めする。この時、アクチュエータ8を駆動させて、貫通孔51(
図6も参照)を連通孔12及びスプルー23と連通するように位置させる。これにより、射出ノズルP1側の流路は、切替プレート6によって遮断される。
【0034】
射出工程では、射出ノズルP2から溶融したB色の樹脂材Z2を射出する。これにより、
図5に示すように、射出成形装置1の各空間に樹脂材Z2が充填される。その後の固化工程、脱型工程及び取出工程は前記したものと同一であるため、説明を省略する。これにより、B色の樹脂成形品を得ることができる。
【0035】
以上説明した本実施形態に係る射出成形装置1(射出成形方法)によれば、樹脂成形品の色替えを行う場合に、量産効率を高めることができる。つまり、ランナープレート3とキャビティプレート4との間を離接させることで、冷却固化したランナー111を容易に除去することができる。また、スプルー22,23、ランナー成形面32及びゲート36が連通しているため、各部位に残存して冷却固化したランナー111を容易に取り出すことができる。これにより、スプルー22,23、ランナー成形面32及びゲート36の清掃を省略できるか、簡易に行うことができる。これにより、従来に比べて製造サイクルを短くすることができ、量産性を高めることができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、切替プレート6を備えているため、射出ノズルP1,P2の切り替え作業(開閉作業)を容易に行うことができる。換言すると、ランナー111を取り出し、切替プレート6を切り替えるだけで、色替え作業に対応することができる。また、回転軸7及びアクチュエータ8を備えることで、切替プレート6の回転制御を容易に行うことができる。また、切替プレート6を回転させるだけでよいため、構造及び制御を簡素化できる。
【0037】
また、固定取付プレート2にノズル配置部14,15及び連通孔11,12をそれぞれ備えているため、射出ノズルP1,P2から射出される樹脂材をスムーズに貫通孔51に導くことができる。また、固定取付プレート2は省略してもよいが、固定取付プレート2を設けることで、回転する切替プレート6と射出ノズルP1,P2との接触を避けることができ、射出ノズルP1,P2の摩耗、損傷を防ぐことができる。また、射出ノズルP1,P2の先端形状に沿って凹むノズル配置部14,15を備えているため、射出ノズルP1,P2を安定して保持することができる。
【0038】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲で設計変更が可能である。例えば、切替プレート6は、本実施形態では回転させたが、直線的にスライドさせて貫通孔51の位置を移動させてもよい。また、本実施形態では、射出ノズルを2つにしたが、3つ以上にしてもよい。これに伴って、連通孔及びスプルーの個数も適宜増加させればよい。
【0039】
また、固定取付プレート2は省略して、射出ノズルが直接貫通孔51に臨むようにしてもよい。また、本実施形態では、固定取付プレート2、ランナープレート3、キャビティプレート4及びコア5の上下方向の高さが同一になっており全体的にコンパクトになっているが、異なっていてもよい。また、樹脂材は、本実施形態では色違いであることを例示したが、材種が異なるものであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 射出成形装置
2 固定取付プレート
3 ランナープレート
4 キャビティプレート
5 コア
6 切替プレート
11,12 連通孔
22,23 スプルー
32 ランナー成形面
34 キャビティ面
36 ゲート
51 貫通孔
101 樹脂成形品
P1 射出ノズル
P2 射出ノズル