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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148277
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 27/00 20060101AFI20241010BHJP
   F04C 2/344 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
F04C27/00 311
F04C2/344 331E
F04C2/344 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061281
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 修平
【テーマコード(参考)】
3H040
3H129
【Fターム(参考)】
3H040AA07
3H040BB05
3H040CC04
3H040DD02
3H040DD07
3H040DD09
3H040DD16
3H129AA01
3H129AB01
3H129BB16
3H129BB42
3H129CC03
3H129CC04
3H129CC09
3H129CC19
(57)【要約】
【課題】小型で構造が簡単であり且つ汎用性に優れた圧縮機を提供する。
【解決手段】圧縮する圧縮機1は、軸方向に延びており軸周に外歯歯車11を有する入力軸10と、軸方向からみた平面視が略三角形状であり外歯歯車11に係合する内歯歯車22を有し入力軸10の軸回転に伴って入力軸10のまわりを公転する回動するロータ20と、ロータ20を回転可能に収容しロータ20との間に作動室32を形成するロータハウジング30と、を備え、ロータ20には、3つの角部23のそれぞれにおいてロータハウジング30の内周面31と摺接するシール部材24と、シール部材24を内周面31に押し付ける弾性部材25と、が設けられ、ロータハウジング30には、作動室32にエアを吸入する吸入孔33a,33bと、作動室32で圧縮されたエアを排出する排出孔34a,34bと、が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮機であって、
軸方向に延びており軸周に外歯歯車を有する入力軸と、
上記軸方向からみた平面視が略三角形状であり上記外歯歯車に係合する内歯歯車を有し、上記入力軸の軸回転に伴って上記入力軸のまわりを公転するロータと、
上記ロータを収容し上記ロータとの間に作動室を形成するロータハウジングと、
を備え、
上記ロータには、3つの角部のそれぞれにおいて上記ロータハウジングの内周面と摺接するシール部材と、上記シール部材を上記内周面に押し付ける弾性部材と、が設けられ、
上記ロータハウジングには、上記作動室に上記流体を吸入する吸入孔と、上記作動室で圧縮された上記流体を排出する排出孔と、が設けられている、圧縮機。
【請求項2】
上記ロータは、上記作動室に連通する導入路を有し、上記導入路における上記流体の圧力が上記ロータハウジングの上記内周面に対する上記シール部材の押し付け力に利用されるように構成されている、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
上記ロータは、上記流体の圧縮段階において上記導入路を上記作動室のうち上記流体の導入元である高圧領域よりも圧力が低い低圧領域に接続するための接続路と、上記導入路の圧力に応じて上記接続路を開閉する開閉弁と、を有する、請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
上記ロータは、上記開閉弁を閉方向に弾性付勢する弾性部材を有し、上記開閉弁は、上記導入路における上記流体の圧力を常時に受けるように設けられており、上記圧力が管理基準値以下である場合に上記弾性部材による弾性付勢力にしたがって上記接続路を閉止し、上記圧力が上記管理基準値を超えた場合に上記弾性部材による弾性付勢力に抗して上記接続路を開放するように構成されている、請求項3に記載の圧縮機。
【請求項5】
複数の上記ロータ及び上記ロータハウジングを備え、上記入力軸には上記軸方向に互いに離間して設けられた上記複数の上記外歯歯車が設けられており、上記複数の上記ロータのそれぞれの上記内歯歯車が上記複数の上記外歯歯車のそれぞれに係合するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な圧縮機として、スクリュー型の圧縮機やレシプロ型の圧縮機が知られている。スクリュー型の圧縮機は、例えば、下記特許文献1に記載のように、一対のスクリューロータである雄ロータ及び雌ロータを一体回転させて、雄ロータの雌ロータの間で流体を連続して圧縮して高圧化するように構成されている。レシプロ型の圧縮機は、例えば、下記特許文献2に記載のように、ピストンロッドを介してシリンダ内にピストンを往復動させて流体を圧縮して高圧化するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-184443号公報
【特許文献2】特開2007-177668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクリュー型の圧縮機は、噴出し量が大容量であるため大型の設備での使用に適しているが、このような高い性能を必要としない小型の設備での使用には適したものでない。そこで、小型の設備に対しては、噴出し量が低容量のレシプロ型の圧縮機を使用することができる。レシプロ型の圧縮機は、スクリュー型の圧縮機に比べて小型であるという利点があるが、部品点数が多く構造が複雑であるという問題を抱えている。また、レシプロ型の圧縮機は、必要な噴出し能力に応じて独立設計されるものであるため、高圧化した流体を使用する作業内容や環境に合わせて噴出し能力を変更することができず汎用性が低いという点で不利である。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、小型で構造が簡単であり且つ汎用性に優れた圧縮機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
流体を圧縮する圧縮機であって、
軸方向に延びており軸周に外歯歯車を有する入力軸と、
上記軸方向からみた平面視が略三角形状であり上記外歯歯車に係合する内歯歯車を有し、上記入力軸の軸回転に伴って上記入力軸のまわりを公転するロータと、
上記ロータを収容し上記ロータとの間に作動室を形成するロータハウジングと、
を備え、
上記ロータには、3つの角部のそれぞれにおいて上記ロータハウジングの内周面と摺接するシール部材と、上記シール部材を上記内周面に押し付ける弾性部材と、が設けられ、
上記ロータハウジングには、上記作動室に上記流体を吸入する吸入孔と、上記作動室で圧縮された上記流体を排出する排出孔と、が設けられている、圧縮機、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様の圧縮機において、入力軸が外部からの動力によって軸回転したとき、この入力軸の外歯歯車と係合する内歯歯車を有する略三角形状のロータが入力軸のまわりを公転する。ロータの公転時に、このロータの3つの角部がシール部材を介してロータハウジングの内周面を摺動する。このとき、流体は、ロータハウジングの吸入孔を通じて作動室に吸入されて圧縮されたのち、ロータハウジングの排出孔を通じてロータハウジングの外部に排出される。
【0008】
上記構成の圧縮機によれば、入力軸が1回転する間に流体の噴出しを2回行うことができる。このため、レシプロ型の圧縮機に比べると1気筒当たりの流体の噴出し量の2倍を噴出すことができ、その分、圧縮機自体を小型化できる。また、このような圧縮機は、構成部品が少なく構造が簡単である。加えて、入力軸にロータ及びロータハウジングのセットを組付ける構造であるため、同一の入力軸を使用したうえでロータ及びロータハウジングのセット数のみを適宜に変更することができる。この場合、高圧化した流体を使用する作業内容や環境に合うような必要な噴出し能力に応じてロータ及びロータハウジングのセット数を変更することで、圧縮機の汎用性を高めることができる。
【0009】
以上のごとく、上述の態様によれば、小型で構造が簡単であり且つ汎用性に優れた圧縮機を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1の圧縮機の分解斜視図。
図2図1の圧縮機の断面図。
図3図2の圧縮機においてロータの角部の周辺構造を拡大して示す断面図。
図4】実施形態1の圧縮機において入力軸が第1回転位置にある第1動作段階の作動工程の様子を模式的に示す図。
図5図4において入力軸が第1回転位置から第2回転位置まで軸回転した第2動作段階の作動工程の様子を模式的に示す図。
図6図5において入力軸が第2回転位置から第3回転位置まで軸回転した第3動作段階の作動工程の様子を模式的に示す図。
図7図6において入力軸が第3回転位置から第4回転位置まで軸回転した第4動作段階の作動工程の様子を模式的に示す図。
図8図7において入力軸が第4回転位置から第5回転位置まで軸回転した第5動作段階の作動工程の様子を模式的に示す図。
図9図8において入力軸が第5回転位置から第6回転位置まで軸回転した第6動作段階の作動工程の様子を模式的に示す図。
図10図2の圧縮機においてロータの角部の周辺構造を示す拡大図であって、開閉弁が閉状態にあるときの様子を示す図。
図11】エア圧力及びシール圧力が工程の進行に伴って変化することを示すグラフ。
図12図10において開閉弁が閉状態から開状態に切り替わったときの様子を示す図。
図13図1の圧縮機の変更例にかかる圧縮機の分解斜視図。
図14】実施形態2の圧縮機においてロータの角部の周辺構造を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0012】
上述の態様の圧縮機において、上記ロータは、上記作動室に連通する導入路を有し、上記導入路における上記流体の圧力が上記ロータハウジングの上記内周面に対する上記シール部材の押し付け力に利用されるように構成されているのが好ましい。
【0013】
この圧縮機によれば、ロータハウジングの内周面に対するシール部材の押し付け力は、弾性部材による弾性付勢力に導入路における流体の圧力分を加えたものとなる。このとき、導入路の圧力は作動室の圧力に応じて変化する。作動室のうち流体の圧縮段階の領域の圧力は相対的に高く、しかもこの領域には高いシール性が要求される。これに対して、作動室のうち流体の吸入段階の領域の圧力は相対的に低く、この領域に高いシール性は要求されない。このため、導入路における流体の圧力をシール部材の押し付け力に利用するようにすれば、流体の圧縮段階に関与するシール部材のみのシール圧力を上げ、それ以外のシール部材のシール圧力を下げるように調整できる。すなわち、必要なシール性能は確保しつつもシール圧力を工程の進行に応じて最適化することができる。これにより、各シール部材によるシール圧力が流体の圧縮段階にあわせて常に一定である場合に比べて、ロータハウジングの内周面とシール部材との間の摩擦に起因するエネルギーロスを低く抑えることができる。
【0014】
上述の態様の圧縮機において、上記ロータは、上記流体の圧縮段階において上記導入路を上記作動室のうち上記流体の導入元である高圧領域よりも圧力が低い低圧領域に接続するための接続路と、上記導入路の圧力に応じて上記接続路を開閉する開閉弁と、を有するのが好ましい。
【0015】
この圧縮機によれば、導入路の圧力に応じて接続路を開閉する開閉弁を設けることによって、流体の圧縮段階において作動室の高圧領域の圧力が基準管理値を超えて上昇した場合には、開閉弁によって接続路を開放して流体の一部を高圧領域から低圧領域へと逃がすことができる。これにより、作動室の圧力が基準管理値を超えた過圧状態になるのを防ぐことができる。また、高圧領域から低圧領域に流れた流体は、その後の工程の進行に伴って圧縮段階で使用されるため、流体が無駄になるのを防ぐことができる。
【0016】
上述の態様の圧縮機において、上記ロータは、上記開閉弁を閉方向に弾性付勢する弾性部材を有し、上記開閉弁は、上記導入路における上記流体の圧力を常時に受けるように設けられており、上記圧力が管理基準値以下である場合に上記弾性部材による弾性付勢力にしたがって上記接続路を閉止し、上記圧力が上記管理基準値を超えた場合に上記弾性部材による弾性付勢力に抗して上記接続路を開放するように構成されているのが好ましい。
【0017】
この圧縮機によれば、開閉弁を閉方向に弾性付勢する弾性部材を使用することによって、開閉弁の開閉動作を行うための構造を簡素化できる。
【0018】
上述の態様の圧縮機は、複数の上記ロータ及び上記ロータハウジングを備え、上記入力軸には上記軸方向に互いに離間して設けられた上記複数の上記外歯歯車が設けられており、上記複数の上記ロータのそれぞれの上記内歯歯車が上記複数の上記外歯歯車のそれぞれに係合するように構成されているのが好ましい。
【0019】
この圧縮機によれば、入力軸に対するロータ及びロータハウジングのセット数が1つの場合に比べて、流体の噴出し能力を高めることができる。
【0020】
(実施形態1)
以下、図1図13を参照しながら、実施形態1の圧縮機について説明する。
【0021】
なお、この説明のための図面では、特にことわらない限り、圧縮機を構成する入力軸の軸方向を矢印Xで示し、この入力軸の軸回転方向を矢印Dで示すものとする。
【0022】
1.圧縮機1の全体構造
実施形態1の圧縮機1が図1に示されている。この圧縮機1は、エアを圧縮するエアコンプレッサである。エアは、圧縮若しくは膨張して体積が変化する圧縮性を有する流体である。この圧縮機1は、その構成要素として、サイドハウジング2,3と、入力軸10と、ロータ20と、ロータハウジング30と、を備えている。この圧縮機1は、「ロータリー型圧縮機」或いは「ヴァンケル型圧縮機」とも称される。
【0023】
入力軸10は、軸方向Xに延びており軸周に外歯歯車11を有する。入力軸10は、電動モータなどの動力源(図示省略)に接続されており、この動力源の動力によって駆動されて軸回転方向Dに軸回転するように構成されている。また、入力軸10には、ロータ20を公転させる機能を果たす偏心部(図示省略)が設けられている。
【0024】
ロータ20は、軸方向Xからみた平面視が略三角形状である。ロータ20は、いずれも頂部となる3つの角部23を有する。このロータ20は、中心部を軸方向Xに貫通する貫通穴21の内周側に、入力軸10の外歯歯車11に係合する内歯歯車22を有する。ロータ20は、入力軸10の軸回転に伴って入力軸10のまわりを公転するように構成されている。
【0025】
ロータハウジング30は、ロータ20を公転可能に収容するものである。ロータ20がロータハウジング30に収容された状態では、ロータ20の3つの角部23はいずれも、シール部材24において、ロータハウジング30の内周面31と摺接する。このとき、ロータハウジング30は、その内周面31とロータ20の外面との間に作動室32を形成する。
【0026】
サイドハウジング2,3は、ロータハウジング30を挟んで軸方向Xの両側に配置される。入力軸10は、その一端側がサイドハウジング2を軸方向Xに貫通する支持穴2aに挿通され、その他端側がサイドハウジング3を軸方向Xに貫通する支持穴3aに挿通された状態で、軸回転可能に支持される。
【0027】
2.ロータハウジング30の構造
図2に示されるように、ロータハウジング30の内周面31は、トロコイド曲線からなるトロコイド面である。ロータハウジング30には、作動室32に圧縮性を有する流体Gであるエアを吸入する吸入孔33a,33bと、作動室32で圧縮されたエアを排出する排出孔34a,34bと、が設けられている。すなわち、本形態では、ロータハウジング30に吸入孔と排出孔がそれぞれ2つずつ設けられる場合について例示している。必要に応じて、吸入孔と排出孔のそれぞれの数を変更しても良い。なお、本形態のように、圧縮する流体がエアの場合、「吸入」を「吸気」といい、「排出」を「排気」ということもできる。
【0028】
3.ロータ20の構造
図2に示されるように、ロータ20は、ロータハウジング30の内周面31に内接する3葉の内包絡線で構成された略三角形状をなしている。ロータ20のこのような形状は、「ルーローの三角形」とも称される。ロータ20は、入力軸10が軸回転方向Dに軸回転するときに、前述の偏心部の機能によって3つの角部23がロータハウジング30の内周面31をなぞるように公転する。ロータ20に公転に伴って、エアの吸入、圧縮、噴出しが行われる。詳細については後述するが、本形態では、ロータ20は、入力軸10が3回軸回転する間に1回公転するように構成されている。
【0029】
4.シール構造
本形態の圧縮機1のシール構造は、シール部材24及び弾性部材25を有する。ロータ20の3つの角部23(第1角部23A、第2角部23B、第3角部23C)のそれぞれにシール部材24及び弾性部材25が設けられている。各弾性部材25は、その弾性付勢力を利用して、対応するシール部材24をロータハウジング30の内周面31に押し付ける機能を果たす。本形態では、弾性部材25がバネ部材によって構成される場合について例示している。
【0030】
図3に示されるように、ロータ20の第1角部23Aには、作動室32に連通する導入路26と、接続路27と、開閉弁28と、が設けられている。導入路26は、その下流側において、収容空間24aと、収容空間28aと、接続路27と、に分岐している。収容空間24aにシール部材24及び弾性部材25が収容されている。導入路26から収容空間24aにエアが導入されることによって、そのエアの圧力がロータハウジング30の内周面31に対するシール部材24の押し付け力に利用される。これにより、シール部材24は、弾性部材25による弾性付勢力にエア圧力分を加えた力でロータハウジング30の内周面31に押し付けられる。
【0031】
接続路27は、ロータ20によるエアの圧縮段階において、導入路26を作動室32のうちエアの導入元である高圧領域よりも圧力が低い低圧領域に接続するためのエア流路である。収容空間28aに開閉弁28及び弾性部材29が収容されている。収容空間28aは、導入路26よりも拡径された段付き流路である。このため、開閉弁28は、導入路26との境界に形成されている段差部によって導入路26への進入が阻止されている。開閉弁28は、導入路26におけるエアの圧力変化を利用して接続路27を開閉する機能を有する。弾性部材29は、開閉弁28を閉方向に、すなわち導入路26に向けて弾性付勢するものである。本形態では、弾性部材29がバネ部材によって構成される場合について例示している。
【0032】
作動室32の高圧領域の圧力が管理基準値以下である通常負荷時においては、開閉弁28は、弾性部材29による弾性付勢力にしたがって閉位置に保持される。すなわち、弾性部材29が開閉弁28に付与する弾性付勢力が、開閉弁28に作用するエア圧力分の力を上回る。このときの開閉弁28の閉位置は、この開閉弁28が停止部に当接することによって定まる。開閉弁28が閉位置にある場合には、開閉弁28が接続路27を閉止する。すなわち、接続路27が導入路26から分断された状態になる。
【0033】
これに対して、作動室32の高圧領域の圧力が管理基準値を超えた過負荷時においては、開閉弁28に作用するエア圧力分の力が、弾性部材29が開閉弁28に付与する弾性付勢力を上回る。したがって、開閉弁28は、弾性部材29による弾性付勢力に抗して閉位置から開位置へと移動する。これにより、接続路27が導入路26に繋がった状態になり、作動室32のうちの高圧領域から低圧領域へとエアの一部を逃がすことができる。その後、高圧領域の圧力が下がることによって、開閉弁28が再び閉位置へと動く。
【0034】
なお、第2角部23B及び第3角部23Cのそれぞれの構造は、第1角部23Aのものと同様であるため説明を省略する。
【0035】
以上のように、本形態のシール構造は、シール部材24によるシール圧力を導入路26の圧力に応じて調整できる自己シール圧力調整機能を有するものである。
【0036】
5.圧縮機1の動作
次に、図4図11を参照しつつ、上記構成の圧縮機1の動作を説明する。なお、これらの図面では、入力軸10の回転位置を明確するために、入力軸10にその基準位置を示す矢印を付している。
【0037】
5-1.第1動作段階の作動工程
図4に示されるように、先ず、入力軸10が第1回転位置P1にある第1動作段階の作動工程を基準として説明する。この第1動作段階では、ロータ20は、第1角部23Aの作動工程が「吸入」となり、第2角部23Bの作動工程が「噴出し」となり、第3角部23Cの作動工程が「吸入」となる。
【0038】
第1動作段階で圧縮されたエアは、作動室34のうちロータ20の第1角部23Aから第2角部23Bまでの外面によって区画された領域(以下、「排出領域」という。)から排出孔34aを通じて排出される。これと並行して、作動室34のうちロータ20の第2角部23Bから第3角部23Cまでの外面によって区画された領域(以下、「吸入領域」という。)に吸入孔33bを通じてエアが吸入される。また、これと並行して、作動室34のうちロータ20の第3角部23Cから第1角部23Aまでの外面によって区画された領域(以下、「圧縮領域」という。)はエアの圧縮段階に移行する。本形態では、作動室34において、排出領域に対し軸回転方向Dの後方に吸入領域が形成され、吸入領域に対し軸回転方向Dの後方に圧縮領域が形成される。
【0039】
5-2.第2動作段階の作動工程
図5に示されるように、第2動作段階の作動工程では、入力軸10が第1回転位置P1(図4を参照)から第2回転位置P2まで軸回転方向Dに180度軸回転している。この第2動作段階では、ロータ20は、その公転に伴って、第1角部23Aの作動工程が「噴出し」となり、第2角部23Bの作動工程が「吸入」となり、第3角部23Cの作動工程が「吸入」となる。
【0040】
第2動作段階で圧縮されたエアは、作動室34のうちロータ20の第3角部23Cから第1角部23Aまでの外面によって区画された排出領域から排出孔34bを通じて排出される。これと並行して、作動室34のうちロータ20の第1角部23Aから第2角部23Bまでの外面によって区画された吸入領域に吸入孔33aを通じてエアが吸入される。また、これと並行して、作動室34のうちロータ20の第2角部23Bから第3角部23Cまでの外面によって区画された圧縮領域はエアの圧縮段階に移行する。
【0041】
5-3.第3動作段階の作動工程
図6に示されるように、第3動作段階の作動工程では、入力軸10が第2回転位置P2(図5を参照)から第3回転位置P3まで軸回転方向Dに180度軸回転している。すなわち、入力軸10が第1動作段階の場合に対して1回転している。この第3動作段階では、ロータ20は、その公転に伴って、第1角部23Aの作動工程が「吸入」となり、第2角部23Bの作動工程が「吸入」となり、第3角部23Cの作動工程が「噴出し」となる。
【0042】
第3動作段階で圧縮されたエアは、作動室34のうちロータ20の第2角部23Bから第3角部23Cまでの外面によって区画された排出領域から排出孔34aを通じて排出される。これと並行して、作動室34のうちロータ20の第3角部23Cから第1角部23Aまでの外面によって区画された吸入領域に吸入孔33bを通じてエアが吸入される。また、これと並行して、作動室34のうちロータ20の第1角部23Aから第2角部23Bまでの外面によって区画された圧縮領域はエアの圧縮段階に移行する。
【0043】
このように、第1動作段階から第3動作段階までに入力軸10が1回転する間に、排出孔34aからのエアの噴出しが2回行われる。なお、排出孔34bからのエアの噴出しについても同様である。したがって、本構成によれば、レシプロ型の圧縮機に比べると1気筒当たりのエアの噴出し量の2倍を噴出すことができ、エアの噴出し効率が2倍になる。
【0044】
5-4.第4動作段階の作動工程
図7に示されるように、第4動作段階の作動工程では、入力軸10が第3回転位置P3(図6を参照)から第4回転位置P4まで軸回転方向Dに180度軸回転している。この第4動作段階では、ロータ20は、その公転に伴って、第1角部23Aの作動工程が「吸入」となり、第2角部23Bの作動工程が「噴出し」となり、第3角部23Cの作動工程が「吸入」となる。
【0045】
第4動作段階で圧縮されたエアは、作動室34のうちロータ20の第1角部23Aから第2角部23Bまでの外面によって区画された排出領域から排出孔34bを通じて排出される。これと並行して、作動室34のうちロータ20の第2角部23Bから第3角部23Cまでの外面によって区画された吸入領域に吸入孔33aを通じてエアが吸入される。また、これと並行して、作動室34のうちロータ20の第3角部23Cから第1角部23Aまでの外面によって区画された圧縮領域はエアの圧縮段階に移行する。
【0046】
5-5.第5動作段階の作動工程
図8に示されるように、第5動作段階の作動工程では、入力軸10が第4回転位置P4(図7を参照)から第5回転位置P5まで軸回転方向Dに180度軸回転している。すなわち、入力軸10が第1動作段階の場合に対して2回転している。この第5動作段階では、ロータ20は、その公転に伴って、第1角部23Aの作動工程が「噴出し」となり、第2角部23Bの作動工程が「吸入」となり、第3角部23Cの作動工程が「吸入」となる。
【0047】
第5動作段階で圧縮されたエアは、作動室34のうちロータ20の第3角部23Cから第1角部23Aまでの外面によって区画された排出領域から排出孔34aを通じて排出される。これと並行して、作動室34のうちロータ20の第1角部23Aから第2角部23Bまでの外面によって区画された吸入領域に吸入孔33bを通じてエアが吸入される。また、これと並行して、作動室34のうちロータ20の第2角部23Bから第3角部23Cまでの外面によって区画された圧縮領域はエアの圧縮段階に移行する。
【0048】
5-6.第6動作段階の作動工程
図9に示されるように、第6動作段階の作動工程では、入力軸10が第5回転位置P5(図8を参照)から第6回転位置P6まで軸回転方向Dに180度軸回転している。この第6動作段階では、ロータ20は、その公転に伴って、第1角部23Aの作動工程が「吸入」となり、第2角部23Bの作動工程が「吸入」となり、第3角部23Cの作動工程が「噴出し」となる。
【0049】
第6動作段階で圧縮されたエアは、作動室34のうちロータ20の第2角部23Bから第3角部23Cまでの外面によって区画された排出領域から排出孔34bを通じて排出される。これと並行して、作動室34のうちロータ20の第3角部23Cから第1角部23Aまでの外面によって区画された吸入領域に吸入孔33aを通じてエアが吸入される。また、これと並行して、作動室34のうちロータ20の第1角部23Aから第2角部23Bまでの外面によって区画された圧縮領域はエアの圧縮段階に移行する。
【0050】
第6動作段階の後、入力軸10がさらに軸回転方向Dに180度軸回転することによって、図4の状態に戻る。すなわち、入力軸10が第1動作段階の場合に対して3回転する間にロータ20が1回公転する。
【0051】
ここで、図10図12を参照しながら、シール部材24による前述の「自己シール圧力調整機能」について具体的に説明する。
【0052】
図10に示されるように、例えば、入力軸10が第2位置P2(図5を参照)あるとき、シール部材24は作動室32のうち排出領域32aと吸入領域32bとの間をシールする。排出領域32aは、吸入領域32bに比べて圧力が高い高圧領域であり、吸入領域32bは、排出領域32aに比べて圧力が低い低圧領域である。
【0053】
作動室32の排出領域32aのエアは、ロータ20の導入路26に導入される。本形態では、作動室32の圧力が管理基準値を超えるまで開閉弁28が作動しないように弾性部材29の弾性付勢力が設定されている。このため、作動室32の圧力が管理基準値以下である場合には、開閉弁28が常に閉状態に維持される。この場合、作動室32の排出領域32aから導入路26に導入されたエアは、収容空間24aに収容されているシール部材24によるシール圧力を調整するのに使用される。
【0054】
図11に示されるように、シール部材24によるシール圧力は、弾性部材25による一定の弾性付勢力に導入路26におけるエア圧力を加えたものとして生じる。すなわち、シール圧力からエア圧力を差し引いたものが弾性付勢力分に相当する。したがって、弾性部材25を吸入段階で最低限必要な弾性付勢力を発揮するように設計し、且つ最大圧縮時に所望のシール圧力が生じるように導入路26の構造を設計しておけば、あとは、吸入段階から工程(時間)が進行しエア圧力が最大圧縮時まで上昇することに伴ってシール圧力が所望の値に自動的に調整される。シール圧力を上げたいタイミングにおいてのみ上げることができる。これにより、最大圧縮時以外でシール圧力が過剰に高くなるのを抑制でき、ロータハウジング30の内周面31とシール部材24との間の摩擦に起因するエネルギーロスを低く抑えることができる。しかも、複雑な制御を使用することなく機械的な構造のみでシール圧力を調整することが可能になる。
【0055】
図12に示されるように、作動室32のうち排出領域32aの圧力が管理基準値を超えると、開閉弁28の状態が、接続路27を閉鎖した閉状態から接続路27を開放した開状態に切り替わる。この場合、排出領域32aのエアの一部が導入路26及び接続路27を通じて吸入領域32bに流れる。これにより、エア圧力及びシール圧力が過剰に上昇するのを抑制できる。排出領域32aから吸入領域32bに流れたエアは、吸入領域32bがその後の工程の進行に伴って圧縮段階になるときに使用される。
【0056】
6.作用効果
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0057】
実施形態1の圧縮機1において、入力軸10が外部からの動力によって軸回転したとき、この入力軸10の外歯歯車11と係合する内歯歯車22を有する略三角形状のロータ20が入力軸10のまわりを公転する。ロータ20の公転時に、このロータ20の3つの角部23がシール部材14を介してロータハウジング30の内周面31を摺動する。このとき、エアは、ロータハウジング30の吸入孔33a,33bを通じて作動室32に吸入されて圧縮されたのち、ロータハウジング30の排出孔34a,34bを通じてロータハウジング30の外部に排出される。
【0058】
上記構成の圧縮機1によれば、入力軸10が1回転する間にエアの噴出しを2回行うことができる。レシプロ型の圧縮機に比べると1気筒当たりのエアの噴出し量の2倍を噴出すことができ、その分、圧縮機1自体を小型化できる。また、このような圧縮機1は、構成部品が少なく構造が簡単である。
【0059】
加えて、入力軸10にロータ20及びロータハウジング30のセットを組付ける構造であるため、同一の入力軸10を使用したうえでロータ20及びロータハウジング30のセット数のみを適宜に変更することができる。この場合、高圧化したエアを使用する作業内容や環境に合うような必要な噴出し能力に応じてロータ20及びロータハウジング30のセット数を変更することで、圧縮機1の汎用性を高めることができる。例えば、図1に示されるものに代えて、図13に示される圧縮機1を構築できる。この圧縮機1は、ロータ20及びロータハウジング30の直列式のセット数を2つにしたものである。2つのロータハウジング30の間には、入力軸10を挿通する貫通穴4aを有する中間ハウジング4が介装されている。これにより、簡単な構造変更によってエアの噴出し能力を高めることができる。
【0060】
以上のごとく、上述の実施形態1によれば、小型で構造が簡単であり且つ汎用性に優れた圧縮機1を提供することが可能になる。
【0061】
実施形態1の圧縮機1によれば、ロータハウジング30の内周面31に対するシール部材24の押し付け力は、弾性部材25による弾性付勢力に導入路26におけるエア圧力分を加えたものとなる。このとき、導入路26の圧力は作動室32の圧力に応じて変化する。作動室32のうちエアの圧縮段階の領域の圧力は相対的に高く、しかもこの領域には高いシール性が要求される。これに対して、作動室32のうちエアの吸入段階の領域の圧力は相対的に低く、この領域に高いシール性は要求されない。このため、導入路26におけるエア圧力をシール部材24の押し付け力に利用するようにすれば、エアの圧縮段階に関与するシール部材24のみのシール圧力を上げ、それ以外のシール部材24のシール圧力を下げるように調整できる。すなわち、必要なシール性能は確保しつつもシール圧力を工程の進行に応じて最適化することができる。これにより、各シール部材24によるシール圧力がエアの圧縮段階にあわせて常に一定である場合に比べて、ロータハウジング30の内周面31とシール部材24との間の摩擦に起因するエネルギーロスを低く抑えることができる。
【0062】
実施形態1の圧縮機によれば、導入路26の圧力に応じて接続路27を開閉する開閉弁28を設けることによって、エアの圧縮段階において作動室32の高圧領域の圧力が基準管理値を超えて上昇した場合には、開閉弁28によって接続路27を開放してエアの一部を高圧領域から低圧領域へと逃がすことができる。これにより、作動室32の圧力が基準管理値を超えた過圧状態になるのを防ぐことができる。また、高圧領域から低圧領域に流れたエアは、その後の工程の進行に伴って圧縮段階で使用されるため、エアが無駄になるのを防ぐことができる。
【0063】
実施形態1の圧縮機1によれば、開閉弁28を閉方向に弾性付勢する弾性部材29を使用することによって、開閉弁28の開閉動作を行うための構造を簡素化できる。
【0064】
実施形態1の圧縮機1は、スクリュー型の圧縮機のような高い性能を必要としない小型の設備での使用に適している。また、圧縮機1は、レシプロ型の圧縮機に比べると、エアの脈動、振動及び作動音を低く抑えることができるという利点がある。
【0065】
次に、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、上述の実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0066】
(実施形態2)
図14に示されるように、実施形態2の圧縮機1Aは、ロータ20の各角部23に接続路27及び開閉弁28が設けられていないという点で、実施形態1の圧縮機1と相違している。圧縮機1Aのその他の構成は、実施形態1の圧縮機1のものと同様である。
【0067】
実施形態2によれば、圧縮機1Aの構造を実施形態1の圧縮機1のものに比べて簡素化できる。その他、実施形態1の場合と同様の作用効果を奏する。
【0068】
本発明は、上述の典型的な形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0069】
上述の形態では、弾性部材25,29としてバネ部材を使用する場合について例示したが、同様の機能を有するものであれば、弾性部材25,29としてバネ部材以外の手段を採用することもできる。
【0070】
上述の形態では、流体の1種であるエアを圧縮する場合について例示したが、流体はエアに限定されるものではなく、必要に応じてエア以外の別の流体(例えば、エア以外のガスや液体であって圧縮性を有するもの)を圧縮するようにしても良い。
【符号の説明】
【0071】
1,1A…圧縮機、 10…入力軸、 11…外歯歯車、 20…ロータ、 22…内歯歯車、 23,23A,23B,23C…角部、 24…シール部材、 25…弾性部材、 26…導入路、 27…接続路、 28…開閉弁、 29…弾性部材、 30…ロータハウジング、 31…内周面、 32…作動室、 33a,33b…吸入孔、 34a,34b…排出孔、 G…エア(流体)、 X…軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14