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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148282
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】破砕装置
(51)【国際特許分類】
   B02C 2/04 20060101AFI20241010BHJP
   B02C 23/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B02C2/04 Z
B02C23/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061293
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000150291
【氏名又は名称】株式会社中山ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】中山 弘志
(72)【発明者】
【氏名】一丸 知浩
(72)【発明者】
【氏名】冨永 秀樹
【テーマコード(参考)】
4D063
4D067
【Fターム(参考)】
4D063BB04
4D063BB17
4D063GC40
4D063GD20
4D067EE16
4D067EE38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】旋動式の破砕装置のコア部とフレーム間の隙間において粉塵の潤滑油への混入を最小限に抑えると共に、シールリングに潤滑油を供給することで粉塵の進入を必要最小限に抑える破砕装置を提供する。
【解決手段】破砕対象物を破砕する旋動式の破砕装置10において、コア部12下側に配設されるライナ部15と、ライナ部15を介してコア部12を支える装置フレーム16と、コア部12の下側でライナ部15より外側となる装置フレーム16の所定の設置箇所から鍔状に突出する配置で配設され、コア部12の下部周縁部に設けられる溝に常時挿入状態とされる円環状のシールリング18と、コア部12とライナ部15との摺設面部に供給された潤滑油を回収するための潤滑油回収路とを備え、潤滑油回収路を、潤滑油が流通する流通状態と、前記潤滑油が流通しない非流通状態とに変更する変更手段を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向を垂直方向から所定角度傾斜させて上端部を中心に旋動可能に支持される主軸と、当該主軸を中心に貫通させて主軸上部に取り付けられ、下部に凸状の球面部が形成される略円錐状のコア部と、当該コア部の外周に取り付けられて円錐面状に配置されるマントルと、当該マントルを取り囲むようにして円錐面状に固定配置されるコンケーブとを備え、固定されたコンケーブに対し主軸と一体のコア部及びマントルを旋動させ、コンケーブとマントルとの間に供給される破砕対象物を破砕する旋動式の破砕装置において、
当該コア部の球面部と摺動可能に接する凹状の球面とされる摺接面部を少なくとも有し、前記主軸を取り囲むように連続する環状体とされ、前記コア部下側に配設されるライナ部と、
前記ライナ部の下面に接する接触面を有し、当該ライナ部を介して前記コア部を支える装置フレームと、
前記コア部の下側で前記ライナ部より外側となる前記装置フレームの所定の設置箇所から前記コア部の下部周縁部に向けて鍔状に突出する配置で配設され、コア部の下部周縁部に設けられる溝に常時挿入状態とされる円環状のシールリングと、
前記装置フレームの前記設置箇所の内側で前記ライナ部より外側となる空隙領域から延出する流通路であって、前記摺設面部に供給された潤滑油を回収するための潤滑油流通路とを備え、
前記潤滑油流通路を、前記潤滑油が流通する流通状態と、前記潤滑油が流通しない非流通状態とに変更する変更手段を備えることを特徴とする破砕装置。
【請求項2】
請求項1に記載の破砕装置において、
前記シールリングと前記装置フレームの前記設置箇所とが接触する接触面に、前記主軸を取り囲むように環状に連続する凹溝部が形成されており、当該凹溝部に前記潤滑油が供給されることを特徴とする破砕装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の破砕装置において、
前記シールリングが、前記装置フレームの前記設置箇所に接触する接触面を形成する第1面部と、当該第1面部から連通し、コア部の下部周縁部に設けられる溝に常時挿入状態となる第2面部とを有する構成で断面略L字状に形成されており、前記第2面部の表面に前記主軸を取り囲むように環状に連続する凹溝部が形成されており、当該凹溝部に潤滑油が供給されることを特徴とする破砕装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の破砕装置において、
前記シールリングに形成された前記凹溝部の潤滑油と、前記破砕対象物の破砕で生じる粉塵とを前記コア部の旋動により混合して乳化層を形成することを特徴とする破砕装置。
【請求項5】
請求項4に記載の破砕装置において、
前記シールリングが、前記装置フレームの前記設置箇所に接触する接触面を形成する第1面部を有し、当該第1面部の下端部分において、前記主軸の外側方向にテーパー加工されていることを特徴とする破砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋動式の破砕装置に関し、特に摺動部分や潤滑油循環経路への粉塵等の異物進入を防止する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばコーンクラッシャ等の旋動式の破砕装置では、固定されたコンケーブに対しコーン形状のマントルを旋動させ、コンケーブとマントルとの間で破砕対象物を破砕する。
【0003】
破砕により摩耗するマントルは、円錐状のコア部外周に着脱交換可能に取り付けられている。このマントルを取り付けられたコア部は、一般に破砕装置のフレームに摺動可能に面接触しており、破砕時の荷重をフレームで受けて支える仕組みである。コア部とフレームの摺接面は球面状に形成され、潤滑油(オイル)を供給されつつ、コア部のマントルと共に旋動する動きを許容する構造である。
【0004】
コア部に連結された主軸に加わる駆動力でコア部をスムーズに旋動させるために、摺接面間には潤滑油を常に流通させている(例えば、流量数十リットル/分程度)。ここで使用される潤滑油は、破砕装置の作動には欠かせないものであり、摺接箇所に供給不足となることを避けるために、摺接箇所から漏出した潤滑油を回収して循環させ、継続的に供給できるようにしており、循環経路の途中で潤滑油に対しストレーナ等で濾過を行って異物は取り除かれる。
【0005】
破砕装置による破砕の際には粉塵が発生することが避けられないが、破砕装置の構造上、粉塵がコア部とフレーム間の隙間に進入しやすく、摺接箇所の近くなどで粉塵が潤滑油に混入すると、循環経路中の濾過では細かい粉塵を取り除くことが難しいため、細かい粉塵が潤滑油と共に摺接面間に達するおそれがある。粉塵が摺接面間に存在すると、コア部にスムーズな旋動を行わせられないなど不具合が生じることから、従来から、粉塵が浮遊する空間から破砕装置の隙間に粉塵が進入しないようにして、潤滑油に粉塵が混入するのを防止する機構が提案されてきた。
【0006】
特許文献1に示す技術は、コア部と装置フレームとの摺接部分より外側で且つシールリングの下側となる装置フレームの外殻構造部を取り囲むように環状中空体のシールチューブを設置し、流体供給で膨張させたシールチューブをコア部の下部周縁部と外殻構造部にそれぞれ沿わせるようにし、シールリングのさらに外側におけるコア部と装置フレームとの間の隙間にシールチューブを介在させることから、コア部と装置フレームとの間の隙間を装置外部の空間から隔離でき、破砕で生じた粉塵が隙間を経て摺接部分に入り込むのを防げるものである。
【0007】
特許文献2に示す技術は、旋動式破砕機において、破砕室と主軸下部潤滑油循環部との連通を遮断するダストシール構造が、ヘッドセンタの直下にて主軸下部とその軸受とを囲繞するように設けられ、下部胴体フレームに取り付けられた円筒状体と、環状をなし半径方向内方へ傾斜しながら下方へ延び、内周面に周方向に沿う環状溝を有し、前記内周面が円筒状体の外周面に対向するとともに下面がヘッドセンタの係合溝に対し摺動可能に設けられたダストシールリングと、リップ部が円筒状体の外周面に弾性的に密接するようにして環状溝内に装着されるゴム製のVリングとにより構成されているものである。
【0008】
特許文献3に示す技術は、球面支持体の外側に二つの環状シールの環状取付部を夫々形成し、その環状シールのリップ部が当接する環状当接面を円錐ヘッドの外側下側に夫々形成し、両環状シールによって区画される空間に加圧空気を常時送り込むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-200686号公報
【特許文献2】特開2004-136252号公報
【特許文献3】実開平5-63645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1ないし3に示す技術は、いずれもコア部とフレーム間の隙間への粉塵進入を防止することに関する技術であるが、現実的には粉塵の進入防止の観点で十分とは言えず、メンテナンス等に多大な労力が必要になっているという現実がある。
【0011】
本発明は、旋動式の破砕装置のコア部とフレーム間の隙間において粉塵の潤滑油への混入を最小限に抑えると共に、シールリングに潤滑油を供給することで粉塵の進入を必要最小限に抑えることができる破砕装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る破砕装置は、軸方向を垂直方向から所定角度傾斜させて上端部を中心に旋動可能に支持される主軸と、当該主軸を中心に貫通させて主軸上部に取り付けられ、下部に凸状の球面部が形成される略円錐状のコア部と、当該コア部の外周に取り付けられて円錐面状に配置されるマントルと、当該マントルを取り囲むようにして円錐面状に固定配置されるコンケーブとを備え、固定されたコンケーブに対し主軸と一体のコア部及びマントルを旋動させ、コンケーブとマントルとの間に供給される破砕対象物を破砕する旋動式の破砕装置において、当該コア部の球面部と摺動可能に接する凹状の球面とされる摺接面部を少なくとも有し、前記主軸を取り囲むように連続する環状体とされ、前記コア部下側に配設されるライナ部と、前記ライナ部の下面に接する接触面を有し、当該ライナ部を介して前記コア部を支える装置フレームと、前記コア部の下側で前記ライナ部より外側となる前記装置フレームの所定の設置箇所から前記コア部の下部周縁部に向けて鍔状に突出する配置で配設され、コア部の下部周縁部に設けられる溝に常時挿入状態とされる円環状のシールリングと、前記装置フレームの前記設置箇所の内側で前記ライナ部より外側となる空隙領域から延出する流通路であって、前記摺設面部に供給された潤滑油を回収するための潤滑油流通路とを備え、前記潤滑油流通路を、前記潤滑油が流通する流通状態と、前記潤滑油が流通しない非流通状態とに変更する変更手段を備えるものである。
【0013】
このように、本発明に係る破砕装置においては、旋動式の破砕装置において、コア部の球面部と摺動可能に接する凹状の球面とされる摺接面部を少なくとも有し、主軸を取り囲むように連続する環状体とされ、前記コア部下側に配設されるライナ部と、前記ライナ部の下面に接する接触面を有し、当該ライナ部を介して前記コア部を支える装置フレームと、前記コア部の下側で前記ライナ部より外側となる前記装置フレームの所定の設置箇所から前記コア部の下部周縁部に向けて鍔状に突出する配置で配設され、コア部の下部周縁部に設けられる溝に常時挿入状態とされる円環状のシールリングと、装置フレームの前記設置箇所の内側で前記ライナ部より外側となる空隙領域から延出する流通路であって、前記摺設面部に供給された潤滑油を回収するための潤滑油流通路とを備え、前記潤滑油流通路を、前記潤滑油が流通する流通状態と、前記潤滑油が流通しない非流通状態とに変更する変更手段を備えるため、破砕装置の構造上、装置フレームとシールリングとの間に粉塵が進入してしまうような場合には、潤滑油を回収するための流通路を一部封鎖することで潤滑油に粉塵が混入してしまうことを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係る破砕装置の概略構成説明図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る破砕装置におけるコア部及びその下部周縁部の横断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る破砕装置における変更手段及びシールリングの拡大断面図である。
図4図3の変形例を示す第1の図である。
図5図3の変形例を示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る破砕装置を図1ないし図5に基づいて説明する。本実施形態では、破砕装置がコーンクラッシャである例について説明する。
【0016】
図1ないし図3において、本実施形態に係る破砕装置10は、軸方向を垂直方向から所定角度傾斜させて上端部を中心に旋動可能に支持される主軸11と、この主軸11を中心に貫通させて主軸11上部に取り付けられ、下部に凸状の球面部12aが形成される略円錐状のコア部12と、このコア部12の外周に取り付けられて円錐面状に配置されるマントル13と、このマントル13を取り囲むようにして円錐面状に固定配置されるコンケーブ14と、コア部12の球面部12aと摺接する凹状の球面とされる摺接面部15aを有し、主軸11を取り囲むように連続する環状体とされ、コア部12下側に配設されるライナ部15と、このライナ部15の下面で接し、ライナ部15を介してコア部12を支える装置フレーム16と、この装置フレーム16に組み込まれ、主軸11の下部に摺動可能に接触して、主軸11を旋動可能に駆動する駆動機構17と、コア部12の下側でライナ部15より外側となる前記装置フレーム16における所定の設置箇所16aからコア部12の下部周縁部に向けて鍔状に突出する配置で配設され、コア部12の下部周縁部に設けられる溝12cに常時挿入状態とされる円環状のシールリング18と、コア部12、ライナ部15、装置フレーム16及びシールリング18に覆われて形成される空隙領域19において装置フレーム16の前記設置箇所16aの内側で前記ライナ部15より外側となる箇所から延出する流通路であって、摺設面部15aに供給された潤滑油を回収するための潤滑油回収路16bと、当該潤滑油回収路16bを潤滑油が流通可能な状態と、流通不可能な非流通状態とに変更する変更手段20とを備える。この破砕装置10は、固定されたコンケーブ14に対し主軸11と一体のコア部12及びマントル13を旋動させ、コンケーブ14とマントル13との間に供給される破砕対象物を破砕するものである。
【0017】
前記コア部12は、全体として略円錐状に形成され、外周の円錐面にマントル13が重ねて取り付けられる一方、円錐底面側に凸状の球面部12aを形成されており、この球面部12aを装置フレーム16で下から支持される。このコア部12における、球面部12aと同じ円錐底面側で球面部12aより外側となるコア部12の下部周縁部には溝12cが設けられている。
【0018】
ライナ部15は、コア部12の球面部12aと摺動可能に接する凹状の球面とされる摺接面部15aを有して、主軸11を取り囲むように連続する環状体とされる構成である。ライナ部15は、装置フレーム16に固定されてコア部12下側に載置される。
【0019】
装置フレーム16は、公知の破砕装置に用いられるものと同様、コア部12をライナ部15を介して支持する他、主軸11上端部を主軸11が旋動可能となる状態で支持したり、コンケーブ14をマントル13周囲に摩耗量に応じて位置調整可能に支持したり、駆動機構17をなす各部品を可動状態で支持するものである。装置フレーム16のうち、コア部12の下側に位置する部位では、ライナ部15を介してコア部12を下から支持する構成である。
【0020】
この装置フレーム16には、所定の潤滑油供給源(図示を省略)に接続される潤滑油供給路16cが設けられており、この潤滑油供給路16cと連通する主軸11内の潤滑油流通路11a及びコア部12内の潤滑油供給路12bを通じて、潤滑油がコア部12の球面部12aとライナ部15の摺接面部15aとの摺接部分に供給される。そして、空隙領域19において装置フレーム16の前記設置箇所16aの内側で前記ライナ部15より外側となる箇所から延出して潤滑油供給源に接続する潤滑油回収路16bは、球面部12aと摺接面部15aとに供給された潤滑油を回収するための潤滑油流通路である。
【0021】
従来は、空隙領域19に進入した粉塵が潤滑油回収路16bから潤滑油に混入することで潤滑油が汚れてしまい、コア部12の底面部分の表面や微小領域、装置フレーム16の微小領域や表面にオイル汚れがこびり付いたり、潤滑油を綺麗にするためのフィルタに汚れが溜まりやすくなることでメンテナンスに極めて膨大な手間と時間を要していた。
【0022】
図3に示すように、本実施形態に係る破砕装置においては、潤滑油回収路16bを潤滑油が流通する流通状態と潤滑油が流通しない非流通状態とに変更可能な変更手段20を有することで、状況に応じて粉塵が潤滑油に混合されて生じるオイル汚れを抑えることが可能となっている。変更手段20としては、例えばボルトやネジを用いることが可能であり、これらを潤滑油回収路16bに螺入することで潤滑油回収路16bを流通状態から非流通状態に変更することができる。これ以外にも、例えば、潤滑油回収路16bの上にスライド可能な平板状の蓋を設けるような構造としてもよいし、弁を用いて潤滑油回収路16bを塞いでもよいし、粉塵は遮断して潤滑油は通過するようなフィルタで潤滑油回収路16bを塞いでおいてもよい。
【0023】
この変更手段20は、破砕対象物の種類や状態に応じて、潤滑油回収路16bを流通状態と非流通状態とに変更する。例えば破砕対象物が破砕時に粉塵を生じやすいような性質の石である場合は、潤滑油回収路16bを非流通状態にすることで潤滑油の汚れ、フィルタの汚れ及び汚れた潤滑油による他部品への汚れ等を抑えることができる。逆に破砕時に粉塵が出にくいような性質の石である場合は、潤滑油回収路16bを流通状態にすることでできるだけ多くの潤滑油を回収することができる。
【0024】
このように、潤滑油回収路16bを潤滑油が流通する流通状態と、潤滑油が流通しない非流通状態とに変更する変更手段20を備えることで、破砕装置10の構造上、空隙領域19に粉塵が進入してしまうような場合には、潤滑油を回収するための流通路を一部封鎖することで潤滑油に粉塵が混入してしまうことを防止して、装置への汚れの付着やフィルタの汚れを抑えることができる。
【0025】
装置フレーム16のうち、ライナ部15と接触している高さあたりで、且つライナ部15より外側となる所定の設置箇所16aでは、ここからコア部12の下部周縁部に向けて鍔状に突出する配置として、円環状で且つコア部12の球面部12aと同心の所定球面の一部をなすシールリング18が配設される。このシールリング18が、コア部12の下部周縁部に設けられる溝12cに摺動可能に常時挿入状態とされることで、コア部12とライナ部15との摺動部分を外部から隔離して、粉塵が摺動部分に達するのをある程度防ぎ、摺動部分に粉塵が直接入り込んだり、潤滑油に粉塵が混入して潤滑に影響を与える事態を阻止する仕組みとなっている。しかしながら、シールリング18と装置フレーム16とが接触する設置箇所16aや、溝12cにおいて、外部からの粉塵の進入を100%防止することは不可能であり、多少の粉塵は進入してしまう。そのため、上記変更手段20では、潤滑油回収路16bを非流通状態にすることで進入した粉塵が潤滑油に混入するのを防止しているが、本実施形態においては更に、シールリング18を改良することで、粉塵の外部からの進入を最小限に抑える構造としている。
【0026】
具体的には、図3に示すように、シールリング18と装置フレーム16とが接触している設置箇所16aにおいて、シールリング18の接触面を第1面部18aとし、当該第1面部18aに主軸11を取り囲むように環状に連続する第1凹溝部18bが形成されており、当該第1凹溝部18bに潤滑油が供給される構造となっている。第1凹溝部18bに潤滑油が供給されることで、第1凹溝部18bが潤滑油で充填され、シールリング18と装置フレーム16との第1接触面18aにおいて僅かに生じる隙間を潤滑油がシールドし、粉塵が外部から進入するのを防止する。
【0027】
また、図3に示すように、シールリング18は、当該シールリング18と装置フレーム16とが接触している第1面部18aから連通し、コア部12の下部周縁部に設けられる溝12cに常時挿入状態となる第2面部18cを有する構成で断面略L字状に形成されており、第2面部18cの表面に主軸11を取り囲むように環状に連続する第2凹溝部18dが形成されている。第2凹溝部18dに潤滑油が供給されることで、第2凹溝部18dが潤滑油で充填され、溝12cにおいて僅かに生じる隙間を潤滑油がシールドし、粉塵が外部から進入するのを防止する。
【0028】
このように、シールリング18だけでは塞ぐことが難しい微小な隙間を、第1凹溝部18bや第2凹溝部18dに充填された潤滑油が充塞することで、外部から進入する粉塵を最小限に抑えることが可能となっている。
【0029】
シールリング18に形成された第1凹溝部18bや第2凹溝部18dに供給される潤滑油には、第1面部18aや第2面部18cの隙間から進入しようとする粉塵がその進入口付近で混入される状態となる。このとき、シールリング18の第2面部18cは、主軸11の旋動動作に対応して溝12cにおいて摺動している。また、シールリング18の第1面部18aは、設置箇所16aに嵌入された状態で固定されており、完全に接着されて固定される状態ではないため、主軸11の旋動動作に対応して装置フレーム16との間で僅かに摺動している。つまり、第1面部18aの第1凹溝部18bでは、摺動に応じて潤滑油と粉塵とが混合し、激しく撹拌されている状態となっている。同様に、第2面部18cの第2凹溝部18dでも、摺動に応じて潤滑油と粉塵とが混合し、激しく撹拌されている状態となっている。この撹拌により、混合された潤滑油と粉塵とは乳化されて乳化層を形成する。形成された乳化層は、より強固に外部からの粉塵の進入を防止するシールドとして機能する。
【0030】
なお、上記のように、シールリング18に形成された第1凹溝部18bや第2凹溝部18dに供給される潤滑油により粉塵の進入が防止され、多少の粉塵が進入しそうになった場合であっても、それを乳化層を形成するための材料として利用することで粉塵の進入を防止することが可能であるが、使用環境や破砕対象物によっては積極的に乳化層を形成することが粉塵の進入をより強固に防止できる場合があり得る。そのような場合には、第1凹溝部18bや第2凹溝部18dに供給される潤滑油にある程度の量の粉塵を混入させる必要がある。特に、粉塵が進入する隙間が小さい第1面部18aにおいては、第1凹溝部18bの潤滑油に積極的に粉塵を混入させて乳化層を形成するためには、シールリング18を例えば図4に示すような構造にする。図4は、図3に示すシールリング18の変形例を示す図である。図4において、シールリング18は、第1面部18aの下端部分において主軸11の外側方向にテーパー加工された加工部18eを有する形状となっている。このようなテーパ加工を施すことで、乳化層の形成に必要となる程度の粉塵を程よく取り入れつつ、形成された乳化層により内部への粉塵の進入を防止することができる。
【0031】
なお、上記図3及び図4の説明においては、第1凹溝部18b及び第2凹溝部18dの断面形状を三角形のジグザク形状に示しているが、潤滑油が凹溝の深部まで充填しやすい円弧状であったり、比較的加工が容易な矩形状であったり、他の多角形状であってもよい。
【0032】
また図5は、図3に示すシールリング18の更なる変形例を示す図であり、図5において、第1面部18aの表面に第1凹溝部18bを形成する代わりに、潤滑油が含侵された焼結体18fを配設する構成としてもよい。同様に、第2面部18cの表面に第2凹溝部18dを形成する代わりに、同様の潤滑油が含侵された焼結体18gを配設する構成としてもよい。このような焼結体18f,18gを配設することで、第1面部18a及び第2面部18cの表面に潤滑油が常時保持される状態となるため、外部からの粉塵の進入を防止する効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0033】
10 破砕装置
11 主軸
11a 潤滑油流通路
12 コア部
12a 球面部
12b 潤滑油供給路
12c 溝
13 マントル
14 コンケーブ
15 ライナ部
15a 摺接面部
16 装置フレーム
16c 潤滑油供給路
16d 潤滑油回収路
16e 設置箇所
17 駆動機構
18 シールリング
18a 第1面部
18b 第1凹溝部
18c 第2面部
18d 第2凹溝部
18e 加工部
18f,g 焼結体
19 空隙領域
20 変更手段


図1
図2
図3
図4
図5