(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148283
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置用の電極板とその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20241010BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H05H1/46 M
H01L21/302 101C
H01L21/302 101L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061294
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】岡野 晋
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB14
2G084BB26
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD23
2G084DD64
5F004AA01
5F004AA16
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB28
(57)【要約】
【課題】各ガス流路の穴径のバラつきを抑えた電極板を提供する。
【解決手段】ガス流路11の入口111が第一面31に形成され、ガス流路11の出口112が第一面31とは反対に位置する第二面32に形成されており、入口111の穴径φ1の標準偏差が0.15mm以下であり、出口112の穴径φ2の標準偏差が0.11mm以下であり、さらに入口111の穴径φ1の平均値と出口112の穴径φ2の平均値との差の絶対値が0.15mm以下である。ガス流路11の内周面113のマイクロクラックの数が5個以下であり、このマイクロクラックの数は、電極板より20mm角のサンプルを切り出し、サンプルの断面を研磨後に、内周面113の断面の最表面箇所を走査型電子顕微鏡の倍率を1000倍として5箇所観察し、縦128μm横96μmの各視野範囲に存在する深さ5μm以上のクラックの数をそれぞれ数え合算した値である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に貫通する複数のガス流路が形成されたプラズマ処理装置用の電極板であって、
前記ガス流路の入口が第一面に形成され、前記ガス流路の出口が前記第一面とは反対に位置する第二面に形成されており、
前記入口の穴径の標準偏差が0.15mm以下であり、
前記出口の穴径の標準偏差が0.11mm以下であり、
さらに前記入口の穴径の平均値と前記出口の穴径の平均値との差の絶対値が0.15mm以下であることを特徴とする、プラズマ処理装置用の電極板。
【請求項2】
前記ガス流路の内周面のマイクロクラックの数が5個以下であることを特徴とする、請求項1に記載のプラズマ処理装置用の電極板。
ここで、マイクロクラックの数は、電極板より20mm角のサンプルを切り出し、サンプルの断面を研磨後に、前記内周面の断面の最表面箇所を走査型電子顕微鏡の倍率を1000倍として5箇所観察し、縦128μm横96μmの各視野範囲に存在する深さ5μm以上のクラックの数をそれぞれ数え合算した値である。
【請求項3】
プラズマ処理装置用の電極板の製造方法であって、
板部材にドリルで加工を施してガス流路用の複数の貫通孔を有する電極素板を形成する加工工程と、前記電極素板に付着した加工残渣の除去を行う前処理工程と、前処理を施した前記電極素板をエッチングするエッチング工程と、前記エッチング工程後の前記電極素板を洗浄する後洗浄工程と、を備え、
前記前処理工程では前記電極素板を液体中で動かすことを特徴とする、プラズマ処理装置用の電極板の製造方法。
【請求項4】
前記前処理工程は、超音波を印加した前記液体中で前記電極素板を動かすことを特徴とする、請求項3に記載のプラズマ処理装置用の電極板の製造方法。
【請求項5】
前記エッチング工程では、前記電極素板を前記エッチング液中で動かすことを特徴とする、請求項3に記載のプラズマ処理装置用の電極板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のガス流路が貫通したプラズマ処理装置用の電極板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造プロセスに使用されるプラズマエッチング装置やプラズマCVD装置等のプラズマ処理装置では、チャンバー内に、高周波電源に接続される上部電極と下部電極とを上下に対向配置し、下部電極の上に被処理基板を配置した状態として、上部電極を貫通する複数のガス流路からプラズマ生成用のプロセスガスを被処理基板に向かって流通させながら、両電極間に高周波電圧を印加することによりプラズマを発生させ、被処理基板にエッチング等の処理を行う構成とされている。
【0003】
上部電極のガス流路は、シリコンからなる円板にドリルで貫通孔を形成するドリル工程と、ドリル工程の際に生じる貫通孔の内周面に形成されたマイクロクラックや貫通孔の内周面に付着したSi屑等の加工残渣を除去する混合液(フッ酸、硝酸、酢酸を混合してなる)を用いたウェットエッチング工程と、後洗浄工程とを実施して形成されている。
【0004】
特許文献1には、シリコンインゴットをスライスした板材を円板に加工した後に、複数の貫通孔を有する加工円板を形成し、さらに加工円板に対してエッチングや洗浄及び研磨を施してプラズマ処理装置用の電極板を製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のウェットエッチング工程では、ドリル工程によって形成された加工円板を混合液に浸漬させて複数の貫通孔のエッチングが行われるが、各貫通孔のエッチング量にバラつきがあり、結果として形成された複数のガス流路の穴径(直径)にバラつきが生じる。
【0007】
穴径(直径)のバラつきが大きいと、エッチング量が少ないガス流路ではマイクロクラックや加工残渣が残ることになり、上部電極をプラズマ処理装置で使用すると、マイクロクラックの一部が割れることで、また加工残渣がパーティクルの発生原因となって異常放電が起こってしまう。
【0008】
また、各ガス流路の穴径のバラつきが大きくなると反応ガスの流量や流速が変わり、被処理基板に対するプラズマ処理を均一に行えなくなってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、各ガス流路の穴径のバラつきを抑えた電極板とその製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、厚さ方向に貫通する複数のガス流路が形成されたプラズマ処理装置用の電極板であって、前記ガス流路の入口が第一面に形成され、前記ガス流路の出口が前記第一面とは反対に位置する第二面に形成されており、前記入口の穴径の標準偏差が0.15mm以下であり、前記出口の穴径の標準偏差が0.11mm以下であり、さらに前記入口の穴径の平均値と前記出口の穴径の平均値との差の絶対値が0.15mm以下である。
【0011】
標準偏差は小数第三位を四捨五入して得られる数値である。
前記ガス流路の入口と出口の各穴径のバラつきを抑えることで、パーティクルの発生が少なくなり、例えばSiウエハを均一にエッチングすることができる。
【0012】
本発明のプラズマ処理装置用の電極板は、好ましくは、前記ガス流路の内周面のマイクロクラックの数が5個以下である。
ここで、マイクロクラックの数は、電極板より20mm角のサンプルを切り出し、サンプルの断面を研磨後に、前記内周面の断面の最表面箇所を走査型電子顕微鏡の倍率を1000倍として5箇所観察し、縦128μm横96μmの各視野範囲に存在する深さ5μm以上のクラックの数をそれぞれ数え合算した値である。
【0013】
マイクロクラックの数が少ないことで、マイクロクラックの一部が分離してパーティクルの発生原因となることを抑えることができる。
【0014】
本発明は、プラズマ処理装置用の電極板の製造方法であって、板部材にドリルで加工を施してガス流路用の複数の貫通孔を有する電極素板を形成する加工工程と、前記電極素板に付着した加工残渣の除去を行う前処理工程と、前処理を施した前記電極素板をエッチングするエッチング工程と、前記エッチング工程後の前記電極素板を洗浄する後洗浄工程と、を備え、前記前処理工程では前記電極素板を液体中で動かす。
【0015】
前処理工程によって、液体中で電極素板を動かすことで液体を各貫通孔に通し、その内周面が濡れた状態になるので、エッチング液が貫通孔内に速やかに進入して内周面を適切にエッチングすることができ、加工残渣を低減することができる。
【0016】
液体は、例えば水、超純水、アセトン、エタノールやその水溶液である。エタノール等は例えばSi電極板に対する濡れ角が大きく、細いガス流路での濡れ性も良い。水は、水道水などの上水を用いることができるが、好ましくは比抵抗が1MΩ・cm以上の純水を用い、より好ましくは純水のうち比抵抗が15MΩ・cm以上の超純水を用いる。
【0017】
本発明のプラズマ処理装置用の電極板の製造方法は、好ましくは、前記前処理工程は、超音波を印加した前記液体中で前記電極素板を動かす。前記液体に超音波が印加されることで、加工残渣を一層除去することができる。
本発明のプラズマ処理装置用の電極板の製造方法は、好ましくは、前記エッチング工程では、前記電極素板を前記エッチング液中で動かす。
前記電極素板がエッチング液中で動いてエッチング液を前記貫通孔に通すことで、前記貫通孔それぞれの内周面が略均一にエッチングされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電極板の製造方法によれば、前処理工程で各貫通孔に液体を通すことで、各貫通孔のエッチングを好適に行うことができ、これにより各ガス流路の穴径のバラつきを小さく電極板を製造することができる。
本発明の電極板は、マイクロクラックや加工残渣が低減されているので、マイクロクラックの割れや加工残渣を原因としたパーティクルや異常放電の発生を抑制することができる。
また、ガス流路の穴径のバラつきが抑えられているので、被処理基板に対するプラズマ処理を均一に行えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るプラズマエッチング装置を示す図である。
【
図2】(a)は本発明の実施形態に係るプラズマエッチング装置の電極板を示す平面図であり、(b)は(a)のA1-A1線に沿った電極板の断面図である。
【
図3】(a)は本発明の実施形態に係る電極板の製造工程を示す図であり、(b)は(a)の加工工程で形成した電極素板を示す断面図であり、(c)は前処理工程を示す図である。
【
図4】(a)~(e)は本発明の実施形態に係る電極板の製造工程を説明するための図である。
【
図5】(a)及び(b)は実施例の電極板の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るプラズマエッチング装置1は、真空チャンバー2内の上部に、上部電極となる電極板3が設けられると共に、下部に、下部電極となる上下動可能な架台4が電極板3と相互間隔をおいて平行に設けられている。
【0021】
上部の電極板3は、絶縁体5により真空チャンバー2の壁に対して絶縁状態に支持されているとともに、架台4の上には、静電チャック6と、その周りを囲むシリコン製の支持リング7とが設けられており、静電チャック6の上に、支持リング7により周縁部を支持した状態でウエハ(被処理基板)8を載置するようになっている。また、真空チャンバー2の上部にはエッチングガス供給管9が設けられ、このエッチングガス供給管9から送られたエッチングガスは拡散部材10で拡散された後に、冷却板14に設けられた上流ガス流路15と電極板3に設けられた下流ガス流路11(本実施形態のガス流路)とを流れて、ウエハ8に向い、真空チャンバー2の側部の排出口12から外部に排出される。
【0022】
このプラズマエッチング装置1では、電極板3と架台4との間に高周波電圧を印加する高周波電源13を設けている。エッチングガスが電極板3と架台4との間に放出され、高周波電源13から高周波電圧が印加されると、プラズマとなってウエハ8に当たる。このプラズマによるスパッタリングすなわち物理反応と、エッチングガスの化学反応とにより、ウエハ8の表面がエッチングされる。
また、ウエハ8の均一なエッチングを行う目的で、発生したプラズマをウエハ8の中央部に集中させ、外周部へ拡散するのを阻止して電極板3とウエハ8との間に均一なプラズマを発生させるために、通常、プラズマ発生領域16がシリコン製のシールドリンク17で囲われた状態とされている。
【0023】
(電極板3)
電極板3は、単結晶シリコン、柱状晶シリコン、又は多結晶シリコンからなり、
図2(a)に示すように円板状に形成されている。
電極板3は、冷却板14が固定される第一面31と、この第一面31の反対に配置されてプラズマ発生領域16を臨む第二面32と、を有し、さら電極板3の周縁部33は厚み方向に沿った寸法がその内側の箇所よりも小さく設定されていて、第二面32が周縁部33よりも突き出る凸型に形成されている。なお、電極板3の形状は凸型に限定されるものはなく、例えば周縁部33もその内側の箇所と同じ厚さである平板の形状、又は第二面32の箇所が周縁部よりも薄く形成された凹型の形状でもよい。
【0024】
電極板3の第一面31は、冷却板14との密着性及び接合性を高めるためにその表面が鏡面処理されている。電極板3のプラズマ放射面となる第二面32も好ましくは異常放電防止のため鏡面処理される。これらの鏡面の程度としては、例えば中心線平均粗さRaで0.001μm程度とされるが、実質上Raが0.3μm以下であればよい。
電極板3の寸法は限定されるものではないが、例えば第一面31の直径が200mm以上600mm以下であり、第一面31から第二面32までの厚さt1が5mm以上25mm以下である。
【0025】
(下流ガス流路11)
下流ガス流路11が電極板3に複数形成されており、
図2(b)に示すように、下流ガス流路11の入口111が第一面31に設けられ、第一面31とは反対に位置する第二面32に下流ガス流路11の出口112が設けられている。
【0026】
下流ガス流路11は、
図2(a)に示すように、一点鎖線で示す四つの同心の仮想円(半径r1、r2,r3,r4)上に配置されている。なお、仮想円の数や仮想円上の下流ガス流路11の数は図示例に限らない。また、図示例では電極板3の中心にも下流ガス流路11を配置している。
【0027】
下流ガス流路11の軸が電極板3の厚さ方向に沿って配置されていて、下流ガス流路11は電極板3の厚さ方向に沿ってストレートに延びており更に断面が円形の穴として形成されている。
【0028】
下流ガス流路11の径φ(直径)の設計値は例えば0.300mm以上1.000mm以下である。
なお、電極板3に形成された各下流ガス流路11の入口111の径φ1の測定値は、標準偏差が0.15mm以下であり、好ましくは0.06mm以下である。各下流ガス流路11の出口112の径φ2の測定値の標準偏差が0.11mm以下であり、好ましくは0.06mm以下である。標準偏差は小数第三位を四捨五入して得られる数値である。
さらに測定した下流ガス流路11の入口111の径φ1の平均値と下流ガス流路11の出口112の径φ2の平均値の差の絶対値が0.015mm以下であり、好ましくは0.010mm以下である。
また、電極板3は、後述する観察方法によるマイクロクラックの数が5個以下であり、好ましくは3個以下に形成される。
【0029】
(電極板の製造方法)
図3(a)に示すように、電極板3の製造方法は、単結晶シリコンなどのインゴットをスライスして板部材を形成するスライス工程と、板部材に加工を施して複数の貫通孔を有する電極素板を形成する加工工程と、エッチングを行う前に電極素板に付着している異物の除去を行う前処理工程と、前処理工程の後に電極素板にエッチング処理を施すエッチング工程と、電極素板の表面を研磨するポリッシュ工程と、ポリッシュ工程後に電極素板を洗浄する後洗浄工程と、を備えている。
【0030】
(スライス工程)
例えば、柱状晶のSiインゴット(脆性材料のインゴット)からダイヤモンド砥粒のバンドソーもしくはワイヤーソーで直径200mm以上600mm以下、厚さ8mm以上25mm以下の板部材を切断する。
【0031】
(加工工程)
加工工程は、板部材を加工して
図3(b)に示す電極素板3Aを形成する。
電極素板3Aは中央領域がそのまわりの周縁領域よりも厚く形成されており、周縁領域と中央領域とで面一に形成された第一形成面31Aと、第一形成面31Aとは反対に形成されており薄肉に形成された周縁部の内側に配置されている第二形成面32Aとを有して、凸型に形成されている。
加工工程では、厚く形成された凸部分に、ドリルで第一形成面31Aからその反対の第二形成面32Aまで厚さ方向に延びる貫通孔11Aが複数形成される。
【0032】
(前処理工程)
前処理工程は、後のエッチング工程を行う前に、電極素板3Aに付着している加工残渣の除去を行う。加工残渣は主に切削油と切削屑である。前処理工程では
図3(c)に示すように切削油を除去する脱脂工程と切削屑を除去する前洗浄工程とを行う。
【0033】
脱脂工程は、電極素板3Aを第一液体中で移動させて、切削油の除去を行う。第一液体は例えば水(水の温度は例えば25℃以上60℃以下である。)、界面活性剤入りの水、有機溶剤(例えばヘキサン)などを用いることができる。水は、水道水などの上水を用いることができるが、好ましくは比抵抗が1MΩ・cm以上の純水を用い、より好ましくは純水のうち比抵抗が15MΩ・cm以上の超純水を用いる。説明では特に明示しない限り、上水、純水、超純水を総称して「水」と称す。
また、脱脂工程としては、電極素板3Aを加熱して、第一形成面31A、第二形成面32Aや貫通孔11Aに付着している切削油を揮発させてもよい。
【0034】
脱脂工程として、電極素板3Aを液体中で移動させる場合には、先ず
図4(a)に示すように電極素板3Aをホルダー41に取り付けてホルダー41で支持された状態にし、次に
図4(b)に示すように、第一液槽42の第一液体の中に電極素板3Aの全体を入れて、電極素板3Aを第一液体中で動かす。
図4(b)では電極素板3Aを横から見た状態を表しており、第一形成面31Aや第二形成面32Aは横を向いて鉛直の面として配置される。
【0035】
電極素板3Aは、ホルダー41を動かす図示省略の移動装置によって液中で移動する。例えば、電極素板3Aは、
図4(b)の矢印y1の方向に沿って二点間を水平に往復移動する。二点間の移動距離は限定されるものではないが、貫通孔11Aの長さ、つまり電極素板3Aの厚み寸法t1′よりも長く、例えば10mm以上300mm以下である。
電極素板3Aは、中心軸c′の延長線上に沿って、第一形成面31Aや第二形成面32Aの前方に移動する。
このように電極素板3Aが液中で第一形成面31Aや第二形成面32Aと交差する方向に揺動して動くことで、第一形成面31Aや第二形成面32Aが洗浄され、さらに液体を貫通孔11Aに通して貫通孔11Aの内周面が洗浄される。これにより切削油が除去される。
【0036】
電極素板3Aを液体中で移動させて切削油の除去を行った後、電極素板3Aに付着している液体の一部を除去する。
電極素板3Aは、移動機構によって第一液槽42の外に移動し、例えば第一形成面31Aや第二形成面32Aが横を向いて静止した状態で付着している第一液体を落とすための静止位置に保持される。静止時間Tは、例えば30秒以上60秒以下である。なお、電極素板3Aに付着している第一液体を完全に除去するものではなく、貫通孔11Aの内周面が純水に濡れた状態に保たれており、各貫通孔11Aには貫通孔容積vの一部に相当する純水を残すものとする。
【0037】
前洗浄工程は、脱脂工程を経た電極素板3Aを洗浄して付着している加工工程の際の切削屑の除去を行うと共に貫通孔11Aの内周面113Aを濡らすことを目的とする。この前洗浄工程では、電極素板3Aを第二液体中で移動させて切削屑の除去を行う。第二液体は例えば水、アセトン、エタノールやその水溶液を用いることができる。
【0038】
前洗浄工程では、電極素板3Aをホルダー41で支持した状態で、電極素板3Aを第一液槽42の中から第二液槽43の中に移動させる。エッチング工程へ移行する際に、電極素板3Aが第一液体を各貫通孔11Aに保持した状態で、
図4(c)に示すように電極素板3Aの全体を第二液槽43の第二液体に入れる。貫通孔11Aの内周面が第一液体に濡れた状態であるため、第二液体が速やかに貫通孔11A内に進入する。
次に
図4(c)に示すように、電極素板3Aを液体中で動かす。
図4(c)では電極素板3Aを横から見た状態を表しており、第一形成面31Aや第二形成面32Aは横を向いて鉛直の面として配置される。
【0039】
電極素板3Aは、ホルダー41を動かす図示省略の移動装置によって第二液体中で移動する。例えば、電極素板3Aは、
図4(c)の矢印y2の方向に沿って二点間を水平に往復移動する。二点間の移動距離は限定されるものではないが、貫通孔11Aの長さ、つまり電極素板3Aの厚み寸法t1′よりも長く、例えば10mm以上300mm以下である。
電極素板3Aは、中心軸c′の延長線上に沿って、第一形成面31Aや第二形成面32Aの前方に移動する。
このように電極素板3Aが第二液体中で第一形成面31Aや第二形成面32Aと交差する方向に揺動して動くことで、第一形成面31Aや第二形成面32Aが洗浄され、さらに第二液体を貫通孔11Aに通して貫通孔11Aの内周面が洗浄される。これにより切削屑が除去される。
【0040】
電極素板3Aの第一液体や第二液体の中での動作としては、2点間の直線運動に代えて、2点間の移動軌跡が弧となる旋回等を行わせてもよい。
【0041】
また、脱脂工程や前洗浄工程では、電極素板3Aの液中を移動させて加工残渣の除去を行う際に、好ましくは第一液体や第二液体に超音波を印加すると、加工残渣を一層除去することができる。
なお、脱脂工程と前洗浄工程とを別々に行う場合を説明したが、切削油及び切削屑が付着した電極素板3Aの全体を第二液体の中に入れた状態で、二点間を水平に往復移動させることで、第一形成面31Aや第二形成面32Aの切削油の除去(脱脂工程)と、さらに貫通孔11Aに第三液体を通して貫通孔11Aの内周面の切削屑の除去(前洗浄工程)と、を併せて行うこともできる。脱脂工程と前洗浄工程とを同時に行う場合も、好ましくは、第二液体に超音波を印加するとよい。
【0042】
前処理工程からエッチング工程に移行する際、好ましくは、電極素板3Aを第二液体中で移動させて切削屑や切削油の除去を行った後、電極素板3Aに付着している第二液体の一部を除去するとよい。
電極素板3Aは、移動機構によって第二液槽43の外に移動し、例えば第一形成面31Aや第二形成面32Aが横を向いて静止した状態で付着している第二液体を落とすための静止位置に保持される。静止時間Tは、例えば30秒以上60秒以下である。なお、電極素板3Aに付着している第二液体を完全に除去するものではなく、貫通孔11Aの内周面が第二液体に濡れた状態に保たれており、各貫通孔11Aには貫通孔容積vの一部に相当する第二液体を残すものとする。
【0043】
(エッチング工程)
エッチング工程は、前処理工程を行った電極素板3Aに対して、酸性のエッチング液を用いて実行される。このエッチング液としては、フッ酸(HF)、硝酸(HNO
3)、酢酸(CH
3COOH)を混合した混合液が用いられる。好ましくは、フッ酸5%以上40%以下、硝酸25%、酢酸12.5%を含む、残部が純水からなるとよい。
電極素板3Aをホルダー41で支持した状態で、電極素板3Aを第二液槽43の中から第三液槽44の中に移動させる。エッチング工程へ移行する際に、電極素板3Aが第二液体を各貫通孔11Aに保持した状態で、
図4(d)に示すように電極素板3Aの全体を第三液槽44のエッチング液に入れる。貫通孔11Aの内周面が第二液体に濡れた状態であるため、エッチング液が速やかに貫通孔11A内に進入する。
図4(d)では電極素板3Aを横から見た状態を表しており、第一形成面31Aや第二形成面32Aは横を向いて鉛直の面として配置されている。
エッチング液によって電極素板3Aの第一形成面31A,第二形成面32Aのクラックやくぼみの除去に加えて、貫通孔11Aの内周面113Aのクラックやバリなども除去される。これにより、第一形成面31A,第二形成面32Aは、エッチング後、中心線平均粗さRaが例えば0.5μm以下となる。このように、エッチング工程により、貫通孔11Aが下流ガス流路11として形成される。
【0044】
なお、エッチング工程は、
図4(b)に示す脱脂工程や
図4(c)に示す前洗浄工程と同様に、電極素板3Aの全体をエッチング液の中に入れた状態で、例えば
図4(d)に示す矢印y3に沿って二点間を水平に往復の移動を繰り返して行わせてもよい。電極素板3Aがエッチング液中を移動することで、エッチング液が貫通孔11Aを通り、貫通孔11Aの内周面がエッチングされる。
【0045】
(ポリッシュ工程)
ポリッシュ工程では、図示省略の研磨用定盤で、エッチング工程を経た電極素板3Aの第一形成面31Aを研磨して、鏡面に形成する。これにより、第一形成面31Aが冷却板14と合わさる第一面31として、例えば中心線平均粗さRaを0.3μm以下に形成される。また、必要に応じて第二形成面32Aもポリッシュ工程を施して鏡面に形成してもよい。
【0046】
(後洗浄工程)
後洗浄工程は、電極素板3Aの第一面31、第二面32や下流ガス流路11を流水洗浄、又は超音波洗浄が実施される。この後洗浄工程は、電極素板3Aの第一形成面31A,第二形成面32Aや貫通孔11Aに残る研磨クロス(研磨用定盤)の砥粒やSi屑、研磨液など付着したものを洗い流し、さらに乾燥を行う。これにより電極板3が完成する。
【0047】
後洗浄工程としては、例えば
図4(b)に示す脱脂工程や
図4(c)に示す前洗浄工程と同様に、電極素板3Aの全体を第四液槽45の第四液体の中に入れた状態で、例えば
図4(e)に示す矢印y4に沿って二点間を水平に往復の移動を繰り返して行わせてもよい。この場合、第四液体は水からなる。電極素板3Aが水の中を移動することで、第一形成面31A,第二形成面32Aが洗浄され、さらに貫通孔11Aが通水して、貫通孔11Aの内周面が洗浄される。
【0048】
実施形態の電極板3の製造方法では、エッチング工程前に、前処理工程の前洗浄工程で各貫通孔11Aに第二液体を通すことで、各貫通孔11Aの気泡を抜き、さらに切削屑を除去することができる。そして、前洗浄工程を経て、各貫通孔11Aが第二液体を保持した状態で電極素板3Aに対してエッチングを行うことで、電極板3の下流ガス流路11の穴径、具体的には入口111の径φ1や出口112の径φ2のバラつきを抑えることができる。このように径φ1,φ2のバラつきを抑えて製造することで、下流ガス流路11の内周面113ではマイクロクラックや加工残渣が低減される。
【0049】
前洗浄工程においても、脱脂工程で電極素板3Aを第一液体中で移動させることで、各貫通孔11Aの気泡を抜くことができる。脱脂工程を経て、各貫通孔11Aが第一液体を保持した状態で電極素板3Aに対して前洗浄工程を行うことで、第二液体が速やかに貫通孔11A内に進入して洗浄を行うことができる。
エッチング工程において、エッチング液中で電極素板3Aを第一形成面31Aや第二形成面32Aの前方に動かして、各貫通孔11Aにエッチング液を通すと、下流ガス流路11の入口111の径φ1や出口112の径φ2のバラつきを一層抑えることができる。
前処理工程の脱脂工程において、超音波を印加した液体中で電極素板3Aを動かして、各貫通孔11Aに液体を通すことで、内周面113Aの切削油の除去を好適に行える。
後洗浄工程において、純水中で電極素板3Aを動かして、各貫通孔11Aを通水状態にすると、内周面113Aを好適に洗浄することができる。
【0050】
実施形態の電極板3の下流ガス流路11では、マイクロクラックや加工残渣が低減されているため、電極板3をプラズマエッチング装置1で使用した際に、マイクロクラックや加工残渣を原因としたパーティクルの発生を抑えることができる。よって、異常放電の発生を抑えて、プラズマ処理を好適に行うことができる。
また、各下流ガス流路11の入口111の径φ1や出口112の径φ2のバラつきが抑えられていることで、被処理基板に対するプラズマ処理を均一に行うことができる。
【0051】
本発明は、上記の実施形態に限らず実施をすることができる。
電極板に形成される下流ガス流路11の数やそれらの配置は図示例に限られるものではない。
【実施例0052】
発明製造方法と比較例製造方法で製造した電極板のガス流路の測定と、製造した電極板をプラズマ処理装置で使用した際の異常放電の回数を測定した。
【0053】
発明製造方法は、単結晶シリコンのインゴットをスライスして板部材を形成するスライス工程と、板部材に加工を施して複数の貫通孔を有する電極素板3Aを形成する加工工程と、この板部材に加工を施して複数の貫通孔を有する電極素板3Aを形成する加工工程と、電極素板3Aに付着した加工残渣の除去を行う前処理工程と、前処理を施した電極素板3Aの第一形成面31A,第二形成面32Aや貫通孔11Aの内周面113Aをエッチングするエッチング工程と、エッチング工程後の電極素板3Aを洗浄する後洗浄工程とからなる。
【0054】
前処理工程では、
図5(a)に示すように、第一液槽61の純水の中に電極素板3Aの全体を入れ、第一形成面31Aや第二形成面32Aが横を向いた状態にした。
さらに、第一液槽61の純水には超音波が印加されており、電極素板3Aを純水の中で水平に2点間を往復させた。なお、移動距離は150mmであり、電極素板3Aの速さは100mm/sとして、水中での移動を60秒間連続して行わせた。
【0055】
エッチング工程では
図5(b)に示すように、第二液槽62のエッチング液に電極素板3Aの全体を入れ、第一形成面31Aや第二形成面32Aが横に向いた状態にした。前処理工程からエッチング工程に移行する際に、純水が各貫通孔11Aに保持された状態で電極素板3Aを第二液槽のエッチング液に入れた。
エッチング液はフッ酸10%、硝酸50%、酢酸15%を含み残部が純水からなる混合液であり、エッチング時間は1分とした。
なお、電極素板3Aはエッチング液中で静止しているが、一部の電極素板3Aをエッチング液の中で水平に2点間を往復させた。移動距離は150mmであり、電極素板3Aの速さは100mm/sとして、水中での移動を60秒間連続して行わせた。
【0056】
また、発明実施例の製造方法としては、ガス流路として形成予定の寸法(設計値)を変え、さらにエッチング液の中で電極素板3Aの移動の有無を設けて、六つの異なる製造方法を実施し、各製造方法で製造された六つの電極板を計測対象とした(以下、発明実施例1~6)。
【0057】
比較例製造方法は、発明実施例の製造方法と比べると、前処理工程を省いていて、スライス工程と加工工程とエッチング工程と後洗浄工程とからなり、二つの電極板を製造した(比較例1,2)。
また、発明実施例の製造方法と同様に、スライス工程と加工工程と前処理工程とエッチング工程と後洗浄工程とを行うが、加工工程では貫通孔の形成にレーザー加工を行い、このレーザーを用いた加工工程を経て製造した電極板を比較例3とした。
【0058】
発明実施例1~6と比較例1~3の形成予定のガス流路の各穴径(プラズマ側の穴径、冷却板側の穴径)の各寸法(設計値)、貫通孔を形成する加工工程に用いたツール、前処理工程の有無、エッチング液中の電極素板3Aの動作の有無を表1に示す。
【0059】
【0060】
(前処理工程での貫通孔内の通水の確認について)
前処理工程を経た電極素板3Aの一方の面から光を照射し、反対側から各貫通孔の内部が純水で濡れているか否かで前処理工程での貫通孔の内周面に対する通水の有無を確認した。目視にて光が透過した穴は純水が貫通孔に保持されていないと判断することとし、全貫通孔の数Nに対する純水を内部に保持していない貫通孔の数nの割合が、5%未満である場合は貫通孔の通水を優とし、5%以上10%未満である場合は貫通孔の通水を良とし、10%以上である場合は貫通孔の通水を不良とした。なお、光源は白色LEDを使った。
発明実施例1~6と比較例3の貫通孔の通水状態を表2に示す。
【0061】
(穴径の測定)
各電極板は、平面視した状態では、複数のガス流路が中心まわりに仮想の21個の同心の仮想円上に配置されており、穴径の測定では、仮想円を中心から順に数えると、中心寄りの1周目の仮想円と、11周目の仮想円と、21周目の仮想円(最大の円)上に存在するガス流路を対象とした。具体的には、1周目の仮想円上の1個のガス流路と、11周目の仮想円上の8個のガス流路と、21周目の仮想円上の20個のガス流路とを測定対象とし、冷却板に当る第一面のガス流路の穴径(入口)、プラズマ発生領域を臨む第二面のガス流路の穴径(出口)それぞれについて測定した。
なお、穴径の測定には非接触変位センサ搭載画像測定機(株式会社ミツトヨ製QVT1-X606L1L-C)を使用し、測定したプラズマ側と冷却板側それぞれの穴径の平均値m1,m2[mm]、標準偏差σ1,σ2[mm]、平均値の差の絶対値|m1-m2|[mm]を算出した。標準偏差は小数第三位を四捨五入して得られる数値である。
発明実施例1~6と比較例1~3の測定したプラズマ側と冷却板側それぞれの穴径の平均値[mm]と標準偏差σ1,σ2[mm]と平均値の絶対値|m1-m2|[mm]を表2に示す。
【0062】
(マイクロクラックの測定と評価)
電極板より精密切断機にて20mm角のサンプルを切り出し、サンプルの断面を研磨後に、下流ガス流路11の内周面の断面の最表面箇所を走査型電子顕微鏡にて観察した。走査型電子顕微鏡の倍率を1000倍として5箇所を観察し、縦128μm横96μmの各視野範囲において深さ5μm以上のクラックの数をそれぞれ数え合算した。
また、評価としては、0個であれば「優」、1個以上5個以下であれば「良」、6個以上9個以下であれば「可」、10個以上の場合を「不良」とした。
発明実施例1~6と比較例1~3のマイクロクラックの個数と評価を表4に示す。
【0063】
(異常放電の回数)
作製した電極板をプラズマエッチング装置のチャンバー内に設けて、プラズマエッチング装置を以下のエッチング条件の下、5時間放電を行い、放電中のマッチングボックスの電圧異常が発生した回数を計測した。
(エッチング条件)
ウエハサイズ : φ150mm
チャンバー内の圧力 : 3Pa
エッチングガスの組成 : Ar 200sccm/CF4 100sccm/O2 5sccm
高周波電力 : HF 1200W, LF 150W
なお、sccmとは、standard cc/minの略であり、1atm(大気圧1013Pa)で、0℃あるいは25℃などの一定温度で規格化された1分間あたりの流量(cc)をいう。
発明実施例1~6と比較例1~3における異常放電の回数を表3に示す。
【0064】
【0065】
【0066】
発明実施例2~6では、製造した電極板のプラズマ側の穴径(出口)と冷却板側の穴径(入口)の各測定値の標準偏差σ1,σ2がそれぞれ0.06mm以下にすることができ、プラズマ側の穴径(出口)と冷却板側の穴径(入口)の測定値の平均値の差の絶対値|m1-m2|を0.010mm以下にすることができた。
そして、下流ガス流路の穴径(出口,入口)のバラつきを小さくすることで、内周面113に5μm以上の大きさを有するマイクロクラックの形成を抑えられること、プラズマ処理装置で使用した際にマイクロクラックや加工残渣を原因とした異常放電の発生回数を少なくできることを確認した。
【0067】
なお、発明実施例1のエッチング工程では電極素板3Aをエッチング液中で移動させておらずに、作製した電極板では、プラズマ側の穴径(出口)と冷却板側の穴径(入口)の設計値0.500mmに対して、製造した電極板のプラズマ側の穴径(出口)の測定値の標準偏差σ1が0.11mm、冷却板側の穴径(入口)の測定値の標準偏差σ2が0.15mmであり、プラズマ側の穴径(出口)と冷却板側の穴径(入口)の測定値の平均値の差の絶対値|m1-m2|が0.006mmであり、マイクロクラックの個数も1個であり、異常放電の回数も2回と少なく、製造された電極板は設計の目標を達成するものである。
ここで、設計サイズを発明実施例1の0.500mmと同じとした発明実施例2の電極板のガス流路の測定した穴径と比べると、発明実施例1の電極板のガス流路の穴径のバラつきが、発明実施例2の電極板のガス流路の穴径のバラつきよりも、大きいものであり、これらからエッチング工程で電極素板3Aをエッチング液中で移動させることが、下流ガス流路の穴径(出口,入口)のバラつきを抑えるのに効果的であることも確認した。
【0068】
比較例1,2では、電極素板3Aの貫通孔がドリルを用いて形成され、前処理工程を経ずにエッチング工程を行っており、プラズマ側の穴径(出口)と冷却板側の穴径(入口)の設計値を0.500mmであるのに対して、作製された電極板のプラズマ側の穴径(出口)の測定値の標準偏差σ1が0.21mm以上であり、冷却板側の穴径(入口)の測定値の標準偏差σ2が0.23mmであり、バラつきが発明実施例よりも大きく、いずれも異常放電が多く発生している。また、比較例2はマイクロクラックの数が多いものであった。マイクロクラックや加工残渣を原因として、パーティクルが多く発生していると考えられる。
【0069】
比較例3では、電極素板3Aの貫通孔がレーザーを用いて形成されており、ドリルで形成された貫通孔と比べると、ガス流路のプラズマ側がラッパ状に拡開している。
また、比較例3の前処理工程及びエッチング工程それぞれで電極素板3Aを純水やエッチング液中で移動させて貫通孔に液体を通した。比較例3では、作製された電極板のプラズマ側の穴径(出口)の測定値の標準偏差σ1が0.12mmであり、冷却板側の穴径(入口)の測定値の標準偏差σ2が0.15mmであり、作製された電極板のガス流路の穴径のバラつきが抑えられているが、プラズマ側の穴径(出口)と冷却板側の穴径(入口)の測定値の平均値の差の絶対値|m1-m2|は0.029mmと大きく、さらに異常放電が多く発生している。