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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148284
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】角型シリコン基板とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241010BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20241010BHJP
   B24B 7/00 20060101ALI20241010BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20241010BHJP
【FI】
H01L21/304 621
H01L21/304 611W
H01L21/304 631
B24B27/06 D
B24B7/00 Z
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061295
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】金子大亮
(72)【発明者】
【氏名】加藤慎司
【テーマコード(参考)】
3C043
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA09
3C043CC04
3C043CC07
3C158AA05
3C158AA07
3C158AA18
3C158CA01
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA03
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED22
3C158ED26
5F057BA01
5F057BA02
5F057BB03
5F057CA02
5F057CA11
5F057CA18
5F057DA02
5F057DA05
5F057DA11
5F057EA32
(57)【要約】
【課題】角型シリコン基板の製造方法を提供する。
【解決手段】回路形成用の第一面と、この第一面とは反対に位置する第二面とを有する角型シリコン基板の製造方法であって、シリコンインゴットをスライスして角型の板状部材を形成するスライス工程と、板状部材の両面を削る研削工程と、研削工程を経た板状部材の一方の面を機械式に研磨を行って第一面を有する角型シリコン基板に形成するポリッシュ工程と、を備え、研削工程と、ポリッシュ工程と、研削工程とポリッシュ工程の間では、化学エッチングを行わずに、角型シリコン基板を厚さ0.5mm以上2.0mm以下に形成する。また角型シリコン基板では、第一面内のTTVが100.0μm以下であり、さらに第一面の最大山高さRpが100.0nm以下である。ポリッシュ工程では、仕上用砥粒と水素イオン指数が7.0以上9.0以下の液体とからなる仕上用スラリーを用いる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが0.5mm以上2.0mm以下であり、
回路形成用の第一面内のtotal thickness variation(以下、TTVと称す。)が100.0μm以下であり、
さらに前記第一面の最大山高さRpが100.0nm以下であることを特徴とする、角型シリコン基板。
【請求項2】
多結晶シリコンからなることを特徴とする、請求項1に記載の角形シリコン基板。
【請求項3】
TTVを前記第一面の面積(S1[mm])で除した値(TTV/S1)が1.00×10―6[mm-1]以下であることを特徴とする、請求項1に記載の角形シリコン基板。
【請求項4】
前記第一面の算術平均粗さRaが2.0nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の角形シリコン基板。
【請求項5】
回路形成用の第一面と、この第一面とは反対に位置する第二面とを有する角型シリコン基板の製造方法であって、
シリコンインゴットをスライスして角型の板状部材を形成するスライス工程と、
前記板状部材の両面を削る研削工程と、
前記研削工程を経た前記板状部材の一方の面を機械式に研磨を行って前記第一面を有する前記角型シリコン基板に形成するポリッシュ工程と、を備え、
前記研削工程と、前記ポリッシュ工程と、前記研削工程と前記ポリッシュ工程の間では、化学エッチングを行わずに、前記角型シリコン基板を厚さ0.5mm以上2.0mm以下に形成することを特徴とする、角型シリコン基板の製造方法。
【請求項6】
前記ポリッシュ工程では、仕上用砥粒と水素イオン指数が7.0以上9.0以下の液体とからなる仕上用スラリーを用いることを特徴とする、請求項5に記載の角型シリコン基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用のシリコン基板である。
【背景技術】
【0002】
シリコンインゴットをスライシングして形成されたシリコン基板が半導体用の基板として従来より利用されている。
複数の半導体チップを製造するためのシリコン基板は、単結晶シリコンからなり、外形が丸型に形成されている。また太陽光パネル用のシリコン基板は、主に多結晶シリコンからなり、その外形が角型に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5401683号公報
【特許文献2】特開2017-208571号公報
【特許文献3】特開2015-6990号公報
【特許文献4】特開2006-202831号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】2002年7月発行、社団法人電子情報技術産業協会、JEITA EM-3602「シリコン鏡面ウェーハの寸法規格に関する標準仕様」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半導体チップ製造用の単結晶シリコンからなるシリコン基板の製造方法が特許文献1に開示されているが、非特許文献1に示すように、半導体チップ用のシリコン基板は、シリコンインゴットを用いて丸型に形成されていて、周縁の箇所を除外して内側の領域を回路形成に用いるものであり、活用されない領域が存在する。シリコン基板は周縁の箇所を含めて活用されることが望ましい。
大きな角型のシリコン基板の製造では、表面を研磨すると、角部ばかりが削れ、面内で厚さのばらつきが生じ得る。
また、シリコン基板の製造方法としては、シリコンインゴットをスライスして形成した板状部材に対して化学エッチングを行うことが行われている(特許文献2,3,4)が、多結晶シリコンからなる丸型或いは角型の板状部材に対して酸液を用いる化学エッチングを行うと、粒界が優先的に削れてしまう、或いは粒界のみが削れない場合が起こり得て、エッチングを施した面が粗くなる恐れがある。また、化学エッチングでは、板状部材の結晶面方位によって削れるレートが異なるため、表面が粗くなる恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、角型シリコン基板とその製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の角型シリコン基板は、厚さが0.5mm以上2.0mm以下であり、回路形成用の第一面内のtotal thickness variation(以下、TTVと称す。)が100.0μm以下であり、さらに前記第一面の最大山高さRpが100.0nm以下である。
【0008】
「角型」とは、角型シリコン基板を平面視した場合に、周縁上に四つの角部が配置されて、輪郭が矩形を成すことを意味する。なお、角型は、上記四つの角部のうち1つ以上の各部が切り取られて切欠部として形成されていることを含む。
角型シリコン基板では、周縁の箇所を含めて全体の厚さのばらつきが小さく、且つ回路生成用の第一面の粗さも小さく高い平坦性を有することから、第一面の全域を回路形成に利用することができる。また、角型シリコン基板の寸法は限定されるものではないが、例えば辺の長さが300mm以上の角型に形成される。
角型シリコン基板の厚さが0.5mmよりも薄くなると反りが生じ、2.0mmよりも厚くなると重量が増して搬送が困難となる。
TTVが100.0μmよりも大きくなると、第一面での線幅が2μmの微細配線パターンを形成することができなくなる。前記第一面の最大山高さRpが100.0nmをより大きくなる場合も、微細配線パターンの形成が難しくなる。
【0009】
本発明の角型シリコン基板は、多結晶シリコンからなり、好ましくは柱状晶シリコンからなる。
【0010】
シリコン基板では厚さのばらつきや粗さが低減されることから、多結晶シリコンからなる場合も半導体チップ用にも使用することができる利点があり、さらに柱状晶シリコンからなると、単結晶シリコンや多結晶シリコン(柱状晶シリコンを除く。)からなる場合よりも、曲げ強度が大きくなり、割れを防止することができる。
【0011】
本発明の角型シリコン基板は、好ましくはTTVを前記第一面の面積(S1[mm])で除した値(TTV/S1)が1.00×10―6[mm-1]以下である。
【0012】
この値(TTV/S1)は、角型シリコン基板の面積に対する平坦度として考えるものであり、値(TTV/S1)が1.00×10―6[mm-1]以下であると、配線形成のための露光工程での厚さ方向のずれが小さくなり、微細配線の形成が可能となる。しかし、1.00×10―6[mm-1]より大きいと、配線形成のための露光工程で厚さ方向のずれが大きくなり、微細配線の形成が困難となり好ましくない。
【0013】
本発明の角型シリコン基板は、好ましくは前記第一面の算術平均粗さRaが2.0nm以下である。
【0014】
算術平均粗さRaが2.0nm以下とすることで微細配線パターンを形成することができる。算術平均粗さRaが2.0nmより大きくなる場合は、微細配線パターンの形成が難しくなる。
【0015】
本発明の角型シリコン基板の製造方法は、回路形成用の第一面と、この第一面とは反対に位置する第二面とを有する角型シリコン基板の製造方法であって、シリコンインゴットをスライスして角型の板状部材を形成するスライス工程と、前記板状部材の両面を削る研削工程と、前記研削工程を経た前記板状部材の一方の面を機械式に研磨を行って前記第一面を有する前記角型シリコン基板に形成するポリッシュ工程と、を備え、前記研削工程と、前記ポリッシュ工程と、前記研削工程と前記ポリッシュ工程の間では、化学エッチングを行わずに、前記角型シリコン基板を厚さ0.5mm以上2.0mm以下に形成することを特徴とする。
【0016】
「機械式に研磨」とは、研磨対象面を溶解したり変質させたりする化学作用を伴わずに、砥粒等によって研磨対象面を削って凹凸などを除去することであり、「機械式に研磨」には、機械式であってもケミカルポリッシングを伴う『メカノケミカルポリッシング』は除外される。
本発明のシリコン基板の製造方法では、酸液による化学エッチングを行わずに、研削工程を経た板状部材の一方の面を機械式に研磨して第一面の形成を行うことで、第一面は厚さのばらつきが小さくして形成され、さらにその全域が粗さを小さくして平坦に形成される。
【0017】
本発明のシリコン基板の製造方法では、好ましくは、前記ポリッシュ工程では、仕上用砥粒と水素イオン指数[pH]が7.0以上9.0以下の液体とからなる仕上用スラリーを用いる。ポリッシュ工程では、仕上用砥粒は化学作用を生じさせないものを用い、そのためにも液体も、好ましくは純水を用いる。
【0018】
酸液による化学エッチングを行わずに機械式研磨を行うことで、板状部材における各箇所でエッチング量が異なるような事態は生じず、第一面全体を略均一に研磨の処理を施すことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、全体で厚さのばらつきを小さくし、回路形成面の平面度が良好である大きな角型基板を製造することができる。用途は限定されるものではないが、半導体チップ製造に用いた場合にはチップ取れ枚数を増やすことができ、製造コストやチップの単価を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は本発明の実施形態に係る角型シリコン基板の平面図であり、(b)は(a)のA1-A1線に沿った角型シリコン基板の断面の部分拡大図である。
図2】本発明の実施形態に係る角型シリコン基板の変形例を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る角型シリコン基板の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係る角型シリコン基板1を説明する。
図1(a)に示すように、角型シリコン基板1は、平行に直線状に延びた一対の第一縁部11と、この第一縁部11に対して直角に配置されていて平行に直線状に延びた一対の第二縁部12とがつながって平面視した場合に周縁が矩形に形成されている。第一縁部11や第二縁部12の長さL11,L12は限定されるものではないが、例えば300mm以上900mm以下である。なお、第一縁部11や第二縁部12の長さL11,L12は、500mm以上900mm以下が好ましい。また、角型シリコン基板1において、第一縁部11と第二縁部12とがつながる四つの箇所をそれぞれ角部13と称す。
図1(b)に示すように、角型シリコン基板1は、回路形成用の第一面110と、この第一面110とは反対に位置する第二面120とを有する。
さらに、角型シリコン基板1は、単結晶或いは多結晶のシリコンからなり、好ましくは多結晶のうち、一方向に結晶成長させてなる柱状晶シリコンも用いる。角型シリコン基板1が柱状晶シリコンからなる場合、角型シリコン基板1は、第一面110と第二面120とが結晶の成長方向と交差して形成されている。
角型シリコン基板1の周縁の箇所を構成する第一縁部11や第二縁部12では、図1(b)に示すように、第一面110と外周端面130とで第一エッジ141が形成され、第二面120と外周端面130とで第二エッジ142が形成されている。
角型シリコン基板1の厚さt1は例えば0.5mm以上2.0mm以下である。厚さt1の特定は、マイクロメーター或いは三次元測定機を用いて、中央測定点P1、四つの角部測定点P2~P5の厚さをそれぞれ測定し、これらの平均値として求める。なお、図1では、五つの測定点を〇印で表している。中央測定点P1は平面視の輪郭で対角に配置される角部同士をつなぐ一方の仮想線と他方の仮想線が交わる箇所である。角部測定点P2~P5は、それぞれの角部の周辺において第一縁部11と第二縁部12からそれぞれ10mmずつ内側に入った箇所である。
【0022】
角型シリコン基板1は、角型シリコン基板1の周縁の箇所も含めて第一面110の全域が粗さを小さくして高い平坦性を有する。具体的には、第一面110は、算術平均粗さRaが例えば2.1nm以下であり、好ましくは2.0nm以下である。また、第一面110は、最大山高さRpが例えば100.0nm以下であり、好ましくは50.0nm以下である。
【0023】
なお、角型シリコン基板1は、厚さのばらつきを小さくして形成されており、そのTTV(Total thickness variation)が例えば100.0μm以下であり、好ましくは70.0μm以下であり、より好ましくは40.0μm以下である。
ここで、TTVは、角型シリコン基板1の最大厚tmaxと角型シリコン基板1の最小厚tminとの差分(tmax―tmin)である。角型シリコン基板1の第二面120を測定用の定盤の載置面に吸着装置等で固定し、この載置面を基準面として、最大厚tmaxとして基準面からの角型シリコン基板1の最大の厚さ(寸法)を求め、最小厚tminとして基準面からの角型シリコン基板1の最小の厚さ(寸法)を求める。最大厚tmaxと最小厚tminのいずれも角型シリコン基板1の周縁部を含む第一面110の全域を対象とする。なお、図1(b)では、測定用の定盤200を一点鎖線で表していて、角型シリコン基板1の第二面120が定盤200の載置面210に固定されている状態を表している。
【0024】
さらに、角型シリコン基板1では、TTVを第一面110の面積S1mmで除した値(単位mm―1:TTV/S1)は角型シリコン基板1の面積に対する平坦度として考えるものであり、例えば1.00×10―6mm―1以下であり、好ましくは0.50×10―6mm―1以下であり、より好ましくは0.20×10―6mm―1以下である。
【0025】
角型シリコン基板1は、面内の二次元の位置情報を特定するための基準、例えば原点となる目印として、周縁の一部に形成された位置特定部を備えてもよい。
例えば、一つの角部の形が他の三つの角部の形と異なるように、図2に示す角型シリコン基板1Aでは、一つの角部13が切り取られて切欠部15として形成されている。切欠部15は例えば第一縁部11が延びる第一方向に沿った寸法L21が1.0mm以上20.0mm以下であり、第二縁部12が延びる第二方向(第一方向と直交している。)に沿った寸法L22が1.0mm以上20.0mm以下であり、角型シリコン基板1Aの第一縁部11や第二縁部12に対して十分に短いものであり、この場合も角型シリコン基板1Aは第一面110側から見た場合にその外形が略矩形を呈す。切欠部15は、第一面11側から見た平面視で、直線状に延びた形態に限らず、弧状などに形成されてもよい。なお、切欠部15は、直線状に延びた縁の一部を切り欠いた所謂ノッチとして形成されてもよい。位置特定部は、角型シリコン基板1Aの方向性の識別に活用することもできる。
このように、意図的に角部が切り取られた角型シリコン基板1も本発明の技術的思想の範囲内である。
【0026】
(角型シリコン基板1の製造方法)
角型シリコン基板1の製造方法は、図3に示すように、シリコンインゴットをスライスして板状部材を形成するスライス工程と、板状部材の両面を削る研削工程と、研削工程後に板状部材の一方の面にポリッシュ加工を施すポリッシュ工程と、を備えている。以下、板状部材の一方の面を第一加工面と称し、この第一加工面とは反対に位置する他方の面を第二加工面と称す。
【0027】
(スライス工程)
スライス工程は、ダイヤモンド砥粒を固定したバンドソー或いはワイヤーソーを用いて、単結晶或いは多結晶のシリコンインゴットから、例えば厚さ1.0mm以上2.2mm以下の板状部材を切断する。シリコンインゴットは角柱状或いは円柱状のものを用いることができる。
角柱状のシリコンインゴットは、例えば縦300mm以上1200mm以下、横300mm以上1200mm以下、高さ(厚さ)10mm以上300mm以下に形成されたものを用いることができる。板状部材は、第一加工面側から見た平面視での外形が正方形或いは長方形に形成される。
柱状晶のシリコンインゴットは、水平断面が矩形或いは円形に形成された鋳型にシリコンの溶融液を注入し、鋳型の下方から冷却することで、シリコンを鋳型の中で下方から上方に向けて一方向に凝固させ、得られた角柱状或いは円柱状のシリコンインゴットを形成し、表面を研削、研磨して、所望の直方体に形成された柱状晶シリコンインゴットを用いる。
また、柱状晶のシリコンインゴットを用いる場合、板状部材の第一加工面と、この第一加工面と反対に位置する第二加工面とが、結晶の成長方向と交差するように、シリコンインゴットをスライスする。
円柱状のシリコンインゴットは、例えば直径φ400mm以上φ1200mm以下、高さ(厚さ)10mm以上300mm以下に形成されたものを用いることができる。円柱状のシリコンインゴットを用いた場合は、板状部材は、第一加工面側から見た平面視での外形が円形に形成される。
なお、例えば直径φが450mm以上の大きさのシリコンインゴットとしては、多結晶からなるものを用いる。円柱状のものも縦と横の寸法が大きいものは、多結晶を用いる。
【0028】
(研削工程)
研削工程で、第一加工面と第二加工面を削って、第一加工面と第二加工面の粗研磨を行う。なお、スライス工程と研削工程との間には板状部材の周縁の箇所を面取することは行わないので、これらの第一加工面と第二加工面はいずれもスライス工程で形成された断面である。研削工程は、ポリッシュ工程の前処理として、ポリッシュ工程の研磨と比べると粗い研磨を、例えばラップ盤装置で行う。以下、ラップ盤装置によって第一加工面と第二加工面に対するラッピング加工をラップ工程と称す。
ラップ盤装置では、板状部材をキャリアで保持して、回転するラップ定盤と研磨対象面との間にラッピング用スラリーを入れて、研磨を行う。
ラッピング用スラリーは、ラッピング用砥粒とラッピング用液体とからなり、さらにラッピング用スラリーの水素イオン指数(pH)は7.0以上9.0以下である。ラッピング用砥粒は、SiC或いはAlからなる。ラッピング用液体は、例えば純水、ラウリン酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤、ドデシルアミン塩酸塩などのカチオン界面活性剤、ポリエチレングリコールモノ-4-ノニルフェニルエーテルなどの非イオン系界面活性剤、グリコールなどの多価アルコールを用いることができる。
ラップ盤装置では、ラップ工程後の板状部材の厚さをキャリア厚さに近くするように、キャリアより突出する板状部材の第一加工面側及び第二加工面側の研磨を行う。ラップ工程の際に、キャリアより突出する板状部材の厚さとしては0.1mm以上0.5mm以下が好ましく、これにより研磨を第一加工面や第二加工面の全体に好適に施すことができる。なお、キャリアより突出する板状部材の厚さが0.5mmを超えると、第一加工面や第二加工面のエッジが損傷する恐れがあり、またキャリアより突出する板状部材の厚さが0.1mmより薄いとキャリアが削れて変形し、またそれにより板状部材の脱離が起こり得る。
ラップ工程後の板状部材の第一加工面と第二加工面において、算術平均粗さRaを例えば1.0μm以下とする。
ラップ工程後の板状部材の厚さを例えば1.0mm以上2.2mm以下とする。
また、ポリッシュ工程を行う前に板状部材の第一面と第二面の粗さを低減する研削工程としては、ラップ工程に代えて、平面研削盤装置を用いて、板状部材の平面研削を行うようにしてもよい。平面研削盤装置では、回転する研削盤に設けられた砥石で板状部材の第一加工面と第二加工面の凹凸などを除去するようにしてもよい。研削盤には砥石が固定されており、この砥石もSiC或いはAlからなる。研削工程後の板状部材の第一加工面と第二加工面においても、算術平均粗さRaを例えば1.0μm以下とする。
【0029】
(ポリッシュ工程)
ポリッシュ工程では、研削工程を経た第一加工面の仕上げを、ポリッシュ装置で機械式に行う。なお、研削工程とポリッシュ工程の間には板状部材の第一加工面に対して凹凸の除去等を行うための化学エッチングは行わないので、ポリッシュ工程で表面処理される第一加工面はラッピング加工面である。
ポリッシュ装置は、板状部材をキャリアで保持して、回転するパッドと研磨対象面との間に仕上用スラリーを入れて、研磨を行う。
仕上用スラリーは、仕上用砥粒と仕上用液体とからなり、仕上用スラリーの水素イオン指数(pH)は7.0以上9.0以下である。仕上用砥粒はSiOからなり、仕上用液体は、例えば純水、ラウリン酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤、ドデシルアミン塩酸塩などのカチオン界面活性剤、ポリエチレングリコールモノ-4-ノニルフェニルエーテルなどの非イオン系界面活性剤、グリコールなどの多価アルコールを用いることができ、好ましくは純水を用いる。
ポリッシュ装置では、ポリッシュ工程後の板状部材の厚さをキャリア厚さに近くするように、キャリアより突出する板状部材の第一加工面側の研磨を行う。ポリッシュ工程の際に、キャリアより突出する板状部材の厚さとしては0.1mm以上0.5mm以下が好ましく、これにより研磨を第一加工面の全体に好適に施すことができる。なお、キャリアより突出する板状部材の厚さが0.5mmを超えると、第一加工面のエッジが損傷する恐れがあり、またキャリアより突出する板状部材の厚さが0.1mmより薄いとキャリアが削れて変形し、またそれにより板状部材の脱離が起こり得る。
ポリッシュ工程後では、第一加工面の算術平均粗さRaを例えば2.0nm以下にし、第一加工面の最大山高さRpを例えば100.0nm以下にし、厚さt1を例えば0.5mm以上2.0mm以下にし、TTVを例えば100.0μm以下にし、さらにTTVを第一加工面の面積S1で除した値(TTV/S1)を、例えば1.00×10―6mm―1以下にする。
このようなポリッシュ工程を経て、第一加工面が鏡面の第一面110に形成されて、シリコン基板が完成する。
【0030】
本実施形態のシリコン基板では、研削工程と、ポリッシュ工程と、研削工程とポリッシュ工程の間で、化学エッチングを行わずに板状部材の表面の凹凸などの除去を行うことで、周縁部を含めて全体の厚さのばらつきが小さく、且つ回路生成用の第一面110の粗さも小さく高い平坦性を有することから、周縁部を含めて第一面110の全域を回路形成に利用することができる。このため、本実施形態のシリコン基板では、周縁部を含めて、配線パターンの形成処理などを施すことができる。
周縁部を活用せずに周縁部より内側の領域に配線パーンの形成処理などを行う丸型のシリコン基板に比べて、本実施形態のシリコン基板は、半導体チップ等の取れ枚数を増やすことができ、製造コストや製品の単価を低減することができる。
角型シリコン基板の厚さが0.5mmよりも薄くなると反りが生じ、2.0mmよりも厚くなると重量が増して搬送が困難となる。
TTVが100.0μmよりも大きくなると、第一面での線幅が2μmの微細配線パターンを形成することができない。第一面110の最大山高さRpが100.0nmをより大きくなる場合も、微細配線パターンの形成が難しくなる。
特に、化学エッチングを施した従来の多結晶のシリコン基板では、粒界が優先的に削れてしまう、或いは粒界が残り、TTVや最大山高さRpが大きくなり得るが、角型シリコン基板1が多結晶シリコンからなる場合でも、第一面110のTTVや最大山高さRpが小さくなるように形成されていることで、回路形成を良好に行うことができる。
【0031】
シリコン基板が柱状晶シリコンからなると、単結晶や非柱状晶の多結晶からなる場合よりも、基板の曲げ強度が大きくなり、割れを防止することができる。
【0032】
さらに値(TTV/S1)が1.00×10―6[mm-1]以下であると、配線形成のための露光工程での厚さ方向のずれが小さくなり、微細配線の形成が可能となる。値(TTV/S1)が1.00×10―6[mm-1]より大きいと、配線形成のための露光工程で厚さ方向のずれが大きくなり、微細配線の形成が困難となり好ましくない。
【0033】
算術平均粗さRaが2.0nm以下とすることで微細配線パターンを形成することができる。算術平均粗さRaが2.0nmより大きくなる場合は、微細配線パターンの形成が難しくなる。
特に、化学エッチングを施した従来の多結晶のシリコン基板では、粒界が優先的に削れてしまう、或いは粒界が残り、算術平均粗さRaが大きくなり得るが、角型シリコン基板1が多結晶シリコンからなる場合でも、第一面110の算術平均粗さRaが小さくなるように形成されていることで、回路形成を良好に行うことができる。
【0034】
従来、板状部材を化学エッチングした場合には、板状部材の各箇所で酸液によるエッチング量に差が生じ得るが、本実施形態の角型シリコン基板の製造方法では、面全体を略均一に研磨の処理を施すことができる。
【0035】
本発明は、上記の説明や図示例に限らず実施をすることができる。
シリコン基板の大きさとして、辺の長さが300mm以上であることを例示したが、300mm未満のシリコン基板を製造する場合にも本発明を適用することができる。
【0036】
また、角型シリコン基板の用途は限定されるものでないが、例えばインターポーザー等の基板として利用した場合には角型シリコン基板自体が薄く形成されるのでパッケージ化したチップ全体の厚みの低減化を図ることができる。また、本実施形態のシリコン基板は太陽光パネル用の基板としても活用できる。
【0037】
(方向性識別)
角型シリコン基板は、周縁の一部に面取された箇所を有すると、角型シリコン基板の方向性を識別することができる。また、他の方向性識別を行うための構成例としては、角型シリコン基板の周縁が全てを面取されていると共に平面視した場合に周縁の一部が突き出る箇所が設けられている。
【実施例0038】
外形と厚さとが異なる複数のシリコン基板を製造し、外形,厚さ,厚さのばらつき,第一面の粗さを評価した。
【0039】
シリコン基板の製造方法は、シリコンインゴットをスライスして板状部材を形成するスライス工程と、スライスした板状部材の両面(第一加工面及び第二加工面)を削る研削工程と、研削工程の後に板状部材の第一加工面にポリッシュ加工を施すポリッシュ工程と、を備えている。なお、シリコン基板の製造方法では、スライス工程と研削工程との間でスライスした板状部材の周縁に面取するべべリング工程は行っておらず、研削工程とポリッシュ工程との間で板状部材の両面(第一加工面及び第二加工面)に対して化学エッチングを行うエッチング工程も行っていない。
【0040】
(研削工程)
研削工程は、ラップ盤装置及び平面研削盤装置のいずれかを行った。
ラップ盤装置は、板状部材をキャリアで保持して、回転するラップ定盤と研磨対象面との間にラッピング用スラリーを入れて、研磨を行った。
ラッピング用スラリーは、ラッピング用砥粒とラッピング用液体とからなる。
ラッピング用砥粒は、SiC或いはAlからなる。ラッピング用液体は純水からなり、ラウリン酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤、ドデシルアミン塩酸塩などのカチオン界面活性剤、ポリエチレングリコールモノ-4-ノニルフェニルエーテルなどの非イオン系界面活性剤、グリコールなどの多価アルコールを入れてもよい。研削盤には砥石が固定されており、この砥石はラッピング用砥粒と同じ材料からなる。
平面研削盤装置では、回転する研削盤に設けられた砥石で板状部材の第一加工面と第二加工面の凹凸などを除去する。研削盤に設けられる砥石は、SiC或いはAlからなる。
【0041】
(ポリッシュ工程)
ポリッシュ工程では、研削工程を経た板状部材の第一加工面を、ポリッシュ装置で機械式研磨を行って、鏡面に仕上げた。
ポリッシュ装置では、板状部材をキャリアで保持した状態で、回転するパッドと研磨対象面との間に仕上用スラリーを入れて、第一加工面の研磨を行った。
仕上用スラリーは、仕上用砥粒と仕上用液体とからなる。仕上用砥粒はSiOからなり、仕上用スラリーは純水からなり、ラウリン酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤、ドデシルアミン塩酸塩などのカチオン界面活性剤、ポリエチレングリコールモノ-4-ノニルフェニルエーテルなどの非イオン系界面活性剤、グリコールなどの多価アルコールを入れてもよい。
【0042】
シリコン基板の製造方法で製造した試料のうち、角柱のシリコンインゴットを用いたものが試料1~21である。これらのうち、試料17が単結晶シリコンからなり、試料12が多結晶(柱状晶を除く。)からなり、その他は柱状晶シリコンからなる。なお、柱状晶シリコンのシリコン基板では、その第一面と第二面とが柱状晶の成長方向と交差するように形成されている。試料1~21は、第一面側から平面視した際の外形が正方形或いは長方形を呈す。
円柱のシリコンインゴットを用いたものが試料22であり、第一面側から平面視した際の外形が円形を呈す。
前記の製造方法のうち、ポリッシュ工程を省いて、スライス工程と、研削工程とによって製造した角型シリコン基板が試料23である。
また、製造方法として、スライス工程と、研削工程と、研削工程の後に第一加工面の化学エッチングを行うエッチング工程と、エッチング工程の後にエッチングされた面に対してポリッシュを行うポリッシュ工程とを経て製造した角型シリコン基板が試料24である。
またガラス基板を参考例として試料25とした。
【0043】
各試料に関して、インゴットを構成する材料及び結晶種類と、インゴットをスライスして得た板状部材の外形の寸法(横,縦)[mm]と、板状部材を第一加工面側から平面視した場合に輪郭線上に配置される角部の数と、板状部材の厚さt2[mm]とを表1に示す。
なお、スライス後の板状部材の外形の寸法(横,縦)は、三次元測定機(株式会社ミツトヨ製のクイックビジョン)を用いて測定した。外形の寸法(横,縦)[mm]は、いずれも小数第一位を四捨五入して得られる値(整数)を有効数字とした。
スライス工程後の板状部材の厚さt2の測定と、後述の研削工程後の板状部材の厚さt3及びポリッシュ工程後の板状部材の厚さt4の測定は、いずれも光干渉計方式の平坦度測定装置を用いた。なお、板状部材の厚さを特定するための条件は、各工程後において、板状部材の中央測定点、板状部材の四つの角部測定点の厚さをそれぞれ測定し、これらの平均値を、厚さt2,t3,t4とした。中央測定点P1は板状部材を平面視した場合の輪郭で対角に配置される角部同士をつなぐ一方の仮想線と他方の仮想線が交わる箇所である。角部測定点は、それぞれの角部の周辺において角部を構成する第一縁部と第二縁部からそれぞれ10mmずつ内側に入った箇所である。t2,t3,t4[mm]は、いずれも小数第二位を四捨五入して得られる値を有効数字とした。試料19の円形に形成された板状部材では、中心と円形の縁から10mmずつ内側に入った四か所の厚さをそれぞれ測定し、これらの平均値としてt2,t3,t4を求めた。
【0044】
各試料に関して、研削工程を行う装置の種類(ラップ盤装置と平面研削盤装置)と、研削工程での砥粒や砥石を構成する材料と、研削工程後且つポリッシュ工程前のシリコン基板の厚さt3[mm]と、エッチング工程の有無と、ポリッシュ工程の有無と、ポリッシュ工程の際の仕上用スラリーの水素イオン指数(pH)と、ポリッシュ工程後のシリコン基板の厚さt4[mm]と、を表2に示す。水素イオン指数[pH]は小数第二位を四捨五入して得られる値を有効数字とした。
【0045】
また、ポリッシュ工程を経て作製された各試料のTTVと、第一面(鏡面)の最大山高さRpと、TTVを第一面の面積S1で徐した値(TTV/S1)と、第一面の算術平均粗さRaとを表3に示す。
ポリッシュ工程を経た板状部材を第一面側から見た平面視での輪郭形状やその寸法は台スライス固定後の板状部材の外形と寸法と同じであるため、面積S1は、表1の縦の寸法と横の寸法とを乗じて得た値を用いた。値(TTV/S1)[mm-1]は小数第九位を四捨五入して得られる値を有効数字とした。
なお、TTVと最大山高さRpと算術平均粗さRa、厚さt4の測定対象となる回路形成用の領域は、第一面の全域である。また、ポリッシュ工程を経たシリコン基板のTTVは、光干渉計方式の平坦度測定装置を用いて、最大厚tmaxと最小厚tminとを測定し、その差分(tmax-tmin)として算出した。最大厚tmaxと最小厚tminとの測定は、シリコン基板の第二面を平坦度測定装置の載置面に吸着固定した状態で、平坦度測定装置の載置面を基準面とし、基準面からの第一面までの最大厚tmaxと最小厚tminの測定を行った。TTV[μm]は、小数第二位を四捨五入して得られる値を有効数字とした。
最大山高さRpと算術平均粗さRaとはいずれも、白色干渉計(Zygo Corporation 製の白色干渉計:Nexview)にて測定した。各試料は、周縁を含む第一面内で任意の五つの観察箇所で算術平均粗さRaと最大山高さRpの測定をそれぞれ実施し、得られた値の平均値を当該試料の算術平均粗さRaと、最大山高さRpとした。なお、各観察箇所は、縦1500μm、横1500μmの正方形の視野範囲とした。最大山高さRp[nm]と算術平均粗さRa[nm]は、いずれも小数第二位を四捨五入して得られる値を有効数字とした。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
(各試料の評価方法)
作製した各試料の外形,厚さ,厚さのばらつき及び第一面の粗さを評価するにあたり、回路形成に第一面の全面を使用することの可否と、第一面に2μm幅の微細配線パターンを形成することの可否と、第一面に対して成膜処理などを行う際のマテリアルハンドで搬送することの可否と、を確認した。
【0050】
(A)第一面の全面を使用することの可否の基準
下記の(a1)と(a2)とを満たす場合を合格とし、(a1)及び(a2)の少なくとも一方を満たさない場合を不合格とした。合格のうち、最大山高さRpが50.0nm以下である場合、「優」と評価した。なお、(a1)はシリコン基板を歩留まり良く分割できるかを判断する事項であり、(a2)は全面使用の効率を判断する事項であり、最大山高さRpが大きく段差となる部分が存在すると全面使用の効率が下がるからである。
(a1)シリコン基板の形状が角型であること。
(a2)最大山高さRpが100.0nm以下であること。
【0051】
(B)第一面に2μm幅の微細配線パターンを形成することの可否の基準
下記の(b1)と(b2)とを満たす場合を合格とし、(b1)及び(b2)の少なくとも一方を満たさない場合を不合格とした。合格のうち、TTVが50.0μm以下であり、且つ最大山高さRpが50.0nm以下である場合、「優」と評価した。なお、(b1)は回路形成に影響を及ぼし得る厚みのばらつきを判断する事項であり、(b2)は回路形成に影響を及ぼし得る第一面の粗さを判断する事項であり、最大山高さRpが大きく段差が大きい部分は微細配線の形成が困難であるからである。
(b1)TTVが100.0μm以下であること。
(b2)最大山高さRpが100.0nm以下であること。
【0052】
(C)搬送することの可否の基準
下記の条件(c1)を満たす場合を合格とし、(c1)を満たさない場合を不合格とした。(c1)は、一辺の寸法が300mm以上900mm以下のシリコン基板として、回路形成に伴ってシリコン基板がロボットアーム(マテリアルハンド)によって上下左右に搬送される際にその形態を保持できるか、また搬送可能な重量であるかを判断する事項である。
(c1)0.5mm≦厚さt4≦2.0mmであること。
【0053】
第一面の全面の使用、微細パターンの形成、搬送の各可否を表4に示す。表4では、合格を「〇」と表し、そのうち「優」を「◎」と表し、さらに不合格を「NG」と表している。
【0054】
【表4】
【0055】
(評価について)
試料1~17では、第一面側から見た外形が正方形或いは長方形であることから、第一面の全面を無駄なく回路形成に利用することができる。また、さらにTTVが100.0μm以下となってシリコン基板の厚さのばらつきが小さいと共に、第一面の最大山高さRpが100.0nm以下となって粗さも小さいことから、微細の配線パターンを形成することができる。さらに、シリコン基板の厚さt4が0.5mm以上2.0mm以下であることから、搬送の際にも板状の形態を保持することができる。なお、単結晶シリコンからなる試料17と比べて、柱状晶シリコンからなる試料1~11,13,14では、TTV、最大山高さRp、算術平均粗さRaがいずれも高い値になる傾向があり、これは粒界が影響していると考えられる。
また、単結晶シリコンからなる試料17と比べて、柱状晶シリコンからなる試料1~11,13,14は曲げ強度が大きく、割れを防止することができることも確認した。また、参考例のガラス基板の平坦度と同等或いはそれ以上に良好な平坦度に、第一面を仕上げることができた。
なお、試料1~17のうち、第一面の全面の使用の可否が「優」である試料では、値(TTV/S1)が0.12×10―6[mm-1]以下であり、算術平均粗さRaが1.8nm以下であった。微細パターンの形成の可否が「優」である試料では、値(TTV/S1)が0.11×10―6[mm-1]以下であり、算術平均粗さRaが0.6nm以下であった。なお、微細パターンの形成の可否が「優」である試料では、第一面の全面の使用の可否も「優」であり、この場合には、TTVが17.9μm以下であり、最大山高さRpが45.6nm以下であった。
試料18ではシリコン基板が薄いために、搬送の際にシリコン基板に反りが生じるため、好ましくない。
また、試料19ではシリコン基板の厚いことで重くなり、搬送が困難となる。さらにインターポーザーとしてパッケージ化すると、チップ全体が厚くなるため好ましくない。
試料20ではTTV(シリコン基板の厚さのばらつき)が大きく、試料21では最大山高さRpが104.3nmと大きく第一面が粗くなることから、微細の配線パターンを形成することができない。
試料22ではシリコン基板が円形であるため、周縁領域を回路形成に活用することができない。
試料23では、本発明の異なる製造方法と異なり、ポリッシュ工程を行っていないことから、第一面が粗く形成されていて、微細の配線パターンの形成を良好に行うことができない。
試料24では、TTV(シリコン基板の厚さのばらつき)が大きく微細の配線パターンを形成することができない。エッチング工程を行うことで、第一面の粒界の箇所とその他の箇所とでエッチング量に差が生じて、TTVが大きくなったものと考えられる。
【符号の説明】
【0056】
1,1A 角型シリコン基板
11 第一縁部
12 第二縁部
13 角部
15 切欠部
110 第一面
120 第二面
130 外周端面
200 定盤
210 載置面
図1
図2
図3