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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148287
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】バッテリパックおよび移動体
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/367 20210101AFI20241010BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241010BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241010BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20241010BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20241010BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20241010BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20241010BHJP
【FI】
H01M50/367
B60K1/04 Z
H01M50/204
H01M50/291
H01M50/284
H01M50/342 201
H01M50/249
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061298
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(72)【発明者】
【氏名】長尾 訓成
【テーマコード(参考)】
3D235
5H012
5H040
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB17
3D235BB18
3D235BB22
3D235CC15
5H012BB08
5H012CC10
5H040AA01
5H040AA33
5H040AS05
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY05
5H040DD08
(57)【要約】
【課題】バッテリパックのケーシング内を移動する固体の物体が発生した場合に、その物体を効率的に捕捉する。
【解決手段】バッテリパック(3)は、バッテリモジュール(32)と、バッテリモジュール(32)を収容するケーシング(31)とを備える。バッテリモジュール(32)は、バッテリモジュール(32)と対向するケーシング(31)の第1面(311)との間に第1気体流路(71)を形成するように、第1面(311)と間隔をあけて配置されている。第1面(311)には、ケーシング(31)内の気体を外部へ排出するための排出口(35)が位置している。バッテリパック(3)は、排出口(35)が位置する第1面(311)から延びる第1壁部(51)であって、第1気体流路(71)の上流に向かいながら第1面(311)から離れる方向に延びる形状を有する第1壁部(51)をさらに備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールを収容するケーシングと、
を備えたバッテリパックであって、
前記バッテリモジュールは、前記バッテリモジュールと対向する前記ケーシングの第1面との間に第1気体流路を形成するように、前記ケーシングの前記第1面と間隔をあけて配置されており、
前記ケーシングの前記第1面には、前記ケーシング内の気体を外部へ排出するための排出口が位置しており、
前記バッテリパックは、前記排出口が位置する前記ケーシングの前記第1面から延びる第1壁部であって、前記第1気体流路の上流に向かいながら前記第1面から離れる方向に延びる形状を有する第1壁部をさらに備える、バッテリパック。
【請求項2】
前記ケーシングの前記第1面の幅方向から見た平面視において、
前記第1壁部は、前記排出口の軸方向に対して斜めに且つ前記第1面から離れる方向に延びる形状を有する、請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項3】
前記第1壁部は、
一端が前記ケーシングの前記第1面から延びる第1部分であって、前記第1気体流路の上流に向かいながら前記第1面から離れる方向に延びる形状を有する第1部分と、
前記第1部分の他端から前記第1気体流路の上流に向かう方向に延びる第2部分であって、前記第1面に対する前記第2部分の傾きが前記第1面に対する前記第1部分の傾きよりも小さい第2部分と、
を有する、請求項1または2に記載のバッテリパック。
【請求項4】
前記バッテリモジュールと前記ケーシングの前記第1面との間に配置されたバッフルプレートをさらに備え、
前記バッフルプレートと前記ケーシングの前記第1面との間に前記第1気体流路が形成されており、
前記第1壁部は、前記バッフルプレートとの間に隙間を設けるように配置されている、請求項1または2に記載のバッテリパック。
【請求項5】
前記ケーシングの前記第1面と対向する前記バッフルプレートの第2面から延びる第2壁部であって、前記第1気体流路の上流に向かいながら前記第2面から離れる方向に延びる形状を有し、前記ケーシングの前記第1面との間に隙間を設けるように配置された第2壁部をさらに備える、請求項4に記載のバッテリパック。
【請求項6】
前記ケーシングの前記第1面の長手方向において、前記第1壁部および前記第2壁部は互いにずれて配置されている、請求項5に記載のバッテリパック。
【請求項7】
前記バッテリパックの動作を制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記バッフルプレートに設けられている、請求項4に記載のバッテリパック。
【請求項8】
前記ケーシングの前記第1面と前記バッテリモジュールとの間に、前記第1気体流路とは別の第2気体流路であって、前記第1気体流路とは気体が流れる方向が異なる第2気体流路がさらに形成されており、
前記バッテリパックは、前記排出口が位置する前記ケーシングの前記第1面から延びる第3壁部であって、前記第2気体流路の上流に向かいながら前記第1面から離れる方向に延びる形状を有する第3壁部をさらに備える、請求項1または2に記載のバッテリパック。
【請求項9】
前記排出口を覆うように前記ケーシングに設けられた圧力逃がし装置をさらに備える、請求項1または2に記載のバッテリパック。
【請求項10】
請求項1または2に記載のバッテリパックを備えた移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリパックおよび移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータを駆動源として走行する電動車両がある。電動モータは、車両に搭載されたバッテリパックから電力を供給されて回転し、電動モータの回転が車輪に伝達されることで車両は走行することができる。
【0003】
バッテリパック内には複数の電池セルが配置されている。電池セル内部の圧力が上昇すると、電池セルから気体が排出される場合がある。バッテリパックのケーシングには、ケーシング内の気体を外部へ排出する排出口が設けられる。電池セルから排出された気体は、その排出口を通ってバッテリパックの外部に排出される。電池セルから発生した気体が排出口に向かって流れるときに、電池セルの構成要素由来の微粒子が気体と共に排出口に向かって移動する場合がある。
【0004】
特許文献1は、電池セルから発生した気体を外部に排出するための排気ダクトをケーシング内部に設けたバッテリパックを開示している。排気ダクトはその断面が矩形であり、排気ダクトの互いに対向する二つの内面のそれぞれから複数の排気ガイド部材が延びている。上述した微粒子は、それら複数の排気ガイド部材で捕捉され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/176415号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バッテリパックのケーシング内を移動する固体の物体が発生した場合に、その物体を効率的に捕捉することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、以下の項目に記載のバッテリパックおよび移動体を開示している。
【0008】
[項目1]
バッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールを収容するケーシングと、
を備えたバッテリパックであって、
前記バッテリモジュールは、前記バッテリモジュールと対向する前記ケーシングの第1面との間に第1気体流路を形成するように、前記ケーシングの前記第1面と間隔をあけて配置されており、
前記ケーシングの前記第1面には、前記ケーシング内の気体を外部へ排出するための排出口が位置しており、
前記バッテリパックは、前記排出口が位置する前記ケーシングの前記第1面から延びる第1壁部であって、前記第1気体流路の上流に向かいながら前記第1面から離れる方向に延びる形状を有する第1壁部をさらに備える、バッテリパック。
【0009】
本発明のある実施形態に係るバッテリパックは、排出口が位置するケーシングの第1面から延びる第1壁部を備える。第1壁部は、第1気体流路の上流に向かいながらケーシングの第1面から離れる方向に延びる形状を有する。電池セルの構成要素由来の固体の物体が発生した場合、それら固体の物体を第1壁部で捕捉することができる。
【0010】
バッテリパックのケーシング内には多くの部品を配置することが求められる。このため、バッテリモジュールと対向するケーシングの第1面と、バッテリモジュールとの間の間隔は小さくなり得る。ケーシングの第1面の幅方向の長さは、上記間隔よりも相対的に大きくなる。ケーシングの第1面の幅方向の長さが大きいことで、第1面に固定される壁部の根元部分の長さを大きくすることができ、壁部の剛性を高くすることができる。例えば、壁部が片持ち梁構造を有する場合、ケーシングの第1面に固定される固定端の長さを大きくすることができ、壁面の剛性を高くすることができる。これにより気体および固体の物体の移動に伴い大きな応力が壁部に掛かる条件下でも、壁部の歪を抑え固体の物体を効率的に捕捉することができる。
【0011】
また、固体の物体を捕捉するための壁部をバッテリパックのケーシングに設けることで、シンプルな構造で固体の物体を効率的に捕捉することができる。排気ダクトのような比較的大きな部品をケーシング内に設ける必要が無いため、ケーシング内の部品の配置の自由度を高めることができるとともに、バッテリパックの小型化を図ることができる。
【0012】
[項目2]
前記ケーシングの前記第1面の幅方向から見た平面視において、
前記第1壁部は、前記排出口の軸方向に対して斜めに且つ前記第1面から離れる方向に延びる形状を有する、項目1に記載のバッテリパック。
【0013】
これにより、第1気体流路を移動する固体の物体を第1壁部で捕捉することができる。
【0014】
[項目3]
前記第1壁部は、
一端が前記ケーシングの前記第1面から延びる第1部分であって、前記第1気体流路の上流に向かいながら前記第1面から離れる方向に延びる形状を有する第1部分と、
前記第1部分の他端から前記第1気体流路の上流に向かう方向に延びる第2部分であって、前記第1面に対する前記第2部分の傾きが前記第1面に対する前記第1部分の傾きよりも小さい第2部分と、
を有する、項目1または2に記載のバッテリパック。
【0015】
これにより、固体の物体を捕捉する空間を大きくすることができる。
【0016】
[項目4]
前記バッテリモジュールと前記ケーシングの前記第1面との間に配置されたバッフルプレートをさらに備え、
前記バッフルプレートと前記ケーシングの前記第1面との間に前記第1気体流路が形成されており、
前記第1壁部は、前記バッフルプレートとの間に隙間を設けるように配置されている、項目1から3のいずれかに記載のバッテリパック。
【0017】
これにより、バッテリモジュールから排出された固体の物体が、それら固体の物体を捕捉するための第1壁部が配置された位置を通らずに、排出口に直接的に向かうことを抑制できる。第1壁部が配置された位置にそれら固体の物体を誘導することができる。
【0018】
[項目5]
前記ケーシングの前記第1面と対向する前記バッフルプレートの第2面から延びる第2壁部であって、前記第1気体流路の上流に向かいながら前記第2面から離れる方向に延びる形状を有し、前記ケーシングの前記第1面との間に隙間を設けるように配置された第2壁部をさらに備える、項目4に記載のバッテリパック。
【0019】
延びる方向が互いに異なる第1壁部および第2壁部の両方で固体の物体を捕捉することで、固体の物体をより効率良く捕捉することができる。
【0020】
[項目6]
前記ケーシングの前記第1面の長手方向において、前記第1壁部および前記第2壁部は互いにずれて配置されている、項目5に記載のバッテリパック。
【0021】
これにより、相対的に質量が大きく進行方向が変わりにくい固体の物体を効率良く捕捉することができる。
【0022】
[項目7]
前記バッテリパックの動作を制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記バッフルプレートに設けられている、項目4から6のいずれかに記載のバッテリパック。
【0023】
これにより、バッフルプレートで制御装置を支持することができる。
【0024】
[項目8]
前記ケーシングの前記第1面と前記バッテリモジュールとの間に、前記第1気体流路とは別の第2気体流路であって、前記第1気体流路とは気体が流れる方向が異なる第2気体流路がさらに形成されており、
前記バッテリパックは、前記排出口が位置する前記ケーシングの前記第1面から延びる第3壁部であって、前記第2気体流路の上流に向かいながら前記第1面から離れる方向に延びる形状を有する第3壁部をさらに備える、項目1から3のいずれかに記載のバッテリパック。
【0025】
ケーシング内の気体を排出口へ導く気体流路を複数設けることで、ケーシング内の気体を効率良く排出口へ導くことができる。
【0026】
第1気体流路および第2気体流路のそれぞれに壁部を配置することで、固体の物体を効率良く捕捉することができる。
【0027】
[項目9]
前記排出口を覆うように前記ケーシングに設けられた圧力逃がし装置をさらに備える、項目1から8のいずれかに記載のバッテリパック。
【0028】
上記の壁部が固体の物体を捕捉することで、圧力逃がし装置内に堆積する固体の物体の量を低減させることができる。
【0029】
[項目10]
項目1から9のいずれかに記載のバッテリパックを備えた移動体。
【0030】
これにより、移動体に搭載されたバッテリパック内で、電池セルの構成要素由来の固体の物体が発生した場合、それら固体の物体をケーシング内で捕捉することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のある実施形態に係るバッテリパックは、排出口が位置するケーシングの第1面から延びる第1壁部を備える。第1壁部は、第1気体流路の上流に向かいながらケーシングの第1面から離れる方向に延びる形状を有する。電池セルの構成要素由来の固体の物体が発生した場合、それら固体の物体を第1壁部で捕捉することができる。
【0032】
バッテリパックのケーシング内には多くの部品を配置することが求められる。このため、バッテリモジュールと対向するケーシングの第1面と、バッテリモジュールとの間の間隔は小さくなり得る。ケーシングの第1面の幅方向の長さは、上記間隔よりも相対的に大きくなる。ケーシングの第1面の幅方向の長さが大きいことで、第1面に固定される壁部の根元部分の長さを大きくすることができ、壁部の剛性を高くすることができる。例えば、壁部が片持ち梁構造を有する場合、ケーシングの第1面に固定される固定端の長さを大きくすることができ、壁面の剛性を高くすることができる。これにより気体および固体の物体の移動に伴い大きな応力が壁部に掛かる条件下でも、壁部の歪を抑え固体の物体を効率的に捕捉することができる。
【0033】
また、固体の物体を捕捉するための壁部をバッテリパックのケーシングに設けることで、シンプルな構造で固体の物体を効率的に捕捉することができる。排気ダクトのような比較的大きな部品をケーシング内に設ける必要が無いため、ケーシング内の部品の配置の自由度を高めることができるとともに、バッテリパックの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施形態に係る電動車両1を示す左側面図である。
図2】実施形態に係るバッテリパック3を示す左側面図である。
図3】実施形態に係るバッテリパック3の一部を拡大して示す左側面図である。
図4】実施形態に係るバッテリパック3の一部を拡大して示す左側面図である。
図5】実施形態に係るケーシング31の前壁31f、バッフルプレート61、第1壁部51、第2壁部52を示す斜視図である。
図6】実施形態に係るリブ521が設けられた第1壁部51の例を示す図である。
図7】実施形態に係るバッテリパック3の別の例を示す左側面図である。
図8】実施形態に係るバッテリパック3の別の例の一部を拡大して示す左側面図である。
図9】実施形態に係るバッテリパック3の別の例の一部を拡大して示す左側面図である。
図10】実施形態に係るケーシング31の前壁31f、第1壁部51a、第3壁部53aを示す斜視図である。
図11】実施形態に係る第1壁部51aを示す図である。
図12】実施形態に係る第3壁部53aを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。同様の構成要素には同様の参照符号を付し、重複する場合にはその説明を省略する。以下の説明において、前、後、上、下、左、右は、それぞれ電動車両のシートに着座した乗員から見たときの前、後、上、下、左、右を意味するものとする。図面に付した符号F、Re、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。以下の実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0036】
図1は、本発明の実施形態に係る移動体の一例である電動車両1を示す左側面図である。電動車両1は、例えば鞍乗型電動車両である。図1に示す例では、電動車両1は、スクーター型の電動二輪車である。本発明の実施形態に係る電動車両1は、ここで例示するスクーター型の電動二輪車に限定されない。本発明の実施形態に係る電動車両1は、いわゆるオンロード型、オフロード型、モペット型等の他の型式の電動二輪車であってもよい。鞍乗型電動車両は、乗員が跨って乗車する任意の車両を意味し、二輪車に限定されない。鞍乗型電動車両は、車体を傾けることによって進行方向を変える型式の三輪車(LMW)等であってもよく、ATV(All Terrain Vehicle)等の他の電動車両であってもよい。電動車両1は鞍乗型以外の電動車両であってもよい。電動車両1は四輪以上の車輪を備える車両であってもよい。
【0037】
図1に示すように、電動二輪車1は、車体2、バッテリパック3、充電器4、駆動ユニット10、前輪13および後輪14を備える。電動二輪車1の構成を分かりやすく説明するために、図1では電動二輪車1の内部の一部を透かして示している。
【0038】
車体2は、車体フレーム20と車体カバー24を含む構造を有する。車体フレーム20はヘッドパイプ22を有する。ヘッドパイプ22にはステアリングシャフト19が挿入されている。ステアリングシャフト19の下端には、フロントフォーク15が設けられている。フロントフォーク15は、ヘッドパイプ22に挿通されたステアリングシャフト19を中心にして左右に回転可能となっている。フロントフォーク15の下端部には前輪13が回転可能に支持されている。ステアリングシャフト19の上端にはステアリングハンドル18が設けられている。
【0039】
車体2の後部は、スイングアーム16を揺動可能に支持している。後輪14は、スイングアーム16により回転可能に支持されている。この例では、駆動輪は後輪14であり、従動輪は前輪13である。車体2の上部には、乗員が着座するシート17が設けられている。
【0040】
バッテリパック3は、車両1の前後方向における前輪13と後輪14との間の位置に配置されている。駆動ユニット10は、バッテリパック3の後方に配置されている。駆動ユニット10は、電動モータ5および電動モータ5の動作を制御するモータコントロールユニット(MCU)6を備える。バッテリパック3は、電動モータ5を動作させる電力を供給する。MCU6は、バッテリパック3の出力電流から駆動電流を生成し、電動モータ5に出力する。電動モータ5が発生させた回転は、例えばベルトドライブ式の動力伝達機構を介して後輪14に伝達され、電動二輪車1は走行する。電動モータ5が発生させた回転は、チェーンドライブ式またはシャフトドライブ式の動力伝達機構を介して後輪14に伝達されてもよい。
【0041】
車体2の前部にはAC充電口12が設けられている。バッテリパック3の側方には充電器4が配置されている。AC充電口12は、バッテリパック3の充電のための交流電流を出力する外部電源のコネクタ(プラグ)が着脱可能なレセプタクルを有し、外部電源から出力された交流電流を受ける。AC充電口12は、ハーネス42を介して充電器4に接続されている。バッテリパック3を充電するとき、外部電源から出力された交流電流は、AC充電口12を介して充電器4に供給される。充電器4は、交流電流を直流電流に変換してバッテリパック3に出力することで、バッテリパック3の充電を行うことができる。充電器4が出力した直流電流は、例えばハーネスを介してバッテリパック3に供給される。
【0042】
車体2に、外部電源から出力された直流電流を受けるDC充電口が設けられていてもよい。この場合、外部電源から出力された直流電流が、DC充電口11を介してバッテリパック3に供給されることで、バッテリパック3の充電を行うことができる。
【0043】
図2は、バッテリパック3を示す左側面図である。図3図4は、バッテリパック3の一部を拡大して示す左側面図である。図2図3図4は、バッテリパック3の内部を示している。
【0044】
バッテリパック3は、ケーシング31、バッテリモジュール32、バッテリマネージメントシステム(BMS)34を備える。ケーシング31は、バッテリモジュール32、BMS34を収容する。バッテリパック3が備えるバッテリモジュール32の個数は任意であり、1個以上のバッテリモジュール32がケーシング31に収容される。バッテリモジュール32のそれぞれは、複数の電池セル33を備える。バッテリモジュール32のそれぞれが備える電池セル33の個数は任意である。
【0045】
BMS34は、バッテリパック3の充電動作および放電動作等のバッテリパック3の動作を制御する。ケーシング31には、コネクタ37、38が設けられている。コネクタ37には、バッテリパック3と充電器4とを接続するハーネスが接続される。コネクタ38には、バッテリパック3とMCU6とを接続するハーネスが接続される。
【0046】
ケーシング31の前壁31fには、ケーシング31内の気体を外部へ排出するための排出口35が設けられている。バッテリパック3の構成の説明の便宜上、本実施形態では、バッテリパック3の排出口35が設けられた側を前方側として説明する。また、説明の便宜上、前壁31fの長手方向351を上下方向とし、長手方向351と垂直な幅方向352(図5)を左右方向として説明する。
【0047】
ケーシング31の前壁31fには、排出口35を覆うように圧力逃がし装置(Pressure Relief Device:PRD)36が設けられている。電池セル33内部の圧力が上昇した場合、電池セル33から気体が排出される場合がある。電池セル33から排出された気体は、排出口35および圧力逃がし装置36を通ってバッテリパック3の外部に排出される。
【0048】
ケーシング31の前壁31fの内面である第1面311は、バッテリモジュール32と対向している。バッテリモジュール32は、第1面311との間に気体流路を形成するように、第1面311と間隔をあけて配置されている。気体流路は、電池セル33から排出された気体を流すための流路である。
【0049】
図2から図4に示す例では、ケーシング31の第1面311とバッテリモジュール32との間にバッフルプレート(邪魔板)61が配置されている。バッフルプレート61は、ケーシング31の上壁31uから下方に延びている。バッフルプレート61の下端部とケーシング31の底壁31bとの間には隙間が設けられている。図3に示すように、ケーシング31の第1面311とバッフルプレート61との間に、電池セル33から排出された気体を流すための気体流路(第1気体流路)71が形成されている。電池セル33から排出された気体は、気体流路71を通って排出口35に到達することができる。
【0050】
バッテリパック3は、ケーシング31の第1面311から延びる第1壁部51を備える。バッテリパック3は、第1面311と対向するバッフルプレート61の第2面612から延びる第2壁部52をさらに備える。
【0051】
第1壁部51は、例えばボルトなどの締結具541を用いて前壁31fに固定される。第1壁部51は、前壁31fと一体に形成されていてもよい。第2壁部52は、例えばボルトなどの締結具541を用いてバッフルプレート61に固定される。第2壁部52は、バッフルプレート61と一体に形成されていてもよい。
【0052】
図5は、ケーシング31の前壁31f、バッフルプレート61、第1壁部51、第2壁部52を示す斜視図である。第1壁部51および第2壁部52の形状を分かりやすく示すために、図5ではバッフルプレート61を透き通った状態で示している。
【0053】
図2から図5に示すように、第1壁部51は、気体流路71の上流に向かいながら第1面311から離れる方向に延びる形状を有する。ここで、図3に示す矢印71aは気体流路71の上流側を示しており、矢印71bは気体流路71の下流側を示している。ケーシング31の第1面311の幅方向(左右方向)から見た平面視において、第1壁部51は、排出口35の軸方向355(図3)に対して斜めに且つ第1面311から離れる方向に延びる形状を有している。第1壁部51は、バッフルプレート61との間に隙間を設けるように配置されている。
【0054】
第2壁部52は、気体流路71の上流に向かいながらバッフルプレート61の第2面612から離れる方向に延びる形状を有する。第2壁部52は、第1面311との間に隙間を設けるように配置されている。ケーシング31の第1面311の長手方向351において、第1壁部51および第2壁部52は互いにずれて配置されている。
【0055】
第1壁部51および第2壁部52それぞれは、幅方向352(図5)に延びている。第1壁部51および第2壁部52それぞれの左端部は、ケーシング31の左側壁と接触している。第1壁部51および第2壁部52それぞれの右端部は、ケーシング31の右側壁と接触している。バッフルプレート61は、幅方向352に延びており、バッフルプレート61の左端部はケーシング31の左側壁と接触しており、右端部はケーシング31の右側壁と接触している。
【0056】
上述したように、電池セル33内部の圧力が上昇したとき、電池セル33から気体が排出される場合がある。また、電池セル33内部の圧力が上昇したとき、電池セル33から気体とともに、電池セル33の構成要素由来の微粒子等の固体の物体331(図4)が排出される場合がある。電池セル33から発生した気体が排出口35に向かって流れるとき、そのような固体の物体331は気体と共に排出口35に向かって移動し得る。本実施形態では、排出口35に向かって移動する固体の物体331を第1壁部51および第2壁部52で捕捉する。
【0057】
ケーシング31の第1面311とバッテリモジュール32との間にはバッフルプレート61が配置されている。バッフルプレート61を配置することで、電池セル33から発生した気体および固体の物体331を第1壁部51および第2壁部52が配置された位置に誘導することができる。移動する固体の物体331が、それら固体の物体331を捕捉するための第1壁部51および第2壁部52が配置された位置を通らずに、排出口35に直接的に向かうことを抑制できる。
【0058】
固体の物体331は気体とともに気体流路71に沿って移動しようとするが、固体の物体331は相対的に質量が大きく、相対的に大きな慣性力が働くため、進行方向の変更が容易ではなく、第1壁部51および第2壁部52に捕捉される。
【0059】
第1壁部51は、気体流路71の上流に向かいながらケーシング31の第1面311から離れる方向に延びる形状を有する。この形状により、ケーシング31の第1面311と第1壁部51との間に形成された空間551(図4中のハッチングで示した領域)に固体の物体331を捕捉することができる。第2壁部52は、気体流路71の上流に向かいながらバッフルプレート61の第2面612から離れる方向に延びる形状を有する。バッフルプレート61の第2面612と第2壁部52との間に形成された空間552(図4中のハッチングで示した領域)に固体の物体331を捕捉することができる。
【0060】
第1壁部51および第2壁部52は、延びる方向が互いに異なるとともに、長手方向351において互いにずれて配置されている。気体流路71を蛇行させることにより、相対的に質量が大きく進行方向が変わりにくい固体の物体331を効率良く捕捉することができる。
【0061】
バッテリパック3のケーシング31内には多くの部品を配置することが求められる。このため、バッテリモジュール32と対向するケーシング31の第1面311と、バッテリモジュール32との間の間隔L図5)は小さくなり得る。ケーシング31の第1面311の幅方向352の長さLは、上記間隔Lよりも相対的に大きくなる。第1面311の幅方向352の長さLが大きいことで、第1面311に固定される第1壁部51の根元部分の長さを大きくすることができ、第1壁部51の剛性を高くすることができる。例えば、第1壁部51が片持ち梁構造を有する場合、第1面311に固定される固定端の長さを大きくすることができ、壁面の剛性を高くすることができる。これにより気体および固体の物体331の移動に伴い大きな応力が第1壁部51に掛かる条件下でも、第1壁部51の歪を抑え固体の物体331を効率的に捕捉することができる。
【0062】
バッフルプレート61の幅方向(左右方向)の長さLも、上記間隔Lよりも相対的に大きい。これにより、バッフルプレート61の第2面612に固定される第2壁部52の根元部分の長さを大きくすることができ、第1壁部51と同様に第2壁部52の剛性を高くすることができる。
【0063】
本実施形態では、固体の物体331を捕捉するための第1壁部51をバッテリパック3のケーシング31に設けることで、シンプルな構造で固体の物体331を効率的に捕捉することができる。排気ダクトのような比較的大きな部品をケーシング31内に設ける必要が無いため、ケーシング31内の部品の配置の自由度を高めることができるとともに、バッテリパック3の小型化を図ることができる。
【0064】
図2から図5に示す例では、ケーシング31内に、二つの第1壁部51と一つの第2壁部52とが設けられていたが、それらの個数に限定されない。第1壁部51および第2壁部52それぞれの個数は任意であり、一つ以上の第1壁部51および一つ以上の第2壁部52が設けられる。
【0065】
第1壁部51の剛性をさらに高くするために、第1壁部51にリブが設けられていてもよい。図6は、リブ521が設けられた第1壁部51の例を示す図である。第1壁部51にリブ521が設けることにより、第1壁部51の剛性をさらに高くすることができる。第2壁部52にリブが設けられてもよい。これにより、第2壁部52の剛性をさらに高くすることができる。
【0066】
図2から図5に示す例では、BMS34は、バッフルプレート61に設けられている。バッフルプレート61でBMS34を支持することにより、BMS34を支持するための部材を別に設ける必要が無くなり、ケーシング31内の部品の配置の自由度を向上させることができる。
【0067】
次に、本実施形態のバッテリパック3の別の例を説明する。
【0068】
図7は、別の例であるバッテリパック3を示す左側面図である。図8図9は、別の例であるバッテリパック3の一部を拡大して示す左側面図である。図7図8図9は、バッテリパック3の内部を示している。
【0069】
ケーシング31の第1面311は、バッテリモジュール32と対向している。バッテリモジュール32は、第1面311との間に気体流路71、72(図8)を形成するように、第1面311と間隔をあけて配置されている。
【0070】
気体流路(第2気体流路)72は、気体流路71とは気体が流れる方向が異なる。例えば、気体流路71はケーシング31内の下方から上方に向かって進む流路であり、気体流路72はケーシング31内の上方から下方に向かって進む流路である。電池セル33から排出された気体は、気体流路71、72を通って排出口35に到達することができる。電池セル33から排出された気体を排出口35へ導く気体流路を複数設けることで、気体を効率良く排出口35へ導くことができる。
【0071】
バッテリパック3は、ケーシング31の第1面311から延びる第1壁部51aおよび第3壁部53aを備える。第1壁部51aおよび第3壁部53aは、例えばボルトなどの締結具541を用いて前壁31fに固定される。第1壁部51aおよび第3壁部53aは、前壁31fと一体に形成されていてもよい。
【0072】
図10は、ケーシング31の前壁31f、第1壁部51a、第3壁部53aを示す斜視図である。図11は、第1壁部51aを示す図である。図12は、第3壁部53aを示す図である。
【0073】
図7から図12に示すように、第1壁部51aは、気体流路71の上流に向かいながら第1面311から離れる方向に延びる形状を有する。図8に示す矢印71aは気体流路71の上流側を示しており、矢印71bは気体流路71の下流側を示している。第1壁部51aは、バッテリモジュール32との間に隙間を設けるように配置されている。
【0074】
図11に示すように、第1壁部51aは、第1部分511および第2部分512を有する。第1部分511は、その一端がケーシング31の第1面311から延び、気体流路71の上流に向かいながら第1面311から離れる方向に延びる形状を有する。第2部分512は、第1部分511の他端から気体流路71の上流に向かう方向に延びる形状を有する。第1面311に対する第2部分512の傾きは、第1面311に対する第1部分511の傾きよりも小さい。言い換えると、第1面311の幅方向(左右方向)から見た平面視において、第1面311と第2部分512とがなす角度θは、第1面311と第1部分511とがなす角度θよりも小さい。第2部分512が延びる方向は第1面311と平行であってもよい。第1壁部51aが第1部分511および第2部分512を有することで、固体の物体331を捕捉する空間551(図9)を大きくすることができる。
【0075】
図7から図12に示すように、第3壁部53aは、気体流路72の上流に向かいながら第1面311から離れる方向に延びる形状を有する。図8に示す矢印72aは気体流路72の上流側を示しており、矢印72bは気体流路72の下流側を示している。第3壁部53aは、バッテリモジュール32との間に隙間を設けるように配置されている。
【0076】
図12に示すように、第3壁部53aは、第1部分531および第2部分532を有する。第1部分531は、その一端がケーシング31の第1面311から延び、気体流路72の上流に向かいながら第1面311から離れる方向に延びる形状を有する。第2部分532は、第1部分531の他端から気体流路72の上流に向かう方向に延びる形状を有する。第1面311に対する第2部分532の傾きは、第1面311に対する第1部分531の傾きよりも小さい。言い換えると、第1面311の幅方向(左右方向)から見た平面視において、第1面311と第2部分532とがなす角度θは、第1面311と第1部分531とがなす角度θよりも小さい。第2部分532が延びる方向は第1面311と平行であってもよい。第3壁部53aが第1部分531および第2部分532を有することで、固体の物体331を捕捉する空間553(図9)を大きくすることができる。
【0077】
第1壁部51aおよび第3壁部53aそれぞれは、幅方向352(図10)に延びている。第1壁部51aおよび第3壁部53aそれぞれの左端部は、ケーシング31の左側壁と接触している。第1壁部51aおよび第3壁部53aそれぞれの右端部は、ケーシング31の右側壁と接触している。
【0078】
この例では、電池セル33から固体の物体331(図9)が排出された場合、排出口35に向かって移動する固体の物体331を第1壁部51aおよび第3壁部53aで捕捉する。固体の物体331は気体とともに気体流路71、72に沿って移動しようとするが、固体の物体331は相対的に質量が大きく、相対的に大きな慣性力が働くため、進行方向の変更が容易ではなく、概ね第1面311に沿って移動し、第1壁部51aおよび第3壁部53aに捕捉される。
【0079】
バッテリパック3のケーシング31内には多くの部品を配置することが求められるため、ケーシング31の第1面311とバッテリモジュール32との間の間隔L図7)は小さくなり得る。ケーシング31の第1面311の幅方向352の長さL図10)は、上記間隔Lよりも相対的に大きくなる。第1面311の幅方向352の長さLが大きいことで、第1面311に固定される第1壁部51aおよび第3壁部53aの根元部分の長さを大きくすることができ、第1壁部51aおよび第3壁部53aの剛性を高くすることができる。
【0080】
固体の物体331を捕捉するための第1壁部51aおよび第3壁部53aをバッテリパック3のケーシング31に設けることで、シンプルな構造で固体の物体331を効率的に捕捉することができる。排気ダクトのような比較的大きな部品をケーシング31内に設ける必要が無いため、ケーシング31内の部品の配置の自由度を高めることができるとともに、バッテリパック3の小型化を図ることができる。
【0081】
図7から図10に示す例では、ケーシング31内に、一つの第1壁部51aと一つの第3壁部53aとが設けられていたが、それらの個数に限定されない。第1壁部51aおよび第3壁部53aそれぞれの個数は任意であり、一つ以上の第1壁部51aおよび一つ以上の第3壁部53aが設けられる。第1壁部51aおよび第3壁部53aの剛性をさらに高くするために、第1壁部51aおよび第3壁部53aにリブが設けられていてもよい。
【0082】
第1壁部51aおよび第3壁部53aの形状は、図2から図5に示した第1壁部51の形状を有していてもよい。また、第1壁部51および第2壁部52は、第1壁部51aのように第1部分511および第2部分512(図11)を有する形状であってもよい。
【0083】
上述の実施形態の説明では、ケーシング31の前壁31fの長手方向351が電動車両1の上下方向となるようにバッテリパック3は電動車両1内に配置されていたが、バッテリパック3の配置方法はそれに限定されない。例えば、前壁31fの長手方向351が電動車両1の左右方向となるようにバッテリパック3が電動車両1内に配置されてもよい。この場合、ケーシング31の壁31u、31bは、ケーシング31の側壁となる。
【0084】
また、上述の実施形態の説明では、バッテリパック3が搭載される移動体1は車両であったが、本発明は車両に限定されず、電動モータで駆動される船舶、航空機、ロボット等であってもよい。また、本発明は、電動モータと内燃機関を併用するハイブリッドシステムにも適用可能である。また、移動体1は、人が乗る輸送機械に限定されず、無人で動作する輸送機械であってもよい。本発明は、バッテリパックを用いて動作する機械に適用することができる。
【0085】
以上、本発明の例示的な実施形態を説明した。本明細書は、以下の項目に記載のバッテリパックおよび移動体を開示している。
【0086】
[項目1]
バッテリモジュール32と、
バッテリモジュール32を収容するケーシング31と、
を備えたバッテリパック3であって、
バッテリモジュール32は、バッテリモジュール32と対向するケーシング31の第1面311との間に第1気体流路71を形成するように、ケーシング31の第1面311と間隔をあけて配置されており、
ケーシング31の第1面311には、ケーシング31内の気体を外部へ排出するための排出口35が位置しており、
バッテリパック3は、排出口35が位置するケーシング31の第1面311から延びる第1壁部51であって、第1気体流路71の上流に向かいながら第1面311から離れる方向に延びる形状を有する第1壁部51をさらに備える、バッテリパック3。
【0087】
本発明のある実施形態に係るバッテリパック3は、排出口35が位置するケーシング31の第1面311から延びる第1壁部51を備える。第1壁部51は、第1気体流路71の上流に向かいながらケーシング31の第1面311から離れる方向に延びる形状を有する。電池セル33の構成要素由来の固体の物体331が発生した場合、それら固体の物体331を第1壁部51で捕捉することができる。
【0088】
バッテリパック3のケーシング31内には多くの部品を配置することが求められる。このため、バッテリモジュール32と対向するケーシング31の第1面311と、バッテリモジュール32との間の間隔Lは小さくなり得る。ケーシング31の第1面311の幅方向の長さLは、上記間隔Lよりも相対的に大きくなる。ケーシング31の第1面311の幅方向の長さLが大きいことで、第1面311に固定される壁部51の根元部分の長さを大きくすることができ、壁部51の剛性を高くすることができる。例えば、壁部51が片持ち梁構造を有する場合、ケーシング31の第1面311に固定される固定端の長さを大きくすることができ、壁面の剛性を高くすることができる。これにより気体および固体の物体331の移動に伴い大きな応力が壁部51に掛かる条件下でも、壁部51の歪を抑え固体の物体331を効率的に捕捉することができる。
【0089】
また、固体の物体331を捕捉するための壁部51をバッテリパック3のケーシング31に設けることで、シンプルな構造で固体の物体331を効率的に捕捉することができる。排気ダクトのような比較的大きな部品をケーシング31内に設ける必要が無いため、ケーシング31内の部品の配置の自由度を高めることができるとともに、バッテリパック3の小型化を図ることができる。
【0090】
[項目2]
ケーシング31の第1面311の幅方向から見た平面視において、
第1壁部51は、排出口35の軸方向355に対して斜めに且つ第1面311から離れる方向に延びる形状を有する、項目1に記載のバッテリパック3。
【0091】
これにより、第1気体流路71を移動する固体の物体331を第1壁部51で捕捉することができる。
【0092】
[項目3]
第1壁部51は、
一端がケーシング31の第1面311から延びる第1部分511であって、第1気体流路71の上流に向かいながら第1面311から離れる方向に延びる形状を有する第1部分511と、
第1部分511の他端から第1気体流路71の上流に向かう方向に延びる第2部分512であって、第1面311に対する第2部分512の傾きが第1面311に対する第1部分511の傾きよりも小さい第2部分512と、
を有する、項目1または2に記載のバッテリパック3。
【0093】
これにより、固体の物体331を捕捉する空間551を大きくすることができる。
【0094】
[項目4]
バッテリモジュール32とケーシング31の第1面311との間に配置されたバッフルプレート61をさらに備え、
バッフルプレート61とケーシング31の第1面311との間に第1気体流路71が形成されており、
第1壁部51は、バッフルプレート61との間に隙間を設けるように配置されている、項目1から3のいずれかに記載のバッテリパック3。
【0095】
これにより、バッテリモジュール32から排出された固体の物体331が、それら固体の物体331を捕捉するための第1壁部51が配置された位置を通らずに、排出口35に直接的に向かうことを抑制できる。第1壁部51が配置された位置にそれら固体の物体331を誘導することができる。
【0096】
[項目5]
ケーシング31の第1面311と対向するバッフルプレート61の第2面612から延びる第2壁部52であって、第1気体流路71の上流に向かいながら第2面612から離れる方向に延びる形状を有し、ケーシング31の第1面311との間に隙間を設けるように配置された第2壁部52をさらに備える、項目4に記載のバッテリパック3。
【0097】
延びる方向が互いに異なる第1壁部51および第2壁部52の両方で固体の物体331を捕捉することで、固体の物体331をより効率良く捕捉することができる。
【0098】
[項目6]
ケーシング31の第1面311の長手方向351において、第1壁部51および第2壁部52は互いにずれて配置されている、項目5に記載のバッテリパック3。
【0099】
これにより、相対的に質量が大きく進行方向が変わりにくい固体の物体331を効率良く捕捉することができる。
【0100】
[項目7]
バッテリパック3の動作を制御する制御装置34をさらに備え、
制御装置34は、バッフルプレート61に設けられている、項目4から6のいずれかに記載のバッテリパック3。
【0101】
これにより、バッフルプレート61で制御装置34を支持することができる。
【0102】
[項目8]
ケーシング31の第1面311とバッテリモジュール32との間に、第1気体流路71とは別の第2気体流路72であって、第1気体流路71とは気体が流れる方向が異なる第2気体流路72がさらに形成されており、
バッテリパック3は、排出口35が位置するケーシング31の第1面311から延びる第3壁部53であって、第2気体流路72の上流に向かいながら第1面311から離れる方向に延びる形状を有する第3壁部53をさらに備える、項目1から3のいずれかに記載のバッテリパック3。
【0103】
ケーシング31内の気体を排出口35へ導く気体流路71、72を複数設けることで、ケーシング31内の気体を効率良く排出口35へ導くことができる。
【0104】
第1気体流路71および第2気体流路72のそれぞれに壁部51、53を配置することで、固体の物体331を効率良く捕捉することができる。
【0105】
[項目9]
排出口35を覆うようにケーシング31に設けられた圧力逃がし装置36をさらに備える、項目1から8のいずれかに記載のバッテリパック3。
【0106】
上記の壁部が固体の物体331を捕捉することで、圧力逃がし装置36内に堆積する固体の物体331の量を低減させることができる。
【0107】
[項目10]
項目1から9のいずれかに記載のバッテリパック3を備えた移動体1。
【0108】
これにより、移動体1に搭載されたバッテリパック3内で、電池セル33の構成要素由来の固体の物体331が発生した場合、それら固体の物体331をケーシング31内で捕捉することができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、バッテリパックを用いて動作する機械の分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0110】
1:移動体(電動車両)、 2:車体、 3:バッテリパック、 4:充電器、 5:電動モータ、 6:モータコントロールユニット(MCU)、 10:駆動ユニット、 12:AC充電口、 13:前輪、 14:後輪、 15:フロントフォーク、 16:スイングアーム、 17:シート、 18:ステアリングハンドル、 20:車体フレーム、 22:ヘッドパイプ、 24:車体カバー、 31:ケーシング、 31f:前壁、 32:バッテリモジュール、 33:電池セル、 34:バッテリマネージメントシステム(BMS)、 35:排出口、 36:圧力逃がし装置(PRD)、 37:コネクタ、 38:コネクタ、 42:ハーネス、 51:第1壁部、 52:第2壁部、 53:第3壁部、 61:バッフルプレート、 71:第1気体流路、 71a:上流、 71b:下流、 72:第2気体流路、 311:ケーシングの第1面、 331:固体の物体、 351:第1面の長手方向、 352:第1面の幅方向、 355:軸方向、 511:第1壁部の第1部分、 512:第1壁部の第2部分、 521:リブ、 531:第3壁部の第1部分、 532:第3壁部の第2部分、 541:締結具、 551:空間、 552:空間、 553:空間、 612:バッフルプレートの第2面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12