(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014829
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】液体循環装置
(51)【国際特許分類】
B28D 7/02 20060101AFI20240125BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20240125BHJP
B23B 45/02 20060101ALI20240125BHJP
B28D 1/14 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
B28D7/02
B23Q11/10 E
B23B45/02
B28D1/14
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118411
(22)【出願日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2022115672
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510118101
【氏名又は名称】株式会社丸高工業
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】高木 一昌
(72)【発明者】
【氏名】高木 栄造
(72)【発明者】
【氏名】神川 雄次
(72)【発明者】
【氏名】高橋 紀貴
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 一弥
(72)【発明者】
【氏名】高橋 仁
【テーマコード(参考)】
3C011
3C036
3C069
【Fターム(参考)】
3C011EE03
3C011EE09
3C036EE18
3C069AA04
3C069BA09
3C069BB01
3C069CA07
3C069DA06
3C069DA07
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】湿式電動工具を用いた工事の作業効率を高める液体循環機構を実現する。
【解決手段】湿式電動工具から懸濁液を回収し、回収した懸濁液から濾過液を抽出して湿式電動工具へ供給する液体循環装置1を提供する。液体循環装置1は、可撓性の濾過袋520と、懸濁液を濾過袋520の外側から内側に向けて吸引するバキュームポンプとを備え、バキュームポンプが吸引を開始すると濾過袋520の一部が内側に撓み、バキュームポンプが吸引を停止すると、濾過袋520の内側に抽出された濾過液が濾過袋520の撓みを解消して、削屑等で覆われていた濾過袋520の目を袋外に押し出す。つまり、濾過袋520を自動洗浄する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式電動工具から懸濁液を回収し、回収した懸濁液から濾過液を抽出して前記湿式電動工具へ供給する液体循環装置であって、可撓性の濾過体と、前記懸濁液を前記濾過体の第1方向に向けて吸引する第1ポンプとを備え、
前記第1ポンプが吸引を開始すると前記濾過体の一部が撓み、前記第1ポンプが吸引を停止すると前記濾過体の撓みが解消されて、前記濾過体を通過した前記濾過液が前記第1方向とは逆の第2方向へ向かうことを特徴とする、
液体循環装置。
【請求項2】
前記第1ポンプが吸引を開始した後に前記濾過液の前記湿式電動工具への供給を開始するとともに前記第1ポンプが吸引を停止する前に前記供給を停止する第2ポンプを備え、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプを含む装置内電装部品の電源がバッテリーであることを特徴とする、請求項1に記載の液体循環装置。
【請求項3】
前記バッテリーが、前記湿式電動工具の駆動電源と互換性を有することを特徴とする、
請求項2に記載の液体循環装置。
【請求項4】
前記バッテリーと前記湿式電動工具との間で電力の受け渡しを行うための電源端子をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の液体循環装置。
【請求項5】
前記第1ポンプは、前記第2ポンプよりも強い負圧力で前記懸濁液を空気と共に吸引するバキュームポンプであり、
前記第2ポンプは、弾性チューブを回転ローラで押圧することにより当該弾性チューブ内で前記濾過液を移動させるチューブポンプであり、
前記弾性チューブの一端に接続されるチューブと前記弾性チューブの他端に接続されるチューブのいずれかの1本以上のチューブが、前記バキュームポンプの外表面に沿って巻かれていることを特徴とする、請求項2に記載の液体循環装置。
【請求項6】
前記第2ポンプが、前記弾性チューブと前記第1チューブとの接続部位、及び、前記弾性チューブと前記第2チューブとの接続部位が、透光性カバーで覆われていることを特徴とする、請求項5に記載の液体循環装置。
【請求項7】
透光部材からなる有底箱体の内側空間に、前記懸濁液を貯留するための懸濁液貯留庫を形成した貯留タンクと、
前記貯留タンクを蓋するとともに前記懸濁液貯留庫の空気を排気する排気機構が設けられた排気層ユニットと、を備え、
前記排気層ユニットのうち前記濾過体を通過した前記濾過液の流路に、前記第1ポンプが配置されている方向への流路を遮断するとともに濾過液入口側よりも濾過液出口側の流路断面積が大きい濾過液ダクトが設けられていることを特徴とする、
請求項2から6のいずれか一項に記載の液体循環装置。
【請求項8】
前記濾過液を前記第2ポンプの給水端へ送る給水ノズルを有することを特徴とする、
請求項7に記載の液体循環装置。
【請求項9】
前記第2ポンプの給水端及び/又は送水端と直接又は間接部材を介して接続され、前記給水ノズルに存在する前記濾過液を前記貯留タンクに自律的に戻すリリーフ弁を備えることを特徴とする、
請求項8に記載の液体循環装置。
【請求項10】
前記リリーフ弁は、排水端を有する継手の内壁に沿って巻回されたスプリングと、前記給水ノズルに存在する前記濾過液の流圧に応じて前記スプリングを付勢又は消勢する押当部材とを有し、前記押当部材が前記スプリングを付勢したときに前記給水ノズルに存在する前記濾過液を前記排水端から前記貯留タンクに向けて放出させることを特徴とする、
請求項9に記載の液体循環装置。
【請求項11】
湿式電動工具から回収した懸濁液を濾過して前記湿式電動工具へ供給する液体循環装置であって、バッテリーで動作するバキュームポンプを含む電装部品と、前記バキュームポンプの動作時にその内側空間が負圧になる貯留タンクとを有し、
前記貯留タンクは、それぞれ前記負圧により前記懸濁液を回収する回収手段と、回収された前記懸濁液を濾過する濾過手段と、を含み、前記濾過手段は、前記負圧でその一部が撓むことにより前記濾過液を第1方向に通過させ、前記負圧の解除により前記撓みが解消されて通過中の前記濾過液を前記第1方向とは逆の第2方向に導く、可撓性の濾過体を有することを特徴とする、液体循環装置。
【請求項12】
前記濾過手段は、前記貯留タンクの内底面及び少なくとも対向する一対の側壁に当接して当該貯留タンクの耐変形強度を補強しつつ前記内底面から鉛直上方に離れた位置で前記濾過体を載置するための濾過体ガイドを有することを特徴とする、
請求項11に記載の液体循環装置。
【請求項13】
前記貯留タンクは、高さ方向に積み上げられた二つ有底箱体を有し、
下方の前記有底箱体には前記回収手段で回収した懸濁液を貯留する懸濁液貯留庫が形成され、上方の前記有底箱体には、前記濾過手段で濾過された濾過液を前記懸濁液貯留庫よりも高い位置で貯留する濾過液貯留庫が形成されていることを特徴とする、
請求項11または12に記載の液体循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば湿式電動工具と共に使用される液体循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート等の穿孔や切削に用いられる電動工具の刃先に冷却水を供給するとともに電動工具側で生じた懸濁液を回収して濾過し、電動工具へ再供給する装置が特許文献1~3に開示されている。特許文献1に開示された装置(液体供給装置)は、液体容器内に貯留された懸濁液から自重で削屑、穿孔屑、粉塵、汚泥(以下「削屑等」)が沈降した水の上部からストレーナを介して大きな削屑等を取り除いた濾過液を吸い上げる。特許文献2に開示された装置(携帯式循環濾過装置)は、懸濁液に含まれる削屑等を、順次隣接させた複数のフィルタで複数回濾別する。特許文献3に開示された装置(ノロ水の回収濾過装置)は、回収容器内のノロ水の上澄み液をフィルタで吸い上げて濾過させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-031082号公報
【特許文献2】特許3623927号公報
【特許文献3】特開2007-077691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,3に開示された装置において、濾過水は、懸濁液から削屑等が沈下した上澄みをフィルタで濾過することにより得られる。つまり、単位時間における濾過水の確保量は、削屑等の沈下態様に依存する。そのため、懸濁液を静かに回収させる必要があるため、作業場所や作業態様が限られてしまう。また、懸濁液に含まれる削屑の種類によっては、回収用の排水ホースが詰まってしまい、懸濁液が溢れてしまう。さらに、懸濁液に含まれる削屑等の粒径がフィルタを通過し得るほど小さく且つその密度が高い場合、濾過液の確保に時間がかかるだけでなく、フィルタの目詰まりが頻繁に起こり、その交換や洗浄のために作業を停止する回数が多くなってしまう。
特許文献2に開示された装置は、2~4個のフィルタを必要とする。そのため、特許文献1,3に開示された装置と同様、フィルタ交換のために作業を停止する回数が多くなり、作業効率を高めることができない。
【0005】
本発明の課題の一つは、湿式電動工具を用いた工事の作業効率を高めることができる液体循環装置を提供することにある。本発明の他の課題は、本明細書の開示から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記主たる課題を解決する本発明の一態様は、湿式電動工具から懸濁液を回収し、回収した懸濁液から濾過液を抽出して前記湿式電動工具へ供給する液体循環装置であって、
可撓性の濾過体と、前記懸濁液を前記濾過体の第1方向に向けて吸引する第1ポンプとを備え、前記第1ポンプが吸引を開始すると前記濾過体の一部が撓み、前記第1ポンプが吸引を停止すると前記濾過体の撓みが解消されて、前記濾過体を通過した前記濾過液が前記第1方向とは逆の第2方向へ向かうことを特徴とする、液体循環装置である。
【発明の効果】
【0007】
上記態様の液体循環装置によれば、湿式電動工具を用いた工事の作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る液体循環装置の外観斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る液体循環装置の分解組立図である。
【
図3】バキュームポンプの構造例を示す図であり、(a)は斜め上面視の外観図、(b)は斜め下面視の外観図である。
【
図4】チューブポンプの構造例を示す図であり、(a)は斜め上面視の外観図、(b)は動作前における右側面視の外観図、(c)は同動作中における右側面視の外観図である。
【
図5】(a)はリリーフ弁の外観図、(b)はその断面構造例を示す図である。
【
図6】濾過液リリーフ機構のチューブ類の引き回し構造例を示す外観斜視図である。
【
図7】貯留タンクの構造例を示す図であり、(a)は上面図、(b)は下方斜視図である。
【
図8】排気層ユニットの構造説明図であり、(a)は下方斜視図、(b)は下面図、(c)は貯留タンクに固定されたときの状態を示す側部断面図である。
【
図9】フィルタホルダを説明するための排気層ユニットの斜め上面視の外観図、(b)は斜め下面視の外観図である。
【
図10】吸引動作中の液体循環装置の側部断面図である。
【
図11】吸引動作を停止したときの液体循環装置の側部断面図である。
【
図12】第2実施形態に係る液体循環装置の外観斜視図である。
【
図13】第4実施形態に係る液体循環装置の外観例を示す図であり、(a)は前方外観斜視図、(b)は後方外観斜視図である。
【
図14】第4実施形態に係る液体循環装置の外観例を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は右側面図である。
【
図15】第4実施形態に係る液体循環装置の外観例を示す図であり、(a)は背面図、(b)は正面図、(c)は平面図、(d)は底面図である。
【
図16】貯留タンクの構造例を示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)平面図、(c)は(b)のA-A断面図である。
【
図17】貯留タンクの上底部に装着される蓋部の構造説明図であり、(a)は下方斜視図、(b)は右側面図、(c)は正面図、(d)は背面図である。
【
図18】第5実施形態に係る貯留タンクの構造例を示す図であり、(a)は前方外観斜視図、同(b)は平面図である。
【
図19】第5実施形態に係る貯留タンクの構造例を示す図であり、(a)は
図18(b)のA-A断面図、同(b)はB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を、バッテリー駆動の湿式電動工具と共に使用される、携行型の液体循環装置に適用した場合の実施の形態例を説明する。
湿式電動工具は、例えば、本願出願人が開示した特許第6661184号公報又は特許第6711499号公報に記載の湿式電動ドリルを使用することができる。この湿式電動ドリルでは、電動ドリルのスピンドルに、湿式用シャンクを介してドリルビットを装着する。ドリルビットと穿孔部位との間の液体滞留部分は、円錐状弾性部材で水密に維持される。湿式用シャンクには、液体循環装置に繋がる給水ホースから冷却水が給水される。冷却水は、摩擦熱で熱せられたドリルビットを冷却するとともに、ドリルビットによる穿孔又は削孔により発生した削屑等を巻き上げてそれらが混ざった懸濁液となる。懸濁液は、穿孔部位の材質に応じて密度や粘度が異なるものとなる。この懸濁液は、湿式電動ドリルの排水機構を介して液体循環装置1に繋がる排水ホースに排水される。
【0010】
湿式電動ドリルは、排水のための吸引開始から所定時間遅れて給水を開始させ、吸引停止前に給水を停止させるための制御信号をドリルビットの位置検出により出力する。なお、湿式電動工具は、冷却水を供給するための給水ホースと、懸濁液を回収するための排水ホースとを備える工具ないし工具システムであれば、湿式ドリル以外のどのような構成のものであっても本発明の実施は可能である。
【0011】
液体循環装置は、上述した湿式電動ドリルから懸濁液を回収し、回収した懸濁液から濾過液を抽出して湿式電動ドリルの湿式用シャンクへ供給する装置である。
本明細書及び図面では、便宜上、前後左右上下方向でX方向、Y方向、Z方向を定義する。Z方向は、液体循環装置の載置部位に対して直交する方向である。X方向,Y方向は、Z方向に垂直な水平方向の一つである。本明細書では、X方向が前後方向(前が+、後ろが-)、Y方向が左右方向(左(手前)が+、右(奥)が-)Z方向が上下方向(上が+、下が-)として説明する。また、図面において、X軸、Y軸、Z軸のそれぞれの矢印が指し示す方向をそれぞれ前方向、左方向、上方向と呼ぶ場合がある。また、上方向から液体循環装置を見ることを上面視、斜め上方向から液体循環装置を見ることを斜め上面視、左方向(又は右方向)から液体循環装置を見ることを左(右)側面視、左下方又は右可能から液体循環装置を見ることを斜視と呼ぶ場合がある。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る液体循環装置1の外観斜視図である。
図2は、液体循環装置1の分解組立図である。
図3~
図9は液体循環装置1を構成する各装置部品の説明図である。便宜上、上述した湿式電動ドリルに繋がる給水ホース及び排水ホースについては、図示を省略してある。液体循環装置1は、第1ポンプ及び第2ポンプを含む装置内電装部品のほか、濾過液リリーフ機構130、バッテリー140、貯留タンク300、排気層ユニット400及び濾過ユニット500を備える。
【0013】
<装置内電装部品>
液体循環装置1は、第1ポンプの一例となるバキュームポンプ110、第2ポンプの一例となるチューブポンプ120、バッテリー140及び制御装置150を含む装置内電装部品を有する。各装置内電装部品は、後述する立体構造の排気層ユニット400に固定され、排気層ユニット400から上方に露出する部分は、ハウジング200で覆われている。ハウジング200は、排気層ユニット400の天板421にネジ止め固定される。ハウジング200の天頂部には、作業者が把持する取っ手210が設けられている。ハウジング200の側面部のうち対向する一対の面部上方には、ベルトの両端を固定するためのグランドフック223が設けられている。
【0014】
バキュームポンプ110は、
図3(a)、(b)に示す通り、吸気口1101とコンプレッサ1102と排気口1103とを有し、コンプレッサ1102が、吸気口1101から強い負圧力で空気を吸気すると共に液体を吸引する。その際、排気口1103から排気を放出する。吸気口1101は排気層ユニット400に固定されており、貯留タンク300内の空気を吸気するとともに、貯留タンク300と濾過ユニット500を介して濾過液と懸濁液とを吸引する。排気口1103からの排気は、排気層ユニット400の排気孔4211を通じて外部へ放散される。
【0015】
バキュームポンプ110は、例えば流量が500L/min以上で、駆動電圧がDC12V~36Vの製品を用いることができる。携行可能な小型の液体循環装置1でありながら、チューブポンプ等の汎用ポンプよりも吸引力が格段に高いため、削屑等の密度や粘度の高い懸濁液であっても容易に吸引し、濾過ユニット500による濾過液の抽出も容易になる。
【0016】
チューブポンプ120は、
図4(a),(b),(c)に示す通り、スピンドルを有するローラモータ121と、このスピンドルを回転自在に保持すると共に上半分の外端部に縁が形成されたモータブラケット122とを有する。チューブポンプ120は、また、ローラヘッド123と弾性チューブ124とを有する。ローラヘッド123には、複数のローラが中心から放射状に当間隔で配置され、スピンドルによって回転駆動される。そのため、ローラヘッド123は、回転ローラとして動作する。弾性チューブ124は、その表面がローラヘッド123の各ローラに当接され、一方端が給水端125、他方端が送水端126にそれぞれ接続されている。給水端125には給水チューブ127が接続され、送水端126には送水チューブ128が接続されている。
【0017】
チューブポンプ120は、ローラヘッド123の各ローラが弾性チューブ124を押圧したときに弾性チューブ124内に真空状態を作り出し、その真空状態が解消されるときの圧力で、給水チューブ127及び給水端125から濾過液を吸い込む。そして、吸い込んだ濾過液をスピンドルの回転速度で送水端126まで送り出す。濾過液は送水チューブ128から湿式電動ドリルに向けて送り出される。
【0018】
チューブポンプ120は、削屑等が除外された濾過水を送水するだけなので、例えば流量が0.5L/min以下で、駆動電源がDC12~24Vの製品を用いることができる。
【0019】
ローラヘッド123及び弾性チューブ124は、透光性(例えば透明色)のポンプカバー129(
図4では図示省略)により覆われている。ポンプカバー129が透光性であるため、チューブポンプ120が正常に動作しているかどうか、特に弾性チューブ124が劣化していないかどうか、あるいは、給水チューブ127又は送水チューブ128が詰まっていないかどうかを、液体循環装置1の動作中に目視で確認することができる。
【0020】
バッテリー140は、バッテリーブラケット141を通じて装置内電装部品に直流電力を供給する。湿式電動ドリルがバッテリー駆動であり、液体循環装置もバッテリー駆動であるため、場所を選ばない穿孔、削孔、切削等の加工作業、例えば従来装置ないしシステムでは困難であった天井面の加工作業が容易になる。
【0021】
バッテリー140は、湿式電動ドリルのバッテリーと同一品あるいは互換性を有するバッテリーを用いることができる。例えば、この種の電動工具で多用されているDC18Vの箱型バッテリーを用いることができる。そのため、変圧回路を設けることなく、そのまま装置内電装部品の電源として用いることができ、小型軽量化に貢献することができる。また、予備バッテリーと充電装置とを湿式電動ドリルと共用することができるので、運搬時や作業時の携行品を少なくして作業員の負担を軽減させることができる。
【0022】
制御装置150は、バキュームポンプ110の正電源端子、チューブポンプ120の正電源端子、湿式電動ドリルから入力される各種制御信号の一部が入力される第1信号端子及びバッテリー140の負電源端子を有する半導体無接点リレー(Solid State Relay:SSR)を含む。SSRの採用により、端子間のオン・オフが高速・高頻度に切り替わっても高寿命かつ静音であり、装置の小型化も容易になる。
【0023】
制御装置150は、また、バキュームポンプ110の正電源端子と、バキュームポンプ110の負電源端子と、チューブポンプ120の負電源端子と湿式電動ドリルから入力される各種制御信号の残部が入力される第2信号端子とを有する端子台を有する。端子台には、有接点リレーを介してバッテリー140の正負電力が供給される。有接点リレー及びバッテリー140は、ロッカスイッチによりオン・オフが切り替えられる。無接点リレーと有接点リレーとを併用することにより、バキュームポンプ110のような高トルクモータであっても、汎用の低電力バッテリーで駆動することが容易になる。
【0024】
制御装置150により、チューブポンプ120を、バキュームポンプ110が吸引を開始した後に、濾過液の湿式電動ドリルへの供給を開始するように動作させることができる。また、チューブポンプ120を、バキュームポンプ110が吸引を停止する前に濾過液の供給を停止するように動作させることができる。これにより、湿式電動ドリルから濾過液が溢出される事態を防止することができる。
【0025】
<濾過液リリーフ機構>
チューブポンプ120は、バキュームポンプ110に比べて、吸引力が弱く、流量も1/1000以下であることは上記の通りである。そのため、給水チューブ127や送水チューブ128の給水源が、何らかの原因で詰まってしまい、湿式電動ドリルへの濾過液の供給が阻害されることがある。あるいは逆に、過度の量あるいは水圧の濾過液が湿式電動ドリル側へ供給されることがある。
これらの事態に対応すべく、同種製品の中には、湿式電動ドリルに供給される濾過液の水圧を計測する水圧計(センサ内蔵)と、水圧計で設定圧力を超えた水圧を検知すると濾過液を供給流路外に逃がす電磁弁とを備えたものがある。
しかし、水圧計と電磁弁は、それ自体が高価であるだけでなく、液体循環装置1の構成部品数が増えることによる装置構成の複雑化と動作信頼性の低下を招く。第1実施形態では、以下に説明する簡易な構成で濾過液リリーフ機構130を実現している。
【0026】
濾過液リリーフ機構130は、例えば、2端部型の第1ジョイント131、給水ノズル134、4端部型の第2ジョイント135、リリーフ弁136、3端部型の第3ジョイント137、及び、これらを繋ぐ複数のチューブ類を含んで構成される。
【0027】
給水ノズル134は、濾過液を吸引するためのノズルであり、懸濁液から濾過された濾過液をさらに濾過するフィルタが設けられている。給水ノズル134は、リリーフ弁136及び延長ホースを介して第2ジョイント135の一つの端部にジョイント(ワンタッチ接合)される。第2ジョイント135のもう1つの端部には、リリーフ弁136がジョイントされる。
【0028】
リリーフ弁136は、例えば
図5(a)のような外観を持ち、同(b)に断面構造が示されるセンサや電気接点を持たないメカニカルな弁である。リリーフ弁136は、入力端と排水端との間に濾過液が通過する通過孔が形成された継手本体1361を有する。継手本体1361の内壁には、押当部材の一例となるポペット1362と、一端がポペット1362により付勢されるスプリング1363と、スプリング1363の他端を受け止めるスプリング受け1364及びそれを支持するスナップリング(内壁に溝をつけ、その溝に嵌め込んでスプリング1363の軸方向の動きを止めるばね輪)1365が設けられている。継手本体1361の内壁のうち、入力端側は、入力端に向かうにつれてテーパ状に細く成形されている。ポペット1362の入力端方向の端部もまた、内壁の形状に適合するように成形されている。
【0029】
ポペット1362の端部と継手本体1361の内壁とが接触する部位には、ゴム製のOリング1366が設けられており、流圧がスプリング1363を付勢するほど強くないときはOリング1366が継手本体1361の内壁と密着して濾過液の通過を阻止している。一方、流圧が高まってポペット1362がスプリング1363を付勢すると、濾過液は、入力端から排水端を経て貯留タンク300に自律的に戻される。
【0030】
第2ジョイント135の残りの2つの端部には、給水チューブ132と給水リリーフチューブ133とがジョイントされる。給水チューブ132は、第1ジョイント131を介してチューブポンプ120の給水チューブ127にジョイントされる。給水リリーフチューブ133は、第1ジョイント131を介して送水リリーフチューブ139にジョイントされる。
【0031】
第3ジョイント137のうち1つの端部には、チューブポンプ120の送水チューブ128がジョイントされる。第3ジョイント137のもう1つの端部には、先端に湿式電動ドリル側の給水ホースとのアタッチメントが取り付けられた送水チューブ139がジョイントされる。第3ジョイント137の残りの端部には、送水リリーフチューブ138がジョイントされる。給水リリーフチューブ133と送水リリーフチューブ138は、正常動作時は第1ジョイント131及び第2ジョイント135で閉塞されているが、給水チューブ127,132、送水チューブ128,139、あるいはチューブポンプ120に何らかの異常が生じたときに、第1ジョイント131及び第2ジョイント135で給水リリーフチューブ133と送水リリーフチューブ138とを開状態とし、リリーフ弁136を通じて濾過液を貯留タンク300に戻す役割を果たす。
【0032】
このように、濾過液リリーフ機構130は、水圧計や電磁弁等を設けることなく、単純なメカニカルの構成で濾過液をリリーフできるので、低コストでありながら動作の安定性、信頼性を高める液体循環装置1を実現することができる。
【0033】
図6は、チューブ類の引き回し構造例を示す外観斜視図であり、ハウジング200と貯留タンク400とを取り外した状態が示されている。給水ノズル134は、濾過液が少ない場合でも支障なく動作するように後述する濾過液貯留庫340の内底部付近に配置される。リリーフ弁136は、排気層ユニット400からできるだけ近い位置に配置される。
【0034】
また、給水チューブ127、送水チューブ139(及び送水リリーフチューブ138)は、チューブポンプ120のローラヘッド123と平行に配設された後、排気層ユニット400の天板421のうち濾過ユニット500から離れた位置から露出しているバキュームポンプ110の外表面に沿って巻かれるように弧を描いて排気層ユニット400に向かう。これらのチューブ127,139(138)を長くして、バキュームポンプ110の外周を1周以上巻回してもよい。
バキュームポンプ110は動作時に発熱するが、濾過水が通過するこれらのチューブ127,139(138)でバキュームポンプ110を間接的に冷却することにより、別途、冷風機構等を設ける必要がなくなり、装置の小型化を徹底することができる。
【0035】
<貯留タンク>
貯留タンク300について説明する。貯留タンク300は、例えば
図7(a)の上面図、同(b)の下方斜視図に示されるように、1つの有底箱体310を有する。有底箱体310は、上面視、下面視及び側面視で略四角形の透光性樹脂製品を用いることができる。上底部に相当する部分は開口している。第1実施形態では、有底箱体310の内側空間を中仕切板320で仕切ることにより、当該有底箱体310の内側空間に、バキュームポンプ110の動作時に生じる負圧により強力に吸引され、回収された懸濁液を貯留する懸濁液貯留庫330(回収手段)と、懸濁液を濾過した濾過液を貯留する濾過液貯留庫340とを形成している。
【0036】
中仕切板320は、例えば、樹脂製平板の外枠に、補強用の金属製フレームを固定して構成される。金属製フレームは、有底箱体310の内底部及び対向する一対の内壁部にネジ止め固定される態様であってよい。有底箱体310のうち開口部に近い一対の対向端部外側には、それぞれ排気層ユニット400を係合固定するための固定フック351,352が設けられている。また、懸濁液貯留庫330の上側部には孔部が形成され、この孔部に湿式電動ドリルからの排水ホースが装着される吸水ダクトノズル360が固定されている。多くの部分が樹脂製であるため、貯留タンク300の軽量化を図ることができる。
【0037】
<排気層ユニット>
排気層ユニット400について説明する。
図8は、排気層ユニット400の構造説明図であり、(a)は下方斜視図、同(b)は下面図、同(c)は貯留タンク300に固定されたときの状態を示す側部断面図である。排気層ユニット400は、貯留タンク300の開口縁と相似形で該開口縁よりも僅かに大きく、それ故に該開口縁を水密に覆う蓋部410と、蓋部410の上底部外側に蓋部410よりも僅かに小さく、且つ、所定の厚みをもって形成された立体構造の排気層420とを有する。
【0038】
排気層420の外表面は、側壁部421と天板422とから成る。側壁部421にはバキュームポンプ110から吐き出された気体を排気層外部に排気するための複数の排気孔4211が形成されている。天板422には、上述した装置内電装部品がハウジング200と共にネジ止め固定されている。天板422には、また、配線コネクタ4221がハウジング200を避けた位置に突設されている。配線コネクタ4221は、湿式電動ドリルからの各種制御信号を制御装置150に入力するためのものであり、配線は排気層420の内壁を通じて引き回されている。
【0039】
蓋部410の上底部外側と排気層420の下底部内側と排気層420の内側壁との間には、中空空間が形成されている。また、蓋部410の上底部のうち懸濁液貯留庫330を指向する第1部位に、後述するフィルタホルダ510の内壁と連通する第1孔411が形成されている。また、蓋部410の上底部のうち濾過液貯留庫340を指向する第2部位に、中空空間側に山なりに配された流路ダクト423を介して第1孔411と連通する第2孔412が形成されている。なお、流路ダクト423は、上面視では長方形である。これにより、第2孔412には、第1孔411及び流路ダクト423を介して濾過液が流れ込むことになる。また、蓋部410の上底部のうち濾過液貯留庫340を指向する第3部位に、バキュームポンプ110の吸気口1101と連通する第3孔413が形成されている。
【0040】
第2孔412は、濾過液ガイド450で覆われている。濾過液ガイド450は、断面略コ字状のバッフル板で、第2孔412から懸濁液貯留庫330から離れる方向に延びる扇状の樋である。濾過液ガイド450の樋底部及び樋側部は、第2孔412から離れるほど大きく、且つ水平面に対する負の傾斜角が徐々に大きくなる。つまり、流路断面積が徐々に大きくなる。そのため、第2孔412から流れ込んだ濾過液は、ベルヌーイの定理(流量=断面積×速度)より、徐々に速度を落として濾過液貯留庫340へ静かに落下する。
【0041】
第3孔413は、吸気ガイド460で覆われている。吸気ガイド460は、断面略コ字状のバッフル板で、第3孔413から上記の濾過液ガイド450とは反対方向に延びる扇状の樋である。吸気ガイド460の樋底部及び樋側部は、第3孔413から離れ、入口に近くなるほど大きく、且つ水平面に対する負の傾斜角が徐々に大きくなる。つまり、流路断面積が入口に向かうほど徐々に大きくなる。そのため、吸気ガイド460の入口から第3孔413に向かう空気は、徐々に速度を増しながらバキュームポンプ110の吸気口1101に導かれる。また、濾過液ガイド450とは分離されているので、落下中の濾過液あるいは貯留中の濾過液の雫が吸気ガイド460に吸い上げられることがない。
【0042】
蓋部410の上底部のうち、濾過液貯留庫340を指向する第4部位には、給水ノズル134の延長ケーブルを固定するノズル取付具が設けられている。また、蓋部410の上底部のうち、濾過液貯留庫340を指向する第5部位には、リリーフ弁136が接続される第2ジョイント135が固定されている。
【0043】
<濾過ユニット>
濾過ユニット500は、バキュームポンプ110の動作時に生じる負圧によって通過液を濾過する濾過手段の一例であり、可撓性の濾過体とその支持部材とを有する。本実施形態では、第1孔411の周縁に沿って取り付けられるフィルタホルダ510と、このフィルタホルダ510を覆う可撓性の濾過袋520とで濾過ユニット500を構成している。濾過袋520は、湿式電動ドリルを用いた加工作業により生じたコンクリート粒のような細かい削屑等を通過させないほど細かな目(メッシュ)が形成された繊維製、樹脂製あるいは軟質金属製の可撓性袋体とすることができる。濾過袋520は、所定構造のアタッチメントを介してフィルタホルダ510に、離脱自在に装着される。なお、濾過袋520の内側サイズは、フィルタホルダ510の外径とほぼ同じであるが、これに限らない。例えば、フィルタホルダ510の外径よりも大きめであってよい。
【0044】
フィルタホルダ510は、
図9(a)の斜め上面視の外観図、同(b)の斜め下面視の外観図に示すように、互いに対向する方向に凹面が形成され、高さ(長さ)の異なる一対の曲面板511,512を有する硬質部材である。各曲面板511,512には、濾過袋520の過度の変形を防ぎつつ懸濁液との接触面積を大きくするための複数の孔が形成されている。相対的に短い曲面板512は、例えば、懸濁液貯留庫330の吸気ダクトノズル360に近い方に配置される。フィルタホルダ510の下底部付近が斜めになるので、濾過袋520の下底部付近の部分と懸濁液との接触面積が、曲面板511,512の高さが等しい場合よりも大きくなり、濾過効果を高めることができる。
【0045】
<液体循環装置の使用態様>
次に、上記のように構成される液体循環装置1の使用態様の一例を説明する。
予め、液体循環装置1の濾過液貯留庫340に所定量の水道水を初期給水用として貯留させておく。作業員が、この液体循環装置1を湿式電動ドリルと共に作業部位付近まで移動させ、電気系統と液体循環のためのセッティング作業を行う。電気系統のセッティング作業は、湿式電動ドリルの制御装置と液体循環装置1の制御装置150との電気的な接続を、配線コネクタ4221を介して行う作業である。液体循環のためのセッティング作業は、湿式電動ドリルの給水ホースを液体循環装置1の送水チューブ139のアタッチメントに装着するとともに、湿式電動ドリルの排水ホースを吸水ダクトノズル360に装着する作業である。その後、湿式電動ドリルの電源をオンにした後、液体循環装置1の電源をオンにする。
【0046】
湿式電動ドリルが所定状態(例えば、水漏れなく作業ができるようになった状態)になると、湿式電動ドリルからバキュームポンプ110の駆動開始用の制御信号が制御装置150に送信される。制御装置150は、この制御信号の受信を契機にバキュームポンプ110の動作(吸引動作)を開始させ、一定時間をおいてチューブポンプ120の動作(給水動作)を開始させる。
【0047】
冷却水が濾過液貯留庫340から湿式電動工具のドリルビットに供給されると、この冷却水が、穿孔部位との摩擦熱で熱せられたドリルビットを冷却する。冷却水は、ドリルビットによる穿孔により発生した削屑等を巻き上げてそれらが混ざった懸濁液となる。この懸濁液は、バキュームポンプ110の吸気口1101、吸気ガイド460、濾過液ガイド450、流路ダクト423、フィルタホルダ510、吸水ダクトノズル360及び排水ホースを通じて強力に吸引され、懸濁液貯留庫330に貯留されるとともに、濾過袋520により濾過されて濾過液となる。この濾過液は、濾過液ガイド450の出口に向かうにつれて流速が弱まり、やや暴れ気味の懸濁液貯留庫330とは中仕切板320で分離された濾過液貯留庫340に、雫を落とすことなく静かに落下して貯留される。貯留された濾過液は、上述した濾過液リリーフ機構130を通じて湿式電動ドリルに供給される。以上の動作を、湿式電動ドリルの同一場所における加工作業が継続される限り繰り返す。
【0048】
図10は、吸引動作中の液体循環装置1の側部断面図である。吸引動作中は、負圧力によって濾過袋520の一部が、フィルタホルダ510の内側(第1方向の例)に撓み、吸水ダクトノズル360から空気と共に吸引された懸濁液630が、濾過袋520の外側から内側に向けて吸引(抽出)される。その結果、抽出された濾過液640だけがフィルタホルダ510の内側から流路ダクト423、濾過液ガイド450及び濾過液貯留庫340に向かい、懸濁液630中の削屑等は、懸濁液貯留庫330に沈澱される。沈殿物は適宜排出される。
【0049】
濾過液貯留庫330では、濾過液640の流速が濾過液ガイド450で弱まり、かつ、濾過液ガイド450の出口とは反対側に吸気ガイド460の空気の入口が配置されているので、濾過液630が空気に混じってバキュームポンプ110の吸気口に入りこむことがない。そのため、バキュームポンプ110の吸引力(負圧力)がチューブポンプ120より1000倍以上高くても、濾過液混入に起因するバキュームポンプ110の障害発生を抑止することができる。
【0050】
湿式電動ドリルが、上記所定状態以外の状態(例えば、加工作業の中断あるいは停止の状態)になると、湿式電動ドリルからバキュームポンプ110の駆動停止用の制御信号が制御装置150に送信される。制御装置150は、この制御信号の受信を契機にバキュームポンプ110の動作(吸引動作)を停止させ、一定時間をおいてチューブポンプ120の動作(給水動作)を停止させる。
【0051】
図11は、吸引停止時の液体循環装置1の側部断面図である。バキュームポンプ110が吸引動作を停止すると、濾過袋520の内側に抽出された濾過液630が、濾過袋520の撓みを解消して当該濾過袋520の外側(第1方向と逆の第2方向の例)に向かう。これにより、濾過袋520の目(メッシュ)を塞いでいた削屑等が濾過液630によって懸濁液貯留庫330に押し出され、濾過袋520の目が復活する。つまり、自動洗浄される。
【0052】
なお、フィルタホルダ510の下底部付近の濾過袋520は、硬質部材であるフィルタホルダ510と当接している部分よりも多く内側に撓んでおり、吸引停止直後は、撓み解消時の速度も大きくなる。そのため、フィルタホルダ510の下底部付近の濾過袋520内に、撓み解消時の振動(ふるい落とし)に起因する水流が生じ、当該部分に存在する細かい削屑等をより効果的に濾過袋520の外部へ放出することができる。
【0053】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について説明する。
図12は、第2実施形態に係る液体循環装置2の外観斜視図である。第1実施形態に係る液体循環装置1のものと同じ部品については同じ符号を付してある。第2実施形態では、バッテリー140と湿式電動ドリルの電装部品との間で直流電力を受け渡すための電源端子250を付加した点が、第1実施形態の液体循環装置1と異なる。
【0054】
電源端子250は、例えば、湿式電動ドリルの電装部品と繋がる電力線KBの端部に電源プラグが設けられているときは、当該電源プラグの外径及び芯線サイズと適合する内径及び芯線サイズのソケットであり、その開口縁に絶縁部材が固着されている。湿式電動ドリルの電装部品と繋がる電力線KBの端部に設けられているのがソケットの場合、電源端子250は、当該電源ソケットと適合する上記各サイズの電源プラグとなる。
【0055】
第2実施形態の液体循環装置2によれば、1つだけのバッテリー140で湿式電動ドリルをも駆動できるので、加工作業を行う場所まで持参すべきバッテリー数を最小限にすることができる。また、湿式電動ドリルのモータは、一時的な稼働と一時的な停止とを繰り返すのが一般的であるところ、モータを一時的に停止したときに生じる回生エネルギー(モータ減速回転時の回生電力)を無駄にすることなく、バッテリー140に戻すことにより、当該バッテリー140の充電が可能となる。そのため、バッテリー140への1回の充電で液体循環装置2を稼働できる時間を延ばすことができる。
【0056】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る液体循環装置は、バキュームポンプ110による、空気又は濾過液の吸引力あるいは排気力に応じて、直流電力を発電し、発電した直流電力でバッテリー140を充電する発電機構を備えた点が第1及び第2実施形態と異なる。
【0057】
図示を省略したが、発電機構は、例えば、吸気ダクト460の入口付近、バキュームポンプ110の排気部付近あるいは排気層ユニット400の排気機構付近に、小型の発電用風車を回転自在に設けることで実現が可能である。あるいは、例えば、排気層ユニット400の第2孔412と濾過液ガイド450の樋底部との間に、小型の発電用水車を回転自在に設けることで実現が可能である。なお、発電機構は、上記例に限定されることなく、他の原理に基づくものであってもよい。例えばチューブポンプ120の回転軸付近に発電用の磁石を設ける機構を採用することもできる。
【0058】
第3実施形態の液体循環装置によれば、バキュームポンプ110の強い吸引力と排気力とを無駄にすることなく、逆にそれを有効に活用することにより、発電機構を持たない場合よりもバッテリー140の使用時間を延ばすことができる。
そのため、屋外作業のように、商用電源を使用できない作業環境であっても、比較的長い時間、作業を継続することができる。
【0059】
第1ないし第3実施形態によれば、以下の利点ないし効用が得られる。
(1)湿式電動ドリルで生じた懸濁液については、液体循環装置1、2のバキュームポンプ110が、負圧により、濾過袋520の内側から空気と共に強力に吸引する。そのため、削屑等の種類や密度、粘度に関わらず、懸濁液を迅速に回収して削屑等と濾過液とを迅速に分離することができ、これにより懸濁液の漏れ等が回避されるので、湿式電動工具を用いた穿孔作業等の効率を高めることができる。また、濾過袋520の目(メッシュ)をより細かくすることができるので、粒径が小さい削屑等であっても1つの濾過袋520だけでそれを分離することができる。
【0060】
(2)濾過ユニット500が、可撓性の濾過袋520を有し、バキュームポンプ110が、懸濁液を濾過袋520の外側から内側に向けた吸引を開始すると、濾過袋520の一部が内側(第1方向)に撓み、バキュームポンプ110が吸引を停止すると濾過袋520の内側に抽出された濾過液が、濾過袋520の撓みを解消して当該濾過袋520の外側(第2方向)に向かう。つまり、削屑等が塞いでいた濾過袋520の目(メッシュ)を濾過液が押し出す。そのため、湿式電動ドリルによる作業部位が変わる度に濾過袋520が洗浄されるので、1つの濾過袋520使用可能時間が長くなり、このような仕組みを持たない同種製品に比べて湿式電動ドリルによる穿孔作業の効率を格段に高めることができる。
【0061】
(3)バキュームポンプ110が吸引を開始した後に濾過液640の湿式電動工具への供給を開始するとともにバキュームポンプ110が吸引を停止する前に濾過液640の供給を停止するチューブポンプ120を備えるので、吸引されないのに濾過液だけが湿式電動工具に供給されることで、湿式電動ドリルからの濾過液の溢出が回避される。
【0062】
(4)バキュームポンプ110及びチューブポンプ120を含む装置内電装部品の電源がバッテリー140なので、部位を選ばない給水や懸濁液の回収が可能となる。
例えば建物の天井部分の工事のように、商用電源コードの引き回しが困難であったり、商用電源のコードの存在が障害になる場所での液体循環装置1の使用が可能になる。
また、バッテリー140が、湿式電動ドリルの駆動電源と互換性を有するものを使用できるので、湿式電動ドリルの予備バッテリーを液体循環装置のバッテリー140として使用することができる。
【0063】
(5)チューブポンプ120の弾性チューブ124の一端に接続されるチューブと弾性チューブ124の他端に接続されるチューブのいずれかの1本以上のチューブが、バキュームポンプ110の外表面に沿って巻かれているので、別途冷却手段を設けることなく、バキュームポンプ110を冷却することができる。
【0064】
(6)チューブポンプ120のうち、弾性チューブ124の一端と他端におけるチューブとの接続部位が、透光性カバーで覆われているので、液体循環装置1の動作中であっても、チューブポンプ120の動作状態や異常の有無を目視で確認することができる。
【0065】
(7)透光部材からなる有底箱体310の内側空間を中仕切板320で仕切ることにより当該有底箱体310の内側空間に懸濁液貯留庫330と濾過液貯留庫340とを形成した貯留タンク300と、貯留タンク300の開口部を蓋するとともに懸濁液貯留庫330及び濾過液貯留庫340の空気を排気する排気機構が設けられた排気層ユニット400と、を備え、濾過ユニット500の濾過袋520が懸濁液貯留庫330に装着されており、排気層ユニット400のうち濾過袋520の内側と濾過液貯留庫340との間の流路に、チューブポンプ110が配置されている方向への流路を遮断するとともに濾過液入口側よりも濾過液出口側の流路断面積が大きい濾過液ダクト450が設けられているので、懸濁液630と濾過液640とを、互いに他方の状態に依存せずに貯留することができる。
また、濾過液がバキュームポンプ110の吸気口1101に吸引される事態を回避することができる。さらに、貯留タンク300及び中仕切板320が樹脂製なので、軽量化も可能となる。
【0066】
(8)濾過液640をチューブポンプ120の給水端へ送る給水ノズル134が濾過液貯留庫340の下底部付近に配置されているので、濾過液貯留庫340への濾過液640が少ない状態でも湿式電動工具への給水が可能になる。
【0067】
(9)チューブポンプ120の給水端及び/又は送水端と直接又は間接部材を介して接続され、給水ノズル134から送られた濾過液を濾過液貯留庫340に自律的に戻すリリーフ弁136を備えるので、センサや電磁弁などを用いなくとも、簡易な構成で濾過水の過給水を防止して、動作の信頼性を高めることができる。
【0068】
(10)リリーフ弁136が、排水端を有する継手の内壁に沿って巻回されたスプリングと、給水ノズル134から送られた濾過液の流圧に応じてスプリングを付勢又は消勢する押当部材とを有し、押当部材がスプリングを付勢したときに給水ノズルから送られた濾過液を排水端から濾過液貯留庫340に向けて放出させるので、何らの設定も要さずに、自律的に濾過水の過給水を防止することができる。
【0069】
<変形例>
第1ないし第3実施形態では、第1ポンプの例としてバキュームポンプ110を採用し、第2ポンプの例としてチューブポンプ120を採用したが、濾過フィルタ500の周囲に存在する懸濁液を吸引する装置であれば、バキュームポンプ110以外のバキューム装置を用いてもよい。
【0070】
また、第1ないし第3実施形態では、バキュームポンプ110の流量が500L/min以上で、チューブポンプ120の流量が0.5L/min以下の例を示したが、本発明で用いる各ポンプの性能は、これらの数値に限定されるものではない。例えばバキュームポンプ110を100L/min以上の流量が得られるポンプ又はバキューム装置で代用してもよい。
【0071】
また、第1ないし第3実施形態では、バッテリー140が、排気層ユニット400の天板422に固定される場合の例を説明したが、固定部位は、液体循環装置1,2内の他の空きスペースであってもよい。また、バッテリー140を液体循環装置1,2と電気的に分離し、加工作業に支障を生じない長さの電源ケーブルを介して装置内電装部品へ直流電力を供給する構成であってもよい。また、バッテリー内蔵の携行型発電機あるいは再生可能エネルギーの充電機能を備えた携行性のポータブル電源との間で、加工作業に支障を生じない長さの電源ケーブルを介して接続される構成であってもよい。また、電力は直流だけでなく、交流であってもよい。この場合、必要に応じて交直流変換回路を設ける。これにより、電源系の構成をより柔軟にすることができる。
【0072】
また、第1ないし第3実施形態では、湿式電動ドリルが所定状態になると湿式電動ドリルからバキュームポンプ110の駆動開始用の制御信号が制御装置150に送信され、湿式電動ドリルが、上記所定状態以外の状態になると、湿式電動ドリルからバキュームポンプ110の駆動停止用の制御信号が制御装置150に送信されることを前提としたが、このような2種類の制御信号は、湿式電動ドリルの状態に関わらず、制御装置150が自律的に生成してもよい。例えば、湿式電動ドリルを実際には動作させないが、水漏れが生じない状態にセッティングした状態で、バキュームポンプ110の動作開始/動作停止及びチューブポンプ120の動作開始/動作停止のタイミングを上記と同じになるようにタイマで設定してもよい。このようにすれば、濾過袋520の自動洗浄だけを目的として液体循環装置1を動作させることができる。
【0073】
また、第1ないし第3実施形態では、貯留タンク300を1つの有底箱体310と中仕切板320とで懸濁液貯留庫330と濾過液貯留庫340にする例を説明したが、懸濁液貯留庫330と濾過液貯留庫340とをそれぞれ独立の有底箱体で構成してもよい。
【0074】
また、第1ないし第3実施形態では、湿式電動工具と共に使用される液体循環装置1の例を説明したが、本発明の液体循環装置は、湿式電動工具に限らず、水槽やプール内の水洗浄その他の水処理循環ポンプとして使用することもできる。
【0075】
また、第1ないし第3実施形態では、濾過体として樹脂製あるいは軟質金属製の可撓性袋体すなわち濾過袋520を用いた場合の例を説明したが、少なくとも一部が可撓性を有する構造であれば、必ずしも全体が袋体である必要はない。例えば、第1孔411の周縁を覆う樹脂製あるいは軟質金属製の面状のフィルタを濾過体として用いてもよい。
【0076】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態に係る液体循環装置は、主として、貯留タンク300及び濾過ユニット500の構成を代えた点が、上記第1実施形態のものと異なる。
【0077】
図13(a)は、第4実施形態に係る液体循環装置4の外観例を示す図であり、(a)は前方外観斜視図、(b)は後方外観斜視図である。
図14は、液体循環装置4の外観例を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は右側面図である。
図15は液体循環装置の外観例を示す図であり、(a)は背面図、(b)は正面図、(c)は平面図、(d)は底面図である。
図16は、貯留タンクの上底部に装着される蓋部の構造説明図であり、(a)は下方斜視図、(b)は右側面図、(c)は正面図、(d)は背面図である。
図17は、貯留タンクの構造例を示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)平面図、(c)は(c)のA-A断面図である。これらの図において、第1ないし第3実施形態で説明した部品と同じ機能の部品については、便宜上、同じ符号を付してある。
【0078】
図13~
図15を参照し、第4実施形態の液体循環装置4は、蓋部410の上面に取り付けられる排気層ユニット420の上面側に取り付けられる、取っ手210や配線コネクタ4221を有するハウジング200、ハウジング200内の各種ポンプやポンプカバー129を含む装置内電装部品、バッテリー140などは、第1実施形態で説明したものと形状・サイズ及び配置態様が多少異なるものの機能的には同じである。
【0079】
取っ手210は、液体循環装置4を上方(Z方向)に持ち上げたときに、前後左右方向で重力がほぼ均等になる部位に取り付けられる。取付位置は事後的に変えることもできる。ハウジング200の配線コネクタ4221と同じ面上には、液体循環動作のON/OFFを切り換える動作スイッチ431が設けられている。配線コネクタ4221へのケーブル装着状況を視認した上で動作スイッチ431を操作できるので、誤操作による水漏れ等を確実に防止することができる。
【0080】
ホースカバー241は、ポンプカバー129の頂点よりも厚み(横方向の長さ)が小さい(薄い)無底箱状のカバーであり、右側面視で表面部にあたる部分に、チューブポンプ120が視認できるように複数のスリットが形成されている。ホースカバー241がポンプカバー129よりも薄いことから、液体循環装置4の小型化を妨げることがない。またこのホースカバー241により、チューブポンプ120を流れる液体の状態を視認可能にするとともに、障害物等からの応力を含む外力から当該チューブポンプ120をガードすることができる。
【0081】
液体循環装置4の貯留タンクは、
図16(a)~同(c)に示されるように、それぞれ上面視、下面視及び側面視で略四角形の透光性樹脂製品からなる第1有底箱体310と第2有底箱体610とで構成される。それぞれ上底部に相当する部分は開口している。これらの有底箱体310、610は、外形がほぼ同じものを、蓋体611を介在させて高さ方向(Z方向)に積み上げ固定して構成することができる。第1有底箱体310及び第2有底箱体610の高さ(深さ)は、第1実施形態の貯留タンクのほぼ1/2であるが、この限りでない。図示しない湿式電動ドリルからの排水ホースが離脱自在に装着される吸水ダクトノズル360は、下段の第1有底箱体310に設けられる。
【0082】
第1有底箱体310は、箱体内壁を濾過フィルタを兼ねた中仕切板321で仕切ることにより、負圧により吸水ダクトノズル360から吸引された懸濁液を貯留する懸濁液貯留庫330と、同じく負圧により中仕切板321で濾過された一次濾過液を貯留する一次濾過液貯留庫340とを形成している。図示の例では、一次濾過液貯留庫340は、懸濁液貯留庫330よりも小さいが、中仕切板321の位置を変更することにより、一次濾過液貯留庫340の懸濁液貯留庫330に対する大きさは、変えることができる。蓋体611のうち一次濾過液貯留庫340の上底部を指向する部位は略円形に切り欠かれている。
【0083】
第2有底箱体610は、濾過ユニット500が収容されている。第4実施形態の濾過ユニット500は、第2有底箱体610の下底部と略平行に横方向に延びる筒状のフィルタホルダ510と、このフィルタホルダ510の始端側を固定するホルダ固定部513と、一次濾過液貯留庫340と連通する吸水部515と、ホルダ固定部513と吸水部515とを繋ぐコーナ部514と、ホルダ固定部513の表面を覆う可撓性の濾過袋520と、を含んで構成される。
【0084】
第2有底箱体610の内側空間のうち濾過ユニット500以外の部分は、二次濾過液貯留庫350となる。この二次濾過液貯留庫350は、懸濁液貯留庫330及び一次濾過液貯留庫340よりも高い位置で二次濾過液を吸い上げ、これを貯留する。そのため、二次濾過液の上澄み部分は、最も綺麗な濾過液となる。また、懸濁液と二次濾過液との接触がないため、懸濁液の一部がバキュームポンプに混入する事態を確実に防止することができる。
【0085】
図17(a)~同(c)に示されるように、濾過液を吸い上げるための吸水ノズル134と、チューブ内濾過液を貯留タンクに戻すためのリリーフ弁136と、吸気ダクト460は、それぞれ第1実施形態のものと同じである。第1実施形態の濾過液ダクト450は、第4実施形態では設けていない。これらの部品は、設置時に第2有底箱体320のうち、濾過ユニット500を避ける内底面部に位置するように蓋体410の裏面部(第2有底箱体320を指向する面部)に取り付けられる。
【0086】
吸水ノズル134とリリーフ弁136の蓋体410から延びる支柱は、それぞれ第2有底箱体610の深さ分だけを確保すればよいので、第1実施形態のものよりも短くて足りる。また、リリーフ弁136の先端部が第2有底箱体320の内底面部に位置するので、濾過液の雫の滴下が防止され、濾過液のバキュームポンプ110への混入を、より確実に回避することができる。
【0087】
液体循環装置4は、ハウジング200内のバキュームポンプが第1有底箱体310及び第2有底箱体320内の空気を吸気ダクト460を介して強力に吸引することにより、つまり、貯留タンク300内を負圧にすることにより、湿式電動ドリルで生じた懸濁液が、第1有底箱体310の懸濁液貯留庫330に吸引された後、中仕切板321で濾過されて濾過液貯留庫340に貯留される。
【0088】
濾過液貯留庫340に貯留された濾過液は、さらに吸水部515で吸い上げられ、コーナ部514を経てフィルタホルダ510に到達し、濾過袋520で再び濾過されて、第2有底箱体610の第2濾過液貯留庫350に貯留される。第2濾過液貯留庫350に貯留された濾過液は、吸水ノズル134で吸い上げられ、湿式電動ドリルへ供給される。この動作がバキュームポンプが吸引動作している限り継続される。バキュームポンプの吸引動作が停止すると、濾過袋520が撓みを解消して目詰まりの洗浄作用(自浄作用)を果たすことは、第1実施形態のものと同じである。
【0089】
このような液体循環装置4では、密度や粘度が比較的高い削屑等は、懸濁液貯留庫330に留まり、濾過液貯留庫340に到達しなくなる。濾過液貯留庫340に貯留された濾過液に混入している粒径の小さい削屑等だけが濾過袋520で濾過されるので、1つの濾過袋520の使用可能時間が第1実施形態のものよりも長くなる。そのため、湿式電動ドリルによる穿孔作業の効率を格段に高めることができる。
【0090】
また、貯留タンクを、ほぼ同形、同サイズの第1有底箱体310と第2有底箱体610とを二段積み上げて構成したので、濾過液貯留庫を1つから2つに増やしても小型化を維持することができる。
【0091】
<第5実施形態>
本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態に係る液体循環装置は、主として、貯留タンク300及び濾過ユニット500の構成を代えた点が、第4実施形態のものと異なる。ハウジング200、ハウジング200内の装置内電装部品、バッテリー140などは、第4実施形態で説明したものと同じである。
【0092】
図18及び
図19は、第5実施形態に係る貯留タンク300の構造例を示す図であり、
図18(a)は前方外観斜視図、同(b)は平面図である。また、
図19(a)は
図18(b)のA-A断面図、同(b)はB-B断面図である。これらの図において、第1ないし第3実施形態で説明した部品と同じ機能の部品については、便宜上、同じ符号を付してある。
【0093】
図18及び
図19を参照すると、第5実施形態の貯留タンク300は、第1有底箱体310に、一次濾過液貯留庫340に相当する貯留庫が存在せず、第1有底箱体310全体が懸濁液貯量庫330に相当するとともに、濾過フィルタを兼ねる中仕切り板321に対応する部品として、第2有底箱体610との連通路に軟質多孔性フィルタ322が存在する点が第4実施形態のものと異なる。また、ホルダ固定部513とコーナ部514、及び、コーナ部514と吸水部515とを繋ぐ部分に環状硬質部材である補強具516が設けられている点が第4実施形態のものと異なる。
【0094】
軟質多孔性フィルタ322は、硬質素材からなるフィルタブラケット323を介して第1有底箱体310の蓋部に固定されている。軟質多孔性フィルタ322は、例えば、簡易にはシリコンスポンジを用いることができるが、耐熱性、耐久性を高める用途では、ポリウレタンフォーム、エポキシフォーム、セラミックフォーム、クロスリンクポリエチレンフォームなどを用いてもよい。あるいは、防水の多孔性素材を用いてもよい。
【0095】
軟質多孔性フィルタ322は、第2有底箱体610との連結路を介して第2有底箱体610が第1有底体310よりも負圧になると、懸濁液貯留庫340内の懸濁液を上方に吸引して濾過する。濾過液は、濾過ユニット500に向かい、懸濁液中の削屑等は第1有底箱体310に自然落下する。一方、負圧が解除されると、軟質多孔性フィルタ322が下方に撓み、その際の振動で、濾過液が下方に向かうため、濾過ユニット500と同様、目詰まりが防止される。
【0096】
第5実施形態の貯留タンク300は、また、第2有底箱体610の内底面上に、ステンレス、カーボン、セラミック等の硬質部材から成る濾過体ガイド700を設けた点が第4実施形態のものと異なる。
濾過体ガイド700は、第2有底箱体610の耐変形強度を補強しつつ内底面から離れた位置で濾過袋520を載置するためのもので、正面視で略コ字状に成形され、平面視で略H字状に成形されている。すなわち、濾過体ガイド700は、その鉛直下方の端面が第2有底箱体610の内底面に当接し、その側面が、第2有底箱体610の対向する一対の側壁に当接する一対の側板701、702と、この一対の側板701、702の鉛直上方の端面同士を連結する連結板703とを備えて構成される。この濾過体ガイド700により、第2有底箱体610が負圧によって内側に変形することが規制され、破損が防止される。連結板703には、複数の孔7031が形成されている。これらの孔7031の存在により、濾過袋520内の濾過液が落下しやすくなる。連結板703の所定部位に、濾過袋520を載置するための凹部が形成さていてもよい。これにより、濾過袋520の位置決めが容易になる。
【0097】
濾過袋520が第2有底箱体610の内底面から離れた濾過体ガイド700の連結板703に載置されるため、第2濾過液貯留庫350に貯留された濾過液と濾過袋520とが分離され、濾過袋520の内外での圧力差が生じて濾過速度を向上させることができる。また、濾過液と接触することに起因する濾過袋520の劣化が抑制される。一対の側板701、702を高くするほど、また、また、連結板703の孔7031の数を多くするほど、その効果が顕著となる。さらに、濾過袋520の横方向のサイズを大きくすることできることから、濾過効率が高くなる。
【0098】
なお、濾過袋520及び濾過体ガイド700の形状は、
図18及び
図19の例に限定されず、同一機能を果たす限り、任意の形状であってよい。
【符号の説明】
【0099】
1,2,4・・・液体循環装置、110・・・バキュームポンプ、120・・・チューブポンプ、130・・・濾過液リリーフ機構、140・・・バッテリー、150・・・制御装置、250・・・電源端子、300・・・貯留タンク、310・・・第1有底箱体、610・・・第2有底箱体、322・・・軟質多孔性フィルタ、330・・・懸濁液貯留庫、340・・・濾過液貯留庫、350・・・第2濾過液貯留庫、400・・・排気層ユニット、450・・・濾過液ダクト、460・・・吸気ダクト、500・・・濾過ユニット、520・・・濾過袋、700・・・濾過体ガイド。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式電動工具から懸濁液を回収し、回収した懸濁液から濾過液を抽出して前記湿式電動工具へ供給する液体循環装置であって、
可撓性の濾過体と、
前記懸濁液を前記濾過体の第1方向に向けて吸引する第1ポンプと、
前記第1ポンプが吸引を開始した後に前記濾過液の前記湿式電動工具への供給を開始するとともに前記第1ポンプが吸引を停止する前に前記供給を停止する第2ポンプと、
を備え、
前記濾過体は、前記第1ポンプが吸引を開始するとその一部が撓み、前記第1ポンプが吸引を停止するとその撓みが解消されて、それを通過した前記濾過液が前記第1方向とは逆の第2方向へ向かうものであり、
前記第1ポンプは、前記第2ポンプよりも強い負圧力で前記懸濁液を空気と共に吸引するバキュームポンプであり、
前記第2ポンプは、弾性チューブを回転ローラで押圧することにより当該弾性チューブ内で前記濾過液を移動させるチューブポンプであり、
前記弾性チューブが透光性カバーで覆われていることを特徴とする
液体循環装置。
【請求項2】
透光部材からなる有底箱体の内側空間に、前記懸濁液を貯留するための懸濁液貯留庫を形成した貯留タンクと、
前記貯留タンクを蓋するとともに前記懸濁液貯留庫の空気を排気する排気機構が設けられた排気層ユニットと、を備え、
前記排気層ユニットのうち前記濾過体を通過した前記濾過液の流路に、前記第1ポンプが配置されている方向への流路を遮断するとともに濾過液入口側よりも濾過液出口側の流路断面積が大きい濾過液ダクトが設けられていることを特徴とする、
請求項1に記載の液体循環装置。
【請求項3】
前記濾過液を前記第2ポンプの給水端へ送る給水ノズルを有することを特徴とする、
請求項2に記載の液体循環装置。
【請求項4】
前記第2ポンプの給水端及び/又は送水端と直接又は間接部材を介して接続され、前記給水ノズルに存在する前記濾過液を前記貯留タンクに自律的に戻すリリーフ弁を備えることを特徴とする、
請求項3記載の液体循環装置。
【請求項5】
前記リリーフ弁は、排水端を有する継手の内壁に沿って巻回されたスプリングと、前記給水ノズルに存在する前記濾過液の流圧に応じて前記スプリングを付勢又は消勢する押当部材とを有し、前記押当部材が前記スプリングを付勢したときに前記給水ノズルに存在する前記濾過液を前記排水端から前記貯留タンクに向けて放出させることを特徴とする、
請求項4に記載の液体循環装置。
【請求項6】
湿式電動工具から回収した懸濁液を濾過して前記湿式電動工具へ供給する液体循環装置であって、バキュームポンプを含む電装部品と、前記バキュームポンプの動作時にその内側空間が負圧になる貯留タンクとを有し、
前記貯留タンクは、それぞれ前記負圧により前記懸濁液を回収する回収手段と、回収された前記懸濁液を濾過する濾過手段と、を含み、
前記濾過手段は、前記負圧でその一部が撓むことにより前記濾過液を第1方向に通過させ、前記負圧の解除により前記撓みが解消されて通過中の前記濾過液を前記第1方向とは逆の第2方向に導く、可撓性の濾過体を有し、
前記貯留タンクは、高さ方向に積み上げられた二つの有底箱体を有し、
下方の前記有底箱体には前記回収手段で回収した懸濁液を貯留する懸濁液貯留庫が形成され、上方の前記有底箱体には、前記濾過手段で濾過された濾過液を前記懸濁液貯留庫よりも高い位置で貯留する濾過液貯留庫が形成されていることを特徴とする、
液体循環装置。
【請求項7】
前記濾過手段は、前記貯留タンクの内底面及び少なくとも対向する一対の側壁に当接して当該貯留タンクの耐変形強度を補強しつつ前記内底面から鉛直上方に離れた位置で前記濾過体を載置するための濾過体ガイドを有することを特徴とする、
請求項6に記載の液体循環装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記主たる課題を解決する本発明の一態様は、湿式電動工具から懸濁液を回収し、回収した懸濁液から濾過液を抽出して前記湿式電動工具へ供給する液体循環装置であって、可撓性の濾過体と、前記懸濁液を前記濾過体の第1方向に向けて吸引する第1ポンプと、前記第1ポンプが吸引を開始した後に前記濾過液の前記湿式電動工具への供給を開始するとともに前記第1ポンプが吸引を停止する前に前記供給を停止する第2ポンプと、を備え、前記濾過体は、前記第1ポンプが吸引を開始するとその一部が撓み、前記第1ポンプが吸引を停止するとその撓みが解消されて、それを通過した前記濾過液が前記第1方向とは逆の第2方向へ向かうものであり、前記第1ポンプは、前記第2ポンプよりも強い負圧力で前記懸濁液を空気と共に吸引するバキュームポンプであり、前記第2ポンプは、弾性チューブを回転ローラで押圧することにより当該弾性チューブ内で前記濾過液を移動させるチューブポンプであり、前記弾性チューブが、透光性カバーで覆われていることを特徴とする液体循環装置である。