(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001483
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】被覆材
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
C09D201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100163
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 真人
(72)【発明者】
【氏名】篠原 大河
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CC061
4J038JC38
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA09
4J038MA13
4J038MA14
4J038NA12
4J038PA07
4J038PB05
4J038PC03
4J038PC04
(57)【要約】
【課題】
各種下地及び上塗材との密着性に優れる被覆材を提供する。
【解決手段】
本発明の被覆材は、構成成分として、樹脂成分(A)、脂肪族炭化水素含有非水溶剤(B)、及び顔料(C)を含む被覆材であって、上記樹脂成分(A)として、重量平均分子量が10,000以上500,000以下の合成樹脂(A-1)と、重量平均分子量が10,000以上100,000以下であり、かつ上記合成樹脂(A-1)の重量平均分子量よりも小さい合成樹脂(A-2)を、固形分重量比[(A-1)/(A-2)]=2/98~80/20で含み、形成塗膜における顔料容積濃度が30~80%であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成成分として、樹脂成分(A)、脂肪族炭化水素含有非水溶剤(B)、及び顔料(C)を含む被覆材であって、
上記樹脂成分(A)として、重量平均分子量が10,000以上500,000以下の合成樹脂(A-1)と、重量平均分子量が10,000以上100,000以下であり、かつ上記合成樹脂(A-1)の重量平均分子量よりも小さい合成樹脂(A-2)を、固形分重量比[(A-1)/(A-2)]=2/98~80/20で含み、
形成塗膜における顔料容積濃度が30~80%であることを特徴とする被覆材。
【請求項2】
さらに、有機金属化合物(D)を含むことを特徴とする請求項1に記載の被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な被覆材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、土木構築物等を構成する基材としては、コンクリート、モルタル、スレート板、珪酸カルシウム板、サイディングボード等の無機質基材が多く用いられている。これらの面に塗装を施す場合には、密着性を確保し、さらには経時的な塗膜の膨れ、剥れ、浮き等を防止するために、通常、下塗材が施されている。また、旧塗膜面の改修、特に外装用建材において設けられている高耐候性や耐汚染性等の機能性を有する塗膜の改修時においても、同様に下塗材が必要となる。このため、様々な基材や塗膜等の下地に対して良好な密着性を有する下塗材が要望されている。
【0003】
このような下塗材としては、主に溶剤系下塗材、水性系下塗材に分類されるが、密着性の点から溶剤系下塗材が使用されることが多い。中でも、近年では、塗装時の安全性や作業衛生等の点、あるいは環境問題を考慮して、例えば、特許文献1のような脂肪族炭化水素系溶剤を主たる溶剤とする弱溶剤形下塗材が多く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、上述のとおり環境問題等へ配慮から、上塗材としても、弱溶剤形上塗材や水性上塗材が使用されることが多い。しかしながら、弱溶剤形下塗材や上塗材の塗装条件等によっては、十分な密着性を確保することが難しい場合があり、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、密着性に優れ、弱溶剤形下塗材として好適に使用できる被覆材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために本発明者らは、鋭意検討の結果、樹脂成分として特定の樹脂成分を必須成分とし、さらに特定の顔料体積濃度を有する被覆材に想到し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.構成成分として、樹脂成分(A)、脂肪族炭化水素含有非水溶剤(B)、及び顔料(C)を含む被覆材であって、
上記樹脂成分(A)として、重量平均分子量が10,000以上500,000以下の合成樹脂(A-1)と、重量平均分子量が10,000以上100,000以下であり、かつ上記合成樹脂(A-1)の重量平均分子量よりも小さい合成樹脂(A-2)を、固形分重量比[(A-1)/(A-2)]=2/98~80/20で含み、
形成塗膜における顔料容積濃度が30~80%であることを特徴とする被覆材。2.さらに、有機金属化合物(D)を含むことを特徴とする1.に記載の被覆材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の被覆材によれば、密着性において優れた性能が発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の被覆材は、構成成分として、樹脂成分(A)、脂肪族炭化水素含有非水溶剤(B)、及び顔料(C)を含むものである。
【0012】
本発明の被覆材では、樹脂成分(A)(以下「(A)成分」ともいう)として、重量平均分子量が10,000以上500,000以下の合成樹脂(A-1)(以下「(A-1)成分」ともいう)と、重量平均分子量が10,000以上100,000以下であり、かつ上記合成樹脂(A-1)の重量平均分子量よりも小さい合成樹脂(A-2)(以下「(A-2)成分」ともいう)を含むことを特徴とする。本発明において、(A-1)成分と(A-2)成分との併用は、密着性の向上化等に寄与するものである。
【0013】
具体的に、(A-1)成分の重量平均分子量は、10,000~500,000(より好ましくは15,000~400,000、さらに好ましくは20,000~300,000)である。このような範囲を満たすことにより、塗膜の耐久性等に優れ、密着性等に優れた塗膜を得ることができる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミュレーションクロマトグラフィー;GPCで測定し、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算した値である。また、本発明において「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0014】
(A-2)成分の重量平均分子量は、10,000~100,000(より好ましくは12,000~90,000、さらに好ましくは13,000~85,000)である。さらに、上記(A-1)成分の重量平均分子量よりも小さい(好ましくは、重量平均分子量の差が5,000以上、より好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上)ことを特徴とする。このような範囲を満たすことにより、塗膜の耐久性等に優れ、密着性等に優れた塗膜を得ることができる。
【0015】
本発明では、上記(A-1)成分と上記(A-2)成分の固形分重量比率[(A-1)成分/(A-2)成分]は、2/98~80/20(より好ましくは4/96~50/50、さらに好ましくは5/95~40/60)であることを特徴とする。このような範囲の場合、十分な密着性を得ることができる。特に、低温環境下での密着性において有利である。このような効果が奏される理由は、限定されるものではないが、(A-1)成分は乾燥性に優れ、(A-2)成分は下地への浸透性に優れるため、その相乗効果により、密着性に優れた塗膜を形成することができると推察される。特に、この形成塗膜上に上塗材を塗付した場合には、密着性等に優れた塗膜を得ることができる。
【0016】
さらに、上記(A-1)成分の粘度は、好ましくは0.5~15Pa・s(より好ましくは1~10Pa・s)である。一方、上記(A-2)成分の粘度は、好ましくは0.1~8Pa・s(より好ましくは0.3~5Pa・s)であり、上記(A-1)成分の粘度よりも小さいことが好ましい。このような場合、被覆材の粘度を好適な範囲に設定することができ、塗装性に優れ均一な被膜を形成することができ、その結果、上記効果を高めることができる。なお、本発明における粘度は、BH型粘度計による20rpmにおける粘度(4回転目の指針値)を測定することにより求められる値である。
【0017】
上記(A-1)成分、上記(A-2)成分は、脂肪族炭化水素含有非水溶剤(B)に可溶な可溶型樹脂、あるいは分散した非水分散型樹脂のいずれであってもよい。可溶型樹脂とは、非水系溶剤中に樹脂が溶解しているものである。このような可溶型樹脂は、例えば、脂肪族炭化水素含有非水溶剤(B)で、各種のビニル単量体を常法により重合させることによって得ることができる。一方、非水分散型樹脂とは、脂肪族炭化水素含有非水溶剤(B)に溶解可能な樹脂部分と溶解しない樹脂部分の両方を併せ有するものであり、樹脂粒子の形態で非水系溶剤中に分散しているものである。このような非水分散型樹脂は、例えば、脂肪族炭化水素含有非水溶剤(B)に可溶な樹脂の存在下で、各種のビニル系モノマーを常法により重合させることによって得ることができる。
【0018】
本発明の(A-1)成分は、脂肪族炭化水素含有非水溶剤(B)に分散可能な樹脂(非水分散型樹脂)であるこが好ましい。これにより、上記効果を高めることができる。さらに、重ね塗り適性、塗装時の作業性や仕上り性、塗膜の耐久性等に優れた効果を発揮することができる。
【0019】
本発明の(A-2)成分は、脂肪族炭化水素含有非水溶剤(B)に溶解可能な樹脂(可溶型樹脂)であるこが好ましい。これにより、下地への浸透性高まり上記効果をいっそう高めることができる。
【0020】
本発明の(A)成分においては、(A-1)成分及び/または(A-2)成分が酸化重合性基を有する(酸化重合型樹脂)ことが好ましい。これにより、(A)成分は、酸化重合可能な二重結合(酸化重合性基)によって、空気酸化し硬化乾燥するものとなる。これにより、硬化性が高まり、密着性を高めることができる。さらに、本発明では、(A-1)成分及び(A-2)成分の両方が酸化重合性基を有することが好ましい。これにより、上記効果をよりいっそう高めることができる。(A-1)成分、(A-2)成分に酸化重合性基を付与するには、例えば、以下に示すような樹脂を使用すればよい。
【0021】
1)酸化重合性基を有するビニル単量体と、この単量体と共重合可能な他のビニル単量体とを共重合させて得られた樹脂。
2)エポキシ基含有ビニル単量体と、この単量体と共重合可能な他のビニル単量体とを共重合させた後、前記エポキシ基含有ビニル単量体に不飽和脂肪酸を付加させて得られた樹脂。
3)酸化重合性基を有するビニル単量体、及び/またはこの単量体と共重合可能な他のビニル単量体とをアルキド樹脂に共重合及び/またはグラフト重合させて得られた樹脂。
【0022】
上記1)、3)における
酸化重合性基を有するビニル単量体としては、例えば、エポキシ基含有ビニル単量体に不飽和脂肪酸が付加されたビニル単量体が挙げられる。このビニル単量体は、エポキシ基と不飽和脂肪酸中のカルボキシル基との反応によって得られるものである。また、上記2)の樹脂は、樹脂中のエポキシ基に対する不飽和脂肪酸の付加反応によって得られるものである。エポキシ基と不飽和脂肪酸を反応させる際には、例えば、第3級アミンや第4級アンモニウム塩等の触媒を使用することができる。
【0023】
具体的にエポキシ基含有ビニル単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-オキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0024】
不飽和脂肪酸としては、例えば、亜麻仁油脂肪酸、桐油脂肪酸、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、クルミ油脂肪酸等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。(A-1)成分、(A-2)成分における不飽和脂肪酸の構成比率は、密着性、各種塗膜物性の観点から、(A-1)成分または(A-2)成分の樹脂固形分を基準として、好ましくは0.1~40重量%、より好ましくは0.2~35重量%である。
【0025】
上記1)、3)における酸化重合性基を有するビニル単量体としては、例えば、ジシクロペンタジエンオキシアルキル(メタ)アクリレート等のジシクロペンタジエンオキシアルキル基含有ビニル単量体、アリル(メタ)アクリレート等のアリル基含有ビニル単量体を使用することもできる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0026】
上記3)におけるアルキド樹脂としては、多価アルコールと多価カルボン酸を重縮合させ、これを乾性油、不飽和脂肪酸等で変性したものが使用可能である。このうち多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、多価カルボン酸としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。また、乾性油としては、例えば、亜麻仁油、桐油、オイチシカ油、サフラワー油等が挙げられる。(A-1)成分、(A-2)成分におけるアルキド樹脂変性率は、密着性、各種塗膜物性の観点から、(A-1)成分または(A-2)成分の樹脂固形分を基準として、好ましくは0.1~40重量%、より好ましくは0.2~35重量%である。
【0027】
上記1)~3)における他のビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、芳香族単量体等が挙げられる。このうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。芳香族単量体の具体例としては、例えば、スチレン、2-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。このようなビニル単量体としては、例えば、カルボキシル基含有ビニル単量体、アミノ基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル単量体等も使用できる。(A)成分としては、他の単量体として、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルが共重合されたもの、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び芳香族単量体が共重合されたもの等が好適である。
【0028】
(A-1)成分及び/または(A-2)成分は、酸価を有することが好ましい。これにより本発明の効果を高めることができる。樹脂成分の酸価は、(A-1)成分または(A-2)成分の樹脂固形分を基準として、好ましくは0.1~30mgKOH/g(より好ましくは0.3~20mgKOH/g)である。このような範囲内であれば、硬化性(初期乾燥性)が高まり、密着性をよりいっそう高めることができる。本発明では、(A-1)成分、(A-2)成分の両方が、それぞれ上記酸価を有することが望ましい。なお、酸価は、樹脂固形分1gに含まれる酸基と等モルの水酸化カリウムのmg数によって表される値である。
【0029】
(A)成分中の酸価を上記範囲内に設定するには、上記1)~3)における他のビニル単量体として、例えば、カルボキシル基含有ビニル単量体等を使用すればよい。カルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル、ω-カルボキシ-ポリブチロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリバレロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプリロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリラウリロラクトンモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、(メタ)アクリル酸トリマー、(メタ)アクリル酸テトラマー、(メタ)アクリル酸ヘプタマー、(メタ)アクリル酸ヘキサマー等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0030】
さらに、(A-1)成分及び/または(A-2)成分は、アミン価、水酸基価等を有することが好ましい。(A-1)成分及び/または(A-2)成分におけるアミン価は、(A-1)成分または(A-2)成分の樹脂固形分を基準として、好ましくは0.1mgKOH/g以上(より好ましくは0.3~10mgKOH/g)である。(A-1)成分及び/または(A-2)成分における水酸基価は、(A-1)成分または(A-2)成分の樹脂固形分を基準として、好ましくは1~150mgKOH/g(より好ましくは5~100mgKOH/g、さらに好ましくは10~80mgKOH/g)である。なお、水酸基価は、樹脂固形分1gに含まれる水酸基と等モルの水酸化カリウムのmg数によって表される値である。
【0031】
(A)成分中のアミン価、または水酸基価を上記範囲内に設定するには、上記1)~3)における他のビニル単量体として、例えば、アミノ基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル単量体等を使用すればよい。上記アミノ基含有ビニル単量体としては、例えば、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N-(2-ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
上記水酸基含有ビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0032】
(A)成分のガラス転移温度は、好ましくは-5℃~70℃(より好ましくは10℃~60℃)である。なお、ガラス転移温度は、樹脂を構成するビニル単量体に基づき、Foxの計算式によって求められる値である。
【0033】
上記脂肪族炭化水素含有非水溶剤(B)(以下「(B)成分」ともいう)は、トルエン、キシレン等に比べ低毒性であり、作業上の安全性が高く、さらには大気汚染に対する影響も小さい非水溶剤である。脂肪族炭化水素としては、例えば、n-ヘキサン、n-ペンタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。本発明では、ミネラルスピリット等の混合溶剤を使用することによって、脂肪族炭化水素を導入することもできる。脂肪族炭化水素は、(B)成分の総量に対し、5重量%以上(より好ましくは10~80重量%)含まれることが好ましい。
【0034】
(B)成分は、脂肪族炭化水素と混合可能な溶剤を含むものであってもよい。このような溶剤としては、例えば、石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤の他、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、好適な溶剤として、例えば、混合アニリン点またはアニリン点が12~70℃である石油系溶剤(芳香族炭化水素含有石油混合溶剤)等が挙げられる。なお、混合アニリン点またはアニリン点は、JIS K2256:2013の方法で測定される値である。
【0035】
(B)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは100~500重量部(より好ましくは120~400重量部)である。なお、(B)成分には、各成分の媒体として使用される溶剤も包含される。
【0036】
本発明の被覆材は、顔料(C)(以下「(C)成分」ともいう)を含み、上記(C)成分を、形成塗膜における顔料容積濃度(PVC)が30~80%(好ましくは35~65%)となるように配合することを特徴とする。このような顔料容積濃度(PVC)であれば、十分な密着性を有する塗膜を形成することができる。このような効果が奏される理由は、限定されるものではないが、(C)成分によって被覆材の固形分比率が高まり、塗膜強度も向上すること等が有効に作用しているものと推察される。例えば、下地が凹凸模様を有する場合は、その凹凸に沿って被覆材を満遍なく塗着でき、十分な塗膜強度が得られ、密着性等に優れた塗膜を形成することが可能となる。また、下地が平坦である場合は、平滑性を有する一様な塗膜が形成でき、密着性等において優れた性能を発揮することができる。また、本発明では、顔料体積濃度が上記範囲内であることにより、上塗材との密着性を高めることもできる。さらに、本発明では、上記(A)成分における(A-1)成分と(A-2)成分の固形分重量比率[(A-1)成分/(A-2)成分]が特定比率を満たすことにより、(C)成分のPVCが比較的高い場合であっても、上記効果を十分に発揮することができる。
【0037】
顔料体積濃度は、乾燥塗膜に含まれる顔料の体積百分率であり、被覆材を構成する樹脂成分(上記(A)成分)と顔料の重量部数及び比重から計算により求められる値である。なお、樹脂成分の比重は1とする。
【0038】
(C)成分としては、着色顔料(C-1)及び/または体質顔料(C-2)が挙げられる。本発明では、少なくとも体質顔料(C-2)を含むことが好ましい。これにより、上記効果を高めることができる。
【0039】
着色顔料(C-1)(以下「(C-1)成分」ともいう)としては、有彩色顔料、白色顔料、黒色顔料等が使用できる。このうち、有彩色顔料は、例えば、黄色、橙色、赤色、緑色、青色、紫色等の有彩色を呈する顔料である。このような有彩色顔料としては、例えば、酸化第二鉄、含水酸化第二鉄、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン等の無機質のもの、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機質のもの等が挙げられる。一方、白色顔料は、白色を呈する顔料であり、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等が挙げられる。黒色顔料は、黒色を呈する顔料であり、例えば、鉄黒、鉄‐マンガン複合酸化物、鉄‐銅‐マンガン複合酸化物、鉄‐クロム‐コバルト複合酸化物、銅‐クロム複合酸化物、銅‐マンガン‐クロム複合酸化物等の無機質のもの、その他カーボンブラック等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。また、その表面に何らかの処理がされたものであってもよい。(C-1)成分の平均粒子径は、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.01~0.9μmである。なお、着色顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される値である。
【0040】
(C-1)成分の配合量は、(A)成分の固形分100重量部に対して、好ましくは5~100重量部(より好ましくは10~80重量部)である。(C-1)成分がこのような比率であれば、被覆材を所望の色彩に着色することができ、隠蔽性、美観性等を高めることができる。
【0041】
体質顔料(C-2)(以下「(C-2)成分」ともいう)は、例えば、下地表面の均質化するとともに、下地及び上塗材との密着性に寄与する。具体的に、劣化による下地表面の荒れ、ひび割れ等を修復して、表面を平坦化するとともに、全体の色調を整えることによって外観を均質化している。さらに、(C-2)成分に由来する微細な凹凸によるアンカー効果等により上塗材における膨れ、割れ、剥れ等の不具合発生の抑制することができる。このような効果が奏される理由は明らかではないが、(C-2)成分によって被覆材の固形分比率が高まり、適度な粘性が付与され、塗膜強度も向上すること等が有効に作用しているものと推察される。
【0042】
(C-2)成分としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、含水微粉珪酸、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0043】
(C-2)成分の平均粒子径は、好ましくは0.1~100μm(好ましくは1~80μm)である。本発明では、(C-2)成分中に、平均粒子径が8μm以上(好ましくは10~100μm)のものを50重量%以上(より好ましくは55重量%以上)含むことが好ましい。その上限は特に限定されないが、好ましくは90重量%である。このような場合、上記アンカー効果がよりいっそう高まり、よりいっそう密着性を高めることができる。なお、体質顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される値である。
【0044】
(C-2)成分の配合量は、(A)成分の固形分100重量部に対して、好ましくは50~600重量部(より好ましくは60~500重量部、さらに好ましくは100~450重量部)である。このような範囲内である場合、上記効果を十分に発揮することができ、下地及び上塗材(特に上塗材)に対して十分な密着性を得ることができる。
【0045】
本発明では、上記成分に加えて、有機金属化合物(D)(以下「(D)成分」ともいう)を含むことが好ましい。(D)成分は、上記(A)成分の硬化触媒または硬化促進剤等として作用する成分である。(D)成分を含むことにより、硬化性(初期乾燥性)が高まり、下地及び上塗材に対して十分な密着性を得ることができる。(D)成分としては、例えば、コバルト、マンガン、バナジウム、セリウム、鉄、スズ、ジルコニウム、ビスマス、アルミニウム、ストロンチウム、チタン、亜鉛、バリウム、銅、カルシウム、鉛、ニッケル等の金属を含む有機金属化合物(例えば、金属有機酸塩化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド化合物、金属アシレート化合物等)等が使用できる。
【0046】
具体的に(D)成分としては、例えば、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸マンガン、ナフテン酸マンガン、オクチル酸鉄、ナフテン酸鉄、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクチエート、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムn-プロポキシド、ジルコニウムn-ブトキシド、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec-ブチレート、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムビス(ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンn-ブトキシド、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸バリウム、ナフテン酸バリウム、オクチル酸銅、ナフテン酸銅、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸カルシウム等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0047】
本発明では、(D)成分として、上記金属のオクチル酸塩、ナフテン酸塩等の金属有機酸塩化合物(以下、「金属ドライヤー」または「ドライヤー」ともいう。)を含むことが好ましい。さらに、本発明では、(D-1)一次ドライヤーと(D-2)二次ドライヤーを併用して使用することが好ましい。上記(D-1)一次ドライヤーとしては、例えば、コバルト、マンガン等から選ばれる金属有機酸塩化合物、上記(D-2)二次ドライヤーとしては、例えば、バリウム、ジルコニウム、カルシウム、亜鉛、鉄、銅等から選ばれる金属有機酸塩化合物が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。これにより、硬化性を高めるとともに、塗膜の屈曲性向上においても優れた効果を発揮することができる。その結果、下地及び上塗材に対してよりいっそう十分な密着性を得ることができる。(D-1)一次ドライヤーと(D-2)二次ドライヤーの混合比率(金属量比)[(D-1)/(D-2)]は、好ましくは1/2~1/20(より好ましくは1/5~1/10)である。このような場合、上記効果を十分に発揮することができる。
【0048】
(D)成分の配合量は、前記(A)成分の固形分100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部(より好ましくは0.3~10重量部、より好ましくは0.5~8重量部)である。また、前記(A)成分の固形分100重量部に対して、上記(D)成分中の金属量が、好ましくは0.01~5重量部(より好ましくは0.05~3重量部)である。このような範囲であることにより、硬化性(初期乾燥性)が高まり、下地及び上塗材に対して十分な密着性を得ることができる。
【0049】
本発明の被覆材には、さらに、上記(D)成分の活性を高める硬化促進剤(E)を添加することもできる。硬化促進剤としてとしては、例えば、1,10-フェナントロリン、2,2’-ジピリジル等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。硬化促進剤は、上記(D)成分中の含まれる金属量との重量比[(D)/(E)]が、好ましくは0.5/9.5~9.5/0.5(より好ましくは1/9~9/1)となるように配合する。これにより、硬化性がよりいっそう高まり、下地及び上塗材に対して十分な密着性を得ることができる。
【0050】
本発明の被覆材は、上記成分に加えて、有機アミン化合物(F)(以下「(F)成分」ともいう)を含むことが好ましい。(F)成分は、下地及び上塗材に対する密着性向上剤として作用する成分である。本発明の上記(A-1)成分、上記(A-2)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む被覆材において、(F)成分を含むことにより、下地及び上塗材に対する安定した密着性が得られ、特に、上塗材との密着性向上に効果を奏し、上塗材が水性被覆材の場合であっても、密着性において優れた効果を発揮することができる。
【0051】
(F)成分としては、例えば、尿素、チオ尿素、メチル尿素、エチル尿素、ジメチル尿素、ジエチル尿素、エチレン尿素、グアニル尿素、グアニルチオ尿素、アゾジカルボンアミド、グリコリルウレア、アセチルウレア等の尿素化合物;ヒドラジン、イソプロピルヒドラジン、ブチルヒドラジン、ベンジルヒドラジン、フェニルヒドラジン、ヒドラベンゼン、メチルカルバゼート、プロピオン酸ヒドラジド、カルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、チオカルボヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジン等のヒドラジド類;ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ジシアンジアミド等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。これにより、上記(A)成分の硬化を阻害することなく、本発明の効果を高めることができる。
【0052】
本発明では、(F)成分として、尿素化合物(特に、エチレン尿素)を含むことが好適である。これにより、下地及び上塗材に対する安定した密着性が得られ、特に、上塗材との密着性向上に効果を奏し、上塗材が水性被覆材の場合であっても、密着性においてよりいっそう優れた効果を発揮することができる。
【0053】
さらに、本発明の(F)成分は、溶媒に溶解させて使用することが好ましい。溶媒としては、(F)成分を溶解可能であれば、特に限定されず、例えば公知の極性溶媒が使用できるが、本発明では、エタノール、メタノール等のアルコール系溶媒が好適である。これにより、被覆材中に(F)成分を均一に分散することが可能となり、本発明の効果を高めることができる。
【0054】
(F)成分の配合量は前記(A)成分の固形分100重量部に対して、好ましくは0.05~10重量部(より好ましくは0.1~5重量部)である。このような範囲であることにより、
十分な密着性を得ることができる。特に、上塗材との密着性において、優れた効果を発揮することができる。
【0055】
本発明の被覆材は、上記成分に加えて、さらに、ポリイソシアネート化合物(G)(以下「(G)成分」ともいう)を含むことができる。(G)成分は、1分子中に2以上のイソシアネート基を有するものであり、前記(A)成分が水酸基を有する場合に反応するものであり、これにより、硬化性がよりいっそう高まり、下地及び上塗材に対して十分な密着性を得ることができる。
【0056】
(G)成分としては、(A)成分と常温で反応しうるものが好適である。なお、ここでいう常温とは、好ましくは-10℃以上50℃以下、より好ましくは5℃以上40℃以下を示す。具体的に、(G)成分としては、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートとアルコール成分、必要に応じてポリオール成分等をアルファネート化、ビウレット化、2量化(ウレチジオン化)、3量化(イソシアヌレート化)、アダクト化、カルボジイミド化反応等により誘導体化したもの、及びそれらの混合物が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0057】
脂肪族ジイソシアネートとは分子中に飽和脂肪族基を有する化合物であり、例えば、1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(別名:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI))、1,6-ジイソシアナト-2,2,4-トリメチルヘキサン、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)等が挙げられる。一方、脂環式ジイソシアネートとは、分子中に環状脂肪族基を有する化合物であり、例えば、5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン等が挙げられる。この中でもHDIは耐候性と柔軟性が非常に優れており最も好ましい。
【0058】
アルコール成分としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、イソアミルアルコール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、3,3,5-トリメチル-1-ヘキサノール、トリデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0059】
ポリオール成分としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等が挙げられる。本発明では特に、ポリプロピレントリオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールが好適である。これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0060】
(G)成分の配合量は、(G)成分のイソシアネート基と(A)成分の水酸基とのモル比[NCO]/[OH]で、好ましくは0.01~0.5(より好ましくは0.05~0.3)である。このような範囲であることにより、貯蔵安定性に優れ、十分な密着性を得ることができる。特に、下地との密着性において、優れた効果を発揮することができる。
【0061】
さらに、(G)成分として、固形分中のイソシアネート基含有量が10重量%以上(より好ましくは15重量%以上30重量%以下)であるポリイソシアネート化合物を含むことが好ましい。これにより、十分な密着性を得ることができるとともに、耐水性が高まり塗膜の膨れ等の抑制に効果的である。なお、本発明において、イソシアネート基含有量とは、ポリイソシアネート化合物の固形分中に含まれるイソシアネート基の含有量(重量%)と定義され、イソシアネート基を過剰のアミンで中和した後、塩酸による逆滴定によって求められる値である。
【0062】
本発明の被覆材は、上述の成分の他、本発明の効果に影響しない程度に各種成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、増粘剤、皮張り防止剤、脱水剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。また、上記(A)成分以外の樹脂成分を含むものであってもよい。本発明の被覆材は、構成成分として上記(A)~(C)成分と、必要に応じこのような各成分を常法により均一に撹拌・混合して製造することができる。また、本発明の被覆材は、1液型の形態にて使用することが望ましい。
【0063】
本発明の被覆材は、下塗材として、基材や旧塗膜等の下地に好ましく適用できるものである。
基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、スレート板、珪酸カルシウム板、ALC板、押出成型板、スレート瓦、セメント瓦、新生瓦、磁器タイル、サイディングボード、金属、ガラス、木材、合板等が挙げられる。
【0064】
また、旧塗膜としては、上記基材の上に塗装されている塗膜であり、例えば、建築用耐候性上塗り塗料(JISK5658:2010)、鋼構造物用耐候性塗料(JISK5659:2008)、つや有合成樹脂エマルションペイント(JISK5660:2008)、建築用防火塗料(JISK5661:1970)、合成樹脂エマルションペイント(JISK5663:2008)、路面標示用塗料(JISK5665:2011)、多彩模様塗料(JISK5667:2003)、合成樹脂エマルション模様塗料(JISK5668:2010)、アクリル樹脂系非水分散形塗料(JISK5670:2008)、鉛・クロムフリーさび止めペイント(JISK5674:2008)、屋根用高日射反射率塗料(JISK5675:2011)、建物用床塗料(JISK5970:2008)、建築用塗膜防水材(JISA6021:2011)、建築用仕上塗材(JISA6909:2014)等により形成された塗膜が挙げられる。特に本発明では、フッ素樹脂塗膜、シリコン樹脂塗膜等にも適用できる。
【0065】
本発明の被覆材の塗装においては、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装等の種々の方法を採用することができる。また工場内で塗装する場合は、ロールコーター、フローコーター等を用いて塗装することもできる。
【0066】
被覆材の塗付け量は、好ましくは0.1~0.6kg/m 2(より好ましくは0.2~0.5kg/m 2)である。また、塗付回数は、下地の表面状態等によって適宜設定すればよいが、好ましくは1~2回である。乾燥時間は、好ましくは1時間以上1週間以内とすればよい。また乾燥温度は、好ましくは-10℃以上50℃以下(より好ましくは-5℃以上40℃以下)であればよい。
【0067】
本発明では、上記被覆材の塗付・乾燥後に、上塗材を塗付することができる。上塗材を塗付することによって、仕上げ表面の保護、あるいは、美観性の向上等を図ることができる。
【0068】
上塗材における樹脂成分としては、各種樹脂が使用できる。樹脂の種類としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合樹脂等が挙げられる。この中でも、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等から選ばれる1種または2種以上が好適である。また、このような樹脂成分の形態としては、水溶性樹脂、水分散性樹脂(樹脂エマルション)、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂、粉末樹脂等が挙げられ、この中でも、水溶性樹脂、水分散性樹脂等の水性上塗材、溶剤可溶形樹脂、非水分散形樹脂等の溶剤系(好ましくは弱溶剤系)上塗材から選ばれる1種以上が好適である。本発明の被覆材を下塗材とした場合、水性上塗材であっても十分な密着性を確保することができる。
【0069】
このような上塗材は、本発明の効果が著しく損われない範囲内であれば、上記成分以外の各種成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、着色顔料、体質顔料、骨材、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、低汚染化剤、親水化剤、撥水剤、触媒、溶剤、水等が挙げられる。本発明の上塗材は、上記樹脂成分、及び必要に応じ上述の各種成分を常法によって均一に混合することで製造できる。上塗材の形態は、例えば、1液型、2液型、またはそれ以上の多液型とすることができる。
【0070】
上塗材の塗装においては、公知の塗装器具を用いることができる。塗装器具としては、例えば、スプレー、ローラー、刷毛等を使用することができる。
上塗材の塗付け量は、下地の表面形状、上塗材の種類や塗装器具の種類等に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは0.1~0.5kg/m 2(より好ましくは0.2~0.4kg/m 2)である。塗装時には、必要に応じ上塗材を適宜希釈することもできる。
【実施例0071】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
<被覆材の製造>
表1、表2に示す配合に従い、各成分を定法により混合・攪拌し被覆材を得た。
【0072】
なお、以下に示す原料を使用した。
(A)樹脂成分
・合成樹脂1[アルキド樹脂変性アクリルスチレン樹脂(非水分散型樹脂)、水酸基価:40mgKOH/g、酸価:2mgKOH/g、重量平均分子量:70,000、ガラス転移温度40℃、固形分:50重量%、アルキド変性率:1重量%、媒体:ミネラルスピリット(アニリン点42℃)]
・合成樹脂2[アルキド樹脂変性アクリルスチレン樹脂(非水分散型樹脂)、水酸基価:40mgKOH/g、酸価:2mgKOH/g、重量平均分子量:130,000、ガラス転移温度40℃、固形分:50重量%、アルキド変性率:1重量%、媒体:ミネラルスピリット(アニリン点42℃)]
・合成樹脂3[アルキド樹脂変性アクリルスチレン樹脂(非水分散型樹脂)、水酸基価:40mgKOH/g、酸価:2mgKOH/g、重量平均分子量:200,000、ガラス転移温度40℃、固形分:50重量%、アルキド変性率:1重量%、媒体:ミネラルスピリット(アニリン点42℃)]
・合成樹脂4[アルキド樹脂変性アクリルスチレン樹脂(可溶型樹脂)、水酸基価:0KOHmg/g、酸価:3mgKOH/g、重量平均分子量:50,000、ガラス転移温度41℃、固形分50重量%、アルキド変性率:10重量%、媒体:ミネラルスピリット(アニリン点42℃)]
・合成樹脂5[アクリルスチレン樹脂(可溶型樹脂)、水酸基価:0KOHmg/g、酸価:3mgKOH/g、重量平均分子量:50,000、ガラス転移温度41℃、固形分50重量%、アルキド変性率:0重量%、媒体:ミネラルスピリット(アニリン点42℃)]
・合成樹脂6[アルキド樹脂変性アクリルスチレン樹脂(可溶型樹脂)、水酸基価:0KOHmg/g、酸価:3mgKOH/g、重量平均分子量:30,000、ガラス転移温度41℃、固形分50重量%、アルキド変性率:10重量%、媒体:ミネラルスピリット(アニリン点42℃)]
・合成樹脂7[アルキド樹脂変性アクリルスチレン樹脂((可溶型樹脂)、水酸基価:0KOHmg/g、酸価:3mgKOH/g、重量平均分子量:60,000、ガラス転移温度41℃、固形分50重量%、アルキド変性率:10重量%、媒体:ミネラルスピリット(アニリン点42℃)]
(B)脂肪族炭化水素含有非水溶剤
・ミネラルスピリット(アニリン点42℃)
(C)顔料
・着色顔料:ルチル型酸化チタン(平均粒子径:0.3μm、比重:4.2)
・体質顔料1:炭酸カルシウム(平均粒子径:21μm、比重2.7)
・体質顔料2:炭酸カルシウム(平均粒子径:5μm、比重2.7)
(D)有機金属化合物
・有機金属1:オクチル酸コバルト・ミネラルスピリット溶液[有効成分:80重量%、Co量:12重量%]
・有機金属2:オクチル酸ジルコニウム・ミネラルスピリット溶液[有効成分:80重量%、Zr量:24重量%]
(E)硬化促進剤:1,10-フェナントロリン
(F)有機アミン化合物:尿素化合物[エチレン尿素含有量:20重量%、媒体:メタノール]
(その他)
・添加剤[消泡剤、増粘剤、分散剤、等]
【0073】
(実施例1~17、比較例1~4)
得られた各被覆材を使用し、下記の評価を実施した。
<密着性評価1>
既存塗膜として無機質クリヤー塗膜が形成されたサイディングボード上に、被覆材を塗付け量0.30kg/m 2となるように塗付し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で24時間乾燥させた試験体[I]を作製した。
作製した試験体[I]を、JIS K 5600-5-6に準じた碁盤目テープ法にて密着性を評価した。
評価基準は、以下の通りである。
AA:欠損部面積が5%未満
A:欠損部面積が5%以上10%未満
AB:欠損部面積が10%以上25%未満
B:欠損部面積が25%以上40%未満
C:欠損部面積が40%以上55%未満
D:欠損部面積が55%以上
【0074】
<密着性評価2>
既存塗膜として無機質クリヤー塗膜が形成されたサイディングボード上に、被覆材を塗付け量0.30kg/m 2となるように塗付し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で24時間乾燥させ、次いで、水性上塗材(アクリルシリコン樹脂エマルション塗料)を塗付け量0.20kg/m 2となるように塗付し、標準状態で7日間乾燥させた試験体[II]を作製した。
作製した試験体[II]を、密着性評価1と同様の方法で評価した。
【0075】
<密着性評価3>
作製した試験体[II]を、20℃の水に3日間浸漬させた後、試験体を取り出し、乾燥(23℃、3時間)させ、塗膜状態を目視にて、膨れ、剥れ等を観察し評価した。
評価基準は、ほぼ異常がなかったものを「A」、異常があったものを「D」とする4段階評価(A>B>C>D)評価とした。
【0076】
<密着性評価4>
既存塗膜として無機質クリヤー塗膜が形成されたサイディングボード上に、被覆材を塗付け量0.30kg/m 2となるように塗付し、低温条件下(気温5℃、相対湿度50%)で24時間乾燥させ、次いで、水性上塗材(アクリルシリコン樹脂エマルション塗料)を塗付け量0.20kg/m 2となるように塗付し、低温条件下で7日間乾燥させた試験体[III]を作製した。
作製した試験体[III]を、密着性評価1と同様の方法で評価した。
【0077】
<耐屈曲性評価>
厚さ0.3mmの磨き鋼板(SPCC-SB)に、乾燥膜厚が35μmとなるように被覆材を塗付し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で7日間乾燥させた試験体[IV]を作成した。
JIS K5600-5-1:1999「耐屈曲性(円筒形マンドレル法)」に規定される方法で耐屈曲性を評価した。試験は、標準状態において、タイプ1の試験装置を用いて行い、マンドレル直径2mmの周りに沿って折り曲げ、塗膜の割れ及びはがれを目視にて観察し評価した。
評価基準は、異常がなかったものを「A」、異常があったものを「D」とする4段階評価(A>B>C>D)とした。
【0078】
実施例1~17において、良好な密着性が得られた。特に、実施例4~6、10、12~17において、下地及び水性上塗材の両方に対して優れた密着性を得ることができた。また、実施例5、9~17においては、優れた耐屈曲性を得ることができた。
【0079】
【0080】