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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148304
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20241010BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241010BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B41J29/38 204
B41J2/01 451
B41J2/175
B41J2/175 119
B41J2/175 161
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061329
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】大木 聡
(72)【発明者】
【氏名】森 哲憲
(72)【発明者】
【氏名】木元 太一朗
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 貞明
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EA19
2C056EB30
2C056EB31
2C056EB38
2C056EB59
2C056EC28
2C056KC02
2C056KD10
2C061AP01
2C061AQ05
2C061AR01
2C061HK09
2C061HK11
2C061HK19
(57)【要約】
【課題】取り外されて回収されたカートリッジを周辺環境の変動を考慮しつつ適切に評価できる。
【解決手段】制御部30は、経過時間の長さとインクカートリッジ2の周辺環境との両方に基づいてインクの品質の変動度合いを示す評価値を取得する。評価値は、周辺環境が互いに異なる2つの期間のそれぞれにおいて取得される。取得された2つの期間の両方における評価値は、インクカートリッジ2の記録部22に記録された蒸発量推定値に積算される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成用の着色剤を貯留するカートリッジが着脱される画像形成装置であって、
前記カートリッジ内の前記着色剤を使用して媒体上に画像を形成する画像形成部と、
制御部とを備えており、
前記制御部は、
経過時間の長さを取得する経過時間取得処理と、
前記経過時間取得処理により取得した前記経過時間の長さと、前記着色剤の品質に影響する前記カートリッジの周辺環境との両方に応じた前記着色剤の品質の変動度合いを示す評価値を、前記周辺環境が互いに異なる第1及び第2の期間のそれぞれにおいて取得する評価値取得処理と、
前記評価値取得処理により取得した前記第1及び第2の期間の両方における前記評価値が反映された出力値を外部に出力する出力処理とを実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記周辺環境を示す環境値を取得する環境値取得部をさらに備えており、
前記評価値取得処理において、前記環境値取得部が取得した前記環境値に応じた前記評価値が取得されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記評価値取得処理において、所定の期間ごとの前記経過時間の長さ及び前記所定の期間ごとの前記環境値に応じた前記評価値が積算されると共に、積算された結果を示す積算値が外部に出力されることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記評価値取得処理において、前記環境値取得部が取得した前記環境値が所定の変動を示すごとに取得された前記評価値が積算されることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記環境値が温度を示すことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記着色剤の品質が、前記着色剤に含まれた液体の量に応じており、
前記評価値が、前記着色剤における液体の蒸発量の推定値であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記環境値に応じた前記蒸発の度合いを示す蒸発度合い値を記憶する蒸発度合い記憶部を有しており、
前記評価値取得部において、前記蒸発度合い記憶部が記憶する前記蒸発度合い値と前記環境値取得部が取得した前記環境値とに基づいて前記蒸発量の推定値が取得されることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1の期間が、前記カートリッジが装置に装着される前の期間であり、
前記第2の期間が、前記カートリッジが装置に装着されている期間であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記評価値取得処理において、
前記第1の期間には前記周辺環境が変動しないものとして前記評価値が取得され、前記第2の期間には前記環境値取得部が取得した前記環境値に応じた前記評価値が取得されることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記出力処理は、前記カートリッジに設置された記録部に前記出力値を記録する処理と、通信ネットワークを通じて外部装置へと前記出力値を送信する処理との少なくともいずれかを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
現在時を取得する現在時取得部をさらに備えており、
前記出力処理が、
前記出力値を前記記録部に記録する処理と、前記現在時取得部が取得した前記現在時を定期的に前記記録部に記録する処理とを含んでいることを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
請求項11に記載の画像形成装置と、
前記カートリッジと、
前記カートリッジの前記記録部に記録された前記現在時に基づいて、前記カートリッジが前記画像形成装置から取り外されてからの経過時間を取得すると共に、取得した経過時間に基づいて、前記画像形成装置から取り外されてから回収されるまでに前記カートリッジの貯留部に貯留された前記着色剤に発生した品質の変動度合いを示す、前記評価値とは別の評価値を取得する別評価値取得部と、
前記別評価値取得部が取得した前記別の評価値と、前記出力処理により出力された前記出力値との両方に基づいて、前記画像形成装置から取り外された前記カートリッジが再生可能であるかどうかを判定する判定部とを備えていることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成用の着色剤を貯留するカートリッジが着脱される画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回収された使用済みのカートリッジ内の着色剤の品質をカートリッジに記録された周辺環境(カートリッジの使用環境等)に基づいて評価する技術が存在する。特許文献1はその一例であり、このような評価に基づいてカートリッジが再生可能かどうかが判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-314642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、カートリッジの周辺環境を具体的にどのように評価に反映させるかについて記載されていない。一方、カートリッジの周辺環境は随時変動することが想定される。カートリッジ内の着色剤の品質は、カートリッジの周辺環境に影響されつつ変動する。したがって、回収されたカートリッジを、様々に変動していた可能性がある過去の周辺環境に応じて適切に評価することが求められる。
【0005】
本発明の目的は、取り外されて回収されたカートリッジを周辺環境の変動を考慮しつつ適切に評価できる画像形成装置及び画像形成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成装置は、画像形成用の着色剤を貯留するカートリッジが着脱される画像形成装置であって、前記カートリッジ内の前記着色剤を使用して媒体上に画像を形成する画像形成部と、制御部とを備えており、前記制御部は、経過時間の長さを取得する経過時間取得処理と、前記経過時間取得処理により取得した前記経過時間の長さと、前記着色剤の品質に影響する前記カートリッジの周辺環境との両方に応じた前記着色剤の品質の変動度合いを示す評価値を、前記周辺環境が互いに異なる第1及び第2の期間のそれぞれにおいて取得する評価値取得処理と、前記評価値取得処理により取得した前記第1及び第2の期間の両方における前記評価値が反映された出力値を外部に出力する出力処理とを実行する。
【発明の効果】
【0007】
周辺環境が異なる2つの期間のそれぞれにおいて、経過時間の長さと周辺環境との両方に応じた品質の変動度合いを示す評価値が取得される。そして、両方の期間の評価値が反映された出力値が外部に出力される。したがって、このような出力値に基づくと、画像形成装置から取り外されて回収されたカートリッジを、2つの期間における周辺環境の変動を考慮しつつ適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの構成を示すブロック図である。
図2図1のプリンタに用いられるインク中の液体が蒸発する度合いに係る係数と温度との関係を示す表である。
図3図1のプリンタに使用されるインクカートリッジが製造されてからプリンタに装着されて使用され、使用後に再生工場に回収されて評価されるまでの一連の期間を示す数直線である。
図4図3の一期間において、インクの劣化度合いを示す評価値を取得、積算する第1の方法の一連の流れを示すフローチャートである。
図5図3の一期間において、インクの劣化度合いを示す評価値を取得、積算する第2の方法の一連の流れを示すフローチャートである。
図6図1の評価装置が実行する処理の一連の流れを示すフローチャートである。
図7図2の表に係る蒸発量の推定方法とは異なる方法に係る蒸発量の推定値と経過時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好適な一実施形態に係るプリンタシステム100について図1図6を参照しつつ、以下に説明する。プリンタシステム100(本発明の「画像形成システム」に相当する)は、プリンタ1と、プリンタ1に装着されるインクカートリッジ2と、再生工場に設置された評価装置5とを有している。評価装置5の詳細については後述する。プリンタ1は、顧客の登録情報等を管理する外部サーバ900と、インターネット等の通信ネットワークNを通じて通信可能である。
【0010】
インクカートリッジ2は、インクを貯留するインク貯留部21及びICチップからなる記録部22を有している。インク貯留部21内のインクは、インクカートリッジ2が装着されたプリンタ1に供給される。記録部22は、インクカートリッジ2がプリンタ1に装着された際に、プリンタ1側に設置された読み取り/書き込み部によってデータを読み取ったり書き込んだりすることが可能である。
【0011】
プリンタ1は、図1に示すように、画像形成部10、温度検出部20及び制御部30を有している。
【0012】
画像形成部10は印刷用紙を収容している。画像形成部10は、制御部30の制御に従って、インクカートリッジ2から供給されたインクを使用し、そのインクを印刷用紙に付着させることで、画像データが示す画像を印刷用紙上に形成する画像形成を実行する。
【0013】
温度検出部20は、インクカートリッジ2の周辺環境の温度を検出するセンサーである。温度検出部20は、プリンタ1の筐体の内部又は外部におけるインクカートリッジ2が装着された箇所の近傍に配置されている。温度検出部20の検出結果は制御部30に出力される。
【0014】
制御部30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、現在時刻保持部等のハードウェアを備えている。ROMには、CPU及びASICが実行するプログラムデータ等が格納されている。RAMは、外部から取得した画像データを記憶したり、CPUがプログラムを実行する際に用いるデータを記憶したりする。ハードウェアであるCPUは、ROM及びRAMに格納されたソフトウェアであるプログラムデータその他のデータに従って各種の処理を実行する。これにより、各種の処理に応じた機能部として、図1に示す係数記憶部31等が制御部30内に構築される。
【0015】
ところで、インクカートリッジ2のインク貯留部21内のインクはその残量がなくなるまで使用され続ける。そして、残量がなくなると、インクカートリッジ2がプリンタ1から取り外され、新たなインクカートリッジ2と交換される。プリンタ1から取り外された使用済みのインクカートリッジ2は適宜回収され、再生工場において再生処理が施される。
【0016】
回収された使用済みのインクカートリッジ2のインク貯留部21内には、最後まで使い切れなかった少量のインクが残存している。残存したインクは再生処理においてインク貯留部21から排出されるが、インク貯留部21内のインクを完全にゼロになるまで排出することは不可能である。したがって、再生処理においてインクカートリッジ2に新たなインクが再充填されると、残存したインクと新たなインクが混ざることになる。一方、残存したインクは、インク中の成分における液体の蒸発によりその品質が低下している。よって、残存したインクの品質によっては、再充填後にインクの品質が十分に確保できないおそれがある。従来技術には、再充填後の品質を確保するため、インクカートリッジの使用環境等に応じてインクカートリッジの再生の可否を判定し、再生可能と判定された場合に限ってインクの再充填を行うものがある(特許文献1参照)。しかしながら、インクの品質の評価が適切でないと、実際には再生が可能である場合にも再生不可能と判定されやすく、回収されたインクカートリッジが無駄になるおそれがある。
【0017】
そこで、本実施形態においては、使用済みのインクカートリッジ2が再生可能であるか否かを適切に判定しやすくするため、以下のような構成が採用されている。
【0018】
インクカートリッジ2の記録部22には蒸発量推定値及び時刻が記録されている。これらは、後述の通り、インクカートリッジ2がプリンタ1に装着されている期間に制御部30によって記録される。また、記録部22には、インクカートリッジ2の製造年月日が記録されている。
【0019】
また、制御部30は、係数記憶部31、時刻取得部32、評価値取得部33、評価値積算部34及び時刻記録部35を有している。係数記憶部31(本発明の「蒸発度合い記憶部」に相当する)は、温度に応じたインク中の液体の蒸発の度合い(単位時間当たりに蒸発する液体の量)に係る係数(蒸発係数)を記憶している。例えば、この係数は、図2に示すように温度領域と関連付けられつつ係数記憶部31に記憶されている。T1、T2、T3及びT4は温度を示し、後者ほど高い値を有する。a1、a2及びa3は黒色の染料インクに対応する係数であり、b1、b2及びb3はイエロー色の染料インクに対応する係数であり、c1、c2及びc3はシアン色の染料インクに対応する係数であり、d1、d2及びd3はマゼンタ色の染料インクに対応する係数である。また、e1、e2及びe3は黒色の顔料インクに対応する係数であり、f1、f2及びf3はイエロー色の顔料インクに対応する係数であり、g1、g2及びg3はシアン色の顔料インクに対応する係数であり、h1、h2及びh3はマゼンタ色の顔料インクに対応する係数である。このように、染料であるか顔料であるかや色の違い等、インクの種類の違いに応じて異なる係数が設定されている。時刻取得部32は、ハードウェアの現在時刻保持部を参照することで現在の時刻を年月日も含めて取得する。
【0020】
評価値取得部33は、時間経過に伴ってインクカートリッジ2内のインクに生じる品質劣化の度合いを示す評価値を取得する。本実施形態に係る評価値は、所定期間においてインクカートリッジ2内のインク中の液体が蒸発した量の推定値に対応する。評価値積算部34は、評価値取得部33が取得した評価値をインクカートリッジ2の記録部22の蒸発量推定値に積算する。つまり、評価値は、評価値取得部33により取得されるごとに、評価値積算部34により蒸発量推定値に加算されていく。蒸発量推定値がインクカートリッジ2の記録部22にこのように記録される処理が本発明の「出力処理」に相当する。また、蒸発量推定値が本発明の「出力値」に相当する。
【0021】
時刻記録部35は、定期的に(例えば、数日ごと、1日ごと、数時間ごと、1時間ごと等)時刻取得部32が取得した現在時刻をインクカートリッジ2の記録部22に記録する。この記録内容は、後述の通り、再生工場において使用済みのインクカートリッジ2の品質評価に使用される。
【0022】
以下、評価値の取得及び積算の詳細について図3図5に基づいて説明する。評価値の取得は、図3に示すように、インクカートリッジ2がプリンタ1に装着される前の期間A(本発明の「第1の期間」に相当する)と、インクカートリッジ2がプリンタ1に装着されている期間B(本発明の「第2の期間」に相当する)とのそれぞれで行われる。そして、期間Aにおける評価値に期間Bにおける評価値が積算されていく。
【0023】
期間Aについては以下の通りである。期間Aは、インクカートリッジ2の製造日から、インクカートリッジ2がプリンタ1に装着されるまでの期間である。評価値取得部33は、インクカートリッジ2がプリンタ1に装着された時点で、インクカートリッジ2の記録部22に記録された製造年月日を読み出す。また、時刻取得部32は、インクカートリッジ2がプリンタ1に装着された時刻を取得する。そして、評価値取得部33は、記録部22から読み出した製造年月日と時刻取得部32の取得結果とに基づいて、期間Aの長さに所定値(固定値)を乗算した値を期間Aの評価値として取得する。
【0024】
期間Aではインクカートリッジ2に対して適切な包装や保管がなされていることにより、後述の期間Bの場合と比べて大きな変動が生じにくい。このため、上記所定値が固定値とされていても評価値が適切に取得される。また、上記所定値は比較的小さい値に設定されている。例えば、係数記憶部31が記憶している係数が温度変化に対してカバーする値域のうち比較的低い領域の値に設定されていてもよいし、上記値域の下限値より小さい値に設定されていてもよい。これは、期間Aでは上記同様の事情により、期間Bと比べてインクの品質劣化が生じにくいからである。なお、期間Aの長さは本発明の「経過時間」に相当し、評価値取得部33がこれを取得する処理は本発明の「経過時間取得処理」に相当する。
【0025】
評価値取得部33が取得した期間Aの評価値は、インクカートリッジ2の記録部22に蒸発量推定値の初期値として記録される。
【0026】
期間Bについては以下の通りである。期間Bは、インクカートリッジ2がプリンタ1に装着されてから使用済みのインクカートリッジ2が交換のためにプリンタ1から取り外されるまでの期間である。評価値は、図4に示す第1の方法及び図5に示す第2の方法のいずれかを用いて取得される。
【0027】
第1の方法は、定期的に評価値を取得する方法である。まず、評価値取得部33は、あらかじめ設定された時刻(例えば、6:00、12:00、18:00及び24:00)に到達するまで待機する(S1、NO→S1)。設定された時刻に到達したと判定した場合には(S1、YES)、評価値取得部33は、温度検出部20による検出温度を取得する(S2)。次に、評価値取得部33は、S2で取得した温度に基づいて係数記憶部31に記憶された係数を取得する(S3)。次に、評価値取得部33は、S3で取得した係数に、設定された時刻間の経過時間(上記の例では6時間)を乗算することで評価値を取得する(S4)。そして、評価値積算部34は、S4で取得された評価値をインクカートリッジ2の記録部22の蒸発量推定値に積算する(S5)。以上の処理が、期間Bが終了するまで繰り返され(S6、NO→S1)、期間Bが終了する(つまり、インクカートリッジ2がプリンタ1から取り外される)と、一連の処理が終了する(S6、YES)。なお、評価値取得部33が経過時間を取得するS2の処理は本発明の「経過時間取得処理」に相当する。
【0028】
第2の方法は、所定の温度変化ごとに評価値を取得する方法である。まず、評価値取得部33は、インクカートリッジ2の装着時に、温度検出部20の検出結果が示す温度に基づいて基準温度領域を設定する(S11)。基準温度領域は、係数記憶部31に記憶された温度領域と対応している。例えば、図2に示す温度領域に基づき、インクカートリッジ2の装着時の温度t0がT2~T3の温度領域内の値に相当する場合、基準温度領域がT2~T3に設定される。
【0029】
次に、評価値取得部33は、温度検出部20による検出温度を取得する(S12)。次に、評価値取得部33は、S12で取得された温度が基準温度領域を逸脱したか否かを判定する(S13)。S12で取得された温度が基準温度領域を超えていないと判定すると(S13、NO)、S12の処理が実行される。S12で取得された温度が基準温度領域を逸脱したと判定すると(S13、YES)、評価値取得部33は、時刻取得部32が取得した時刻に基づき、基準となる時刻からの経過時間を取得する(S14)。ここで、基準となる時刻は、初期値としてはインクカートリッジ2の装着時の時刻に設定され、S13の判定においてS12の温度が基準温度領域を逸脱したと判定された場合にはそのときの時刻に更新される。これにより、S14においては、S12の温度が基準温度領域を前回逸脱した時刻からの経過時間が取得される。なお、評価値取得部33が経過時間を取得するS14の処理は本発明の「経過時間取得処理」に相当する。
【0030】
次に、評価値取得部33は、基準温度領域に関連付けて係数記憶部31に記憶された係数を取得する(S15)。図2の例によると、領域T2~T3に関連付けられたa2、b2、c2、d2、e2、f2、g2及びh2が取得される。
【0031】
次に、評価値取得部33は、基準温度領域を更新する(S16)。具体的には、S12で取得された温度が現在の基準温度領域の下限値を下回った場合、基準温度領域が1つ下の領域に更新される。一方、S12で取得された温度が現在の基準温度領域の上限値を超えた場合、基準温度領域が1つ上の領域に更新される。図2の例によると、S12で取得された温度t1が下限値T2を下回った場合、基準温度領域がT1~T2に更新される。温度t1が上限値T3を超えた場合、基準温度領域がT3~T4に更新される。
【0032】
次に、評価値取得部33は、S15で取得した係数にS14で取得した経過時間を乗算することにより、その乗算結果を評価値として取得する(S17)。そして、評価値積算部34は、S17で取得された評価値をインクカートリッジ2の記録部22の蒸発量推定値に積算する(S19)。以上の処理が、期間Bが終了するまで繰り返され(S19、NO→S12)、期間Bが終了する(つまり、インクカートリッジ2がプリンタ1から取り外される)と、一連の処理が終了する(S19、YES)。
【0033】
さらに、使用済みのインクカートリッジ2が再生工場に回収された場合には、評価装置5(図1参照)が、図3に示す期間Cについてのインクカートリッジ2内のインクに生じた品質劣化を評価する。期間Cは、使用済みのインクカートリッジ2がプリンタ1から取り外されてから評価装置5が評価を行うまでの期間である。評価装置5は、CPU、ROM、RAM等のハードウェアとROM及びRAMに格納されたソフトウェアであるプログラムデータその他のデータとを有している。CPUがソフトウェアに従って各種の処理を実行することで図6に示す処理を実行する。
【0034】
図6に示すように、評価装置5は、記録部22に記録された値を読み出す(S31)。次に、評価装置5は、記録部22から読み出した時刻及び評価時点の時刻に基づいて期間Cの長さを取得する(S32)。記録部22に記録された時刻は、プリンタ1において、インクカートリッジ2が取り外された時点の少し前に更新されている。このため、この時刻は、概ね、インクカートリッジ2が取り外された時点とみなすことができる。なお、期間Cの長さは本発明の「前記カートリッジが前記画像形成装置から取り外されてからの経過時間」に相当し、評価装置5がこれを取得する処理は本発明の「経過時間取得処理」に相当する。
【0035】
次に、評価装置5は、S32で取得した長さに所定値(固定値)を乗算した値を期間Cの評価値として取得すると共に、取得した評価値と記録部22から読み出した蒸発量推定値とを合計したものを全蒸発量推定値として取得する(S33)。ここでの所定値は、期間Aの評価値を取得するために使用された所定値と比べて大きい値に設定されている。これは、期間Cにおけるインクカートリッジ2の周辺環境が、期間Aにおける周辺環境と比べ、適切な包装や保管がなされていないことによりインクの品質が劣化しやすい環境であることが反映されている。
【0036】
そして、評価装置5は、S33で取得した全蒸発量推定値に基づいてインクカートリッジ2が再生可能であるか否かを判定する(S34)。例えば、全蒸発量推定値が所定の閾値以下である場合に再生可能であると判定され、全蒸発量推定値が所定の閾値を超える場合に再生不可能であると判定される。
【0037】
以上説明した本実施形態によると、各期間の周辺環境に応じた評価値が取得される。評価値は、各期間におけるインク中の液体の蒸発量を示す。インク中の液体が蒸発することは、インクの品質が劣化することに対応する。このため、評価値は、インクの品質の度合いを適切に示すことになる。
【0038】
本実施形態に係る評価値は、以下の2つの観点で、周辺環境が異なる2つの期間のそれぞれにおいて取得されることになる。そして、2つの期間の評価値が反映された蒸発量推定値がインクカートリッジ2に記録される。
【0039】
第1の観点においては、インクカートリッジ2がプリンタ1に装着される前後の期間において周辺環境が変動する。これに基づき、プリンタ1に装着される前の期間Aにおいては経過時間に固定値を乗算することで評価値が取得され、プリンタ1に装着されている期間Bにおいては温度に応じた係数に経過時間を乗算することで評価値が取得される。そして、期間Aの評価値に期間Bの評価値が積算された値が、インクカートリッジ2の記録部22に蒸発量推定値として記録される。
【0040】
第2の観点においては、期間B内の互いに別の期間において周辺環境としての温度が互いに異なることになる。これに基づき、それぞれの期間の温度に応じた係数に経過時間を乗算することで各期間の評価値が取得される。そして、取得された各期間の評価値が、インクカートリッジ2の記録部22に蒸発量推定値として積算される。
【0041】
したがって、上記のように算出された蒸発量推定値に基づくと、プリンタ1から取り外されて回収されたインクカートリッジ2内のインクの品質を、周辺環境が変動する状況を考慮しつつ適切に評価することができる。
【0042】
また、インク中の液体の蒸発量はその周辺環境の温度から大きく影響を受ける。期間Bについては、上記第1及び第2の方法に示す通り、随時変動する温度を所定の期間ごとに反映した評価値が、インクカートリッジ2の記録部22の蒸発推定値に積算されていく。したがって、このような蒸発推定値に基づくと、期間Aと比べて周辺環境が大きく変動すると想定される期間Bの状況に適切に追随した評価が可能となる。
【0043】
また、上記第2の方法によると、温度に所定の変動が生じるごとに取得された評価値が積算される。したがって、必要なタイミングで取得された評価値が積算されていくので、積算の処理に無駄が生じにくい。
【0044】
また、上述の実施形態においては、インクカートリッジ2の記録部22に定期的に現在時刻が記録される。これにより、インクカートリッジ2が交換された時点が再生工場において取得可能となる。そして、この時刻に基づき、評価装置において期間Cの評価値を考慮した全蒸発量推定値が取得される。この全蒸発量推定値に基づいて再生可否の判定がなされるので、インクカートリッジ2が製造されてから再生工場に回収されるまでの全期間に亘るインクの劣化状況が適切に評価可能である。
【0045】
なお、プリンタ1において取得された評価値は、上記の通り、インクカートリッジ2の記録部22において蒸発量推定値として積算される。このような構成の代わりに、又は加えて、図1の二点鎖線に示すようにプリンタ1から外部サーバ900に各評価値が送信され、外部サーバ900において各評価値が蒸発量推定値として積算されてもよい。この場合、プリンタ1から外部サーバ900への評価値の送信処理が本発明の「出力処理」に相当する。そして、送信される各評価値が本発明の「出力値」に相当する。外部サーバ900において積算された蒸発量推定値及びプリンタ1から外部サーバ900に評価値が最後に送信された時刻(≒インクカートリッジ2の交換時点)は評価装置5に送信される。これらの値は、上記同様、評価装置5における評価に用いられる。外部サーバ900における蒸発量推定値と回収されたインクカートリッジ2との関連付けは、例えば、外部サーバ900において識別情報(例えば、プリンタ1のユーザアカウントID)が蒸発量推定値と関連付けられていると共に、プリンタ1がインクカートリッジ2の記録部22にその識別情報を記録することによりなされる。
【0046】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0047】
例えば、上述の実施形態では、評価値が主に温度に応じた係数を用いて取得されている。これに対し、温度に加えて、又は代えて、インクの品質の変動度合いに関連するその他の環境要因(湿度、気圧等)に応じて評価値が取得されてもよい。
【0048】
また、上述の実施形態では、期間A~Cに関する評価値全てを積算した全蒸発量推定値に基づいて再生可能であるか否かの判定がなされている。これに対し、周辺環境が異なる少なくとも2つの期間の評価値のみに基づく評価がなされてもよい。例えば、A及びCの評価値のみに基づく評価がなされてもよい。また、期間B内の2つ以上の期間において取得された評価値のみに基づく評価がなされてもよい。さらに、期間B内の少なくともいずれか1つの期間において取得された評価値及び期間Cの評価値のみに基づく評価がなされてもよい。
【0049】
また、上述の実施形態では、温度と蒸発の度合いとの関係を表す一例として図2に示す表が用いられている。これに代えて以下のような構成が採用されてもよい。この構成においては、図7に示すように、蒸発量の推定値が経過時間に比例するものとされ、その比例定数として、高温領域、常温領域及び低温領域の3つに応じた3つの値が設定される。ここで、低温領域は温度がTa未満となる領域、常温領域は温度がTa~Tb(Ta<Tb)の範囲内となる領域、高温領域は温度がTbを超える領域である。そして、温度検出部20の検出結果が示す温度に応じ、3つの値からいずれかが比例定数として選択される。ある期間の蒸発量の推定値は、選択された比例定数を期間の長さ(経過時間)に乗算することで算出される。
【0050】
加えて、上述の各実施形態においては、プリンタ1に対して本発明を適用する場合について説明したが、これには限定されない。本発明は、ヘッドからインクを吐出するインクジェット式のその他の画像形成装置、例えば、複合機やコピー機等又はこれらの画像形成装置を有するシステムに適用されてもよい。また、インクジェット方式でインクを印刷用紙に付着させる代わりに、トナー(本発明の「着色剤」に相当する)を印刷用紙に付着させることで画像記録処理を実行するレーザー式の画像形成装置に適用されてもよい。この場合、画像形成装置にはトナーを収容するトナーカートリッジが着脱可能に装着される。
【符号の説明】
【0051】
1 プリンタ
2 インクカートリッジ
5 評価装置
10 画像形成部
20 温度検出部
22 記録部
30 制御部
31 係数記憶部
32 時刻取得部
33 評価値取得部
34 評価値積算部
35 時刻記録部
100 プリンタシステム
900 外部サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7