(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148305
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20241010BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B41J2/165 209
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061333
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】中野 靖大
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】大橋 雅司
(72)【発明者】
【氏名】次村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中村 直行
(72)【発明者】
【氏名】疇地 悠
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB13
2C056EB30
2C056EB38
2C056EB45
2C056EB58
2C056EC26
2C056JA06
2C056JA13
2C056JC06
2C056JC20
2C056JC23
2C056JC25
(57)【要約】
【課題】画像形成のために用いる液体の乾燥抑制の処理としてユーザにとって直接的に有益な処理を行う。
【解決手段】用紙に対してインクを吐出するヘッド13と、温度検出部31と、制御部50とが設置されている。制御部50は、温度検出部31が取得した温度が、ヘッド13においてインクの乾燥が進んでいることを示した場合に、ユーザにとって有益な情報を表示する画像である有益画像を用紙上に形成するようにヘッド13にインクを用紙へと吐出させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して液体を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドにおける液体の乾燥状況を把握するための情報を取得する乾燥状況取得部と、
制御部とを備えており、
前記制御部は、
ユーザから提供された画像データが示す画像を形成するように前記吐出ヘッドに液体を吐出させる第1吐出処理と、
前記乾燥状況取得部が取得した前記情報が、前記吐出ヘッドにおいて液体の乾燥が進んでいることを示した場合に、ユーザにとって有益な情報を表示する画像である有益情報画像を媒体上に形成するように前記吐出ヘッドに液体を媒体へと吐出させる第2吐出処理とを実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記乾燥状況取得部が取得した前記情報が前記吐出ヘッドからの液体の吐出頻度を示すことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記乾燥状況取得部が取得した前記情報が、前記吐出ヘッドが液体を前回吐出してからの経過時間を示すことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記乾燥状況取得部が取得した前記情報が使用環境の温度を示すことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記有益な情報が、外部から提供される広告又は販促の情報であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
ユーザからの承認を受け付ける承認受付部と、
媒体に対して液体を吐出する第1状態と媒体以外の領域に対して液体を吐出する第2状態とを前記吐出ヘッドに選択的に取らせる吐出状態切替部とをさらに備えており、
前記制御部は、
前記承認受付部がユーザからの承認を受け付けた場合には、前記吐出ヘッドを前記第1状態にするように前記吐出状態切替部を制御しつつ前記第2吐出処理を実行し、前記承認受付部が承認を受け付けていない場合には、前記吐出ヘッドを前記第2状態にするように前記吐出状態切替部を制御しつつ前記吐出ヘッドから液体を排出させる排出処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記承認受付部が、前記吐出ヘッドの乾燥が進んでいることを示す前に前記承認を受け付けることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記承認受付部が、前記吐出ヘッドの乾燥が進んでいることを示した際に前記承認を受け付けることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記乾燥状況取得部が取得した前記情報が、前記吐出ヘッドの乾燥が進んでいることを示した場合に、前記吐出ヘッドの乾燥の程度を評価すると共に、その評価結果が示す前記吐出ヘッドの乾燥の程度に応じて前記吐出ヘッドからの液体の吐出量を調整しつつ前記第2吐出処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
液体を吐出する複数のノズルが前記吐出ヘッドに形成されており、
前記乾燥状況取得部が取得する前記情報が、前記複数のノズルにおいて他の部分より乾燥が進んでいる部分を把握可能であるような情報であり、
前記制御部が、前記第2吐出処理の実行に当たり、前記乾燥状況取得部が取得した前記情報に基づいて、前記複数のノズルにおいて他の部分より乾燥が進んでいる部分に対し、他の部分と比べて前記吐出ヘッドからの液体の吐出量を多くすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
互いに異なる色の液体を吐出する複数のノズルが前記吐出ヘッドに形成されており、
前記乾燥状況取得部が取得する前記情報が、前記複数のノズルに均一に乾燥が進んでいることを把握可能であるような情報であり、
前記制御部が、前記乾燥状況取得部が取得した前記情報に基づいて前記複数のノズルに均一に乾燥が進んでいることを把握した場合に、前記第2吐出処理の実行に当たり、モノクロームの前記有益情報画像が媒体上に形成されるように前記複数のノズルのいずれからも液体を吐出させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項12】
媒体の種類に関するユーザによる指示を取得する指示取得部と、
媒体に対して液体を吐出する第1状態と媒体以外の領域に対して液体を吐出する第2状態とを前記吐出ヘッドに選択的に取らせる吐出状態切替部とをさらに備えており、
前記制御部は、
前記指示取得部が取得した前記指示の内容に応じて、前記吐出ヘッドを前記第1状態にするように前記吐出状態切替部を制御しつつ前記第2吐出処理を実行することと、前記吐出ヘッドを前記第2状態にするように前記吐出状態切替部を制御しつつ前記吐出ヘッドから液体を排出させる排出処理を実行することとからいずれかを選択することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項13】
媒体を収容する複数の媒体収容部と、
前記複数の媒体収容部から選択的に前記吐出ヘッドに媒体を供給する媒体供給部と、
前記複数の媒体収容部の優先順位を記憶する記憶部とをさらに備えており、
前記制御部は、前記第2吐出処理の実行に当たり、前記複数の媒体収容部に収容された媒体から、前記記憶部が記憶する前記優先順位が高いものを優先的に選択させつつ前記吐出ヘッドに媒体を供給するように前記媒体供給部を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に対して液体を吐出することで媒体上に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、媒体に対して液体を吐出することで媒体上に画像を形成する画像形成装置がある。このような装置において、液体の乾燥により液体が適切に吐出されなくなる事態を抑制するため、フラッシングやパージ等のメンテナンス処理を行うものがある。特許文献1の装置はその一例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フラッシングやパージ等のメンテナンス処理は液体の消費を伴う。これは、液体の乾燥抑制を目的とする処理であるとはいえ、ユーザにとっては、液体を消費することの本来の目的である画像形成に直接には繋がらない処理である。このため、ユーザの利便性の向上には、乾燥抑制のための処理であるといえども、ユーザにとって直接的に有益な処理となることが求められている。
【0005】
本発明の目的は、画像形成のために用いる液体の乾燥抑制の処理としてユーザにとって直接的に有益な処理を行う画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成装置は、媒体に対して液体を吐出する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドにおける液体の乾燥状況を把握するための情報を取得する乾燥状況取得部と、制御部とを備えており、前記制御部は、ユーザから提供された画像データが示す画像を形成するように前記吐出ヘッドに液体を吐出させる第1吐出処理と、前記乾燥状況取得部が取得した前記情報が、前記吐出ヘッドにおいて液体の乾燥が進んでいることを示した場合に、ユーザにとって有益な情報を表示する画像である有益情報画像を媒体上に形成するように前記吐出ヘッドに液体を媒体へと吐出させる第2吐出処理とを実行する。
【0007】
なお、「吐出ヘッドにおいて液体の乾燥が進んでいること」には、情報の取得時点で既に乾燥した状態にあることと、情報の取得時点では乾燥した状態にないが乾燥のスピードが速いこととのいずれも該当する。
【発明の効果】
【0008】
ユーザから提供された画像データに基づく第1吐出処理とは別に、液体の乾燥抑制を目的とした第2吐出処理が実行される。この第2吐出処理では、ユーザにとって有益な情報を表示する有益情報画像が媒体上に形成される。このため、液体の乾燥抑制の処理でありつつ、ユーザにとって直接的に有益な処理が実行される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態である第1の実施形態に係るプリンタの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1のプリンタが備えるヘッドの底面図である。
【
図3】
図1のヘッドの位置とメンテナンス部との関係を示す概要構成図である。
【
図4】
図1のプリンタの制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】本発明の別の一実施形態である第2の実施形態に係るプリンタの構成を示すブロック図である。
【
図6】
図5のプリンタの制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
本発明の好適な一実施形態である第1の実施形態に係るプリンタ1について
図1~
図4を参照しつつ、以下に説明する。
【0011】
プリンタ1(本発明の「画像形成装置」に相当する)は、
図1に示すように、画像形成部10、温度検出部31、タッチパネルディスプレイ32、メンテナンス部40及び制御部50を有している。
【0012】
画像形成部10は、印刷用紙を収容した用紙収容部11、用紙収容部11内の用紙を供給する用紙供給部12、インクを吐出するヘッド13、ヘッド13にインクを供給するインク供給部14及びヘッド13を移動させるヘッド移動部15を有している。ヘッド13(本発明の「吐出ヘッド」に相当する)の下面にはインクを吐出する複数のノズル13aが開口している(
図2参照)。各ノズル13aは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの4色のインクのうちいずれかを吐出する。インク供給部14は、上記4色のインクをヘッド13へと供給する。ヘッド移動部15は、用紙供給部12から供給された用紙に対してインクを吐出する画像形成位置と、メンテナンス部40による後述のメンテナンス処理を受けるメンテナンス位置との間でヘッド13を移動させる(
図3参照)。ヘッド13は、画像形成位置において、制御部50の制御により、画像データが示すカラー画像又はモノクロ画像を用紙上に形成するように4色のインクを用紙に対して吐出する。
【0013】
温度検出部31は、プリンタ1の使用環境の温度を検出するセンサーである。温度検出部31の検出結果は制御部50に出力される。
【0014】
タッチパネルディスプレイ32(本発明の「承認受付部」に相当する)は、文字や画像等を画面に表示する。また、タッチパネルディスプレイ32は、画面に指等が接触するとその接触位置を検出し、その検出結果を制御部50に出力する。これにより、タッチパネルディスプレイ32は、各種のユーザ入力、例えば、後述のユーザからの承認の入力を受け付けることが可能である。
【0015】
メンテナンス部40は、
図3に示すメンテナンス位置にあるヘッド13に対してメンテナンス処理を施す部分である。メンテナンス部40は、ヘッド13の下面の一部を覆うキャップ41と、キャップ41を昇降させる昇降部42と、ポンプ43を通じて昇降部42と接続された廃液タンク44とを有している。キャップ41はメンテナンス位置の下方に配置されている。昇降部42がメンテナンス位置にあるヘッド13に向けてキャップ41を上昇させると、キャップ41の上端がヘッド13の下面に密着する。これにより、キャップ41が平面視においてヘッド13の下面におけるノズル13aが開口した領域(
図2の二点鎖線の領域)を覆う。昇降部42内にはポンプ43と接続した空気の通路が形成されている。昇降部42の上面にはこの通路の開口42a(
図2参照)が開口している。
【0016】
ヘッド13に対するメンテナンス処理(本発明の「排出処理」に相当する)は以下の通りである。ヘッド13の下面にキャップ41が密着した状態でポンプ43が作動すると、昇降部42内の空気の通路及び開口42aを通じ、キャップ41内の空間がポンプ43により吸引される。これにより、ヘッド13内のインクがノズル13aからキャップ41内の空間へと排出され、さらに、開口42aから昇降部42内の通路及びポンプ43を通じて廃液タンク44へと排出される。
【0017】
なお、ヘッド13が画像形成位置にあって用紙へとインクを吐出可能な状態は本発明の「第1状態」に相当する。ヘッド13がメンテナンス位置にあってキャップ41へとインクを吐出可能な状態は本発明の「第2状態」に相当する。ヘッド13をこれらの状態間で切り替えるように移動させるヘッド移動部15は本発明の「吐出状態切替部」に相当する。
【0018】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアを備えている。ROMには、CPU及びASICが実行するプログラムデータ等が格納されている。RAMは、外部のPC等から取得した画像データを記憶したり、CPUがプログラムを実行する際に用いるデータを記憶したりする。ハードウェアであるCPUは、ROM及びRAMに格納されたソフトウェアであるプログラムデータその他のデータに従って、画像形成部10、タッチパネルディスプレイ32及びメンテナンス部40の動作を制御する処理等、各種の処理を実行する。
【0019】
例えば、制御部50は、ユーザが所持するPC等から送信されたり記録媒体から取得されたりした画像データが示す画像を用紙上に形成するように画像形成部10を制御する。この制御においてヘッド13に用紙へとインクを吐出させる処理は、本発明の「第1吐出処理」に相当する。また、このようにユーザから提供される画像データが本発明の「ユーザから提供された画像データ」に相当する。
【0020】
ところで、画像データに基づくヘッド13からのインク吐出の頻度が低いと、ヘッド13におけるインクの乾燥が進行しやすい。この場合、メンテナンス部40によるメンテナンス処理がヘッド13に施されることにより、乾燥が進んだインクがヘッド13から排出される。しかしながら、メンテナンス処理はインクの乾燥抑制を目的とする処理であるとはいえ、ユーザにとっては、インクを消費することの本来の目的である画像形成に直接には繋がらない処理である。
【0021】
そこで、本実施形態においては、ユーザの利便性の向上のため、インクの乾燥抑制処理がユーザにとって直接的に有益な処理となるように以下の通りに構成されている。
【0022】
制御部50は、温度検出部31の検出結果等に基づき、ヘッド13のインクの乾燥が進んでいると判定した場合に、ユーザにとって有益な情報を表示する画像(以下、「有益画像」とする)を用紙上に形成するように画像形成部10を制御する。この制御においてヘッド13に用紙へとインクを吐出させる処理は、本発明の「第2吐出処理」に相当する。
【0023】
一例として、制御部50は、インターネット等の通信ネットワークNを通じてプリンタ1と通信可能に接続された外部サーバ90(
図1参照)から有益画像を示す画像データを取得する。この有益画像は、各種商品・サービスにおける広告情報やクーポン等の販促情報を示す文字やイラスト等から構成されている。また、有益画像がプリンタ1の使用レポートを示す画像であってもよい。使用レポートには、例えば、画像形成を行った用紙の全枚数や通信履歴等が含まれていてもよい。
【0024】
以下、本実施形態に係るインクの乾燥抑制処理の一具体例について
図4を参照しつつ説明する。まず、制御部50が乾燥抑制処理に係る初期設定を行う(S1)。初期設定の処理は、例えば、タッチパネルディスプレイ32を通じたユーザ入力により後述の乾燥抑制処理のための画像形成を実行する時間等を設定する処理である。
【0025】
次に、制御部50は、ヘッド13のインクの乾燥状況を示す情報を取得する(S2)。ヘッド13の乾燥状況を示す情報の一例は、温度検出部31の検出結果が示す温度である。この場合、温度検出部31及び制御部50が本発明の「乾燥状況取得部」に相当する。温度が高いことはインクの乾燥が進みやすいことを示す。
【0026】
他の一例は、ヘッド13からのインクの吐出頻度である。吐出頻度は、例えば、画像データに基づく画像を形成するようにヘッド13の各ノズル13aからインクを吐出させる際に、制御部50がノズル13aごとにインクの吐出回数を所定期間において計数することで取得される。この場合、制御部50が本発明の「乾燥状況取得部」に相当する。吐出頻度が低いことはインクの乾燥が進みやすいことを示す。
【0027】
さらに他の一例は、ヘッド13が前回インクを吐出してからの経過時間である。経過時間は、例えば、制御部50がヘッド13にいずれかのノズル13aからインクを吐出させた直近の時刻を保持しており、その直近の時刻から現在の時刻までの時間として取得される。この場合、制御部50が本発明の「乾燥状況取得部」に相当する。経過時間が長いことはインクの乾燥が進みやすいことを示す。なお、上記経過時間と併せて、各ノズル13aに関する個別の経過時間が取得されてもよい。例えば、いずれか1つのノズル13aに関し、そのノズル13aの直近の吐出時刻から現在までの時間が個別の経過時間として取得されてもよい。
【0028】
本実施形態では、ノズル13aごとにインクの乾燥状況を示す情報が取得される。上記の例でいえば、吐出頻度を示す情報がこれに該当する。また、個別の経過時間が取得される場合には、その情報もノズル13aごとのインクの乾燥状況を示す情報に該当する。
【0029】
次に、制御部50は、S2で取得された乾燥状況を示す情報に基づいてヘッド13のインクの乾燥状況を判定する(S3)。この判定は、(i)乾燥が進んでいない、(ii)乾燥が進んでいる及び(iii)乾燥が強く進んでいるの3段階でなされる。例えば、温度検出部31の検出結果が示す温度tを基準値t1及びt2(t1<t2)とそれぞれ比較し、t<t1のときに上記段階(i)と、t1≦t≦t2のときに上記段階(ii)と、t2<tのときに上記段階(iii)とそれぞれ判定する。または、上記吐出頻度rを基準値r1及びr2(r1<r2)とそれぞれ比較し、r2<rのときに上記段階(i)と、r1≦r≦r2のときに上記段階(ii)と、r<r1のときに上記段階(iii)とそれぞれ判定する。あるいは、上記経過時間τを基準値τ1及びτ2(τ1<τ2)とそれぞれ比較し、τ<τ1のときに上記段階(i)と、τ1≦τ≦τ2のときに上記段階(ii)と、τ2<τのときに上記段階(iii)とそれぞれ判定する。
【0030】
なお、S3の判定に当たって、インクの乾燥の進行度も併せて評価されることが好ましい。この処理では、例えば、温度tが高いほどインクの乾燥の進行度が高い旨の評価がなされる。同様に、インクの吐出頻度が低いほど、又は経過時間が長いほどインクの乾燥の進行度が高い旨の評価がなされる。
【0031】
インクの乾燥状況が段階(i)~(iii)のいずれであるかに応じ、制御部50はS2、S4及びS9のそれぞれを実行する(S3、(i)~(iii))。S4において、制御部50は、有益画像の用紙への形成を承認するユーザ入力を受け付ける承認入力画面をタッチパネルディスプレイ32に表示させる(S4)。次に、制御部50は、承認が入力されたか否かを判定し(S5)、承認が入力されていないと判定すると(S5、NO)、S4の画面表示から所定時間が経過したか否かを判定する(S6)。所定時間が経過していないと判定すると(S6、NO)、制御部50はS5の処理を実行する。所定時間が経過したと判定すると(S6、YES)、制御部50はメンテナンス処理を実行する(S9)。そして、S2からの処理が実行される。
【0032】
S5において、承認が入力されたと判定すると(S5、YES)、制御部50は、有益画像(カラー画像)を示す画像データを外部サーバ90から取得する(S7)。次に、制御部50は、S2で取得した情報に基づき、ノズル13aにおいて乾燥が均一に進んでいるか否かを判定する(S8)。例えば、全ノズル13aに関して吐出頻度が基準値より低い場合や全ノズル13aに関して経過時間が基準値より大きい場合、ノズル13aにおいて乾燥が均一に進んでいると判定される。ノズル13aにおいて乾燥が均一に進んでいると判定すると(S8、YES)、制御部50は、S7で取得した画像データが示す画像を、各画素について4色の全てのインクを均一に吐出することで諧調表現付きの白黒のモノクローム画像として用紙上に形成するように画像形成部10を制御する(S10)。そして、S2からの処理が実行される。
【0033】
S8において、各ノズル13aの乾燥が均一に進んでいないと判定すると(S8、NO)、制御部50は、S2で取得された情報に基づき、全てのノズル13aのうち、乾燥が進んでいるノズル13aのみからインクを吐出させることで、S7で取得した画像データが示すカラー画像を用紙上に形成するように画像形成部10を制御する(S11)。例えば、
図2の一点鎖線で囲まれたノズル13aにおいて乾燥が進んでおり、これに比べてその他のノズル13aでは乾燥が進んでいない場合には、
図2の一点鎖線で囲まれたノズル13aのみからインクが吐出されることでカラー画像が用紙上に形成される。そして、S2からの処理が実行される。
【0034】
S10及びS11の画像形成に当たっては、S3で乾燥の進行度が評価されている場合に、その評価結果に応じたインクの吐出量となるようにヘッド13が制御されることが好ましい。例えば、乾燥の進行度が比較的低い場合には用紙上に形成される画像の濃度が全体的に低くなるように画像形成がなされる一方で、乾燥の進行度が比較的高い場合には用紙上に形成される画像の濃度が全体的に高くなるように画像形成がなされる。これによると、インクの乾燥の進み方に応じてインクの吐出量が調整されるので、インクが無駄に消費されにくい。
【0035】
以上説明した本実施形態によると、ヘッド13におけるインクの乾燥抑制を目的とした画像形成として、ユーザにとって有益な情報を表示する有益画像が用紙上に形成される。このため、インクの乾燥抑制の処理でありつつ、ユーザにとって直接的に有益な処理が実行される。
【0036】
なお、「吐出ヘッドにおいて液体の乾燥が進んでいること」には、情報の取得時点で既に乾燥した状態にある場合と、情報の取得時点では乾燥した状態にないが乾燥のスピードが速い場合とのいずれも該当する。前者の場合は、例えば、前回のインク吐出からの経過時間が長く、実際にインクが乾燥した状態に至っている場合に該当する。後者の場合は、例えば、温度が高かったり吐出頻度が低かったりすることでインクの乾燥が速く進み、そのままの状態が続くと短期間でインクが乾燥する場合に該当する。いずれの場合においても、上記の通り、インクの吐出頻度、温度及び経過時間を示す情報に基づくことで、インクの乾燥が進んでいるか否かが適切に把握される。
【0037】
また、上述の実施形態においては、
図4の処理に示す通り、ユーザの承認がある場合に限り用紙への有益画像の形成が実行される。このため、用紙の消費を伴う画像形成がユーザの意図に沿わずに実行されることが回避される。また、ユーザの承認がない場合にはメンテナンス処理によりインクの乾燥が適切に抑制される。さらに、ユーザから承認を得るのは、
図4のS5の段階、つまり、インクの乾燥が進んでいることが判明したS3より後の段階である。したがって、何らかの対処が必要となった時点で承認の受け付けがなされるので、処理が必要となった時点のユーザの意図が直接反映される。
【0038】
なお、インクの乾燥が進んでいることが判明するS3より前、例えば、S1の初期設定の段階でユーザからの承認が取得されてもよい。これによると、インクの乾燥への対処が必要となる時点に先立って承認の受け付けがなされるので、遅滞なく必要な処理(有益画像の形成やメンテナンス処理)が実行されやすい。
【0039】
また、上述の実施形態においては、インクの乾燥がノズル13a間で均一に進んでいる場合に、各画素について4色の全てのインクを均一に吐出することで諧調表現付きの白黒のモノクローム画像が用紙上に形成される。このように、4色のノズル13aから一斉にインクが吐出されることで、ノズル13a間で均一に乾燥が進んでいる場合に効率よく乾燥抑制の処理が行われる。
【0040】
[第2の実施形態]
以下、本発明の別の一実施形態である第2の実施形態に係るプリンタ100について説明する。第2の実施形態に係るプリンタ100は第1の実施形態に係るプリンタ1と共通の構成を多く有している。このため、そのような共通の構成については上記と同様の符号を用いることとし、その説明を適宜省略する。以下においては、第2の実施形態における第1の実施形態と異なる点について主に説明する。
【0041】
図5に示すように、プリンタ100は、上記画像形成部10の代わりに画像形成部110を有している。画像形成部110は、上記用紙収容部11及び用紙供給部12の代わりに第1用紙収容部111A及び第2用紙収容部111B並びに用紙供給部112を有している。第1用紙収容部111A及び第2用紙収容部111Bは、互いに異なる種類の用紙A及び用紙Bをそれぞれ収容可能である。用紙A及びBは互いにサイズや材質、表面加工法等が異なる。第1用紙収容部111Aに用紙Aが、第2用紙収容部111Bに用紙Bがそれぞれ収容されている場合には、用紙供給部112は、第1用紙収容部111A及び第2用紙収容部111Bのいずれかから用紙A及びBのいずれかを選択的にヘッド13に供給する。第1用紙収容部111A及び第2用紙収容部111Bのいずれか一方のみに用紙A及びBのいずれか一方のみが収容されている場合には、用紙供給部112は、その用紙A及びBのいずれか一方のみをヘッド13へと供給する。
【0042】
また、プリンタ100は、上記制御部50の代わりに制御部150を有している。制御部150は、CPU、ROM、RAM、ASIC等のハードウェアを備えている。ハードウェアであるCPUと、ROM及びRAMに格納されたソフトウェアであるプログラムデータその他のデータとの協働により制御部150の機能が実現している。
【0043】
制御部150は、用紙の種類と有益画像の形成との関係を示すデータを保持している。具体的には、画像形成の優先順位及び可否を用紙の種類と関連付ける表1に一例を示すようなテーブルデータを保持している。表1の例では、用紙の種類として普通紙、上質紙、再生紙及び光沢紙があり、普通紙、上質紙及び再生紙は有益画像の形成が可能であるが、光沢紙は有益画像の形成が可能でない。また、表1の優先順位の数値は、小さいものほど優先順位が高いことを示す。つまり、普通紙、上質紙及び再生紙の順に優先順位が設定され、前者ほど優先順位が高い。
【0044】
【0045】
制御部150は、用紙への有益画像の形成に当たって
図6に示す処理を実行する。まず、制御部150は、第1用紙収容部111A及び第2用紙収容部111Bに収容された用紙A及びBのそれぞれがどの種類の用紙であるかを取得する(S21)。これは、タッチパネルディスプレイ32(
図5参照)が受け付けたユーザ入力が指示する内容に基づく。なお、このようなユーザ入力を受け付けるタッチパネルディスプレイ32は本発明の「指示取得部」に相当する。
【0046】
次に、制御部150は、S21で取得した用紙の種類及び上記表1に基づく条件分岐を行う(S22)。用紙A及びBの一方のみが有益画像の形成が可能な種類である場合には(S22、一方のみ可)、制御部150は、用紙A及びBのうち有益画像の形成が可能な種類である方を用紙供給部112にヘッド13へと供給させつつその用紙上に有益画像が形成されるようにヘッド13にインクを吐出させる(S23)。
【0047】
用紙A及びBの両方が有益画像の形成が可能な種類である場合には(S22、両方可)、制御部150は、用紙A及びBのうち表1の優先順位が高い種類である方を用紙供給部112にヘッド13へと供給させつつその用紙上に有益画像が形成されるようにヘッド13にインクを吐出させる(S24)。
【0048】
用紙A及びBの両方が有益画像の形成が不可能な種類である場合には(S22、両方不可)、制御部150は、ヘッド移動部15にヘッド13を画像形成位置からメンテナンス位置へと移動させると共に、メンテナンス部40(
図5参照)にメンテナンス処理を実行させる(S25)。
【0049】
以上説明した本実施形態によると、第1用紙収容部111A及び第2用紙収容部111Bにそれぞれ収容された用紙A及びBの種類に応じて有益画像の形成を行うかメンテナンス処理を行うかを適切に選択可能である。また、有益画像の形成が可能な用紙の種類には優先順位がある。このため、有益画像の形成のために適切な用紙が優先的に使用される。
【0050】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0051】
例えば、上述の実施形態では、メンテナンス部40が行うメンテナンス処理において、キャップ41がヘッド13の下面に密着した状態でキャップ41内がポンプ43により吸引されることで、乾燥が進んだインクがヘッド13から排出される。これに代えて、又は加えて、ヘッド13から用紙以外の領域へと強制的にインクを吐出させることで、乾燥が進んだインクがヘッド13から排出されてもよい。
【0052】
また、上述の実施形態では、ノズル13a間でインクの乾燥に偏りがある場合、乾燥が進んだノズル13aのみを使用して画像形成がなされる。これに関連して、ノズル13a同士で乾燥の進行度に違いがある場合には、他のノズル13aと比べて乾燥が進んでいるノズル13aにおいては、他のノズル13aより多くのインクが吐出されるように画像形成がなされてもよい。
【0053】
また、上述の実施形態においては、
図4のS8、S10及びS11に示すように、ノズル13aについて乾燥が均一に進んでいる場合には、全ノズル13aからインクを吐出させることでモノクローム画像が形成される(S10)。一方、ノズル13aについて乾燥が均一に進んでいない場合には、乾燥が進んでいる一部のノズル13aのみからインクを吐出させることでカラー画像が形成される(S11)。これに対し、ノズル13aの乾燥が均一に進んでいるか否かに関わらず、S7で取得された画像データに基づくカラー画像が、PC等から取得された画像データに基づく通常の画像形成と同様に用紙上に形成されてもよい。
【0054】
加えて、上述の各実施形態においては、プリンタ1に対して本発明を適用する場合について説明したが、これには限定されない。本発明は、ヘッドからインクを吐出するインクジェット式のその他の画像形成装置、例えば、複合機やコピー機等又はこれらの画像形成装置を有するシステムに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 プリンタ
10 画像形成部
13 ヘッド
13a ノズル
15 ヘッド移動部
31 温度検出部
32 タッチパネルディスプレイ
40 メンテナンス部
50 制御部
90 外部サーバ
100 プリンタ
110 画像形成部
111A 第1用紙収容部
111B 第2用紙収容部
150 制御部