(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148307
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】人物判定装置及び人物判定方法
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20241010BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20241010BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20241010BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241010BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20241010BHJP
G06V 40/20 20220101ALI20241010BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B21/02
G06T7/20 300A
G06T7/00 660Z
G06T7/70 B
G06V40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061335
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】熊岡 泰佑
(72)【発明者】
【氏名】浅野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】氷室 俊之
(72)【発明者】
【氏名】上村 真史
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5L096
【Fターム(参考)】
5C086AA11
5C086AA22
5C086CA25
5C086CA28
5C086CB36
5C086DA19
5C086DA33
5C087DD02
5C087FF01
5C087FF04
5C087GG02
5C087GG06
5L096AA06
5L096BA02
5L096FA66
5L096FA67
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】群衆の中から支援を必要としている人物を見つけ出すことができる人物判定装置及び人物判定方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る人物判定装置100は、支援を必要としている可能性が高い人物を所定の範囲内から検出する人物検出部21と、前記人物が正面を向いている状態を基準位置として、所定の角度以上に首を回転させる度に首振りを1回行ったとカウントする首振りカウント部22と、所定の時間中に前記人物が所定の回数以上の首振りを行っている場合に、前記人物に支援が必要であると判定する要支援判定部23と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支援を必要としている可能性が高い人物を所定の範囲内から検出する人物検出部と、
前記人物が正面を向いている状態を基準位置として、所定の角度以上に首を回転させる度に首振りを1回行ったとカウントする首振りカウント部と、
所定の時間中に前記人物が所定の回数以上の首振りを行っている場合に、前記人物に支援が必要であると判定する要支援判定部と、を備える、
人物判定装置。
【請求項2】
前記人物検出部は、前記所定の範囲内のうちもっとも近くにいる他の人物との距離が所定の値以上である人物を、支援を必要としている可能性が高い人物として検出する、請求項1に記載の人物判定装置。
【請求項3】
前記要支援判定部は、前記所定の範囲内の人物の人数に応じて、支援が必要であると判定する首振り回数の値を変更する、請求項2に記載の人物判定装置。
【請求項4】
前記首振りカウント部は、前記人物の正面方向と、前記人物の前記正面方向と前記人物から他の各人物に向かう方向とが成す角度を比較して最も当該角度が大きくなる他の人物に向かって前記人物から向かう方向と、がなす角度に応じて、首振りを行ったと判定する首振り角度を変更する、請求項2又は3に記載の人物判定装置。
【請求項5】
支援を必要としている可能性が高い人物を所定の範囲内から検出し、
前記人物が正面を向いている状態を基準位置として、所定の角度以上に首を回転させる度に首振りを1回行ったとカウントし、
所定の時間中に前記人物が所定の回数以上の首振りを行っている場合に、前記人物に支援が必要であると判定する、
人物判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人物判定装置及び人物判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
災害時には、避難している人々に適切な支援を提供することが望ましい。
例えば特許文献1には、車中避難している人々に必要な情報を提供するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの人々が避難している状況では、全員に支援を提供することは困難である。そこで、所定の範囲内から支援を必要としている人物を見つけ出し、当該人物に適切な支援を提供することが望ましい。
【0005】
本開示は、このような問題点に鑑みなされたものであり、所定の範囲内から支援を必要としている人物を見つけ出すことができる人物判定装置及び人物判定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る人物判定装置は、
支援を必要としている可能性が高い人物を所定の範囲内から検出する人物検出部と、
前記人物が正面を向いている状態を基準位置として、所定の角度以上に首を回転させる度に首振りを1回行ったとカウントする首振りカウント部と、
所定の時間中に前記人物が所定の回数以上の首振りを行っている場合に、前記人物に支援が必要であると判定する要支援判定部と、を備える。
【0007】
本開示に係る人物判定方法は、
支援を必要としている可能性が高い人物を所定の範囲内から検出し、
前記人物が正面を向いている状態を基準位置として、所定の角度以上に首を回転させる度に首振りを1回行ったとカウントし、
所定の時間中に前記人物が所定の回数以上の首振りを行っている場合に、前記人物に支援が必要であると判定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、所定の範囲内の中から支援を必要としている人物を見つけ出すことができる人物判定装置及び人物判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る人物判定装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態1に係る人物判定方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】実施形態2に係る人物判定装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態2に係る人物判定方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】他人との距離が大きい場合における所定の範囲内の人物の模式図である。
【
図6】他人との距離が小さい場合における所定の範囲内の人物の模式図である。
【
図7】所定の範囲内の人物が密集しておりかつ人数が少ない場合における所定の範囲内の人物の模式図である。
【
図8】所定の範囲内の人物が密集しておりかつ人数が多い場合における所定の範囲内の人物の模式図である。
【
図9】所定の範囲内の人物が散らばっておりかつ人数が少ない場合における所定の範囲内の人物の模式図である。
【
図10】所定の範囲内の人物が散らばっておりかつ人数が多い場合における所定の範囲内の人物の模式図である。
【
図11】実施形態3に係る人物判定装置の構成を示すブロック図である。
【
図12】実施形態3に係る人物判定方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態1>
まず、
図1を参照して実施形態1に係る人物判定装置100の構成を説明する。
図1に示すように、人物判定装置100は、検知部10、制御部20及び記憶部30を備える。人物判定装置100は、所定の範囲内から支援を必要としている人物を見つけ出す装置であり、例えば災害時に使用される。ここで、所定の範囲は、適宜設定される。所定の範囲の設定方法は特に限定されず、例えば、体育館又は会館等、災害時に避難所として使用される施設を所定の範囲として予め設定してもよい。所定の範囲は、予め設定された所定の面積であってもよい。所定の範囲は、群衆の範囲であってもよい。群衆の範囲は、人々の密度が所定の値以上の範囲であり、公知の技術を用いて判定される。
【0011】
検知部10は、所定の範囲内の人物を構成する各人物の各種情報を取得するセンサである。検知部10が取得する情報は、例えば、人物に関する情報であってもよいし、所定の範囲内の人物に関する情報であってもよい。人物に関する情報は、例えば、人物の動き、呼吸、体温、発汗、皮膚の水分量、及び血色等である。所定の範囲内の人物に関する情報は、例えば、所定の範囲内の人物の密集度及び所定の範囲内における人物の孤立具合等である。検知部10は、少なくとも視覚情報を取得し、さらに視覚情報以外の情報を取得してもよいものとする。ここで、視覚情報は、人物の映像等である。また、視覚情報以外の情報は、例えば、音声情報である。記憶部30は、首振り基準角度31、首振り基準回数32及びプログラム(不図示)等を記憶する記憶装置である。制御部20は、人物検出部21、首振りカウント部22及び要支援判定部23を備える。制御部20は、人物判定装置100の動作を制御する制御装置であり、例えば、MPU(Micro Controller Unit)等のプロセッサである。
【0012】
人物検出部21は、検知部10が取得した情報に基づいて、支援を必要としている可能性が高い人物を所定の範囲内から検出する。以下、支援を必要としている可能性が高い人物として人物検出部21が検出した人物を「対象者」と称することがある。人物検出部21が対象者を検出する方法は限定されないが、例えば、人物検出部21は、検知部10が取得した人物の呼吸の情報に基づいて当該人物の呼吸の速度を測定し、測定値が所定の値以上である場合に当該人物を対象者として検出してもよい。人物検出部21は、検知部10が取得した人物の動きに基づいて当該人物の動きを分析し、当該人物が所定の動作を行っている場合に当該人物を対象者として検出してもよい。人物検出部21は、検知部10が取得した所定の範囲内における人物の孤立具合の情報に基づいて、当該人物の孤立具合が所定の値以上である場合に当該人物を対象者として検出してもよい。首振りカウント部22は、対象者の動作を含む視覚情報を検知部10から取得し、対象者の首振り回数をカウントする。具体的には、首振りカウント部22は、対象者が正面を向いている状態を基準位置として対象者の首振り角度を測定し、対象者が所定の角度以上に首を回転させる度に首振りを1回行ったとカウントする。ここで、「所定の角度」は、記憶部30に記憶されている首振り基準角度31である。要支援判定部23は、所定の時間中における、対象者が所定の回数以上の首振りを行っている場合に、対象者に支援が必要であると判定する。ここで、「所定の回数」は、記憶部30に記憶されている首振り基準回数32である。
【0013】
図2は、実施形態1に係る人物判定装置100を用いて行われる人物判定方法(実施形態1に係る人物判定方法)の流れを示すフローチャートである。まず、人物検出部21は、検知部10が取得した情報に基づいて、支援を必要としている可能性が高い人物を所定の範囲内から検出する(ステップS101)。支援を必要としている可能性が高い人物が検出されると(ステップS101Yes)、首振りカウント部22は、当該人物を対象者とし(ステップS102)、対象者の首振りの角度を測定する。首振りカウント部22は、対象者の首振り角度が閾値以上である場合(ステップS103Yes)、対象者が首振りを1回行ったと判定し、首振りカウントを1増やす(ステップS104)。ここで、首振り角度の閾値は、記憶部30に記憶されている首振り基準角度31である。首振りカウント部22は、ステップS103及びステップS104を、所定時間が経過する(ステップS105)まで行う。所定時間が経過すると(ステップS105Yes)、要支援判定部23は、対象者の首振り回数が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS106)。ここで、首振り回数の閾値は、記憶部30に記憶されている首振り基準回数32である。要支援判定部23は、対象者の首振り回数が閾値以上である場合(ステップS106Yes)、当該対象者に支援が必要であると判定する(ステップS107)。要支援判定部23は、対象者の首振り回数が閾値未満である場合(ステップS106No)、当該対象者に支援が不要であると判定する(ステップS108)。
【0014】
このように、人物判定装置100は、所定の範囲内から支援を必要としている人物を見つけ出すことができる。
【0015】
尚、人物判定装置100は、図示しない構成としてメモリを備える。メモリは、制御部20の処理内容を一時的に記憶する記憶領域であり、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶装置である。制御部20は、記憶部30からプログラムをメモリへ読み込ませ、実行する。これにより、制御部20は、人物検出部21、首振りカウント部22及び要支援判定部23としての機能を実現する。
【0016】
また、人物検出部21、首振りカウント部22及び要支援判定部23は、それぞれが専用のハードウェアで実現されていてもよい。また、各装置の各構成要素の一部又は全部は、汎用または専用の回路(circuitry)、プロセッサ等やこれらの組合せによって実現されてもよい。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各装置の各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組合せによって実現されてもよい。また、プロセッサとして、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)等を用いることができる。
【0017】
また、人物判定装置100の各構成要素の一部又は全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は、集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。また、人物判定装置100の機能がSaaS(Software as a Service)形式で提供されてもよい。
【0018】
<実施形態2>
実施形態2は、より具体的な実施形態である。実施形態2に係る人物判定装置200は、所定の範囲内で孤立している人物を、支援を必要としている可能性が高い対象者とし、当該対象者が支援を必要としているか否かを判定する。人物判定装置200は、検知部40、制御部50及び記憶部60を備える。以下、実施形態1と重複する説明は、適宜省略する。
【0019】
検知部40は、少なくとも映像処理部41を備え、さらに図示しない温度検知部及び音声検知部等を備えていてもよい。映像処理部41は、映像及び画像等の視覚情報の撮影を行う撮影装置であり、例えばカメラである。温度検知部は、所定箇所の温度を測定する温度測定装置であり、例えば温度計又はサーモグラフィーカメラである。音声検知部は、周囲の音声の録音を行う録音装置であり、例えばマイクである。
図3に示す記憶部60は、
図1に示した記憶部30に比較し、他人との基準距離61をさらに記憶している。
【0020】
図3に示す制御部50は、人物検出部51、首振りカウント部54、要支援判定部55及びパラメータ調整部56を備える。制御部50は、
図1に示した制御部20に比較して、人物検出部51が距離測定部52及び孤立判定部53を備え、パラメータ調整部56をさらに備える。距離測定部52は、検知部40が取得した情報に基づいて、所定の範囲内の各人物と所定の範囲内の他の人物との距離を測定する。孤立判定部53は、距離測定部52が測定した距離に基づいて、各人物と当該人物に最も近い位置にいる他の人物との距離が所定の距離以上であるか否かを判定する。ここで、所定の距離は、記憶部60に記憶されている他人との基準距離61である。孤立判定部53は、各人物と当該人物に最も近い位置にいる他の人物との距離が所定の距離以上である場合、当該人物が孤立している、すなわち支援を必要としている可能性が高いと判定する。孤立判定部53が人物の孤立を判定する方法は上記に限定されず、例えば、孤立判定部53は、いずれの集団にも属しておらず、かつ、最も近くにある集団と所定距離以上離れている人物を孤立していると判定してもよい。この場合、どのような条件の人々を集団と判定するかは特に限定されず、公知の技術を用いて判定される。パラメータ調整部56は、記憶部60に記憶されている他人との基準距離61、首振り基準角度62及び首振り基準回数63等の各種パラメータを、検知部40が取得した情報に基づいて調整する。
【0021】
図4は、実施形態2に係る人物判定装置200を用いて行われる人物判定方法(実施形態2に係る人物判定方法)の流れを示すフローチャートである。まず、人物検出部51は、他人との距離が閾値以上の人物がいるか否かを判定する(ステップS201)。具体的には、距離測定部52が、所定の範囲内の各人物と所定の範囲内の他の人物との距離を測定し、次いで、孤立判定部53が、各人物と当該人物に最も近い位置にいる他の人物との距離が所定の距離以上であるか否かを判定する。他人との距離が閾値以上の人物がいた場合(ステップS201Yes)、首振りカウント部54は、当該人物を対象者とし(ステップS202)、対象者の首振りの角度を測定する。首振りカウント部54は、対象者の首振り角度が閾値以上である場合(ステップS203Yes)、対象者が1回首振りを行ったと判定し、首振りカウントを1増やす(ステップS204)。ここで、首振り角度の閾値は、記憶部60に記憶されている首振り基準角度62である。首振りカウント部54は、ステップS203及びステップS204を、所定時間が経過する(ステップS205)まで行う。所定時間が経過すると(ステップS205Yes)、要支援判定部55は、対象者の首振り回数が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS206)。ここで、首振り回数の閾値は、記憶部60に記憶されている首振り基準回数63である。要支援判定部55は、対象者の首振り回数が閾値以上である場合(ステップS206Yes)、当該対象者に支援が必要であると判定する(ステップS207)。要支援判定部55は、対象者の首振り回数が閾値未満である場合(ステップS206No)、当該対象者に支援が不要であると判定する(ステップS208)。
【0022】
次に、
図5及び
図6を参照して、所定の範囲内において孤立している人物について詳細に説明する。
図5は、他人との距離が大きい場合における所定の範囲内の人物の模式図である。
図6は、他人との距離が小さい場合における所定の範囲内の人物の模式図である。
図5及び
図6の丸印は所定の範囲内の各人物を示す。以下で説明する例では、黒い丸印で示された人物について所定の範囲内における孤立具合を説明する。
図5で示す例では、黒い丸印で示された人物は、所定の範囲内の他人のうち最も当該人物に近い位置にいる他人との距離がAである。
図6で示す例では、黒い丸印で示された人物は、所定の範囲内の他人のうち最も当該人物に近い位置にいる他人との距離がA’である。ここで、Aは、A’よりも長い。すなわち、
図5に示された例は、
図6に示された例に比較して、黒い丸印で示された人物がより孤立している状態である。そこで、所定の範囲内の各人物と当該人物に最も近い位置にいる他の人物との距離が所定の距離以上であるか否かを判定することによって、当該人物が孤立しているか否かを判定することができる。
【0023】
パラメータ調整部56は、所定の範囲内の人数に応じて、支援が必要であると判定する首振り回数の値を変更し、記憶部60に記憶されている首振り基準回数63を更新する。また、パラメータ調整部56は、所定の範囲内の人物の散らばり具合に応じて、対象者が首振りを行ったと判定する首振り角度を変更し、記憶部60に記憶されている首振り基準角度62を更新する。具体的には、例えば、パラメータ調整部56は、所定の範囲内の人物の人数及び散らばり具合にそれぞれ閾値を設け、人数及び散らばり具合がそれぞれの閾値以上か否かによって首振り基準角度62及び首振り基準回数63を変更してもよい。また、パラメータ調整部56は、所定の範囲内の人物の人数及び散らばり具合に比例する関数等の所定の関数を設定し、当該関数に応じて首振り基準角度62及び首振り基準回数63を変更してもよい。以下、本実施形態では所定の範囲内の人物の人数及び散らばり具合にそれぞれ閾値を設ける場合について説明する。パラメータ調整部56が更新した首振り基準角度62及び首振り基準回数63等のパラメータは、新たな対象者について孤立の判定を行う場合や人物判定装置200の電源を切った場合にリセットされる。
【0024】
以下、
図7~
図10を参照して、所定の範囲内の人数及び散らばり具合について詳細に説明する。
図7~
図10に示す例は、黒い丸印で示された人物が所定の範囲内の他の人物の中から知人等を探している状態である。そのため、黒い丸印で示された人物は、所定の範囲内の人物が多くいる方向に体の正面を向け、首を動かして所定の範囲内の他の人物を見回している。
図7~
図10に示す点線は、黒い丸印で示された人物の正面方向を示す。
図7~
図10に示す太い実線は、黒い丸印で示された人物が首を正面方向に向けた状態で視認可能な範囲を示す。
図7~
図10に示す細い実線は、黒い丸印で示された人物から当該人物の正面方向に対して最も離れた位置にいる他の人物に向かう方向を示す。
図7~
図10に示す角度αは、黒い丸印で示された人物の正面方向と、黒い丸印で示された人物が視認可能な範囲の縁と、が成す角度である。角度αの数値は、特に限定されないが、例えば20度である。
図7~
図10に示す角度θは、所定の範囲内の人物の散らばり具合を示す。角度θは、黒い丸印で示された人物の正面方向と、黒い丸印で示された人物の正面方向と黒い丸印で示された人物から他の各人物に向かう方向が成す角度を比較して最も角度が大きくなる他の人物に黒い丸印で示された人物から向かう方向と、が成す角度である。角度θが小さい場合、角度θが大きい場合に比較して、所定の範囲内の人物は密集していると考えられる。
【0025】
以下、所定の範囲内の人物の人数の閾値を10人とし、人数が10人以上である場合は人数が多く、人数が10人未満である場合は人数が少ないとされるものとする。また、所定の範囲内の人物の散らばり具合すなわち角度θの閾値を20度とし、角度θが20度以上である場合は所定の範囲内の人物の散らばり具合が大きく、角度θが20度未満である場合は所定の範囲内の人物の散らばり具合が小さいとされるものとする。尚、所定の範囲内の人物の人数の閾値及び所定の範囲内の人物の散らばり具合の閾値は上記に限定されず、また、それぞれ複数の閾値が設けられてもよい。また、パラメータ調整部56が変更するパラメータの値は特に限定されず、以下の説明で示す数値は具体例である。
【0026】
図7は、所定の範囲内の人物が密集しておりかつ人数が少ない場合における所定の範囲内の人物の模式図である。
図7に示す例では、角度θが角度αよりも小さいため、黒い丸印で示された人物は、所定の範囲内の他の人物を見回すために大きく首を振る必要がない。また、所定の範囲内の人数が少ないため、全ての他の人物を見回すために何度も首を振る必要がない。そのため、このような状況下においては、黒い丸印で示された人物は、小さな角度で少ない回数の首振りを行うと予想される。そこで、このような場合、パラメータ調整部56は、対象者が首振りを行ったと判定する首振り角度を小さくし、支援が必要であると判定する首振り回数の値を小さくする。具体的には、例えば、パラメータ調整部56は、対象者が首振りを行ったと判定する首振り角度を15度に変更し、支援が必要であると判定する首振り回数を2回に変更する。
【0027】
図8は、所定の範囲内の人物が密集しておりかつ人数が多い場合における所定の範囲内の人物の模式図である。
図8に示す例は、
図7に示した例と同様に角度θが角度αよりも小さいため、黒い丸印で示された人物は、所定の範囲内の他の人物を見回すために大きく首を振る必要がない。しかしながら、
図8に示す例は、
図7に示した例に比較して、所定の範囲内の人数が多いため、全ての他の人物を見回すために何度も首を振る必要がある。そのため、このような状況下においては、黒い丸印で示された人物は、小さな角度で多い回数の首振りを行うと予想される。そこで、このような場合、パラメータ調整部56は、対象者が首振りを行ったと判定する首振り角度を小さくし、支援が必要であると判定する首振り回数の値を大きくする。具体的には、例えば、パラメータ調整部56は、対象者が首振りを行ったと判定する首振り角度を15度に変更し、支援が必要であると判定する首振り回数を5回に変更する。
【0028】
図9は、所定の範囲内の人物が散らばっておりかつ人数が少ない場合における所定の範囲内の人物の模式図である。
図9に示す例では、角度θが角度αよりも大きいため、黒い丸印で示された人物は、所定の範囲内の他の人物を見回すために大きく首を振る必要がある。また、所定の範囲内の人数が少ないため、全ての他の人物を見回すために何度も首を振る必要がない。そのため、このような状況下においては、黒い丸印で示された人物は、大きな角度で少ない回数の首振りを行うと予想される。そこで、このような場合、パラメータ調整部56は、対象者が首振りを行ったと判定する首振り角度を大きくし、支援が必要であると判定する首振り回数の値を小さくする。具体的には、例えば、パラメータ調整部56は、対象者が首振りを行ったと判定する首振り角度を30度に変更し、支援が必要であると判定する首振り回数を2回に変更する。
【0029】
図10は、所定の範囲内の人物が散らばっておりかつ人数が多い場合における所定の範囲内の人物の模式図である。
図10に示す例は、
図9に示した例と同様に角度θが角度αよりも大きいため、黒い丸印で示された人物は、所定の範囲内の他の人物を見回すために大きく首を振る必要がある。また、
図10に示す例は、
図9に示した例に比較して、所定の範囲内の人数が多いため、全ての他の人物を見回すために何度も首を振る必要がある。そのため、このような状況下においては、黒い丸印で示された人物は、大きな角度で多い回数の首振りを行うと予想される。そこで、このような場合、パラメータ調整部56は、対象者が首振りを行ったと判定する首振り角度を大きくし、支援が必要であると判定する首振り回数の値を大きくする。具体的には、例えば、パラメータ調整部56は、対象者が首振りを行ったと判定する首振り角度を30度に変更し、支援が必要であると判定する首振り回数を5回に変更する。
【0030】
<実施形態3>
実施形態3は、他の具体的な実施形態である。実施形態3に係る人物判定装置300は、スタジアム等で自らの席を探している可能性が高い人物を、支援を必要としている可能性が高い対象者とし、当該対象者が支援を必要としているか否かを判定する。
図11に示す人物判定装置300は、
図1に示す人物判定装置100と比較して、検知部10に代えて検知部40を備え、制御部20に代えて制御部70を備え、記憶部30に代えて記憶部80を備える。以下、実施形態1等と重複する説明は、適宜省略する。
【0031】
図11に示す制御部70は、人物検出部71、首振りカウント部75及び要支援判定部76を備える。人物検出部71は、人物検知部72、速度計測部73及び速度判定部74を備える。人物検出部71は、検知部40から取得した情報に基づいて、自らの席を探している可能性が高い人物を検出する。具体的には、例えば、人物検出部71は、通路に立った状態で移動しない又は移動速度が所定の値未満である人物を自らの席を探している可能性が高いと判定して検出する。この場合、人物検知部72は、映像処理部41が取得した映像情報に基づいてスタジアム等の通路に存在する人物を検知する。速度計測部73は、人物検知部72が検知した人物の移動速度を映像処理部41が取得した映像情報に基づいて計測する。速度判定部74は、速度計測部73が計測した速度が所定の速度未満である場合、当該人物が自らの席を探している可能性が高いと判定し、対象者として検出する。尚、人物検知部72は、検知部40が取得した映像情報以外の情報に基づいてスタジアム等の通路に存在する人物を検知してもよい。また、速度計測部73は、人物検知部72が検知した人物の移動速度を検知部40が取得した映像情報以外の情報に基づいて計測してもよい。
【0032】
スタジアム等で自らの席を探している人物は、手元に持ったチケットに記載された座席番号に合致する座席を探すために、手元のチケットとスタジアムの座席に記載された座席番号とを交互に見ると考えられる。そこで、制御部70は、周囲の景色と自らの手元を交互に見ている人物を自らの席を探している可能性が高いすなわち支援を必要としている可能性が高いと判定して検出する。首振りカウント部75は、対象者の動作を含む映像情報を検知部40から取得して対象者の首振り回数をカウントする。スタジアムで席を探す人物は、水平方向だけではなく、上下方向に首を動かして自らの手元と周囲の景色とを交互に見ると考えられる。そこで、首振りカウント部75は、対象者が水平方向及び上下方向に所定の値以上の角度で首振りを行った場合に当該対象者が首を振ったと判定する。
【0033】
要支援判定部76は、記憶部80に記憶されている首振り基準回数83を閾値として、対象者が所定の回数以上の首振りを行っている場合に、対象者に支援が必要であると判定する。首振り基準回数83は、水平方向の首振り回数及び上下方向の首振り回数の合計値に対して設定されてもよいし、水平方向の首振り回数及び上下方向の首振り回数に対してそれぞれ設定されてもよい。水平方向の首振り回数及び上下方向の首振り回数の合計値に対して首振り基準回数83が設定される場合、要支援判定部76は、水平方向の首振り回数及び上下方向の首振り回数の合計値が首振り基準回数83以上である場合に対象者に支援が必要であると判定する。水平方向の首振り回数及び上下方向の首振り回数に対してそれぞれ首振り基準回数83が設定される場合、要支援判定部76は、水平方向の首振り回数及び上下方向の首振り回数のうち少なくとも一方が首振り基準回数83以上である場合に対象者に支援が必要であると判定する。尚、水平方向の首振り回数に対して設定される首振り基準回数83及び上下方向の首振り回数に対して設定される首振り基準回数83は、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。以下、本実施形態では、水平方向の首振り回数及び上下方向の首振り回数の合計値に対して首振り基準回数83が設定される場合について説明する。
【0034】
記憶部80は、少なくとも首振り基準水平角度81、首振り基準上下角度82及び首振り基準回数83を記憶する記憶装置である。首振り基準水平角度81は、対象者が水平方向に首を振ったと判断される基準となる首振り角度の数値である。首振り基準上下角度82は、対象者が上下方向に首を振ったと判断される基準となる首振り角度の数値である。首振り基準水平角度81及び首振り基準上下角度82は、同じ数値であってもよいし、異なる数値であってもよい。
【0035】
図12は、実施形態3に係る人物判定装置300を用いて行われる人物判定方法(実施形態3に係る人物判定方法)の流れを示すフローチャートである。まず、人物検出部71は、自らの席を探している可能性が高い人物がいるか否かを判定する(ステップS301)。自らの席を探している可能性が高い人物がいた場合(ステップS301Yes)、首振りカウント部75は、当該人物を対象者とし(ステップS302)、対象者の水平方向又は上下方向の首振りの角度を測定する。首振りカウント部75は、対象者の水平方向又は上下方向の首振り角度が閾値以上である場合(ステップS303Yes)、対象者が首振りを1回行ったと判定し、首振りカウントを1増やす(ステップS304)。首振りカウント部75は、ステップS303及びステップS304を、所定時間が経過する(ステップS305)まで行う。所定時間が経過すると(ステップS305Yes)、要支援判定部76は、対象者の首振り回数が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS306)。要支援判定部76は、対象者の首振り回数が閾値以上である場合(ステップS306Yes)、当該対象者に支援が必要であると判定する(ステップS307)。要支援判定部76は、対象者の首振り回数が閾値未満である場合(ステップS306No)、当該対象者に支援が不要であると判定する(ステップS308)。
【0036】
実施形態2では、所定の範囲内の中で孤立している人物を、支援を必要としている可能性が高い対象者とし、当該対象者が支援を必要としているか否かを判定する場合について説明を行った。また、実施形態3では、スタジアム等で自らの席を探している可能性が高い人物を、支援を必要としている可能性が高い対象者とし、当該対象者が支援を必要としているか否かを判定する場合について説明を行った。しかしながら、実施形態1~3に係る人物判定装置は、不安を感じている可能性が高い動作をしている人物を対象者とする状況であれば、他の状況においても当該対象者が支援を必要としているか否かを判定することができる。人物判定装置300は、例えば、街中で迷子になっている可能性が高い子供を、支援を必要としている可能性が高い対象者とし、当該対象者が支援を必要としているか否かを判定することができる。不安を感じている可能性が高い動作をしている人物の具体例は、例えば、所定の範囲内において繰り返し移動している人物、人物の名前を大声で叫んでいる人物、及び「おかあさん」等の特定の言葉を発している人物等が挙げられる。
【0037】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本開示は、実施の形態やその一例を適宜組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0038】
100,200,300 人物判定装置
10 検知部
20 制御部
21 人物検出部
22 首振りカウント部
23 要支援判定部
30 記憶部
31 首振り基準角度
32 首振り基準回数
40 検知部
41 映像処理部
50 制御部
51 人物検出部
52 距離測定部
53 孤立判定部
54 首振りカウント部
55 要支援判定部
56 パラメータ調整部
60 記憶部
61 他人との基準距離
62 首振り基準角度
63 首振り基準回数
70 制御部
71 人物検出部
72 人物検知部
73 速度計測部
74 速度判定部
75 首振りカウント部
76 要支援判定部
80 記憶部
81 首振り基準水平角度
82 首振り基準上下角度
83 首振り基準回数