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特開2024-148308太陽熱温水器及び太陽熱温水器の設置構造
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  • 特開-太陽熱温水器及び太陽熱温水器の設置構造 図1
  • 特開-太陽熱温水器及び太陽熱温水器の設置構造 図2
  • 特開-太陽熱温水器及び太陽熱温水器の設置構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148308
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】太陽熱温水器及び太陽熱温水器の設置構造
(51)【国際特許分類】
   F24S 10/10 20180101AFI20241010BHJP
   F24S 10/70 20180101ALI20241010BHJP
   F24S 80/30 20180101ALI20241010BHJP
   F24S 80/50 20180101ALI20241010BHJP
【FI】
F24S10/10
F24S10/70
F24S80/30
F24S80/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061338
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】302010323
【氏名又は名称】中野 文彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】中野 千秋
(57)【要約】
【課題】供給できる温水を多量とすることが可能な太陽熱温水器を、提供する。
【解決手段】太陽光から集熱する集熱器10、及び、集熱器で加熱された温水を蓄える貯湯タンク20を備える太陽熱温水器1において、集熱器が、断熱材層17と、断熱材層の上に設けられた反射材層16と、反射材層の上に設けられた複数の集熱パイプ15と、集熱パイプそれぞれの一端を連結している第一ヘッド部11と、集熱パイプそれぞれの他端を連結している第二ヘッド部12とを具備していると共に、第一ヘッド部には、上水道管32から供給される水と貯湯タンクへ送られる温水との流通が切り替えられる流出入管31が接続されている一方、第二ヘッド部には、大気に開放されているオーバーフロー管41が接続されており、貯湯タンクが、集熱器から離隔して集熱器より下方に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光から集熱する集熱器、及び、該集熱器で加熱された温水を蓄える貯湯タンクを備える太陽熱温水器であり、
前記集熱器は、
断熱材層と、
該断熱材層の上に設けられた反射材層と、
該反射材層の上に設けられた複数の集熱パイプと、
該集熱パイプそれぞれの一端を連結している第一ヘッド部と、
前記集熱パイプそれぞれの他端を連結している第二ヘッド部と、を具備し、
前記第一ヘッド部には、上水道管から供給される水と前記貯湯タンクへ送られる温水との流通が切り替えられる流出入管が接続されている一方、
前記第二ヘッド部には、大気に開放されているオーバーフロー管が接続されており、
前記貯湯タンクは、前記集熱器から離隔して前記集熱器より下方に設けられている
ことを特徴とする太陽熱温水器。
【請求項2】
前記集熱器は、複数の前記集熱パイプを上方から被覆する透光性カバーを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽熱温水器。
【請求項3】
請求項1に記載の太陽熱温水器の設置構造であり、
前記第二ヘッド部が前記第一ヘッド部より高く位置するように、前記集熱器を建物の屋根上に設置する
ことを特徴とする太陽熱温水器の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱温水器、及び太陽熱温水器の設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前より、太陽光を利用して温水を得る太陽熱温水器として、太陽光から集熱する集熱パネルと貯湯タンクとが一体となっており、屋根上に設置される太陽熱温水器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、屋根上に設置される構造物は重量が制限されることから、集熱パネルと一体で屋根上に設置される貯湯タンクは大型化することが難しい。そのため、貯湯タンクに蓄えることができる温水の量が少なく、太陽熱温水器から供給できる温水の量に制限があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭58-11548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、供給できる温水を多量とすることが可能な太陽熱温水器、及び該太陽熱温水器の設置構造の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる太陽熱温水器は、
「太陽光から集熱する集熱器、及び、該集熱器で加熱された温水を蓄える貯湯タンクを備える太陽熱温水器であり、
前記集熱器は、
断熱材層と、
該断熱材層の上に設けられた反射材層と、
該反射材層の上に設けられた複数の集熱パイプと、
該集熱パイプそれぞれの一端を連結している第一ヘッド部と、
前記集熱パイプそれぞれの他端を連結している第二ヘッド部と、を具備し、
前記第一ヘッド部には、上水道管から供給される水と前記貯湯タンクへ送られる温水との流通が切り替えられる流出入管が接続されている一方、
前記第二ヘッド部には、大気に開放されているオーバーフロー管が接続されており、
前記貯湯タンクは、前記集熱器から離隔して前記集熱器より下方に設けられている」ものである。
【0007】
本構成の太陽熱温水器は、集熱器を屋根上に設置して使用される。その際、屋根の傾斜において低い側に第一ヘッド部を位置させ、高い側に第二ヘッド部を位置させる。屋根に傾斜がない場合は、台座などを使用し、第二ヘッド部が第一ヘッド部より高くなるように調整する。
【0008】
本構成では、集熱器と貯湯タンクとが離隔しており、貯湯タンクは集熱器より下方に設けられる。そのため、集熱器を屋根上に設置しても、貯湯タンクは屋根上には設置されず、それより下方に設置される。従って、貯湯タンクを屋根上に設置する場合に比べ、貯湯タンクの容量を大きくすることが可能であり、台所、洗面所、浴室など温水を必要とする温水需要部に太陽熱温水器から供給できる温水を多量とすることができる。
【0009】
また、本構成の太陽熱温水器では、貯湯タンクが集熱器より下方に設けられることに加えて、大気に開放されたオーバーフロー管を備えているため、集熱器で加熱された温水を自重により貯湯タンクに導入することができる。また、集熱器で温めるための水は、上水道管から流出入管を介して集熱器へ供給される構成であるため、上水道管の水圧によって水を送ることができる。このように、集熱器に水を供給する際にも、集熱器から貯湯タンクに水を導入する際にも、ポンプを要しないため、構成が簡易である。
【0010】
更に、集熱器では、反射材層の上に複数の集熱パイプを配しているため、太陽の輻射熱で集熱パイプ内の水を効率よく温めることができる。加えて、屋根上に設置される集熱器の最下層には断熱材層が設けられているため、集熱器から屋根を介して屋内側に熱が伝導することが抑制されており、集熱器において太陽の輻射熱により加熱された温水を保温することができる。
【0011】
本発明にかかる太陽熱温水器は、上記構成に加え、
「前記集熱器は、複数の前記集熱パイプを上方から被覆する透光性カバーを備えている」ものとすることができる。
【0012】
本構成では、集熱パイプ、反射材層、断熱材層など集熱器の構成が、透光性カバーにより保護される。保護のためのカバーが透光性を有しており、カバーを太陽光が透過するため、集熱パイプによる集熱がカバーによって妨げられることがない。
【0013】
次に、本発明にかかる太陽熱温水器の設置構造は、
「上記に記載の太陽熱温水器の設置構造であり、
前記第二ヘッド部が前記第一ヘッド部より高く位置するように、前記集熱器を建物の屋根上に設置する」ものである。
【0014】
第一ヘッド部及び第二ヘッド部のうち、高い方の第二ヘッド部にオーバーフロー管が接続されており、低い方の第一ヘッド部に流出入管が接続されている。そのため、上水道管から流出入管を介して集熱器に、上水道管の水圧によって水が供給されるときに過剰に供給された水や、第一ヘッド部、複数の集熱パイプ、及び第二ヘッド部を満たしている水の温度上昇により体積が膨張した分の水は、問題なくオーバーフロー管から排出される。一方、集熱器で温められた水を貯湯タンクに導入する際は、オーバーフロー管から温水が漏れ出ることなく、低い方の第一ヘッド部に接続された流出入管を、温水が自重により流下し、貯湯タンクに流入する。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、供給できる温水を多量とすることが可能な太陽熱温水器、及び該太陽熱温水器の設置構造を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態である太陽熱温水器の構成図である。
図2図1の太陽熱温水器における集熱器の平面図である。
図3】A-A範囲におけるB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態である太陽熱温水器1、及びその設置構造について、図面を用いて説明する。太陽熱温水器1は、太陽光から集熱する集熱器10と、集熱器10で加熱された温水を蓄える貯湯タンク20とに大別され、集熱器10と貯湯タンク20とは、流出入管31で接続されている。
【0018】
集熱器10は、屋根Rの上に設置されるものであり、最下層である断熱材層17と、断熱材層17の上に設けられた反射材層16と、反射材層16の上に配された複数の集熱パイプ15と、複数の集熱パイプ15を上方から被覆している透光性カバー18と、を備えている。
【0019】
断熱材層17は、集熱器10と屋根Rとの間の熱伝導を抑制するためのものであり、発泡スチロールや発泡ウレタン等の発泡樹脂で構成させることができる。
【0020】
反射材層16は、太陽光を反射させることにより、集熱パイプ15内を流通する水を輻射熱で効率よく加温するためのものである。反射材層16は、反射率の高いアルミニウムの箔や薄板で構成させることができる。
【0021】
集熱パイプ15は、加熱される前の水、及び、太陽の輻射熱で加熱された温水を流通させるパイプであり、塩化ビニル樹脂などの樹脂製パイプや金属製パイプとすることができる。複数の集熱パイプ15は、それぞれ軸方向に直交する方向に間隔をあけた状態で並列している。複数の集熱パイプ15それぞれの一端は第一ヘッド部11に連結されていると共に、それぞれの他端は、第二ヘッド部12で連結されている。第一ヘッド部11及び第二ヘッド部12は、集熱パイプ15を構成している材料と同一の材料で構成させることができる。第一ヘッド部11及び第二ヘッド部12は、集熱器10を屋根Rの上に設置する際、屋根Rの傾斜における低い側に第一ヘッド部11を位置させ、傾斜における高い側に第二ヘッド部12を位置させる。
【0022】
第一ヘッド部11及び第二ヘッド部12のうち低い方の第一ヘッド部11には、流出入管31が接続されており、高い方の第二ヘッド部12には、オーバーフロー管41が接続されている。流出入管31は、第一開閉弁51を介して上水道管32に接続されていると共に、第二開閉弁52を介して貯湯タンク20に接続されている。このような構成により、第二開閉弁52を閉じた状態で第一開閉弁51を開けると、流出入管31が上水道管32と連通する。一方、第一開閉弁51を閉じた状態で第二開閉弁52を開けると、流出入管31が貯湯タンク20と連通する。
【0023】
オーバーフロー管41は、大気に開放されている。本実施形態では、第二ヘッド部12から同じ高さで延び出した後、更に下方に向かって延びている。オーバーフロー管41の先端は、地面近くで開口させてもよいし、雨樋に接続してもよい。
【0024】
透光性カバー18は、集熱パイプ15、反射材層16、断熱材層17など集熱器10の構成を保護するためのものであるが、太陽光の透過を妨げないことが必要であり、透明なガラス板や透明な樹脂板で構成させることができる。
【0025】
貯湯タンク20は、屋根Rの上に設置される集熱器10より下方に設置される。貯湯タンク20には、流出入管31が接続されている箇所とは別の箇所で、給水管33が接続されている。具体的には、流出入管31は集熱器10から下方に延びて、貯湯タンク20に上方から接続されており、給水管33は貯湯タンク20において底部の近くに接続されている。給水管33には、貯湯タンク20から給水管33を介して排出される温水の流通を開閉する第三開閉弁53が設けられている。
【0026】
貯湯タンク20は、その外周が貯湯断熱層21で覆われている。貯湯断熱層21は、断熱材層17と同様に、発泡スチロールや発泡ウレタン等の発泡樹脂で構成させることができる。
【0027】
上記構成の太陽熱温水器1を使用する際は、まず、第二開閉弁52を閉じた状態で第一開閉弁51を開く。そうすると、上水道管32から流出入管31を介して第一ヘッド部11に水が供給され、第一ヘッド部11に供給された水は複数の集熱パイプ15に流入した後、更に第二ヘッド部12に流入する。上水道管32には、水供給源から所定の水圧で水が送られてきているため、ポンプを要することなく、水を集熱器10に供給することができる。第一ヘッド部11、複数の集熱パイプ15、及び第二ヘッド部12が水で満たされたら、第一開閉弁51を閉じ、流出入管31を介した水の供給を停止する。なお、第一ヘッド部11、複数の集熱パイプ15、及び第二ヘッド部12が水で満たされた後も水を供給し続けた場合、過剰の水はオーバーフロー管41から排出される。
【0028】
第一ヘッド部11、複数の集熱パイプ15、及び第二ヘッド部12が水で満たされた状態で集熱器10が太陽光を受けると、輻射熱で水が加熱され温水となる。特に、集熱器10において集熱パイプ15の下方には反射材層16が設けられているため、集熱パイプ15間の空隙を通過した太陽光は反射材層16で反射され、集熱パイプ15内の水を温める。反射材層16の存在により、太陽の輻射熱が屋根Rを介して屋内側に放射されることが防止され、太陽の輻射熱が集熱器10内の水を加熱するために効率よく使用される。集熱パイプ15内の水、第一ヘッド部11内の水、及び第二ヘッド部12内の水は、対流により同一温度となる。
【0029】
集熱器10の最下層には断熱材層17が設けられているため、水が温められることにより温度が上昇した集熱器10から、屋根Rを介して屋内側に熱が伝導することが抑制され、集熱器10内の温水は保温される。
【0030】
集熱器10内の水の体積は、温度の上昇に伴って増加するが、第一ヘッド部11、複数の集熱パイプ15、及び第二ヘッド部12の容積の和を越えた分は、オーバーフロー管41から排出される。
【0031】
上記のようにして集熱器10内の水が温められたら、第二開閉弁52を開く。貯湯タンク20は集熱器10より下方にあり、オーバーフロー管41の存在により集熱器10内の水の流通空間、及び貯湯タンク20は大気開放系となっているため、集熱器10内の温水、すなわち、第一ヘッド部11、複数の集熱パイプ15、及び第二ヘッド部12を満たしていた温水は、低い第一ヘッド部11に接続されている流出入管31を自重により流下して貯湯タンク20に導入される。貯湯タンク20は貯湯断熱層21を備えているため、温水を保温しながら蓄えることができる。
【0032】
必要に応じて、第三開閉弁53を開けば、貯湯タンク20に蓄えられた温水を、台所、洗面所、浴室など温水を必要とする温水需要部で使用することができる。温水需要部が貯湯タンク20より低い位置にあれば、第三開閉弁53を開くのみで温水需要部まで温水が送られるが、貯湯タンク20から温水需要部までポンプを使用して温水を送ってもよい。
【0033】
以上のように、本実施形態の太陽熱温水器1によれば、集熱器10と貯湯タンク20が離隔しており、貯湯タンク20は屋根Rの上には設置しない。そのため、貯湯タンクを屋根上に設置する場合に比べて、貯湯タンク20の容量を大きくすることが可能であり、太陽熱温水器1から温水需要部に供給できる温水を多量とすることができる。
【0034】
太陽熱温水器1では、貯湯タンク20が集熱器10より下方に設けられることに加え、大気に開放されたオーバーフロー管41を備えているため、集熱器10で加熱された温水を自重により貯湯タンク20に導入することができる。また、集熱器10で温める前の水は、上水道管32から供給されるため、上水道管32の水圧によって水を送ることができる。このように、集熱器10に水を供給する際にも、集熱器10から貯湯タンク20に水を導入する際にも、ポンプを要しないため、構成が簡易である。
【0035】
更に、集熱器10では、反射材層16の上に複数の集熱パイプ15を配しているため、太陽の輻射熱で集熱パイプ15内の水を効率よく温めることができる。加えて、屋根Rの上に設置される集熱器10の最下層には断熱材層17が設けられているため、集熱器10から屋根Rを介して屋内側に熱が伝導することが抑制されており、集熱器10において太陽の輻射熱により加熱された温水を保温することができる。
【0036】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0037】
例えば、上記の実施形態では、反射材層16をアルミニウムで構成させた場合を例示したが、ステンレス鋼で構成させることもできる。また、断熱材層17及び貯湯断熱層21を、それぞれ発泡樹脂で構成させた場合を例示したが、ガラス繊維や樹脂繊維等の繊維材料で構成させることもできる。
【符号の説明】
【0038】
1 太陽熱温水器
10 集熱器
11 第一ヘッド部
12 第二ヘッド部
15 集熱パイプ
16 反射材層
17 断熱材層
18 透光性カバー
20 貯湯タンク
31 流出入管
32 上水道管
41 オーバーフロー管
R 屋根
図1
図2
図3