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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148317
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61C 5/04 20060101AFI20241010BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20241010BHJP
   F01N 1/24 20060101ALI20241010BHJP
   F01N 13/14 20100101ALI20241010BHJP
   F01N 1/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B61C5/04
B60K13/04 Z
F01N1/24 F
F01N13/14
F01N1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061363
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 剛
(72)【発明者】
【氏名】中桐 隆寿
(72)【発明者】
【氏名】伊東 拓
【テーマコード(参考)】
3D038
3G004
【Fターム(参考)】
3D038BA01
3G004DA15
3G004EA03
3G004EA05
3G004FA01
3G004FA04
(57)【要約】
【課題】ディーゼルエンジンの排気系に接続された消音器を台枠の下方に備えた鉄道車両において、消音器の耐用年数を簡単に向上させること。
【解決手段】ディーゼルエンジン14に接続された消音器15を台枠16の下方に備え、消音器は、円筒状の胴板152と胴板の両端部を閉塞する側板153とにより形成された中空円筒部15Tを備え、中空円筒部の内部空間は、仕切り板154によって消音室155が複数に区切られ、各消音室が連通パイプ156によって連通され、一方の側板には、排気ガスが流入されるインレットパイプ158Aが接続され、他方の側板には、排気ガスが排出されるアウトレットパイプ158Bが接続されている鉄道車両10であって、胴板の外周面には、仕切り板との結合部KGにおける胴板の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力QXの最大値を、胴板の素材に用いる鋼板の降伏点より低下させる応力緩和手段159が装着されている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排気系に接続された消音器を、台枠の下方に備え、
前記消音器は、内周面に吸音材が装着された円筒状の胴板と、前記胴板の軸方向両端部を閉塞する側板とにより形成された中空円筒部を備え、
前記中空円筒部の内部空間は、前記胴板の内周面に結合された複数の円盤状の仕切り板によって消音室が複数に区切られ、前記各消音室が連通パイプによって連通され、
一方の前記側板には、前記ディーゼルエンジンからの排気ガスが流入されるインレットパイプが接続され、他方の前記側板には、排気ガスが排出されるアウトレットパイプが接続されている鉄道車両であって、
前記胴板の外周面には、前記仕切り板との結合部における前記胴板の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力の最大値を、前記胴板の素材に用いる鋼板の降伏点より低下させる応力緩和手段が装着されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記応力緩和手段は、少なくとも前記胴板と前記仕切り板との結合部及びその近傍における前記胴板の外周面を被覆した断熱部材又は/及び加熱ヒータから構成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記応力緩和手段は、前記胴板と前記仕切り板との結合部及びその近傍における前記胴板の外周面を拘束する環状拘束部材から構成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された鉄道車両において、
前記胴板の外周面には、前記消音器を前記台枠に懸架させる懸架用の取付座が、前記仕切り板と前記一方の側板との中間位置と、前記仕切り板と前記他方の側板との中間位置とにそれぞれ形成され、
前記応力緩和手段は、前記一方の側板寄りの取付座と前記他方の側板寄りの取付座との間に形成され、着脱可能に装着されていることを特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、より詳しくは、ディーゼルエンジンの排気系に接続された消音器を台枠の下方に備えた鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ディーゼルエンジンの排気系に接続された消音器を、台枠の下方に備えた鉄道車両が知られている。上記消音器100は、一般に、図11に示すように、内周面に吸音材101が装着された円筒状の胴板102と、胴板102の軸方向両端部を閉塞する側板103A、103Bとにより形成された中空円筒部104を備えている。また、 中空円筒部104の内部空間は、胴板102の内周面に結合された複数の円盤状の仕切り板105A、105Bによって消音室106(106A、106B、106C)が複数に区切られ、各消音室106が連通パイプ107によって連通されている。また、一方の側板103Aには、ディーゼルエンジンからの排気ガスが流入されるインレットパイプ108が接続され、他方の側板103Bには、排気ガスが排出されるアウトレットパイプ109が接続されている。
【0003】
このような消音器100では、ディーゼルエンジンから排出される高温の排気ガスによって仕切り板105A、105Bが加熱されて半径方向に熱膨張するため、熱膨張した仕切り板105A、105Bによって胴板102が外方に押されて、仕切り板105A、105Bとの結合部近傍において胴板102に割れ等を生じさせる可能性があった。そこで、本出願人は、特許文献1において、仕切り板105A、105Bの消音室106を形成する面に、断熱材110が取り付けられている消音器100を発明し、これを開示している。この場合、仕切り板105A、105Bの温度上昇を断熱材110によって緩和させ、胴板102の割れ等を低減させる効果があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-17897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された消音器100では、以下のような問題があった。すなわち、鉄道車両のディーゼルエンジンの排気系に接続された消音器100は、通常、台枠の下面に懸架され、外気に直接接触する位置に配置されている。そのため、ディーゼルエンジンが駆動して鉄道車両が走行するときには、消音器100の仕切り板105A、105Bは約450~500℃の排気ガスによって加熱される反面、胴板102は外気によって冷却されることになり、仕切り板105A、105Bと胴板102との間で、大きな温度差が生じることになる。
【0006】
具体的には、鉄道車両が短い停車時間を挟んで連続的に長時間走行するときには、仕切り板105A、105Bに断熱材110を取り付けていても、消音室106内部の仕切り板105A、105Bの温度は、熱伝導解析の結果から約300℃と推定され、外気で冷却される胴板102の外周面の温度(約120~130℃程度)に対して、約170~180℃程度の温度差が生じることが判明した。そして、その場合、胴板102と仕切り板105A、105Bとの結合部において、温度の低い胴板102が温度の高い仕切り板105A、105Bによって内方から外方へ押圧され、胴板102の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力が、胴板102の素材に用いる鋼板(例えば、JIS規格のSS400鋼板)の降伏点(240MPa程度)を超える値まで上昇することが判明した。さらに、鉄道車両は、線路の状況等に応じて速度を変更させるため、胴板102の上記引張り応力は、増減を繰り返しながら、複数回に亘って上記鋼板(SS400)の降伏点(240MPa程度)を超える値まで上昇することが判明した。
【0007】
以上のことから、ディーゼルエンジンが駆動して走行する鉄道車両は、短い停車時間を挟んでも、連続的に長時間走行するときには、消音器100の仕切り板105A、105Bと胴板102との間で温度差が大きくなり、胴板102の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力が、胴板102の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点(240MPa程度)以上まで上昇し、その応力上昇を複数回繰り返すことが判明した。これは、胴板102の疲労寿命の短縮につながり、消音器100の耐用年数を短縮させる可能性があった。
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、ディーゼルエンジンの排気系に接続された消音器を台枠の下方に備えた鉄道車両において、消音器の耐用年数を簡単に向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両は、以下の構成を備えている。
(1)ディーゼルエンジンの排気系に接続された消音器を、台枠の下方に備え、
前記消音器は、内周面に吸音材が装着された円筒状の胴板と、前記胴板の軸方向両端部を閉塞する側板とにより形成された中空円筒部を備え、
前記中空円筒部の内部空間は、前記胴板の内周面に結合された複数の円盤状の仕切り板によって消音室が複数に区切られ、前記各消音室が連通パイプによって連通され、
一方の前記側板には、前記ディーゼルエンジンからの排気ガスが流入されるインレットパイプが接続され、他方の前記側板には、排気ガスが排出されるアウトレットパイプが接続されている鉄道車両であって、
前記胴板の外周面には、前記仕切り板との結合部における前記胴板の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力の最大値を、前記胴板の素材に用いる鋼板の降伏点より低下させる応力緩和手段が装着されていることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、胴板の外周面には、仕切り板との結合部における胴板の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力の最大値を、胴板の素材に用いる鋼板の降伏点より低下させる応力緩和手段が装着されているので、停車時間の長短に関わらず、ディーゼルエンジンが駆動して鉄道車両が連続的に長時間走行するときでも、胴板の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力は、胴板の素材に用いる鋼板の降伏点を超えることがない。そのため、胴板の疲労寿命の長期化につながり、消音器の耐用年数を向上させることができる。また、応力緩和手段は、胴板の外周面に装着されているので、既設の消音器に対しても簡単に施工することができる。
【0011】
よって、本発明によれば、ディーゼルエンジンの排気系に接続された消音器を台枠の下方に備えた鉄道車両において、消音器の耐用年数を簡単に向上させることができる。
【0012】
(2)(1)に記載された鉄道車両において、
前記応力緩和手段は、少なくとも前記胴板と前記仕切り板との結合部及びその近傍における前記胴板の外周面を被覆した断熱部材又は/及び加熱ヒータから構成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、応力緩和手段は、少なくとも胴板と仕切り板との結合部及びその近傍における胴板の外周面を被覆した断熱部材又は/及び加熱ヒータから構成されているので、胴板と仕切り板との結合部における胴板と仕切り板との温度差を縮小させることができる。そのため、ディーゼルエンジンが駆動して鉄道車両が長時間走行するときでも、胴板の外周方向の熱膨張量と仕切り板の半径方向の熱膨張量との差を減らし、胴板の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力を、胴板の素材に用いる鋼板の降伏点より、より一層低減させることができる。その結果、胴板の疲労寿命をより一層長期化でき、消音器の耐用年数を向上させることができる。
【0014】
(3)(1)に記載された鉄道車両において、
前記応力緩和手段は、前記胴板と前記仕切り板との結合部及びその近傍における前記胴板の外周面を拘束する環状拘束部材から構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、応力緩和手段は、胴板と仕切り板との結合部及びその近傍における胴板の外周面を拘束する環状拘束部材から構成されているので、胴板と仕切り板との結合部において、温度の低い胴板が温度の高い仕切り板によって内方から外方へ押圧されても、胴板の外周面を拘束する環状拘束部材がその押圧力に対抗して、胴板の変形を阻止又は低減させることができる。そのため、ディーゼルエンジンが駆動して鉄道車両が長時間走行するときでも、胴板の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力を、胴板の素材に用いる鋼板の降伏点より、より一層安定して低減させることができる。その結果、胴板の疲労寿命をより確実に長期化でき、消音器の耐用年数を向上させることができる。
【0016】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記胴板の外周面には、前記消音器を前記台枠に懸架させる懸架用の取付座が、前記仕切り板と前記一方の側板との中間位置と、前記仕切り板と前記他方の側板との中間位置とにそれぞれ形成され、
前記応力緩和手段は、前記一方の側板寄りの取付座と前記他方の側板寄りの取付座との間に形成され、着脱可能に装着されていることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、胴板の外周面には、消音器を台枠に懸架させる懸架用の取付座が、仕切り板と一方の側板との中間位置と、仕切り板と他方の側板との中間位置とにそれぞれ形成され、応力緩和手段は、一方の側板寄りの取付座と他方の側板寄りの取付座との間に形成され、着脱可能に装着されているので、消音器を台枠に懸架させた状態でも、懸架用の取付座に邪魔されることなく、応力緩和手段を胴板の外周面に簡単に装着し、簡単に取外すことができる。そのため、消音器を一々取り外す手間を掛けることなく、応力緩和手段を消音器に簡単に装着できると共に、応力緩和手段のみを取外して、応力緩和手段の補修や胴板の外周面に対する点検も簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ディーゼルエンジンの排気系に接続された消音器を台枠の下方に備えた鉄道車両において、消音器の耐用年数を簡単に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両の概略側面図である。
図2図1に示す鉄道車両におけるA矢視方向から見た概略部分平面図である。
図3図1に示す消音器における外観及び内部構造を表す部分断面付き斜視図である。
図4図1に示す消音器における中心軸に平行に切断した側断面図である。
図5図4に示すX部において、加熱された仕切り板が胴板を外方へ押圧したときの模式的拡大断面図であって、(A)は応力緩和手段を胴板の外周面に装着しないときの断面図を示し、(B)は応力緩和手段としての断熱部材を胴板の外周面に装着したときの断面図を示す。
図6図1に示す消音器において、仕切り板との結合部における胴板の外周面の温度と引張り応力を測定する装置の装着状態を表す部分斜視図である。
図7図1に示す鉄道車両を長時間走行させたときにおいて、消音器に応力緩和手段としての断熱部材を装着した状態における胴板の外周面の温度を、断熱部材を装着しない状態における胴板の外周面の温度と比較したグラフ図である。
図8図1に示す鉄道車両を長時間走行させたときにおいて、消音器に応力緩和手段としての断熱部材を装着した状態における胴板の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力を、断熱部材を装着しない状態における胴板の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力と比較したグラフ図である。
図9図1に示す消音器における第1変形例の外観及び内部構造を表す部分断面付き斜視図である。
図10図1に示す消音器における第2変形例の外観及び内部構造を表す部分断面付き斜視図である。
図11】特許文献1に記載された消音器における中心軸に平行に切断した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<本鉄道車両の構成>
次に、本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本鉄道車両の構成と作用効果について、図1図5を用いて説明する。図1に、本発明の実施形態の一態様に係る鉄道車両の概略側面図を示す。図2に、図1に示す鉄道車両におけるA矢視方向から見た概略部分平面図を示す。図3に、図1に示す消音器における外観及び内部構造を表す部分断面付き斜視図を示す。図4に、図1に示す消音器における中心軸に平行に切断した側断面図を示す。図5に、図4に示すX部において、加熱された仕切り板が胴板を外方へ押圧したときの模式的拡大断面図であって、(A)は応力緩和手段を胴板の外周面に装着しないときの断面図を示し、(B)は応力緩和手段としての断熱部材を胴板の外周面に装着したときの断面図を示す。
【0021】
図1図2に示すように、本鉄道車両10は、線路(レール)RL上を走行する車輪111と、車輪111を回転させる主電動機112と、主電動機112に電力を供給する発電機13と、発電機13を駆動させるディーゼルエンジン14と、ディーゼルエンジン14の排気系に接続された消音器15とを、台枠16の下方に備えている。車輪111と主電動機112は、台車11に装着されている。消音器15は、台枠16に懸架され、ディーゼルエンジン14の排気管141の途中に接続されている。台車11には、車輪111の回転を規制するブレーキ装置113等が装着されている。また、台車11は、空気ばね装置114を介して台枠16を支持している。
【0022】
また、本鉄道車両10は、主電動機112とブレーキ装置113と発電機13とディーゼルエンジン14等を制御する制御機器17と、発電機13が発電した電気を蓄電する蓄電池18と、ディーゼルエンジン14の吸気管142に接続された空気清浄器19等とを、台枠16の下方に備えている。制御機器17は、運転室の操作盤(図示しない)と接続され、運転士は、線路状況等に応じて操作盤を操作して、主電動機112、ブレーキ装置113、ディーゼルエンジン14等を適宜作動させ、車両速度を変更することができる。
【0023】
また、本鉄道車両10は、台枠16の車両幅方向の両端部から上方に起立する側構体21と、台枠16の車両前後方向の両端部から上方に起立する妻構体22と、側構体21及び妻構体22の上端部に接続された屋根構体23とを備えている。また、側構体21には、乗客が乗降する乗客用側扉211と、乗務員が乗降する乗務員用側扉212と、各種大きさの側窓213、214とが形成されている。また、台枠16の車両前後方向の両端部には、車両同士を連結する車両連結具215が固定されている。
【0024】
また、図3図5に示すように、消音器15は、内周面に吸音材151が装着された円筒状の胴板152と、胴板152の軸方向両端部を閉塞する側板153(153A、153B)とにより形成された中空円筒部15Tを備えている。吸音材151は、例えば、グラスウール等を用い、パンチングメタル151Pによって胴板152へ押さえ付けて固定されている。胴板152は、一般構造用の鋼板(例えば、JIS規格:SS400鋼板)を円筒状に曲げ加工して形成されている。側板153は、胴板152と同材料の鋼板で円盤状に形成され、胴板152の両端内周部に溶接等によって結合されている。
【0025】
また、中空円筒部15Tの内部空間は、胴板152の内周面に結合された複数(例えば、2つ)の仕切り板154(154A、154B)によって消音室155(155A、155B、155C)が複数(例えば、3つ)に区切られている。仕切り板154は、胴板152と同材料の鋼板で円盤状に形成され、胴板152の内周面に溶接等によって結合されている。
【0026】
また、各消音室155は、連通パイプ156によって連通されている。ここでは、複数(例えば、3つ)の連通パイプ156が、仕切り板154(154A、154B)を貫通して固定されている。連通パイプ156の側壁面156Sには、排気ガスが通過する多数の通気口(図示しない)が形成されている。
【0027】
また、一方の側板153Aには、ディーゼルエンジン14からの排気ガスが流入されるインレットパイプ158Aが接続され、他方の側板153Bには、排気ガスが排出されるアウトレットパイプ158Bが接続されている。インレットパイプ158Aとアウトレットパイプ158Bの消音室155(155A、155C)内に挿入された内端部158AN、158BNは閉塞され、消音室155(155A、155C)内に挿入された側壁面158AS、158BSには、排気ガスが通過する多数の通気口(図示しない)が形成されている。インレットパイプ158Aとアウトレットパイプ158Bの消音室155(155A、155C)外に突出された外端部158AG、158BGは、鍔状に形成され、排気管141と接続されている。
【0028】
ここでは、仕切り板154の消音室155(155A、155B、155C)を形成する面には、断熱材(例えば、グラスウール等)157が取り付けられている。断熱材157は、パンチングメタル157Pによって仕切り板154へ押さえ付けて固定されている。この断熱材157は、仕切り板154の温度上昇の進行を遅らせる効果がある。そのため、例えば、10分程度の走行時間で同程度の停車時間を挟んで走行する鉄道車両には、停車時間中に仕切り板154の温度を下降させることができるので、仕切り板154と胴板152との温度差の増大を回避でき、胴板152に対する引張り応力を低減させる上で、有効である。しかし、後述する実験結果から明らかなように、1~2分程度の停車時間を挟んで連続的に長時間走行する鉄道車両10では、仕切り板154と胴板152との温度差の増大を回避できず、消音器15の耐用年数向上への効果は少ないことが判明した。
【0029】
そこで、鋭意検討した結果、停車時間の長短に関わらず連続的に長時間走行する鉄道車両10にも、消音器15の耐用年数向上への効果を発揮させるため、胴板152の外周面には、仕切り板154(154A、154B)との結合部KGにおける胴板152の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力QXの最大値QX1を、胴板152の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点KX(240MPa)より低下させる応力緩和手段159を装着することを考案した。
【0030】
この場合、停車時間の長短に関わらず、ディーゼルエンジン14が駆動して鉄道車両10が連続的に長時間走行するときでも、胴板152の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力QXは、胴板152の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点KX(240MPa)を超えることがない。そのため、胴板152の疲労寿命の長期化につながり、消音器15の耐用年数を向上させることができる。また、応力緩和手段159は、胴板152の外周面に装着されているので、既設の消音器15に対しても簡単に施工することができる。
【0031】
よって、本鉄道車両10によれば、ディーゼルエンジン14の排気系に接続された消音器15を台枠16の下方に備えた鉄道車両10において、消音器15の耐用年数を簡単に向上させることができる。
【0032】
また、本鉄道車両10においては、応力緩和手段159は、少なくとも胴板152と仕切り板154との結合部KG及びその近傍における胴板152の外周面を被覆した断熱部材159Aから構成されていることが好ましい。断熱部材159Aは、例えば、所定の厚さ(例えば、約30~40mm程度)に積層されたガラスウール等をシート材で被覆したものを用いることができる。そして、例えば、ベルト部材(図示しない)を断熱部材159Aの外周に巻き付けて結束することによって、断熱部材159Aを胴板152の外周面に装着しても良い。
【0033】
この場合、鉄道車両10が走行するとき、外気や雨、雪等によって胴板152の仕切り板154との結合部KG及びその近傍における熱が奪われにくくなり、胴板152の外周面の温度と仕切り板154の温度との温度差を縮小させることができる。そのため、ディーゼルエンジン14が駆動して鉄道車両10が長時間走行するときでも、胴板152の外周方向の熱膨張量と仕切り板154の半径方向の熱膨張量との差を減らすことができる。
【0034】
したがって、図5に示すように、仕切り板154が胴板152を外方へ押圧する押圧力PXを、断熱部材159Aが装着されていないときの押圧力PYに比較して、大幅に低減できる。よって、胴板152の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力QXを、断熱部材159Aが装着されていないときの引張り応力QYに比較して、大幅に低減でき、胴板152の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点(240MPa)より、より一層低減させることができる。その結果、胴板152の疲労寿命をより一層長期化でき、消音器15の耐用年数を向上させることができる。なお、図5では、仕切り板154に取り付けた断熱材157は、図面の簡略化のため、省略されている。
【0035】
また、応力緩和手段159としての断熱部材159Aは、胴板152の外周面に対して、仕切り板154(154A、154B)同士の間、及び仕切り板154と側板153との中間位置まで被覆すればよく、側板153が結合された胴板152の軸方向両端部まで覆う必要はない。そもそも、本鉄道車両10におけるディーゼルエンジン14の消音器15は、台枠16の下方に懸架され、消音器15の熱を外気に直接放熱して冷却する構造となっている。したがって、側板153は、通常、断熱材によって被覆されていないので、胴板152と同様に外気に晒され、側板153と胴板152との間で温度差が生じにくい。そのため、胴板152と側板153との結合部において、胴板152は側板153によって外方へ押圧されにくい。その結果、胴板152の軸方向端部において、胴板152の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力は、胴板152の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点KX(240MPa)を超えることがないからである。
【0036】
また、本鉄道車両10においては、図3図4に示すように、胴板152の外周面には、消音器15を台枠16に懸架させる懸架用の取付座15Z(15ZA、15ZB)が、一方の仕切り板154Aと一方の側板153Aとの中間位置と、他方の仕切り板154Bと他方の側板153Bとの中間位置とにそれぞれ形成され、応力緩和手段159(断熱部材159A)は、一方の側板153A寄りの取付座15ZAと他方の側板153B寄りの取付座15ZBとの間に形成され、着脱可能に装着されていることが好ましい。
【0037】
ここで、取付座15Z(15ZA、15ZB)は、胴板152の外周面に接合された脚部15Z1と、脚部15Z1の上端部に結合され水平状に形成された座部15Z2とから成り、中心軸に対して左右対称に4つ形成されている。各取付座15Z(15ZA、15ZB)は、台枠16から下方に突出した支持金具161(161A、161B)に、弾性部材163を挟んで支持ボルト162によって連結されている。胴板152の外周面と台枠16の下面との間には、応力緩和手段159(断熱部材159A)の厚さより大きな隙間が形成されている。また、断熱部材159Aは、例えば、上記隙間より小さい厚さ(例えば、約30~40mm程度)に積層されたガラスウール等をシート材で被覆したものであり、シート材の外方から捲回したベルト部材(図示しない)を結束して、胴板152の外周面に着脱可能に形成されていても良い。
【0038】
この場合、消音器15を台枠16に懸架させた状態でも、懸架用の取付座15Zに邪魔されることなく、応力緩和手段159(断熱部材159A)を胴板152の外周面に簡単に装着し、簡単に取外すことができる。そのため、消音器15を一々取り外す手間を掛けることなく、応力緩和手段159(断熱部材159A)を消音器15に簡単に装着できると共に、応力緩和手段159(断熱部材159A)のみを取外して、応力緩和手段159(断熱部材159A)の補修や胴板152の外周面に対する点検も簡単に行うことができる。
【0039】
<本鉄道車両の走行実験の結果>
次に、本鉄道車両10の走行実験の結果について、図6図8を用いて説明する。図6に、図1に示す消音器において、仕切り板との結合部における胴板の外周面の温度と引張り応力を測定する装置の装着状態を表す斜視図を示す。図7に、図1に示す鉄道車両を長時間走行させたときにおいて、消音器に応力緩和手段としての断熱部材を装着した状態の胴板の外周面の温度を、断熱部材を装着しない状態の胴板の外周面の温度と比較したグラフ図を示す。図8に、図1に示す鉄道車両を長時間走行させたときにおいて、消音器に応力緩和手段としての断熱部材を装着した状態における胴板の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力を、断熱部材を装着しない状態における胴板の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力と比較したグラフ図を示す。
【0040】
本鉄道車両10の走行実験では、図6に示すように、消音器15には、胴板152と仕切り板154との結合部KGにおける胴板152の外周面の温度を測定するサーミスタSMと中心軸方向の引張り応力(QX、QY)を測定する歪ゲージ装置HGとが装着されている。ここでは、仕切り板154の温度は測定していないが、本鉄道車両10が1~2分程度の短い停車時間を挟んで連続的に長時間走行するときには、仕切り板154に断熱材157を取り付けていても、仕切り板154の温度は、ディーゼルエンジン14の駆動状況によって変動するが、消音室155内部の温度が約400~500℃程度のときは、約300℃程度まで上昇すると推定されている。
【0041】
また、本鉄道車両10は、図7図8に示すように、図3図4に示す応力緩和手段159(断熱部材159A)を胴板152の外周面に装着しない場合と、応力緩和手段159(断熱部材159A)を胴板152の外周面に装着した場合とに分けて、1~2分程度の短時間の停車時間を複数回(約10回程度)挟みながら連続的に長時間(約2時間)走行した後、13分程度停車し、更に約30分程度走行した。本鉄道車両10の走行速度SSは、最高で100km/h程度で、途中50km/h程度へ減速することもあり、走行速度SSを線路状況に応じて増減しながら走行した。
【0042】
そして、1~2分程度の短時間の停車時間を複数回(約10回程度)挟みながら連続的に長時間(約2時間)走行している状態では、図7に示すように、図3図4に示す応力緩和手段159(断熱部材159A)を胴板152の外周面に装着しない場合の胴板152の外周面の温度TYは、走行開始時から10分程度で120℃程度まで上昇し、その後は、120℃から130℃程度の間で頻繁に増減していた。また、図8に示すように、図3図4に示す応力緩和手段159(断熱部材159A)を胴板152の外周面に装着しない場合の胴板152の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力QYは、走行開始時から10分程度で180MPa程度まで増加し、その後、走行速度SSの変化や一時停車等によって一旦減少するが、主に180MPaと胴板152の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点である240MPa程度との間で、増減しながら推移した。そして、上記引張り応力QYは、胴板152の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点(240MPa程度)を複数回超えることがあった。
【0043】
これに対して、図3図4に示す応力緩和手段159(断熱部材159A)を胴板152の外周面に装着した場合の胴板152の外周面の温度TXは、走行開始時から徐々に増加して50分程度で200℃程度まで上昇し、その後は、200℃程度と210℃程度との間で緩やかに増減していた。また、図8に示すように、図3図4に示す応力緩和手段159(断熱部材159A)を胴板152の外周面に装着した場合の胴板152の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力QXは、走行開始時から5分程度で150MPa程度まで増加したが、その後、走行速度の変化や一時停車等によって一旦減少するが、主に130MPaと180MPa程度との間で、増減しながら推移した。また、上記引張り応力QXは、200MPaを超えることが無く、胴板152の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点(240MPa程度)を超えることは一度も無かった。
【0044】
なお、図7に示すように、13分程度の停車時において、応力緩和手段159(断熱部材159A)を装着しない場合の温度TYは、停車後に115℃位まで下降し、再走行することによって130℃程度まで上昇したが、それ以上は上昇しなかった。また、図8に示すように、応力緩和手段159(断熱部材159A)を装着しない場合の引張り応力QYは、停車時に80MPa位まで減少したが、再走行によって240MPa程度まで増加した。
【0045】
一方、図7に示すように、13分程度の停車時において、応力緩和手段159(断熱部材159A)を装着した場合の温度TXは、停車後に180℃位まで低下したが、再走行すると、温度TXは、再度200℃位まで上昇した。また、図8に示すように、応力緩和手段159(断熱部材159A)を装着した場合の引張り応力QXは、停車時に70MPa位まで下降し、再走行によって190MPa程度まで増加したが、それ以上は増加しなかった。引張り応力QXの最大値QX1は、200MPa以下であった。
【0046】
以上の実験結果から、1~2分程度の短時間の停車時間を複数回(約10回程度)挟みながら連続的に長時間(約2時間)走行している場合、胴板152の外周面に応力緩和手段159(断熱部材159A)を装着しない状態では、胴板152の外周面が外気等によって冷却され、胴板152の外周面の温度TYは、130℃程度以上には上昇しないことが判明した。これは、約300℃程度まで上昇すると推定される仕切り板154の温度と、130℃程度以上には上昇しない胴板152の外周面の温度TYとの間には、約170~180℃程度の温度差が生じることを意味する。
【0047】
これに対して、同じように1~2分程度の短時間の停車時間を複数回(約10回程度)挟みながら連続的に長時間(約2時間)走行している場合でも、胴板152の外周面に応力緩和手段159(断熱部材159A)を装着した状態では、胴板152の外周面が外気等によって冷却され難いので、胴板152の外周面の温度TXは、200℃程度まで上昇することが判明した。これは、約300℃程度まで上昇すると推定される仕切り板154の温度と、200℃程度まで上昇する胴板152の外周面の温度TXとの間には、約100℃程度の温度差が生じることを意味する。すなわち、胴板152の外周面に応力緩和手段159(断熱部材159A)を装着することによって、仕切り板154の温度と胴板152の外周面の温度TXとの温度差を、70℃程度減少できることになる。
【0048】
そして、仕切り板154の温度と胴板152の外周面の温度TXとの温度差を70℃程度減少できたことによって、応力緩和手段159(断熱部材159A)を胴板152の外周面に装着した場合の胴板152の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力QXを、応力緩和手段159(断熱部材159A)を胴板152の外周面に装着しない場合に比較して、50MPa程度以上低下させることができ、その結果、上記引張り応力QXは、胴板152の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点(240MPa程度)より、50~60MPa程度低下させることができたと解される。
【0049】
また、走行途中に13分程度の停車時間があっても、仕切り板154の温度と胴板152の外周面の温度TXとの温度差を70℃程度減少できること、及び、上記引張り応力QXを胴板152の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点(240MPa程度)より、40~50MPa程度低下できることは、1~2分程度の短時間の停車時間を複数回(約10回程度)挟みながら連続的に長時間(約2時間)走行する場合と殆ど変わらないことが判明した。
【0050】
その結果、停車時間の長短に関わらず、ディーゼルエンジン14が駆動して鉄道車両10が連続的に長時間走行するときでも、胴板152の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力QXは、胴板152の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点(240MPa程度)を越えることがないと推認できる。そのため、胴板152の疲労寿命の長期化につながり、消音器15の耐用年数を向上させることができると判断できる。
【0051】
<変形例>
なお、本鉄道車両10は、本発明の要旨を変更しない範囲で、各種形態に変更できることは言うまでもない。例えば、本鉄道車両10は、線路(レール)RL上を走行する車輪111と、車輪111を回転させる主電動機112と、主電動機112に電力を供給する発電機13と、発電機13を駆動させるディーゼルエンジン14と、ディーゼルエンジン14の排気系に接続された消音器15とを、台枠16の下方に備えている。しかし、必ずしも上記構成の鉄道車両に限る必要はない。例えば、本鉄道車両10は、線路(レール)RL上を走行する車輪111と、車輪111を回転させる駆動源としてのディーゼルエンジン14と、ディーゼルエンジン14の排気系に接続された消音器15とを、台枠16の下方に備えた鉄道車両でも良い。
【0052】
また、本鉄道車両10においては、応力緩和手段159は、少なくとも胴板152と仕切り板154との結合部KG及びその近傍における胴板152の外周面を被覆した断熱部材159Aから構成されている。しかし、応力緩和手段159は、必ずしも断熱部材159Aから構成されたものに限る必要はない。
【0053】
(変形例1)
応力緩和手段159は、例えば、図9に示すように、少なくとも胴板152と仕切り板154との結合部KG及びその近傍における胴板152の外周面を被覆した断熱部材159A及び加熱ヒータ159Bから構成されていても良い。ここでは、胴板152と仕切り板154との結合部KG及びその近傍における胴板152の外周面を加熱ヒータ159Bで被覆し、加熱ヒータ159B及び胴板152の外周面を断熱部材159Aによって被覆している。
【0054】
この場合、加熱ヒータ159Bの発熱によって、胴板152と仕切り板154との結合部KGにおける胴板152と仕切り板154との温度差をより一層縮小させることができる。そのため、例えば、寒冷地等でディーゼルエンジン14が駆動して鉄道車両10Bが長時間走行するときでも、胴板152の外周方向の熱膨張量と仕切り板154の半径方向の熱膨張量との差を減らし、胴板152の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力QXを、胴板152の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点(240MPa程度)より、より一層低減させることができる。その結果、胴板152の疲労寿命をより一層長期化でき、消音器15Bの耐用年数を向上させることができる。
【0055】
なお、応力緩和手段159は、少なくとも胴板152と仕切り板154との結合部KG及びその近傍における胴板152の外周面を被覆した加熱ヒータ159Bのみから構成されていても良い。
【0056】
(変形例2)
また、応力緩和手段159は、例えば、図10に示すように、胴板152と仕切り板154との結合部KG及びその近傍における胴板152の外周面を拘束する環状拘束部材159Cから構成されていても良い。環状拘束部材159Cは、胴板152の周方向の膨張量を阻止又は低減させるため、例えば、胴板152より板厚が厚く、引張強度が強くて、硬度が硬い円筒状の鋼材で形成されていることが好ましい。また、環状拘束部材159Cは、胴板152の外周面への着脱を容易化するため、例えば、半円弧状に分割されていて、互いに連結可能に形成されていても良い。
【0057】
この場合、胴板152と仕切り板154との結合部KGにおいて、温度の低い胴板152が温度の高い仕切り板154によって内方から外方へ押圧されても、胴板152の外周面を拘束する環状拘束部材159Cがその押圧力に対抗して、胴板152の変形を阻止又は低減させることができる。そのため、ディーゼルエンジン14が駆動して鉄道車両10Cが長時間走行するときでも、胴板152の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力QXを、胴板152の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点(240MPa程度)より、より一層安定して低減させることができる。その結果、胴板152の疲労寿命をより確実に長期化でき、消音器15Cの耐用年数を向上させることができる。
【0058】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両10、10B、10Cによれば、胴板152の外周面には、仕切り板154(154A、154B)との結合部KGにおける胴板152の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力QXの最大値QX1を、胴板152の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点(240MPa程度)より低下させる応力緩和手段159(159A、159B、159C)が装着されているので、停車時間の長短に関わらず、ディーゼルエンジン14が駆動して鉄道車両10、10B、10Cが連続的に長時間走行するときでも、胴板152の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力QXは、胴板152の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点(240MPa程度)を超えることがない。そのため、胴板152の疲労寿命の長期化につながり、消音器15、15B、15Cの耐用年数を向上させることができる。また、応力緩和手段159(159A、159B、159C)は、胴板152の外周面に装着されているので、既設の消音器15に対しても簡単に施工することができる。
【0059】
よって、本実施形態によれば、ディーゼルエンジン14の排気系に接続された消音器15、15B、15Cを台枠16の下方に備えた鉄道車両10、10B、10Cにおいて、消音器15、15B、15Cの耐用年数を簡単に向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、応力緩和手段159は、少なくとも胴板152と仕切り板154(154A、154B)との結合部KG及びその近傍における胴板152の外周面を被覆した断熱部材159A又は/及び加熱ヒータ159Bから構成されているので、胴板152と仕切り板154(154A、154B)との結合部KGにおける胴板152と仕切り板154(154A、154B)との温度差を縮小させることができる。そのため、ディーゼルエンジン14が駆動して鉄道車両10、10Bが長時間走行するときでも、胴板152の外周方向の熱膨張量と仕切り板154(154A、154B)の半径方向の熱膨張量との差を減らし、胴板152の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力QXを、胴板152の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点(240MPa程度)より、より一層低減させることができる。その結果、胴板152の疲労寿命をより一層長期化でき、消音器15、15Bの耐用年数を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、応力緩和手段159は、胴板152と仕切り板154(154A、154B)との結合部KG及びその近傍における胴板152の外周面を拘束する環状拘束部材159Cから構成されているので、胴板152と仕切り板154(154A、154B)との結合部KGにおいて、温度の低い胴板152が温度の高い仕切り板154(154A、154B)によって内方から外方へ押圧されても、胴板152の外周面を拘束する環状拘束部材159Cがその押圧力に対抗して、胴板152の変形を阻止又は低減させることができる。そのため、ディーゼルエンジン14が駆動して鉄道車両10Cが長時間走行するときでも、胴板152の外周面に作用する中心軸方向の引張り応力QXを、胴板152の素材に用いる鋼板(SS400)の降伏点(240MPa程度)より、より一層安定して低減させることができる。その結果、胴板152の疲労寿命をより確実に長期化でき、消音器15Cの耐用年数を向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、胴板152の外周面には、消音器15、15B、15Cを台枠16に懸架させる懸架用の取付座15Z(15ZA、15ZB)が、仕切り板154Aと一方の側板153Aとの中間位置と、仕切り板154Bと他方の側板153Bとの中間位置とにそれぞれ形成され、応力緩和手段159(159A、159B、159C)は、一方の側板寄りの取付座15ZAと他方の側板寄りの取付座15ZBとの間に形成され、着脱可能に装着されているので、消音器15、15B、15Cを台枠16に懸架させた状態でも、懸架用の取付座15Z(15ZA、15ZB)に邪魔されることなく、応力緩和手段159(159A、159B、159C)を胴板152の外周面に簡単に装着し、簡単に取外すことができる。そのため、消音器15、15B、15Cを一々取り外す手間を掛けることなく、応力緩和手段159(159A、159B、159C)を消音器15、15B、15Cに簡単に装着できると共に、応力緩和手段159(159A、159B、159C)のみを取外して、応力緩和手段159(159A、159B、159C)の補修や胴板152の外周面に対する点検も簡単に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気系に接続された消音器を台枠の下方に備えた鉄道車両として利用できる。
【符号の説明】
【0064】
13 発電機
14 ディーゼルエンジン
15、15B、15C 消音器
15T 中空円筒部
16 台枠
111 車輪
112 主電動機
152 胴板
153、153A、153B 側板
154、154A、154B 仕切り板
155、155A、155B、155C 消音室
156 連通パイプ
158A インレットパイプ
158B アウトレットパイプ
159、159A、159B、159C 応力緩和手段
159A 断熱部材
159B 加熱ヒータ
159C 環状拘束部材
KG 結合部
QX 引張り応力
QX1 最大値
RL 線路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11