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特開2024-148334炭化珪素半導体装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148334
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241010BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241010BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20241010BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241010BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20241010BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H01L29/78 652B
H01L29/78 652T
H01L29/78 652P
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652H
H01L29/78 652D
H01L29/78 652M
H01L29/78 658E
H01L29/78 658A
H01L21/265 Q
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061385
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】森谷 友博
(57)【要約】
【課題】主領域が主電極にオーミック接触することができると共に、他の部分において表面の凹凸が大きくなるのを抑制することができるSiC半導体装置を提供する。
【解決手段】平面視で、活性部と、活性部の周囲を囲んで設けられた耐圧構造部とを備え、活性部及び耐圧構造部に亘って設けられた炭化珪素からなる第1導電型のドリフト層と、活性部のドリフト層の上面側に設けられ且つ第2導電型の炭化珪素からなるベース領域と、ベース領域の上面側に設けられ、第1導電型の炭化珪素からなり且つ少なくとも上面側の部分が3C構造を含む主領域6a,6bと、耐圧構造部のドリフト層の上面側に、平面視で耐圧構造部の外周に沿って設けられ且つ4H構造の炭化珪素からなるチャネルストッパ領域6cと、主領域及びベース領域に接して設けられた絶縁ゲート型電極構造と、チャネルストッパ領域の上面に設けられた無機絶縁膜10と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で、活性部と、前記活性部の周囲を囲んで設けられた耐圧構造部とを備え、
前記活性部及び前記耐圧構造部に亘って設けられた炭化珪素からなる第1導電型のドリフト層と、
前記活性部の前記ドリフト層の上面側に設けられ且つ第2導電型の炭化珪素からなるベース領域と、
前記ベース領域の上面側に設けられ、第1導電型の炭化珪素からなり且つ少なくとも上面側の部分が3C構造を含む主領域と、
前記耐圧構造部の前記ドリフト層の上面側に、平面視で前記耐圧構造部の外周に沿って設けられ且つ4H構造の炭化珪素からなるチャネルストッパ領域と、
前記主領域及び前記ベース領域に接して設けられた絶縁ゲート型電極構造と、
前記チャネルストッパ領域の上面に設けられた無機絶縁膜と、
を備える、炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記絶縁ゲート型電極構造は、
前記主領域及び前記ベース領域を貫通するトレンチの内側に設けられたゲート絶縁膜と、
前記トレンチの内側に前記ゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
を備える、請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記チャネルストッパ領域は、第1導電型又は第2導電型である、請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記無機絶縁膜の上面に設けられた有機絶縁膜を更に備える、請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記有機絶縁膜は、外周端部が平面視で前記チャネルストッパ領域に重なる位置にある、請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記主領域の上面側の部分に接して設けられた主電極を有する、請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記主領域の不純物濃度は1×1020cm-3以上、1×1021cm-3以下である、請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記チャネルストッパ領域の不純物濃度は1×1019cm-3以上、3×1020cm-3以下である、請求項1又は2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
平面視で、活性部と、前記活性部の周囲を囲んで設けられた耐圧構造部とを有した炭化珪素半導体装置の製造方法において、
前記活性部及び前記耐圧構造部に亘って炭化珪素からなる第1導電型のドリフト層を設ける工程と、
前記活性部の前記ドリフト層の上面側に、第2導電型の炭化珪素からなるベース領域を形成する工程と、
前記ベース領域の上面側にイオン注入することにより、第1導電型の炭化珪素からなり且つ少なくとも上面側の部分が3C構造を含む主領域を形成する工程と、
前記耐圧構造部の前記ドリフト層の上面側にイオン注入することにより、平面視で前記耐圧構造部の外周に沿って4H構造の炭化珪素からなるチャネルストッパ領域を形成する工程と、
前記主領域及び前記ベース領域に接して絶縁ゲート型電極構造を形成する工程と、
前記チャネルストッパ領域の上面に無機絶縁膜を設ける工程と、
を含む、炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記絶縁ゲート型電極構造を形成する工程は、
前記主領域及び前記ベース領域を貫通するトレンチを形成する工程と、
前記トレンチの内側にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記トレンチの内側に前記ゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
を含む、請求項9に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記チャネルストッパ領域を形成する工程は、第1導電型又は第2導電型の不純物をイオン注入することを含む、請求項9又は10に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記無機絶縁膜の上面に有機絶縁膜を形成する工程をさらに含む、請求項9又は10に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記有機絶縁膜は、外周端部が平面視で前記チャネルストッパ領域に重なるように形成する、請求項12に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記主領域の上面側の部分に接するように主電極を形成する工程をさらに含む、請求項9又は10に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記主領域を形成する工程は、第1導電型の不純物をドーズ量2×1015cm-2以上、1×1016cm-2以下でイオン注入することを含む、請求項9又は10に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記主領域を形成する工程は、第1導電型の不純物と不活性ガス元素とをあわせてドーズ量2×1015cm-2以上、1×1016cm-2以下でイオン注入することを含む、請求項9又は10に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記チャネルストッパ領域を形成する工程は、前記第1導電型又は前記第2導電型の不純物をドーズ量1×1014cm-2以上、2×1015cm-2未満でイオン注入することを含む、請求項11に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記第1導電型の不純物は、燐、砒素、アンチモン、又は窒素である、請求項15に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記第1導電型の不純物は、燐、砒素、アンチモン、又は窒素であり、
前記第2導電型の不純物は、アルミニウムである、請求項17に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素(SiC)を用いたSiC半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、六方晶単結晶の炭化珪素基板にリンをイオン注入することでアモルファス層を形成し、熱処理することでアモルファス層を立方晶単結晶のn型炭化珪素に再結晶化させ、n型炭化珪素の上面にニッケルを蒸着することで電極を形成する半導体装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、4H-SiCからなるn型SiCの第1主面上に形成させたn型エピタキシャル成長層内において、n型ソース領域と、n型ソース領域内に形成されたn型3C-SiC領域及びp型電位固定領域とを有し、n型3C-SiC領域及びp型電位固定領域と接してバリアメタル膜が形成され、バリアメタル膜上にソース配線用電極が形成される半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-49198号公報
【特許文献2】国際公開第2017/042963号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SiC半導体装置において、ソース電極(主電極)とオーミック接触するためにソース領域(主領域)を3C-SiCで構成することが検討されている。その一方で、3C-SiCは、4H-SiCと比較して結晶欠陥が多く、表面の凹凸が大きくなる場合がある。表面の凹凸が大きくなると、例えばその上に成膜された絶縁膜との密着性が劣化する可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題を鑑み、主領域が主電極にオーミック接触することができると共に、他の部分において表面の凹凸が大きくなるのを抑制することができるSiC半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一態様は、平面視で、活性部と、活性部の周囲を囲んで設けられた耐圧構造部とを備え、活性部及び耐圧構造部に亘って設けられた炭化珪素からなる第1導電型のドリフト層と、活性部のドリフト層の上面側に設けられ且つ第2導電型の炭化珪素からなるベース領域と、ベース領域の上面側に設けられ、第1導電型の炭化珪素からなり且つ少なくとも上面側の部分が3C構造を含む主領域と、耐圧構造部のドリフト層の上面側に、平面視で耐圧構造部の外周に沿って設けられ且つ4H構造の炭化珪素からなるチャネルストッパ領域と、主領域及びベース領域に接して設けられた絶縁ゲート型電極構造と、チャネルストッパ領域の上面に設けられた無機絶縁膜と、を備えるSiC半導体装置であることを要旨とする。
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の他の態様は、平面視で、活性部と、活性部の周囲を囲んで設けられた耐圧構造部とを有した炭化珪素半導体装置の製造方法において、活性部及び耐圧構造部に亘って炭化珪素からなる第1導電型のドリフト層を設ける工程と、活性部のドリフト層の上面側に、第2導電型の炭化珪素からなるベース領域を形成する工程と、ベース領域の上面側にイオン注入することにより、第1導電型の炭化珪素からなり且つ少なくとも上面側の部分が3C構造を含む主領域を形成する工程と、耐圧構造部のドリフト層の上面側にイオン注入することにより、平面視で耐圧構造部の外周に沿って4H構造の炭化珪素からなるチャネルストッパ領域を形成する工程と、主領域及びベース領域に接して絶縁ゲート型電極構造を形成する工程と、チャネルストッパ領域の上面に無機絶縁膜を設ける工程と、を含む、SiC半導体装置の製造方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、主領域が主電極にオーミック接触することができると共に、他の部分において表面の凹凸が大きくなるのを抑制することができるSiC半導体装置及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るSiC半導体装置の一例を示す平面概略図である。
図2図1のA-A切断線に沿って断面視した時の断面構成を示す縦断面図である。
図3】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための断面概略図である。
図4】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図3に引き続く断面概略図である。
図5】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図4に引き続く断面概略図である。
図6】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図5に引き続く断面概略図である。
図7】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図6に引き続く断面概略図である。
図8】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図7に引き続く断面概略図である。
図9】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図8に引き続く断面概略図である。
図10】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図9に引き続く断面概略図である。
図11】第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための図10に引き続く断面概略図である。
図12】第2実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための断面概略図である。
図13】第2実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明するための断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示の第1~第2実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は実際のものとは異なる場合がある。また、図面相互間においても寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。また、以下に示す第1~第2実施形態は、本開示の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本開示の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。
【0012】
本明細書において、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)のソース領域は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)のエミッタ領域として選択可能な「一方の主領域(第1主領域)」である。また、MOS制御静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)等のサイリスタにおいては、「一方の主領域」はカソード領域として選択可能である。MOSFETのドレイン領域は、IGBTにおいてはコレクタ領域を、サイリスタにおいてはアノード領域として選択可能な半導体装置の「他方の主領域(第2主領域)」である。本明細書において単に「主領域」と言うときは、当業者の技術常識から妥当な第1主領域又は第2主領域のいずれかを意味する。また、絶縁ゲート型電極構造は、トレンチゲート型であっても良く、プレーナゲート型であっても良い。
【0013】
また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本開示の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。また、「上面」は「おもて面」と読み替えてもよく、「下面」は「裏面」と読み替えてもよい。
【0014】
また、以下の説明では、第1導電型がn型、第2導電型がp型の場合について例示的に説明する。しかし、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をp型、第2導電型をn型としても構わない。またnやpに付す+や-は、+及び-が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。ただし同じnとnとが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。
【0015】
また、SiC結晶には結晶多形が存在し、主なものは立方晶の3C、及び六方晶の4H、6Hである。室温における禁制帯幅は3C-SiCでは2.23eV、4H-SiCでは3.26eV、6H-SiCでは3.02eVの値が報告されている。以下の説明では、4H-SiC及び3C-SiCを主に用いる場合を例示する。
【0016】
(第1実施形態)
<SiC半導体装置の構造>
第1実施形態に係るSiC(炭化珪素)半導体装置(半導体チップ)100は、図1に示すように、平面視で、例えば矩形状の平面形状を有した活性部101と、活性部101の周囲を囲んで設けられた耐圧構造部102とを備える。また、SiC半導体装置100は、平面視で、活性部101と耐圧構造部102との間には、活性部101を囲んで設けられた領域103を備えている。
【0017】
図2は、図1のA-A線方向から見た断面図である。なお、図2においては、活性部101の一部の図示を省略している。図2に示すように、活性部101には活性素子が含まれ、領域103にはリング領域9bが含まれる場合を例示している。耐圧構造部102には終端構造として後述の複数の電界緩和領域9a及びチャネルストッパ領域6cが含まれる場合を例示している。
【0018】
SiC半導体装置100は、図2に示すように、活性素子としてトレンチゲート型のMOSFETを含む場合を例示する。なお、図2では、1つのトレンチ7aに埋め込まれた絶縁ゲート型電極構造(7b,7c)を含む単位セルを例示するが、実際には、この単位セルが周期的に多数配列されている。
【0019】
SiC半導体装置100は、活性部101、耐圧構造部102、及び領域103に亘って設けられた、第1導電型(n型)のドリフト層2を備える。ドリフト層2は、例えば、4H-SiC等のSiCからなるエピタキシャル成長層で構成されている。ドリフト層2の不純物濃度は、例えば1×1015cm-3以上、5×1016cm-3以下程度である。ドリフト層2の厚さは、例えば1μm以上、100μm以下程度である。ドリフト層2の不純物濃度及び厚さは、耐圧仕様等に応じて適宜調整可能である。
【0020】
活性部101では、ドリフト層2の上面側には、ドリフト層2より高不純物濃度の第1導電型(n型)の電流拡散層(CSL)3が選択的に設けられている。電流拡散層3の下面は、ドリフト層2の上面に接している。電流拡散層3は、例えば、ドリフト層2にn型不純物をイオン注入して形成された、4H-SiC等のSiCからなる領域である。電流拡散層3の不純物濃度は、例えば5×1016cm-3以上、5×1017cm-3以下程度である。なお、電流拡散層3は必ずしも設ける必要はなく、電流拡散層3を設けない場合にはドリフト層2が電流拡散層3の領域まで拡張して設けられていてよい。また、耐圧構造部102、及び領域103に亘って、電流拡散層3を設けてもよい。
【0021】
活性部101において、電流拡散層3の上面側には第2導電型(p型)のベース領域5a,5bが選択的に設けられている。ベース領域5a,5bの下面は、電流拡散層3の上面に接している。なお、電流拡散層3を設けない場合には、ベース領域5a,5bの下面は、ドリフト層2の上面に接している。ベース領域5a,5bは、例えば、ドリフト層2にp型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。ベース領域5a,5bは、4H-SiC等のSiCからなるエピタキシャル成長層で構成されていても良い。ベース領域5a,5bの不純物濃度は、例えば1×1016cm-3以上、1×1018cm-3以下程度である。
【0022】
ベース領域5a,5bの上面側には、ドリフト層2より高不純物濃度の第1導電型(n型)の第1主領域(ソース領域)6a,6bが選択的に設けられている。ソース領域6aの下面はベース領域5aの上面に接し、ソース領域6bの下面はベース領域5bの上面に接する。ソース領域6a,6bは、例えば、ドリフト層2にn型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。ソース領域6a,6bの不純物濃度は、例えば1×1020cm-3以上、1×1021cm-3以下程度である。ソース領域6a,6bは、3C-SiCと4H-SiCとを含んでいる。より具体的には、ソース領域6a,6bは、少なくとも上面側の部分が3C構造を含んでいる。なお、ソース領域6a,6bの上面側の部分は、10%以上の3C-SiCを含んでいる。以下、3C-SiCを3C構造と呼び、4H-SiCを4H構造と呼ぶ場合がある。
【0023】
ソース領域6a,6bの上面からソース領域6a,6bの上面の法線方向(深さ方向)に向かって、ソース領域6a,6b及びベース領域5a,5bを貫通するトレンチ7aが設けられている。トレンチ7aの下面は電流拡散層3に達する。トレンチ7aの幅は例えば1μm以下程度である。トレンチ7aの左側の側面には、ソース領域6a及びベース領域5aが接している。トレンチ7aの右側の側面には、ソース領域6b及びベース領域5bが接している。トレンチ7aは、図2の紙面の奥行方向及び手前方向にストライプ状に延伸する平面パターンを有していてもよく、ドット状の平面パターンを有していてもよい。
【0024】
トレンチ7aの下面及び両側の側面に沿ってゲート絶縁膜7bが設けられている。トレンチ7aの内側にはゲート絶縁膜7bを介してゲート電極7cが埋め込まれている。ゲート絶縁膜7b及びゲート電極7cによりトレンチゲート型の絶縁ゲート型電極構造(7b,7c)が構成されている。
【0025】
ゲート絶縁膜7bとしては、シリコン酸化膜(SiO膜)の他、酸窒化珪素(SiON)膜、ストロンチウム酸化物(SrO)膜、窒化珪素(Si)膜、アルミニウム酸化物(Al)膜、マグネシウム酸化物(MgO)膜、イットリウム酸化物(Y)膜、ハフニウム酸化物(HfO)膜、ジルコニウム酸化物(ZrO)膜、タンタル酸化物(Ta)膜、ビスマス酸化物(Bi)膜のいずれか1つの単層膜或いはこれらの複数を積層した複合膜等が採用可能である。ゲート電極7cの材料としては、例えばp型不純物又はn型不純物を高不純物濃度に添加したポリシリコン層(ドープドポリシリコン層)や、チタン(Ti)、タングステン(W)又はニッケル(Ni)等の高融点金属が使用可能である。
【0026】
電流拡散層3の内部で、且つトレンチ7aの底部には、第2導電型(p型)のゲート底部保護領域4が設けられている。ゲート底部保護領域4の上面はトレンチ7aの下面に接している。ゲート底部保護領域4の上面はトレンチ7aの下面に接しなくともよい。ゲート底部保護領域4の不純物濃度は、例えば1×1017cm-3以上、1×1019cm-3以下程度である。ゲート底部保護領域4は、例えば、電流拡散層3にp型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。ゲート底部保護領域4の下面は、電流拡散層3の下面よりも深くてもよく、浅くてもよい。
【0027】
電流拡散層3の上面側には、第2導電型(p型)の埋込領域81a,81bが、ベース領域5a,5bに接して選択的に設けられている。埋込領域81a,81bの下面は、電流拡散層3に接している。埋込領域81aの側面は、電流拡散層3及びベース領域5aに接し、埋込領域81bの側面は、電流拡散層3及びベース領域5bに接している。埋込領域81a,81bは、例えば、電流拡散層3にp型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。埋込領域81a,81bの不純物濃度は、例えば1×1017cm-3以上、1×1019cm-3未満程度である。埋込領域81a,81bは、4H-SiCで構成されている。
【0028】
埋込領域81a,81bの上面側には、埋込領域81aより高不純物濃度のp型のベースコンタクト領域82a,82bが選択的に設けられている。ベースコンタクト領域82aの下面は埋込領域81aの上面に接し、ベースコンタクト領域82aの側面はソース領域6aに接する。ベースコンタクト領域82bの下面は埋込領域81bの上面に接し、ベースコンタクト領域82bの側面はソース領域6bに接する。ベースコンタクト領域82a,82bは、例えば、ドリフト層2にp型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。ベースコンタクト領域82a,82bの不純物濃度は、埋込領域81a,81bの不純物濃度より高く、例えば1×1019cm-3以上、1×1021cm-3以下程度である。ベースコンタクト領域82a,82bは、4H-SiCで構成されている。
【0029】
耐圧構造部102において、ドリフト層2の上面側には第2導電型(p型)の電界緩和領域9aが複数選択的に設けられている。図2に示す例では、ドリフト層2の上面側には電界緩和領域9aが3つ設けられている。電界緩和領域9aは、図示を省略するが、平面視で同心リング状のガードリング(フィールドリミティングリング)である。電界緩和領域9a同士の間は、ドリフト層2により分離されている。電界緩和領域9aの下面は、ドリフト層2の上面に接している。なお、電流拡散層3を設ける場合には、電界緩和領域9aの下面は、電流拡散層3の上面に接している。電界緩和領域9aは、例えば、ドリフト層2にp型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。より具体的には、電界緩和領域9aは、4H-SiCからなる領域である。
【0030】
電界緩和領域9aは、p型の第1部分91aと、p型の第2部分92aとを有する。第2部分92aは第1部分91aより深さ方向の浅い位置にあり、第2部分92aの下面は第1部分91aの上面に接している。第1部分91aの不純物濃度は、例えば1×1017cm-3以上、1×1019cm-3未満程度である。第2部分92aの不純物濃度は、例えば1×1019cm-3以上、1×1021cm-3以下程度であり、第1部分91aの不純物濃度より高く設けられている。第2部分92aより深い位置にある第1部分91aの不純物濃度を第2部分92aより低く設けることにより、電界緩和領域9aの電界に対する耐圧性能が向上する。
【0031】
また、耐圧構造部102において、ドリフト層2の上面側には第1導電型(n型)のチャネルストッパ領域6cが設けられている。チャネルストッパ領域6cの下面は、ドリフト層2の上面に接している。なお、電流拡散層3を設ける場合には、チャネルストッパ領域6cの下面は、電流拡散層3の上面に接している。チャネルストッパ領域6cは、平面視で、図1に示すSiC半導体装置(半導体チップ)100の外周102a、より具体的には耐圧構造部102の外周102aに沿って設けられている。チャネルストッパ領域6cは、平面視で外周102aに沿って一巡し、耐圧構造部102を囲むように設けられている。
【0032】
チャネルストッパ領域6cは、耐圧構造部102の耐圧性能が劣化するのを抑制する。より具体的には、チャネルストッパ領域6cは、耐圧構造部102に生じた空乏層がSiC半導体装置(半導体チップ)100の外周102aに達するのを抑制している。SiC半導体装置(半導体チップ)100の外周102aに臨む面は、SiC半導体装置100を個片化する工程において生成された、表面が粗いダイシング面である。このような面に空乏層が達すると、リーク電流が生じる可能性があり、耐圧性能が劣化する可能性がある。そこで、後述のドレイン電極と同じ電位を有するチャネルストッパ領域6cを設けて、空乏層が外周102aに臨む面に達し難くしている。
【0033】
チャネルストッパ領域6cは、例えば、ドリフト層2にn型不純物をイオン注入した4H-SiCからなる領域である。チャネルストッパ領域6cの不純物濃度は、例えば1×1019cm-3以上、3×1020cm-3以下程度である。4H-SiCは、3C-SiCより結晶欠陥が少ない。そのため、4H-SiCで構成された半導体領域の露出面は、3C-SiCで構成された半導体領域の露出面より、凹凸が少ない。チャネルストッパ領域6cを4H-SiCで構成することにより、チャネルストッパ領域6cの上面(図2参照)の凹凸、すなわち表面粗さが大きくなるのを抑制することができる。そのため、チャネルストッパ領域6cの上面に成膜される後述の絶縁膜10との密着性が劣化するのが抑制される。チャネルストッパ領域6cの深さ方向の寸法は、例えば0.2μm以上、0.5μm以下程度であり、幅方向の寸法は、例えば10μm以上、70μm以下程度である。
【0034】
領域103において、ドリフト層2の上面側には第2導電型(p型)のリング領域9bが選択的に設けられている。リング領域9bの下面は、ドリフト層2の上面に接している。なお、電流拡散層3を設ける場合には、リング領域9bの下面は、電流拡散層3の上面に接している。リング領域9bは、例えば、ドリフト層2にp型不純物をイオン注入したSiCからなる領域である。より具体的には、リング領域9bは、4H-SiCからなる領域である。リング領域9bは、図示を省略するが、平面視で活性部101の縁部を囲うリング状の部分である。
【0035】
リング領域9bは、p型の第1部分91bと、p型の第2部分92bとを有する。第2部分92bは第1部分91bより深さ方向の浅い位置にあり、第2部分92bの下面は第1部分91bの上面に接している。第1部分91bの不純物濃度は、例えば1×1017cm-3以上、1×1019cm-3未満程度である。第2部分92bの不純物濃度は、例えば1×1019cm-3以上、1×1021cm-3以下程度であり、第1部分91bの不純物濃度より高く設けられている。
【0036】
ゲート電極7cの上面側、領域103の上面側、及び耐圧構造部102の上面側には、絶縁膜10が選択的に設けられている。耐圧構造部102において、絶縁膜10は電界緩和領域9a及びチャネルストッパ領域6cの上面に設けられている。より具体的には、絶縁膜10は、電界緩和領域9aの第2部分92a及びチャネルストッパ領域6cを覆う位置に設けられている。絶縁膜10は、無機絶縁膜である。絶縁膜10は、例えば硼素(B)及び燐(P)を添加したシリコン酸化膜(BPSG膜)、燐(P)を添加したシリコン酸化膜(PSG膜)、「NSG」と称される燐(P)や硼素(B)を含まないノンドープのシリコン酸化膜、硼素(B)を添加したシリコン酸化膜(BSG膜)、シリコン窒化膜(Si膜)等の単層膜や、これらの積層膜で構成されている。絶縁膜10には、ソース領域6a,6b及びベースコンタクト領域82a,82bの上面を露出するようにコンタクトホール10a,10bが設けられている。また、絶縁膜10には、リング領域9bの上面、より具体的には第2部分92bの上面を露出するようにコンタクトホール10cが設けられている。
【0037】
絶縁膜10と、コンタクトホール10a,10bから露出したソース領域6a,6bの上面及びベースコンタクト領域82a,82bの上面と、コンタクトホール10cから露出したリング領域9bの上面と、を覆うように第1主電極(ソース電極)(11,12)が設けられている。ソース電極(11,12)は、下層のバリアメタル層11と、上層のソース配線電極12を備える。例えば、バリアメタル層11は、例えば窒化チタン(TiN)、チタン(Ti)、又はTiを下層としたTiN/Tiの積層構造等の金属で構成されている。バリアメタル層11は、ソース領域6a,6b、ベースコンタクト領域82a,82b、及びリング領域9bの第2部分92bに直接接している。バリアメタル層11は、3C-SiCを含むソース領域6a,6bと低抵抗でオーミック接触している。
【0038】
ソース配線電極12は、バリアメタル層11を介してソース領域6a,6b、ベースコンタクト領域82a,82b、及びリング領域9bに電気的に接続されている。ソース配線電極12は、ゲート電極7cに電気的に接続されるゲート配線電極(図示省略)と分離して設けられている。ソース配線電極12は、例えばアルミニウム(Al)、アルミニウム-シリコン(Al-Si)、アルミニウム-銅(Al-Cu)、銅(Cu)等の金属で構成されている。
【0039】
絶縁膜10の上面には、絶縁膜14が設けられている。絶縁膜14は、外周102a寄りにある外周端部が平面視で前記チャネルストッパ領域6cに重なる位置にある。絶縁膜14は、耐圧構造部102及び領域103において、ソース配線電極12と絶縁膜10との境界を覆う位置に設けられている。絶縁膜14は、例えば水分等からSiC半導体装置100を保護する保護膜として機能する。特に、ソース配線電極12と絶縁膜10との境界において水分が侵入するのを抑制する。絶縁膜14は、有機絶縁膜である。絶縁膜14は、例えば、ポリイミド等の樹脂材料である。
【0040】
ドリフト層2の下面側には、ドリフト層2より高不純物濃度の第1導電型(n型)の第2主領域(ドレイン領域)1が設けられている。ドレイン領域1は、例えば4H-SiCからなる半導体基板(SiC基板)で構成されている。ドレイン領域1の不純物濃度は、例えば1×1019cm-3以上、3×1020cm-3以下程度である。ドレイン領域1の厚さは、例えば30μm以上、500μm以下程度である。なお、ドリフト層2とドレイン領域1との間には、ドリフト層2より高不純物濃度で、且つドレイン領域1より低不純物濃度のn型のバッファ層である、転位変換層や再結合促進層が設けられていてもよい。
【0041】
ドレイン領域1の下面側には、第2主電極(ドレイン電極)13が設けられている。ドレイン電極13としては、例えば金(Au)からなる単層膜や、ドレイン領域1側からチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、Auの順で積層された金属膜が使用可能であり、更にその最下層にモリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属膜を積層してもよい。また、ドレイン領域1とドレイン電極13との間にオーミック接触のためのニッケルシリサイド(NiSi)膜等のドレインコンタクト層が設けられてもよい。
【0042】
第1実施形態に係るSiC半導体装置の動作時は、ソース電極(11,12)をアース電位として、ドレイン電極13に正電圧を印加し、ゲート電極7cに閾値以上の正電圧を印加すると、ベース領域5a,5bのトレンチ7aの側面側に反転層(チャネル)が形成されてオン状態となる。オン状態では、ドレイン電極13からドレイン領域1、ドリフト層2、電流拡散層3、ベース領域5a,5bの反転層及びソース領域6a,6bを経由してソース電極(11,12)へ電流が流れる。一方、ゲート電極7cに印加される電圧が閾値未満の場合、ベース領域5a,5bに反転層が形成されないため、オフ状態となり、ドレイン電極13からソース電極(11,12)へ電流が流れない。
【0043】
第1実施形態に係るSiC半導体装置によれば、ソース領域6a,6bの少なくともソース電極(11,12)と接する部分を3C-SiCで構成しているのに対して、チャネルストッパ領域6cは、3C-SiCより結晶欠陥が少ない4H-SiCからなる。チャネルストッパ領域6cが3C-SiCより結晶欠陥が少ない4H-SiCからなるので、チャネルストッパ領域6cの上面の凹凸が大きくなるのが抑制される。そのため、チャネルストッパ領域6cの上面と絶縁膜10との密着性が劣化するのを抑制することができる。これにより、耐圧構造部102の信頼性が低下するのを抑制できる。また、ソース領域6a,6bは、少なくともソース電極(11,12)と接する部分が3C-SiCを含むので、ニッケル(Ni)シリサイド等のシリサイド層を形成せずに、ソース領域6a,6bがソース電極(11,12)と低抵抗でオーミック接触することができる。よって、シリサイド層を形成した場合と比較して、シリサイド層の剥離等の課題を抑制することができる。
【0044】
<SiC半導体装置の製造方法>
次に、第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法の一例を説明する。なお、以下に述べるSiC半導体装置の製造方法は一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0045】
まず、図3に示すように、窒素(N)等のn型不純物が添加されたn型の4H-SiCからなる半導体基板(SiC基板)1を用意する。SiC基板1の上面は、例えば{0001}面から3度~8度のオフ角を有する。そして、SiC基板1の上面に、窒素(N)等のn型不純物が添加され、SiC基板1より低不純物濃度のn型の4H-SiCからなるドリフト層2をエピタキシャル成長させる。より具体的には、活性部101、耐圧構造部102、及び領域103に亘って炭化珪素からなる第1導電型のドリフト層2を形成する。
【0046】
次に、図4に示すように、活性部101におけるドリフト層2の上面に、N等のn型不純物をイオン注入することで、ドリフト層2より高不純物濃度のn型の4H-SiCからなるn型層3aを形成する。なお、n型層3aは、ドリフト層2の上部に、エピタキシャル成長することにより形成してもよい。そして、フォトリソグラフィ技術を用いて、n型層3aの上面に、フォトレジスト膜からなるマスクパターン20を形成する。そして、マスクパターン20をイオン注入用マスクとして用いて、アルミニウム(Al)等のp型不純物を選択的にイオン注入する。この結果、n型層3aの上部にp型のゲート底部保護領域4が選択的に形成される。その後、マスクパターン20を除去する。なお、マスクパターン20は、例えば酸化膜からなるハードマスクパターンであっても良い。
【0047】
次に、図5に示すように、ドリフト層2、n型層3a及びゲート底部保護領域4の上面に、n型の4H-SiCをエピタキシャル成長させて、ドリフト層2の膜厚を厚くする。そして、n型層3aの上面に、N等のn型不純物をイオン注入することで、ドリフト層2より高不純物濃度のn型の4H-SiCからなるn型層3bを形成する。この結果、活性部101に、n型層3a及びn型層3bからなる電流拡散層3が形成される。そして、図示は省略するが、電流拡散層3に、例えばフォトレジスト膜をマスクパターンとしてアルミニウム(Al)等のp型不純物を選択的にイオン注入する。この結果、図6に示すように、活性部101における電流拡散層3の上面側に、ベース領域5が選択的に形成される。その後、マスクパターンを除去する。なお、マスクパターンは、例えば酸化膜からなるハードマスクパターンであっても良い。
【0048】
次に、図6に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、ドリフト層2および電流拡散層3の上面にフォトレジスト膜からなるマスクパターン21を形成する。マスクパターン21は、活性部101においては平面視でソース領域を形成する位置、例えばベース領域5に重なる位置に開口を有し、耐圧構造部102及び領域103を覆っている。そして、マスクパターン21をイオン注入用マスクとして用いて、燐(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、又は窒素(N)等のn型不純物を選択的にイオン注入する。この結果、ベース領域5の上面側にn型のソース領域6が選択的に形成される。なお、n型不純物とは、半導体材料にイオン注入されると半導体材料をn型にする不純物である。
【0049】
ソース領域6のイオン注入では、ソース領域6の上面側の4H-SiCの構造を崩してアモルファス構造を形成する。イオン注入時の温度は、4H-SiCの構造を崩すために低く設定する。低い温度で高濃度の不純物のイオン注入を行うことにより、4H-SiCの構造を崩すことができる。イオン注入時の温度は、例えば20℃以上、300℃未満程度に設定する。4H-SiCの構造を崩すことができる温度の境界は300℃付近にあるので、イオン注入時の温度を、例えば、200℃以下にしても良い。そして、イオン注入時のドーズ量は、例えば2×1015cm-2以上、1×1016cm-2以下程度となるように設定する。その後、マスクパターン21を除去する。なお、マスクパターン21は、例えば酸化膜からなるハードマスクパターンであっても良い。
【0050】
そして、図7に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、ドリフト層2および電流拡散層3の上面にフォトレジスト膜からなるマスクパターン22を形成する。マスクパターン22は、耐圧構造部102においては平面視でチャネルストッパ領域6cを形成する位置に開口を有し、活性部101及び領域103を覆っている。より具体的には、マスクパターン22は、平面視で耐圧構造部102の外周となる部分に沿った領域に、開口を有する。そして、マスクパターン22をイオン注入用マスクとして用いて、燐(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、又は窒素(N)等のn型不純物を選択的にイオン注入する。この結果、耐圧構造部102におけるドリフト層2の上面側にn型のチャネルストッパ領域6cが形成される。
【0051】
チャネルストッパ領域6cへのイオン注入は、チャネルストッパ領域6cの4H-SiCの構造の崩れが大きくなり過ぎないように行う。より具体的には、イオン注入時の温度を低く設定した場合、イオン注入時のドーズ量を低く設定する。より具体的には、イオン注入時の温度を、例えば20℃以上、300℃未満程度に設定した場合、イオン注入時のドーズ量を1×1014cm-2以上、2×1015cm-2未満程度となるように設定すれば、4H-SiCの構造の崩れが大きくなり過ぎることを抑制できる。また、イオン注入時の温度を高く設定した場合、より具体的には、例えば500℃等の300℃以上600℃以下程度の温度に設定した場合、イオン注入時のドーズ量を上述の値より大きくしても、4H-SiCの構造が崩れるのを抑制できる。その後、マスクパターン22を除去する。なお、マスクパターン22は、例えば酸化膜からなるハードマスクパターンであっても良い。
【0052】
次に、図8に示すように、活性部101、耐圧構造部102及び領域103に亘ってp型領域を同時に形成する。より具体的には、埋込領域81a及びベースコンタクト領域82aを含む領域8aと、埋込領域81b及びベースコンタクト領域82bを含む領域8bと、電界緩和領域9aと、リング領域9bとを同時に形成する。まず、フォトリソグラフィ技術を用いて、ドリフト層2および電流拡散層3の上面に、フォトレジスト膜からなるマスクパターン23を形成する。そして、マスクパターン23は、活性部101においては平面視でソース領域6に隣接する位置に開口を有し、耐圧構造部102においては平面視で電界緩和領域9aを形成する位置に開口を有し、領域103においては平面視でリング領域9bを形成する位置に開口を有する。そして、マスクパターン23をイオン注入用マスクとして用いて、アルミニウム(Al)等のp型不純物を選択的にイオン注入する。より具体的には、深さ方向に沿って多段でp型不純物を注入する。これにより、深さ方向の浅い位置にあるベースコンタクト領域82a,82b及び第2部分92a,92bと、深さ方向の深い位置にある埋込領域81a,81b及び第1部分91a,91bと、を、一つのマスクパターン23で形成する。なお、p型不純物とは、半導体材料にイオン注入されると半導体材料をp型にする不純物である。
【0053】
埋込領域81a,81b、ベースコンタクト領域82a,82b、第1部分91a,91b、及び第2部分92a,92bへのイオン注入は、4H-SiCの構造の崩れが大きくなり過ぎないように行う。より具体的には、イオン注入時の温度を低く設定した場合、イオン注入時のドーズ量を低く設定する。より具体的には、イオン注入時の温度を、例えば20℃以上、300℃未満程度に設定した場合、イオン注入時のドーズ量を1×1014cm-2以上、2×1015cm-2未満程度となるように設定すれば、4H-SiCの構造の崩れが大きくなり過ぎることを抑制できる。また、イオン注入時の温度を高く設定した場合、より具体的には、例えば500℃等の300℃以上程度の温度に設定した場合、イオン注入時のドーズ量を上述の値より大きくしても、4H-SiCの構造が崩れるのを抑制できる。その後、マスクパターン23を除去する。なお、マスクパターン23は、例えば酸化膜からなるハードマスクパターンであっても良い。
【0054】
次に、活性化アニール(熱処理)工程を行う。この活性化アニール工程では、例えば1600℃以上、1900℃以下程度で活性化アニールを行うことにより、ゲート底部保護領域4、ベース領域5a,5b、ソース領域6a,6b、埋込領域81a,81b、及びベースコンタクト領域82a,82b、電界緩和領域9a、リング領域9b等にそれぞれイオン注入されたp型不純物又はn型不純物を一斉に活性化させる。このとき、ソース領域6a,6bの少なくとも一部のアモルファス構造が再結晶化により3C-SiCとなることで、3C-SiCを含むソース領域6a,6bが形成される。チャネルストッパ領域6c、埋込領域81a,81b、ベースコンタクト領域82a,82b、電界緩和領域9a、及びリング領域9bは、再結晶化した後も4H-SiCのままである。
【0055】
なお、ここではすべてのイオン注入工程の後に一括して1回の活性化アニールを行う場合を例示するが、各イオン注入工程後に個別に複数回の活性化アニールを行ってもよい。また、活性化アニールの前に、カーボン(C)からなるキャップ膜を成膜し、キャップ膜で被覆した状態で活性化アニールを行い、活性化アニールの後にキャップ膜を除去してもよい。
【0056】
次に、図9に示すように、絶縁ゲート型電極構造(7b,7c)形成工程を行う。まず、トレンチ形成工程を行う。このトレンチ形成工程では、フォトリソグラフィ技術、ドライエッチング技術、及びCVD技術等を用いて、例えば酸化膜からなるハードマスクパターンをSiCの上面に形成する。ハードマスクパターンは、トレンチを形成する位置に開口を有する。そしてハードマスクパターンをエッチング用マスクとして用いて、反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチング技術により、ソース領域6の上面から深さ方向にトレンチ7aを選択的に形成する。なお、ハードマスクパターンの代わりに、フォトレジスト膜をエッチング用マスクとして用いてもよい。トレンチ7aは、ソース領域6及びベース領域5を貫通し、更に電流拡散層3の上部を掘り込み、ゲート底部保護領域4に達する。ソース領域6はソース領域6a,6bに分割され、ベース領域5はベース領域5a,5bに分割される。その後、エッチング用マスクを除去する。
【0057】
そして、ゲート絶縁膜/ゲート電極形成工程を行う。このゲート絶縁膜/ゲート電極形成工程では、CVD技術、高温酸化(HTO)法又は熱酸化法等により、トレンチ7aの下面及び側面に、ゲート絶縁膜7bを形成する。次に、CVD技術等により、トレンチ7aの内側を埋め込むように、燐(P)やボロン(B)等の不純物を高濃度で添加したポリシリコン層(ドープドポリシリコン層)を堆積する。その後、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチングにより、ポリシリコン層の一部及びゲート絶縁膜7bの一部を選択的に除去する。この結果、図9に示すように、ゲート絶縁膜7b及びゲート電極7cからなる絶縁ゲート型電極構造(7b,7c)が、ソース領域6a,6b及びベース領域5a,5bに接するように形成される。
【0058】
次に、図10に示すように、CVD技術等により、SiCの上面に無機絶縁膜である絶縁膜10を堆積する。そして、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術等により、絶縁膜10の一部を選択的に除去し、絶縁膜10にソース領域6a,6b及びベースコンタクト領域82a,82bの上面の少なくとも一部を露出するコンタクトホール10a,10bを開口する。また、リング領域9bの上面の一部を露出するコンタクトホール10cを開口する。絶縁膜10のうち耐圧構造部102を覆う部分は、除去されずに残される。その後、絶縁膜10を平坦化するための熱処理(リフロー)を行ってもよい。
【0059】
次に、図11に示すように、スパッタリング技術又は蒸着法等により、絶縁膜10の上面及び側面と、ソース領域6a,6b、ベースコンタクト領域82a,82b、及びリング領域9bの上面を覆うように、バリアメタル層11及びソース配線電極12を順次形成し、ソース電極(11,12)を形成する。バリアメタル層11は、ソース領域6a,6b、ベースコンタクト領域82a,82b、及びリング領域9bと接触する。バリアメタル層11は、ソース領域6a,6bと低抵抗でオーミック接触する。
【0060】
次に、図11に示すように、絶縁膜10の上面に、外周端部が平面視でチャネルストッパ領域6cに重なるように、有機絶縁膜である絶縁膜14を形成する。絶縁膜14は公知の方法で形成すれば良く、例えば、公知の方法で成膜した後に、フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング技術等により余分な部分を除去しても良い。
【0061】
次に、研削又は化学機械研磨(CMP)等により、SiC基板1を下面側から薄化して厚さを調整することにより、ドレイン領域1とする。次に、スパッタリング法又は蒸着法等により、ドレイン領域1の下面の全面に金(Au)等からなるドレイン電極13(図2参照)を形成する。このようにして、図2に示したSiC半導体装置が完成する。
【0062】
第1実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法によれば、同じ導電型の半導体領域を形成する場合であっても、3C-SiCを形成するためのイオン注入と、4H-SiCを形成するためのイオン注入とを分離して異なる工程で行っている。そのため、n型のソース領域6a,6bの少なくとも一部を3C-SiCで形成した場合であっても、同じn型のチャネルストッパ領域6cを4H-SiCとすることができる。より具体的には、ソース領域6a,6b及びチャネルストッパ領域6cは、どちらも第1導電型(n型)の不純物がイオン注入されて形成されるものの、工程を分けて異なるドーズ量でイオン注入するので、ソース領域6a,6bの少なくとも一部が3C-SiCで形成場合であっても、チャネルストッパ領域6cを4H-SiCで形成することができる。
【0063】
また、第1実施例では、ソース領域6a,6bとチャネルストッパ領域6cとを別工程で形成しているので、チャネルストッパ領域6cの深さをソース領域6a,6bの深さとは異なる深さに形成できる。これにより、設計の自由度が向上する。
【0064】
なお、上述の製造方法では、深さ方向の浅い位置にあるベースコンタクト領域82a,82b及び第2部分92a,92bと、深さ方向の深い位置にある埋込領域81a,81b及び第1部分91a,91bと、を同じ工程で形成していたが、別の工程で形成しても良い。その場合、まず、n型の4H-SiCからなるn型層3bのうちの一部をエピタキシャル成長させ、不純物をイオン注入することにより埋込領域81a,81b及び第1部分91a,91b等を形成する。その後、n型の4H-SiCからなるn型層3bの残りの部分をエピタキシャル成長させ、不純物をイオン注入することによりベースコンタクト領域82a,82b及び第2部分92a,92b等を形成すれば良い。
【0065】
また、本実施形態では、チャネルストッパ領域6cを第1導電型(n型)に形成していたが、第2導電型(p型)に形成しても良い。その場合、第1導電型(n型)の不純物の代わりに第2導電型(p型)の不純物をイオン注入して、チャネルストッパ領域6cを形成すれば良い。例えば、第2部分92a,92bと同時に第2導電型(p型)の不純物をイオン注入してチャネルストッパ領域6cを形成すれば良い。
【0066】
また、上述の製造方法では、ソース領域6に対するイオン注入を行ってからチャネルストッパ領域6cを形成するためのイオン注入を行っていたが、先にチャネルストッパ領域6cを形成するためのイオン注入を行ってから、ソース領域6に対するイオン注入を行っても良い。
【0067】
また、ソース領域及びベース領域に接するように絶縁ゲート型電極構造を形成することは、得られたSiC半導体装置100においてそのような構成になっていれば途中の工程の順序の後先を問わないことを意味し、例えばプレーナ型において、絶縁ゲート型電極構造を設けた後にソース領域が形成されても良い。
【0068】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るSiC半導体装置100は、ソース領域6a,6b及びベースコンタクト領域82a,82bそれぞれの少なくともソース電極(11,12)に接した部分が不活性ガス元素を含む点、及びベースコンタクト領域82a,82bが3C-SiCと4H-SiCとを含む点で、上述の第1実施形態に係るSiC半導体装置100と異なる。本実施形態では、図2を流用して説明する。
【0069】
第2実施形態では、ソース領域6a,6bの不純物濃度を、第1実施形態に係るSiC半導体装置100より低くしても良い。より具体的には、ソース領域6a,6bの不純物濃度は、少なくともトランジスタが動作可能な濃度であれば良く、例えば、1×1019cm-3以上、1×1021cm-3以下程度である。また、ベースコンタクト領域82a,82bの不純物濃度についても、少なくともトランジスタが動作可能な濃度であれば良く、例えば、1×1019cm-3以上、1×1021cm-3以下程度である。なお、ベースコンタクト領域82a,82bは、少なくとも上面側の部分が3C構造を含んでいる。より具体的には、ベースコンタクト領域82a,82bの上面側の部分は、10%以上の3C-SiCを含んでいる。ソース領域6a,6b及びベースコンタクト領域82a,82bに含まれる不活性ガス元素は、例えば、ヘリウム(He)又はアルゴン(Ar)である。また、埋込領域81a,81b、電界緩和領域9a、リング領域9b、及びチャネルストッパ領域6cそれぞれの不純物濃度は、1×1019cm-3以上、1×1021cm-3以下程度である。
【0070】
<SiC半導体装置の製造方法>
次に、第2実施形態に係るSiC半導体装置100の製造方法の一例を説明する。第2実施形態に係るSiC半導体装置の製造方法は、4H-SiCの構造を崩すために、活性部101に対して不活性ガス元素をイオン注入する。第2実施形態に係るSiC半導体装置100の製造方法は、第1実施形態に係るSiC半導体装置100の製造方法と異なる点のみ説明する。なお、第1実施形態の製造方法の説明に用いた図についても、適宜流用して説明する。
【0071】
図5に示す工程までは、第1実施形態と同じである。その後、活性部101及び耐圧構造部102においてn型領域を同時に形成する。図12に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、ドリフト層2および電流拡散層3の上面にフォトレジスト膜からなるマスクパターン24を形成する。マスクパターン24は、活性部101においては平面視でソース領域を形成する位置に開口を有し、耐圧構造部102においてはチャネルストッパ領域6cを形成する位置に開口を有している。そして、マスクパターン24をイオン注入用マスクとして用いて、燐(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、又は窒素(N)等のn型不純物を選択的にイオン注入する。この結果、ベース領域5の上面側にn型のソース領域6が選択的に形成され、耐圧構造部102においてはドリフト層2の上面側にn型のチャネルストッパ領域6cが選択的に形成される。なお、イオン注入は、4H-SiCの構造の崩れが大きくなり過ぎないように行う。より具体的には、イオン注入時の温度を例えば20℃以上、300℃未満程度に設定した場合、イオン注入時のドーズ量を1×1014cm-2以上、2×1015cm-2未満程度となるように設定すれば良い。その後、マスクパターン24を除去する。なお、マスクパターン24は、例えば酸化膜からなるハードマスクパターンであっても良い。その後、図8に示すように、活性部101、耐圧構造部102及び領域103に亘ってp型領域を同時に形成する。詳細は、第1実施形態で説明した通りである。
【0072】
次に、ソース領域6及びベースコンタクト領域82a,82bに対して不活性ガス元素をイオン注入する工程について、図13を参照して説明する。まず、フォトリソグラフィ技術を用いて、ドリフト層2および電流拡散層3の上面に、フォトレジスト膜からなるマスクパターン25を形成する。なお、マスクパターン25は、例えば酸化膜からなるハードマスクパターンであっても良い。マスクパターン25は、活性部101においてソース領域6及びベースコンタクト領域82a,82bがある位置に開口を有し、耐圧構造部102及び領域103を覆っている。なお、ベースコンタクト領域82a,82bがある位置には開口部を設けなくともよい。そして、マスクパターン25をイオン注入用マスクとして用いて、不活性ガス元素を選択的にイオン注入する。より具体的には、ソース領域6及びベースコンタクト領域82a,82bに、第1導電型の不純物のドーズ量又は第2導電型の不純物のドーズ量と合わせて2×1015cm-2以上、1×1016cm-2以下程度となるドーズ量で、不活性ガス元素をイオン注入する。不活性ガス元素は、図13の活性部101において破線で示した深さに達するようにイオン注入される。その際、イオン注入時の温度を例えば20℃以上、300℃未満程度に設定する。不活性ガス元素は、例えば、ヘリウム(He)又はアルゴン(Ar)である。図13は、アルゴン元素をイオン注入する例を示している。その後、マスクパターン25を除去する。これにより、活性部101の4H-SiCの構造を崩し、その後の活性化アニールにより活性部101のソース領域6及びベースコンタクト領域82a,82bに3C-SiCの領域を形成することができる。図13より後の工程は、第1実施形態の場合と同じであり、その説明を省略する。
【0073】
なお、不活性ガス元素のドーズ量は、不活性ガス元素のドーズのみで4H-SiCの構造を崩すことが可能な2×1015cm-2以上、1×1016cm-2以下程度であっても良い。
【0074】
また、ソース領域6、ベースコンタクト領域82a,82b、電界緩和領域9a、及びリング領域9bに対するイオン注入は、20℃以上、300℃未満程度で行っていたが、それより高い温度、例えば500℃等の300℃以上程度の温度で行っても良い。その場合、不純物のドーズ量は、上述の値より大きい値であっても良い。そして、不活性ガス元素のドーズ量を2×1015cm-2以上、1×1016cm-2以下程度にすれば良い。
【0075】
また、上述の製造方法の説明では、不純物のイオン注入の後に不活性ガス元素のイオン注入を行っていたが、不純物のイオン注入の前に行っても良い。
【0076】
第2実施形態に係るSiC半導体装置100では、ベースコンタクト領域82a,82bの少なくとも上面側の部分が3C構造を含むので、ニッケル(Ni)シリサイド等のシリサイド層を形成せずに、ベースコンタクト領域82a,82bがソース電極(11,12)と低抵抗でオーミック接触することができる。よって、シリサイド層を形成した場合と比較して、シリサイド層の剥離等の課題を抑制することができる。
【0077】
また、第2実施形態に係るSiC半導体装置100の製造方法によれば、不活性ガス元素のイオン注入によりソース領域6とベースコンタクト領域82a,82bとの4H-SiCをまとめて崩すことができるので、不純物の注入量をトランジスタが動作する程度に減らす事ができる。これにより、総ドーズ量を小さくすることができ、イオン注入に要する時間を第1実施形態の場合より短くすることができる。
【0078】
また、本実施形態では、チャネルストッパ領域6cを第1導電型(n型)に形成していたが、第2導電型(p型)に形成しても良い。その場合、第1導電型(n型)の不純物の代わりに第2導電型(p型)の不純物をイオン注入して、チャネルストッパ領域6cを形成すれば良い。例えば、第2部分92a,92bと同時に第2導電型(p型)の不純物をイオン注入してチャネルストッパ領域6cを形成すれば良い。
【0079】
(その他の実施形態)
上記のように、本開示の第1~第2実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本開示を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0080】
例えば、第1~第2実施形態に係る半導体装置としてMOSFETを例示したが、n型のドレイン領域1の代わりにp型のコレクタ領域を設けた構成の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)にも適用可能である。また、IGBT単体以外にも、逆導通型IGBT(RC-IGBT)や、逆阻止絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(RB-IGBT)にも適用可能である。
【0081】
また、第1~第2実施形態において、電界緩和領域9aがガードリングであるとして説明したが、JTE構造であっても良い。
【0082】
また、第1~第2実施形態が開示する構成を、矛盾の生じない範囲で適宜組み合わせることができる。このように、本開示はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本開示の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0083】
1…ドレイン領域(SiC基板)
2…ドリフト層
3…電流拡散層
3a,3b…n型層
4…ゲート底部保護領域
5…ベース領域
6,6a,6b…ソース領域
6c…チャネルストッパ領域
7a…トレンチ
7b…ゲート絶縁膜
7c…ゲート電極
81a,81b…埋込領域
82a,82b…ベースコンタクト領域
9a…電界緩和領域
9b…リング領域
10…絶縁膜
10a,10b,10c…コンタクトホール
11…バリアメタル層
12…ソース配線電極
13…ドレイン電極
14…絶縁膜

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図12
図13