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特開2024-148336成形用金型、樹脂成形品の製造方法および樹脂成形品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148336
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】成形用金型、樹脂成形品の製造方法および樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/27 20060101AFI20241010BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20241010BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B29C45/27
B29C45/26
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061392
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平▲柳▼ 祐太
(72)【発明者】
【氏名】原 徳佳
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AH73
4F202AM32
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK02
4F202CK06
4F202CK12
4F206AH73
4F206AM32
4F206AR12
4F206JA07
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】残留応力の発生が抑制される成形用金型と樹脂成形品の製造方法と樹脂成形品とを提供する。
【解決手段】射出成形用金型1は、可動側金型3と固定側金型19とが互いに当接した状態で、製品成形部30、ランナー部31および潜りゲート部33を含むキャビティ29と、樹脂ゲート35とが形成される。製品成形部30は、第1成形面9と第3成形面11a、11bと第2成形面21とによって形成される。樹脂ゲート35は、第1成形面9に開口する。樹脂ゲート35は、第1成形面9において、第3成形面11bが位置する第1位置P1から、第1位置P1よりも内側の第2位置P2まで開口し、かつ、第1位置P1に沿って延在するように形成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1被成形面、第2被成形面および第3被成形面を有する樹脂成形品を成形するキャビティ本体を含む1つ以上のキャビティが形成された、第1金型および第2金型を含む成形用金型であって、
前記第1金型に形成され、前記第1被成形面を成形する第1成形面と、
前記第1金型と対向するように配置される前記第2金型に形成され、前記第2被成形面を成形する第2成形面と、
前記第1金型と前記第2金型とが互いに当接した状態で、前記第1成形面と前記第2成形面との間を接続するように形成され、前記第3被成形面を成形する第3成形面と、
前記第1金型と前記第2金型とが互いに当接した状態で、前記第1成形面、前記第2成形面および前記第3成形面を含む複数の成形面によって形成される前記キャビティ本体に樹脂を送り込む樹脂ゲートと
を備え、
前記樹脂ゲートは、前記第1金型と前記第2金型とが互いに当接した状態で、互いに対向する前記第1成形面および前記第2成形面のいずれかに開口し、かつ、前記第3成形面に沿って延在するように形成された、成形用金型。
【請求項2】
前記樹脂ゲートは、前記第1成形面に開口し、
前記第1金型と前記第2金型とが互いに当接した状態で、前記樹脂ゲートは、前記第1成形面において、前記第3成形面が位置する第1位置から、前記第1位置よりも内側の第2位置まで開口し、かつ、前記第1位置に沿って延在するように形成された、請求項1記載の成形用金型。
【請求項3】
前記キャビティは、
前記樹脂が供給されるランナー部と、
前記ランナー部から前記樹脂ゲートに連通し、供給された前記樹脂を前記樹脂ゲートに送り込む連通路部と
を含み、
前記第1金型には、
前記第1成形面となる底面および前記第3成形面となる側壁面を有する第1金型側第1凹部と、
前記第1金型側第1凹部よりも深い第1金型側第2凹部と、
前記第1金型側第2凹部よりも浅い第1金型側第3凹部と
がそれぞれ形成され、
前記第2金型には、前記第1金型側第2凹部と対向し、前記第3成形面の一部を含むことになる第2金型側凸部が形成され、
前記第1金型と前記第2金型とが互いに当接した状態において、
前記第1金型側第1凹部における前記第1成形面および前記第3成形面と、前記第2金型側凸部における前記第3成形面の前記一部と、前記第2金型における前記第2成形面とによって、前記キャビティ本体が形成され、
前記第1金型側第3凹部によって前記ランナー部が形成され、
前記第1金型側第2凹部と前記第2金型側凸部とが、間隔を開けて対向することによって、前記ランナー部と前記樹脂ゲートとを連通する前記連通路部が形成される、請求項2記載の成形用金型。
【請求項4】
前記樹脂ゲートは、前記第1成形面に開口し、
前記第1金型と前記第2金型とが互いに当接した状態で、前記樹脂ゲートは、前記第1成形面において、前記第3成形面よりも内側に距離を隔てられた第3位置から、前記第3位置よりも内側の第4位置まで開口し、かつ、前記第3成形面が位置する第1位置に沿って延在するように形成された、請求項1記載の成形用金型。
【請求項5】
前記キャビティは、
前記樹脂が供給されるランナー部と、
前記ランナー部から前記樹脂ゲートに連通し、供給された前記樹脂を前記樹脂ゲートに送り込む連通路部と
を含み、
前記第1金型には、
前記第1成形面となる底面および前記第3成形面となる側壁面を有する第1金型側第1凹部と、
前記第1金型側第1凹部よりも深い第1金型側第2凹部と、
前記第1金型側第2凹部よりも浅い第1金型側第3凹部と
がそれぞれ形成され、
前記第2金型には、前記第1金型側第2凹部と対向し、前記第3成形面の一部および前記第1成形面の一部を含むことになる第2金型側凸部が形成され、
前記第1金型と前記第2金型とが互いに当接した状態において、
前記第1金型側第1凹部における前記第1成形面および前記第3成形面と、前記第2金型側凸部における前記第3成形面の前記一部および前記第1成形面の前記一部と、前記第2金型における前記第2成形面とによって、前記キャビティ本体が形成され、
前記第1金型第3凹部によって前記ランナー部が形成され、
前記第1金型側第2凹部と前記第2金型側凸部とが、間隔を開けて対向することによって、前記ランナー部と前記樹脂ゲートとを連通する前記連通路部が形成される、請求項4記載の成形用金型。
【請求項6】
前記樹脂ゲートは、前記第2成形面に開口し、
前記第1金型と前記第2金型とが互いに当接した状態で、前記樹脂ゲートは、前記第2成形面において、前記第3成形面が位置する第5位置から、前記第5位置よりも内側の第6位置まで開口し、かつ、前記第5位置に沿って延在するように形成された、請求項1記載の成形用金型。
【請求項7】
前記キャビティは、
前記樹脂が供給されるランナー部と、
前記ランナー部から前記樹脂ゲートに連通し、供給された前記樹脂を前記樹脂ゲートに送り込む連通路部と
を含み、
前記第1金型には、
前記第1成形面となる底面および前記第3成形面となる側壁面を有する第1金型側第1凹部と、
前記第2金型に向かって突出し、前記第3成形面の一部を含むことになる第1金型側凸部と、
第1金型側第3凹部と
がそれぞれ形成され、
前記第2金型には、前記第1金型の前記第1金型側凸部と対向する第2金型側凹部が形成され、
前記第1金型と前記第2金型とが互いに当接した状態において、
前記第1金型側第1凹部における前記第1成形面および前記第3成形面と、前記第1金型側凸部における前記第3成形面の前記一部と、前記第2金型における前記第2成形面とによって、前記キャビティ本体が形成され、
前記第1金型第3凹部によって前記ランナー部が形成され、
前記第1金型側凸部と前記第2金型側凹部とが、間隔を開けて対向することによって、前記ランナー部と前記樹脂ゲートとを連通する前記連通路部が形成される、請求項6記載の成形用金型。
【請求項8】
前記第1成形面を平面視した状態で、前記ランナー部および前記連通路部は、前記ランナー部から前記キャビティ本体に向かって幅が拡がる態様で、台形形状となるように形成された、請求項3記載の成形用金型。
【請求項9】
前記連通路部は、前記ランナー部から前記樹脂ゲートに向かって前記樹脂が流れる方向に沿った断面が湾曲状となる態様で形成された、請求項3記載の成形用金型。
【請求項10】
前記キャビティは、前記キャビティ本体に対して前記樹脂をそれぞれ送り込む、前記樹脂ゲートとしての第1樹脂ゲート、および、前記樹脂ゲートとしての第2樹脂ゲートを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の成形用金型。
【請求項11】
第1被成形面、第2被成形面および第3被成形面を有する樹脂成形品を成形するキャビティ本体が形成された成形用金型を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
第1金型および第2金型を有する前記成形用金型を用意する工程と、
前記成形用金型の前記キャビティ本体に樹脂を充填する工程と、
前記キャビティ本体に充填されて成形された前記樹脂成形品を、前記成形用金型から取り出す工程と
を備え、
前記成形用金型を用意する工程では、
前記第1金型に、前記第1被成形面を成形する第1成形面が形成され、
前記第2金型に、前記第2被成形面を成形する第2成形面が形成され、
前記第1金型と前記第2金型とが互いに当接した状態で、前記第1成形面と前記第2成形面との間を接続するように、前記第3被成形面を成形する第3成形面が形成され、
前記第1金型と前記第2金型とが互いに当接した状態で、互いに対向する前記第1成形面および前記第2成形面と、前記第3成形面とを含む複数の成形面によって前記キャビティ本体が形成され、
互いに対向する前記第1成形面および前記第2成形面のいずれかに開口し、かつ、前記第3成形面に沿って延在するように、前記キャビティ本体に樹脂を送り込む樹脂ゲートが形成された、前記成形用金型が用意され、
前記キャビティ本体に前記樹脂を充填する工程では、前記樹脂ゲートから、前記第1成形面および前記第2成形面のいずれかと交差する態様で、前記キャビティ本体に前記樹脂が充填され、
前記樹脂成形品を前記成形用金型から取り出す工程では、前記樹脂成形品における前記第1被成形面および前記第2被成形面のいずれかに、前記第3被成形面に沿って延在するように樹脂ゲート痕が残される、樹脂成形品の製造方法。
【請求項12】
第1被成形面と、
前記第1被成形面と対向するように位置する第2被成形面と、
前記第1被成形面と前記第2被成形面との間を接続する第3被成形面と
を備え、
前記第1被成形面および前記第2被成形面のいずれかには、樹脂ゲート痕が、前記第3被成形面に沿って延在するように残されている、樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形用金型、樹脂成形品の製造方法および樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ、プリズムまたはディスプレイパネル等の光学製品(透明品)には、従来より、ガラスが適用されている。近年、このような光学製品には、軽量化が求められている。また、設計の自由度を高めることが求められている。そのような要求に応えるために、プラスチック(樹脂)の使用が検討されている。
【0003】
一般に、プラスチック製品の製造手法として、射出成形が適用されている(特許文献1、特許文献2)。射出成形では、加熱溶融した樹脂を金型内に注入し冷却することで、複雑な形状を有する光学製品を短時間で大量に製造することができる。
【0004】
一方、この射出成形では、複屈折に起因して位相差が発生するという課題がある。複屈折は、残留応力によって誘起される。光学製品において位相差が発生すると、結像が乱れてしまい、光学特性または視認性が悪化することがある。このような課題を解決するために、たとえば、複屈折が低減される材料または金型の開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-027512号公報
【特許文献2】特開平10-193397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂(プラスチック)を使用した光学製品等の樹脂成形品には、さらなる複屈折(残留応力)の低減が求められている。本開示は、そのような問題点を解決するためになされたものであり、一つの目的は、残留応力の発生が抑制される成形用金型を提供することであり、他の目的は、残留応力の発生が抑制される樹脂成形品の製造方法を提供することであり、さらに他の目的は、そのような樹脂成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る成形用金型は、第1被成形面、第2被成形面および第3被成形面を有する樹脂成形品を成形するキャビティ本体を含む1つ以上のキャビティが形成された、第1金型および第2金型を含む成形用金型であって、第1成形面と第2成形面と第3成形面と樹脂ゲートとを備えている。第1成形面は、第1金型に形成され、第1被成形面を成形する。第2成形面は、第1金型と対向するように配置される第2金型に形成され、第2被成形面を成形する。第3成形面は、第1金型と第2金型とが互いに当接した状態で、第1成形面と第2成形面との間を接続するように形成され、第3被成形面を成形する。樹脂ゲートは、第1金型と第2金型とが互いに当接した状態で、第1成形面、第2成形面および第3成形面を含む複数の成形面によって形成されるキャビティ本体に樹脂を送り込む。樹脂ゲートは、第1金型と第2金型とが互いに当接した状態で、互いに対向する第1成形面および第2成形面のいずれかに開口し、かつ、第3成形面に沿って延在するように形成されている。
【0008】
本開示に係る樹脂成形品の製造方法は、第1被成形面、第2被成形面および第3被成形面を有する樹脂成形品を成形するキャビティ本体が形成された成形用金型を用いた樹脂成形品の製造方法であって、以下の工程を備えている。第1金型および第2金型を有する成形用金型を用意する。成形用金型のキャビティ本体に樹脂を充填する。キャビティ本体に充填されて成形された樹脂成形品を、成形用金型から取り出す。成形用金型を用意する工程では、以下の成形用金型が用意される。第1金型に、第1被成形面を成形する第1成形面が形成されている。第2金型に、第2被成形面を成形する第2成形面が形成されている。第1金型と第2金型とが互いに当接した状態で、第1成形面と第2成形面との間を接続するように、第3被成形面を成形する第3成形面が形成されている。第1金型と第2金型とが互いに当接した状態で、互いに対向する第1成形面および第2成形面と、第3成形面とを含む複数の成形面によってキャビティ本体が形成される。互いに対向する第1成形面および第2成形面のいずれかに開口し、かつ、第3成形面に沿って延在するように、キャビティ本体に樹脂を送り込む樹脂ゲートが形成されている。キャビティ本体に樹脂を充填する工程では、樹脂ゲートから、第1成形面および第2成形面のいずれかと交差する態様で、キャビティ本体に樹脂が充填される。樹脂成形品を成形用金型から取り出す工程では、樹脂成形品における第1被成形面および第2被成形面のいずれかに、第3被成形面に沿って延在するように樹脂ゲート痕が残される。
【0009】
本開示に係る樹脂成形品は、第1被成形面と第2被成形面と第3被成形面とを備えている。第2被成形面は、第1被成形面と対向するように位置する。第3被成形面は、第1被成形面と第2被成形面との間を接続する。第1被成形面および第2被成形面のいずれかには、樹脂ゲート痕が、第3被成形面に沿って延在するように残されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る成形用金型によれば、樹脂ゲートは、第1金型と第2金型とが互いに当接した状態で、互いに対向する第1成形面および第2成形面のいずれかに開口し、かつ、第3成形面に沿って延在するように形成されている。これにより、樹脂成形品の残留応力が低減されて、複屈折を低減することができる。
【0011】
本開示に係る樹脂成形品の製造方法によれば、樹脂成形品の残留応力を低減することができ、複屈折が低減された樹脂成形品を製造することができる。
残留応力を低減することができる。
【0012】
本開示に係る樹脂成形品によれば、残留応力が低減されて、複屈折の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】各実施の形態に係る射出成形用金型を備えた射出成形装置の一例を示す側面図である。
図2】各実施の形態に係る射出成形用金型の構造の一例を示す断面図である。
図3】各実施の形態に係る射出成形用金型によって成形される樹脂成形品の一例を示す第1の斜視図である。
図4】各実施の形態に係る射出成形用金型によって成形される樹脂成形品の一例を示す第2の斜視図である。
図5】実施の形態1に係る射出成形用金型を示す分解斜視図である。
図6】同実施の形態において、図5に示される断面線VI-VIにおける断面図である。
図7】同実施の形態において、射出成形用金型を使用した樹脂成形体の製造方法の一工程を示す断面図である。
図8】同実施の形態において、図7に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図9】同実施の形態において、図8に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図10】同実施の形態において、図9に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
図11】同実施の形態において、射出成形用金型を使用して製造された樹脂成形体の一例を示す斜視図である。
図12】比較例に係る射出成形用金型を示す部分断面図である。
図13】比較例に係る射出成形用金型を使用して製造された樹脂成形体の課題を説明するための斜視図である。
図14】同実施の形態において、射出成形用金型を使用して製造された樹脂成形体の作用効果を説明するための斜視図である。
図15】同実施の形態において、リタデーションの評価結果を示す図である。
図16】実施の形態2に係る射出成形用金型を示す分解斜視図である。
図17】同実施の形態において、図16に示される断面線XVII-XVIIにおける断面図である。
図18】同実施の形態において、射出成形用金型を使用して製造された樹脂成形体の一例を示す斜視図である。
図19】実施の形態3に係る射出成形用金型を示す分解斜視図である。
図20】同実施の形態において、図19に示される断面線XX-XXにおける断面図である。
図21】同実施の形態において、射出成形用金型を使用して製造された樹脂成形体の一例を示す斜視図である。
図22】実施の形態4に係る射出成形用金型を示す分解斜視図である。
図23】実施の形態5に係る射出成形用金型を示す分解斜視図である。
図24】同実施の形態において、図23に示される断面線XXIV-XXIVにおける断面図である。
図25】実施の形態6に係る射出成形用金型を示す分解斜視図である。
図26】同実施の形態において、射出成形用金型を使用して製造された樹脂成形体の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、各実施の形態に係る射出成形用金型を備えた射出成形装置の一例について説明する。図1に示すように、射出成形装置41は、成形用金型としての射出成形用金型1、ホッパー43およびシリンダー45を備えている。射出成形用金型1は、第1金型としての可動側金型3と、第2金型としての固定側金型19とを備えている。
【0015】
ホッパー43には、樹脂材料(図示せず)が投入される。シリンダー45では、投入された樹脂材料が加熱されて溶融する。溶融した樹脂材料は、シリンダー45からスクリュー(図示せず)によって射出成形用金型1に射出される。射出された樹脂材料は、射出成形用金型1の表面に接触することで冷却される。樹脂材料の冷却が完了するまで、射出成形用金型1内で樹脂材料が保持される。
【0016】
樹脂材料の冷却が完了すると、射出成形用金型1が開く。このとき、可動側金型3が、固定側金型19から離れる方向にスライドする。冷却されて固化した樹脂材料が、樹脂成形品として取り出される。こうして、樹脂材料の成形が完了する。
【0017】
次に、射出成形用金型1について説明する。図2に示すように、射出成形用金型1には、可動側金型3と固定側金型5とが互いに当接した状態で、キャビティ29が形成される。キャビティ29は、キャビティ本体としての製品成形部30、連通路部としての潜りゲート部33およびランナー部31を備えている。固定側金型19には、ランナー部31へ樹脂を供給するための筒状のランナー27が形成されている。
【0018】
ランナー27からランナー部31へ供給された樹脂は、潜りゲート部33を流れ、樹脂ゲート35から製品成形部30へ送り込まれる。樹脂は、ランナー部31から、重力方向上方から下方に向かって流れて、製品成形部30へ充填される。可動側金型3には、キャビティ29内で成形された樹脂成形品を含む成形体を、可動側金型3から取り外すエジェクターピン18が配置されている。以下、射出成形用金型1の具体的な構造について、各実施の形態において説明する。
【0019】
実施の形態1.
実施の形態1に係る射出成形用金型1について説明する。はじめに、射出成形用金型1によって成形される樹脂成形品の一例について説明する。図3および図4に示すように、樹脂成形品51は、光透過部53とベゼル55とを有する光学部品の一種である。ベゼル55は、光透過部53の周囲を取り囲むように位置する。
【0020】
樹脂成形品51は、射出成形用金型1によってそれぞれ成形される第1被成形面61、第2被成形面および第3被成形面65を有する。第1被成形面61と第2被成形面63とは、対向するように位置する。第3被成形面65は、第1被成形面61と第2被成形面63との間を接続するように位置する。第3被成形面65は、樹脂成形品51の厚さ方向に位置する。第1被成形面61には、射出成形用金型1に設けられた樹脂ゲートに対応した樹脂ゲート痕57が残されている。
【0021】
次に、このような樹脂成形品51を成形する射出成形用金型1の一例について説明する。図5および図6に示すように、射出成形用金型1では、可動側金型3と固定側金型19とが互いに当接した状態で、キャビティ29が形成される。キャビティ29は、キャビティ本体としての製品成形部30と、連通路部としての潜りゲート部33と、ランナー部31と含む。
【0022】
可動側金型3には、第1金型側第1凹部としての可動側第1凹部7と、第1金型側第2凹部としての可動側第2凹部13と、第1金型側第3凹部としての可動側第3凹部17とが形成されている。可動側第2凹部13は、可動側第1凹部7および可動側第3凹部17のそれぞれよりも、深く形成されている。固定側金型19には、可動側第2凹部13と対向することになる第2金型側凸部としての固定側凸部23が形成されている。
【0023】
可動側第1凹部7の底面には、樹脂成形品51の第1被成形面61を成形する第1成形面9が位置する。可動側第1凹部7の側壁面には、樹脂成形品51の第3被成形面65を成形する第3成形面11(第3成形面11a)が位置する。固定側凸部23は、樹脂成形品51の第3被成形面65を成形する第3成形面11の一部(第3成形面11b)を含む。固定側金型19には、樹脂成形品51の第2被成形面63を成形する第2成形面21が位置する。
【0024】
可動側金型3と固定側金型19とが互いに当接した状態において、キャビティ本体としての製品成形部30、ランナー部31、および、連通路部としての潜りゲート部33を含むキャビティ29と、樹脂ゲート35とが形成される。製品成形部30は、可動側第1凹部7における第1成形面9および第3成形面11aと、固定側凸部23における第3成形面11bと、固定側金型19における第2成形面21とによって形成される。
【0025】
可動側第2凹部13と固定側凸部23とが、間隔を開けて対向することによって、樹脂ゲート35は、製品成形部30における第1成形面に形成される。第1成形面9に開口する樹脂ゲート35は、第1成形面9において、第3成形面11bが位置する第1位置P1から、第1位置P1よりも内側の第2位置P2まで開口し、かつ、第1位置P1に沿って延在するように形成される。ランナー部31は、可動側第3凹部17によって形成される。潜りゲート部33は、製品成形部30に対して、第1成形面9に向かって潜り込む態様で、ランナー部31と樹脂ゲート35との間を連通している。
【0026】
次に、上述した射出成形用金型1を使用した樹脂成形品の製造方法の一例について説明する。図7に示すように、可動側金型3と固定側金型19とを対向させて、可動側金型3を固定側金型19に接近させ、図8に示すように、可動側金型3と固定側金型19とを互いに当接する。次に、図9に示すように、ランナー27からランナー部31へ樹脂47を供給する。ランナー部31へ供給された樹脂47は、潜りゲート部33を流れて樹脂ゲート35に到達する。図10に示すように、樹脂ゲート35に到達した樹脂47は、製品成形部30を下方に向かって流れ込み、徐々に製品成形部30に樹脂47が充填される。
【0027】
製品成形部30に充填された樹脂47が十分に冷却された後、可動側金型3が、固定側金型19から離れる方向にスライドする。エジェクターピン18により、製品成形部30に充填された樹脂成形品51を含む成形品が、射出成形用金型1から取り出される。その後、ランナー部31に位置していた樹脂の部分および潜りゲート部に位置していた樹脂の部分が取り除かれる。こうして、図11に示すように、樹脂成形品51が成形される。
【0028】
樹脂成形品51の第1被成形面61には、潜りゲート部33等に位置していた樹脂の部分を取り除くことによって、樹脂ゲート35に対応する樹脂ゲート痕57が残されている。樹脂ゲート痕57は、第1被成形面61において、第3被成形面65が位置する位置(第1位置P1に対応)からその位置よりも内側の位置(第2位置P2に対応)までの幅を有し、かつ、第3被成形面65に沿って延在するように帯状に残されている。
【0029】
ここで、樹脂成形品51の意匠面が、固定側金型19における第2成形面21によって成形され、樹脂成形品51の非意匠面が、可動側金型3における第1成形面9によって成形されるとする。そうすると、第1成形面9によって成形された樹脂成形品51の第1被成形面61は非意匠面として成形される。樹脂ゲート痕57は、非意匠面である第1被成形面61に残されていることになる。
【0030】
上述した射出成形用金型1では、樹脂ゲート35が第1成形面9に開口していることで、樹脂成形品51の残留応力を低減することができる。これについて、比較例に係る射出成形用金型と比べて説明する。
【0031】
図12に示すように、比較例に係る射出成形用金型101では、可動側金型103と固定側金型119とが互いに当接した状態で、キャビティ129として、製品成形部130と、連通路部133と、ランナー部131とが形成される。
【0032】
可動側金型103には、可動側第1凹部107と可動側第2凹部113と可動側第3凹部117とが形成されている。可動側第1凹部107、可動側第2凹部113および可動側第3凹部117は、同じ深さになるように形成されている。固定側金型119には、可動側第2凹部113と対向することになる固定側凸部123が形成されている。
【0033】
可動側第1凹部107の底面には、樹脂成形品151(図13参照)の第1被成形面161を成形する第1成形面109が位置する。可動側第1凹部107の側壁面には、樹脂成形品151の第3被成形面165を成形する第3成形面111の一部(第3成形面111a)が位置する。固定側凸部123の側壁面には、第3成形面111の一部(第3成形面111b)が位置する。固定側金型119には、樹脂成形品151の第2被成形面163を成形する第2成形面121が位置する。
【0034】
可動側金型103と固定側金型119とが互いに当接した状態において、製品成形部130とランナー部131と連通路部133が形成される。製品成形部130へ樹脂を送り出す樹脂ゲート135は、製品成形部130における第3成形面111に開口する。比較例に係る射出成形用金型101では、ランナー127からランナー部131へ供給された樹脂は、連通路部133を流れて樹脂ゲート135に到達する。
【0035】
樹脂ゲート135に到達した樹脂は、製品成形部130を第1成形面109(第2成形面121)に沿って流れ込み、徐々に製品成形部130に樹脂が充填される。製品成形部130に充填された樹脂が十分に冷却された後、製品成形部130に充填された樹脂成形品151を含む成形品173(図13参照)が、射出成形用金型101から取り出される。
【0036】
このとき、図13に示すように、取り出された成形品173が変形することがある。樹脂成形品151の形状が矩形状である場合には、長辺方向に山反りしてしまうことが多い。このことについて説明する。
【0037】
樹脂ゲート135は、製品成形部130への接続態様から、サイドゲートと称されている。一般的に、サイドゲートでは、ゲートカットを考慮し、製品成形部130に近づくにしたがい、連通路部133の厚さが薄くなる構造が多く採用されている。すなわち、連通路部133に位置していた樹脂残部171の厚さが、樹脂成形品151の厚さよりも薄くなるように連通路部133が形成されている。
【0038】
このため、射出成形用金型101から取り出された成形品173では、厚さが相対的に厚い樹脂成形品151の反り量は、厚さが相対的に薄い樹脂残部171の反り量よりも、大きくなる。なお、図12では、反り量が、二点鎖線によって誇張して示されている。樹脂成形品151の反りに対して樹脂残部171の反りが追従できなくなり、樹脂成形品151の反り量と樹脂残部171の反り量との間に差が生じることになる。
【0039】
反り量に差が生じることで、樹脂成形品151と樹脂残部171との接続部分(繋ぎ目部分)では、応力が集中しやすくなる。この接続部分は、樹脂ゲート135の位置に対応する。樹脂残部171を取り除いた後において、接続部分で集中する応力が樹脂成形品151に残留すると、複屈折が誘起されやすくなり、位相差が発生することがある。その結果、樹脂成形品151の光学特性が悪化することが想定される。
【0040】
比較例に係る射出成形用金型101に対して、実施の形態1に係る射出成形用金型1では、製品成形部30へ樹脂を送り出す樹脂ゲート35は、製品成形部30における第3成形面11ではなく、第1成形面9に開口している。このため、図14に示すように、射出成形用金型1から取り出された成形品73では、樹脂成形品51の第1被成形面61に、樹脂残部71が接続された構造になる。
【0041】
これにより、樹脂残部171が樹脂成形品151の第3被成形面165に接続された構造と比較すると、樹脂成形品51の反りに対して、樹脂残部71の反りが追従しやすくなる。また、長手方向に反ろうとする樹脂成形品51の第1被成形面61に、その長手方向に延在する樹脂残部71が接続されていることで、樹脂成形品51が反るのを抑制することができる。このため、樹脂成形品51の反り量と樹脂残部71の反り量が、比較例の場合と比べて小さくなる。なお、図14では、比較例と比べて小さい反り量が、二点鎖線によって示されている。
【0042】
樹脂成形品51の反り量と樹脂残部71の反り量とが小さくなることで、樹脂成形品51と樹脂残部71との接続部分において、応力が集中するのを抑制することができる。これにより、樹脂残部71を取り除いた後において、樹脂成形品51に残留する応力が低減されて、残留応力に起因する樹脂成形品51の光学特性が悪化するのを抑制することができる。
【0043】
次に、実施の形態1に係る樹脂成形品51と比較例に係る樹脂成形品151とについて、複屈折を評価した結果について説明する。図15に示すように、実施の形態に係る樹脂成形品51の長手方向の長さL1を200mm、短手方向の長さL2を120mm、樹脂残部71の幅W、すなわち、樹脂ゲート35の幅Wを80mmとした。一方、比較例に係る樹脂成形品151の長手方向の長さCL1を200mm、短手方向の長さCL2を120mm、樹脂残部171の幅CW、すなわち、樹脂ゲート135の幅CWを80mmとした。なお、いずれの場合も、光透過部のサイズは、180mm×100mmとした。
【0044】
樹脂として、透明な樹脂の中でも複屈折が生じやすいポリカーボネート樹脂を使用した。樹脂成形品51における光透過部(180mm×100mm)の領域のリタデーション値を測定し、リタデーション値の平均値の大小関係をハッチングの粗密の程度によって表現した。同様に、樹脂成形品151における光透過部(180mm×100mm)の領域のリタデーション値を測定し、リタデーション値の平均値の大小関係をハッチングの粗密の程度によって表現した。
【0045】
リタデーション値とは、光が樹脂成形品51(樹脂成形品151)を透過する際に、位相差がどの程度変化するかを示す値である。一般的に、単位としてnmが使用される。リタデーション値が低いほど、低複屈折であるといえる。評価の結果、実施の形態に係る樹脂成形品51では、リタデーション値の平均値は42nmであることがわかった。一方、比較例に係る樹脂成形品151では、リタデーション値の平均値は59nmであることがわかった。実施の形態に係る樹脂成形品では、第1成形面に樹脂ゲート35が開口する射出成形用金型1を使用することで、比較例と比べて、複屈折が30%程度低減させることができることが実証された。
【0046】
なお、樹脂成形品51のサイズとしては、上述したサイズに限られるものではない。射出成形用金型1によって成形される樹脂成形品51のサイズとしては、200×120(L1:200mm、L2:120mm)よりも大きいサイズを有する樹脂成形品についても成形することが可能である。発明者らは、300×150(L1:300mm、L2:150mm)のサイズを有する樹脂成形品を成形したところ、上述したサイズの樹脂成形品51と同様に、複屈折の低減効果が得られることを確認した。
【0047】
ところで、樹脂ゲート35が位置する部分において、固定側凸部23との側壁面と可動側第1凹部7における第1成形面9とのなす角度θ(図6参照)は、90°付近の角度が望ましいと考えられる。角度θが、90°よりも十分に大きい角度になると、樹脂が製品成形部30において十分に充填されないおそれが想定される。一方、角度θが、90°よりも十分に小さい角度になると、比較例に係るサイドゲートの構造に近づくため、複屈折の低減効果が半減してしまうおそれが想定される。
【0048】
また、樹脂ゲート35の幅Wは、製品成形部30の長手方向の長さL1(図5参照)の1/5以上の長さを有していることが望ましいと考えられる。これは、樹脂ゲート35の幅Wが、長さL1の1/5よりも短い長さになると、製品成形部30へ樹脂を送り出す圧力(成形圧)がさらに必要となり、樹脂成形品51の成形自体が難しくなることが想定されるためである。なお、樹脂の流動性に問題がなければ、樹脂ゲート35の幅Wは短い方が望ましい。これは、樹脂ゲート35の幅Wが短い方が、樹脂ゲート痕57の長さが短くなるためである。
【0049】
樹脂ゲートの構造の一つとして、バナナゲートが知られている。バナナゲートは、製品成形部に対応するキャビティ本体に、ピンポイントで開口している。すなわち、バナナゲートは、キャビティ本体における成形面に、略円形状のゲートが開口した構造とされる。これにより、バナナゲートを採用した射出成形用金型を使用して成形した樹脂成形品には、略円形状の樹脂ゲート痕が残ることになる。
【0050】
一方、上述したように、実施の形態1に係る射出成形用金型1を使用して成形した樹脂成形品51では、樹脂ゲート痕57は、帯状に延在するように残されることになる。このため、実施の形態1に係る樹脂成形品51の樹脂ゲート痕は、バナナゲートを採用した射出成形用金型によって成形される樹脂成形品の樹脂ゲート痕とは、明らかに構造が異なる。すなわち、樹脂成形品の樹脂ゲート痕を確認することで、射出成形用金型1を使用して製造された樹脂成形品51であるか否かを判断することができる。なお、射出成形用金型1を使用した樹脂成形品51の製造方法としては、製品成形部30(キャビティ本体)が水平となる配置の下で、樹脂47を注入するようにしてもよい。
【0051】
実施の形態2.
実施の形態2に係る射出成形用金型の一例について説明する。図16および図17に示すように、射出成形用金型1における可動側金型3には、可動側第1凹部7と可動側第2凹部13と可動側第3凹部17とが形成されている。固定側金型19には、可動側第2凹部13と対向することになる固定側凸部23が形成されている。
【0052】
可動側金型3と固定側金型19とが互いに当接した状態において、製品成形部30、ランナー部31および潜りゲート部33を含むキャビティ29と、樹脂ゲート35とが形成される。可動側第2凹部13と固定側凸部23とが間隔を開けて対向することによって、樹脂ゲート35は、製品成形部30における第1成形面9に形成される。
【0053】
第1成形面9に開口する樹脂ゲート35は、第1成形面9において、第3成形面11bが位置する第1位置P1よりも内側の第3位置P3から、第3位置P3よりも内側の第4位置P4まで開口し、かつ、第1位置P1に沿って延在するように形成される。
【0054】
製品成形部30は、可動側第1凹部7における第1成形面9a(第1成形面9)および第3成形面11a(第3成形面11)と、固定側凸部23における第3成形面11b(第3成形面11)および第1成形面9b(第1成形面9)と、固定側金型19における第2成形面21とによって形成される。なお、これ以外の構成については、図5および図6に示す射出成形用金型1の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0055】
次に、上述した射出成形用金型1を使用した樹脂成形品の製造方法について説明する。上述した射出成形用金型1を使用した製造方法は、実施の形態1において説明した射出成形用金型1を使用した製造方法と同様である。図17に示すように、可動側金型3と固定側金型19とが互いに当接した状態で、樹脂ゲート35から製品成形部30へ樹脂を充填することによって、樹脂成形品51が成形される。
【0056】
図18に示すように、成形された樹脂成形品51の第1被成形面61には、樹脂ゲート35に対応する樹脂ゲート痕57が残されている。樹脂ゲート痕57は、第1被成形面61において、第3被成形面65が位置する位置よりも内側の位置(第3位置P3に対応)から、その位置よりも内側の位置(第4位置P4に対応)までの幅を有し、かつ、第3被成形面65に沿って延在するように帯状に残されている。樹脂ゲート痕57は、非意匠面である第1被成形面61に残されている。
【0057】
上述した射出成形用金型1では、樹脂ゲート35が製品成形部30における第1成形面9に開口している。これにより、実施の形態1において説明したのと同様に、樹脂成形品51の残留応力が低減されて、複屈折を低減することができる。特に、樹脂ゲート35が、第1成形面9において、第3成形面11bが位置する第1位置P1よりも内側の第3位置P3から、第3位置P3よりも内側の第4位置P4まで開口していることで、製品成形部30内に樹脂を充填させやすくなり、さらなる複屈折の低減に寄与することができる。なお、樹脂ゲート35は、樹脂成形品51における光透過部53へ影響を与えない所望の位置に開口させる必要がある。
【0058】
実施の形態3.
実施の形態3に係る射出成形用金型の一例について説明する。図19および図20に示すように、射出成形用金型1における可動側金型3には、可動側第1凹部7と、第1金型側凸部としての可動側凸部15と、可動側第3凹部17とが形成されている。固定側金型19には、可動側凸部15と対向することになる第2金型凹部としての固定側凹部25が形成されている。
【0059】
可動側金型3と固定側金型19とが互いに当接した状態において、製品成形部30、ランナー部31および連通路部34を含むキャビティ29と、樹脂ゲート35とが形成される。可動側凸部15と固定側凹部25とが間隔を開けて対向することによって、樹脂ゲート35は、製品成形部30における第2成形面21に形成される。また、連通路部34は、潜りゲート部33とは反対に、可動側凸部15を乗り越える態様で形成される。
【0060】
第2成形面21に開口する樹脂ゲート35は、第2成形面21において、第3成形面11cが位置する第5位置P5から、第5位置P5よりも内側の第6位置P6まで開口し、かつ、第5位置P5に沿って延在するように形成される。
【0061】
製品成形部30は、可動側第1凹部7における第1成形面9および第3成形面11a(第3成形面11)と、可動側凸部15における第3成形面11c(第3成形面11)と、固定側金型19における第2成形面21とによって形成される。なお、これ以外の構成については、図5および図6に示す射出成形用金型1の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0062】
次に、上述した射出成形用金型1を使用した樹脂成形品の製造方法について説明する。上述した射出成形用金型1を使用した製造方法は、実施の形態1において説明した射出成形用金型1を使用した製造方法と同様である。図20に示すように、可動側金型3と固定側金型19とが互いに当接した状態で、樹脂ゲート35から製品成形部30へ樹脂を充填することによって、樹脂成形品51が成形される。
【0063】
図21に示すように、成形された樹脂成形品51の第2被成形面63には、樹脂ゲート35に対応する樹脂ゲート痕57が残されている。樹脂ゲート痕57は、第2被成形面63において、第3被成形面65が位置する位置(第5位置P5に対応)から、その位置よりも内側の位置(第6位置P6に対応)までの幅を有し、かつ、第3被成形面65に沿って延在するように帯状に残されている。この樹脂成形品51では、樹脂ゲート痕57は、意匠面である第2被成形面63に残されている。
【0064】
一般的には、樹脂成形品では、樹脂ゲート痕は非意匠面に残るように成形される。樹脂ゲート痕が意匠面に残っても支障がない場合には、上述した射出成形用金型1を使用して、意匠面である第2被成形面63に樹脂ゲート痕57が残された樹脂成形品51を成形してもよい。この場合には、連通路部34は、可動側凸部15を乗り越える態様で形成されることで、潜りゲート部33と比べると、連通路部34の構造がシンプルになる。これにより、連通路部34に残る樹脂の量を低減することができ、廃棄する樹脂の量を削減することができる。
【0065】
また、上述した射出成形用金型1では、樹脂ゲート35が製品成形部30における第2成形面21に開口していることで、実施の形態1において説明したのと同様に、樹脂成形品51の残留応力が低減されて、複屈折を低減することができる。
【0066】
実施の形態4.
実施の形態4に係る射出成形用金型の一例について説明する。図22に示すように、射出成形用金型1における可動側金型3には、可動側第1凹部7と可動側第2凹部13と可動側第3凹部17とが形成されている。固定側金型19には、可動側第2凹部13と対向することになる固定側凸部23が形成されている。
【0067】
図6に示されているのと同様に、可動側金型3と固定側金型19とが互いに当接した状態において、製品成形部30、ランナー部31および潜りゲート部33を含むキャビティ29と、樹脂ゲート35とが形成される。可動側第2凹部13と固定側凸部23とが間隔を開けて対向することによって、樹脂ゲート35は、製品成形部30における第1成形面9に形成される。
【0068】
第1成形面9に開口する樹脂ゲート35は、第1成形面9において、第3成形面11bが位置する第1位置P1から、第1位置P1よりも内側の第2位置P2まで開口し、かつ、第1位置P1に沿って延在するように形成される。
【0069】
ランナー部31および潜りゲート部33は、第1成形面9を平面視した状態で、ランナー部31から潜りゲート部33へ向かって、幅が幅W1から幅W2へ徐々に拡がる台形状に形成されている。なお、これ以外の構成については、図5および図6に示す射出成形用金型1の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0070】
次に、上述した射出成形用金型1を使用した樹脂成形品の製造方法について説明する。上述した射出成形用金型1を使用した製造方法は、実施の形態1において説明した射出成形用金型1を使用した製造方法と同様である。図6に示されているのと同様に、可動側金型3と固定側金型19とが互いに当接した状態で、樹脂ゲート35から製品成形部30へ樹脂を充填することによって、樹脂成形品51が成形される。
【0071】
図11に示されているのと同様に、成形された樹脂成形品51の第1被成形面61には、樹脂ゲート35に対応する樹脂ゲート痕57が残されている。樹脂ゲート痕57は、第1被成形面61において、第3被成形面65が位置する位置(第1位置P1に対応)から、その位置よりも内側の位置(第2位置P2対応)までの幅を有し、かつ、第3被成形面65に沿って延在するように帯状に残されている。樹脂ゲート痕57は、非意匠面である第1被成形面61に残されている。
【0072】
上述した射出成形用金型1では、樹脂ゲート35が製品成形部30における第1成形面9に開口していることで、実施の形態1において説明したのと同様に、樹脂成形品51の残留応力が低減されて、複屈折を低減することができる。
【0073】
また、ランナー部31および潜りゲート部33は、第1成形面9を平面視した状態で、ランナー部31から潜りゲート部33へ向かって、幅が徐々に拡がる台形状に形成されている。特に、潜りゲート部33が、平面視的に台形状に形成されていることで、潜りゲート部33に残る樹脂の量を低減することができ、廃棄する樹脂の量の削減に貢献することができる。
【0074】
なお、樹脂ゲート35から製品成形部30へ、樹脂を効率的に送り込むためには、樹脂ゲート35の開口形状として、第1位置P1から第2位置P2へ向かって拡がる形状を有していることが望ましい(図22参照)。
【0075】
実施の形態5.
実施の形態5に係る射出成形用金型の一例について説明する。図23および図24に示すように、射出成形用金型1における可動側金型3には、可動側第1凹部7と可動側第2凹部13と可動側第3凹部17とが形成されている。固定側金型19には、可動側第2凹部13と対向することになる固定側凸部23が形成されている。
【0076】
可動側金型3と固定側金型19とが互いに当接した状態において、製品成形部30、ランナー部31および潜りゲート部33を含むキャビティ29と、樹脂ゲート35とが形成される。可動側第2凹部13と固定側凸部23とが間隔を開けて対向することによって、樹脂ゲート35は、製品成形部30における第1成形面9に形成される。
【0077】
第1成形面9に開口する樹脂ゲート35は、第1成形面9において、第3成形面11bが位置する第1位置P1から、第1位置P1よりも内側の第2位置P2まで開口し、かつ、第1位置P1に沿って延在するように形成される。
【0078】
潜りゲート部33は、ランナー部31から樹脂ゲート35に向かって樹脂が流れる方向に沿って、かつ、第1成形面9および第2成形面21に直交する方向の断面が、湾曲状になるように形成されている。潜りゲート部33は、円弧を描くように形成されている。なお、これ以外の構成については、図5および図6に示す射出成形用金型1の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0079】
次に、上述した射出成形用金型1を使用した樹脂成形品の製造方法について説明する。上述した射出成形用金型1を使用した製造方法は、実施の形態1において説明した射出成形用金型1を使用した製造方法と同様である。図24に示されているように、可動側金型3と固定側金型19とが互いに当接した状態で、樹脂ゲート35から製品成形部30へ樹脂を充填することによって、樹脂成形品51が成形される。
【0080】
図11に示されているのと同様に、成形された樹脂成形品51の第1被成形面61には、樹脂ゲート35に対応する樹脂ゲート痕57が残されている。樹脂ゲート痕57は、第1被成形面61において、第3被成形面65が位置する位置(第1位置P1に対応)から、その位置よりも内側の位置(第2位置P2対応)までの幅を有し、かつ、第3被成形面65に沿って延在するように帯状に残されている。樹脂ゲート痕57は、非意匠面である第1被成形面61に残されている。
【0081】
上述した射出成形用金型1では、樹脂ゲート35が製品成形部30における第1成形面9に開口していることで、実施の形態1において説明したのと同様に、樹脂成形品51の残留応力が低減されて、複屈折を低減することができる。
【0082】
また、潜りゲート部33は、ランナー部31から樹脂ゲート35に向かって樹脂が流れる方向に沿った断面形状が、円弧を描くように湾曲状に形成されている。これにより、製品成形部30に充填された樹脂が十分に冷却された後に、可動側金型3をスライドさせて固定側金型から可動側金型3を離型させる際に、比較的容易に離型させることができる。
【0083】
実施の形態6.
実施の形態6に係る射出成形用金型の一例について説明する。図25に示すように、射出成形用金型1における可動側金型3には、可動側第1凹部7、可動側第2凹部13a、可動側第2凹部13b、可動側第3凹部17aおよび可動側第3凹部17bが形成されている。固定側金型19には、可動側第2凹部13aと対向することになる固定側凸部23aと、可動側第2凹部13bと対向することになる固定側凸部23bとが形成されている。
【0084】
可動側金型3と固定側金型19とが互いに当接した状態において、製品成形部30、ランナー部31a、ランナー部31b、潜りゲート部33aおよび潜りゲート部33bを含むキャビティ29と、樹脂ゲート35aおよび樹脂ゲート35bとが形成される。
【0085】
可動側第2凹部13aと固定側凸部23aとが間隔を開けて対向することによって、樹脂ゲート35aは、製品成形部30における第1成形面9に形成される。可動側第2凹部13bと固定側凸部23bとが間隔を開けて対向することによって、樹脂ゲート35bも、製品成形部30における第1成形面9に形成される。
【0086】
すなわち、射出成形用金型1では、一つの製品成形部30に対して、2つの樹脂ゲート35aおよび樹脂ゲート35bが形成されている。樹脂ゲート35aおよび樹脂ゲート35bは、1つの樹脂成形品に形成される2つの光透過部にそれぞれ対応する位置に配置される。
【0087】
なお、これ以外の構成については、図5および図6に示す射出成形用金型1の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0088】
次に、上述した射出成形用金型1を使用した樹脂成形品の製造方法について説明する。上述した射出成形用金型1を使用した製造方法は、実施の形態1において説明した射出成形用金型1を使用した製造方法と同様である。可動側金型3と固定側金型19とが互いに当接した状態で、樹脂ゲート35aおよび樹脂ゲート35bのそれぞれから、製品成形部30へ樹脂を充填することによって、樹脂成形品51が成形される。
【0089】
図26に示すように、成形された樹脂成形品51には、2つの光透過部53aと光透過部53bとが形成されている。樹脂成形品51の第1被成形面61には、樹脂ゲート35aに対応する樹脂ゲート痕57aと、樹脂ゲート35bに対応する樹脂ゲート痕57bとが残されている。樹脂ゲート痕57aは、光透過部53aに対応する位置に残されている。樹脂ゲート痕57bは、光透過部53bに対応する位置に残されている。
【0090】
上述した射出成形用金型1では、樹脂ゲート35aおよび樹脂ゲート35bが、製品成形部30における第1成形面9に開口していることで、実施の形態1において説明したのと同様に、樹脂成形品51の残留応力が低減されて、複屈折を低減することができる。
【0091】
また、射出成形用金型1では、樹脂ゲート35aおよび樹脂ゲート35aのそれぞれから、一つの製品成形部30に樹脂が充填される。樹脂ゲート35aから充填される樹脂と樹脂ゲート35bから充填される樹脂とが合流することによって、製品成形部30内においてウエルドラインが発生することがある。ウエルドラインが発生すると、樹脂成形品51の表面に線が出現する。
【0092】
樹脂成形品51における光透過部53aまたは光透過部53bに線が出現すると、光が透過する際に結像が乱れてしまうおそれがある。このため、樹脂ゲート35aおよび樹脂ゲート35aは、製品成形部30に対して、ウエルドラインが発生しない位置に形成する必要がある。
【0093】
なお、樹脂成形品51としては、レンズまたはディスプレーパネル等の光学製品の他に、製品成形部の形状を変えることで、たとえば、プリズム等の光学製品にも適用することができる。各実施の形態において説明した射出成形用金型については、必要に応じて種々組み合わせることが可能である。
【0094】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本開示は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本開示は、射出成形用金型に有効に利用される。
【符号の説明】
【0096】
1 射出成形金型、3 可動側金型、7 可動側第1凹部、9、9a、9b 第1成形面、11、11a、11b、11c 第3成形面、13、13a、13b 可動側第2凹部、15 可動側第1凸部、17、17a、17b 可動側第3凹部、18 エジェクターピン、19 固定側金型、21 第2成形面、23、23a、23b 固定側凸部、25 固定側凹部、27 ランナー、29 キャビティ、30 製品成形部、31、31a、31b ランナー部、33、33a、33b 潜りゲート部、34 連通路部、35、35a、35b 樹脂ゲート、41 射出成型装置、43 ホッパー、45 シリンダー、47 樹脂、51 樹脂成形品、53 光透過部、55 ベゼル、57 樹脂ゲート痕、61 第1被成形面、63 第2被成形面、65 第3被成形面、71 樹脂残部、73 成形品、P1、P2、P3、P4、P5 位置。
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