(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148347
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】電子部品包装用カバーテープおよび包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 85/86 20060101AFI20241010BHJP
B65D 73/02 20060101ALI20241010BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241010BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B65D85/86 300
B65D73/02 J
B65D65/40 D
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061412
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】三原 貴志
(72)【発明者】
【氏名】安藤 瑠
(72)【発明者】
【氏名】丹下 陽平
(72)【発明者】
【氏名】長塚 保則
(72)【発明者】
【氏名】添田 有貴
(72)【発明者】
【氏名】村田 鮎郎
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
3E096
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AA24
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4F100AK06D
4F100AK12C
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4F100JN30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】中間層とヒートシール層との密着性が良好であり、かつ、透明性に優れる電子部品包装用カバーテープを提供する。
【解決手段】本開示は、基材層2と、上記基材層の一方の面側に配置された中間層4と、上記中間層の上記基材層とは反対側の面に接して配置されたヒートシール層3と、を有する電子部品包装用カバーテープ1であって、上記中間層は、エチレン-(メタ)アクリル系樹脂を含み、軟化点が90.0℃以下である、電子部品包装用カバーテープを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層の一方の面側に配置された中間層と、
前記中間層の前記基材層とは反対側の面に接して配置されたヒートシール層と、を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記中間層は、エチレン-(メタ)アクリル系樹脂を含み、軟化点が90.0℃以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【請求項2】
前記エチレン-(メタ)アクリル系樹脂中の、(メタ)アクリル系モノマー単位の比率が、1.3質量%以上、8.0質量%以下である、請求項1に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項3】
前記中間層は、
前記基材層側に配置された第1層と、
前記エチレン-(メタ)アクリル系樹脂を含み、前記第1層と前記ヒートシール層との間に配置され、前記ヒートシール層と接する第2層と、
を有する、請求項1に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項4】
前記中間層と前記ヒートシール層との間の剥離強度が、5N/15mm以上である、請求項1に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項5】
前記電子部品包装用カバーテープのヘーズが、20%以下である、請求項1に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【請求項6】
電子部品を収納する複数の収納部を有するキャリアテープと、
前記収納部に収納された電子部品と、
前記収納部を覆うように配置された、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の電子部品包装用カバーテープと、
を備える、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品包装用カバーテープおよびそれを用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IC、抵抗、トランジスタ、ダイオード、コンデンサ、圧電素子レジスタ等の電子部品は、テーピング包装され、表面実装に供せられる。テーピング包装においては、電子部品を収納する収納部を複数有するキャリアテープに電子部品を収納した後に、カバーテープをキャリアテープにヒートシールし、電子部品を保管および搬送するための包装体を得る。電子部品の実装時には、カバーテープをキャリアテープから剥離し、電子部品を自動的に取り出して基板に表面実装する。なお、カバーテープはトップテープとも称される。
【0003】
カバーテープは、一般的に、基材層、中間層およびヒートシール層を有する。中間層は、クッション性の向上を目的として、ポリエチレン樹脂が用いられる場合がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリエチレン樹脂を含む中間層を有するカバーテープは、キャリアテープ上にヒートシールして包装体とした場合に、中間層とヒートシール層との間の密着性が低く、剥離が生じやすい。特に、包装体を巻いて巻回体の状態として保管および搬送する場合において、中間層とヒートシール層との間で剥離が生じやすく、カバーテープに浮きが生じる場合がある。
【0006】
中間層とヒートシール層との間の密着性の向上のために、中間層の表面にコロナ処理等の表面処理を行い、中間層の表面の酸化度を上げる方法が挙げられる。この方法では密着性向上効果が不十分である。
【0007】
また、中間層とヒートシール層との間にプライマー層を形成する方法が考えられる。この方法では、カバーテープの製造工程が増えるため生産性に劣り、また、カバーテープを構成する層が増えるため透明性の観点で好ましくない。
【0008】
また、中間層にゴム系成分(例えば、スチレン-ブタジエン共重合体(SBC))を添加する方法等が考えられる。しかしながら、混合樹脂とすることで、透明性が悪化する場合がある。また、製膜時の熱分解により、フィッシュアイが生じる恐れがある。
【0009】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、包装体とした場合に、中間層とヒートシール層との密着性が良好であり、かつ、透明性に優れる電子部品包装用カバーテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一実施形態は、基材層と、上記基材層の一方の面側に配置された中間層と、上記中間層の上記基材層とは反対側の面に接して配置されたヒートシール層と、を有する電子部品包装用カバーテープであって、上記中間層は、エチレン-(メタ)アクリル系樹脂を含み、軟化点が90.0℃以下である、電子部品包装用カバーテープである。
【0011】
本開示の一実施形態は、電子部品を収納する複数の収納部を有するキャリアテープと、上記収納部に収納された電子部品と、上記収納部を覆うように配置された、上述の電子部品包装用カバーテープと、を備える、包装体である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、包装体とした場合に中間層とヒートシール層との密着性が良好であり、かつ、透明性に優れる電子部品包装用カバーテープを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の電子部品包装用カバーテープを例示する概略断面図である。
【
図2】本開示の電子部品包装用カバーテープを例示する概略断面図である。
【
図3】本開示の電子部品包装用カバーテープを例示する概略断面図である。
【
図4】本開示の包装体を例示する概略平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0015】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」、あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面側に」または「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
【0016】
以下、本開示の電子部品包装用カバーテープおよび包装体について、詳細に説明する。なお、本明細書において、「電子部品包装用カバーテープ」を単に「カバーテープ」と称する場合がある。
【0017】
A.電子部品包装用カバーテープ
本開示の電子部品包装用カバーテープは、基材層と、上記基材層の一方の面側に配置された中間層と、上記中間層の上記基材層とは反対側の面に接して配置されたヒートシール層と、を有し、上記中間層は、エチレン-(メタ)アクリル系樹脂を含み、軟化点が90.0℃以下である。
【0018】
本開示のカバーテープについて、図面を参照して説明する。
図1は本開示のカバーテープの一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、本開示のカバーテープ1は、基材層2と、基材層2の一方の面側に配置された中間層4と、中間層4の基材層2とは反対側の面に接して配置されたヒートシール層3と、を有する。中間層4は、エチレン-(メタ)アクリル系樹脂を含み、軟化点が90.0℃以下である。また、
図2に示すように、中間層4は、基材層2側に配置された第1層41と、上記エチレン-(メタ)アクリル系樹脂を含み、第1層41とヒートシール層3との間に配置され、ヒートシール層3と接する第2層42と、を有していてもよい。また、
図3に示すように、基材層2のヒートシール層3側の面とは反対の面側に、帯電防止層5が配置されていてもよい。
【0019】
図4(a)、(b)は本開示の電子部品包装用カバーテープを用いた包装体の一例を示す概略平面図および断面図であり、
図4(b)は
図4(a)のA-A線断面図である。
図4(a)、(b)に示すように、包装体10は、電子部品13を収納する複数の収納部12を有するキャリアテープ11と、収納部12に収納された電子部品13と、収納部12を覆うように配置されたカバーテープ1と、を備える。キャリアテープ11にはカバーテープ1がヒートシールされており、カバーテープ1のヒートシール層3の両端に所定の幅でライン状にヒートシール部3hが設けられている。また、包装体10において、キャリアテープ11は、送り穴14を有することができる。
【0020】
本開示のカバーテープは、中間層がエチレン-(メタ)アクリル系樹脂を含む。ヒートシール層は、一般的に、極性基を有する樹脂を含む。本開示における中間層は、極性を有するエチレン-(メタ)アクリル系樹脂を含むため、極性を有するヒートシール層との密着性が高い。
【0021】
また、本開示における中間層は、軟化点が90.0℃以下と低いため、例えば、カバーテープをキャリアテープにヒートシールする際に軟化してヒートシール層と相溶しやすく、密着性が向上する。
【0022】
さらに、ヒートシール層と中間層との密着性が高いため、ヒートシール層と中間層との間の界面での光の拡散を抑制することができ、その結果、透明性に優れるカバーテープとなる。
【0023】
1.中間層
本開示のカバーテープは、基材層の一方の面側に配置された中間層を有する。中間層は、基材層とヒートシール層との間に配置されており、一方の面がヒートシール層と直接接している。また、中間層の他方の面は、基材層に直接接していてもよいし、後述する接着剤層に直接接していてもよい。
【0024】
(1)樹脂
本開示における中間層は、エチレン-(メタ)アクリル系樹脂を含む。本開示において、エチレン-(メタ)アクリル系樹脂とは、少なくとも、エチレンモノマー単位と、(メタ)アクリル系モノマー単位とを含む共重合体を意味する。エチレンモノマー単位とは、エチレンモノマー由来の構成単位をいう。(メタ)アクリル系モノマー単位は、(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位という。(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。本開示においては、(メタ)アクリル酸が好ましい。(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルといった極性構造単位の存在により、中間層とヒートシール層との密着性が向上すると考えられる。
【0025】
(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル及び(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
【0026】
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方をいうものとする。
【0027】
本開示においては、エチレン-(メタ)アクリル系樹脂中の、(メタ)アクリル系モノマー単位の比率は、1.3質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であってもよい。(メタ)アクリル系モノマー単位の比率が上記範囲であることにより、中間層とヒートシール層との密着性が向上する。中間層とヒートシール層との密着性が向上すると、中間層とヒートシール層との界面での光拡散が抑制されるため、透明性に優れるカバーテープとなる。
【0028】
一方、エチレン-(メタ)アクリル系樹脂中の、(メタ)アクリル系モノマー単位の比率は、8.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であってもよい。(メタ)アクリル系モノマー単位の比率が上記範囲であることにより、後述する第1層と第2層との密着性が向上する。第1層と第2層との密着性が向上すると、第1層と第2層との界面での拡散が抑制されるため、透明性に優れるカバーテープとなる。
【0029】
エチレン-(メタ)アクリル系樹脂中の、(メタ)アクリル系モノマー単位の比率は、1.3質量%以上、8.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上、5.0質量%以下であってもよい。上記エチレン-(メタ)アクリル系樹脂中の、(メタ)アクリル系モノマー単位の比率は、FT-IRにて、酸含有量を測定することにより得られる値である。
【0030】
また、本開示においては、エチレン-(メタ)アクリル系樹脂中の、エチレンモノマー単位の比率は、98.7質量%以下であることが好ましく、98.0質量%以下であってもよい。一方、エチレン-(メタ)アクリル系樹脂中の、エチレンモノマー単位の比率は、92.0質量%以上であることが好ましく、95.0質量%以上であってもよい。
【0031】
エチレン-(メタ)アクリル系樹脂中の、エチレンモノマー単位の比率は、92.0質量%以上、98.7質量%以下であることが好ましく、95.0質量%以上、98.0質量%以下であってもよい。
【0032】
(2)軟化点
本開示における中間層は、軟化点が、90.0℃以下である。本開示において、中間層の軟化点は、中間層のヒートシール層側の面における軟化点である。中間層の軟化点が90.0℃以下であることにより、カバーテープをキャリアテープへヒートシールした後に、ヒートシール層と相溶しやすく、密着性が向上する。中間層の軟化点は、85.0℃以下であることが好ましく、83.0℃以下であることがより好ましい。一方、中間層の軟化点は、例えば、70.0℃以上であり、75.0℃以上であってもよい。
【0033】
本開示において、中間層の軟化点Tは、中間層のヒートシール層側の面に対し、局所熱分析を行うことによって測定された値である。局所熱分析は、試料表面の局所で行う熱分析であり、ヒーターを内蔵した原子間力顕微鏡(AFM)のカンチレバーによって試料表面を局所的に加熱し、温度に対するカンチレバー変位をプロットすることによって、融解及びガラス転移に伴う軟化を検出する手法である。具体的な測定方法については、実施例で詳述する。本開示においては、カンチレバーのZ方向の変位(V、nm、μm等)が増加・上昇方向(熱膨張方向)から、減少・下降方向に一度目に転じる変化を軟化と呼び、その温度を軟化点と呼称している。
【0034】
中間層の軟化点は、カバーテープからヒートシール層を除去し、露出させた中間層のヒートシール層側の表面で測定することができる。なお、ヒートシール層は、有機溶剤にてふき取ることにより、除去することができる。
【0035】
中間層の軟化点を調整する方法としては、例えば、中間層(後述する第1層および第2層)の樹脂材料を変更する方法、後述する第1層と第2層との厚さを調整する方法、溶融温度を変更する方法、冷却速度を変更する方法等が挙げられる。
【0036】
中間層全体の厚さT0は、特に限定されないが、例えば、20μm以上であり、30μm以上であってもよい。一方、例えば、200μm以下であり、150μm以下であってもよい。
【0037】
(3)層構成
本開示における中間層は、基材層側に配置された第1層と、上記エチレン-(メタ)アクリル系樹脂を含み、第1層とヒートシール層との間に配置され、ヒートシール層と接する第2層と、を有することが好ましい。一方、エチレン-(メタ)アクリル系樹脂を含む単層であってもよい。
【0038】
(a)第1層
本開示における中間層は、基材層側に配置された第1層を有することが好ましい。第1層は、後述する第2層と基材層との間に配置される。第1層により、本開示のカバーテープをキャリアテープにヒートシールする際に、クッション性を向上させることができるために、より均一にヒートシール層に熱を与えることができる。
【0039】
第1層は、ポリエチレンを有することが好ましい。第1層を構成するポリエチレンとしては、具体的には低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。なお、低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.900g/cm3を超えて0.925g/cm3以下である。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.900g/cm3を超えて0.925g/cm3以下である。ポリエチレンの密度は、JIS K7112(1999)に準拠して測定する。
【0040】
第1層は、単層であってもよく、同種または異種の複数層の積層体であってもよい。
【0041】
第1層の厚さT1は、特に限定されず、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。第1層の厚さが上記値以下であれば、シールする際の第2層やヒートシール層への伝熱性がよく低温シール性が良好となる。一方、第1層の厚さT1は、例えば5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。第1層の厚さが上記値以上であればクッション性が良好となる。なお、第1層が複数層の積層体である場合、上記厚さは、第1層全体の厚さである。
【0042】
中間層の厚さT0に対する第1層の厚さT1の割合(T1/T0)は、例えば、0以上であり、0.5以上であってもよく、0.6以上であってもよく、0.7以上であってもよい。一方、例えば、1.0未満であり、0.9以下であってもよく、0.8以下であってもよい。
【0043】
(b)第2層
本開示における第2層は、上述したエチレン-(メタ)アクリル系樹脂を含む層である。第2層は、樹脂成分として、上述したエチレン-(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂を含んでもよいが、含まないことが好ましい。すなわち、第2層は、樹脂成分として、エチレン-(メタ)アクリル系樹脂を単独で含むことが好ましい。ヒートシール層との密着性および透明性が更に良好になるためである。
【0044】
第2層におけるエチレン-(メタ)アクリル系樹脂の含有量は、特に限定されないが70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0045】
エチレン-(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル系共重合体等が挙げられる。中でも、ポリエチレンが好ましい。具体的には低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。なお、低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.900g/cm3を超えて0.925g/cm3以下である。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.900g/cm3を超えて0.925g/cm3以下である。ポリエチレンの密度は、JIS K7112(1999)に準拠して測定する。
【0046】
第2層の厚さT2としては、特に限定されず、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましい。第2層の厚さが上記範囲であれば、剥離強度が強くなりすぎず、シールカーブ(ヒートシール温度に対する剥離強度をプロットしたグラフ曲線)が滑らかになる。一方、第2層の厚さT2は、例えば3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。第2層の厚さが上記値以上であれば、ヒートシール層に対する密着性が向上する。本明細書において、第2層の厚さおよび他の層の厚さは、カバーテープの断面を光学顕微鏡により観察し、測定した値である。
【0047】
中間層の厚さT0に対する第2層の厚さT2の割合(T2/T0)は、例えば、0.1以上であり、0.2以上であってもよく、0.3以上であってもよい。一方、例えば、1.0以下であり、0.6以下であってもよく、0.5以下であってもよい。
【0048】
(4)製造方法
中間層としては、フィルムを用いることができる。この場合、基材層および中間層の積層方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、熱溶融させたフィルムの原材料を基材層にTダイ等で押出して、ラミロール(冷却用ロール)で急冷固化し、基材層と圧着する方法(押出ラミネート法)が挙げられる。これにより、基材層の一方の面側に中間層が形成される。なお、基材層の中間層が配置される側の面には、予め、アンカーコート層が形成されることが好ましい。
【0049】
また、予め製造した中間層用フィルムを接着剤で基材層に貼り合せる方法も挙げられる。中間層用フィルムの形成方法としては、例えば、第1層の樹脂材料および第2層の樹脂材料を選択し、インフレーション法、Tダイ法等の慣用の成膜法により、第1層および第2層を含む中間層用フィルムを形成する方法が挙げられる。
【0050】
2.ヒートシール層
本開示におけるヒートシール層は、基材層の一方の面側に配置される層である。ヒートシール層は、本開示のカバーテープを用いて包装体を製造する際に、キャリアテープに対してヒートシールすることにより、カバーテープとキャリアテープとが接着される。
【0051】
(1)材料
ヒートシール層は熱可塑性樹脂を有するものである。熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、ポリエチレン樹脂のいずれか、あるいは、これらを主成分とする樹脂が挙げられる。本開示においては、中間層との密着性の観点から、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。(メタ)アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル系モノマー単位からなる単独重合体および(メタ)アクリル系モノマー単位を含む共重合体を意味する。
【0052】
(メタ)アクリル系モノマー単位は、(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位という。(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。ヒートシール層の(メタ)アクリル系モノマー単位としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0053】
これらと共重合可能な単量体としては、例えばスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、t-ブチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体が挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレートとスチレンとのランダム、ブロック又はグラフト共重合体、エチル(メタ)アクリレートとスチレンとのランダム、ブロック又はグラフト共重合体等が挙げられる。
【0054】
(メタ)アクリル系モノマー単位からなる単独重合体としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート-ブチル(メタ)アクリレート共重合体が挙げられる。
【0055】
ヒートシール層には、必要に応じて、例えば、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、分散剤、充填剤、可塑剤、着色剤、粘着付与剤等の添加剤が含まれていてもよい。本開示においては、ヒートシール層は、帯電防止剤が含まれることが好ましい。
【0056】
帯電防止剤としては、例えば、導電性微粒子が挙げられる。導電性微粒子としては、例えば、アンチモンドーピング酸化錫、アルミニウムドーピング酸化亜鉛等の粒子である。導電性微粒子は、アンチモンをドーピングした酸化錫を表面にコーティングした硫酸バリウム粒子又は二酸化ケイ素粒子であってもよい。導電性微粒子の形状は、特に限定されないが、針状または微球状であることが好ましい。
【0057】
(2)厚さ
ヒートシール層の厚さは、特に限定されず、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。ヒートシール層の厚さが上記値以下であれば、カバーテープの透明性の悪化を抑制することができる。一方、ヒートシール層の厚さは、2μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。ヒートシール層の厚さが上記値以上であれば、ヒートシール層としての十分なシール性が得られ、また、均一な膜を得ることができる。
【0058】
(3)形成方法
ヒートシール層の形成方法としては、例えば、熱可塑性樹脂、帯電防止剤及びその他に添加剤等を溶媒に分散または溶解したヒートシール層用組成物を用い、後述する中間層の基材層とは反対側に上記ヒートシール層用組成物を塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。ヒートシール層用組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、バーコート、ワイヤーバーコート、ロッドコ-ト、キスコート、ナイフコート、ダイコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の塗布法が挙げられる。
【0059】
また、ヒートシール層として、フィルムを用いることができる。この場合、中間層およびヒートシール層の積層方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、熱溶融させたフィルムの原材料を中間層にTダイ等で押出して、ラミロール(冷却用ロール)で急冷固化し、中間層と圧着する方法(押出ラミネート法)が挙げられる。また、中間層およびヒートシール層の積層方法としては、予め製造したフィルムを接着剤で中間層に貼り合せる方法が挙げられる。上記接着剤としては、例えば、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等を用いることができる。
【0060】
4.基材層
本開示における基材層は、中間層、ヒートシール層や後述する帯電防止層を支持する層である。基材層としては、保存および搬送時の外力に耐える機械的強度や、製造およびテーピング包装に耐える耐熱性等を有していれば、種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルが、コスト面および機械的強度が良いため、好ましく用いられる。
【0061】
また、基材層には、必要に応じて、例えば充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。基材層は、単層であってもよく、同種または異種の複数層の積層体であってもよい。また、基材層は、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。中でも、基材層は、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。
【0062】
基材層の厚さは、例えば、10μm以上であり、20μm以上であってもよい。基材層の厚さが上記以上であれば、機械的強度が不足する恐れがない。一方、例えば、30μm以下であり、25μm以下であってもよい。基材層の厚さが上記範囲であれば、テーピング包装時の剛性が強くなりすぎず、ハンドリング性とコスト面で良好となる。
【0063】
5.その他
(1)剥離強度
本開示のカバーテープは、上述した理由により、キャリアテープにヒートシールした後の中間層とヒートシール層との間の密着性が高い。例えば、中間層とヒートシール層との間の剥離強度を、5N/15mm以上とすることができ、6N/15mm以上とすることができ、8N/15mm以上とすることができる。一方、中間層とヒートシール層との間の剥離強度は、例えば、15N/15mm以下であり、13N/15mm以下であってもよい。剥離強度が上記範囲であることにより、カバーテープを剥離するとき、基材の破断が生じたり、キャリアテープが振動して電子部品が飛び出したりすることがあり好ましくない。
【0064】
本開示において、上記剥離強度とは、カバーテープのヒートシール層側の面が、ポリスチレンシートに対向するように、カバーテープとポリスチレンシートとをヒートシールして得られた積層体に対して、基材層および中間層の端部を掴み、剥離速度200mm/分で180°剥離した際の剥離強度である。具体的な測定方法については、実施例で詳述する。
【0065】
本開示におけるカバーテープは、キャリアテープからの開封に際し、シール部において、中間層とヒートシール層との層間において剥離が生じる。上記剥離強度は、一般的に、ヒートシール層とキャリアテープとの剥離強度より弱い。
【0066】
(2)ヘーズ
本開示におけるカバーテープは、上述した理由により、透明性が高い。上述の各層を積層してなるカバーテープにおけるヘーズ値は、20%以下であることが好ましく、18%以下であることがより好ましく、15%以下であることが更に好ましい。
【0067】
本開示において、ヘーズ値は、JIS-K-7136:2000に準拠して、ヘーズメーターNDH 7000(日本電色工業製)で測定した値である。このような光学的特性を有するものであれば、視認性の良いカバーテープとなる。
【0068】
(3)全光線透過率
本開示におけるカバーテープは、上述の各層を積層してなるカバーテープにおける全光線透過率が80%以上であることが好ましく、特には85%以上であることが好ましい。
【0069】
本開示において、全光線透過率は、JIS-K-7361に準拠して、ヘーズメーターNDH 7000(日本電色工業製)で測定した値である。このような光学的特性を有するものであれば、視認性の良いカバーテープとなる。
【0070】
(4)幅および長さ
本開示におけるカバーテープの幅および長さは、キャリアテープの幅および長さに応じて適宜設定することができる。例えば、カバーテープの幅は1~100mm程度であり、5.25mm~5.5mmであってもよい。また、長さは100~10000m程度である。
【0071】
6.その他構成
(1)帯電防止層
本開示では、基材層のヒートシール層側の面とは反対の面側に、帯電防止層が配置されていることが好ましい。帯電防止層は、基材層のヒートシール層側の面とは反対の面側に配置され、カバーテープが帯電することを防止するための層である。帯電防止層を有することによって、他の面との接触による静電気の発生を防止することや、静電気が帯電してカバーテープの表面へのゴミやチリ等の付着を防止することができる。
【0072】
帯電防止層は、基材層に帯電防止剤をコーティングすることにより形成することができる。帯電防止剤としては、導電性高分子が挙げられ、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾール等が挙げられる。中でも、導電性高分子は、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびポリピロールからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。湿度に依存しない十分な帯電防止性および透明性が得られるからである。ポリチオフェンとしては、例えば、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸)が好ましく用いられる。ポリアニリンとしては、例えば、スルホン化ポリアニリンが好ましく用いられる。上記導電性高分子を含む帯電防止層であれば厚みが薄くとも、低い表面抵抗率を得ることができるために好ましい。帯電防止層の厚みが薄いことで、カバーテープの光の透過率を向上させることができる。また、帯電防止層の厚みが薄いことで、カバーテープの光の吸収率を低くすることができる。そのため、カバーテープの視認性を向上させることができる。
【0073】
また、本開示における帯電防止層は、導電性高分子以外の帯電防止剤を含むことにより帯電防止性を発現するものであっても良い。導電性高分子以外の帯電防止剤としては、例えば、高分子型界面活性剤、低分子型界面活性剤等が挙げられる。それぞれ、ノニオン、カチオン、アニオン型があり、この界面活性剤としては、帯電防止性能、塗工性の観点からカチオン型高分子界面活性剤が好ましい。カチオン型高分子界面活性剤としては、高分子型4級アンモニウム塩が好ましい。4級アンモニウム塩のカウンターアニオンは特に限定されず、例えば、ハロゲンイオン、硫化物イオン等が用いられ、アンモニウムの1~3位まではアリール基、アルキル基が入り、特に限定されないが、溶解性の観点から炭素数が6個以下が好ましい。高分子型4級アンモニウム塩の主鎖にはアクリル主鎖が透明性、基材密着性の観点から好ましい。また、帯電防止層は、樹脂を含んでいてもよい。
【0074】
帯電防止層の形成方法としては、例えば、帯電防止剤等を溶媒に分散または溶解した帯電防止層用組成物を用い、基材層の他方の面側に上記帯電防止層用組成物を塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。上記帯電防止層用組成物の塗布方法としては、例えば、エアドクター、ブレードコート、ナイフコート、ロッドコート、バーコート、ダイレクトロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、スライドコート等の公知の塗布法が挙げられる。
【0075】
帯電防止層の厚さは、例えば、0.02μm以上3μm以下とすることができる。この程度の厚さの帯電防止層とすることにより、カバーテープに帯電防止性を付与することができる。
【0076】
(2)接着剤層
更に、基材層と中間層との間に、接着剤層を有していてもよい。接着剤層を形成することで、基材層と中間層とが接着力に乏しい場合であっても、基材層と中間層との間の密着性を向上させることができる。接着剤層としては、基材層、中間層、ヒートシール層に用いられる材料に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。接着剤層は、例えば、オレフィン系、アクリル系、イソシアネート系、ウレタン系、エステル系の接着剤等のような接着性の良好な樹脂で形成することができる。
【0077】
また、接着剤の塗布は、特に限定されないが、グラビアコーティング、ロールコーティング等で行うことができる。
【0078】
接着剤層の厚さは、適宜調整することができるが、例えば、カバーテープに適度な剛性を与えるように、1~10g/m2であり、好ましくは、2~5g/m2である。1g/m2以上であれば、接着強度を均一にすることができる。
【0079】
B.包装体
本開示の包装体は、電子部品を収納する複数の収納部を有するキャリアテープと、上記収納部に収納された電子部品と、上記収納部を覆うように配置された、上述のカバーテープと、を備える。
【0080】
本開示のカバーテープを用いた包装体は、保管および搬送時におけるカバーテープの中間層とヒートシール層との間での剥離を抑制することができ、更に、電子部品の視認性に優れるものとなる。
【0081】
図4(a)、(b)は本開示の包装体の一例を示す概略平面図および断面図である。なお、
図4(a)、(b)については、上記「A.電子部品包装用カバーテープ」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0082】
以下、本開示の包装体の各構成について説明する。
【0083】
1.カバーテープ
本開示におけるカバーテープについては、上記「A.電子部品包装用カバーテープ」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0084】
本開示の包装体においては、カバーテープのヒートシール層とキャリアテープとはヒートシール部で接着されている。ヒートシール部は、例えば、カバーテープのヒートシール層がキャリアテープと接する部分の一部に配置することができる。すなわち、ヒートシール層は、ヒートシール部と非ヒートシール部とを有していてもよい。これにより、キャリアテープに対するカバーテープの剥離性を良くすることができる。
【0085】
2.キャリアテープ
本開示におけるキャリアテープは、電子部品を収納する複数の収納部を有する部材である。
【0086】
キャリアテープとしては、複数の収納部を有するものであればよく、例えば、エンボスキャリアテープ(エンボステープとも称される。)、パンチキャリアテープ(パンチテープとも称される。)、プレスキャリアテープ(プレステープとも称される。)のいずれも用いることができる。中でも、コスト、成形性、寸法精度等の観点から、エンボスキャリアテープが好ましく用いられる。
【0087】
キャリアテープの材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ABS樹脂等のプラスチックや、紙等が挙げられる。本開示において紙とは、セルロースを主成分とするものをいい、更に樹脂成分が含まれていてもよい。
【0088】
キャリアテープの厚さは、キャリアテープの材質や、電子部品の厚さ等に応じて適宜選択される。例えば、キャリアテープの厚さは、30μm以上1500μm以下とすることができる。キャリアテープの厚さが厚すぎると、成形性が悪くなり、キャリアテープの厚さが薄すぎると、強度が不足する場合がある。
【0089】
キャリアテープは、複数の収納部を有する。収納部は、通常、キャリアテープの長手方向に所定の間隔をおいて配置される。収納部の大きさ、深さ、ピッチ等としては、電子部品の大きさ、厚さ等に応じて適宜調整される。
【0090】
収納部を有するキャリアテープの形成方法としては、一般的なキャリアテープの成形方法を適用することができ、キャリアテープの種類や材質等に応じて適宜選択される。例えば、プレス成形、真空成形、圧空成形、打抜加工、圧縮加工等が挙げられる。
【0091】
3.電子部品
本開示の包装体に用いられる電子部品としては、特に限定されず、例えば、IC、抵抗、コンデンサ、インダクタ、トランジスタ、ダイオード、LED(発光ダイオード)、液晶、圧電素子レジスタ、フィルター、水晶発振子、水晶振動子、コネクタ、スイッチ、ボリュウム、リレー等が挙げられる。ICの形式についても、特に限定されない。
【0092】
4.包装体
本開示の包装体は、電子部品の保管および搬送のために用いられる。電子部品は、包装体の状態で保管および搬送され、実装に供される。実装時には、カバーテープを剥離し、キャリアテープの収納部に収納されている電子部品を取り出し、基板等へ実装される。
【0093】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0094】
以下に実施例および比較例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
【0095】
(実施例1)
・中間層用フィルム1の形成
第1層を構成する樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE1、製品名:エボリューSP2520、密度0.925g/cm3、プライムポリマー社製)を用い、第2層を構成する樹脂として、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA1、製品名:ニュクレルAN4223C、密度0.930g/cm3、酸含有率1.3wt%、三井・ダウポリケミカル社製)を用い、2層共押出製膜法により、第1層(20μm)および第2層(10μm)からなる、厚さ30μmの中間層用フィルム1を作製した。
【0096】
基材層として、片面にコロナ処理を施した厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製 E7415、以下PETフィルム)を準備した。PETフィルムのコロナ処理面に、ウレタン系アンカーコート剤を塗布し、厚さ2μm(乾燥時)の接着剤層を形成した。次いで、接着剤層が形成されたPETフィルムに、上記中間層用フィルム1を貼り合わせすることにより、基材層に中間層を積層させた。
【0097】
次いで、スチレン-メチルメタクリレート共重合体(St-MMA)を含む下記ヒートシール層用組成物1を、中間層の基材層側の面とは反対側の表面に塗布し、乾燥することにより、厚さ1μmのヒートシール層を形成した。これによって、基材層(12μm)/接着剤層(2μm)/第1層(20μm)/第2層(10μm)/ヒートシール層(1μm)からなる構成のカバーテープを作製した。
【0098】
<ヒートシール層用組成物1(HS1)>
・スチレン-メチルメタクリレート共重合体 32質量部
・酸化スズ、五酸化アンチモン 68質量部
【0099】
(実施例2)
ヒートシール層用組成物1の代わりに、下記のスチレン-メチルメタクリレート共重合体を含むヒートシール層用組成物2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、カバーテープを作製した。
<ヒートシール層用組成物2(HS2)>
・スチレン-メチルメタクリレート共重合体 25質量部
・酸化亜鉛、酸化アルミニウム 75質量部
【0100】
(実施例3)
ヒートシール層用組成物1の代わりに、下記のスチレン-メチルメタクリレート共重合体を含むヒートシール層用組成物3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、カバーテープを作製した。
<ヒートシール層用組成物3(HS3)>
・スチレン-メチルメタクリレート共重合体 70質量部
・酸化スズ、酸化アンチモン 30重量部
【0101】
(実施例4)
中間層用フィルム1の代わりに、中間層用フィルム1の第1層の厚さを25μmに変更し、第2層の厚さを5μmに変更した、厚さ30μmの中間層用フィルム2を作製し、この中間層用フィルム2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、カバーテープを作製した。
【0102】
(実施例5)
中間層用フィルム1の代わりに、中間層用フィルム2を用いた以外は、実施例2と同様の方法で、カバーテープを作製した。
【0103】
(実施例6)
中間層用フィルム1の代わりに、中間層用フィルム2を用いた以外は、実施例3と同様の方法で、カバーテープを作製した。
【0104】
(実施例7)
・中間層用フィルム3の形成
第1層を構成する樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE 製品名:スミカセンCE4009、密度0.920g/cm3、住友化学(株)製)を用い、第2層を構成する樹脂として、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA1、製品名:ニュクレルAN4223C、密度0.930g/cm3、三井・ダウポリケミカル社製)を用い、2層共押出製膜法により、第1層(30μm)および第2層(5μm)からなる、厚さ35μmの中間層用フィルム3を作製した。
【0105】
中間層用フィルム3を用いた以外は、実施例2と同様の方法でカバーテープを作製した。
【0106】
(実施例8)
・中間層用フィルム4の形成
第1層を構成する樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE 製品名:スミカセンCE4009、密度0.920g/cm3、住友化学(株)製)を用い、第2層を構成する樹脂として、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA2、製品名:ニュクレルN0823、密度0.930g/cm3、酸含有量8wt%、三井・ダウポリケミカル社製)を用い、2層共押出製膜法により、第1層(25μm)および第2層(5μm)からなる、厚さ30μmの中間層用フィルム4を作製した。
【0107】
中間層用フィルム4を用いた以外は、実施例2と同様の方法でカバーテープを作製した。
【0108】
(実施例9)
・中間層用フィルム5の形成
中間層として、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA1、製品名:ニュクレルAN4223C、密度0.930g/cm3、三井・ダウポリケミカル社製)を用い、押出製膜法により、厚さ35μmの中間層用フィルム5を作製した。
【0109】
中間層用フィルム5を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、カバーテープを作製した。
【0110】
(比較例1)
・中間層用フィルム6の形成
第1層を構成する樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE 製品名:エボリューSP2520、密度0.925g/cm3、プライムポリマー社製)を用い、第2層を構成する樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、製品名:ウルトゼックス2021L)55質量%と、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(アサフレックス810、旭化成ケミカルズ(株)製))45質量%の混合樹脂(密度0.960g/cm3)を用い、2層共押出製膜法により、第1層(20μm)および第2層(10μm)からなる、厚さ30μmの中間層用フィルム6を作製した。
【0111】
作製した中間層用フィルム6を用い、ヒートシール層用組成物1の代わりに、下記のメチルメタクリレート-ブチルメタクリレート共重合体(MMA-BMA共重合体)を含むヒートシール層用組成物4を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、カバーテープを作製した。
<ヒートシール層用組成物4(HS4)>
・メチルメタクリレート-ブチルメタクリレート共重合体 29重量部
・硫酸バリウム、酸化スズ、三酸化アンチモン 71重量部
【0112】
(比較例2)
中間層用フィルム6を用いた以外は、実施例2と同様の方法で、カバーテープを作製した。
【0113】
(比較例3)
・中間層用フィルム7の形成
中間層として、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、製品名:ユメリット022GS、密度0.906g/cm3)を用い、押出製膜法により、厚さ35μmの中間層用フィルム7を作製した。
【0114】
中間層用フィルム7を用い、ヒートシール層用組成物4を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、カバーテープを作製した。
【0115】
(比較例4)
・中間層用フィルム8の形成
中間層として、第1層を構成する樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE 製品名:スミカセンCE4009、密度0.920g/cm3、住友化学(株)製)を用い、第2層を構成する樹脂として、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA3、製品名:ニュクレルAN4213C、密度0.940g/cm3、三井・ダウポリケミカル社製)を用い、2層共押出製膜法により、第1層(30μm)および第2層(5μm)からなる、厚さ35μmの中間層用フィルム8を作製した。
中間層用フィルム8を用い、ヒートシール層用組成物2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、カバーテープを作製した。
【0116】
[剥離強度(対PSベタシール強度)]
上記で作製したカバーテープの、中間層とヒートシール層との間の剥離強度を、以下の方法により測定した。結果を表1に示す。
(測定方法)
本開示におけるカバーテープのヒートシール層側の面を、ポリスチレンシートに対向するように、カバーテープとポリスチレンシートとを積層し、150℃、0.5秒、3.0kgf/cm2の条件でヒートシールし、積層体を得た。次いで、23℃、40%RH下において、東洋ボールドウィン(株)製 テンシロン万能試験機HTH-100にて、基材層および中間層の端部を掴み、剥離速度200mm/分で180°剥離し、剥離強度を測定した。
【0117】
[軟化点の測定]
上記で作製した中間層用フィルムのヒートシール層を形成する前の第2層側の表面において、軟化点の測定を以下の手順により行った。結果を表1に示す。
【0118】
1)校正作業
測定装置としてAnasys Instruments社製nanoTA、サーマルプローブとしてAnasys Instruments社製PR-EX-AN2-300-5を用いた。
標準試料として、BRUKER社製nanoTA Calibration Samplesを準備した。標準試料には、軟化点が公知であるポリカプロラクタン(軟化点:55℃)、ポリエチレン(軟化点:116℃)、ポリエチレンテレフタレート(軟化点:235℃)が載っている。
各標準試料の表面にサーマルプローブを接触させながら加熱した。加熱中に、サーマルプローブ直下の熱膨張を計測し、Voltage(電位)に対するDeflection(変位)を表すグラフを取得した。これにより電位及びサーマルプローブの偏差を測定し、電位に対するサーマルプローブの偏差を表すグラフを取得した。装置で設定する測定条件は以下の通りとした。
・条件
測定開始温度:0.1V
測定終了温度:10V
昇温速度:0.2V/sec
各標準試料の軟化点を用い、電位に対するサーマルプローブの偏差変位を表すグラフを、温度に対する変位のグラフに変換した。
【0119】
2)本測定
・校正作業後、固定用粘着テープを用いてAFM用ディスクに、軟化点測定用のサンプル片を固定し、中間層の表面にサーマルプローブを接触させた。その後、サーマルプローブを中間層の表面に接触させた状態で、下記条件で加熱し、温度に対するサーマルプローブの変位を表すグラフ(熱膨張カーブ)を取得した。
・条件
測定開始温度:40℃
測定終了温度:150℃
昇温速度:10℃/sec
※軟化がみられた時点で測定終了としているが、軟化が確認されない場合は150℃を加熱上限とした。
【0120】
得られた熱膨張カーブにおいて、カーブの頂点となる時の温度を取得した。なお、サンプルの測定対象材料内での熱の伝搬なども考慮し、測定箇所は間隔を2μm以上とした。10μm×10μmの範囲で3.5μm間隔で9点の測定箇所となるように、任意の40箇所以上について上記測定を行った。得られた温度の平均値を、軟化点とした。
【0121】
[ヘーズ]
上記で作製したカバーテープのヘーズをJIS-K-7136:2000に準拠して、ヘーズメーターNDH 7000(日本電色工業製)で測定した。結果を表1に示す。
【0122】
【0123】
表1に示されるように、実施例1~実施例9は、中間層とヒートシール層との密着性が良好であり、かつ、透明性に優れる電子部品包装用カバーテープが得られることが確認された。
【0124】
すなわち、本開示においては、以下の発明を提供できる。
[1]
基材層と、
前記基材層の一方の面側に配置された中間層と、
前記中間層の前記基材層とは反対側の面に接して配置されたヒートシール層と、を有する電子部品包装用カバーテープであって、
前記中間層は、エチレン-(メタ)アクリル系樹脂を含み、軟化点が90.0℃以下である、電子部品包装用カバーテープ。
【0125】
[2]
前記エチレン-(メタ)アクリル系樹脂中の、(メタ)アクリル系モノマー単位の比率が、1.3質量%以上、8.0質量%以下である、[1]に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【0126】
[3]
前記中間層は、
前記基材層側に配置された第1層と、
前記エチレン-(メタ)アクリル系樹脂を含み、前記第1層と前記ヒートシール層との間に配置され、前記ヒートシール層と接する第2層と、
を有する、[1]または[2]に記載の電子部品包装用カバーテープ。
【0127】
[4]
前記中間層と前記ヒートシール層との間の剥離強度が、5N/15mm以上である、[1]から[3]までのいずれかに記載の電子部品包装用カバーテープ。
【0128】
[5]
前記電子部品包装用カバーテープのヘーズが、20%以下である、[1]から[4]までのいずれかに記載の電子部品包装用カバーテープ。
【0129】
[6]
電子部品を収納する複数の収納部を有するキャリアテープと、
前記収納部に収納された電子部品と、
前記収納部を覆うように配置された、[1]から[5]までのいずれかに記載の電子部品包装用カバーテープと、
を備える、包装体。