(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148348
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】船舶制御システム、船舶制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B63B 43/06 20060101AFI20241010BHJP
B63B 35/44 20060101ALI20241010BHJP
B63B 79/10 20200101ALI20241010BHJP
B63B 13/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B63B43/06 A
B63B35/44 B
B63B79/10
B63B13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061415
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】391014631
【氏名又は名称】ムサシノ機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(74)【代理人】
【識別番号】100205648
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 真一
(72)【発明者】
【氏名】山田 巌
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 靖男
(57)【要約】
【課題】他の荷役作業を行いつつ、バラスト調整の精度を向上させること。
【解決手段】船舶制御システム1は、配管90内を流通するバラスト水の流量を測定する流量計30と、配管90に接続されバラスト水の流量を調整するバルブ50を操作するアクチュエータ40と、バルブ制御基板20と、を備えている。バルブ制御基板20は、設定されたバラスト水の計画流量、及び流量計で測定されたバラスト水の測定流量に基づき、バルブ50の制御を行う必要があるかどうかを判断し、バルブ50の制御を行う必要があると判断した場合、計画流量、測定流量、及びバルブの現在の開度に基づき、バルブ50の目標開度を算出する。アクチュエータ40は、目標開度になるようにバルブ50を操作する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶においてバラスト水の流量を制御する船舶制御システムであって、
配管内を流通する前記バラスト水の流量を測定する流量計と、
前記配管に接続され前記バラスト水の流量を調整するバルブを操作するアクチュエータと、
バルブ制御基板と、
を備え、
前記バルブ制御基板は、
設定された前記バラスト水の計画流量、及び前記流量計で測定された前記バラスト水の測定流量に基づき、前記バルブの制御を行う必要があるかどうかを判断し、
前記バルブの制御を行う必要があると判断した場合、前記計画流量、前記測定流量、及び前記バルブの現在の開度に基づき、前記バルブの目標開度を算出し、
前記アクチュエータは、前記目標開度になるように前記バルブを操作する、
船舶制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の船舶制御システムにおいて、
前記バルブ制御基板は、複数回分の前記測定流量を平均化した平均測定流量に基づき、前記バルブの制御を行う必要があるかどうかを判断する、
船舶制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の船舶制御システムにおいて、
前記バルブ制御基板は、前記平均測定流量と前記計画流量との差分の大きさが第1閾値以上である場合、バルブ制御が必要であると判断する、
船舶制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の船舶制御システムにおいて、
前記バルブ制御基板は、
前記平均測定流量と前記計画流量との差分の大きさが第1閾値より大きい第2閾値以上である場合、高速調整モードでバルブ制御を行うと判断し、
前記平均測定流量と前記計画流量との差分の大きさが第1閾値より大きく第2閾値より小さい場合、微調整モードでバルブ制御を行うと判断する、
船舶制御システム。
【請求項5】
請求項1に記載の船舶制御システムにおいて、
前記流量計は、前記配管の上流側に設置される第1センサと、前記配管の下流側に設置される第2センサとを備え、
一方のセンサが流量測定信号を送信し、他方のセンサが前記配管内の前記バラスト水で反射した前記流量測定信号を受信する、
船舶制御システム。
【請求項6】
請求項1に記載の船舶制御システムにおいて、
バラストタンク内の前記バラスト水の液面を検出する液面計を備え、
前記バルブ制御基板は、前記液面計が検出した液面データに基づいて新たに設定された計画流量に基づき、前記バルブの制御を行う必要があるかどうかを判断する、
船舶制御システム。
【請求項7】
配管内を流通するバラスト水の流量を測定する流量計と、
前記配管に接続され前記バラスト水の流量を調整するバルブを操作するアクチュエータと、
バルブ制御基板と、
を備えた船舶制御システムにおいて前記バラスト水の流量を制御する船舶制御方法であって、
前記バルブ制御基板が、設定された前記バラスト水の計画流量、及び前記流量計で測定された前記バラスト水の測定流量に基づき、前記バルブの制御を行う必要があるかどうかを判断するステップと、
前記バルブ制御基板が、前記バルブの制御を行う必要があると判断した場合、前記計画流量、前記測定流量、及び前記バルブの現在の開度に基づき、前記バルブの目標開度を算出するステップと、
前記アクチュエータが、前記目標開度になるように前記バルブを操作するステップと、
を備えた、
船舶制御方法。
【請求項8】
配管内を流通するバラスト水の流量を測定する流量計と、
前記配管に接続され前記バラスト水の流量を調整するバルブを操作するアクチュエータと、
バルブ制御基板と、
を備えた船舶制御システムにおいて前記バラスト水の流量を制御するプログラムであって、
前記バルブ制御基板が、設定された前記バラスト水の計画流量、及び前記流量計で測定された前記バラスト水の測定流量に基づき、前記バルブの制御を行う必要があるかどうかを判断するステップと、
前記バルブ制御基板が、前記バルブの制御を行う必要があると判断した場合、前記計画流量、前記測定流量、及び前記バルブの現在の開度に基づき、前記バルブの目標開度を算出するステップと、
前記アクチュエータが、前記目標開度になるように前記バルブを操作するステップと、
をプロセッサで実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶制御システム、船舶制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶においては、姿勢を安定させるためにバラストタンク内のバラスト調整が行われる。例えば特許文献1には、洋上に浮かべた状態で係留される洋上倉庫に付設されたバラストタンクに液体を注排出することでこの洋上倉庫の水平度及び吃水を制御するバラスト制御方法が開示されている。具体的には、洋上倉庫に搬入されるべき荷物の重量及び洋上倉庫内の位置を荷物搬入前に予め予測し、この予測値及び洋上倉庫の現実の水平度、吃水に基づいてバラストタンク内への液体の注排出を制御する旨、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バラスト調整は、主に、航海中、荷役準備中、荷役作業中に行われる。例えば荷役作業中のバラスト調整は、事前に作成された荷役計画書に基づいて行われる。荷役計画書には、例えば、時間、流量、タンクの液量、船首及び船尾の喫水等の数値が記載されている。船舶の乗組員は、バラストタンクに関わる計器類のデータを参照しながら、荷役計画書通りの数値となるように、手動でバラスト調整を行っている。
【0005】
一方、バラスト調整に関わる作業は頻繁であるにも関わらず、乗組員は、並行して他の荷役作業も行わなくてはならないため、バラスト調整に関わる作業のみに注力することができない。このため、荷役計画書通りにバラスト調整を行うことは、現実には困難な状況である。
【0006】
そこで、本発明は、他の荷役作業を行いつつ、バラスト調整の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な実施の形態による船舶制御システムは、船舶においてバラスト水の流量を制御する船舶制御システムである。船舶制御システムは、配管内を流通するバラスト水の流量を測定する流量計と、配管に接続されバラスト水の流量を調整するバルブを操作するアクチュエータと、バルブ制御基板と、を備えている。バルブ制御基板は、設定されたバラスト水の計画流量、及び流量計で測定されたバラスト水の測定流量に基づき、バルブの制御を行う必要があるかどうかを判断し、バルブの制御を行う必要があると判断した場合、計画流量、測定流量、及びバルブの現在の開度に基づき、バルブの目標開度を算出する。アクチュエータは、目標開度になるようにバルブを操作する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、他の荷役作業を行いつつ、バラスト調整の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】本発明の実施の形態1に係る船舶制御システムの構成を例示する図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る情報処理装置の構成を例示する図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係るバルブ制御基板の構成を例示する図である。
【
図6】超音波式の流量計のセンサの設置方法を例示する図である。
【
図8】バタフライバルブの構成及び開度を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、実施の形態を説明するための各図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は適宜省略する。
【0011】
<タンクの構成>
図1は、船舶のタンクの構成を例示する図である。
図1に示すように、船舶には、例えば原油等の積荷を貯留するカーゴタンクCT、船舶のバランスを取るためのバラスト水を貯留するバラストタンクBTを備えている。なお、
図1では、6個のカーゴタンクCT及び6個のバラストタンクBTが示されているが、カーゴタンクCT及びバラストタンクBTの個数はこの例に限定されない。カーゴタンクCT及びバラストタンクBTは、互いに同数でなくてもよい。バラストタンクには、安全バラストタンクが含まれてもよい。
【0012】
各バラストタンクBTは、ポンプPを介して取水弁と接続されている。これにより、取水弁から取り込んだバラスト水がポンプPを介してバラストタンクBTへ注水される。また、各バラストタンクBTは、排水弁と接続されている。これにより、排水弁を介してバラストタンクBT内のバラスト水が船外へ排出される。
【0013】
<荷役計画書>
ここで、荷役計画書について説明する。
図2は、荷役計画書を例示する図である。
図2に示すように、荷役計画書には、各荷役ステップにおける、時間、各カーゴタンクCTにおける積荷の流量及び貯留量、各バラストタンクBTにおけるバラスト水の流量及び貯留量、及び、船舶の船首側喫水(df)、船舶の船尾側喫水(da)、船舶のトリム(Trim)、船舶の重心位置(Go)とその上方にある横揺中心(M)との距離(GoM)からなる船体の姿勢を示す各種情報が含まれる。
【0014】
図2の荷役計画書は、カーゴタンクCT3及びカーゴタンクCT4に積荷を貯留する場合の例が示されている。なお、積荷は、例えば原油等の液体状のものであるが、これに限定されない。
図2において、荷役ステップ「0」は、荷役開始時の初期状態を示している。初期状態では、各カーゴタンクCTに積荷は貯留されておらず、各バラストタンクBTにバラスト水が貯留された状態となっている。
【0015】
荷役ステップ「1」は、荷役作業開始から15分経過後の状態を示している。荷役ステップ「1」では、カーゴタンクCT3に、1時間当たり200トン(200[t/h])の流量で、積荷が貯留される。これにより、荷役ステップ「1」の終了時には、カーゴタンクCT3の積荷は、初期状態から50トン増加するよう計画されている。
【0016】
また、これと並行して、バラストタンクBT6から1時間当たり500トン(500[t/h])の流量でバラスト水が排出される。これにより、荷役ステップ「1」の終了時には、バラストタンクBT6のバラスト水は、初期状態から125トン減少し、トータル253トンになるよう計画されている。
【0017】
荷役ステップ「2」以降は、カーゴタンクCT3への積荷の貯留と並行して、カーゴタンクCT4への積荷の貯留も行われるよう計画されている。荷役ステップ「2」は、荷役ステップ「1」の終了時から15分後(初期状態から30分後)の状態を示している。カーゴタンクCT3には、400[t/h]の流量で積荷が貯留される。カーゴタンクCT4には、200[t/h]の流量で積荷がCT4に貯留される。これにより、荷役ステップ「2」の終了時には、カーゴタンクCT3の積荷は、荷役ステップ「1」の終了時から100[t]増加し、トータル150[t]トンになるよう計画されている。また、カーゴタンクCT4の積荷は、荷役ステップ「1」の終了時から50[t]増加するよう計画されている。
【0018】
また、これと並行して、バラストタンクBT6から500[t/h]の流量でバラスト水が排出される。これにより、荷役ステップ「2」の終了時には、バラストタンクBT6のバラスト水は、荷役ステップ「1」の終了時から125[t]減少し、トータル128[t]になるよう計画されている。
【0019】
このように、荷役計画書には、荷役作業の開始から完了までの各荷役ステップにおける、各タンクの積荷又はバラスト水の流量、荷役ステップ終了時における各タンクの積荷又はバラスト水の貯留量、荷役ステップ終了時における船体の姿勢を示す各種情報等が記載されている。
【0020】
<船舶制御システムの構成>
次に、船舶制御システムの構成について説明する。船舶制御システム1は、バラストタンクBTの液量(貯留量)を調整することで、船舶のバランスを制御するシステムである。
図3は、本発明の実施の形態1に係る船舶制御システムの構成を例示する図である。船舶制御システム1は、
図3に示すように、情報処理装置10、バルブ制御基板20、流量計30、アクチュエータ40、バルブ50を備えている。
【0021】
また、船舶制御システム1は、バラストタンクBT内の液面を検出する液面計60、船首側の喫水を計測する船首喫水計70、船尾側の喫水を計測する船尾喫水計80、船体の傾斜を計測する傾斜計90を備えてもよい。液面計60、船首喫水計70、船尾喫水計80、及び傾斜計90を用いることにより、船体の姿勢の情報を得られるだけでなく、姿勢の情報に基づいてカーゴタンクCT内の積荷、及びバラストタンクBT内のバラスト水の貯留量を計測することが可能となる。
【0022】
これらのうち、バルブ制御基板20、流量計30、アクチュエータ40は、バルブ50の開度を制御するバルブ開度制御システム100を構成する。バルブ開度制御システム100は、各バラストタンクBTにそれぞれ設けられる。なお、バルブ制御基板20は、複数のシステム間で共通に設けられてもよい。
【0023】
また、バルブ開度制御システム100は、1つのシステムでバラスト水の注水用及び排水用の両方に共通で設けられてもよいし、注水用と排水用とで別々のシステムが設けられてもよい。この場合も、バルブ制御基板20は、複数のシステム間で共通に設けられてもよい。
【0024】
<<情報処理装置>>
情報処理装置10は、事前に作成された荷役計画書に基づき、荷役作業時における各バラストタンクBTにおけるバラスト水の流量(計画流量)をバルブ制御基板20へ送信し指示する。情報処理装置10は、例えば、パソコンやタブレット端末等であるが、バルブ制御基板20との間で通信可能であれば、これらに限定されない。
【0025】
図4は、本発明の実施の形態1に係る情報処理装置の構成を例示する図である。
図4に示すように、情報処理装置10は、プロセッサ11、メインメモリ13、ストレージ15、通信インタフェース17、モニタ19を備えている。通信インタフェース17は、バルブ制御基板20との間で通信するための通信装置である。情報処理装置10とバルブ制御基板20との間は、代表的にはインターネット等のWAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)等のネットワークNETを介して通信が行われる。LANは、有線でも無線でも構わない。
【0026】
ストレージ15は、プログラム、荷役計画書、受信データ等を記憶する。プログラムは、情報処理装置10のOS等の基本プログラム、通信インタフェース17を含む各構成要素を動作させるプログラム、船舶制御システム1を構成する機能ブロックを実現するプログラム等、及び各プログラムのパラメータを含む。このように、ストレージ15は、プログラムの記録媒体としての機能を有する。
【0027】
受信データは、例えば、バルブ制御基板20から受信した、各バラストタンクBTにおけるバラスト水の流量、バルブ50の開度の各データを含む。また、受信データは、各バラストタンクBTの液面計60、船首喫水計70、船尾喫水計80、及び傾斜計90から受信した各データを含む。
【0028】
メインメモリ13は、ストレージ15から読み出したプログラムやパラメータ等を保持する。また、メインメモリ13は、通信インタフェース17を介してバルブ制御基板20や液面計60等から受信した受信データや、通信インタフェース17を介してバルブ制御基板20等へ送信するデータ等も一時的に保持する。
【0029】
プロセッサ11は、演算処理装置である。プロセッサ11は、メインメモリ13に保持されたプログラムを読み出して実行することで、情報処理装置10の各構成要素を駆動させて所定の処理を行うための機能ブロックをソフトウェアで実現する。なお、これらの機能ブロックは、ソフトウェアとハードウェアとを組み合わせて実現されてもよいし、ハードウェアのみで実現されてもよい。
【0030】
モニタ19は、例えば、情報処理装置10の基本動作に関わる画像、船舶制御システム1に関わる画像等を表示する。また、モニタ19は、バルブ開度制御システム100に関わる画像を表示してもよい。モニタ19に表示される画像は、例えば、情報処理装置10が記憶、管理している各種情報、ユーザインタフェース(UI)、荷役計画書、受信データ等の船舶における業務に関連する各種情報に関する画像等が含まれる。情報処理装置10の使用者は、モニタ19に表示される画像を見ながら、図示しないキーボードやマウス等の入力装置を用いて所望の入力操作を行う。なお、モニタ19にタッチ入力機能が設けられてもよい。
【0031】
<<バルブ制御基板>>
バルブ制御基板20は、流量計30、アクチュエータ40と連携して、バルブ50の開度を制御する制御装置である。バルブ制御基板20は、情報処理装置10で設定された各バラストタンクBTにおけるバラスト水の計画流量、及び流量計30で計測されたバラスト水の流量に基づき、バルブ50の開度を算出し、アクチュエータ40を介してバルブ50の開度を算出した開度に設定する。
【0032】
図5は、本発明の実施の形態1に係るバルブ制御基板の構成を例示する図である。
図5に示すように、バルブ制御基板20は、プロセッサ21、メインメモリ23、ストレージ25、通信インタフェース27を備えている。通信インタフェース27は、情報処理装置10、流量計30、アクチュエータ40との間で通信するための通信装置である。バルブ制御基板20と流量計30、及びバルブ制御基板20とアクチュエータ40との間の通信形態は、特に限定されず、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信等の近距離通信、LAN、WANが用いられてもよい。また、有線接続と無線接続とが併用されてもよい。
【0033】
ストレージ25は、プログラム、受信データ、設定したバルブ50の開度等の各種情報を記憶する。プログラムは、バルブ制御基板20のOS等の基本プログラム、通信インタフェース27を含む各構成要素を動作させるプログラム、バルブ開度制御システム100を構成する機能ブロックを実現するプログラム等、及び各プログラムのパラメータを含む。このように、ストレージ25は、プログラムの記録媒体としての機能を有する。受信データは、例えば、情報処理装置10から受信した各バラストタンクBTにおける計画流量、流量計30から受信した流量測定結果等の情報を含む。
【0034】
メインメモリ23は、ストレージ25から読み出したプログラムやパラメータ等を保持する。また、メインメモリ23は、通信インタフェース27を介して情報処理装置10や流量計30等から受信した受信データや、通信インタフェース27を介して情報処理装置10、流量計30、アクチュエータ40等へ送信するデータ等も一時的に保持する。
【0035】
プロセッサ21は、演算処理装置である。プロセッサ21は、メインメモリ23に保持されたプログラムを読み出して実行することで、情報処理装置10の各構成要素を駆動させて所定の処理を行うための機能ブロックをソフトウェアで実現する。なお、これらの機能ブロックは、ソフトウェアとハードウェアとを組み合わせて実現されてもよいし、ハードウェアのみで実現されてもよい。
【0036】
<<流量計>>
流量計30は、バラストタンクBTごとに対応する配管90に設置され、配管90内を流通するバラスト水の流量を測定する測定装置である。流量計30には、例えば、超音波式、オリフィス式、パドル式、タービン式、質量式等の周知の流量計を用いることができる。
【0037】
図6は、超音波式の流量計のセンサの設置方法を例示する図である。
図6に示すように、超音波式の流量計30は、超音波センサ(第1センサ)30a、超音波センサ(第2センサ)30bを備え、配管90の上流側に超音波センサ30aが設置され、配管90の下流側に超音波センサ30bが設置される。バルブ制御基板20から流量測定開始信号(超音波発信信号)を受信すると、超音波センサ30aは、所定の方向へ流量測定信号(超音波)を送信する。超音波センサ30bは、配管90内から流量測定信号を受信すると、バルブ制御基板20へ流量測定信号受信信号(超音波受信信号)を流量測定結果として送信する。
【0038】
流量測定信号の送信時刻(例えば、流量測定開始信号の送信時刻又は受信時刻でもよい)と受信時刻(例えば、流量測定信号受信信号の送信時刻又は受信時刻でもよい)との時間差に基づいて配管90内のバラスト水の流速が計測される。そして、バラスト水の流速、及び配管90の情報(例えば断面積等)に基づいてバラスト水の流量が測定される。
【0039】
なお、超音波センサ30bから超音波を送信し、超音波センサ30aが超音波を受信してもよい。また、流量測定結果に基づくバラスト水の流速、流量の測定に関わる演算処理は、バルブ制御基板20で行われてもよいし、流量計30で行われてもよい。
【0040】
超音波センサ30a、30bは、配管90の直線部分に設置されることが望ましく、さらには、コーナー部分からなるべく離れた場所に設置されることが望ましい。
図6に示すように、配管90のコーナー部分では、バラスト水は乱流状態となっているため、流速ひいては流量の測定精度は低下する。これに対し、配管90の直線部分であれば、コーナー部分より乱流状態は治まっているため、流速ひいては流量の測定精度を向上させることができる。
【0041】
また、
図6に示すように、流量計30付近に整流板35が設けられてもよい。例えば、超音波センサ30aの上流側に整流板35a、超音波センサ30bの下流側に整流板35bがそれぞれ設置されてもよい。
図7は、整流板の構成を例示する図である。整流板35a、35bは、
図7に示すように、例えば格子状に形成されてもよいが、このような構成に限定されない。整流板35a、35bによりバラスト水が整流されることで、乱流状態がより一層抑えられるので、流速ひいては流量の測定精度をより一層向上させることができる。なお、両方の整流板を設置することが困難な場合は上流側の整流板35aのみでも構わない。上流側の整流板35aのみでも、バラスト水を整流することが可能である。
【0042】
<<アクチュエータ>>
アクチュエータ40は、バルブ制御基板20からの指示(バルブ開度制御信号)に基づき、バルブ50を所定の開度となるようバルブ50を操作する。アクチュエータ40は、例えば、電動式アクチュエータ、電動油圧式アクチュエータ、油圧式アクチュエータ、空圧式アクチュエータ等である。
【0043】
<<バルブ>>
バルブ50は、配管90と接続され、対応するバラストタンクBTにおけるバラスト水の流量を調整する装置である。バルブ50は、例えばバタフライバルブであるが、これに限らず、アクチュエータ40による操作が可能なその他のバルブでもよい。
【0044】
図8は、バタフライバルブの構成及び開度を例示する図である。
図8に示すように、バルブ50は、配管90と接続されるバルブ本体50a、バルブ本体50aに回転可能に設置されたディスク50bを備えている。
【0045】
バルブ50の開度は、例えば、バラスト水が流れる方向(流れ方向)における配管90の断面を、ディスク50bが覆う割合で規定される。
図8(a)に示すように、ディスク50bがバラスト水の流れ方向と垂直になっている場合、バラスト水を流すことができない状態となっており、開度は0%である。
図8(b)に示すように、ディスク50bがバラスト水の流れ方向と平行になっている場合、開度は100%となる。
図8(c)に示すように、ディスク50bがバラスト水の流れ方向と45°になっている場合、ディスク50bは、配管90の断面の50%を塞いでいるため、開度は50%となる。
図8(d)の例は、ディスク50bが配管90の断面の80%を塞いでいるため、開度は20%となる。
【0046】
<バルブ開度の制御方法>
次に、バルブ開度の制御方法について説明する。
図9は、バルブ開度の制御に係るフロー図である。
図9のフロー図は、1つのバラストタンクBTにおけるバルブ開度の制御を示している。ただし、実際には、各バラストタンクBTにおけるバルブ開度の制御が並行して行われてもよい。
【0047】
ステップS10において、バルブ制御基板20は、情報処理装置10からバラストタンクBTにおけるバラスト水の計画流量を受信したかどうかを判断する。計画流量を受信していない場合(No)、情報処理装置10から計画流量を受信するまで、ステップS10が繰り返し実行される。これに対し、計画流量を受信している場合(Yes)、バルブ制御基板20は、受信した計画流量をストレージ25及び/又はメインメモリ23に記憶する(ステップS20)。これにより、計画流量がバルブ開度の制御における目標流量に設定される。
【0048】
ステップS30では、配管90内のバラスト水の流量の測定が行われる。ここでは、流量計に超音波式センサを用いた場合について説明する。まず、バルブ制御基板20は、超音波センサ30aに超音波発信信号(流量計測開始信号)を送信する。超音波センサ30aは、超音波発信信号を受信すると超音波(流量測定信号)を送信する。超音波センサ30bは、バラスト水で反射した超音波を受信すると、バルブ制御基板20へ超音波受信信号(流量測定信号受信信号)を流量測定結果として送信する。バルブ制御基板20は、流量測定結果に基づき、バラスト水の流速を算出する。そして、バルブ制御基板20は、算出したバラスト水の流速、及び配管90の情報(断面積等)に基づき、バラスト水の流量(測定流量)を算出する。ステップS30において、バラスト水の流量の測定は複数回行われる。
【0049】
ステップS40では、ステップS30で測定した複数回分のバラスト水の流量を平均化した平均測定流量を算出する。これにより、測定流量のばらつきが平均化され、流量の測定精度を向上させることができる。また、測定流量を平均化する際、その他の測定値と比較して数値が高いデータ及び/又は数値が低いデータを除外した上で平均化を行ってもよい。他の測定流量より明らかに数値が高いデータ及び数値が低いデータは、実際の流量から乖離しているため、測定に失敗したデータである可能性が高い。これらのデータを除外して平均化することにより、流量の測定精度をより向上させることができる。除外対象のデータは、例えば、ステップS30において測定されたすべての測定流量の平均値に対して所定の割合又は所定の値より高い/低いデータ等が選択されてもよい。
【0050】
ステップS50では、計画流量、及び平均測定流量に基づき、バルブ制御を行う必要があるかどうかが判断される。具体的には、バルブ制御基板20は、ステップS40において算出した平均測定流量が、所定のバルブ制御範囲であるかどうかを判断する。ここでバルブ制御範囲とは、例えば、平均測定流量が以下の式(1)の関係を満たす範囲である。すなわち、平均測定流量と計画流量との差分の大きさが所定の閾値α(第1閾値)以上である場合、バルブ制御が必要であると判断される。
|平均測定流量-計画流量|≧α ・・・(1)
【0051】
平均測定流量がバルブ制御範囲外である場合、バルブ制御基板20は、平均測定流量と計画流量との差分が小さいので、バルブ開度の制御を行う必要はないと判断する(No)。そして、ステップS10に戻る。
【0052】
なお、ステップS50は、1回分の測定流量に基づいて実行されてもよい。この場合、式(1)の平均測定流量は、1回分の測定流量に置き換えられる。
【0053】
ステップS50からステップS10へ戻った場合について説明する。この場合のステップS10において、設定された計画流量とは異なる計画流量を情報処理装置10から受信した場合、バルブ制御基板20は、新たに受信した計画流量を目標流量に設定する。一方、新たな計画流量を受信していない場合、あるいは、新たに受信した計画流量がすでに設定されている計画流量と同じである場合、計画流量の設定処理は行われない。
【0054】
これに対し、平均測定流量がバルブ制御範囲内である場合、平均測定流量と計画流量との差分が大きいため、バルブ制御を行う必要があると判断し(Yes)、バルブ制御基板20は、ステップS60以降でバルブ開度の制御を行う。
【0055】
ステップS60では、計画流量、及び平均測定流量に基づき、高速調整モードでバルブ制御を行うかどうかが判断される。具体的には、バルブ制御基板20は、ステップS40において算出した平均測定流量が、所定の高速調整モード範囲であるかどうかを判断する。ここで、高速調整モード範囲とは、例えば、平均測定流量が以下の式(2)の関係を満たす範囲である。すなわち、平均測定流量と計画流量との差分の大きさが所定の閾値β(第2閾値、α<β)以上である場合、高速調整モードでバルブ制御を行うと判断される。
|平均測定流量-計画流量|≧β ・・・(2)
【0056】
なお、ステップS60においても、式(2)の平均測定流量を1回分の測定流量に置き換え、1回分の測定流量に基づいて制御モードが選択されてもよい。
【0057】
平均測定流量が、高速調整モード範囲内である場合、バルブ制御基板20は、高速調整モードでバルブ制御を行うと判断する(Yes)。高速調整モードとは、バルブ制御範囲であり、かつ平均測定流量と計画流量との差分の大きさが大きいため、バルブ開度を大きく変動させる動作モードである。
【0058】
ステップS70では、高速調整モードによるバルブ開度が制御される。バルブ制御基板20は、平均測定流量、計画流量、及びバルブ50の現在の開度等の情報に基づき、高速調整モードにおいて目標とするバルブ50の開度(目標開度)を算出する。高速調整モードでは、バルブ開度が、例えば目標開度の2%程度手前の値に設定される。具体的には、バルブ50を開ける方向に制御する場合、バルブ開度を大きくすることとなるため、バルブ開度は目標開度より2%程度小さい値に設定される。バルブ50を閉める方向に制御する場合、バルブ開度を小さくすることとなるため、バルブ開度は目標開度より2%程度大きい値に設定される。なお、この値は、適宜変更可能である。
【0059】
バルブ制御基板20は、設定したバルブ50の目標開度の情報を含むバルブ開度制御信号をアクチュエータ40へ送信する。アクチュエータ40は、受信したバルブ開度制御信号に基づき、ステップS70で設定されたバルブ開度になるようにバルブ50を操作する。アクチュエータ40によるバルブ50の操作が完了すると、ステップS10に戻る。
【0060】
一方、ステップS60において、平均測定流量が、高速調整モード範囲外である場合、バルブ制御基板20は、微調整モードでバルブ制御を行うと判断する(No)。微調整モードとは、バルブ制御範囲内であるが、平均測定流量と計画流量との差分が大きくないため、バルブ開度を小さく変動させる動作モードである。
【0061】
ステップS80では、微調整モードによりバルブ開度が制御される。バルブ制御基板20は、平均測定流量、計画流量、及びバルブ50の現在の開度等の情報に基づき、微調整モードにおいて目標とするバルブ50の目標開度を算出する。微調整モードでは、バルブ開度は、例えば現在のバルブ開度に対して1%-3%程度変動させた値に設定される。
【0062】
バルブ制御基板20は、設定したバルブ50の目標開度の情報を含むバルブ開度制御信号をアクチュエータ40へ送信する。アクチュエータ40は、受信したバルブ開度制御信号に基づき、ステップS70で設定されたバルブ開度になるようにバルブ50を操作する。アクチュエータ40によるバルブ50の操作が完了すると、ステップS10に戻る。
【0063】
ステップS70、S80からステップS10へ戻った場合の処理は、ステップS50からステップS10へ戻った場合と同様である。
【0064】
荷役計画書に記載された各荷役ステップの所定時間が経過すると、各バラストタンクBTにおけるバラスト水の計画流量は、次の荷役ステップに対応した値にそれぞれ設定され、新たに設定された計画流量に基づいたバルブ開度の制御が行われる。そして、荷役計画書に記載された全ての荷役ステップが完了すると、バルブ開度の制御が終了する。
【0065】
なお、開度が0%の状態からバルブ50を操作する場合、あるいは、開度が0%になるようにバルブ50を操作する場合、バルブ制御基板20は、選択した動作モードに関わらず、所定時間、流量を抑えた状態でバラスト水を流通させるようにバルブ50を制御するようにしてもよい。
【0066】
これにより、バルブ50の開閉時に発生するウオーターハンマー現象の発生が抑えられ、ひいては、配管90や各種装置の故障の発生が抑えられる。なお、ウオーターハンマー現象が発生しなければ、この時のバルブ制御に微調整モードが用いられてもよい。
【0067】
なお、情報処理装置10は、船首喫水計70により計測された船首側喫水、船尾喫水計80が計測した船尾側喫水、傾斜計90が計測した船体の傾斜により検出される船体の姿勢データに基づいて、バラストタンクBT内のバラスト水の液量を算出してもよい。
【0068】
なお、バラスト水の液量が荷役計画書からずれている場合、又はずれが発生する可能性がある場合、情報処理装置10は、荷役計画書とは異なる新たな計画流量をバルブ制御基板20に設定してもよい。この場合、新たな計画流量は、例えば、液面計60が検出した液面データに基づいて設定されてもよいし、姿勢データに基づいて設定されてもよい。また液面データ及び姿勢データに基づいて、新たな計画流量が設定されてもよい。
【0069】
あるいは、情報処理装置10は、計画流量の変更は行わずに、計画流量に対する補正値を算出し、補正値をバルブ制御基板20へ送信してもよい。この場合、バルブ制御基板20は、計画流量及び補正値等に基づき、バルブ開度の制御を行ってもよい。これにより、流量だけでなく、バラストタンクBT内のバラスト水の貯留量に基づいてバルブ開度を制御することができ、バラストタンクBC内のバラスト水の貯留量を正確に調整することができる。
【0070】
<本実施の形態による主な効果>
本実施の形態によれば、バルブ制御基板は、バルブ50の制御を行う必要があると判断した場合、計画流量、測定流量(平均測定流量)、及びバルブ50の現在の開度に基づき、バルブ50の目標開度を算出し、アクチュエータ40は、目標開度になるようにバルブ50を操作する。この構成によれば、バルブ50の開度の制御を自動で行うことができるので、他の荷役作業を行いつつ、バラスト調整の精度を向上させることができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、流量計30による流量の測定が複数回行われ、複数回分の測定流量を平均化した平均測定流量が算出される。この構成によれば、測定流量のばらつきが平均化され、流量の測定精度を向上させることができる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、平均測定流量と前記計画流量との差分の大きさが第1閾値αより大きい第2閾値β以上である場合、高速調整モードでバルブ制御が行われ、平均測定流量と前記計画流量との差分の大きさが第1閾値αより大きく第2閾値βより小さい場合、微調整モードでバルブ制御が行われる。この構成によれば、これらの動作モードを切り換えて用いることにより、平均測定流量と計画流量との差分の大きさが大きい場合は、高速調整モードでバルブ50の開度を高速で制御しておき、その後、微調整モードに切り替えてバルブ50の開度を緩やかに制御することができる。これにより、高速でバルブ開度を制御しつつ、バルブ開度の制御を停止させた際に発生するオーバーシュート、アンダーシュートを抑えることができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、バルブ制御基板20は、液面計60が検出した液面データに基づいて新たに設定された計画流量に基づき、バルブ50の制御を行う。この構成によれば、バラストタンクBT内の液量に基づいてバラスト水の流量を調整することができ、ひいては、より適切にバラスト水の流量を調整することができる。
【0074】
ここまで、本発明の各実施形態を説明したが、本発明が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…船舶制御システム、10…情報処理装置、20…バルブ制御基板、30…流量計、40…アクチュエータ、50…バルブ、60…液面計、70…船首喫水系、80…船尾喫水系、90…傾斜計、BT…バラストタンク、CT…カーゴタンク。