(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148349
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】物流設備の状態監視システム
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20241010BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061416
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000110011
【氏名又は名称】トーヨーカネツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003454
【氏名又は名称】弁理士法人友野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安仲 宏斗
(72)【発明者】
【氏名】下遠 誠
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024AD14
2G024AD15
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA15
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064CC42
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】物流設備の状態を、簡便で、かつ、少ない費用で、効率よく監視できる、間欠監視方式の物流設備の状態監視システムを提供すること。
【解決手段】物流設備の状態監視システムであって、部品に着脱容易に取付けられた状態監視センサーと前記センサーと接続可能で前記センサーで取得されたデータを処理する状態監視装置本体とを有する物流設備の状態監視装置と、前記状態監視装置と接続され、前記状態監視装置で収集されたデータを分析する状態監視データ分析装置とを有し、前記状態監視データ分析装置が、前記センサーで取得されたデータを処理して前記部品の寿命を予測する寿命予測手段を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-部品に着脱容易に取付けられた状態監視センサーと前記センサーと接続可能で前記センサーで取得されたデータを処理する状態監視装置本体とを有する物流設備の状態監視装置と、
-前記状態監視装置と接続され、前記状態監視装置で収集されたデータを分析する状態監視データ分析装置とを有し、
前記状態監視データ分析装置が、前記センサーで取得されたデータを処理して前記部品の寿命を予測する寿命予測手段を有することを特徴とする物流設備の状態監視システム。
【請求項2】
前記状態監視データ分析装置に、前記部品に類似する部品の情報を収集し記憶し検索できるようにする類似部品情報検索手段を有することを特徴とする請求項1に記載の物流設備の状態監視システム。
【請求項3】
前記センサーが振動測定用の加速度センサーであることを特徴とする請求項1に記載の物流設備の状態監視システム。
【請求項4】
物流設備または物流設備の構成部品に着脱容易に取付けられた状態監視センサーと、前記センサーと接続可能で前記センサーで取得されたデータを処理する状態監視装置本体とを有する物流設備の状態監視装置を用いて、
-前記状態監視センサーが、データを取得するステップと、
-前記状態監視装置本体が、センサーで取得されたデータを処理して前記部品の寿命を予測するステップと
を有する物流設備の状態監視方法。
【請求項5】
前記物流設備の状態監視装置が、前記部品に類似する部品の情報を収集し記憶し検索できるようにする類似部品情報検索手段を有し、前記部品の寿命を予測するステップにおいて、前記類似部品情報検索手段に記憶された情報を用いることを特徴とする請求項4に記載の物流設備の状態監視方法。
【請求項6】
前記センサーが振動測定用の加速度センサーであることを特徴とする請求項4に記載の物流設備の状態監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば各種コンベヤ、リフト、搬送車、ロボットなどの物流設備の状態を監視する状態監視システムに係り、特に、監視される物流設備に着脱容易なセンサーを含む物流設備の状態監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
物流の分野において、種々の物流設備を、なるべく停止させずに安定して稼働させることは、物流業者にとって、顧客満足度及び収益確保の観点から極めて重要である。
【0003】
そのためには、物流設備または物流設備の部品(以下、「部品」と略すが、物流設備も含むものとする)の寿命を予測して事前に保守を行うことや、設備に生じる故障や異常状態を速やかに検出し、故障の原因の把握や停止状態からの復旧あるいは停止に至らない未然の措置などが求められている。
【0004】
一方、常時、設備の状態を監視し、故障や異常状態を予知して保全をする常時監視方式の予知保全システムがある。
【0005】
例えば、特許文献1には、評価対象である設備機器の運転情報に基づいて算出した設備機器の負荷情報を出力する設備機器データ処理部と、第一の期間の既存機器の保守点検履歴に基づいて算出した稼働年に対する劣化度合の推移を劣化曲線で出力する保守点検履歴データ処理部と、第一の期間よりも短い第二の期間の既存機器の運転情報に基づいて算出した既存機器の負荷情報を、度数分布である負荷情報分布として出力する既存機器データ処理部と、設備機器の運転情報に基づいて算出した設備機器の負荷情報と、負荷情報分布と、に基づいて、分布位置情報を算出する分布位置判定部と、設備機器の稼動年と、分布位置情報と、劣化曲線とに基づいて、設備機器の劣化度合を算出する劣化度合判定部と、を有する劣化度合予測システムの技術思想が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された、設備機器51に設置されるセンサー52については、多数のセンサーを設備機器に常時固定設置し、情報を収集する常時監視方式であると思われ、センサーを着脱容易とすることについては記載されていない。
【0007】
そのような常時監視方式では、設備を監視するために多数のセンサー類を取り付ける工事が必要であり、また、これらのセンサーから得られたデータを解析して設備が劣化する状況を把握するための事前の学習も必要になり、そのため、導入には多額のコストや期間がかかるという大きな問題がある。そこで、学習をAIを活用した機械学習に置き換えるケースも増えているが、AI利用のためには特別なノウハウが必要であることからさらにコストが高くなるなど、必ずしも常時監視を要しない場合には、過剰な設備となってしまうという問題点がある。
【0008】
また、監視すべき事象として、単一の事象でなく、複数の事象を観察することで、故障や異常状態の検出が、正確に、かつ、迅速にできる場合もある。例えば、設備が発生する振動という事象のほか、熱(温度)、音響(異音)、荷重、速度、画像、湿度などの事象も観測することができることが望ましいが、常時監視の場合は、複数のセンサーを設けることは、コスト面や構造面で、対応は困難であるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、物流設備に容易には着脱できない状態で固着されたセンサーによって、故障や障害の発生や予兆を常時監視する方式には、種々の問題点がある。
【0011】
本発明は、上述したような従来技術上の問題を解決することを企図したものであり、各種コンベヤ、リフト、搬送車、ロボットなどの物流設備の状態を、簡便で、かつ、少ない費用で、効率よく監視でき、更に、可動率を高めるための予防保守を可能とする、間欠監視方式の物流設備の状態監視システムを提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題の解決にあたり、まず、本発明の発明者は、物流設備に状態を監視するセンサーを着脱容易に備え、更に部品の寿命予測手段を設けることによれば、上記課題の解決に資することを発見した。
【0013】
そこで、上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、物流設備の状態監視システムであって、
-部品に着脱容易に取付けられた状態監視センサーと前記センサーと接続可能で前記センサーで取得されたデータを処理する状態監視装置本体とを有する物流設備の状態監視装置と、
-前記状態監視装置と接続され、前記状態監視装置で収集されたデータを分析する状態監視データ分析装置とを有し、
前記状態監視データ分析装置が、前記センサーで取得されたデータを処理して前記部品の寿命を予測する寿命予測手段を有することを特徴とする。
【0014】
ここで、部品の「寿命」とは、経時変化や破損などで、使用できなくなり、交換または修理が必要となるまでの経過時間であり、余寿命などとも呼ばれ、また、「故障発生時期」と同義で用いられる場合もある。
【0015】
ここで、状態監視センサーを着脱容易とするとは、工具を用いずに、あるいは簡便な工具によって、物流設備の所望の箇所に簡単に取付けることができ、また、監視が終了したら簡単に取り外すことができることを言い、取付対象物が鉄などの強磁性体であり、センサーが磁力による影響を受けない場合は永久磁石によって状態監視センサーを物流設備に固着し、測定が終了後は取り外すようにすることが好適である。但し、固着手段は永久磁石によるものに限定せず、止め金、クランプや面ファスナーなどの機械的手段、電磁石などの電気的手段、あるいは単に操作員の手持ちで接触させるなど、物流設備とセンサーとの状況に応じた手段を用いればよい。
【0016】
また、状態監視センサーと状態監視装置本体との間は、有線(イーサネットケーブル)で接続することが好適であるが、イーサネットケーブル以外の有線・無線での接続、インターネット経由での接続であってもよく、あるいは一体化されていてもよい。
【0017】
状態監視装置本体は、CPU・メモリー・無線接続機能を内蔵したマイクロプロセッサ(例えば、ESP32)を装備し、更に、必要に応じて、作動用のバッテリー、送信用のアンテナなどを装備(内蔵または外付け)してもよい。
【0018】
更に、状態監視データ分析装置としては、汎用のパソコンあるいはサーバのような、CPU、メモリー、通信機能、表示部、入出力部などを備えたものが好適であるが、専用に設計したものであってもよい。
【0019】
状態監視装置と状態監視データ分析装置とはWi-Fi(登録商標)などの無線での接続が好適であり、複数の状態監視装置からのデータを、状態監視データ分析装置が遠隔で受信し、分析することができる。
【0020】
なお、寿命予測手段は、状態監視データ分析装置にインストールされるソフトウエア(アプリケーション)にて実現される手段であり、例えば振動測定においては、加速度センサーを用いて振動速度RMS値及び振動周波数などのデータを収集し、そのデータを処理することで行われる。
【0021】
また、寿命予測に関連するものとして、例えばRMS値からISO標準の評価基準により状態判定をするソフトウエアを用意して、それによってA:良、B:可、C:警告、D:危険というような判定をすることも可能であり、D判定であれば寿命に近いとして対応を行うこともできる。
【0022】
また、状態監視データ分析装置において収集された情報や分析の結果得られた情報を、表示すること、印刷すること、更に転送することなどによって、幅広く利用することができる。
【0023】
このようにして、着脱容易な状態監視センサーを、随時、監視が必要な場所及び時期に物流設備に固着することによって、簡便に、かつ、効率的に物流設備に関するデータを収集し、設備・部品の寿命予測、設備の故障発見、異常状態の発生や予兆を把握することができる。
【0024】
なお、前記の状態監視センサーは、振動測定用の加速度センサーに限定せず、音響センサー(マイクロフォン)、AE(アコースティック・エミッション)センサー、温度センサー、荷重センサー、速度センサー、湿度センサー、電流センサー、磁気センサー、距離センサー、光電センサー、画像センサーのいずれか1つあるいは2つ以上の組み合わせであることが望ましいが、これに限定されず、それ以外の設備・部品の状態を監視できるものであればどのようなものでもよい。
【0025】
また、寿命予測手段としては、残存耐用寿命予測の一手法である指数劣化モデルが好適であり、例えば振動測定の場合には振動RMS値が指数関数的に推移するとして、統計的な回帰手法(ポアソン回帰)を用いた振動及び部品寿命の予測を行う。
【0026】
このようにすると、状態監視センサーを着脱容易としたことにより、物流設備の様々な場所・構成部品の寿命予測を行うことができ、物流設備全体の保全性(予防保守、停止時間の削減など)を高めることができる。
【0027】
なお、本発明においては、状態監視装置のほかに状態監視データ分析装置を有するとしたが、簡便には、状態監視データ分析装置の機能を状態監視装置に内蔵するようにしてもよい。そのようにすると、構成が簡略化され、接続のための手段が不要となるなどのメリットがある。
【0028】
次に、本発明の第2の態様は、第1の態様の物流設備の状態監視システムであって、前記状態監視データ分析装置に、前記部品に類似する部品の情報を収集し記憶し検索できるようにする類似部品情報検索手段を有することを特徴としてもよい。
【0029】
なお、類似部品情報検索手段は、状態監視データ分析装置にインストールされるソフトウエア(アプリケーション)にて実現される手段であり、ここで、部品などの情報としては、部品の登録時に設定される条件(部品種別、機番種別、使用される速度、故障品かどうか、設置状況(特にメザニンかどうか)、部品名、機番名など)を記憶しておく。
【0030】
また、それぞれの部品について、振動のデータなどが測定された場合には、そのデータも動作条件などに紐づけて記憶される。
【0031】
この記憶情報を検索して、対象としている部品との一致率を算出し、最も一致した部品を類似部品として、その部品の測定されたデータなどを提示するようにする。
【0032】
このようにすると、類似部品の状況から、対象としている部品の寿命や故障発生のリスクなどを推測することができる。
【0033】
なお、測定データを人が良否判断する場合、類似部品による相対評価を行おうとするとデータ数が膨大になるため、条件に合致する部品を探すのが難しい。この手段を用いることでその部分を自動化し、早いメンテナンス可否判断を支援することができるようになる。
【0034】
更に、対象となる部品の計測データと似た傾向の部品を類似品として表示するようにしてもよい。ここで、例えば、振動データの場合の評価指標としては、RMS・周波数スペクトル・包絡線スペクトルなどを用い、ベクトル距離などの類似指標でデータ的近さを判断するようにしてもよい。
【0035】
なお、この部分については、AI技術を用いて、類似度を算出するようにしてもよい。
【0036】
また、部品登録時に設定される条件を基に、その条件での故障データ値から良否判定の閾値を部品ごとに決めていくようにしてもよい。
【0037】
なお、状態監視センサーが着脱容易なので、類似設備・部品の情報を、大量に、かつ、簡便に収集できるという利点がある。
【0038】
次に、本発明の第3の態様は、第1の態様の物流設備の状態監視システムであって、前記センサーが振動測定用の加速度センサーであることを特徴としてもよい。
【0039】
これまで、例示として振動測定について説明したが、特に回転する部品については、振動データに変動が起きやすいことから、故障や寿命を予測するのに好適である。
【0040】
例えば、ベアリングの劣化による内輪の傷や回転体の軸ずれなどのよる振動の増加も検出することが可能であり、故障や寿命予測に用いることができる。
【0041】
また、ねじ製品などは、もともと隙間(バックラッシュ)を有するが、使用時間の経過により隙間が拡大して段々とカタガタするようになる。このガタガタを加速度センサーなどで振動として検出して寿命予測に用いることもできる。
【0042】
次に、本発明の第4の態様は、物流設備の状態監視方法であって、
-物流設備または物流設備の構成部品に着脱容易に取付けられた状態監視センサーと、前記センサーと接続可能で前記センサーで取得されたデータを処理する状態監視装置本体とを有する物流設備の状態監視装置と、
-前記状態監視装置と接続され、前記状態監視装置で収集されたデータを分析する状態監視データ分析装置と
を有する物流設備の状態監視システムを用いて、
-前記状態監視センサーが、データを取得するステップと、
-前記状態監視装置本体が、センサーで取得されたデータを処理して前記部品の寿命を予測するステップと
を有することを特徴としてもよい。
【0043】
これは、物流設備の状態監視システムを用いて部品の寿命を予測する方法の特許であり、物流設備の状態監視システムとしては本発明の第1の態様で示されたものが好適ではあるが、これに限定せず、同様の機能を果たす装置であればどのようなものであってもよい。
【0044】
このようにすると、システムの構成にかかわらず、部品の寿命予測が可能となる。
【0045】
次に、本発明の第5の態様は、第4の態様の物流設備の状態監視方法であって、前記物流設備の状態監視データ分析装置が、前記部品に類似する部品の情報を収集し記憶し検索できるようにする類似部品情報検索手段を有し、前記部品の寿命を予測するステップにおいて、前記類似部品情報検索手段に記憶された情報を用いることを特徴としてもよい。
【0046】
このようにすると、類似部品の状況から、対象としている部品の寿命や故障発生のリスクなどを推測することができる。
【0047】
次に、本発明の第6の態様は、第4の態様の物流設備の状態監視方法であって、前記センサーが振動測定用の加速度センサーであることを特徴としてもよい。
【0048】
このようにすると、特に回転する部品については、振動データに変動が起きやすいことから、故障や寿命を予測するのに好適である。
【0049】
なお、広義の寿命予測としては、物流設備における部品相互、または、部品と設備との間のねじなどの締結部分のゆるみ・はずれなどの異常を検知し、交換・修理・増し締めなどの時期を予測することも含むものとする。この場合、部品自体は劣化しているわけではないが、設備全体としてはメンテナンスが必要であり、広義の寿命予測に含まれる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、物流設備の状態を、着脱容易な状態監視センサーを含む状態監視システムによって、簡便で、かつ、少ない費用で、効率よく監視できる、物流設備の状態監視、特に部品の不具合・交渉や寿命予測が実現できる。
【0051】
なお、常時監視方式との対比においては、常時監視の場合、測定対象は稼働を止めたくない重要な機械、常時稼働している機器、人が立寄ることができない機械、劣化速度が遅い機器などであるが、本発明の間欠監視方式の場合は、測定対象は手軽に振動などのデータが計測できる機械、故障による影響が少ない機械、劣化速度が速い機械などが適応し、常時監視方式よりも手早く測定が行え、即座に定量化した結果を確認でき、メンテナンス時期の判断材料、メンテナンス理由の説明材料、メンテナンス効果の確認などに活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の一実施形態に係る物流設備の状態監視システムの説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る状態監視装置の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態の状態監視装置本体の斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態の状態監視センサーの斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態の状態監視センサーの断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の状態監視センサーの取付図である。
【
図7】本発明の一実施形態のシステムのフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態のシステムの状態監視の説明図である。
【
図9】本発明の一実施形態のシステムの状態監視の説明図である。
【
図10】本発明の一実施形態のシステムの状態監視の説明図である。
【
図11】本発明の一実施形態のシステムの情報入力の説明図である。
【
図12】本発明の一実施形態のシステムの表示画面の説明図である。
【
図13】本発明の一実施形態のシステムの表示画面の説明図である。
【
図14】本発明の一実施形態のシステムの表示画面の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態にかかる物品のピッキングシステムについて説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0054】
<構成>
図1は本発明の一実施形態に係る状態監視装置を含む物流設備の状態監視システム100の説明図であり、状態監視装置1と状態監視データ分析装置2とそれらを接続する接続手段3とを有する。
【0055】
図2は本発明の一実施形態に係る物流設備の状態監視システムにおける状態監視装置1の斜視図であって、状態監視装置本体10、接続ケーブル20、状態監視センサー30を有する。
【0056】
図3は本発明の一実施形態に係る状態監視装置1の状態監視装置本体10の斜視図であって、外観からは、筐体11、切り替えスイッチ12、表示用LED13、プッシュスイッチ14、通信用アンテナ15、イーサネットケーブル接続部16、USB端子17を有している。
【0057】
また、図示しない内部構成としては、CPU・メモリー・無線接続機能を内蔵したマイクロプロセッサ(例えば、ESP32)、作動用のバッテリーを有する。
【0058】
図4は本発明の一実施形態に係る状態監視装置の状態監視センサー30の斜視図であり、
図5は同じく状態監視センサー30の断面図である。
【0059】
状態監視センサー30は、ケース31の内部に、イーサネットケーブル接続部32、加速度センサー33、永久磁石34を有し、加速度センサー33及び永久磁石34はケース31にねじによって固定されている。
【0060】
状態監視センサー30と状態監視装置本体10との間の電力の供給や信号の送受信は、イーサネットケーブル接続部32からの接続ケーブル20によって行われる。
【0061】
ここで、状態監視データ分析装置2はパソコンが好適であるが、それに限定せず、サーバや、クラウドコンピューティングなど、分析が可能な仕組みであればどのようなものであってもよく、また、接続手段3としては無線LAN(Wi-Fi接続)が好適であるが、同様の機能を果たすものであれば、無線、有線、インターネット接続などどのようなものでもよい。
【0062】
また、状態監視データ分析装置2は、種々の状態監視データを分析する手段(ソフトウエア)を有しており、その中でも特に部品の寿命予測手段が大きな効果を発揮する。
【0063】
<運用>
次に、本発明の一実施形態に係る物流設備の状態監視装置及び状態監視装置をふくむ状態監視システムの運用について説明する。
図6は本発明の一実施形態に係る状態監視装置の状態監視センサーの取付けを説明する斜視図、
図7は本発明の一実施形態に係る状態監視システム100の運用のフローチャートである。
【0064】
状態監視システム100を運用する場合、まず、状態監視装置1が状態監視データ分析装置2とWi-Fi接続(ペアリング)する。(ステップS101)
【0065】
なお、Wi-Fi接続は、状態監視装置1と状態監視データ分析装置2とを直接接続してもよく、間にアクセスポイントを介して接続してもよい。
【0066】
次に、物流設備、例えばローラコンベヤRCのローラ保持部RHに、状態監視センサー30(例えば加速度センサー)が、永久磁石34によって取り付けられる。(ステップS102)
【0067】
次に、状態監視装置本体10から、あるいは状態監視データ分析装置2からの指示で、状態監視を開始する。(S103)
【0068】
状態監視センサー30が状態監視データ、例えば加速度センサーを用いて収集した振動速度RMS値及び振動周波数のデータを状態監視装置本体10を経由して、状態監視データ分析装置2へと伝達する。(S104)
【0069】
なお、RMSは実効値(root mean square)であり、瞬時値の2乗したものを時間平均し、その平方根で表される値である。
【0070】
次に、状態監視データ分析装置2が、収集されたデータを状態監視データ分析手段にて分析する。(S105)
【0071】
なお、寿命予測手段は、状態監視データ分析手段の一つであり、状態監視データ分析装置にインストールされるソフトウエア(アプリケーション)にて実現される手段であり、例えば振動測定において、加速度センサーを用いて振動速度RMS値及び振動周波数などのデータを収集し、そのデータを処理することで行われる。
【0072】
図8は本発明の一実施形態に係る状態監視システムの状態監視の一例の説明図であり、寿命予測手段による部品の寿命予測を説明している。
【0073】
ここで、状態監視センサー30の一例である加速度センサーを、物流設備の部品であるモーターの近傍に装着したとする。グラフの横軸(X軸)はモーターの稼動時間、縦軸(Y軸)はモーターから発生する振動のRMS値であり、D1からD7が、稼働時間経過時の同一個所におけるRMS値を示している。
【0074】
これらの計測値から、残存耐用寿命予測の一手法である指数劣化モデルを用いて、指数関数で近似すると、寿命予測曲線C1が得られる。
【0075】
ここで、部品の故障発生が想定されるRMSのレベル(X軸に平行な直線)L1と、寿命予測曲線C1との交点E1を求めれば、当該部品の寿命となる時間の予測が可能となる。
【0076】
なお、ここで、部品の故障発生が想定されるRMSのレベルは、部品の仕様や実験・フィールド実績などによる場合のほか、後述する類似部品の故障実績を適用することも好適である。これらの実績がない場合はその部品の最大のRMS値を用いることとする。
【0077】
また、寿命予測曲線C1に関しては、推定した曲線のパラメータ自体、誤差を有している。(パラメータの信頼区間と言う。)その誤差範囲内でパラメータを変え、無数の曲線を引いて曲線に沿いデータを生成したときに70%のデータがこの値以下に収まるラインを、70%上限の寿命予測曲線C2とする。これは予測誤差により早めにRMS値が推移するケースを示す曲線である。また、同様に、予測誤差により遅めにRMS値が推移する30%下限の寿命予測曲線C3を表示してもよく、これを用いて求める寿命予測も状況によっては有効である。
【0078】
なお、本手段の実装では、回帰にベイズ推定を用いることが通常であるが、これよりも算出が容易なポアソン回帰を用いている。その理由としては、指数的に推移するデータに適応すること、データがばらつき方も含めて正の値しか取らないこと、値が大ききになるにつればらつきも増えるモデルであること、などによる。
【0079】
図9は本発明の一実施形態に係る状態監視システムの状態監視の別の例の説明図であり、状態監視データ分析手段が、振動速度RMS値からISO標準の評価基準、すなわち、ISO10816-1の振動シビアリティによる機器判定により、A:良、B:可、C:警告、D:危険の判定を行うようにプログラムされており、それらから、部品の修理・交換などの判断を行うようにすることができる。
【0080】
なお、絶対値で評価するのは難しいため、データ間で比較する相対評価も有効であり、収集したRMSの値が、前回あるいは他の監視個所の交換時や不調時のRMSの値に近くなった場合には、交換時期が近いことを知らせるようにすることもできる。
【0081】
また、状態監視データ分析手段が、部品の振動に含まれる周波数を算出し、振動速度RMSでは分からない細かな振動の違いを把握することができる。この場合もRMSの場合と同様に、過去データや設備ごとに比較する相対評価も有効である。
【0082】
図10は本発明の一実施形態に係る状態監視システムの状態監視の更に別の例の説明図である。回転機械は、回転に応じた振動を発生させるが、劣化が進むとその機器の振動パターンが変化するので、劣化状態は周波数に大きく表れるため、振動周波数のデータ分析が有効である。
図10(a)に示す正常状態では、部品Mに起因する周波数100HZの振動強度のピークと、部品Bに起因する周波数800HZの振動強度のピークとはほぼ同等であるが、
図10(b)に示すように部品Mの振動強度のピークが増大した場合、状態監視データ分析手段が、部品Mに異常(故障や寿命)が発生したと判定することができる。
【0083】
なお、分析結果は、状態監視データ分析装置2の表示部に速やかに表示したり、印刷出力したり、外部に転送したり、更なる分析に資するために記憶したりすることができる。
【0084】
次に、状態監視センサー30が、監視を終了した物流設備の特定個所から取り外され(S106)、更に状態監視を継続するかどうかを判断する。(S107)
【0085】
継続する場合は、同一物流設備の別の個所あるいは別の物流設備の指定個所に取付けられ(S102)、これまで述べたステップを繰り返し、監視を継続しない場合は、終了する。
【0086】
また、本発明は、同様の手法によって、加速度センサーによる振動の監視以外にも、種々のセンサーを用いて、故障や異常状態の把握が可能である。
【0087】
例えば、温度センサーによって異常な温度上昇が観察された場合には予知保全を行なったり、音響センサーによって異常音が検出された場合にも予知保全を行なったり、AE(アコースティック・エミッション)センサーによって、材料が変形したり、き裂が発生したりする際の、材料が内部に蓄えていた弾性エネルギーが高い周波数をもつ音響信号(弾性波)を検出して予知保全に役立てたり、電流センサーや磁気センサーによっても異常値が検出された場合に予知保全の活用したり、距離センサーによって、非接触振動計測による予知保全や施工ツールとして用いたり、光電センサーによって障害物の認識や簡易的なコンベヤ流量計として利用するなど種々の物流設備の状態監視が実現できる。
【0088】
更に、本発明の物流設備の状態監システムにおいては、これまでの説明に加えて、種々の状態監視データ分析手段を有している。
【0089】
重要な状態監視データ分析手段の一つとして、類似部品情報検索手段があり、この手段は状態監視データ分析装置2にインストールされるソフトウエア(アプリケーション)にて実現される手段である。
【0090】
ここで、部品などの情報としては、部品の登録時に入力される条件(部品種別、機番種別、使用される速度、故障品かどうか、設置状況、部品名、機番名など)を検索が可能なように記憶しておく。
【0091】
図11は本発明の一実施形態に係る状態監視システムの類似情報入力の説明図であり、ここでは、対象となる部品に関する機番情報の入力を受け付ける画面である。その後、先に述べた項目について必要な項目の入力を続行する。
【0092】
また、それぞれの部品について、振動のデータなどが測定された場合には、そのデータも、動作条件などに紐づけて記憶される。
【0093】
次に、部品の寿命予測が必要となった際には、当該の部品について、類似部品情報検索手段を用いて、記憶されている他の部品の情報を検索して、当該の部品との一致率を算出し、最も一致した部品を類似部品として、その部品の振動データ、故障実績データなどを提示するようにする。
【0094】
このようにすると、類似部品の状況から、当該の部品の寿命や故障発生のリスクなどを予測することができる。
【0095】
すなわち、部品種類や部品点数が多くなると、データ数が膨大になるため、条件に合致する部品を探すのが難しい。この手段を用いることでその部分を自動化し、早いメンテナンス可否判断を支援することができるようになる。
【0096】
更に、対象となる部品の計測データと似た傾向の部品を類似品として表示するようにしてもよい。ここで、例えば、振動データの場合の評価指標としては、RMS・周波数スペクトル・包絡線スペクトルなどを用い、ベクトル距離などの類似指標でデータ的近さを判断するようにしてもよい。
【0097】
なお、この部分については、AI技術を用いて、類似度を算出する、あるいは類似品を決定するようにしてもよい。
【0098】
また、部品登録時に設定される条件を基に、その条件での故障データ値から良否判定の閾値を部品ごとに決めていくようにしてもよい。
【0099】
計測が終了すると状態監視データ分析装置2が自動で、あるいは指示を受けて計測結果を表示する。
【0100】
図12は本発明の一実施形態に係る状態監視システムの表示画面の説明図であり、ここでは計測されたRMS値(この例では37.60)からISO振動基準に基づいた絶対評価結果として、損傷の可能性ありとの評価がなされている。
【0101】
更に、類似部品の自動検索機能による相対評価結果が示されている。すなわち、状態監視データ分析手段が、類似部品情報検索手段に記憶された類似部品情報を検索し、検索された類似部品の故障の実績の数値を超過しているとの情報が表示される。
【0102】
なお、それ以外にも種々の情報の表示が可能である。
図13は本発明の一実施形態に係る状態監視システムの別の表示画面の説明図であり、特定の部品についての振動速度RMSに関する総合的な確認画面の一例を示しており、データを時系列で表示したり、別機器の測定データを重ねて表示することも可能である。
【0103】
この図では、画面中央部に過去のRMS値の計測データ、画面右側にRMS値の推移予測がグラフ表示され、その他、類似部品のデータの表示もできるようになっている。
【0104】
また、
図14は本発明の一実施形態に係る状態監視システムの更に別の表示画面の説明図であり、振動周波数を表示する。この図においては横軸方向に周波数、縦軸方向にパワー値を表示し、本図においては、特定部品の、異なる2つの日付のデータが、異なる色の線で重ねて表示されており、後の日付の方が、特定の周波数においてパワー値が大きくなっており、異常であることが推定できる。
【0105】
これまで説明したように、寿命予測手段と類似部品情報検索手段とを含む状態監視データ分析手段を用いて、種々の分析や寿命予測を行うことができ、的確なメンテナンスを行うことで、物流設備の可動率を高めることができる。
【0106】
なお、状態監視センサーが着脱容易なので、計測したい個所を効率的に計測でき、また、類似部品の情報を、大量に、かつ、簡便に収集できるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の物流設備の状態監視システムは、物流業界において、物流設備の保守・保全のために有効であることから、広く産業上の利用可能性を有する。
【0108】
また、本発明の技術思想は、物流設備だけでなく、メンテナンスを必要とする構造物全般に応用可能であることから、産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0109】
1 状態監視装置
2 状態監視データ分析装置
3 接続手段
10 状態監視装置本体
20 接続ケーブル
30 状態監視センサー
31 ケース
32 イーサネットケーブル接続部
33 加速度センサー
34 永久磁石
35 センサー識別抵抗
40 イーサネットハブ
50 追加接続ケーブル
100 状態監視システム