(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148350
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20241010BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20241010BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
H02J7/02 H
H02J7/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061417
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 康浩
(72)【発明者】
【氏名】泉 純太
(72)【発明者】
【氏名】三木 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】伴 尊行
(72)【発明者】
【氏名】水野 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 直樹
(72)【発明者】
【氏名】戸村 修二
(72)【発明者】
【氏名】大塚 一雄
(72)【発明者】
【氏名】塚田 浩司
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503BA03
5G503BB02
5G503CC02
5G503EA09
5G503FA06
5G503FA14
5G503GA01
5G503GA11
5G503GB06
5G503GD02
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】電池ストリングにおける漏電を検知する。
【解決手段】電池ストリングStは、複数の電池回路モジュールMを直列接続可能に構成される。電池ストリングStの正極出力線と負極出力線とを接続する検出線DLに設けた、第1コンデンサ41と第2コンデンサ42との間の中点Nが、グランド線GLにより制限抵抗61を介して接地している。漏電検出部110は、電池ストリングStの動作中、電池回路モジュールMをパススルー状態に設定し、第1コンデンサ41の電圧である第1電圧V1と第2コンデンサの電圧である第2電圧V2との差である差電圧ΔVに基づいて、電池ストリングStの漏電を検知する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池回路モジュールを直列接続した電池ストリングを備え、
前記複数の電池回路モジュールの各々は、
電池と、
前記電池に並列に接続された第1スイッチと、
前記電池に直列に接続された第2スイッチと、
前記第1スイッチがOFF状態かつ前記第2スイッチがON状態であるときに前記電池の電圧が印加される第1出力端子及び第2出力端子とを含み、さらに、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチのON/OFF状態を制御することにより前記電池ストリングの出力電圧を制御する制御装置と、
前記電池ストリングの正極出力線と負極出力線とを接続する検出線に直列に接続された第1コンデンサおよび第2コンデンサと、
前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの間の前記検出線を、制限抵抗を介して接地するグランド線と、
前記第1コンデンサの電圧である第1電圧を取得する第1電圧センサと、
前記第2コンデンサの電圧である第2電圧を取得する第2電圧センサと、
前記電池ストリングの漏電を検出する漏電検出部と、を備え、
前記漏電検出部は、前記電池ストリングの動作中、第1漏電検出処理と、第2漏電検出処理とを実行するように構成され、
前記第1漏電検出処理は、前記第1電圧と前記第2電圧との差である差電圧が所定値以上のとき、前記電池ストリングに漏電が生じていると判定する処理を含み、
前記第2漏電検出処理は、前記複数の電池回路モジュールのうちの少なくとも1つの電池回路モジュールを、前記第1スイッチを常時ON状態かつ前記第2スイッチを常時OFF状態とするパススルー状態に設定するとともに、前記差電圧が前記所定値以上のとき、前記電池ストリングに漏電が生じていると判定する処理を含む、電源システム。
【請求項2】
前記漏電検出部は、前記第1漏電検出処理において前記電池ストリングに漏電が生じていないと判定したとき、前記第2漏電検出処理を実行する、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
並列に接続された複数の電池ストリングを備え、
前記複数の電池ストリングの各々は、前記電池ストリングで構成され、
前記検出線は、前記複数の電池ストリングの各々の正極出力線が接続される正極線と、前記複数の電池ストリングの各々の負極出力線が接続される負極線との間を接続する、請求項1または請求項2に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-174607号公報(特許文献1)には、複数の電池回路モジュール(電池モジュール)を直列に接続可能とした電池ストリングから構成された電源システム(電源装置)が開示されている。電池ストリングに含まれる電池回路モジュールは、電池と、電池に並列に接続された第1スイッチと、電池に直列に接続された第2スイッチと、第1スイッチがOFF状態かつ第2スイッチがON状態であるときに電池の電圧が印加される第1出力端子及び第2出力端子とを備える。第1スイッチと第2スイッチは、ゲート駆動信号によって、ON/OFF状態が制御され、ゲート駆動信号は、直列接続された次段の電池回路モジュールへ、所定の遅延時間をもって伝達される。電池ストリングに含まれる各電池回路モジュールの第1スイッチ及び第2スイッチをゲート駆動信号によって制御することで、電池ストリングの出力電圧を所望の大きさに調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池ストリングにおける漏電を検知することが望まれる。特許文献1では、電池ストリングにおける漏電の検出について、言及されていない。
【0005】
本開示の目的は、電池ストリングにおける漏電を検知することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の電源システムは、複数の電池回路モジュールを直列接続した電池ストリングを備える。各電池回路モジュールは、電池と、電池に並列に接続された第1スイッチと、電池に直列に接続された第2スイッチと、第1スイッチがOFF状態かつ第2スイッチがON状態であるときに電池の電圧が印加される第1出力端子及び第2出力端子とを含む。電源システムは、さらに、制御装置と、第1コンデンサおよび第2コンデンサと、グランド線と、第1電圧センサと、第2電圧センサと、漏電検出部と、を備える。制御装置は、第1スイッチおよび第2スイッチのON/OFF状態を制御することにより電池ストリングの出力電圧を制御する。第1コンデンサおよび第2コンデンサは、電池ストリングの正極出力線と負極出力線とを接続する検出線に直列に接続される。グランド線は、第1コンデンサと第2コンデンサとの間の検出線を、制限抵抗を介して接地する。第1電圧センサは、第1コンデンサの電圧である第1電圧を取得する。第2電圧センサは、第2コンデンサの電圧である第2電圧を取得する。漏電検出部は、電池ストリングの漏電を検出する。漏電検出部は、電池ストリングの動作中、第1漏電検出処理と、第2漏電検出処理とを実行するように構成される。第1漏電検出処理は、第1電圧と第2電圧との差である差電圧が所定値以上のとき、電池ストリングに漏電が生じていると判定する処理を含む。第2漏電検出処理は、複数の電池回路モジュールのうちの少なくとも1つの電池回路モジュールを、第1スイッチを常時ON状態かつ第2スイッチを常時OFF状態とするパススルー状態に設定するとともに、差電圧が所定値以上のとき、電池ストリングに漏電が生じていると判定する処理を含む。
【0007】
この構成によれば、制御装置は、電池回路モジュールの第1スイッチと第2スイッチのON/OFF状態を制御する。これにより、接続される電池回路モジュールの数が制御され、電池ストリングの出力電圧が制御される。電池ストリングの正極出力線と負極出力線とを接続する検出線には、直列に接続された第1コンデンサおよび第2コンデンサが設けられ、第1コンデンサと第2コンデンサとの間の検出線が、グランド線により制限抵抗を介して接地している。第1電圧センサが、第1コンデンサの電圧である第1電圧を取得し、第2電圧センサが、第2コンデンサの電圧である第2電圧を取得する。漏電検出部は、電池ストリングの動作中、第1電圧と第2電圧との差である差電圧が所定値以上のとき、電池ストリングに漏電が生じていると判定する第1漏電検出処理を実行する。漏電検出部は、電池ストリングの動作中、少なくとも1つの電池回路モジュールを、第1スイッチを常時ON状態かつ前記第2スイッチを常時OFF状態とするパススルー状態に設定するとともに、差電圧が所定値以上のとき、電池ストリングに漏電が生じていると判定する第2漏電検出処理を実行する。
【0008】
直列に接続された第1コンデンサと第2コンデンサとの間(中点)が、制限抵抗を介して接地されている。このため、電池ストリングに漏電が生じていない場合、電池ストリングの動作中、第1電圧(第1コンデンサの電圧)と第2電圧(第2コンデンサの電圧)は等しくなる。電池ストリングに漏電が生じると、第1電圧と第2電圧がアンバランス(不均衡)になるので、差電圧(第1電圧と第2電圧の差)が所定値以上のとき、電池ストリングに漏電が生じていると判定することができる。
【0009】
漏電箇所が、直列に接続された複数の電池回路モジュールの中央付近である場合、漏電箇所の上流側(電池ストリングの正極出力線側)において作動する電池回路モジュールの数と、漏電箇所の下流側(電池ストリングの負極出力線側)において作動する電池回路モジュールの数が、同数になることもあり得る。この場合、電池ストリングに漏電が生じても、電池ストリングの動作中、第1電圧と第2電圧がバランス(均衡)し、差電圧が所定値未満になる。漏電検出部は、第2漏電検出処理において、電池ストリングの動作中、少なくとも1つの電池回路モジュールをパススルー状態(第1スイッチが常時ON状態かつ前記第2スイッチが常時OFF状態)に設定するとともに、差電圧が所定値以上のとき、電池ストリングに漏電が生じていると判定する。第2漏電検出処理では、少なくとも1つの電池回路モジュールをパススルー状態とするので、漏電箇所が、直列に接続された複数の電池回路モジュールの中央付近である場合であっても、漏電箇所の上流と下流で作動する電池回路モジュールの数に差が生じるため、差電圧を用いて漏電を検出できる。
【0010】
(2)好ましくは、漏電検出部は、第1漏電検出処理において電池ストリングに漏電が生じていないと判定したとき、第2漏電検出処理を実行するようにしてよい。
【0011】
直列に接続された複数の電池回路モジュールの中央付近で漏電が生じる可能性より、他の箇所の電池回路モジュールにおいて漏電が生じる可能性の方が高い。この構成によれば、より効率的に電池ストリングの漏電を検出することができる。
【0012】
(3)電源システムは、並列に接続された複数の電池ストリングを備え、複数の電池ストリングの各々は、上述の電池ストリングで構成されてもよい。そして、検出線は、各電池ストリングの正極出力線が接続される正極線と、各電池ストリングの負極出力線が接続される負極線との間を接続するようにしてもよい。
【0013】
この構成によれば、漏電検出部によって、並列に接続された複数の電池ストリングの漏電を検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、電池ストリングにおける漏電を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の実施の形態に係る電源システムの概略構成を示す図である。
【
図3】(A)~(D)は、ゲート信号によって制御される電池回路モジュールMの動作の説明する図である。
【
図4】電池ストリングに漏電が生じた際の第1電圧と第2電圧の関係を説明する図である。
【
図5】漏電検出部で実行される漏電検出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】変形例における電源システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
図1は、本開示の実施の形態に係る電源システムの概略構成を示す図である。
図1を参照して、電源システム1は、複数の電池ストリングStと、インバータ70と、LCLフィルタ80と、制御装置100を含む。制御装置100はコンピュータであってよく、たとえばプロセッサと記憶装置と通信I/F(インターフェース)とを備える。記憶装置には、たとえば、プロセッサによって実行されるプログラム、及びプログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。
【0018】
図2は、電池ストリングStの構成を示す図である。電池ストリングStは、複数の電池回路モジュールM(M1~Mn:nは正の整数)を備える。電池ストリングStに含まれる電池回路モジュールMの数は任意であり、5~20個であってもよいし、100個以上であってもよい。本実施の形態では、各電池ストリングStが同じ数の電池回路モジュールMを含むが、電池ストリングStごとに電池回路モジュールMの数が異なっていてもよい。
【0019】
各電池回路モジュールMは、電力回路SUBと、カートリッジCgとを含む。カートリッジCgは、電池Btと、監視ユニットBSとを含む。電力回路SUBと電池Btとがそれぞれ接続されることによって、電池Btを含む電池回路モジュールMが形成されている。駆動回路SU(SU1~SUn)は、電池回路モジュールMに含まれるスイッチング素子(後述するSW11及びSW12)を駆動するように構成される。電池Btは、ニッケル水素二次電池、あるいは、リチウムイオン二次電池であってよく、電動車両で使用された二次電池を直列に接続することにより、電池Btを製造してよい。
【0020】
図2に示すように、電力回路SUBとカートリッジCgとは、遮断器RB1及びRB2(区別しない場合は「遮断器RB」と称する)を介して、互いに接続されている。遮断器RBは、制御装置100からの指令によって、電力回路SUBとカートリッジCgとの接続状態(導通/遮断)を切り替える。遮断器RBは、ユーザが手動でON/OFFできるように構成されてもよく、この構成によって、カートリッジCgが、電力回路SUBに対して着脱可能にされている。
【0021】
カートリッジCgにおいて、監視ユニットBSは、電池Btの状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を検出して、検出結果を制御装置100へ出力するように構成される。
【0022】
電池ストリングStに含まれる電池回路モジュールMは、共通の電線SLによって接続されている。電線SLは、各電池回路モジュールMの出力端子OT1及びOT2を含む。電池回路モジュールMの出力端子OT2が、当該電池回路モジュールMに隣接する電池回路モジュールMの出力端子OT1と接続されることによって、電池ストリングStに含まれる電池回路モジュールM同士が接続されている。
【0023】
電池回路モジュールM(電力回路SUB)は、第1スイッチング素子11(以下、「SW11」と称する)と、第2スイッチング素子12(以下、「SW12」と称する)と、第1ダイオード13と、第2ダイオード14と、チョークコイル15と、コンデンサ16と、出力端子OT1及びOT2とを備える。SW11及びSW12の各々は、駆動回路SUによって駆動される。この実施の形態に係るSW11、SW12は、それぞれ本開示に係る「第1スイッチ」、「第2スイッチ」の一例に相当する。
【0024】
電池回路モジュールMの出力端子OT1及びOT2間には、SW11と、コンデンサ16と、電池Btとが並列に接続されている。SW11は、電線SL上に位置し、出力端子OT1と出力端子OT2との接続状態(導通/遮断)を切り替えるように構成される。出力端子OT1は電線BL1を介して電池Btの正極に接続されており、出力端子OT2は電線BL2を介して電池Btの負極に接続されている。電線BL1には、SW12及びチョークコイル15がさらに設けられている。電池回路モジュールMにおいては、電池Btと直列に接続されたSW12がON状態(接続状態)であり、かつ、電池Btと並列に接続されたSW11がOFF状態(遮断状態)であるときに、出力端子OT1及びOT2間に電池Btの電圧が印加される。
【0025】
出力端子OT1,OT2と電池Btとの間には、電線BL1及び電線BL2の各々に接続されたコンデンサ16が設けられている。SW11及びSW12の各々は、たとえばFET(電界効果トランジスタ)である。第1ダイオード13、第2ダイオード14は、それぞれSW11、SW12に対して並列に接続されている。SW11及びSW12の各々は、FET以外のスイッチング素子であってもよい。
【0026】
制御装置100は、ゲート信号を生成する。駆動回路SU(SU1~SUn)は、電池回路モジュールM(M1~Mn)ごとに設けられており、ゲート信号に従ってSW11及びSW12を駆動するGD(ゲートドライバ)21と、ゲート信号を遅延させる遅延回路22とを含む。電池回路モジュールMに含まれるSW11及びSW12の各々は、ゲート信号に従ってON/OFF制御される。
【0027】
図3は、ゲート信号によって制御される電池回路モジュールMの動作を説明する図である。
図3(A)は、電池回路モジュールMの動作の一例を示すタイムチャートであり、本実施の形態では、SW11及びSW12を駆動するためのゲート信号として、矩形波信号を採用する。
図3(A)中に示されるゲート信号の「Low」、「High」は、それぞれゲート信号(矩形波信号)のLレベル、Hレベルである。また、「出力電圧」は、出力端子OT1及びOT2間に出力される電圧である。電池回路モジュールMの初期状態では、駆動回路SUにゲート信号が入力されず(ゲート信号=Lレベル)、SW11、SW12がそれぞれON状態、OFF状態になっている。SW11及びSW12は、ゲート信号の立ち上がり/立ち下がりに応じて状態(ON/OFF)が切り替わる。制御装置100は、ゲート信号を用いてPWM制御を行なう。
【0028】
駆動回路SUにゲート信号が入力されると、GD21が、入力されたゲート信号に従ってSW11及びSW12を駆動する。
図3に示す例では、タイミングt1で、ゲート信号がLレベルからHレベルに立ち上がり、ゲート信号の立ち上がりと同時にSW11がON状態からOFF状態に切り替わる。そして、ゲート信号の立ち上がりから所定の時間(デッドタイムdt1)だけ遅れたタイミングt2で、SW12がOFF状態からON状態に切り替わる。これにより、電池回路モジュールMが駆動状態(接続状態)になり、
図3(B)に示すように、SW11がOFF状態かつSW12がON状態になることで、出力端子OT1及びOT2間に電池Btの電圧が印加される。なお、本開示において、「SW11がOFF状態かつSW12がON状態」であり、電池回路モジュールMが接続状態であることを、「駆動状態」と称する。
【0029】
図3(A)を参照して、タイミングt3で、ゲート信号がHレベルからLレベルに立ち下がると、ゲート信号の立ち下がりと同時にSW12がON状態からOFF状態に切り替わる。これにより、電池回路モジュールMがスルー状態になる。スルー状態の電池回路モジュールMでは、SW12がOFF状態になることで、出力端子OT1及びOT2間に電池Btの電圧が印加されなくなる。その後、ゲート信号の立ち下がりから所定の時間(デッドタイムdt2)だけ遅れたタイミングt4で、SW11がOFF状態からON状態に切り替わる。なお、デッドタイムdt1とデッドタイムdt2とは互いに同じであっても異なってもよい。
【0030】
デッドタイムdt1、dt2においては、
図3(C)に示すように、SW11とSW12の両方がOFF状態になる。これにより、SW11及びSW12が同時にON状態になること(電池回路モジュールMが短絡状態になること)が抑制される。
【0031】
デッドタイムdt2の終了(t4)から電池回路モジュールMが駆動状態になるまでの期間を「停止期間」と称すると、停止期間では、
図3(D)に示すように、初期状態と同様に、SW11がON状態かつSW12がOFF状態になる。なお、本開示において、「SW11がON状態かつSW12がOFF状態」であり、電池回路モジュールMが非駆動状態であることを、「スルー状態」と称する。
【0032】
ゲート信号は、遅延回路22によって、所定の遅延時間Tdずつ遅延されて、上流の駆動回路SUから下流の駆動回路SUへ伝達される。そして、制御装置100は、最も下流の駆動回路SU(SUn)の遅延回路22からゲート信号を受けると、新たなゲート信号を、最も上流側の駆動回路SU(SU0)に出力する。ゲート信号の周期Tは、電池ストリングStに含まれる遅延回路22の遅延時間Tdの合計であり、電池ストリングStに含まれるすべての電池回路モジュールMの数(電池回路モジュールMの総数)をNoとすると、周期Tは、「T=Td×No」として設定される。そして、ゲート信号のデューティ比(Hレベルの時間:オン時間Ton)を制御することにより、駆動状態の電池回路モジュールMの数(同時に駆動状態になる電池回路モジュールMの数)を調整することができる。
【0033】
電池ストリングStに含まれる電池回路モジュールMを、上述のように制御することにより、駆動状態の電池回路モジュールMの数(同時に駆動状態になる電池回路モジュールMの数)を調整することができる。これにより、電池ストリングStの正極端子25と負極端子26との間の電圧(出力電圧)を制御することができる。これにより、電池ストリングStは、0[V]から、電池ストリングStに含まれる各電池Bt(カートリッジCg)の電圧の総和までの電圧を出力可能とされている。なお、正極端子25は、本開示の「正極出力線」の一例に相当し、負極端子26は、本開示の「負極出力線」の一例に相当する。
【0034】
図1を参照して、本実施の形態では、複数の電池ストリングStが並列に接続されている。
図1においては、2個の電池ストリングSt(St1、St2)を図示しているが、電池ストリングStの数は任意である。電池ストリングStの正極端子25は、正極線PLに接続され、負極端子26は、負極線NLに接続される。なお、電池回路モジュールMnおよび駆動回路SUnにおいて、符号nは、最も正極線PL側(上流側)が「1」(電池回路モジュールM1、駆動回路SU1)であり、最も負極線NL側(下流側)が「n」(電池回路モジュールMn,駆動回路SUn)である。正極線PLおよび負極線NLは、インバータ70に接続され、インバータ70から出力される三相交流電力が、LCLフィルタ80を介して、図示しない変圧器等に供給される。
【0035】
電池ストリングSt(St1)の正極と負極とに接続された検出線DLには、直列に接続された第1コンデンサ41と第2コンデンサ42が設けられている。第1コンデンサおよび第2コンデンサの容量は、同一である。第1コンデンサ41と第2コンデンサ42との間の検出線DLは、中点Nにおいて、グランド線GLに接続される。グランド線GLは、制限抵抗61を介して、電源システム1の金属棚200等に接続され接地されている。なお、電池ストリングStの筐体も、金属棚200にC種接地されている。
【0036】
第1電圧センサ51は、第1コンデンサ41の電圧である第1電圧V1を検出し、検出信号を制御装置100へ出力する。第2電圧センサ52は、第2コンデンサ42の電圧である第2電圧V2を検出し、検出信号を制御装置100へ出力する。
【0037】
本実施の形態では、複数の電池ストリングSt毎に、検出線DL、第1コンデンサ41、第2コンデンサ42等を備え、各電池ストリングStの第1電圧センサ51、第2電圧センサ52の検出信号が、制御装置100に出力される。
【0038】
図4は、電池ストリングStに漏電が生じた際の第1電圧V1と第2電圧V2の関係を説明する図である。
図4では、電池回路モジュールMの数が14個である場合を例示している。制御装置100のゲート信号によって、電池回路モジュールM(駆動回路SU)を制御し、電池ストリングStが動作しているとき、電池ストリングSt(電池回路モジュールM)に漏電が生じていない場合、第1電圧V1と第2電圧V2は等しくなる。
【0039】
図4において、たとえば、電池回路モジュールM6と電池回路モジュールM7との間の箇所A(漏電箇所A)において漏電が生じた場合、電池ストリングStの動作中、漏電箇所Aより上流側で作動する電池回路モジュールMの数は6個になり、漏電箇所Aより下流で作動する電池回路モジュールMの数は8個になる。このため、
図4の上段に示したグラフのように、時刻t0で漏電箇所Aにおいて漏電が生じると、第1電圧V1と第2電圧V2に差電圧ΔVが生じる。(この場合、差電圧ΔVは、電池回路モジュールM(カートリッジCg)1個分の電圧に相当する。)したがって、電池ストリングStの動作中に、差電圧ΔVを求めることによって、電池ストリングStの漏電を検出できる。
【0040】
図4において、たとえば、電池回路モジュールM7と電池回路モジュールM8との間の箇所B(漏電箇所B)において漏電が生じた場合、電池ストリングStの動作中、漏電箇所Bより上流側で作動する電池回路モジュールMの数は7個であり、漏電箇所Bより下流で作動する電池回路モジュールMの数は7個である。このため、
図4の中段に示したグラフのように、時刻t0で漏電箇所Bにおいて漏電が生じても、第1電圧V1と第2電圧V2がバランス(均衡)し、第1電圧V1と第2電圧V2は、ほぼ等しくなる。このため、電池ストリングStの動作中に、差電圧ΔVを求めても、電池ストリングStの漏電を検出できない。
【0041】
電池ストリングStが動作しているとき、所定の電池回路モジュールM(駆動回路SU)において、GD21が入力されたゲート信号を通過させると、当該電池回路モジュールMのスイッチ駆動は行われることなく、ゲート信号が下流の駆動回路SUへ伝達される。この場合、当該電池回路モジュールMのSW11およびSW12は初期状態になり、「SW11が常時ON状態かつSW12が常時OFF状態」になる。本開示において、「SW11が常時ON状態かつSW12が常時OFF状態」であることを、「パススルー状態」とも称する。
【0042】
図4において、電池回路モジュールM7と電池回路モジュールM8との間の箇所B(漏電箇所B)において漏電が生じている場合、電池ストリングStの動作中、たとえば、電池回路モジュールM1をパススルー状態にすると、漏電箇所Bより上流側で作動する電池回路モジュールMの数は6個であり、漏電箇所Bより下流で作動する電池回路モジュールMの数は7個である。このため、
図4の下段に示したグラフのように、時刻t0で漏電箇所Bにおいて漏電が生じ、時刻tpで電池回路モジュールM1をパススルー状態にすると、第1電圧V1と第2電圧V2に差電圧ΔVが生じる。したがって、電池ストリングStの動作中に、少なくともひとつの電池回路モジュールMをパススルー状態とし、差電圧ΔVを求めることによって、電池ストリングStの中央付近で漏電が生じた場合であっても、電池ストリングStの漏電を検出できる。
【0043】
本実施の形態では、制御装置100には、たとえば機能ブロックとして、漏電検出部110が構成されている。
図5は、漏電検出部110で実行される漏電検出処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、電池ストリングStの動作中(電源システム1の動作中)、所定期間毎に実行される漏電診断モードにおいて実行されてよい。漏電診断モードは、電源システム1の漏電検出器(図示しない)で漏電が検出されたとき、あるいは、電源システム1の起動直後に実行されてもよい。なお、漏電検出処理は、電池ストリングSt毎に実行される。
【0044】
図5を参照して、ステップ(以下、ステップを「S」と略す)10では、動作中の電池ストリングStにおいて、第1電圧センサ51で検出した第1電圧V1と第2電圧センサ52で検出した第2電圧V2との差である差電圧ΔV(=|V1-V2|)を算出する。
【0045】
続くS11では、差電圧ΔVが所定値C以上か否かを判定する。所定値Cは、電池回路モジュールM(カートリッジCg)の電圧に応じて、実験等によって予め設定される値であり、たとえば、電池回路モジュールMの電圧の1/10~1/3であってよい。差電圧ΔVが所定値Cより小さいとき(ΔV<C)、否定判定されS12へ進む。差電圧ΔVが所定値C以上の場合(ΔV≧C)、肯定判定されS16へ進む。
【0046】
S12では、所定の電池回路モジュールMをパススルー状態とする。本実施の形態では、電池回路モジュールM1をパススルー状態にしたあと、S13へ進む。S13では、動作中(但し、電池回路モジュールM1はパススルー状態)の電池ストリングStにおいて、第1電圧センサ51と第2電圧センサ52の検出信号から、差電圧ΔV(=|V1-V2|)を算出する。
【0047】
続くS14では、S13で算出した差電圧ΔVが所定値C以上か否かを判定する。差電圧ΔVが所定値Cより小さいとき(ΔV<C)、否定判定されS15へ進む。差電圧ΔVが所定値C以上の場合(ΔV≧C)、肯定判定されS16へ進む。
【0048】
S15では、電池ストリングStに漏電が生じていないと判定し、今回のルーチンを終了する。S16では、電池ストリングStに漏電が生じていると判定し、今回のルーチンを終了する。なお、電池ストリングStに漏電が生じていると判定されたとき、図示しない警告灯を点灯して漏電を報知したり、電源システム1の動作を停止したりしてもよい。
【0049】
本実施の形態によれば、電池ストリングStの正極出力線と負極出力線とを接続する検出線DLには、直列に接続された第1コンデンサ41および第2コンデンサ42が設けられ、第1コンデンサ41と第2コンデンサ42との間の中点Nが、グランド線GLにより制限抵抗61を介して接地している。漏電検出部110は、電池ストリングStの動作中、第1コンデンサ41の電圧である第1電圧V1と第2コンデンサの電圧である第2電圧V2との差である差電圧ΔVが所定値C以上のとき、電池ストリングStに漏電が生じていると判定する第1漏電検出処理(S10、S11、S16)を実行する。これにより、電池ストリングStに漏電が生じて、第1電圧V1と第2電圧V2がアンバランス(不均衡)になり、差電圧ΔVが所定値以上Aになると、漏電を検出できる。
【0050】
また、漏電検出部110は、電池ストリングStの動作中、電池回路モジュールM1をパススルー状態に設定するとともに、差電圧ΔVが所定値C以上のとき、電池ストリングStに漏電が生じていると判定する第2漏電検出処理(S12、S13、S14、S16)を実行する。これにより、電池ストリングStの漏電箇所が、複数の電池回路モジュールMの中央付近であっても、電池回路モジュールをパススルー状態に設定するので、漏電箇所の上流と下流で作動する電池回路モジュールMの数に差が生じるため、差電圧ΔVを用いて漏電を検出できる。
【0051】
上記実施の形態では、S12において、電池回路モジュールM1をパススルー状態としていたが、いずれの電池回路モジュールMをパススルーにしてもよい。また、電池ストリングStの中央より上流側に位置する複数の電池回路モジュールMをパススルー状態にしてもよく、電池ストリングStの中央より下流側に位置する複数の電池回路モジュールMをパススルー状態にしてもよい。
【0052】
上記実施の形態では、漏電検出部110は、制御装置100に機能ブロックとして構成していた。しかし、制御装置100とは別のコントローラを設け、このコントローラに漏電検出部を構成してもよい。
【0053】
図6は、変形例における電源システム1aの概略構成を示す図である。変形例では、複数(3個)の電池ストリングSt1~St3が、正極線PLおよび負極線NLに並列接続され、インバータ70に接続されている。直列に接続された第1コンデンサ41と第2コンデンサ42を備える検出線DLは、正極線PLと負極線NLの間を接続する。第1コンデンサ41と第2コンデンサ42との間の検出線DLは、中点Nにおいて、グランド線GLに接続され、制限抵抗61を介して、電源システム1の金属棚200等に接続され接地されている。他の構成および漏電検出部110の処理は、上記実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0054】
この変形例によれば、第1電圧センサ51と第2電圧センサ52の検出信号から、差電圧ΔV(=|V1-V2|)を求めることにより、並列に接続された複数(3個)の電池ストリングStの漏電を検出することができる。
【0055】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
1 電源システム、11 第1スイッチング素子(SW)、12 第2スイッチング素子(SW)、21 ゲートドライバ(GD)、22 遅延回路、25 正極端子、26 負極端子、41 第1コンデンサ、42 第2コンデンサ、51 第1電圧センサ、52 第2電圧センサ、61 制限抵抗、70 インバータ、80 LCLフィルタ、100 制御装置、110 漏電検出部、200 金属棚、Bt 電池、Cg カートリッジ、DL 検出線、GL グランド線、M 電池回路モジュール、NL 負極線、OT1,OT2 出力端子、PL 正極線、St 電池ストリング、SU 駆動回路。