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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148351
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】シートの施工方法、壁面装飾物
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/07 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
E04F13/07 E
E04F13/07 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061418
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】出店 純香
(57)【要約】
【課題】シートの剥離強度を向上させるとともに、簡便に施工することが可能な、シートの施工方法と壁面装飾物を提供する。
【解決手段】目地埋め層12が形成された壁面2に、粘接着層10が形成されたシート4を施工して形成された壁面装飾物1と、壁面2に複数のシート4を並列に貼り付けることで壁面2にシート4を施工するシートの施工方法であって、シートの施工方法は、シート4に粘接着層10を形成する粘接着層形成工程と、仮想的に、壁面2に対する複数のシート4の位置を仮想的に決めるシート位置決め工程と、壁面2のうち、隙間目地部14と、壁面2に対して仮想的に決めたシート4が配置される位置の隙間目地部14と連続する部分とに、壁面2にシート4を貼り付けた状態で壁面2とシート4との間及び隙間目地部14に目地埋め層12を形成する目地埋め層形成工程を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に複数のシートを並列に貼り付けることで、前記壁面に前記シートを施工するシートの施工方法であって、
前記シートの一方の面に粘接着層を形成する接着剤である粘接着層形成接着剤を塗工して、前記シートに前記粘接着層を形成する工程である粘接着層形成工程と、
仮想的に、隣り合う二つの前記シートの間に隙間目地部を形成する間隔を開けた状態で前記壁面に前記複数のシートを並列に配置して、前記壁面に対する前記複数のシートの位置を仮想的に決める工程であるシート位置決め工程と、
前記壁面のうち、前記隙間目地部と、前記壁面に対して仮想的に決めた前記シートが配置される位置の前記隙間目地部と連続する部分とに、前記壁面に前記シートを貼り付けた状態で壁面とシートとの間及び前記隙間目地部に目地埋め層を形成する接着剤である目地埋め層形成接着剤を塗工する工程である目地埋め層形成工程と、を備えるシートの施工方法。
【請求項2】
前記粘接着層形成工程の前に行う工程として、前記シートの一方の面に両面テープを貼り付けることで、前記シートの厚さ方向から見て、前記両面テープによって前記一方の面に連続又は不連続の枠を形成する工程である両面テープ貼り付け工程をさらに備え、
前記粘接着層形成工程では、前記壁面に前記シートを貼り付ける前の状態で、前記シートの厚さ方向から見て、前記両面テープの内側に形成された領域に前記粘接着層形成接着剤を塗工する請求項1に記載したシートの施工方法。
【請求項3】
前記両面テープ貼り付け工程では、厚さが0.1mm以上1.0mm以下の範囲内である前記両面テープを前記一方の面に貼り付ける請求項2に記載したシートの施工方法。
【請求項4】
前記粘接着層形成工程では、前記粘接着層形成接着剤として、変性シリコーン系の接着剤を用いる請求項1に記載したシートの施工方法。
【請求項5】
前記目地埋め層形成工程では、前記目地埋め層形成接着剤として、着色された接着剤を用いる請求項1に記載したシートの施工方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載したシートの施工方法によって前記目地埋め層が形成された前記壁面に、請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載したシートの施工方法によって前記粘接着層が形成された前記シートを施工して形成された壁面装飾物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの施工方法と、壁面装飾物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物等の壁面を装飾するためには、例えば、壁紙、タックシート、タイル、化粧板等の内装材を用いる。
壁紙を用いて壁面を装飾する方法としては、例えば、施工の現場にて、壁紙の裏面に糊付け機を用いてでんぷんのりを塗工した後に、壁紙のでんぷんのりを塗工した面を壁面に貼り付ける方法を用いる。
【0003】
タックシートを用いて壁面を装飾する方法としては、例えば、予め、工場で、タックシートの裏面に粘着剤を塗工しておき、さらに、粘着剤に離型紙を積層した状態で出荷し、施工の現場では、離型紙を剥離しながら壁面に貼り付ける方法を用いる。
タイルを用いて壁面を装飾する方法としては、例えば、弾性を有する接着剤を、壁面に、くし目コテを用いてくし目を立てながら塗工した後にタイルを貼り合わせ、養生・硬化させる。その後、必要に応じて、目地の部分に目地を埋めるためのコーキング等を施す方法を用いる。
【0004】
化粧ボードを用いて壁面を装飾する方法としては、例えば、化粧ボードの裏面に、接着剤と両面テープを併用して粘着層を形成し、粘着層を用いて貼り付ける方法を用いる。
また、壁面を装飾する方法としては、上述した内装材を用いて壁面を装飾する方法の他に、例えば、特許文献1に開示されているように、モルタルを含む接着層を用いて内装材を接着する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-181731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術を含め、従来から用いられている、壁面を装飾する方法では、例えば、シートの端部に塗工された接着剤の量が少ない場合等に、壁面に対するシートの剥離強度が低下するという問題がある。
また、特許文献1に開示されている技術では、内装材を接着する接着層がモルタルを含むため、左官職人によるコテ等を使用した壁面への接着層の塗りつけが必要となり、特殊な技能が必要であるため、簡便さに欠けるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した問題点を鑑み、シートの剥離強度を向上させるとともに、簡便に施工することが可能な、シートの施工方法と壁面装飾物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、壁面に複数のシートを並列に貼り付けることで、壁面にシートを施工するシートの施工方法であって、粘接着層形成工程と、シート位置決め工程と、目地埋め層形成工程を備える。粘接着層形成工程は、シートの一方の面に粘接着層を形成する接着剤である粘接着層形成接着剤を塗工して、シートに粘接着層を形成する工程である。シート位置決め工程は、仮想的に、隣り合う二つのシートの間に隙間目地部を形成する間隔を開けた状態で壁面に複数のシートを並列に配置して、壁面に対する複数のシートの位置を仮想的に決める工程である。目地埋め層形成工程は、壁面のうち、隙間目地部と、壁面に対して仮想的に決めたシートが配置される位置の隙間目地部と連続する部分とに、壁面にシートを貼り付けた状態で壁面とシートとの間及び隙間目地部に目地埋め層を形成する接着剤である目地埋め層形成接着剤を塗工する工程である。
【0009】
また、上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、シートの施工方法によって目地埋め層が形成された壁面に、シートの施工方法によって粘接着層が形成されたシートを施工して形成された壁面装飾物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、シートの剥離強度を向上させるとともに、簡便に施工することが可能な、シートの施工方法と壁面装飾物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一実施形態における壁面装飾物の構成を示す断面図である。
図2】両面テープ貼り付け工程の説明図である。
図3】粘接着層形成工程の説明図である。
図4】シート位置決め工程の説明図である。
図5】目地埋め層形成工程の説明図である。
図6】シート貼り付け工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0013】
(第一実施形態)
以下、図1を参照して、第一実施形態における壁面装飾物1の構成について説明する。
【0014】
<壁面装飾物>
壁面装飾物1は、図1に示すように、壁面2に、複数のシート4を施工して形成されている。
複数のシート4は、壁面2へ並列に配置されている。
【0015】
壁面2は、壁材の表面である。壁材は、例えば、金属、コンクリート、木材、石膏ボード等を用いて形成されている。
壁面2には、後述するシートの施工方法によって、目地埋め層12が形成されている。
【0016】
目地埋め層12は、後述するシートの施工方法によって壁面2に設定した隙間目地部14と、シートの施工方法によって壁面2に対して仮想的に決めたシート4が配置される位置の隙間目地部14と連続する部分とに、目地埋め層形成接着剤を塗工して形成されている。
目地埋め層形成接着剤としては、例えば、ダークグレー色に着色された変性シリコーン系の接着剤(コニシ株式会社製「エフレックスタイルワン」等)を用いる。なお、目地埋め層形成接着剤の色は、ダークグレー色の他に、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、白色、黒色等としてもよい。
隙間目地部14は、複数のシート4のうち、隣り合う二つのシート4の間に形成されており、隣り合う二つのシート4の間に開けた間隔により形成されている。
【0017】
シート4は、可撓性を有している。
シート4には、後述するシートの施工方法によって、粘接着層10が形成されている。
【0018】
シート4としては、例えば、タイル、壁紙、骨材と樹脂を主成分としたものを不織布の上に塗布したシートや、オレフィン系・塩ビ系の樹脂を用いて形成したシートを用いることが可能である。
シート4の厚さは、例えば、易施工性や不燃性等を考慮して、1.0[mm]以上15[mm]以下の範囲内とする。
【0019】
粘接着層10は、シート4の一方の面4a(図1では、下側の面)に貼り付けた両面テープ6の少なくとも一部と、一方の面4aに塗工した粘接着層形成接着剤8とが、シート4の厚さ方向から見て重なることで形成されている。
粘接着層形成接着剤8は、粘接着層10を形成する接着剤であり、例えば、変性シリコーン系の接着剤を用いる。変性シリコーン系の接着剤としては、例えば、アイカ工業株式会社製の「アイカエコエコボンド SE-1」を用いることが可能である。
なお、粘接着層形成接着剤8は、変性シリコーン系の接着剤に限定するものではなく、例えば、ウレタン変性EVA系の接着剤を用いてもよい。ウレタン変性EVA系の接着剤としては、例えば、ジャパンコーティングレジン株式会社製の「BA-10L」を用いることが可能である。
【0020】
<シートの施工方法>
シートの施工方法は、壁面2に複数のシート4を並列に貼り付けることで、壁面2にシート4を施工する方法であり、両面テープ貼り付け工程と、粘接着層形成工程と、シート位置決め工程と、目地埋め層形成工程と、シート貼り付け工程を備える。
【0021】
(両面テープ貼り付け工程)
両面テープ貼り付け工程は、粘接着層形成工程の前に行う工程であり、図2に示すように、シート4の一方の面4aに両面テープ6を貼り付けることで、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6によって一方の面4aに不連続の枠を形成する工程である。
また、両面テープ貼り付け工程では、図2に示すように、枠の内側にも、両面テープ6を貼り付ける。
具体的に、両面テープ貼り付け工程では、両面テープ6に貼り付けられている二枚の剥離紙(図示略)のうち一方を剥がした後、両面テープ6のうち剥離紙を剥がした面を、シート4の一方の面4aに貼り付ける。
【0022】
また、両面テープ貼り付け工程では、例えば、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6とシート4の端部4bとの間隔Intが3[mm]以内となるように、一方の面4aに両面テープ6を貼り付ける。
さらに、両面テープ貼り付け工程では、例えば、幅Wが15[mm]以下の両面テープ6を、一方の面4aに貼り付ける。
【0023】
これに加え、両面テープ貼り付け工程では、厚さが0.1[mm]以上1.0[mm]以下の範囲内である両面テープ6を一方の面4aに貼り付ける。
両面テープ6の厚さを0.1[mm]以上1.0[mm]以下の範囲内とした理由は、両面テープ6の厚さがシート4の厚さの0.5倍以上であると、可撓性を有するシート4の場合、斜光観察や触感確認等により、不陸が判明して好適では無いためである。
なお、両面テープ6としては、例えば、3M社製の「9660」や「Y-4800-12」、日東電工株式会社製の「No.5015」を用いることが可能である。
【0024】
(粘接着層形成工程)
粘接着層形成工程は、図3に示すように、一方の面4aのうち、壁面2にシート4を貼り付ける前の状態で、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6の内側に形成された領域に粘接着層形成接着剤8を塗工する工程である。これにより、粘接着層形成工程は、シート4に粘接着層形成接着剤8を含む粘接着層10を形成する工程である。
粘接着層形成接着剤8を塗工する際には、例えば、粘接着層形成接着剤8が充填された円筒状のカートリッジを取り付けたコーキングガンを用いる。
【0025】
また、粘接着層形成接着剤8を塗工する前に、両面テープ6のうち、両面テープ貼り付け工程において剥離紙を剥がした面と反対の面から、剥離紙を剥がす。
第一実施形態では、粘接着層形成接着剤8の塗工量を、0.05[kg/m]以上1[kg/m]以下の範囲内とした場合について説明する。さらに、第一実施形態では、一例として、粘接着層形成接着剤8の塗工量を、0.17[kg/m]とした場合について説明する。
粘接着層形成接着剤8の塗工量を、0.05[kg/m]以上1[kg/m]以下の範囲内とした理由は、粘接着層形成接着剤8の塗工量が0.05[kg/m]未満であると、接着力の低下が発生して好適では無いためである。また、粘接着層形成接着剤8の塗工量が1[kg/m]を超えていると、粘接着層形成接着剤8が有する弾性により、シート4の他方の面(表面)の意匠や触感が低下するという問題や、粘接着層形成接着剤8の量が過多となってシート4の壁面2への施工時に、壁面2とシート4との間から粘接着層形成接着剤8がはみ出す等の問題が発生するためである。
【0026】
なお、粘接着層形成工程では、壁面2にシート4を貼り付けた状態で、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6の少なくとも一部と、塗工した粘接着層形成接着剤8とが重なることで粘接着層10が形成されるように、粘接着層形成接着剤8を塗工してもよい。
【0027】
(シート位置決め工程)
シート位置決め工程は、図4に示すように、仮想的に、隣り合う二つのシート4の間に隙間目地部14を形成する間隔を開けた状態で、壁面2に複数のシート4を並列に配置して、壁面2に対する複数のシート4の位置を仮想的に決める工程である。なお、図4では、説明のために、仮想的に配置したシート4を、符号「4V」を付して示している。
なお、シート位置決め工程は、例えば、両面テープ貼り付け工程や粘接着層形成工程を実施していない状態のシート4を、実際に壁面2へ配置して行ってもよい。
【0028】
(目地埋め層形成工程)
目地埋め層形成工程は、図5に示すように、壁面2のうち、隙間目地部14と、壁面2に対して仮想的に決めたシート4が配置される位置の、隙間目地部14と連続する部分とに、壁面2にシート4を貼り付けた状態で、壁面2とシート4との間及び隙間目地部14に、目地埋め層形成接着剤を塗工する工程である。これにより、目地埋め層形成工程では、隙間目地部14と連続する部分とに、壁面2にシート4を貼り付けた状態で、壁面2とシート4との間及び隙間目地部14に、目地埋め層12を形成する。
なお、図5では、説明のために、壁面2に対して仮想的に決めたシート4が配置される位置を、符号「VP」を付して示している。また、図5では、説明のために、隙間目地部14の一部を拡張して示している。
【0029】
(シート貼り付け工程)
シート貼り付け工程は、図6に示すように、目地埋め層12が形成された壁面2に、粘接着層10が形成されたシート4を貼り付ける工程である。
【0030】
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この第一実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0031】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態のシートの施工方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)シート4の一方の面4aに粘接着層10を形成する接着剤である粘接着層形成接着剤8を塗工して、シート4に粘接着層10を形成する粘接着層形成工程を備える。さらに、仮想的に、隣り合う二つのシート4の間に隙間目地部14を形成する間隔を開けた状態で,壁面2に複数のシート4を並列に配置して、壁面2に対する複数のシート4の位置を仮想的に決めるシート位置決め工程を備える。これに加え、壁面2のうち、隙間目地部14と、壁面2に対して仮想的に決めたシート4が配置される位置の隙間目地部14と連続する部分とに、壁面2にシート4を貼り付けた状態で壁面2とシート4との間及び隙間目地部14に目地埋め層12を形成する接着剤である目地埋め層形成接着剤を塗工する目地埋め層形成工程を備える。
【0032】
このため、目地埋め層12によって、シート4の端部における接着力を強固に保持することが可能となる。これに加え、従来のように、左官職人によるコテを使用した接着剤の塗工が不要となるため、特殊な技能が不要となり、簡便さを向上させることが可能となる。
その結果、シート4の剥離強度を向上させるとともに、簡便に施工することが可能な、シートの施工方法を提供することが可能となる。
【0033】
(2)粘接着層形成工程の前に行う工程として、シート4の一方の面4aに両面テープ6を貼り付けることで、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6によって一方の面4aに連続又は不連続の枠を形成する工程である両面テープ貼り付け工程をさらに備える。これに加え、粘接着層形成工程では、壁面2にシート4を貼り付ける前の状態で、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6の内側に形成された領域に粘接着層形成接着剤8を塗工する。
その結果、壁面2にシート4を貼り付けた状態で、シート4の自重等によって発生するシート4の剥離を抑制することが可能となる。
【0034】
(3)両面テープ貼り付け工程では、厚さが0.1[mm]以上1.0[mm]以下の範囲内である両面テープ6を一方の面4aに貼り付ける。
その結果、両面テープ6の厚さが1.0[mm]を超える構成と比較して、シート4が有する接着力を向上させることが可能となる。これに加え、シート4を介した両面テープ6の厚さに由来する不陸(凹凸)の形成を抑制することが可能となる。
【0035】
(4)粘接着層形成工程では、粘接着層形成接着剤8として、変性シリコーン系の接着剤を用いる。
その結果、粘接着層形成接着剤8の未硬化時におけるタックが、初期の接着力を強固なものとするため、シート4を施工する作業中に発生する剥離を抑制することが可能となる。また、粘接着層形成接着剤8として変性シリコーン系以外の接着剤を用いた構成と比較して、強固な接着力と、長期に亘って安定性の高い接着力を得ることが可能となる。
【0036】
(5)目地埋め層形成工程では、目地埋め層形成接着剤として、着色された接着剤を用いる。
その結果、シート4の色等、壁面装飾物1に要求される意匠等に対して、対応することが可能となる。すなわち、例えば、壁面2の柄や表面状態を、着色された目地埋め層形成接着剤によって隠すことが可能となる。
【0037】
また、第一実施形態の壁面装飾物1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(6)壁面装飾物1が、シートの施工方法によって目地埋め層12が形成された壁面2に、シートの施工方法によって粘接着層10が形成されたシート4を施工して形成されている。
その結果、シート4の剥離強度を向上させるとともに、簡便に施工することが可能な、壁面装飾物1を提供することが可能となる。
【0038】
また、例えば、底目地を設けた壁面装飾物1を形成した際に、人による意図的なシート4を剥離する行為や、壁面装飾物1を納品する際に行う品質確認としての密着力の確認として行う剥離に対して、充分な強度を発現することが可能な、壁面装飾物1を提供することが可能となる。
【0039】
<第一実施形態の変形例>
(1)第一実施形態では、粘接着層形成工程で、壁面2にシート4を貼り付ける前の状態で、シート4の厚さ方向から見て、粘接着層形成接着剤8が、枠の内側を形成する領域のみと重なるように、粘接着層形成接着剤8を塗工したが、これに限定するものではない。
すなわち、例えば、粘接着層形成工程で、壁面2にシート4を貼り付ける前の状態で、シート4の厚さ方向から見て、粘接着層形成接着剤8が、両面テープ6の少なくとも一部と、枠の内側を形成する領域の少なくとも一部と重なるように、粘接着層形成接着剤8を塗工してもよい。
【0040】
(2)第一実施形態では、両面テープ貼り付け工程において、一方の面4aに両面テープ6を貼り付けることで、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6によって一方の面4aに不連続の枠を形成したが、これに限定するものではない。
すなわち、両面テープ貼り付け工程において、一方の面4aに両面テープ6を貼り付けることで、シート4の厚さ方向から見て、両面テープ6によって一方の面4aに連続する枠を形成してもよい。
【0041】
(3)第一実施形態では、目地埋め層形成接着剤と粘接着層形成接着剤8とを、異なる接着剤としたが、これに限定するものではなく、目地埋め層形成接着剤と粘接着層形成接着剤8とを、同じ接着剤としてもよい。
【0042】
(4)第一実施形態では、目地埋め層形成接着剤として、着色された接着剤を用いたが、これに限定するものではなく、目地埋め層形成接着剤として、透明な接着剤を用いてもよい。
【実施例0043】
第一実施形態を参照しつつ、以下、実施例1の壁面装飾物と、比較例1から2の壁面装飾物について説明する。
【0044】
(実施例1)
壁面に相当する下地材として、1200[mm]×2400[mm]サイズの石膏ボードを用いた。
両面テープ貼り付け工程では、両面テープとして、3M社製の「9660」を用いた。
シートとしては、厚さが約4[mm]であり、200[mm]角のサイズにカットした装飾シート(エスケー化研株式会社製:「グラニピエーレ」)を用いた。
【0045】
粘接着層形成工程では、粘接着層形成接着剤として、変性シリコーン系の接着剤(アイカ工業株式会社製:「アイカエコエコボンド SE-1」)を用いた。
目地埋め層形成工程では、下地材のうち、シート位置決め工程で設定した隙間目地部に、平コテを用いて、ダークグレー色に着色された変性シリコーン系の目地埋め層形成接着剤(コニシ株式会社製「エフレックスタイルワン」)を塗工した。
【0046】
シート貼り付け工程では、下地材にシートを貼り付け、さらに、たたき板を用いて圧締を行った後、温度が23[℃]の環境下で3日間の養生を行った。
以上により、実施例1の壁面装飾物を形成した。
【0047】
(比較例1)
シート位置決め工程で設定した隙間目地部に、目地埋め層形成接着剤の代わりに目地テープ(パネフリ工業株式会社製「ブラック」)を貼り付けた点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例1の壁面装飾物を形成した。
【0048】
(比較例2)
目地埋め層形成工程の代わりに、下地材に対して、全体的に、くし目コテを使って接着剤(コニシ株式会社製「エフレックスタイルワン」)を塗工し、さらに、シート位置決め工程で設定した隙間目地部に、平コテを用いてクシ目を形成した工程を実施した点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例2の壁面装飾物を形成した。
【0049】
(性能評価)
実施例1の壁面装飾物と、比較例1から2の壁面装飾物に対し、それぞれ、シートの端部に発生した剥離の状態と、施工に要した実際の時間を測定して評価した。測定結果は、表1に示す。なお、施工に要した実際の時間は、一名の作業者によって施工を行った時間であり、事前の準備に要した時間と、シートのカットに要した時間と、事後の片付けに要した時間を除いた時間である。
なお、表1では、シートの端部に発生した剥離の状態を「端部の剥離」と記載し、施工に要した実際の時間を「施工実時間」と記載した。
【表1】
【0050】
(評価結果)
上述した方法を用いて、各種の性能を評価した結果、表1に示すように、実施例1の壁面装飾物は、比較例1から2の壁面装飾物と比較して、シートの端部に発生する剥離を防止することが可能であるとともに、簡便に施工することが可能であることが確認された。
【0051】
なお、本技術は、以下のような構成を取ることが可能である。
(1)
壁面に複数のシートを並列に貼り付けることで、前記壁面に前記シートを施工するシートの施工方法であって、
前記シートの一方の面に粘接着層を形成する接着剤である粘接着層形成接着剤を塗工して、前記シートに前記粘接着層を形成する工程である粘接着層形成工程と、
仮想的に、隣り合う二つの前記シートの間に隙間目地部を形成する間隔を開けた状態で前記壁面に前記複数のシートを並列に配置して、前記壁面に対する前記複数のシートの位置を仮想的に決める工程であるシート位置決め工程と、
前記壁面のうち、前記隙間目地部と、前記壁面に対して仮想的に決めた前記シートが配置される位置の前記隙間目地部と連続する部分とに、前記壁面に前記シートを貼り付けた状態で壁面とシートとの間及び前記隙間目地部に目地埋め層を形成する接着剤である目地埋め層形成接着剤を塗工する工程である目地埋め層形成工程と、を備えるシートの施工方法。
(2)
前記粘接着層形成工程の前に行う工程として、前記シートの一方の面に両面テープを貼り付けることで、前記シートの厚さ方向から見て、前記両面テープによって前記一方の面に連続又は不連続の枠を形成する工程である両面テープ貼り付け工程をさらに備え、
前記粘接着層形成工程では、前記壁面に前記シートを貼り付ける前の状態で、前記シートの厚さ方向から見て、前記両面テープの内側に形成された領域に前記粘接着層形成接着剤を塗工する前記(1)に記載したシートの施工方法。
(3)
前記両面テープ貼り付け工程では、厚さが0.1mm以上1.0mm以下の範囲内である前記両面テープを前記一方の面に貼り付ける前記(2)に記載したシートの施工方法。
(4)
前記粘接着層形成工程では、前記粘接着層形成接着剤として、変性シリコーン系の接着剤を用いる前記(1)~(3)のいずれかに記載したシートの施工方法。
(5)
前記目地埋め層形成工程では、前記目地埋め層形成接着剤として、着色された接着剤を用いる前記(1)~(4)のいずれかに記載したシートの施工方法。
(6)
前記(1)~(5)のいずれかに記載したシートの施工方法によって前記目地埋め層が形成された前記壁面に、前記(1)~(5)のいずれかに記載したシートの施工方法によって前記粘接着層が形成された前記シートを施工して形成された壁面装飾物。
【符号の説明】
【0052】
1…壁面装飾物、2…壁面、4…シート、4a…シートの一方の面、4b…シートの端部、4V…仮想的に配置したシート、6…両面テープ、8…粘接着層形成接着剤、10…粘接着層、12…目地埋め層、14…隙間目地部、Int…両面テープとシートの端部との間隔、W…両面テープの幅、VP…壁面に対して仮想的に決めたシートが配置される位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6