(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148360
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
A23L 5/30 20160101AFI20241010BHJP
A23L 3/36 20060101ALN20241010BHJP
A23L 3/40 20060101ALN20241010BHJP
A23L 3/00 20060101ALN20241010BHJP
【FI】
A23L5/30
A23L3/36 Z
A23L3/40 B
A23L3/00 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061434
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】星野 仁
(72)【発明者】
【氏名】田中 正昭
【テーマコード(参考)】
4B021
4B022
4B035
【Fターム(参考)】
4B021LA14
4B021LP10
4B021LT09
4B021LW02
4B021LW03
4B021LW04
4B021MQ04
4B022LA05
4B022LA06
4B022LB07
4B022LB09
4B022LF01
4B022LJ06
4B022LJ08
4B022LP01
4B022LR03
4B022LT01
4B035LC01
4B035LC05
4B035LE11
4B035LG32
4B035LG42
4B035LP24
4B035LP43
4B035LP46
4B035LT20
(57)【要約】
【課題】 十分な味覚風味を有し視覚的にも適正な食品を提供できる食品処理装置、及びその食品処理装置を備えた冷蔵庫を提供する。
【解決手段】 、食品Gを収納する収納室10と、収納室内10の気体を流動させる循環ファン20と、収納室10内を流動する気体を加熱または冷却する温度調整部22,30A,30B,32,112,114,116,120と、循環ファン20及び温度調整部を制御する制御部50と、を備え、制御部50が、循環ファン20を稼働させて、収納室10内に配置された食品Gを乾燥させる乾燥処理と、乾燥処理がなされた食品GがシートSで覆われた状態で配置された収納室10を所定の温度範囲内に維持する食品処理工程と、を行うように制御し、シートSに、食品Gに浸透させる物質が含まれている食品処理装置2、及び食品処理装置2を備えた冷蔵庫を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収納する収納室と、
前記収納室内の気体を流動させる循環ファンと、
前記収納室内を流動する気体を加熱または冷却する温度調整部と、
前記循環ファン及び前記温度調整部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、
前記循環ファンを稼働させて、前記収納室内に配置された食品を乾燥させる乾燥処理と、
前記乾燥処理がなされた食品がシートで覆われた状態で配置された前記収納室を所定の温度範囲内に維持する食品処理工程と、
を行うように制御し、
前記シートに、食品に浸透させる物質が含まれていることを特徴とする食品処理装置。
【請求項2】
前記所定の温度範囲が、-1℃以上10℃以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の食品処理装置。
【請求項3】
前記食品処理工程において、前記シートで覆われた食品を密封状態で収納する樹脂製の部材が、前記収納室内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の食品処理装置。
【請求項4】
前記温度調整部が、
前記収納室内を流動する気体に冷気を加える冷気供給機構と、
前記収納室内を流動する気体を加熱するヒータと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の食品処理装置。
【請求項5】
前記収納室内に配置された食品に光を照射する光源を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の食品処理装置。
【請求項6】
前記食品処理工程において、燻液に浸された前記シートが用いられることを特徴とする請求項1に記載の食品処理装置。
【請求項7】
前記食品処理工程において、調味料を含む液体に浸された前記シート、または調味料の粉末が付けられた前記シートが用いられることを特徴とする請求項1に記載の食品処理装置。
【請求項8】
前記食品処理工程において、タンパク質分解酵素を含む液体に浸された前記シート、または前記タンパク質分解酵素の粉末が付けられた前記シートが用いられることを特徴とする請求項1に記載の食品処理装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載の食品処理装置を備え
庫内を循環する気体を冷却する蒸発器を通過した気体を前記収納室内を流動する気体に加えて冷却を行うことを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品に味覚風味を付与する食品処理装置、及びその食品処理装置を備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
食品に味覚風味を付与する処理について、例えば、燻液や香辛料が付着したシートで食品を包んで味覚風味を付与する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燻液や香辛料が付着したシートで食品を包むだけでは、十分な量の燻液や香辛料が食品に浸透する前に、細菌により食品の腐敗が始まる虞がある、また、例えば食品が肉の場合、肉に含まれるミオグロビンが空気中の酸素に触れてオキシミオグロビンとなり、鮮やかな赤へと変わるが、食品がシートで包まれると酸素との接触が減少して、肉が黒ずんだ色を呈する虞がある。このように黒ずんだ状態の肉に燻液を浸透させた場合、燻液の色にも起因して、肉が腐敗したような視覚的に不適切な状態となる。
【0005】
よって、本発明の目的は、上記の課題を解決するものであり、十分な味覚風味を有し視覚的にも適正な食品を提供できる食品処理装置、及びその食品処理装置を備えた冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の態様は、
食品を収納する収納室と、
前記収納室内の気体を流動させる循環ファンと、
前記収納室内を流動する気体を加熱または冷却する温度調整部と、
前記循環ファン及び前記温度調整部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、
前記循環ファンを稼働させて、前記収納室内に配置された食品を乾燥させる乾燥処理と、
前記乾燥処理がなされた食品がシートで覆われた状態で配置された前記収納室を所定の温度範囲内に維持する食品処理工程と、
を行うように制御し、
前記シートに、食品に浸透させる物質が含まれている食品処理装置である。
【0007】
本態様によれば、乾燥処理により、食品は空気中の酸素と触れて適正な色となる。食品の表面に薄い酸化皮膜が形成されるので、更なる過剰な酸化を防いで、適正な色を保つことができる、これととともに、表面の細菌を除いて腐敗を抑制できる。更に、食品処理工程において、食品に浸透させる物質が含まれたシートで包まれた食品を、適正な温度で保持することにより、食品を腐敗させることなく、シートに含まれる物質を食品に浸透させて、食品に十分な味覚風味を付与することができる。また、タンパク質を含む食品では、その間に食品を熟成させることもできる。
【0008】
以上のように、本態様によれば、十分な味覚風味を有し視覚的にも適正な食品を提供できる食品処理装置を提供することができる。なお、「味覚風味」の「味覚」は、人が舌で感じる味であり、「風味」は、嗅覚により得られる香りと、舌が食物に接して得られる感覚とを含むものである。また、食品がシートで覆われた状態は、食品がシートに包まれた場合だけでなく、食品がシートから構成された袋の中に収納されている場合等も含まれる。また、肉、魚、野菜、果物をはじめとする任意の食品を食品処理装置で処理することができるが、特にタンパク質を含む肉や魚において有効である。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、
前記所定の温度範囲が、-1℃以上10℃以下の範囲である食品処理装置である。
【0010】
本態様によれば、食品に浸透させる物質が含まれたシートで包まれた食品を、-1℃以上10℃以下の温度範囲で保持することにより、確実に、食品を腐敗させることなく、シートに含まれる物質を食品に浸透させて、食品に十分な味覚風味を付与することができる。また、タンパク質を含む食品では、この温度範囲により、食品Gの熟成も促進される。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、
前記食品処理工程において、前記シートで覆われた食品を密封状態で収納する樹脂製の部材が、前記収納室内に配置されている食品処理装置である。
【0012】
本態様によれば、シートで覆われた食品を密封状態で収納する樹脂製の部材が収納室内に配置されているので、食品に浸透させる物質の臭いが収納室内に充満することがない。これにより、シートで覆われた食品を、問題なく長時間、適正温度で保管することができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1から第3の何れか1の態様において、
前記温度調整部が、
前記収納室内を流動する気体に冷気を加える冷気供給機構と、
前記収納室内を流動する気体を加熱するヒータと、
を備える食品処理装置である。
【0014】
本態様によれば、温度調整部が、収納室内を流動する気体に冷気を加える冷気供給機構と、収納室内を流動する気体を加熱するヒータと、を備えるので、確実に収納室内の温度を所定の範囲内に維持することができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、第1から第4の何れか1の態様において、
前記収納室内に配置された食品に光を照射する光源を更に備える食品処理装置である。
【0016】
本態様によれば、例えば、光源から紫外線域の光や青色光を食品に照射することにより、殺菌を行って、食品が腐敗するのを抑制することができる。また、光源から白色色を食品に照射して、天日干しで食品の味覚風味を増すこともできる。
【0017】
本発明の第6の態様は、第1から第5の何れか1の態様において、
前記食品処理工程において、燻液に浸された前記シートが用いられる食品処理装置。
【0018】
本態様によれば、燻液に浸されたシートで食品を覆うことにより、短時間に容易に食品に燻製の味覚風味を付与することができる。
【0019】
本発明の第7の態様は、第1から第5の何れか1の態様において、
前記食品処理工程において、調味料を含む液体に浸された前記シート、または調味料の粉末が付けられた前記シートが用いられる食品処理装置である。
【0020】
本態様によれば、調味料を含む液体に浸されたシート、または調味料の粉末が付けられたシートで食品を覆うことにより、短時間に容易に食品に調味料の味覚風味を付与することができる。なお、調味料としては、カレーを含む様々な香辛料、ハーブ等を例示できる。
【0021】
本発明の第8の態様は、第1から第5の何れか1の態様において、
前記食品処理工程において、タンパク質分解酵素を含む液体に浸された前記シート、または前記タンパク質分解酵素の粉末が付けられた前記シートが用いられる食品処理装置である。
【0022】
本態様によれば、タンパク質分解酵素を含む液体に浸されたシート、またはタンパク質分解酵素の粉末が付けられたシートで食品を覆うことにより、タンパク質を含む食品にタンパク質分解酵素を浸透させて、食品の熟成を促進することができる。
【0023】
本発明の第9の態様は、
第1から第7の何れか1の態様に係る食品処理装置を備え
庫内を循環する気体を冷却する蒸発器を通過した気体を、前記収納室内を流動する気体に加えて冷却を行う冷蔵庫である。
【0024】
本態様では、冷蔵庫の既存の機能を兼用して、効率的に収納室の温度調整を行うことができる。更に、食品処理装置により、十分な味覚風味を有し視覚的にも適正な食品を提供できる冷蔵庫を提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、十分な味覚風味を有し視覚的にも適正な食品を提供できる食品処理装置、及びその食品処理装置を備えた冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る食品処理装置の概要を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1に示す食品処理装置の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
【
図3】
図2に示す食品処理装置を備えた冷蔵庫の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
【
図4】本発明の1つの実施形態に係る食品処理装置の制御構成を示すブロック線図である。
【
図5A】食品処理の乾燥工程を模式的に示す側面断面図である。
【
図5B】
図5Aに示す乾燥工程で乾燥した食品を、食品に浸透させる物質が含まれたシートで覆う工程を模式的に示す斜視図である。
【
図5C】
図5Bに示す工程でシートに覆われた食品を、樹脂製の袋の中に収納する工程を模式的に示す斜視図である。
【
図5D】
図5Cで示す工程でシートに覆われた食品が収納された樹脂製の袋を収納室内に配置して、収納室内を所定の温度範囲内に維持する食品処理工程を模式的に示す側面断面図である。
【
図6】試作した食品処理装置を用いて乾燥処理の効果を検証する試験結果を示す写真であって、(a)は乾燥工程を実施しなかった場合を示し、(b)は乾燥工程を実施した場合を示す図(写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。以下の記載では、冷蔵庫を水平面上に載置し、扉がある側を前側、その反対側を後側として説明する。図面では、気体の流れを点線の矢印で模式的に示す。
【0028】
(本発明の1つの実施形態に係る食品処理装置)
図1は、本発明の1つの実施形態に係る食品処理装置2の概要を示す分解斜視図である。
図2は、
図1に示す食品処理装置2の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
図3は、
図2に示す食品処理装置2を備えた冷蔵庫100の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
図4は、本発明の1つの実施形態に係る食品処理装置の制御構成を示すブロック線図である。
【0029】
はじめに、
図1から
図4を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る食品処理装置2の説明を行う。本実施形態では、食品処理装置2が冷蔵庫100に備えられている場合を示す。ただし、これに限られるものではなく、食品処理装置が、冷蔵庫とは個別の装置として存在する場合もあり得る。
【0030】
本実施形態に係る食品処理装置2は、本体部12と、本体部12に固定された気流供給部14と、本体部12に開閉可能な状態で取り付けられた扉16とで構成された収納室10を備える。本体部12は、食品Gを収納する収納領域12Aを有する。気流供給部14は、締結部材Fで本体部12の後側に固定される。扉16は、本体部12の前側に、下側の水平軸を回転中心として回転可能な状態で取り付けられている。
【0031】
本体部12の収納領域12Aには、格子部材40が配置されている。格子部材40は、四隅に取り付けられた脚部40Aにより、収納領域12Aの下面12A1から所定距離Lだけ上方に離間して配置されている。本体部12の前側の扉16を開けて、食品Gを格子部材40上に載置し、扉16を閉じて、後述する乾燥工程や、食品処理工程を行うことができる。
【0032】
気流供給部14の内部には、循環ファン20と、ヒータ22とが配置されている。また、本体部12の収納領域12Aには、温度センサ26と湿度センサ28とが配置されている。気流供給部14の内部と、本体部12の収納領域12Aとは、下側の開口18Aと、上側の開口18Bとで連通している。
図4に示すように、本実施形態に係る食品処理装置2は、温度センサ26や湿度センサ28から信号を受け、循環ファン20やヒータ22をはじめとする各機器を制御する制御部50を備える。
【0033】
このような構成により、扉16が閉じられた状態で循環ファン20が稼働すると、
図2の点線の矢印に示すように、気体は循環ファン20の吐出口から気流供給部14内を下方に流れ、ヒータ22を通過して、下側の開口18Aを介して、収納領域12Aに流入する。収納領域12Aに流入した気体は、収納領域12Aの下側を後側から前側に流れ、前側の扉16の内面に沿って方向を逆転させて、収納領域12Aの上側を前側から後側に流れる。そして、上側の開口18Bを介して、気流供給部14内に戻り、循環ファン20の入側に戻る。これにより、収納室10内を気体が循環するイクルが形成される。
【0034】
循環ファン20としては、プロペラファン、シロッコファンをはじめとする任意のタイプのファンを用いることができ、吐出量としては、1~10L/minを例示できる。
【0035】
格子部材40は、収納領域12Aの下面12A1から距離Lだけ上方に配置されているので、収格子部材40の下側にも気体が流れる。格子状の面部を有する格子部材40上に載置された食品Gは、上面側だけでなく、下面側を流れる気体にも接する。
【0036】
本実施形態に係る食品処理装置2は、収納室10内を流動する気体を加温または冷却する温度調整部を備える。温度調整部を構成するヒータ22により、収納室10(収納領域12A)内を流動する気体を加温することができる。ヒータ22として、任意のタイプの電気ヒータを用いることができる。
【0037】
本実施形態では、収納室10内を流動する気体を冷却する温度調整部として、冷蔵庫100の冷却機構を用いている。つまり、冷蔵庫100の庫内を循環する気体を冷却する蒸発器112を通過した気体を、収納室10内を流動する気体に加えて冷却を行う。
【0038】
本実施形態では、更に、本体部12の収納領域12Aの上側に、食品Gに対して光を照射する光源24が配置されている。
【0039】
<冷蔵庫>
次に、
図3を参照しながら、食品処理装置2を備えた冷蔵庫100の説明を行う。冷蔵庫100の庫内には、上側に冷蔵室104が配置され、下側に冷凍室106が配置されている。冷蔵室104の前側には、冷蔵室104を開閉する扉108Aが配置され、冷凍室106の前側には、冷凍室106を開閉する扉108Bが配置されている。
【0040】
冷凍室106及び冷蔵室104の後方には、仕切板で仕切られた冷却流路110が設けられている。冷却流路110内には、蒸発器112が配置されている。蒸発器112は、冷蔵庫100の冷却回路の一部を構成する。
【0041】
冷却回路は、主に、圧縮機120と、凝縮器と、キャピラリチューブと、蒸発器112とを備える。冷却回路の各構成要素間は、配管によって上記の順で流体的に接続されており、冷却回路内で冷媒が循環することにより、蒸発器112が冷却される。圧縮機120の回転数が可変になっており、圧縮機120の回転数が高くなると、より多くの冷媒が循環して蒸発器112の冷却能力を高めることができる。また、冷却能力が高まった蒸発器112を気体が通過するときは、より多くの霜が蒸発器112に付くので、気体の湿度を下げることができる。
【0042】
冷却流路110内の蒸発器112の上方には、ファン114が配置されている。ファン114により、庫内の空気を流動させることができ、蒸発器112のフィンの間を通過して冷却された気体を、冷却流路110から冷凍室106や冷蔵室104に供給することができる。
【0043】
冷却流路110内のファン114の横側に、冷凍室用ダンパ118が配置されている。冷凍室用ダンパ118が開の状態では、蒸発器112を通過した気体が、冷却流路110から、開口を介して、冷凍室106内に流入する。
【0044】
冷凍室106内に流入した空気は、冷凍室106内を循環して、冷凍室106の下側から冷却流路110へ戻る。冷凍室106内を循環する間に、冷凍室106内に収納された食品を冷却することができる。冷却流路110へ戻った空気は、冷却流路110内を上側に流れて、再び蒸発器112を通過して冷却され、同様な流動サイクルを繰り返す。
【0045】
一方、冷凍室用ダンパ118が閉の状態では、蒸発器112を通過した空気が、冷却流路110から冷凍室106内に流れないようになる。
図3では、冷凍室用ダンパ118が閉の状態を示す。
【0046】
ただし、冷凍室106への気体を流入させるか否かの切り替えは、冷凍室用ダンパ118を用いる場合に限られるものではない。例えば、ファン114の外側を覆う可動式のファンカバーを有する遮蔽装置を用いることもできる。ファンカバーが開の場合には、ファン114から吐出された空気が冷凍室106に流入し、ファンカバーが閉の場合には、ファン114から吐出された空気が冷凍室106に流入しないようにすることができる。
【0047】
また、冷却流路110内のファン114の上側に、冷蔵室用ダンパ116が配置されている。冷蔵室用ダンパ116が開の状態では、蒸発器112を通過した気体が、冷却流路110から、複数の高さ位置に設けられた各吹出口を介して、冷蔵室104内に流入する。
【0048】
冷蔵室104内に流入した空気は、冷蔵室104内を循環して、冷蔵室104の下側の戻り口から戻り流路(図示せず)に流入する。冷蔵室104内を循環する間に、冷蔵室104内に収納された食品を冷却することができる。戻り流路(図示せず)に流入した気体は、戻り流路内を下側に流れて、下側の開口を介して冷却流路110へ戻る。冷却流路110へ戻った空気は、冷却流路110内を上側に流れて、再び蒸発器112を通過して冷却され、同様な流動サイクルを繰り返す。
【0049】
一方、冷蔵室用ダンパ116が閉の状態では、蒸発器112を通過した空気が、冷却流路110から冷蔵室104内に流れないようになる。
【0050】
<制御部>
図4に示すように、本実施形態に係る食品処理装置2の制御部50は、収納室10に備えられた温度センサ26及び湿度センサ28から測定データの信号を受ける。制御部50は、収納室10に備えられた循環ファン20、ヒータ22及び光源24を制御する信号を送信する。また、制御部50は、食品処理装置2の温度調整部として機能する冷蔵庫100の圧縮機120、ファン114、冷蔵室用ダンパ116及び収納室用ダンパ32を制御する信号を送信する。
【0051】
<収納室内を循環する気体の温度調整>
【0052】
冷却流路110には、更に、蒸発器112を通過した気体を収納室10内へ流入させるための収納室用ダンパ32を備える。冷蔵室用ダンパ116が開で、蒸発器112を通過した気体が冷却流路110の上側に流れている状態で、収納室用ダンパ32を開にする。これにより、蒸発器112を通過した気体を、入側ダクト30Aを介して、収納室10の気流供給部14内に供給することができる。
【0053】
循環ファン20が稼働して、収納領域12A及び気流供給部14内で気体が循環している状態で、収納室用ダンパ32を開にすると、蒸発器112を通過した気体が入側ダクト30Aを介して気流供給部14内に流入して、循環する気体に加わる。そして、循環する気体の一部が、出側ダクト30Bを介して冷却流路110へ戻る。冷却流路110へ戻った気体は、冷却流路110内を上側に流れて、再び蒸発器112の入側に戻る。
【0054】
仮に、入側ダクト30Aを介して気流供給部14内に流入した気体の温度が、収納領域12A及び気流供給部14内を循環する気体の温度より低い場合には、循環する気体の温度を下げることができる。
【0055】
本実施形態では、出側ダクト30Bを介して、気流供給部14内の気体を冷却流路110へ戻しているが、冷蔵室104内を循環した気体の戻り流路に繋げて、戻り流路を介して冷却流路110へ戻すこともできる。また、本実施形態では、収納室用ダンパ32が、冷蔵室用ダンパ116の下流側に配置されているが、これに限られるものではない。収納室用ダンパ32を、冷蔵室用ダンパ116の上流側に配置することもできる。その場合には、冷蔵室用ダンパ116の開閉に関わらず、収納室用ダンパ32を開にするとこにより、常に蒸発器112を通過した気体を気流供給部14に供給することができる。
【0056】
制御部50は、循環ファン20を稼働させることにより、収納領域12A及び気流供給部14内で気体を循環させて、収納領域12Aに収納された食品Gに気流を当てることができる。制御部50は、温度センサ26の測定データに基づいて、ヒータ22及び冷蔵庫100の冷却機構から構成される温度調整部を制御することにより、循環する気体の温度を調整することができる。
【0057】
制御部50は、ヒータ22をオンにする制御により、収納領域12A及び気流供給部14内を循環する気体の温度を上げることができる。一方、制御部50は、冷蔵庫100の冷却機構を制御することにより、循環する気体の温度を下げることができる。例えば、圧縮機120を稼働させ、冷蔵室用ダンパ116及び収納室用ダンパ32を開にすることにより、蒸発器112を通過して冷却された気体を、気流供給部14に供給して、収納領域12A及び気流供給部14を循環する気体の温度を下げることができる。
【0058】
このような制御により、循環する気体の温度を、-1℃以上10℃以下の温度範囲にすることができる。後述するように、乾燥工程では、は3℃以上10℃以下の温度範囲に制御し、食品処理工程では、-1℃以上10℃以下の温度範囲に制御する。
【0059】
以上のように、本実施形態では、温度調整部として、収納室10内を流動する気体に冷気を加える冷気供給機構30A,30B,32,112,114,116,120と、収納室10内を流動する気体を加熱するヒータ22と、を備える。これにより、確実に収納室10内の温度を所定の範囲内に維持することができる。
【0060】
<収納室内を循環する気体の湿度調整>
また、制御部50は、収納領域12A内に配置された湿度センサ28の検出データに基づいて、循環する気体の湿度を制御することもできる。後述する乾燥工程のように、循環する気体の湿度を下げたい場合には、圧縮機120を稼働させた状態で、ファン114を稼働させ、冷蔵室用ダンパ116及び収納室用ダンパ32を開にする制御を行う。圧縮器120が稼働した状態で、蒸発器112のフィンの間を気体が通過するとき、気体中の水分が凍結して霜としてフィンに付着する。これにより、湿度が低下した気体を気流供給部14に供給し、収納領域12A及び気流供給部14内を循環する気体の湿度を下げることができる。
【0061】
後述する食品処理工程のように、循環する気体の湿度を乾燥工程のときより上げたい場合には、圧縮機120を稼働させない状態で、ファン114を稼働させ、冷蔵室用ダンパ116及び収納室用ダンパ32を開にする制御を行う。圧縮器120が非稼働の状態で、蒸発器112のフィンの間を気体が通過するとき、フィンについた霜を溶かしてその水分を気体中に戻すことができる。これにより、蒸発器112の通過中に加湿された気体を気流供給部14に供給し、収納領域12A及び気流供給部14内を循環する気体の湿度を上げることができる。
【0062】
本実施形態では、蒸発器112を通過した気体を用いて湿度を調整しているが、これに限られるものではなく、例えば、収納領域12A内に水分を供給する装置を備えることもできる。
【0063】
<光照射>
更に、本実施形態に係る食品処理装置2では、収納領域12Aの上側に、食品Gに対して光を照射する光源24が配置されている。なお、光源24を気流供給部14側に配置して、開口を介して、気流供給部14側から収納領域12A内の食品Gに対して光を照射することもできる。光源24として、LD、LEDをはじめとする任意のタイプの光源を用いることができる。
【0064】
光源24から紫外線域の光や青色光を食品Gすることにより殺菌を行って、収納された食品Gの表面の腐敗菌の増殖を抑えることができる。また、光源24から白色光を食品Gすることにより、天日干しで食品の味覚風味を増すこともできる。なお、「味覚風味」の「味覚」は、人が舌で感じる味であり、「風味」は、嗅覚により得られる香りと、舌が食物に接して得られる感覚とを含むものである。
【0065】
更に、気流供給部14内に紫外線域の光を照射する光源を配置して、収納領域12A及び気流供給部14内を循環する気体を殺菌することもできる。
【0066】
(食品処理の工程)
図5Aは、食品処理の乾燥工程を模式的に示す側面断面図である。
図5Bは、
図5Aに示す乾燥工程で乾燥した食品Gを、食品に浸透させる物質が含まれたシートSで覆う工程を模式的に示す斜視図である。
図5Cは、
図5Bに示す工程でシートSに覆われた食品Gを、樹脂製の袋Pの中に収納する工程を模式的に示す斜視図である。
図5Dは、
図5Cで示す工程でシートSに覆われた食品Gが収納された樹脂製の袋Pを収納室10内に配置して、収納室10内を所定の温度範囲内に維持する食品処理工程を模式的に示す側面断面図である。
【0067】
次に、
図5Aから
図5Dを参照しながら、上記の食品処理装置2を用いて、食品Gに味覚風味を付与する食品処理の各工程について説明を行う。食品処理装置2では、肉、魚、野菜、果物をはじめとする任意の食品を処理することができるが、特にタンパク質を含む肉や魚において有効である。ここでは、食品Gとして肉を用いて、肉に燻液を浸透させて、燻製の味覚風味を付与する場合を例に取って説明する。
【0068】
<乾燥工程>
はじめに、
図5Aに示すような乾燥工程を行う。使用者は、収納室10の扉16を開けて、処理を行う食品Gを、本体部12の収納領域12A内の格子部材40の上に載置し、扉16を閉じる。そして、使用者の操作で乾燥モードを選択すると、制御部50は、乾燥モードを実施するための制御を行う。
【0069】
食品Gの乾燥効果を考慮すると、食品Gの外面に沿って流れる気体の湿度は80%RH未満であることが好ましい。収納室10内を循環している気体の湿度を適正範囲に保つため、制御部50は、湿度センサ28の測定データに基づいてフィードバック制御を行う。
【0070】
具体的には、制御部50は、圧縮機120の稼働状態を制御して、収納室10内を循環している気体の湿度を上げるまたは下げることができる。圧縮機120を強く稼働する場合、蒸発器20により多くの霜が付着して、気体の湿度は低下する。一方、圧縮機120が停止している場合には、蒸発器112付いた霜が溶けて気体中に取り込まれるので、気体の湿度は上昇する。更に、収納室用ダンパ32の開度を調整して、蒸発器112を通過した気体の供給量を調整することによっても、収納室10内を循環している気体の湿度を調整できる。
【0071】
乾燥処理において収納室10内を循環する気体の温度については、高い方が乾燥には適しているが、高すぎると食品Gに表面に付着した細菌の増殖を招く。これらを考慮して、収納室10内を循環する気体の温度を3℃~10℃程度の温度とすることが好ましい。
【0072】
収納室10内を循環する気体の温度を適正範囲に保つため、制御部50は、温度センサ26の測定データに基づいて、フィードバック制御を行う。具体的には、制御部50は、蒸発器112を通過した乾燥した気体が供給されて、収納室10内を循環する気体の温度が低下する場合には、ヒータ22を稼働させて気体を加温する。収納室10内を循環する気体の温度が上限に近づいた時点で、ヒータ22の稼働を停止する制御を行う。
【0073】
上記のように、湿度80%RH未満、温度3℃~10℃の環境下で1~3時間の乾燥処理を行うことにより、食品(肉)Gに含まれるミオグロビンが気体(空気)中の酸素に触れるにつれてオキシミオグロビンになり、鮮やかな赤へ変わる。乾燥処理により、食品Gの表面に薄い酸化皮膜が形成されるので、更なる過剰な酸化を防いで、気体(空気)中の酸素と触れて形成された適正な色を保つことができる。また、乾燥処理により、食品Gの表面の細菌を除いて腐敗を抑制できる。
<食品をシートで覆う工程>
乾燥工程で、食品Gが十分乾燥され、表面に薄い酸化皮膜が形成された後、
図5Bに示すように、燻液に浸されたシートSで食品Gを包む。シートSは、液体を吸い込みやすい繊維状のシートを用いるのが好ましい。繊維は、天然繊維の場合も合成繊維の場合もあり得る。燻液は、サトウキビ、竹、トウモロコシまたは木材を燃焼して発生したガス成分を捕集し、または乾溜して得られた煙を冷却して採取する液状の食品添加物である。
【0074】
なお、食品Gをシートで包むだけでなく、シートを袋状に形成し、形成した袋を燻液に浸した後、食物Gをその袋の中に収める方法も採用できる。何れの場合も、食品GがシートSで覆われた状態となる。
【0075】
<樹脂製の部材に収納する工程>
食品Gがシートで覆われた状態となった後、
図5Cに示すように、シートSで覆われた食品Gを樹脂製の部材Pの中に収納する。本実施形態では、樹脂製の部材Pとして、開口部をシールできるファスナーを有する袋が用いられている。ただし、これに限られるものではなく、樹脂製の密封容器を用いる場合や、樹脂製のシートで包んでシートの外縁をシールテープ等で留めることも可能である。
【0076】
<食品処理工程>
樹脂製の部材Pに収納する工程の後、
図5Dに示すように、使用者は、収納室10の扉16を開けて、シートSで覆われた食品Gを収納した樹脂製の部材Pを格子部材40上に載置し、扉16を閉じる。
このとき、制御部50は、温度センサ26の測定データに基づいて、収納室10内を所定の温度範囲に維持するようにフィードバック制御を行う。
【0077】
具体的には、制御部50は、収納室10内の温度を上げるにはヒータ22を稼働させ、下げるには、収納室用ダンパ32を開にして、蒸発器112を通過した気体を収納室10に供給する。
【0078】
このような制御部50の制御により、収納室10内の温度を-1℃以上10℃以下の範囲に維持するのが好ましく、0℃以上5℃以下の範囲に維持するのがより好ましい。このような温度範囲に維持された収納室10内に燻液に浸された食品(肉)Gを1~2日以上保持することにより、シートSから燻液を食品Gに浸透させることができる。
【0079】
食品Gは、収納領域12Aの下面12A1から所定距離Lだけ離間した格子部材40上に載置されているので、上側だけでなく下側を含めた全面に流れる気体に接する。これにより、食品Gは、全体的に均等に熟成され、十分に燻製の味覚風味が付与される。
【0080】
このように、食品Gに浸透させる物質が含まれたシートSで包まれた食品Gを、-1℃以上10℃以下の温度範囲で保持することにより、確実に、食品Gを腐敗させることなく、シートSに含まれる物質を食品Gに浸透させて、食品Gに十分な味覚風味を付与することができる。また、肉や魚のようなタンパク質を含む食品Gでは、この温度範囲により、食品Gの熟成も促進される。
【0081】
更に、シートSで覆われた食品Gを密封状態で収納する樹脂製の部材Pが、収納室10内に配置されている場合には、食品Gに浸透させる物質の臭いが収納室10内や冷蔵庫100の庫内に充満することがない。これにより、シートSで覆われた食品Gを、問題なく長時間、適正温度で保管することができる。
【0082】
本実施形態では、上記の食品GをシートSで覆う工程及び樹脂製の部材Pに収納する工程を使用者が行っているが、これに限られるものではない。例えば、食品GをシートSで覆う工程及び樹脂製の部材Pに収納する工程を行う装置を備えて、食品処理装置2に組み込むことも考えられる。
【0083】
(食品に浸透させる物質が含まれたシート)
<燻液に浸されたシート>
上記のように、食品Gに浸透させる物質が含まれたシートSとして、燻液に浸されたシートを用いることにより、短時間に容易に食品Gに燻製の味覚風味を付与することができる。食品Gに浸透させる物質が含まれたシートSは、これに限られるものではなく、下記のようなシートSを例示できる。
【0084】
<調味料を含む液体に浸されたシート、調味料の粉末が付けられたシート>
食品Gに浸透させる物質が含まれたシートSとして、調味料を含む液体に浸されたシートS、または調味料の粉末が付けられたシートSを用いることもできる。調味料としては、カレーを含む様々な香辛料、ハーブ等を例示できる。このように、調味料を含む液体に浸されたシートS、または調味料の粉末が付けられたシートSで食品Gを覆うことにより、短時間に容易に食品Gに調味料の味覚風味を付与することができる。
【0085】
<タンパク質分解酵素を含む液体に浸されたシート、タンパク質分解酵素の粉末が付けられたシート>
肉や魚のようなタンパク質を含む食品Gの場合、食品Gに浸透させる物質が含まれたシートSとして、タンパク質分解酵素を含む液体に浸されたシートSやタンパク質分解酵素の粉末が付けられたシートSを用いることもできる。上記のような湿度、温度下で乾燥処理や食品処理を行うことにより、食品Gの熟成が行われる。更に、食品Gを、タンパク質分解酵素を含むシートSで覆うことにより、食品Gにタンパク質分解酵素を浸透させて、食品Gの熟成を促進することができる。
【0086】
(光源を用いた殺菌・食品処理>
上記の食品処理に加えて、光源24で収納室10内に配置された食品Gに光を照射して、殺菌や食品処理を行うこともできる。例えば、光源24が、異なる波長域の光を選別的に出射させることができる場合、乾燥処理において、光源24から紫外線域の光や青色光を食品Gに照射することにより、殺菌を行って、食品Gが腐敗するのを抑制することができる。
【0087】
更に、食品Gが野菜等の場合には、光源24から白色色を食品Gに照射して、天日干しを行うこともできる。天日干しは、特に野菜において有効である。野菜を天日干しにすると、水分が減少するため、グルタミン酸やアスパラギン酸などの旨味を作るアミノ酸が濃縮する。また、天日干しで、野菜に含まれるアミラーゼが活性化して、糖分を作り出す。更に、野菜によっては、干すことで歯触りが変化したり、歯ごたえが出るものもあり、より風味が良くなり良好な味覚が得られる。
【0088】
このように、光源24から紫外線域の光や青色光を食品に照射することにより殺菌を行って、食品Gが腐敗するのを抑制することができ、光源24から白色色を食品Gに照射して、天日干しで食品Gの味覚風味を増すこともできる。
【0089】
(実施例)
図6は、試作した食品処理装置2を用いて乾燥処理の効果を検証する試験結果を示す写真であって、(a)は乾燥工程を実施しなかった場合を示し、(b)は乾燥工程を実施した場合を示す図(写真)である。次に、
図6を参照しながら、試作した食品処理装置2を用いて乾燥処理の効果を検証した結果を説明する。
【0090】
図6の(a)は、乾燥処理を行わない食品(肉)を燻液に浸したシートSで包んで、樹脂製の部材(袋)Pに密封状態で収納し、シートに包まれた食品(肉)を収納した樹脂製の部材(袋)Pを、略5℃の収納室10に7日間保持した後の状態を示す。
【0091】
図6の(b)は、下記の条件で乾燥処理を行い、乾燥処理後の食品(肉)を燻液に浸したシートSで包んで、樹脂製の部材(袋)Pに密封状態で収納し、シートに包まれた食品(肉)を収納した樹脂製の部材(袋)Pを、略5℃の収納室10に7日間保持した後の状態を示す。
乾燥条件
温度:3℃
湿度:約70%RH
時間:3時間
【0092】
図6の(a)に示す乾燥処理を行わない場合には、白黒写真では識別が難しいが、食品(肉)は黒茶色に変色し、腐敗も進んでいる。一方、
図6の(b)に示す乾燥処理を行なった場合には、赤みがかった色合いを維持しており、腐敗も生じていない。このように、乾燥処理を行うか否かで、大きな差異が生じることが実証された。
【0093】
乾燥処理により、食品(肉)を適正な色に発色させ、薄い酸化皮膜を形成させて、過剰な酸化を防いで、適正な色を保てること、及び食品(肉)の表面の細菌を除いて腐敗を抑制できることが実証された。
【0094】
以上のように、上記の実施形態に係る食品処理装置2は、食品Gを収納する収納室10と、収納室内10の気体を流動させる循環ファン20と、収納室10内を流動する気体を加熱または冷却する温度調整部22,30A,30B,32,112,114,116,120と、循環ファン20及び温度調整部を制御する制御部50と、を備え、制御部50が、循環ファン20を稼働させて、収納室10内に配置された食品Gを乾燥させる乾燥処理と、乾燥処理がなされた食品GがシートSで覆われた状態で配置された収納室10を所定の温度範囲内に維持する食品処理工程と、を行うように制御し、シートSに、食品Gに浸透させる物質が含まれている。
【0095】
本実施形態によれば、乾燥処理により、食品Gは空気中の酸素と触れて適正な色となる。食品の表面に薄い酸化皮膜が形成されるので、更なる過剰な酸化を防いで、適正な色を保つことができる。これとともに、表面の細菌を除いて腐敗を抑制できる。更に、食品処理工程において、食品Gに浸透させる物質が含まれたシートSで包まれた食品Gを、適正な温度で保持することにより、食品Gを腐敗させることなく、シートSに含まれる物質を食品Gに浸透させて、食品Gに十分な味覚風味を付与することができる。また、タンパク質を含む食品では、その間に食品Gを熟成させることもできる。
【0096】
このように、本実施形態によれば、十分な味覚風味を有し視覚的にも適正な食品を提供できる食品処理装置を提供することができる
【0097】
また、上記の実施形態に係る食品処理装置を備えた冷蔵庫100では、庫内を循環する気体を冷却する蒸発器112を通過した気体を、収納室10内を流動する気体に加えて冷却を行うことができる。冷蔵庫100の既存の機能を兼用して、効率的に収納室の温度調整を行うことができる。更に、冷蔵庫100に備えられた食品処理装置2により、十分な味覚風味を有し視覚的にも適正な食品Gを提供できる冷蔵庫100を提供することができる。
【0098】
上記の実施形態では、食品処理装置2が冷蔵庫100に備えられているが、これに限られるものではない。食品処理装置が、冷蔵庫とは個別の装置として存在する場合もあり得る。その場合には、温度調整部が、収納室内を循環する気体を加温するヒータに加えて、収納室内を循環する気体を冷却する冷却装置を個別に備える必要がある。冷却装置は、冷媒を用いたものもあり得るし、ペルチェ素子等を用いたものもあり得る。ペルチェ素子を用いた場合には、電流の向きを変えて、加温と冷却とを1台で行う加温冷却装置として用いることもできる。
【0099】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0100】
2 食品処理装置
10 収納室
12 本体部
12A 収納領域
12A1 下面
14 気流供給部
16 扉
18A,18B 開口
20 循環ファン
22 ヒータ
24 光源
26 温度センサ
28 湿度センサ
30A 入側ダクト
30B 出側ダクト
32 収納室用ダンパ
40 格子部材
40A 脚部
100 冷蔵庫
104 冷蔵室
106 冷凍室
108A,108B 扉
110 冷却流路
112 蒸発器
114 ファン
118 冷蔵室用ダンパ
120 圧縮機
G 食品
S シート
P 樹脂製の部材
F 締結部材