(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148363
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 25/00 20060101AFI20241010BHJP
F25D 21/14 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
F25D25/00 E
F25D21/14 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061442
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】星野 仁
(72)【発明者】
【氏名】田代 佳史
(72)【発明者】
【氏名】茂木 秀文
【テーマコード(参考)】
3L048
【Fターム(参考)】
3L048AA01
3L048BA01
3L048BC02
3L048CA01
3L048CB07
3L048CB09
3L048CE06
3L048DA03
3L048DB03
3L048DC02
3L048GA02
(57)【要約】
【課題】 生鮮食品を収納する容器を閉鎖しても、適切に内部を冷却し、適切な態様で内部の水分を除去できる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】 生鮮食品を収納する容器10と、容器10の内部(生鮮食品収納領域)16を閉鎖する蓋部材12と、容器10の後部側壁10Aに取り付けられ、容器10の内部に露出した内面及び容器10の外部に露出した外面を有する、高熱伝導材料からなる板状部材20と、蒸発器60を通過した冷気を板状部材20の外面に向けて吹き出す吹出口50と、を備え、外面に冷気が当てられて冷却された板状部材20の内面からの輻射により、容器10の内部(生鮮食品収納領域)16が冷却されるとともに、板状部材20の内面の結露により容器の内部(生鮮食品収納領域)16の気体から水分が除去され、更に、板状部材20の内面を流下した結露水を容器10の外部へ排出する排出機構を備える冷蔵庫2を提供する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生鮮食品を収納する容器と、
前記容器の内部を閉鎖する蓋部材と、
前記容器の後部側壁に取り付けられ、前記容器の内部に露出した内面及び前記容器の外部に露出した外面を有する、高熱伝導材料からなる板状部材と、
蒸発器を通過した冷気を前記外面に向けて吹き出す吹出口と、
を備え、
前記外面に冷気が当てられて冷却された前記板状部材の前記内面からの輻射により、前記容器の内部が冷却されるとともに、前記内面の結露により前記容器の内部の気体から水分が除去され、
更に、前記内面を流下した結露水を前記容器の外部へ排出する排出機構を備えることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記外面が連続した表面を有し、
前記吹出口から冷気が前記外面と交わる方向に吹き出されることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記板状部材が、前記容器の幅方向の中心から左右略等距離に延在することを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記排出機構が、前記板状部材の下側に配置され、前記内面を流下する結露水が流入するとともに、前記容器の外部にも露出した調湿フィルタを備え、
流入した結露水が前記調湿フィルタ内を前記容器の内部側から外部側に流れて、前記吹出口から吹き出された冷気が当たる前記調湿フィルタの前記容器の外部に位置する領域から蒸発することを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記調湿フィルタは、通気性を有さず、液体の毛細管現象が生じる微少流路を有し、
流入した結露水が、毛細管現象で前記調湿フィルタの中を前記容器の内部側から外部側に流れることを特徴とする請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記排出機構が、前記板状部材の下側に配置されたスロープを有する樋部を備え、
前記スロープの最下点に前記調湿フィルタが配置され、
前記内面を流下した結露水が前記樋部の前記スロープを流れて前記調湿フィルタへ流入することを特徴とする請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記蓋部材が透光性を有する材料で形成され、
前記蓋部材を介して、外部から前記容器の内部を視認可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記容器の後部側壁の上面と前記蓋部材の下面との間にパッキンが弾性変形した状態で配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記容器に、外部と連通した状態及び外部と遮断された状態に切り替え可能なシャッタ機構が備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生鮮食品を収納する容器を備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵室に生鮮食品を収納する容器を備えた冷蔵庫が普及している。このような容器では、通常、冷蔵室内を流れる気体を容器内に流して、内部の冷却している。このため、内部を流れる気体により、容器内に収納された生鮮食品の水分が奪われて、生鮮食品の鮮度が落ちる虞がある。これに対処するため、蓋で容器の内部を閉鎖して、収納された生鮮食品の水分が失われるのを防ぐ冷蔵庫が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
容器を閉鎖した場合、冷蔵室の気体が中に入らないので、内部の温度が上昇する虞がある。そこで特許文献1に記載の容器では、外周からの間接冷却及び熱伝導率の高い背板により、容器の内部を冷却している。また、容器を閉鎖した場合、収納された生鮮食品の水分の放出により、内部の湿度が高くなりすぎる虞がある。そこで特許文献1に記載の容器では、背板の内面を結露させ、背板に設けられた複数の貫通孔により、結露水を外部へ放出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の容器では、背板に多数の貫通孔があるので、背板の外面に向けて気体を当てると、気体が貫通孔を通って容器の内部に侵入する虞がある。このため、特許文献1では、背板の外面と略平行な方向に気体を流している。よって、気体及び背板の外面の間の熱伝達率は小さな値となり、背板による容器の内部の冷却効果は限定的なものとなる。このため、容器の内部を十分に冷却できない虞ある。
【0006】
背板による冷却効果が限定的なので、容器の内部の冷却は、相対的に、背板以外の容器の周囲からの間接冷却に依存する度合いが高くなる。このため、背板以外の容器の内面にも結露が生じる虞がある。よって、容器の内側面や蓋部の下面に結露した水分が、収納された生鮮食品の上に落ちて生鮮食品の鮮度を落とす虞がある。また、容器の内側面や蓋部の下面に結露した水分が容器の底に溜まって、生鮮食品が水腐れを起こす虞もある。
【0007】
従って、本発明の目的は、上記の課題を解決するものであり、生鮮食品を収納する容器を閉鎖しても、適切に内部を冷却し、適切な態様で内部の水分を除去できる冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、
生鮮食品を収納する容器と、
前記容器の内部を閉鎖する蓋部材と、
前記容器の後部側壁に取り付けられ、前記容器の内部に露出した内面及び前記容器の外部に露出した外面を有する、高熱伝導材料からなる板状部材と、
蒸発器を通過した冷気を前記外面に向けて吹き出す吹出口と、
を備え、
前記外面に冷気が当てられて冷却された前記板状部材の前記内面からの輻射により、前記容器の内部が冷却されるとともに、前記内面の結露により前記容器の内部の気体から水分が除去され、
更に、前記内面を流下した結露水を前記容器の外部へ排出する排出機構を備える冷蔵庫である。
【0009】
本態様によれば、生鮮食品を収納する容器内に気体が流れないので、収納された生鮮食品の水分が失われるのを防ぐことができる。吹出口から外面に向けて吹き出された冷気が外面に当たって、板状部材は十分に冷却され、板状部材の内面からの輻射により、容器の内部を十分に冷却することができる。吹出口から吹き出された冷気により板状部材が集中して冷却されるので、板状部材の内面の温度は、容器の他の内面や蓋部材の下面に比べて低くなる。このため、容器の内部の気体に含まれる水分は、板状部材の内面に集中して結露し、容器の他の内面や蓋部材の下面が結露することを抑制できる。板状部材の内面に結露した水分は、重力で内面を流下し、排出機構により容器の外部へ排出される。これにより、収納した生鮮食品からの水分の蒸発で高まった容器の内部の湿度を、適切に低下させることができる。
【0010】
これにより、生鮮食品を収納する容器を閉鎖しても、適切に内部を冷却し、適切な態様で内部の湿度水分を除去できる冷蔵庫を提供することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、
前記外面が連続した表面を有し、
前記吹出口から冷気が前記外面と交わる方向に吹き出される冷蔵庫である。
【0012】
本態様によれば、板状部材の外面が連続した表面を有しているので、吹出口から冷気が外面と交わる方向に吹き出されて外面に当たったとしても、冷気が容器の内部に流入することがない。よって、冷気を板状部材の外面に向けて強く当てることが可能であり、冷気及び板状部材の外面の間で高い熱伝達率が得られ、板状部材を効果的に冷却することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、
前記板状部材が、前記容器の幅方向の中心から左右略等距離に延在する冷蔵庫である。
【0014】
本態様によれば、板状部材が、容器の幅方向の中心から左右略等距離に延在しているので、輻射冷却で、容器の内部を一様に冷却することができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1から第3の何れかの態様において、
前記排出機構が、前記板状部材の下側に配置され、前記内面を流下する結露水が流入するとともに、前記容器の外部にも露出した調湿フィルタを備え、
流入した結露水が前記調湿フィルタ内を前記容器の内部側から外部側に流れて、前記吹出口から吹き出された冷気が当たる前記調湿フィルタの前記容器の外部に位置する領域から蒸発する冷蔵庫である。
【0016】
本態様によれば、排出機構が調湿フィルタを備え、調湿フィルタにより、板状部材に結露した水分を、容器の外部に移動させて外部に蒸発させることができる。これにより、板状部材に結露した水分が容器の底にたまって、収納された生鮮食品が水腐れを起こす虞もない。よって、調湿フィルタにより、容器の内部の湿度を確実に低下させることができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、
前記調湿フィルタは、通気性を有さず、液体の毛細管現象が生じる微少流路を有し、
流入した結露水が、毛細管現象で前記調湿フィルタの中を前記容器の内部側から外部側に流れる冷蔵庫である。
【0018】
本態様によれば、調湿フィルタは通気性を有さないので、容器の中に冷気が流入するのを防ぐことができる。調湿フィルタに流入した結露水は、毛細管現象で調湿フィルタの中を容器の内部側から外部側に流れる。よって、外部で冷気に当たって蒸発する水分量に応じて、確実に結露水を容器の内部から外部へ排出することができる。
【0019】
本発明の第6の態様は、第4または第5の態様において、
前記排出機構が、前記板状部材の下側に配置されたスロープを有する樋部を備え、
前記スロープの最下点に前記調湿フィルタが配置され、
前記内面を流下した結露水が前記樋部の前記スロープを流れて前記調湿フィルタへ流入する冷蔵庫である。
【0020】
本態様によれば、排出機構がスロープを有する樋部を備え、樋部により、板状部材の内面の全ての領域で結露した水分を調湿フィルタへ流すことができる。よって、板状部材に結露した水分が容器の底にたまって、収納された生鮮食品が水腐れを起こす虞もない。こにより、容器の内部の湿度を確実に低下させることができる。
【0021】
本発明の第7の態様は、第1から第6の何れかの態様において、
前記蓋部材が透光性を有する材料で形成され、
前記蓋部材を介して、外部から前記容器の内部を視認可能である冷蔵庫である。
【0022】
本態様によれば、板状部材の内面に集中して結露が生じるので、蓋部材の下面が結露するのを抑制できる。このため、蓋部材を介して、確実に外部から容器の内部を視認することができる。
【0023】
本発明の第8の態様は、第1から第7の何れかの態様において、
前記容器の後部側壁の上面と前記蓋部材の下面との間にパッキンが弾性変形した状態で配置されている冷蔵庫である。
【0024】
本態様によれば、容器の後部側壁の上面と蓋部材の下面との間にパッキンが弾性変形した状態で配置されているので、吹出口から板状部材に向けて冷気が吹き出されても、確実にシールして、容器の内部に冷気が流入するのを防ぐことができる。
【0025】
本発明の9の態様は、第1から第8の何れかの態様において、
前記容器に、外部と連通した状態及び外部と遮断された状態に切り替え可能なシャッタ機構が備えられている冷蔵庫である。
【0026】
本態様によれば、収納した生鮮食品の種類により、容器の内部の湿度が非常に高くなったとき、シャッタ機構を開にすることにより、容器の内部の過剰な水分を外部へ放出することができる。その後、速やかにシャッタ機構を閉にすることにより、容器の内部の湿度を適度に保持することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明では、生鮮食品を収納する容器を閉鎖しても、適切に内部を冷却し、適切な態様で内部の水分を除去できる冷蔵庫を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫の生鮮食品を収納する容器を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1に示す容器(組立後)に蓋部材が取り付けられるところを示す斜視図である。
【
図3】蓋部材が取り付けられていない状態の容器及びその周囲を上方から見た平面図である。
【
図4】蓋部材が取り付けられた状態の容器及びその周囲を上方から見た平面図である。
【
図6】容器に取り付けられた板状部材、樋部及び調湿フィルタを模式的に示す斜視図である。
【
図7A】容器に取り付けられたシャッタ機構を示す分解斜視図である。
【
図7B】
図7Aに示すシャッタ機構(組立後)であって、シャッタが閉の状態を示す側面図である。
【
図7C】
図7Aに示すシャッタ機構(組立後)であって、シャッタが開の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。以下の記載では、冷蔵庫が水平面上に載置され、扉4A,6A(
図5参照)側が前側として、上下、前後を記載してある。
【0030】
(本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫)
はじめに、
図1から
図6を参照しながら、生鮮食品を収納する容器10を備えた本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫2の説明を行う。
図1は、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫2の生鮮食品を収納する容器10を示す分解斜視図である。
図2は、
図1に示す容器(組立後)10に蓋部材12が取り付けられるところを示す斜視図である。
図3は、蓋部材12が取り付けられていない状態の容器10及びその周囲を上方から見た平面図である。
図4は、蓋部材12が取り付けられた状態の容器10及びその周囲を上方から見た平面図である。
図5は、
図4の断面B-Bを示す側面断面図である。
図6は、容器10に取り付けられた板状部材20、樋部32及び調湿フィルタ30を模式的に示す斜視図である。
【0031】
図5に示すように、本実施形態に係る冷蔵庫2は、断熱材で囲まれた内箱の上側の領域に冷蔵室4が配置され、下側の領域に冷凍室6が配置されている。仕切板を介して、冷蔵室4及び冷凍室6の後ろ側(図で右側)に、冷却流路8が配置されている。冷蔵室4及び冷凍室6の前側(図で左側)には、それぞれ回転自在に取り付けられた扉4A,6Aが備えられている。
【0032】
仕切板で仕切られた冷却流路8には、蒸発器60及び冷却ファン62が配置されている。蒸発器60は、冷媒が流れる冷却サイクルの一部を構成する。冷却サイクルでは、機械室に配置された圧縮機で吐出された冷媒が、凝縮器、キャピラリチューブ等を流れて蒸発器60に流入し、蒸発器60の熱交換チューブを流れた溶媒が、再び圧縮機の吸込側に戻るようになっている。この冷媒の循環により蒸発器60が冷却される。
【0033】
図5の点線の矢印で模式的に示すように、冷却ファン62が稼働することにより、冷却流路8内の気体が下から上の方向に流動し、蒸発器60を通過する。気体は、蒸発器60の熱交換チューブの間を通過するときに冷却される。蒸発器60を通過した冷気は、冷蔵室ダンパ64が開の場合には、冷却流路8の上側に流れ、開口を介して、冷蔵室4内に流入する。冷蔵室4内に流入した気体は、冷蔵室4内を流れて、戻りダクトを介して、再び下側の開口から冷却流路8内に流入し、蒸発器60の下側に戻る。冷蔵室ダンパ64が閉の場合には、仮に冷却ファン62が稼働していたとしても、蒸発器60を通過した冷気が冷蔵室4内に流入しないようになる。
【0034】
同様に、蒸発器60を通過した冷気は、冷凍室ダンパ66が開の場合には、開口を介して冷凍室6内に流入し、冷凍室6内を流れて、再び下側の開口から冷却流路8内に流入し、蒸発器60の下側に戻る。冷凍室ダンパ66が閉の場合には、仮に冷却ファン62が稼働していたとしても、蒸発器60を通過した冷気が冷凍室6内に流入しないようになる。
【0035】
後述するように、冷蔵室ダンパ66の上側の冷却流路8には、吹出口50が設けられている。冷却ファン62が稼働し、冷蔵室ダンパ64が開の状態では、蒸発器60を通過した冷気が分岐して、吹出口50から容器10の後部側壁10Aに取り付けられた板状部材20に向けて吹き出される。
【0036】
<容器>
本実施形態に係る生鮮食品を収納する容器10は、冷蔵室4の下側に配置されている。容器10は、左右両側で冷蔵庫2の内箱に設けられたレールに支持され、前後に移動可能になった引出式容器である。容器10の内部は、シャッタ機構40を構成する仕切板42で前後に仕切られている。仕切板42の後側の領域が生鮮食品収納領域16となっており、仕切板42の前側の領域が一般冷蔵領域18となっている。生鮮食品収納領域16の上側には、蓋部材12が載置され、生鮮食品収納領域16は、容器10の内面及び蓋部材12の下面で囲まれた閉鎖空間となる。一般冷蔵領域18の上側には蓋部材12は存在せず、上方が冷蔵室4内に開口した状態になっている。一般冷蔵領域18には、例えば、飲料水の容器を収納することができる。
【0037】
蓋部材12は、容器10に対して前後にスライド可能な状態で載置されている。これにより、引出式の容器10を冷蔵庫2の前側に引き出したとき、生鮮食品収納領域16の上部に蓋部材12が存在しない、上部が開口した状態を形成できる。これにより、生鮮食品収納領域16に生鮮食品を収納する、または生鮮食品収納領域16から生鮮食品を取り出すことができる。容器10,蓋部材12及び仕切板42は、樹脂材料で形成するのが好ましい。
【0038】
容器10の後部側壁10Aの上面には、パッキン14が取り付けられている。
図5に示すように、蓋部材12が生鮮食品収納領域16の上側に位置するとき、仕切板42の上面と蓋部材12の下面とが当接し、容器10の左右の側壁の上面と蓋部材12の下面とが当接する。更に、容器10の後部側壁10Aの上面(矢印C参照)と蓋部材12の下面(矢印D参照)との間にパッキン14が弾性変形した状態で配置されている。パッキン14の上に蓋部材12が存在しない場合には、弾性材料で形成されたパッキン14は初期状態に戻り、蓋部材12がスライドして、パッキン14の上に蓋部材12が位置する場合には、パッキン14が弾性変形してシール状態を形成する。パッキン14は、蓋部材12がスライドしてパッキン14の上に移動してくるとき、柔軟に追従してシール状態を形成できるように形成されている。これにより、後部側壁10Aの外面に気体が当てられたとしても、容器10の中に気体が流入するのを防ぐことができる。
【0039】
<冷却・調湿機構>
次に、容器10に備えられた冷却・調湿機構の説明を行う。
図1に示すように、容器10の後部側壁10Aには、開口10Bを有する。開口10Bには、フレーム34が取り付けられ、フレーム34には、高熱伝導材料からなる板状部材20が取り付けられる。板状部材20を形成する高熱伝導材料として、アルミニウム、アルミ合金を例示できる。ただし、これに限られるものではなく、銅をはじめとするその他の金属材料や、高熱伝導率セラミックを用いることもできる。板状部材20は、略平面の内外面を有するが、多少湾曲している場合もあり得る。板状部材20は、容器10の幅方向の中心から左右略等距離に延在するように取り付けられる。
【0040】
図1に示すように、フレーム34の下側には、左右両側が高く中央側が低いスロープ32Aを有する樋部32が形成されている。左右のスロープ32Aの間の中央の領域(矢印A参照)には、調湿フィルタ30が取り付けられている。主に調湿フィルタ30及び樋部32により、板状部材20の内面を流下した結露水を容器10の外部へ排出する排出機構が構成されている。樋部32が形成されたフレーム34も樹脂材料で形成するのが好ましい。フレーム34,板状部材20及び調湿フィルタ30により、後部側壁10Aの開口10Bは閉鎖された状態になる。更に、フレーム34には、板状部材30の前方にスリット22Aを有する内面板22が、板状部材30から離間して取り付けられる。内面板22も樹脂材料で形成するのが好ましい。
【0041】
これらの部材を組み立てた状態を、
図6に模式的に示す。スロープ32Aを有する樋部32は、板状部材20で隔たれた容器10の内部に配置されている。調湿フィルタ30は、容器10の内部から外部に貫通して配置されている。調湿フィルタ30は、通気性を有さず、液体の毛細管現象が生じる微少流路を有すように形成されている。本実施形態では、調湿フィルタ30として、バインダで結合され繊維状活性炭からなるフィルタが採用されている。ただしこれに限られるものではなく、通気性を有さず、液体の毛細管現象が生じる微少流路を有する材料あれば、その他の任意の材料を採用することができる。
【0042】
(生鮮食品収納領域の冷却)
従来の冷蔵庫では、生鮮食品収納領域の中に冷蔵室内を循環した気体を流して、生鮮食品収納領域を冷却していた。この気流により、生鮮食品収納領域内に収納された生鮮食品から水分が奪われて、鮮度を低下させる問題が生じていた。また、冷蔵室内を循環した気体の温度は比較的高いので、生鮮食品収納領域内の温度が7~8℃以上となり、生鮮食品の呼吸量が増えて鮮度が低下する虞もあった。
【0043】
一方、本実施形態では、容器10の生鮮食品収納領域16は蓋部材12で覆われ、冷蔵室4内の空間に対して閉鎖状態になっている。このため、生鮮食品収納領域16に収納された生鮮食品から水分が奪われるのを防いで、鮮度を保持することが期待できる。
【0044】
生鮮食品収納領域16は、冷蔵室4の気体が流入せず、樹脂材料で形成された容器10及び蓋部材12で囲まれている。よって、周囲からの間接冷却だけでは、生鮮食品収納領域16内の温度が上昇する虞がある。このため、本実施形態では、容器10の後部側壁10Aに取り付けられた板状部材20を用いて冷却を行う。
【0045】
図5の点線矢印で模式的に示すように、冷却ファン62が稼働し、冷蔵室ダンパ64が開のとき、蒸発器60を通過した冷気が、吹出口50を介して板状部材20の外面に吹き付けられる。吹出口50から冷気が吹き出される方向は、板状部材20の外面に沿った方向でなく、板状部材20の外面と交わる方向である。これにより、冷気と板状部材20の外面との間の熱伝達率が高まり、板状部材20を強く冷却することができる。
【0046】
より高い熱伝達率を得ることを考慮すると、板状部材20の外面に対して垂直に近い方向から冷気を当てるのが好ましい。更に詳細に述べれば、吹出口50からの冷気の吹出方向は、板状部材20の外面の垂線(平面の場合)または法線(湾曲面の場合)に対して、0度以上30度以下の範囲の角度をなすことが好ましく、0度以上20度以下の範囲の角度をなすことがより好ましい。
【0047】
板状部材20には貫通孔等は設けられておらず、板状部材20の外面は連続した表面を有している。このため、吹出口50から冷気が板状部材20の外面と交わる方向に吹き出されて外面に当たったとしても、冷気が容器10の内部に流入することがない。よって、冷気を板状部材20の外面に向けて強く当てることが可能であり、冷気及び板状部材20の外面の間で高い熱伝達率が得られ、板状部材20を効果的に冷却することができる。
【0048】
また、容器10の後部側壁10Aの上面と蓋部材12の下面との間にパッキン14が弾性変形した状態で配置されているので、吹出口50から板状部材20に向けて冷気が吹き出されても、確実にシールして、容器10の内部に冷気が流入するのを防ぐことができる。
【0049】
このように、外面に冷気が当てられて冷却された板状部材20の内面からの輻射により、容器10の内部(生鮮食品収納領域)16を効果的に冷却することができる。特に、板状部材20が、容器10の幅方向の中心から左右略等距離に延在しているので、輻射冷却で、容器10の内部(生鮮食品収納領域)16を一様に冷却することができる。
【0050】
更に詳細に述べれば、より効果的な冷却性能を得るため、板状部材20の内面の面積が、容器10の後部側壁10Aの内面の面積に対して、30%以上となるのが好ましく、40%以上となるのがより好ましく、50%以上となるのが更に好ましい。生鮮食品収納領域16が閉鎖状態になっているにも関わらず、板状部材20を用いた冷却により、生鮮食品収納領域16を、従来よりも低い3℃~4℃程度の温度まで冷やすことができる。
【0051】
(生鮮食品収納領域の調湿)
容器10の内部(生鮮食品収納領域)16は、冷蔵室4内の空間に対して閉鎖状態になっているので、収納された生鮮食品から水分が奪われるのを防ぐことができる。一方、収納された生鮮食品から継続して水分が蒸発するので、生鮮食品収納領域16内の湿度が高くなりすぎる問題が生じる。これに対処するため、本実施形態では、容器10の後部側壁10Aに取り付けられた板状部材20を、冷却だけでなく除湿にも用いる。
【0052】
上記のように、板状部材20は蒸発器60を通過した冷気が当てられて冷却されるので、熱伝導率の低い樹脂製の容器10内の他の領域に比べて温度が低くなっている。このため、板状部材20の内面に集中して結露が生じ、容器10の他の内面や蓋部材12の下面では、あまり結露は生じない。板状部材20の内面に結露した水分を、適切に容器10から排出できれば、生鮮食品収納領域16内を除湿して、適度な湿度に保つことができる。本実施形態では、重力で板状部材20の内面を流下した結露水を、容器10の外部へ排出する排出機構を備える。排出機構は、下記に示すように、主に調湿フィルタ30と樋部32とから構成される。
【0053】
<排出機構>
排出機構は、板状部材20の下側に配置され、スロープ32Aを有する樋部32を備え、スロープ32Aの最下点に調湿フィルタ30が配置されている。よって、
図6の点線の矢印で模式的に示すように、板状部材20の内面に結露した結露水は、重力で板状部材20の内面を流下し、下部の開口20A(
図1参照)を介して、樋部32へ流入する。樋部32へ流入した結露水は、樋部32のスロープ32Aを流れて調湿フィルタ30へ流入する。
【0054】
このように、スロープ32Aを有する樋部32により、板状部材20の内面の全ての領域で結露した水分を調湿フィルタ30へ流すことができる。よって、板状部材20に結露した水分が容器10の底にたまって、収納された生鮮食品が水腐れを起こす虞もない。これにより、容器10の内部(生鮮食品収納領域)16の湿度を確実に低下させることができる。
【0055】
上記のように、調湿フィルタ30は、通気性を有さず、液体の毛細管現象が生じる微少流路を有する。よって、
図6の点線の矢印で模式的に示すように、樋部32のスロープ32A流入した結露水は、毛細管現象で調湿フィルタの中を容器10の内部側から外部側に流れる。そして、調湿フィルタ30の容器10の外部に露出した領域において、吹出口50から吹き出された冷気により蒸発する。
【0056】
このように、本実施形態では、調湿フィルタ30は通気性を有さないので、容器10の中に冷気が流入するのを防ぐことができる。調湿フィルタ30に流入した結露水は、毛細管現象で調湿フィルタ30の中を容器10の内部側から外部側に流れる。よって、外部で冷気に当たって蒸発する水分量に応じて、確実に結露水を容器10の内部から外部へ排出することができる。
【0057】
以上のように、本実施形態では、板状部材20の下側に配置され、板状部材20の内面を流下する結露水が流入するとともに、容器10の外部にも露出した調湿フィルタ30を備え、流入した結露水記調湿フィルタ30の中を容器10の内部側から外部側に流れて、吹出口50から吹き出された冷気が当たる調湿フィルタ30の容器10の外部に位置する領域から蒸発する。
【0058】
本実施形態では、調湿フィルタ30により、板状部材20に結露した水分を、容器10の外部に移動させて外部に蒸発させることができる。これにより、板状部材20に結露した水分が容器10の底にたまって、収納された生鮮食品が水腐れを起こす虞もない。よって、調湿フィルタ30により、容器10の内部の湿度を確実に低下させることができる。
【0059】
上記のような板状部材20及び排出機構の組み合わせにより、容器10の内部(生鮮食品収納領域)16の湿度を、30%~60%程度の適正範囲に保つことができる。
【0060】
また、本実施形態では、蓋部材12が透光性を有する材料で形成されている。上記のように、他の領域よりも温度が低下した板状部材20に集中して結露が生じるので、蓋部材12の下面が結露するのを抑制できる。このため、蓋部材12を介して、外部から容器10の内部(生鮮食品収納領域)16を視認することができる。
【0061】
なお、収納した生鮮食品が温度の低下した板状部材20に触れると、生鮮食品が凍結する虞がある。生鮮食品が凍結すると、中に含まれる水分が膨張して繊維にダメージを与え、生鮮食品の鮮度を低下させることになる。凍結した生鮮食品を解凍すると、水分が流出する。本実施形態では、板状部材20の前側に、スリット22Aを有する内面板22が離間して配置されている。生鮮食品収納領域16に収納された生鮮食品は、内面板22にガードされて、板状部材20に触れることはない。よって、生鮮食品の凍結による鮮度低下を防ぐことができる。なお、スリット22Aには、板状部材20の内面からの輻射による十分な冷却が可能な大きさの開口が設けられている。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る冷蔵庫2では、生鮮食品を収納する容器10と、容器10の内部(生鮮食品収納領域)16を閉鎖する蓋部材12と、容器10の後部側壁10Aに取り付けられ、容器10の内部に露出した内面及び容器10の外部に露出した外面を有する、高熱伝導材料からなる板状部材20と、蒸発器60を通過した冷気を板状部材20の外面に向けて吹き出す吹出口50と、を備え、外面に冷気が当てられて冷却された板状部材20の内面からの輻射により、容器10の内部(生鮮食品収納領域)16が冷却されるとともに、板状部材20の内面の結露により容器の内部(生鮮食品収納領域)16の気体から水分が除去され、更に、板状部材20の内面を流下した結露水を容器10の外部へ排出する排出機構を備える。
【0063】
本実施形態によれば、生鮮食品を収納する容器10の中に気体が流れないので、収納された生鮮食品の水分が失われるのを防ぐことができる。吹出口50から板状部材20の外面に向けて吹き出された冷気が外面に当たって、板状部材20は十分に冷却され、板状部材20の内面からの輻射により、容器10の内部を十分に冷却することができる。吹出口50から吹き出された冷気により板状部材20が集中して冷却されるので、板状部材20の内面の温度は、容器10の他の内面や蓋部材12の下面に比べて低くなる。このため、容器10の内部の気体に含まれる水分は、板状部材20の内面に集中して結露し、容器10の他の内面や蓋部材の下面が結露することを抑制できる。板状部材20の内面に結露した水分は、重力で内面を流下し、排出機構により容器10の外部へ排出される。これにより、収納した生鮮食品からの水分の蒸発で高まった容器10の内部の湿度を、適切に低下させることができる。
【0064】
これにより、生鮮食品を収納する容器10を閉鎖しても、適切に内部を冷却し、適切な態様で内部の湿度水分を除去できる冷蔵庫2を提供することができる。
【0065】
(シャッタ機構)
次に、
図7Aから
図7Cを参照しながら、容器10に取り付けられたシャッタ機構40の説明を行う。
図7Aは、容器10に取り付けられたシャッタ機構40を示す分解斜視図である。
図7Bは、
図7Aに示すシャッタ機構(組立後)40であって、シャッタが閉の状態を示す側面図である。
図7Cは、
図7Aに示すシャッタ機構(組立後)40であって、シャッタが開の状態を示す側面図である。
【0066】
生鮮食品収納領域16及び一般冷蔵領域18の間を仕切る仕切板42には、スリット42Aが形成されている。また、仕切板42には、可動部44が左右に移動可能な状態で取り付けられている。可動部44を左右に動かすことにより、
図7Bに示すような、可動部44でスリット42Aが覆われた閉鎖状態と、スリット42Aが露出した通気状態とに切り替えることができる。
【0067】
以上のように、本実施形態では、容器10に、外部と連通した状態及び外部と遮断された状態に切り替え可能なシャッタ機構40が備えられている。
【0068】
基本的に、板状部材20及び調湿フィルタ30により除湿を行って、生鮮食品収納領域16内の湿度を適正に保つことができる。しかし、収納した生鮮食品の種類により、容器10の内部(生鮮食品収納領域)16の湿度が非常に高くなる場合があり得る。その場合には、シャッタ機構40を開にすることにより、容器10の内部(生鮮食品収納領域)16の過剰な水分を外部へ放出することができる。その後、速やかにシャッタ機構40を閉にすることにより、容器10の内部(生鮮食品収納領域)16の湿度を適度に保持することができる。
【0069】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0070】
2 冷蔵庫
4 冷蔵室
4A 扉
6 冷凍室
6A 扉
8 冷却流路
10 容器
10A 後部側壁
10B 開口
12 蓋部
14 パッキン
16 生鮮食品収納領域
18 一般冷蔵領域
20 板状部材
20A 開口
22 内面板
22A スリット
30 調湿フィルタ
32 樋部
32A スロープ
34 フレーム
40 シャッタ機構
42 仕切板
42A スリット
44 可動部
50 吹出口
60 蒸発器
62 冷却ファン
64 冷蔵室ダンパ
66 冷凍室ダンパ