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  • 特開-発泡粒子及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148365
(43)【公開日】2024-10-18
(54)【発明の名称】発泡粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
C08J9/16 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061453
(22)【出願日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北原 泰三
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA24
4F074AA24A
4F074AA98
4F074AB03
4F074AB05
4F074AC02
4F074AG06
4F074BA32
4F074BC12
4F074CA34
4F074CA39
4F074CA49
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA12
4F074DA33
4F074DA34
(57)【要約】
【課題】ポストコンシューマ材料に由来する樹脂成分を有効に活用できると共に、型内成形性が良好であり、圧縮強度に優れた発泡粒子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】発泡粒子の製造方法においては、ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させる。樹脂粒子は、ポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aを含み、融点TmAが160℃以上であり、曲げ弾性率MAが800~1200MPaであるポリプロピレン系樹脂組成物Aと、融点TmBが160℃未満であり、曲げ弾性率MBが900~1400MPaであるポリプロピレン系樹脂Bとの溶融混合物から構成されている。曲げ弾性率の比MB/MAが1以上である。樹脂粒子におけるポリプロピレン系樹脂組成物Aとポリプロピレン系樹脂Bとの質量比が、A:B=10:90~70:30である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得る発泡粒子の製造方法であって、
前記樹脂粒子は、ポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aを含み、融点TmAが160℃以上であり、曲げ弾性率MAが800MPa以上1200MPa以下であるポリプロピレン系樹脂組成物Aと、融点TmBが160℃未満であり、曲げ弾性率MBが900MPa以上1400MPa以下であるポリプロピレン系樹脂Bとの溶融混合物から構成されており、
前記曲げ弾性率MAに対する前記曲げ弾性率MBの比MB/MAが1以上であり、
前記樹脂粒子における前記ポリプロピレン系樹脂組成物Aと前記ポリプロピレン系樹脂Bとの質量比が、ポリプロピレン系樹脂組成物A:ポリプロピレン系樹脂B=10:90~70:30である、発泡粒子の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂粒子が、融点Tmrが150℃以上162℃以下であり、曲げ弾性率Mrが900MPa以上1300MPa以下であるポリプロピレン系樹脂組成物rから構成されている、請求項1に記載の発泡粒子の製造方法。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂組成物Aの融点TmAと前記ポリプロピレン系樹脂Bの融点TmBとの差TmA-TmBが5℃以上20℃以下である、請求項1または2に記載の発泡粒子の製造方法。
【請求項4】
温度230℃、荷重2.16kgで測定した場合における前記ポリプロピレン系樹脂組成物Aのメルトマスフローレイトが10g/10分以上40g/10分以下である、請求項1または2に記載の発泡粒子の製造方法。
【請求項5】
前記ポリプロピレン系樹脂組成物Aは、ポリプロピレン系樹脂をマトリックスとし、エチレンプロピレン系ラバーを含むゴム状体をドメインとするモルフォロジーを示す、請求項1または2に記載の発泡粒子の製造方法。
【請求項6】
前記発泡粒子の嵩密度が10kg/m3以上200kg/m3以下である、請求項1または2に記載の発泡粒子の製造方法。
【請求項7】
前記発泡粒子の独立気泡率が90%以上である、請求項1または2に記載の発泡粒子の製造方法。
【請求項8】
ポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aを含み、融点TmRが150℃以上162℃以下であり、曲げ弾性率MRが900MPa以上1300MPa以下であるポリプロピレン系樹脂組成物Rから構成されている、発泡粒子。
【請求項9】
前記発泡粒子の嵩密度が10kg/m3以上200kg/m3以下である、請求項8に記載の発泡粒子。
【請求項10】
前記発泡粒子の独立気泡率が90%以上である、請求項8または9に記載の発泡粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、軽量で、緩衝性、剛性等に優れるため、梱包材、容器、緩衝材等の種々の用途に用いられている。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、例えば、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を成形型内に充填し、スチームで加熱する型内成形法と呼ばれる方法により製造される。型内成形法においては、成形型内にスチームを供給して発泡粒子を加熱すると、発泡粒子が軟化すると共に、発泡粒子が二次発泡する。これにより、成形型内の発泡粒子が相互に融着し、成形型のキャビティの形状に対応した所望の形状を有する成形体を得ることができる。
【0003】
ところで、近年、環境負荷低減の観点から、ポストコンシューマ材料に注目が集まっている。ポリプロピレン系樹脂を含むポストコンシューマ材料としては、例えば、使用済みの家電製品及び自動車等から回収されたポリプロピレン系樹脂部材や、特許文献1に記載されているような自動車の廃棄の過程で生じる自動車破砕残渣(Automobile Shredder Residue、以下「ASR」という。)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-122299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ポストコンシューマ材料に含まれるポリプロピレン系樹脂を発泡粒子の原料として用いる場合、発泡粒子を型内成形する際の成形性や、得られる発泡粒子成形体の圧縮強度に改善の余地があった。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、ポストコンシューマ材料に由来する樹脂成分を有効に活用できると共に、型内成形性が良好であり、圧縮強度に優れた発泡粒子成形体を得ることができる発泡粒子およびその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、以下の〔1〕~〔7〕に係る発泡粒子の製造方法にある。
〔1〕ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得る発泡粒子の製造方法であって、
前記樹脂粒子は、ポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aを含み、融点TmAが160℃以上であり、曲げ弾性率MAが800MPa以上1200MPa以下であるポリプロピレン系樹脂組成物Aと、融点TmBが160℃未満であり、曲げ弾性率MBが900MPa以上1400MPa以下であるポリプロピレン系樹脂Bとの溶融混合物から構成されており、
前記曲げ弾性率MAに対する前記曲げ弾性率MBの比MB/MAが1以上であり、
前記樹脂粒子における前記ポリプロピレン系樹脂組成物Aと前記ポリプロピレン系樹脂Bとの質量比が、ポリプロピレン系樹脂組成物A:ポリプロピレン系樹脂B=10:90~70:30である、発泡粒子の製造方法。
【0008】
〔2〕前記樹脂粒子が、融点Tmrが150℃以上162℃以下であり、曲げ弾性率Mrが900MPa以上1300MPa以下であるポリプロピレン系樹脂組成物rから構成されている、〔1〕に記載の発泡粒子の製造方法。
〔3〕前記ポリプロピレン系樹脂組成物Aの融点TmAと前記ポリプロピレン系樹脂Bの融点TmBとの差TmA-TmBが5℃以上20℃以下である、〔1〕または〔2〕に記載の発泡粒子の製造方法。
〔4〕温度230℃、荷重2.16kgで測定した場合における前記ポリプロピレン系樹脂組成物Aのメルトマスフローレイトが10g/10分以上40g/10分以下である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の発泡粒子の製造方法。
【0009】
〔5〕前記ポリプロピレン系樹脂組成物Aは、ポリプロピレン系樹脂をマトリックスとし、エチレンプロピレン系ラバーを含むゴム状体をドメインとするモルフォロジーを示す、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の発泡粒子の製造方法。
〔6〕前記発泡粒子の嵩密度が10kg/m3以上200kg/m3以下である、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の発泡粒子の製造方法。
〔7〕前記発泡粒子の独立気泡率が90%以上である、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の発泡粒子の製造方法。
【0010】
本発明の他の態様は、以下の〔8〕~〔10〕に係る発泡粒子にある。
【0011】
〔8〕ポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aを含み、融点TmRが150℃以上162℃以下であり、曲げ弾性率MRが900MPa以上1300MPa以下であるポリプロピレン系樹脂組成物Rから構成されている、発泡粒子。
〔9〕前記発泡粒子の嵩密度が10kg/m3以上200kg/m3以下である、〔8〕に記載の発泡粒子。
〔10〕前記発泡粒子の独立気泡率が90%以上である、〔8〕または〔9〕に記載の発泡粒子。
【発明の効果】
【0012】
前記の態様によれば、ポストコンシューマ材料に由来する樹脂成分を有効に活用できると共に、型内成形性が良好であり、圧縮強度に優れた発泡粒子成形体を得ることができる発泡粒子およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、高温ピークの融解熱量の算出方法を示す説明図である。
図2図2は、実施例におけるポリプロピレン系樹脂組成物A1の断面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発泡粒子の製造方法)
〔ポリプロピレン系樹脂粒子〕
前記発泡粒子の製造方法においては、まず、ポリプロピレン系樹脂組成物からなるポリプロピレン系樹脂粒子を準備する。前記樹脂粒子は、ポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aを含み、融点TmAが160℃以上であり、曲げ弾性率MAが800MPa以上1200MPa以下であるポリプロピレン系樹脂組成物Aと、融点TmBが160℃未満であり、曲げ弾性率MBが900MPa以上1400MPa以下であるポリプロピレン系樹脂Bとの溶融混合物から構成されている。
【0015】
・ポリプロピレン系樹脂組成物A
樹脂粒子に用いられるポリプロピレン系樹脂組成物A(以下、「樹脂組成物A」という。)は、160℃以上の融点TmAを有している。また、樹脂組成物Aの曲げ弾性率MAは800MPa以上1200MPa以下である。なお、本明細書において、ポリプロピレン系樹脂組成物とは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物をいう。ポリプロピレン系樹脂組成物中におけるポリプロピレン系樹脂の質量比率は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
【0016】
樹脂組成物Aの融点は、JIS K7121:1987に基づき求められる。具体的には、まず、樹脂組成物Aからなる試験片を準備し、JIS K7121:1987における「3.試験片の状態調節」の「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」に基づいて試験片の状態調節を行う。状態調節における加熱速度及び冷却速度はいずれも10℃/分とする。状態調節された試験片を10℃/分の加熱速度で30℃から230℃まで昇温することによりDSC曲線を取得し、DSC曲線に現れた融解ピークの頂点温度を融点とする。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが現れる場合は、ベースラインを基準とした融解ピークの高さが最も高い融解ピークの頂点温度を樹脂組成物Aの融点とする。
【0017】
発泡粒子の型内成形性をより高め、良好な発泡粒子成形体(以下、「成形体」という。)が得られる成形圧の範囲をより広くする観点からは、樹脂組成物Aの融点TmAは、165℃以下であることが好ましい。
【0018】
前記樹脂組成物Aの曲げ弾性率MAは800MPa以上1200MPa以下である。発泡粒子の型内成形性をより確実に向上させる観点からは、前記樹脂組成物Aの曲げ弾性率MAは900MPa以上1100MPa以下であることがより好ましく、950MPa以上1050MPa以下であることがさらに好ましい。樹脂組成物Aの曲げ弾性率MAは、JIS K7171:2008に基づき、求めることができる。
【0019】
樹脂組成物Aには、少なくとも、ポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aが含まれている。資源の有効利用及びマテリアルリサイクルの観点から、樹脂組成物Aは、ポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aを主成分として含むことが好ましい。より具体的には、樹脂組成物A中のポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aの質量比率が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0020】
なお、本明細書において、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレン単量体の単独重合体(つまり、プロピレン単独重合体)、プロピレンに由来する構成単位を70質量%以上含むプロピレン系共重合体及びプロピレン単独重合体と前記プロピレン系共重合体との混合物をいう。前記プロピレン系共重合体としては、プロピレンと、エチレン及び/または炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。また、プロピレン系共重合体における、エチレンに由来する構成単位の含有量と炭素数4以上のα-オレフィンに由来する構成単位の含有量との合計は、1~15質量%であることが好ましく、2~12質量%であることがより好ましい。なお、ポリプロピレン系樹脂と、エチレンプロピレン系ラバー等のエラストマーとは互いに異なる物質であり、この点で、ポリプロピレン系樹脂と、インパクトポリプロピレン等のエチレンプロピレン系ラバーを含むポリプロピレン系樹脂組成物とは区別される。エチレンプロピレン系ラバー等の存在は、例えばポリプロピレン系樹脂組成物等から作製された切片を電子染色して観察用サンプルを作成し、この観察用サンプルを透過型電子顕微鏡により観察することで確認することができる。
【0021】
また、本明細書において、ポストコンシューマ材料とは、JIS Q14021:2000に記載された「家庭から排出される材料、又は製品のエンドユーザとしての商業施設、工業施設及び各種施設から本来の目的のためにはもはや使用できなくなった製品として発生する材料」を意味する。また、ポストコンシューマ材料には流通経路から戻される材料も含まれる。
【0022】
より具体的には、ポストコンシューマ材料には、例えば、自動車用部材に由来するポストコンシューマ材料や家電製品に由来するポストコンシューマ材料などが包含される。自動車用部材に由来するポストコンシューマ材料としては、例えば、使用済みの自動車から取り外された、バンパー等の外装材やインストルメントパネル等の内装材、自動車の廃棄の過程で生じるASR(つまり、自動車破砕残渣)等が挙げられる。このようなポストコンシューマ材料から、ポリプロピレン系樹脂組成物aが回収される。ポリプロピレン系樹脂組成物aの主成分は、融点が160℃以上であるポリプロピレン系樹脂中にエチレンプロピレン系ラバーを含むゴム状体が分散したインパクトポリプロピレンであることが好ましい。
【0023】
また、資源の有効利用及びマテリアルリサイクルの観点から、ポリプロピレン系樹脂組成物aの主成分は、自動車用部材に由来することが好ましい。同様の観点から、樹脂組成物Aは、ASRから回収されたポリプロピレン系樹脂組成物a1を主成分として含むことが好ましい。より具体的には、樹脂組成物A中のASRから回収されたポリプロピレン系樹脂組成物a1の質量比率が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
【0024】
ASRから回収されたポリプロピレン系樹脂組成物a1には、自動車部品を成形するための成形加工による熱履歴を受けたポリプロピレン系樹脂が主成分として含まれている。また、ASRから回収されたポリプロピレン系樹脂組成物には、通常、多数の自動車用部材や多数の使用済自動車から回収されたポリプロピレン系樹脂が含まれている。これらの理由により、従来、ASRから回収されたポリプロピレン系樹脂組成物a1を発泡粒子の製造に用いることは難しいと考えられてきた。これに対し、前記製造方法においては、前記樹脂組成物Aと前記樹脂Bとを前記特定の質量比で混合して用いることにより、ASRから回収されたポリプロピレン系樹脂組成物a1を原料として用いる場合においても、良好な発泡粒子を容易に製造することができる。
【0025】
本明細書において、ASRとは、平成14年法律第87号「使用済自動車の再資源化等に関する法律」の第二条の5で定義されている「自動車破砕残さ」をいう。より具体的には、使用済自動車からエンジンやバッテリー等の再生可能な部品等を取り外した後の解体自動車を破砕し、破砕物から金属その他有用なものを分別し、これらを回収した後に残存する物をASRという。ASRには、通常、自動車用部材に由来するポリプロピレン系樹脂の他に、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)などのポリプロピレン系樹脂以外の他のプラスチックやゴム、種々の金属などが含まれている。ASRからポリプロピレン系樹脂を主成分とするポリプロピレン系樹脂組成物a1を回収する方法は特に限定されることはなく、公知の選別方法を適宜組み合わせてASRからポリプロピレン系樹脂を回収することができる。
【0026】
ASRを得るための方法の一例として、使用済自動車から再利用できる部品と再利用できない部品とを取り外す解体工程と、解体工程を経た解体自動車から自動車付属部品を取り外す付属品分離工程と、分離工程を経た解体自動車及び/又は自動車付属部品を破砕し、得られる破砕物から金属類を分別してASRを回収する破砕選別工程とを備える方法が挙げられる。より具体的には、特許第6609877号、特許第6627142号、特許第6762071号等に記載された方法により、ASRを得ることができる。
【0027】
また、ASRからポリプロピレン系樹脂組成物a1を回収する方法は特に限定されることはなく、公知の選別方法を適宜組み合わせてASRからポリプロピレン系樹脂組成物a1を回収することができる。ポリプロピレン系樹脂組成物a1の回収には、例えば、以下の(α)~(δ)に示す選別工程を単独で、または2種以上組み合わせて実施する方法を採用することができる。
(α)磁力により金属類と非金属類とを選別する磁力選別工程
(β)風力により軽量物と重量物とを選別する風力選別工程
(γ)溶媒により軽比重物と重比重物とを選別する湿式比重選別工程
(δ)帯電のしやすさにより樹脂を選別する静電選別工程
【0028】
例えば、湿式比重選別工程(γ)では、特許第3711472号に記載されているように、水流分級と沈降速度とを利用する方法や、特開2004-58032号公報に記載されているように、気泡を間欠的に排出させる脈動バブリング槽と沈降槽とを備え、水より軽い物質と重い物質とを分離するための浮遊物分離槽を有する装置を用いる方法等により、ASR中に含まれるポリプロピレン系樹脂組成物a1を選別することができる。また、特開2008-178846号公報や、特許第6762071号に記載されているように、これらの選別工程は組み合わせて行うことができる。例えば、風力選別工程と湿式比重選別工程とを組み合わせ、風力によりASR中に含まれる軽量物と重量物とを分離した後、それぞれを別個に選別液に浸漬して比重選別することでASR中に含まれるポリプロピレン系樹脂組成物a1を選別することができる。
【0029】
温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した場合における樹脂組成物AのメルトマスフローレイトMFRAは10g/10分以上40g/10分以下であることが好ましく、14g/10分以上35g/10分以下である樹脂組成物Aが含まれていることがより好ましく、20g/10分以上30g/10分以下である樹脂組成物Aが含まれていることがさらに好ましい。この場合には、ポストコンシューマ材料に由来する樹脂成分を含有させつつ、発泡粒子の型内成形性をより高め、良好な発泡粒子成形体が得られる成形圧の範囲をより広くすることができる。
【0030】
前述した樹脂組成物AのメルトマスフローレイトMFRAは、JIS K7210-1:2014に基づき、試験温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される値である。
【0031】
前記樹脂組成物Aの灰分量は1質量%以上25質量%以下であることが好ましい。この場合には、樹脂組成物AのMFRAが比較的高い場合においても、樹脂粒子の発泡性を維持しつつ発泡粒子の型内成形性をより高め、良好な発泡粒子成形体が得られる成形圧の範囲をより広くすることができる。
【0032】
灰分量が前記特定の範囲内である樹脂組成物Aを用いることにより、前述した作用効果が得られる理由としては、例えば以下の理由が考えられる。樹脂粒子の発泡性を高める観点からは、メルトマスフローレイトが比較的高いポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。しかし、高いメルトマスフローレイトを有するポリプロピレン系樹脂を用いて得られる発泡粒子は、型内成形時において樹脂が過度に伸びやすくなるためか、高い成形圧で型内成形を行うと成形体が収縮しやすくなるという問題があった。これに対し、灰分量が前記特定の範囲内である樹脂組成物Aを用いることにより、発泡粒子の気泡径を比較的小さくするとともに、気泡膜を薄くすることができる。そして、このような発泡粒子は、加熱による軟化が生じやすい一方、樹脂が過度に伸びにくくなると考えられる。それ故、灰分量が前記特定の範囲内である樹脂組成物Aを用いることにより、高い成形圧で型内成形を行った場合においても成形体の収縮が抑制され、樹脂粒子の発泡性を維持しつつ、成形可能範囲を広くすることができると考えられる。
【0033】
前記樹脂組成物Aの灰分量は、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。この場合には、例えばポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物a等の、比較的灰分量が多いポリプロピレン系樹脂組成物をより容易に配合することができ、ポストコンシューマ材料に由来する樹脂成分をより容易に活用することができる。
【0034】
また、樹脂粒子の発泡性を維持しつつ発泡粒子の型内成形性をより高める観点からは、樹脂組成物Aの灰分量は、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが一層好ましく、8質量%以下であることが特に好ましく、6質量%以下であることが最も好ましい。
【0035】
樹脂組成物Aの灰分量の好ましい範囲を構成するに当たっては、前述した灰分量の上限の値と下限の値とを任意に組み合わせることができる。例えば、樹脂組成物Aの灰分量の好ましい範囲は、1質量%以上20質量%以下であってもよく、2質量%以上15質量%以下であってもよく、2質量%以上10質量%以下であってもよく、3質量%以上8質量%以下であってもよく、3質量%以上6質量%以下であってもよい。
【0036】
前述した樹脂組成物Aの灰分量は、JIS K7250-1:2006の直接灰化法(A法)に準拠して測定することができる。より具体的には、樹脂組成物Aの灰分量は、樹脂組成物Aを燃焼させた後に残る残渣の質量から算出することができる。なお、樹脂組成物Aの燃焼残渣に含まれる灰分は、主に、無機充填材等の樹脂組成物A中に含まれていた無機物から構成されている。
【0037】
前記樹脂組成物Aは、エチレンプロピレン系ラバーを含むことが好ましく、ポストコンシューマ材料に由来するエチレンプロピレン系ラバーを含むことがより好ましい。また、この場合、前記樹脂組成物Aは、ポリプロピレン系樹脂をマトリックス(つまり、連続相)とし、エチレンプロピレン系ラバーを含むゴム状体をドメイン(つまり、分散相)とするモルフォロジーを示すことがさらに好ましい。この場合には、ポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aの量が比較的多い場合であっても型内成形性が良好な発泡粒子を安定して得ることができる。さらに、前記発泡粒子を用いて型内成形を行うことにより、圧縮強度等の機械的物性が良好な成形体を容易に得ることができる。また、この場合、前記マトリックスを構成するポリプロピレン系樹脂の融点が160℃以上であることがより好ましい。さらに、樹脂組成物A中のゴム状体のドメインには、前記エチレンプロピレン系ラバーの他にポリエチレン系樹脂が含まれていてもよい。
【0038】
なお、エチレンプロピレン系ラバーとは、エチレン成分とプロピレン成分とを含むエチレンプロピレン系共重合体から構成されるゴム状の物質である。すなわち、エチレンプロピレン系ラバーは、エチレンとプロピレンとの共重合体(つまり、EPM)であってもよい。また、エチレンプロピレン系ラバーは、前述した作用効果を損なわない範囲において、ジエン等の、エチレン及びプロピレン以外のモノマーに由来する成分を含むエチレンプロピレン系共重合体(例えばEPDM)であってもよい。エチレンプロピレン系ラバーにおける、エチレンに由来する成分とプロピレンに由来する成分との質量比(エチレンに由来する成分:プロピレンに由来する成分)は、通常、30:70~80:20である。樹脂組成物Aにエチレンプロピレン系ラバーが含まれているか否かは、樹脂組成物Aのモルフォロジーを観察することにより確認することができる。
【0039】
前記樹脂組成物Aのモルフォロジーの観察方法は、以下の通りである。まず、前記樹脂組成物Aから観察用サンプルを切り出す。観察用サンプルの切り出し方は特に限定されることはないが、例えば、樹脂組成物Aの形状が円柱状のペレットである場合には、ペレットの中心部を通るように、ペレットをペレットの高さ方向に対して垂直に切断すればよい。このようにして、前記樹脂組成物Aからなるペレットの中心部の断面が露出した観察用サンプルを得ることができる。次いで、この観察用サンプルをエポキシ樹脂に包埋し、四酸化ルテニウムにより電子染色を行った後、ウルトラミクロトーム等を用いてサンプルから切片を作製する。この切片を透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子社製「JEM-1040Flash」)のグリッドに載せ、所定の倍率(例えば、5000倍)で観察すると共に、樹脂組成物Aの断面写真(すなわち、TEM写真)を撮影する。断面写真から、樹脂組成物Aにおけるポリプロピレン系樹脂の相とエチレンプロピレン系ラバーを含むゴム状体の相とのモルフォロジーを目視にて観察する。
【0040】
発泡粒子の型内成形性を安定して高めることができる観点からは、樹脂組成物Aにおけるエチレンプロピレン系ラバーを含むゴム状体のドメインの平均径は0.5μm以上5μm以下であることが好ましく、0.8μm以上3μm以下であることがより好ましく、1μm以上2μm以下であることがさらに好ましい。前記ドメインの平均径は、前記TEM写真に基づいて算出される。具体的には、TEM写真に現れたドメインの中から無作為に選択した50個以上のドメインの最長径及び最短径をそれぞれ計測した後、これらの相加平均を算出する。このようにして得られた最長径と最短径との相加平均値を、エチレンプロピレン系ラバーを含むゴム状体のドメインの平均径とする。
【0041】
また、発泡粒子の型内成形性を安定して高めることができる観点からは、前記モルフォロジーにおける前記ドメインの面積割合が、20%以上40%以下であることが好ましく、25%以上35%以下であることが好ましい。
【0042】
前記ドメインの面積割合は、前記TEM写真に基づいて算出される。より具体的には、画像解析ソフト(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF2013」)を用いて、TEM写真におけるドメイン部分を黒色、ドメイン以外の部分を白色にするモノトーン処理をし、測定対象とする。その後、上記画像解析ソフトにより、測定対象における前記ドメイン部分が占める面積の合計を算出すると共に、測定対象全体の面積に対する前記ドメイン部分が占める面積の合計の割合を算出する。このようにして得られた前記ドメイン部分が占める面積の合計の割合を、樹脂組成物Aのモルフォロジーにおける前記ドメインの面積割合とする。なお、前記ドメイン以外の部分には、マトリックスや、タルク等の無機物が含まれる。
【0043】
樹脂組成物Aが前記特定のモルフォロジーを有する場合、前述した作用効果をより確実に得る観点から、樹脂組成物A中に含まれる、23℃のデカンに溶解し、かつアセトンに不溶な成分の量(以下、「23℃n-デカン可溶分」ともいう。)、つまり、23℃のn-デカンに前記樹脂組成物A中の可溶分を抽出したときの抽出液に含まれるアセトン不溶分が、5質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、6質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以上20質量%以下であることが特に好ましい。なお、樹脂組成物A中の23℃n-デカン可溶分は、主に、エチレンプロピレン系ラバーに由来する成分である。
【0044】
前記樹脂組成物A中の23℃n-デカン可溶分の測定方法は以下の通りである。まず、n-デカン中に樹脂組成物Aからなる試料を加えて加熱することにより、樹脂組成物A中の可溶分をn-デカン中に溶解させる。このn-デカン溶液を23℃まで冷却した後、n-デカン溶液中の不溶分を除去してろ液を得る。このろ液をアセトン中に加えることにより、樹脂組成物A中の23℃n-デカン可溶分を析出させる。以上により得られる析出物の質量に基づいて、樹脂組成物A中の23℃n-デカン可溶分を算出することができる。前記樹脂組成物A中の23℃n-デカン可溶分のより詳細な測定方法については、実施例において詳説する。
【0045】
前記樹脂組成物Aには、前述した作用効果を損なわない範囲で、ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂やエチレンプロピレン系ラバー以外のエラストマー等が含まれていてもよい。樹脂組成物Aに含まれ得る樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂などが挙げられ、エラストマーとしては、エチレンブテンラバー、エチレンオクテンラバーなどが挙げられる。なお、これらの樹脂やエラストマーは、ポストコンシューマ材料に由来するものであってもよい。
【0046】
前記樹脂組成物Aには、前述した作用効果を損なわない範囲で、タルクやシリカ、ガラス繊維などの無機物が含まれていてもよい。前記樹脂組成物A中に含まれる無機物の主成分はタルクであることが好ましい。この場合には、比較的高い融点を有する樹脂組成物Aを用いる場合においても発泡粒子の融着性をより向上させることができる。その結果、発泡粒子の型内成形性をより向上させることができる。この理由としては、発泡粒子の平均気泡径が小さくなりやすいことなどが考えられる。
【0047】
前記樹脂組成物Aには、前述した作用効果を損なわない範囲で、気泡調整剤、結晶核剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌剤、着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。また、樹脂組成物Aは、着色剤としてカーボンブラックを含むことが好ましい。この場合、例えば、樹脂組成物A中のカーボンブラックの含有量は、0.1質量%以上2質量%以下であってもよく、0.2質量%以上1質量%以下であってもよい。樹脂組成物A中のカーボンブラックの含有量を前記特定の範囲内とすることにより、比較的淡い黒色(灰色)と白色とによるまだら模様が付与された、意匠性に優れる発泡粒子成形体を得ることができる。
【0048】
・ポリプロピレン系樹脂B
樹脂粒子に用いられるポリプロピレン系樹脂Bは、160℃未満の融点TmBを有している。また、樹脂Bの曲げ弾性率MBは900MPa以上1400MPa以下である。前記製造方法においては、前記特定の範囲内の融点TmA及び曲げ弾性率MAを有する樹脂組成物Aと、前記特定の範囲内の融点TmB及び曲げ弾性率MBを有し、樹脂組成物Aの曲げ弾性率に対する樹脂Bの曲げ弾性率の比が特定の関係を満たす樹脂Bとの溶融混合物からなり、かつ、樹脂組成物Aと樹脂Bとの質量比率が前記特定の範囲である樹脂粒子を発泡させることにより、型内成形性に優れた発泡粒子を容易に得ることができる。かかる作用効果をより確実に得る観点からは、樹脂Bの融点TmBは140℃以上160℃未満であることが好ましく、142℃以上158℃以下であることがより好ましく、145℃以上156℃以下であることがさらに好ましく、148℃以上155℃以下であることが特に好ましい。
【0049】
樹脂Bの融点TmBが過度に高い場合には、良好な発泡性を有する樹脂粒子や、良好な型内成形性を有する発泡粒子を得ることが困難となるおそれがある。同様に、樹脂Bの曲げ弾性率MBが前記特定の範囲を過度に外れる場合にも、良好な発泡性を有する樹脂粒子や、良好な型内成形性を有する発泡粒子を得ることが困難となるおそれがある。
【0050】
樹脂Bの融点TmBは、JIS K7121:1987に基づき求められる。具体的には、まず、樹脂Bからなる試験片を準備する。この際、樹脂粒子の製造に当たり、樹脂Bとして2種類以上のポリプロピレン系樹脂を使用する場合には、樹脂粒子における質量比と同一の質量比となるように複数種類のポリプロピレン系樹脂を溶融混合し、これらのポリプロピレン系樹脂の溶融混合物からなる試験片を準備する。
【0051】
次に、JIS K7121:1987における「3.試験片の状態調節」の「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」に基づいて試験片の状態調節を行う。状態調節における加熱速度及び冷却速度はいずれも10℃/分とする。状態調節された試験片を10℃/分の加熱速度で23℃から230℃まで昇温することによりDSC曲線を取得し、DSC曲線に現れた融解ピークの頂点温度を樹脂Bの融点TmBとする。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが現れる場合は、ベースラインを基準とした融解ピークの高さが最も高い融解ピークの頂点温度を融点TmBとする。
【0052】
型内成形性に優れた発泡粒子がより容易に得られやすくなる観点からは、樹脂Bの曲げ弾性率MBは950MPa以上1350MPa以下であることが好ましく、1000MPa以上1300MPa以下であることがより好ましく、1100MPa以上1300MPa以下であることがさらに好ましい。樹脂Bの曲げ弾性率MBは、JIS K7171:2008に基づき、求めることができる。
【0053】
樹脂Bは、成形品を成形するための成形加工等による熱履歴を受けていないポリプロピレン系樹脂(つまり、非再生ポリプロピレン系樹脂)であってもよく、熱履歴を受けたポリプロピレン系樹脂(つまり、再生ポリプロピレン系樹脂)であってもよい。型内成形性に優れた発泡粒子をより容易に得ることができる観点からは、樹脂Bは、非再生ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
【0054】
なお、樹脂粒子の製造には、樹脂Bとして、1種類のポリプロピレン系樹脂を使用してもよく、2種類以上のポリプロピレン系樹脂を使用してもよい。なお、樹脂Bとして2種類以上のポリプロピレン系樹脂を使用する場合、樹脂粒子を製造する際の質量比と同一の質量比でこれらのポリプロピレン系樹脂を溶融混合した試料の融点を樹脂Bの融点TmBとし、試料の曲げ弾性率を樹脂Bの曲げ弾性率MBとする。
【0055】
樹脂粒子の製造に用いられる樹脂Bは、プロピレンに由来する構成単位を70質量%以上含むプロピレン系共重合体であることが好ましく、プロピレンに由来する構成単位を80質量%以上含むプロピレン系共重合体であることがより好ましい。なお、樹脂Bには、2種類以上のプロピレン系共重合体が含まれていてもよい。
【0056】
発泡粒子の型内成形性をより高め、良好な発泡粒子成形体が得られる成形圧の範囲をより広くする観点からは、樹脂Bは、プロピレンと、エチレン及び/又は炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体であることが好ましい。また、前記共重合体は、ランダム共重合体(つまり、プロピレン系ランダム共重合体)であることがより好ましい。
【0057】
前記プロピレン系共重合体に用いられるα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ブテン等が挙げられる。前記プロピレン系共重合体における、エチレンに由来する構成単位の含有量と炭素数4以上のα-オレフィンに由来する構成単位の含有量との合計(つまり、コモノマー成分の含有量)は、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上12質量%以下であることがより好ましい。
【0058】
なお、樹脂Bとして2種類以上のポリプロピレン系樹脂を使用する場合には、これらのポリプロピレン系樹脂の合計質量(つまり、樹脂Bの合計質量)に対するコモノマー成分の質量の比率を前述したコモノマー成分の含有量とする。すなわち、樹脂Bとして2種類以上のポリプロピレン系樹脂を使用する場合のコモノマー成分の含有量は、樹脂粒子を製造する際の質量比と同一の質量比で複数種類のポリプロピレン系樹脂を溶融混合した試料における、エチレンに由来する構成単位の含有量と炭素数4以上のα-オレフィンに由来する構成単位の含有量との合計である。
【0059】
樹脂Bの主成分は、共重合成分としてエチレンに由来する構成単位(つまり、エチレン成分)を含有するポリプロピレン系樹脂b1及び/又は共重合成分としてエチレン及び1-ブテンに由来する構成単位(つまり、エチレン成分及びブテン成分)を含有するポリプロピレン系樹脂b2であることが好ましい。このようなポリプロピレン系樹脂b1としては、プロピレン-エチレンランダム共重合体などが挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂b2としては、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体等が挙げられる。前記樹脂粒子中に含まれる樹脂Bの合計質量に対する前記ポリプロピレン系樹脂b1の割合とポリプロピレン系樹脂b2の割合との合計は60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0060】
前記樹脂Bが、ポリプロピレン系樹脂b1を主成分として含む場合、ポリプロピレン系樹脂b1中のエチレン成分の含有量は1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。この場合には、低い成形圧で型内成形を行う場合における発泡粒子の型内成形性をより高めることができる。
【0061】
また、ポリプロピレン系樹脂b1中のエチレン成分の含有量は、6質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、4質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。この場合には、圧縮強度等が良好な発泡粒子成形体をより容易に得ることができる。
【0062】
前記樹脂Bが、ポリプロピレン系樹脂b2を主成分として含む場合、ポリプロピレン系樹脂b2中のエチレン成分の含有量とブテン成分の含有量との合計は2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましく、6質量%以上であることがさらに好ましい。この場合には、低い成形圧で型内成形を行う場合における発泡粒子の型内成形性をより高めることができる。
【0063】
また、ポリプロピレン系樹脂b2中のエチレン成分の含有量とブテン成分の含有量との合計は、15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましい。この場合には、圧縮強度等が良好な発泡粒子成形体をより容易に得ることができる。
【0064】
また、比較的低い成形圧力での成形が可能であると共に、圧縮強度等が良好な発泡粒子成形体をより容易に得ることができる観点から、ポリプロピレン系樹脂b2における、エチレン成分の含有量に対するブテン成分の含有量の比は、7以上25以下であることが好ましく、8以上20以下であることがより好ましく、10以上18以下であることがさらに好ましい。
【0065】
前記樹脂B中の、エチレンに由来する成分及びブテンに由来する成分の含有量は、例えば、IRスペクトルに基づいて求めることができる。樹脂B中の、エチレンに由来する成分及びブテンに由来する成分の含有量の測定方法については、実施例において詳説する。
【0066】
樹脂Bのコモノマー成分の含有量等の好ましい範囲を構成するに当たっては、前述した上限の値と下限の値とを任意に組み合わせることができる。
【0067】
樹脂Bの灰分量は1質量%未満であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。この場合には、樹脂粒子の発泡性を維持しつつ発泡粒子の型内成形性をより高め、良好な発泡粒子成形体が得られる成形圧の範囲をより広くすることができる。なお、樹脂Bとして2種類以上のポリプロピレン系樹脂を使用する場合、これらのポリプロピレン系樹脂の合計質量(つまり、樹脂Bの合計質量)に対するポリプロピレン系樹脂の灰分の合計質量の比率を、樹脂Bの灰分量とする。すなわち、樹脂Bの灰分量は、樹脂粒子を製造する際の質量比と同一の質量比で樹脂Bに含まれる複数種類のポリプロピレン系樹脂を溶融混合した試料を作製し、この試料に対して後述する灰分量の測定を行うことにより得られる。
【0068】
前述した樹脂Bの灰分量は、JIS K7250-1:2006の直接灰化法(A法)に準拠して測定することができる。より具体的には、樹脂Bの灰分量は、樹脂Bを燃焼させた後に残る残渣の質量から算出することができる。
【0069】
温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した場合における樹脂BのメルトマスフローレイトMFRBは6g/10分以上9g/10分以下であることが好ましい。この場合には、良好な型内成形性を有する発泡粒子をより容易に得ることができる。なお、樹脂Bとして2種類以上のポリプロピレン系樹脂を使用する場合、樹脂粒子を製造する際の質量比と同一の質量比でこれらのポリプロピレン系樹脂を溶融混合した試料のメルトマスフローレイトを、樹脂BのメルトマスフローレイトMFRBとする。
【0070】
樹脂Bの融解熱量HBは70J/g以上100J/g以下であることが好ましい。この場合、型内成形性に優れた発泡粒子をより安定して得ることができる。同様の観点から、前記ポリプロピレン系樹脂Bの融解熱量HBは75J/g以上98J/g以下であることがより好ましく、80J/g以上96J/g以下であることがさらに好ましく、85J/g以上95J/g以下であることが特に好ましい。なお、樹脂Bとして2種類以上のポリプロピレン系樹脂を使用する場合、樹脂粒子を製造する際の質量比と同一の質量比でこれらのポリプロピレン系樹脂を溶融混合した試料の融解熱量を、樹脂Bの融解熱量HBとする。
【0071】
前記樹脂Bには、前述した作用効果を損なわない範囲で、気泡調整剤、結晶核剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌剤、着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0072】
樹脂組成物Aの曲げ弾性率MAに対する樹脂Bの曲げ弾性率MBの比MB/MAは1以上である。樹脂組成物Aと組み合わせる樹脂Bの曲げ弾性率MBを前記特定の範囲内とすることにより、ポストコンシューマ材料に由来する樹脂成分を含有させつつ、発泡粒子の型内成形性を高めることが出来ると共に、圧縮強度が良好な発泡粒子成形体を得ることができる。曲げ弾性率の比MB/MAが過度に低い場合には、発泡粒子の型内成形性の悪化を招くおそれがある。なお、樹脂組成物Aの曲げ弾性率MA及び樹脂Bの曲げ弾性率MBは、JIS K7171:2008に基づき、求めることができる。
【0073】
前述した効果が得られる理由としては、例えば以下の理由が考えられる。前記製造方法に用いられる、ポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aを含む樹脂組成物Aは、融点TmAに対する曲げ弾性率MAの比が比較的低い傾向にある。このような樹脂組成物Aは、型内成形時において発泡粒子を十分に融着させようとすると、加熱後に成形体が局所的に収縮しやすく、良好な成形体を得ることが難しくなっていた。一方、このような融点と曲げ弾性率との関係を有する樹脂組成物Aと、樹脂組成物Aに対して、融点が低いと共に、曲げ弾性率が比較的高い樹脂Bとを用いて樹脂粒子を製造することで、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂組成物における融点と曲げ弾性率とのバランスが良化するためか、型内成形性に優れ、幅広い成形圧の範囲において圧縮強度に優れる成形体を成形可能な発泡粒子を得ることができると考えられる。前述した作用効果をより確実に得る観点から、曲げ弾性率の比MB/MAは、1.1以上1.6以下であることが好ましく、1.2以上1.5以下であることがより好ましい。
【0074】
前記樹脂粒子における、樹脂組成物Aとポリプロピレン系樹脂B(以下、「樹脂B」という。)との質量比(ただし、樹脂組成物Aの質量と樹脂Bの質量との合計を100質量%とする)は、樹脂組成物A:樹脂B=10:90~70:30である。すなわち、前記樹脂粒子における、樹脂組成物Aと樹脂Bとの合計に対する樹脂組成物Aの質量比率は10質量%以上70質量%以下である。
【0075】
前記樹脂組成物Aの質量比率を10質量%以上とすることにより、樹脂粒子中に配合可能なポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aの量を多くし、ポストコンシューマ材料由来の樹脂成分をより有効に活用することができる。前記樹脂組成物Aの質量比率が過度に低い場合には、樹脂粒子中に配合可能なポリプロピレン系樹脂組成物aの量が少なくなり、資源の有効利用の観点から好ましくない。
【0076】
樹脂粒子中に配合可能なポリプロピレン系樹脂組成物aの量をより多くし、ポストコンシューマ材料由来の樹脂成分をより有効に活用する観点から、樹脂組成物Aと樹脂Bとの合計に対する樹脂組成物Aの質量比率は、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。
【0077】
また、前記樹脂組成物Aの質量比率を70質量%以下とすることにより、良好な型内成形性及び圧縮強度を有する発泡粒子を容易に得ることができる。前記樹脂組成物Aの質量比率が過度に高い場合には、発泡粒子の型内成形性や圧縮強度の低下を招くおそれがある。優れた型内成形性及び圧縮強度を有する発泡粒子をより容易に得ることができる観点からは、樹脂組成物Aと樹脂Bとの合計に対する樹脂組成物Aの質量比率は、65質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0078】
樹脂組成物Aの質量比率の好ましい範囲を構成するに当たっては、前述した樹脂組成物Aの質量比率の上限の値と下限の値とを任意に組み合わせることができる。例えば、樹脂組成物Aと樹脂Bとの質量比の好ましい範囲は、樹脂組成物A:樹脂B=15:85~65:35であってもよく、20:80~60:40であってもよく、25:75~50:50であってもよく、30:70~50:50であってもよい。
【0079】
また、樹脂組成物AのメルトマスフローレイトMFRAと樹脂BのメルトマスフローレイトMFRBとの差MFRA-MFRBは5g/10分以上35g/10分以下であることが好ましく、8g/10分以上30g/10分以下であることがより好ましく、12g/10分以上25g/10分以下であることがより好ましい。この場合には、発泡粒子の型内成形性のばらつきをより低減し、優れた型内成形性を有する発泡粒子をより容易に得ることができる。
【0080】
前記樹脂組成物Aの融点TmAと前記樹脂Bの融点TmBとの差TmA-TmBは5℃以上20℃以下であることが好ましく、7℃以上19℃以下であることがより好ましく、10℃以上18℃以下であることがさらに好ましい。この場合には、ポストコンシューマ材料に由来する樹脂成分を含有させつつ、発泡粒子の型内成形性をより高め、良好な発泡粒子成形体が得られる成形圧の範囲をより広くすることができる。
【0081】
前記ポリプロピレン系樹脂組成物Aの融解熱量HAは60J/g以上100J/g以下であり、前記ポリプロピレン系樹脂Bの融解熱量HBは70J/g以上100J/g以下であり、前記融解熱量HAと前記融解熱量HBとの和HA+HBは150J/g以上175J/g以下であることが好ましい。樹脂組成物Aは、ポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aを含んでいるため、異なるロット間で物性を比較した場合に物性のばらつきが大きくなりやすい。これに対し、樹脂組成物Aの融解熱量HAと、樹脂Bの融解熱量HBとをそれぞれ前記特定の範囲内とした上で、さらに、融解熱量の和HA+HBを前記特定の範囲内とすることにより、物性のばらつきが大きい樹脂組成物Aを使用する場合であっても、型内成形性に優れた発泡粒子をより安定して得ることができる。同様の観点から、樹脂組成物Aの融解熱量HAに対する樹脂Bの融解熱量HBの比HB/HAは0.90以上1.20以下であることが好ましい。
【0082】
なお、樹脂組成物A及び樹脂Bの融解熱量は、JIS K 7122:1987に準拠した示差走査熱量測定(DSC)を行うことにより得られるDSC曲線に基づいて求めることができる。具体的には、まず、樹脂組成物Aまたは樹脂Bを試験片として用い、JIS K 7122:1987における「3.試験片の状態調節」の「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」に基づいて試験片の状態調節を行う。状態調節における加熱速度及び冷却速度はいずれも10℃/minとし、温度範囲は23℃から230℃までとする。その後、状態調節された試験片を、再度23℃から230℃まで10℃/分の速度で加熱をすることによりDSC曲線(2回目加熱時のDSC曲線)を取得する。このDSC曲線において、80℃に相当する点と、最も頂点温度が高い融解ピークにおける高温側の端点とを結ぶ直線を引く。樹脂組成物Aの融解熱量HA及び樹脂Bの融解熱量HBは、このようにして決定した直線とDSC曲線の融解ピークとにより囲まれる領域の面積に基づいて算出することができる。
【0083】
〔樹脂粒子の準備〕
前記製造方法においては、まず、前記樹脂組成物Aと前記樹脂Bとの溶融混合物からなる樹脂粒子を準備する。樹脂粒子を準備する方法は特に限定されることはない。例えば、ストランドカット法により樹脂粒子を作製する場合には、前記樹脂組成物Aと前記樹脂Bとを押出機に供給し、押出機内で前記樹脂組成物Aと前記樹脂Bとを加熱しつつ混練することにより、溶融状態の混合物を得る。この溶融状態の混合物を押出機の下流側に付設されたダイの小孔からストランド状に押し出す。このストランド状の押出物を引き取りつつ所望の長さに切断することにより、前記樹脂組成物Aと前記樹脂Bとの溶融混合物(より具体的には、溶融混練物)からなる樹脂粒子を得ることができる。このようにして得られた樹脂粒子は、ポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aを含んでいる。また、樹脂粒子を構成するポリプロピレン系樹脂組成物rの融点Tmrは150℃以上162℃以下であり、曲げ弾性率Mrは900MPa以上1300MPa以下である。
【0084】
前記樹脂組成物Aと前記樹脂Bとの溶融混合物を製造する作業と、溶融混合物から樹脂粒子を製造する作業とは、上記したように同一の押出機で行ってもよい。また、例えば、前述した2つの作業を別々の押出機等を用いて行ってもよい。
【0085】
なお、前記樹脂粒子には、前述した作用効果を損なわない範囲で、ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂やエチレンプロピレン系ラバー以外のエラストマー等が含まれていてもよい。樹脂粒子に含まれ得る樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系共重合体などが挙げられ、エラストマーとしては、エチレンブテンラバー、エチレンオクテンラバーなどが挙げられる。なお、これらの樹脂やエラストマーは、ポストコンシューマ材料に由来するものであってもよい。
【0086】
〔発泡〕
前記製造方法においては、前記ポリプロピレン系樹脂粒子を発泡させる。樹脂粒子を発泡させる方法は特に限定されることはないが、容器内において水性媒体中に分散させた、発泡剤を含むポリプロピレン系樹脂粒子を、水性媒体とともに容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に放出する、「ダイレクト発泡法」と呼ばれる方法により樹脂粒子を発泡させることが好ましい。以下に、発泡方法の好ましい態様を説明する。
【0087】
ダイレクト発泡法により樹脂粒子を発泡させるに当たっては、まず、樹脂粒子を圧力容器等の容器内に入れ、水性媒体中に分散させる。この際、必要に応じて、容器内の水性媒体に樹脂粒子を分散させるための分散剤や分散助剤、界面活性剤等を添加してもよい。
【0088】
分散剤としては、例えば、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ等の無機微粒子を使用することができる。これらの無機微粒子は、単独で使用されてもよいし、2種以上の無機微粒子が併用されてもよい。分散助剤としては、例えば、硫酸アルミニウム等を使用することができる。また、界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤を使用することができる。これらの界面活性剤は、単独で使用されてもよいし、2種以上の界面活性剤が併用されてもよい。
【0089】
次に、容器内に発泡剤を供給し、容器内の圧力を上昇させることにより樹脂粒子に発泡剤を含浸させる。これにより、発泡剤を含む樹脂粒子を得ることができる。この際、容器内の樹脂粒子を水性媒体とともに加熱することにより、樹脂粒子への発泡剤の含浸を促進することができる。
【0090】
発泡工程において使用される発泡剤としては、例えば、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン等の無機物理発泡剤や、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の炭化水素、エチルクロライド、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン等のハロゲン化炭化水素等の有機物理発泡剤を使用することができる。環境に対する負荷や取扱い性の観点から、発泡剤としては、好ましくは二酸化炭素が用いられる。発泡剤の添加量は、樹脂粒子100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0091】
発泡直前の容器内の圧力はゲージ圧において0.5MPa(G)以上であることが好ましい。一方、容器内の圧力はゲージ圧において4.0MPa(G)以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、容器の破損や爆発等のおそれがなく安全に発泡粒子を製造することができる。
【0092】
樹脂粒子に発泡剤を含浸させた後に、容器の内容物を容器よりも低い圧力の雰囲気下へ放出する。これにより、樹脂粒子が発泡して気泡構造が形成されるとともに、外気(つまり、雰囲気)によって冷却されて気泡構造が安定化し、発泡粒子が得られる。
【0093】
前記製造方法においては、樹脂粒子を水性媒体中に分散させてから樹脂粒子を発泡させるまでの間に、樹脂粒子を構成する樹脂成分の結晶構造を調整する工程を行ってもよい。樹脂成分の結晶構造を調整した後に発泡させることにより、優れた型内成形性を有するとともに機械的強度にも優れる発泡粒子を容易に得ることができる。
【0094】
樹脂成分の結晶構造を調整する方法は、例えば以下の通りである。まず、樹脂粒子の温度を、(樹脂粒子を構成する溶融混合物の融点-15℃)以上、(溶融混合物の融点+15℃)以下の温度範囲内に十分な時間、好ましくは10~60分程度保持する保持工程を行う。この保持工程が行われた樹脂粒子を発泡させることで、後述する特定の融解ピークが現れる結晶構造を有する発泡粒子を得ることができる。なお、発泡時における容器内の温度は、(溶融混合物の融点-5℃)以上(溶融混合物の融点+10℃)以下であることが好ましい。
【0095】
前記発泡粒子の製造方法においては、前記保持工程が行われた樹脂粒子を予め準備し、この樹脂粒子を発泡させることで、発泡粒子を得てもよい。発泡粒子の生産性を高める観点からは、発泡剤の存在下で、容器内の分散媒中に分散させた樹脂粒子を加熱して上記保持工程を行った後、密閉された容器の内容物を容器内から容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に放出して、樹脂粒子を発泡させることにより、後述する特定の融解ピークが現れる結晶構造を有する発泡粒子を得ることが好ましい。
【0096】
前述した条件での加熱及び発泡によって発泡粒子の機械的強度及び成形性を向上させることができる理由としては、発泡粒子を構成する樹脂成分中にポリプロピレン系樹脂の二次結晶が形成されること等が考えられる。ポリプロピレン系樹脂の二次結晶が形成されているか否かは、DSC曲線における高温ピークの有無によって判断することができる。なお、高温ピークの有無の判断方法等については後述する。
【0097】
前記発泡粒子の製造方法においては、樹脂粒子を発泡させる際に、前述したように一段階で樹脂粒子を発泡させてもよく、2段階以上の複数の段階に分けて樹脂粒子を発泡させてもよい。樹脂粒子を2段階で発泡させる場合には、まず、一段回目の発泡工程において、ダイレクト発泡法により樹脂粒子を発泡させ、一段発泡粒子を得る。二段階目の発泡工程は、例えば、一段発泡粒子を空気等により加圧処理して一段発泡粒子の気泡内の圧力(内圧)を高めた後、一段発泡粒子をスチーム等で加熱してさらに発泡させればよい。このようにして樹脂粒子を複数段階で発泡させることにより、より発泡倍率の高い(つまり、嵩密度の低い)発泡粒子を容易に得ることができる。
【0098】
(発泡粒子)
前記製造方法により得られる発泡粒子は、ポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aを含み、融点TmRが150℃以上162℃以下であり、曲げ弾性率MRが900MPa以上1300MPa以下であるポリプロピレン系樹脂組成物Rから構成されている。
【0099】
前記ポリプロピレン系樹脂組成物Rから構成される発泡粒子は、好ましくは、前記ポリプロピレン系樹脂組成物Aと前記ポリプロピレン系樹脂Bとの溶融混合物から構成される樹脂粒子を発泡させることにより得られる。この場合、ポリプロピレン系樹脂組成物R中における樹脂組成物Aと樹脂Bとの質量比率は、樹脂粒子を作製する際に使用した樹脂組成物Aと樹脂Bとの質量比率と概ね同一となる。なお、樹脂組成物A及び樹脂Bの詳細な構成については、前述した通りである。また、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂組成物Rにおける融点TmR及び曲げ弾性率MR等の物性は、ポリプロピレン系樹脂粒子を構成するポリプロピレン系樹脂組成物rにおける融点Tmr及び曲げ弾性率Mr等の物性と概ね同一である。従って、ポリプロピレン系樹脂組成物Rの融点TmR、曲げ弾性率MR等を、ポリプロピレン系樹脂組成物rの融点Tmr、曲げ弾性率Mr等とみなすことができる。
【0100】
発泡粒子の型内成形性を高める観点からは、ポリプロピレン系樹脂組成物Rの融点TmRは152℃以上161℃以下であることが好ましく、155℃以上160℃以下であることがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂組成物Rの融点TmRの測定方法は、試料として発泡粒子を用いること以外は、前述した樹脂組成物Aの融点TmAの測定方法と同様であり、JIS K7121:1987に基づいてポリプロピレン系樹脂組成物Rの融点TmRを求めることができる。
【0101】
また、発泡粒子の型内成形性を高める観点からは、ポリプロピレン系樹脂組成物Rの曲げ弾性率MRは900MPa以上1300MPa以下であることが好ましく、950MPa以上1250MPa以下であることがより好ましく、1000MPa以上1200MPa以下であることがさらに好ましい。ポリプロピレン系樹脂組成物Rの曲げ弾性率MRの測定方法は、発泡粒子をヒートプレスして作製された非発泡状態のシートを試験片として用いること以外は、前述した樹脂組成物Aの曲げ弾性率MAの測定方法と同様であり、JIS K7171:2008に基づいてポリプロピレン系樹脂組成物Rの曲げ弾性率MRを求めることができる。
【0102】
温度230℃、荷重2.16kgで測定した場合におけるポリプロピレン系樹脂組成物RのメルトマスフローレイトMFRRは8g/10分以上20g/10分以下であることが好ましく、10g/10分以上15g/10分以下であることがより好ましい。この場合には、型内成形性が良好であると共に、及び圧縮強度が良好な発泡粒子成形体を製造可能な発泡粒子をより確実に得ることができる。ポリプロピレン系樹脂組成物RのメルトマスフローレイトMFRRの測定方法は、試料として発泡粒子を用いること以外は、前述した樹脂組成物AのメルトマスフローレイトMFRAの測定方法と同様である。より具体的には、ポリプロピレン系樹脂組成物RのメルトマスフローレイトMFRRは、JIS K7210-1:2014に基づき、試験温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される値である。なお、試料として用いられる発泡粒子には、予め脱泡処理が施されていてもよい。
【0103】
樹脂組成物Rは、エチレンプロピレン系ラバーを含むことが好ましく、ポストコンシューマ材料に由来するエチレンプロピレン系ラバーを含むことがより好ましい。また、この場合、樹脂組成物Rは、ポリプロピレン系樹脂をマトリックス(つまり、連続相)とし、エチレンプロピレン系ラバーを含むゴム状体をドメイン(つまり、分散相)とするモルフォロジーを示すことがさらに好ましい。この場合には、ポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aの量が比較的多い場合であっても型内成形性が良好であると共に、圧縮強度等の機械的物性が良好な発泡粒子成形体を成形可能な発泡粒子を安定して得ることができる。前記樹脂組成物Rのモルフォロジーの観察方法は、発泡粒子の中心部付近から観察用サンプルを得ること以外は、前述した樹脂組成物Aのモルフォロジーの観察方法と同様である。
【0104】
発泡粒子の型内成形性を安定して高めることができる観点からは、樹脂組成物Rにおけるエチレンプロピレン系ラバーを含むゴム状体のドメインの平均径は0.5μm以上5μm以下であることが好ましく、0.8μm以上3μm以下であることがより好ましく、1μm以上2μm以下であることがさらに好ましい。前記ドメインの平均径は、前記TEM写真に基づいて算出される。具体的には、TEM写真に現れたドメインの中から無作為に選択した50個以上のドメインの最長径及び最短径をそれぞれ計測した後、これらの相加平均を算出する。このようにして得られた最長径と最短径との相加平均値を、エチレンプロピレン系ラバーを含むゴム状体のドメインの平均径とする。
【0105】
また、発泡粒子の型内成形性を安定して高めることができる観点からは、発泡粒子中の23℃n-デカン可溶分、つまり、発泡粒子中に含まれる、23℃のデカンに溶解し、かつアセトンに不溶な成分の量が、2質量%以上10質量%以下であることが好ましく、3質量%以上9質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上8質量%以下であることがさらに好ましい。前記発泡粒子中の23℃n-デカン可溶分の測定方法は、試料として発泡粒子を用いること以外は、前述した樹脂組成物A中の23℃n-デカン可溶分の測定方法と同様である。
【0106】
型内成形性に優れた発泡粒子をより安定して得ることができる観点からは、ポリプロピレン系樹脂組成物Rの融解熱量HRは、70J/g以上100J/g以下であることが好ましく、80J/g以上98J/g以下であることがより好ましく、85J/g以上95J/g以下であることがさらに好ましい。ポリプロピレン系樹脂組成物Rの融解熱量HRの測定方法は、試料として発泡粒子を用いること以外は、前述した樹脂組成物Aの融解熱量の測定方法と同様であり、JIS K 7122:1987に準拠した示差走査熱量測定を行うことにより得られるDSC曲線に基づいてポリプロピレン系樹脂組成物Rの融解熱量HRを求めることができる。
【0107】
前記発泡粒子は、その表面に、型内成形時の発泡粒子同士の融着性を高めるための融着層を有していてもよい。融着層は、発泡粒子の表面全体に存在していてもよく、表面の一部に存在していてもよい。融着層を構成する樹脂としては、発泡粒子を構成する溶融混合物の融点よりも低い融点を有する結晶性ポリオレフィン系樹脂、発泡粒子を構成する溶融混合物の融点よりも低い軟化点を有する非晶性ポリオレフィン系樹脂などが例示される。
【0108】
発泡粒子表面に融着層を形成する方法は特に限定されず、例えば、表面に融着層を有する樹脂粒子を発泡させる方法や、発泡粒子を得てから発泡粒子の表面に融着層を付着させる方法等を例示できる。表面に融着層を有する樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得る場合には、樹脂粒子を製造する際に、共押出が可能な押出装置を用いて、樹脂粒子本体を形成するための溶融混合物と、融着層を形成するための樹脂溶融物とを共押出することで、樹脂粒子の表面に融着層を積層する方法を採用することが好ましい。
【0109】
〔発泡粒子の嵩密度〕
前記発泡粒子の嵩密度は、10kg/m3以上200kg/m3以下であることが好ましく、12kg/m3以上100kg/m3以下であることがより好ましく、15kg/m3以上80kg/m3以下であることがさらに好ましく、20kg/m3以上70kg/m3以下であることが特に好ましい。この場合には、幅広い成形圧の範囲において、軽量であるとともに、機械的強度が良好な成形体を容易に得ることができる。
【0110】
発泡粒子の嵩密度の算出方法は以下の通りである。まず、相対湿度50%、温度23℃、気圧1atmの環境下で発泡粒子を24時間以上静置し、発泡粒子の状態を調節する。このようにして得られる発泡粒子をメスシリンダー内に充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させる。メスシリンダーの目盛から発泡粒子群の嵩体積(単位:L)を読み取る。そして、メスシリンダー内の発泡粒子群の質量(単位:g)を前述した嵩体積で除した値を単位換算することにより、発泡粒子の嵩密度(単位:kg/m3)を得ることができる。
【0111】
〔発泡粒子の平均気泡径〕
前記発泡粒子の平均気泡径は40μm以上100μm以下であることが好ましく、45μm以上90μm以下であることがより好ましく、50μm以上80μm以下であることがさらに好ましい。この場合には、発泡粒子の型内成形性をより高め、幅広い成形圧の範囲において良好な成形体を容易に得ることができる。
【0112】
発泡粒子の平均気泡径は、以下の方法により算出される値である。まず、発泡粒子を概ね2等分となるように切断する。次に、露出した切断面が視野内に全て納まるように拡大写真を取得する。得られた拡大写真上に、発泡粒子の最表面から中央部を通って反対側の最表面に至る線分を、隣り合う線分のなす角度が等しくなるようにして(つまり、隣り合う線分のなす角度が45°となるようにして)4本引く。このようにして得られた4本の線分の合計長さを線分と交差する気泡の総数で除した値を、個々の発泡粒子の気泡径とする。
【0113】
以上の操作を無作為に抽出した10個以上の発泡粒子に対して行い、それぞれの発泡粒子について得られた発泡粒子の気泡径を算術平均した値を、発泡粒子の平均気泡径とする。
【0114】
〔発泡粒子の独立気泡率〕
発泡粒子の独立気泡率は、90%以上であることが好ましい。この場合には、発泡粒子の型内成形性をより高め、幅広い成形圧の範囲において良好な成形体を容易に得ることができる。
【0115】
発泡粒子の独立気泡率は、ASTM-D2856-70手順Cに基づき空気比較式比重計を用いて測定される値である。発泡粒子の独立気泡率の測定方法は、具体的には以下の通りである。状態調節後の嵩体積約20cm3の発泡粒子を測定用サンプルとし、測定用サンプルをエタノールの入ったメスシリンダーに沈めた際の液面の上昇分から測定用サンプルの見掛けの体積Vaを測定する。見掛けの体積Vaを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じ、空気比較式比重計(東京サイエンス株式会社製「Beckman Model1000 Air Comparison Pycnometer」)により測定される測定用サンプルの真の体積の値Vxを測定する。そして、これらの体積の値Va及びVxを用い、下記の式(1)に基づいて測定用サンプルの独立気泡率(単位:%)を計算する。以上の操作を測定用サンプルを変更して5回行い、5つの測定用サンプルにおける独立気泡率の算術平均値(N=5)を発泡粒子の独立気泡率(単位:%)とする。
【0116】
独立気泡率=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(1)
ただし、上記式(1)における記号の意味は以下の通りである。
Vx:上記方法で測定される測定用サンプルの真の体積、即ち、発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(単位:cm3
Va:測定用サンプルを、エタノールの入ったメスシリンダーに沈めた際の液面の上昇量から測定される測定用サンプルの見掛けの体積(単位:cm3
W:測定用サンプルの質量(単位:g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(単位:g/cm3
【0117】
〔発泡粒子の灰分量〕
前記発泡粒子の灰分量は、0.1質量%以上4質量%以下であることが好ましい。この場合には、発泡粒子の良好な型内成形性を確保しつつ、ポストコンシューマ材料に由来する成分の配合量を高めることができ、ポストコンシューマ材料をより活用しやすくなる。
【0118】
ポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物をより有効に利用する観点からは、前記発泡粒子の灰分量は0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上であることが特に好ましい。一方、発泡粒子の良好な型内成形性をより安定して実現する観点からは、前記発泡粒子の灰分量は3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。
【0119】
なお、発泡粒子の灰分量の好ましい範囲を構成するに当たっては、前述した発泡粒子の灰分量の上限の値と下限の値とを任意に組み合わせることができる。例えば、発泡粒子の灰分量の好ましい範囲は、0.1質量%以上3質量%以下であってもよく、0.2質量%以上3質量%以下であってもよく、0.4質量%以上2質量%以下であってもよい。
【0120】
前述した発泡粒子の灰分量は、JIS K7250-1:2006の直接灰化法(A法)に準拠して測定することができる。より具体的には、発泡粒子の灰分量は、発泡粒子を燃焼させた後に残る残渣の質量から算出することができる。
【0121】
〔高温ピーク〕
前記発泡粒子は、加熱速度10℃/分で23℃から230℃まで加熱した際に得られるDSC曲線に、発泡粒子を構成する樹脂成分固有の融解による融解ピークと、この融解ピークよりも高温側に位置する1以上の融解ピークとが現れる結晶構造を有することが好ましい。このような結晶構造を備えた発泡粒子は、優れた型内成形性を有するとともに、機械的特性にも優れている。なお、以下において、前記DSC曲線に現れる樹脂成分固有の融解による融解ピークを「樹脂固有ピーク」といい、樹脂固有ピークよりも高温側に現れる融解ピークを「高温ピーク」という。樹脂固有ピークは、発泡粒子を構成する樹脂成分が通常有する結晶の融解によって現れる。一方、高温ピークは、発泡粒子の製造過程で樹脂成分中に形成された二次結晶の融解によって現れると推定される。すなわち、DSC曲線に高温ピークが現れた場合、樹脂成分中に二次結晶が形成されていると推定される。
【0122】
発泡粒子が前述した結晶構造を有するか否かは、JIS K7122:1987に準拠し、前述した条件により示差走査熱量測定(DSC)を行うことにより得られるDSC曲線に基づいて判断すればよい。また、DSCを行うにあたっては、発泡粒子1~3mgを試料として用いればよい。
【0123】
具体的には、上記のように10℃/分の加熱速度で23℃から230℃までの加熱(つまり、第1回目の加熱)を行ったときに得られるDSC曲線には、発泡粒子を構成する樹脂成分の樹脂固有ピークと、高温ピークとの両方のピークが現れる。これに対し、第1回目の加熱を行った後、10℃/分の冷却速度で230℃から23℃まで冷却し、その後再び10℃/分の加熱速度で23℃から230℃までの加熱(つまり、第2回目の加熱)を行ったときに得られるDSC曲線においては、発泡粒子を構成する樹脂成分の樹脂固有ピークのみが見られる。従って、第1回目の加熱時に得られるDSC曲線と第2回目の加熱時に得られるDSC曲線とを比較することにより、樹脂固有ピークと高温ピークとを見分けることができる。
【0124】
発泡粒子の型内成形性及び機械的特性をさらに向上させる観点からは、発泡粒子の高温ピークの融解ピーク温度は、168℃以上175℃以下であることが好ましく、170℃以上174℃以下であることがより好ましい。同様の観点から、高温ピークの融解熱量は、10J/g以上40J/g以下であることが好ましく、13J/g以上35J/g以下であることがより好ましく、15J/g以上30J/g以下であることがさらに好ましい。
【0125】
前述した高温ピークの融解熱量は、次のようにして求められる値である。まず、発泡粒子1~3mgを試料として用い、加熱速度10℃/分で23℃から230℃まで加熱するという条件で示差走査熱量測定を行うことによりDSC曲線を得る。図1にDSC曲線の一例を示す。発泡粒子が高温ピークを有する場合、DSC曲線には、図1に示すように、樹脂固有ピークΔH1と、樹脂固有ピークΔH1の頂点よりも高温側に頂点を有する高温ピークΔH2とが現れる。
【0126】
次に、DSC曲線上における80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当する点βとを結ぶ直線L1を引く。なお、融解終了温度Tは、高温ピークΔH2における高温側の端点、つまり、DSC曲線における、高温ピークΔH2と、高温ピークΔH2よりも高温側のベースラインとの交点である。
【0127】
直線L1を引いた後、樹脂固有ピークΔH1と高温ピークΔH2との間に存在する極大点γを通り、グラフの縦軸に平行な直線L2を引く。この直線L2により樹脂固有ピークΔH1と高温ピークΔH2とが分割される。高温ピークΔH2の融解熱量は、DSC曲線における高温ピークΔH2を構成する部分と、直線L1と、直線L2とによって囲まれた部分の面積に基づいて算出することができる。
【0128】
(発泡粒子成形体)
前記発泡粒子を成形型に充填した後、成形型内にスチームなどの加熱媒体を供給して型内成形することにより、発泡粒子成形体を得ることができる。成形体の密度は10kg/m3以上200kg/m3以下であることが好ましい。この場合には、成形体の軽量性と機械的強度とをバランスよく向上させることができる。
【0129】
成形体の機械的強度をより高める観点からは、成形体の密度は、12kg/m3以上であることがより好ましく、15kg/m3以上であることがさらに好ましく、20kg/m3以上であることが特に好ましい。成形体の軽量性をより高める観点からは、成形体の密度は、100kg/m3以下であることがより好ましく、80kg/m3以下であることがさらに好ましく、70kg/m3以下であることが特に好ましく、60kg/m3以下であることが最も好ましい。成形体の密度は、成形体の質量(単位:g)を成形体の外形寸法から求められる体積(単位:L)で除し、単位換算することにより算出される。成形体の外形寸法から体積を求めることが容易でない場合には、水没法により成形体の体積を求めることができる。
【0130】
また、成形体の機械的特性をより向上させる観点からは、成形体の独立気泡率は70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0131】
成形体の独立気泡率は、ASTM2865-70手順Cに準じて測定される。具体的には、まず、成形体の中心部から縦25mm×横25mm×高さ30mmの試験体を切り出し、試験体の幾何学的体積Va(単位:cm3)、つまり、縦寸法(単位:cm)と横寸法(単位:cm)と高さ寸法(単位:cm)との積を算出する。次に、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じ、空気比較式比重計(具体的には、東京サイエンス株式会社製「Beckman Model1000 Air Comparison Pycnometer」)により、試験体の真の体積の値Vxを測定する。なお、空気比較式比重計により得られる真の体積の値Vxは、測定用サンプルを構成する樹脂の容積と、測定用サンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和(単位:cm3)である。
【0132】
試験体の独立気泡率(単位:%)は、試験体の質量W(単位:g)と、発泡粒子を構成する樹脂の密度ρ(単位:g/cm3)と、前述した方法により得られる試験体の幾何学的体積Va及び試験体の真の体積Vxとを用い、下記式(2)により表される。
独立気泡率=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(2)
【0133】
以上の操作を5個の試験体について行い、各試験体の独立気泡率を算出する。そして、これら5個の試験体における独立気泡率の算術平均値を成形体の独立気泡率とする。
【実施例0134】
前記発泡粒子の製造方法の実施例を説明する。
【0135】
(ポリプロピレン系樹脂組成物A)
表1に、発泡粒子の製造に使用したポリプロピレン系樹脂組成物Aの性状等を示す。なお、本例において使用した樹脂組成物A1は株式会社プラニックにより製造されている「PLC-A02」であり、樹脂組成物A2はいその株式会社により製造されている「ELVBP-10」である。樹脂組成物A1及びA2は、いずれもポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aである。樹脂組成物A1の主成分は、ASRから回収されたポリプロピレン系樹脂組成物a1であり、樹脂組成物A2は、使用済自動車の部品(より具体的にはバンパー)から回収されたポリプロピレン系樹脂組成物aである。また、ポリプロピレン系樹脂組成物Aの形状は円柱状のペレットであり、ペレットの高さ方向における平均長さ(ペレット製造時の押出方向における平均長さ)は3mm、ペレットの直径は3mm、ペレットの平均質量は16mgである。また、ポリプロピレン系樹脂組成物Aには、タルクを主成分とする無機物が含まれている。後述する方法により、本例において使用した樹脂組成物Aのモルフォロジーを観察したところ、樹脂組成物A1及び樹脂組成物A2は、いずれも、ポリプロピレン系樹脂をマトリックスとし、エチレンプロピレン系ラバーを含むゴム状体をドメインとするモルフォロジーを示した。
【0136】
【表1】
【0137】
表1に示した樹脂組成物Aの物性値の測定方法は以下の通りである。
【0138】
〔樹脂組成物A中の23℃n-デカン可溶分〕
樹脂組成物A中の23℃n-デカン可溶分、つまり、23℃のn-デカン中に溶解し、かつアセトンに不要な成分の量は、以下の方法により求めた。具体的には、まず、試料として、約5gの樹脂組成物Aを精秤した。n-デカン200ml中に試料を加え、145℃で30分間加熱溶解を行った。次に、得られたn-デカン溶液を2時間かけて23℃まで冷却し、23℃で30分間放置してn-デカンに不溶な成分を析出させた。その後、n-デカン溶液をろ過して23℃におけるn-デカンに不溶な成分をろ別し、23℃n-デカン可溶分を含むろ液を得た。このろ液を、ろ液に対して約3倍量のアセトン中に加え、23℃で18時間放置し、23℃n-デカン可溶分を含む析出物を析出させた。その後、析出物をろ取して乾燥させた後、その質量を測定した。このようにして測定された析出物の質量を試料の質量で除し、百分率で表すことで、樹脂組成物A中の23℃n-デカン可溶分(単位:質量%)を算出した。
【0139】
〔樹脂組成物Aのモルフォロジー〕
以下の方法により前記樹脂組成物A1のモルフォロジーを観察した。まず、前記樹脂組成物A1からなる円柱状のペレットを、その中心部を通るように、ペレットの高さ方向に対して垂直に切断し、ペレットの中心部の断面が露出した観察用サンプルを準備した。次いで、この観察用サンプルをエポキシ樹脂に包埋し、四酸化ルテニウムにて電子染色を行った後、ウルトラミクロトーム等を用いてサンプルからペレットの中心部を含む切片を作製した。この切片を透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子社製「JEM-1040Flash」)のグリッドに載せ、倍率5000倍で観察すると共に、樹脂組成物A1の断面写真(すなわち、TEM写真)を撮影した。
【0140】
断面写真から、樹脂組成物A1におけるポリプロピレン系樹脂の相とエチレンプロピレン系ラバーを含むゴム状体の相のモルフォロジーを目視にて観察した。図2に樹脂組成物A1の断面写真を示す。図2において、エチレンプロピレン系ラバーを含むゴム状体のドメインDは比較的暗い色調で示されており、ポリプロピレン系樹脂のマトリックスMはドメインDに対して明るい色調で示されている。
【0141】
また、エチレンプロピレン系ラバーを含むゴム状体のドメインの平均径を、前記TEM写真に基づいて算出した。より具体的には、前記TEM写真に現れたドメインの中から無作為に選択した50個のドメインの最長径及び最短径をそれぞれ計測した。このようにして得られた最長径及び最短径の相加平均値を、エチレンプロピレン系ラバーを含むゴム状体のドメインの平均径とした。その結果、樹脂組成物A1におけるエチレンプロピレン系ラバーを含むゴム状体のドメインの平均径は1.2μmであった。
【0142】
また、前記モルフォロジーにおける、前記ドメインの面積割合を、前記TEM写真に基づいて算出した。より具体的には、画像解析ソフト(三谷商事株式会社製「WinROOF2013」)を用いて、TEM写真におけるドメイン部分を黒色、ドメイン以外の部分を白色にするモノトーン処理をし、測定対象とした。その後、上記画像解析ソフトにより、測定対象における前記ドメイン部分が占める面積の合計を算出すると共に、測定対象全体の面積に対する前記ドメイン部分が占める面積の合計の割合を算出した。その結果、樹脂組成物A1のモルフォロジーにおける前記ドメインの面積割合は28%であった。
った。
【0143】
〔灰分量〕
JIS K7250-1:2006の直接灰化法(A法)に準拠して、樹脂組成物Aの灰分量を測定した。具体的には、まず、約5gの樹脂組成物Aを精秤した後、樹脂組成物Aをるつぼに入れた。雰囲気温度を600℃に設定した電気炉内でるつぼ内の樹脂組成物Aを1時間加熱することにより、樹脂組成物Aを燃焼させた。加熱が完了した後、るつぼ内に残った残渣の質量を測定した。そして、加熱前の樹脂組成物Aの質量に対する残渣の質量の比率を百分率で表した値を、樹脂組成物Aの灰分量(単位:質量%)とした。
【0144】
〔融点TmA及び融解熱量HA
樹脂組成物Aの融点TmAは、JIS K7121:1987に基づき求めた。具体的には、まず、JIS K7121:1987に記載の「3.試験片の状態調節」の「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」に基づいて樹脂組成物Aからなる試験片の状態を調節した。状態調節後の試験片を10℃/分の加熱速度で23℃から230℃まで昇温することによりDSC曲線を取得した。そして、DSC曲線に現れた融解ピークの頂点温度を融点TmAとした。なお、測定装置としては、熱流束示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製、型番:DSC7020)を用いた。
【0145】
また、JIS K 7122:1987に準拠した示差走査熱量測定を行うことにより得られたDSC曲線から、樹脂組成物Aの融解熱量HAを求めた。具体的には、前述した融点TmAの測定において得られたDSC曲線上に、DSC曲線における80℃に相当する点と、最も頂点温度が高い融解ピークにおける高温側の端点とを結ぶ直線を引いた。そして、このようにして決定した直線とDSC曲線の融解ピークとにより囲まれる領域の面積に基づいて樹脂組成物Aの融解熱量HAを算出した。
【0146】
〔メルトマスフローレイトMFRA
JIS K7210-1:2014に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で樹脂組成物AのメルトマスフローレイトMFRAを測定した。
【0147】
〔曲げ弾性率MA
樹脂組成物Aを180℃でヒートプレスして厚さ4mmのシートを作製し、このシートから長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を切り出した。この試験片の曲げ弾性率MAを、JIS K7171:2008に準拠して求めた。なお、圧子の半径R1及び支持台の半径R2は共に5mmであり、支点間距離は64mmであり、試験速度は2mm/分である。
【0148】
(ポリプロピレン系樹脂B)
表2に、発泡粒子の製造に使用したポリプロピレン系樹脂Bの性状等を示す。なお、本例において使用した樹脂Bは、いずれも、非再生ポリプロピレン系樹脂から構成されている。また、本例において使用した樹脂Bは、プロピレン-エチレンランダム共重合体(B1~B3)またはホモプロピレン(B4)のいずれかである。なお、表2においては、プロピレン系ランダム共重合体を「rPP」と記載し、ホモプロピレンを「hPP」と記載した。
【0149】
表2に示した物性値の測定方法は、前述した樹脂組成物Aにおける物性値の測定方法と同様である。なお、表2における樹脂Bの「エチレン成分の含有量」の算出方法は以下の通りである。
【0150】
樹脂Bにおけるエチレン成分の含有量は、IRスペクトルにより決定する公知の方法により求めた。具体的には、高分子分析ハンドブック(日本分析化学会高分子分析研究懇談会編、出版年月:1995年1月、出版社:紀伊国屋書店、ページ番号と項目名:615~616「II.2.3 2.3.4 プロピレン/エチレン共重合体」、618~619「II.2.3 2.3.5 プロピレン/ブテン共重合体」)に記載されている方法、つまり、エチレン及びブテンの吸光度を所定の係数で補正した値とフィルム状の試験片の厚み等との関係から定量する方法により求めた。
【0151】
より具体的には、まず、樹脂Bを180℃の環境下でヒートプレスしてフィルム状に成形し、厚み0.1~0.3mmの厚みの異なる複数の試験片を作製した。次いで、各試験片のIRスペクトルを測定することにより、エチレン由来の722cm-1及び733cm-1における吸光度(A722、A733)と、ブテン由来の766cm-1における吸光度(A766)とを読み取った。次いで、各試験片について、以下の式(3)~(5)を用いて樹脂B中のエチレン成分含有量(単位:質量%)を算出した。各試験片について得られたエチレン成分含有量を算術平均した値を樹脂B中のエチレン成分含有量(単位:質量%)とした。
【0152】
(K´733c=1/0.96{(K´733a-0.268(K´722a}・・・(3)
(K´722c=1/0.96{(K´722a-0.150(K´733a}・・・(4)
エチレン成分含有量=0.575{(K´722c+(K´733c}・・・(5)
【0153】
ただし、式(3)~(5)におけるK´aは各波数における見かけの吸光係数(K´a=A/ρt)であり、K´cは補正後の吸光係数であり、Aは吸光度であり、ρは樹脂の密度(単位:g/cm3)であり、tはフィルム状の試験片の厚み(単位:cm)である。
【0154】
【表2】
【0155】
次に、本例の発泡粒子の構成及び製造方法を説明する。
【0156】
(実施例1)
表3に示す樹脂組成物Aと、樹脂Bと、気泡調整剤とを、表3に示す質量比で押出機に投入し、押出機内で樹脂組成物Aと樹脂Bとを含む溶融状態の混合物を形成した。なお、気泡調整剤としてはホウ酸亜鉛を使用した。ホウ酸亜鉛の添加量は、樹脂組成物Aと樹脂Bとの合計に対して500質量ppmとした。
【0157】
その後、押出機の下流側に設けられたダイの小孔から前記溶融状態の混合物をストランド状に押し出した。このストランド状の押出物を引き取り、冷却した後にペレタイザーを用いて適当な長さに切断することにより樹脂粒子を得た。
【0158】
このようにして得られた樹脂粒子をダイレクト発泡法により発泡させた。具体的には、まず、樹脂粒子1kgを、水性媒体としての3Lの水とともに内容積5Lの容器内に投入した。次いで、容器内に、樹脂粒子100質量部に対して0.3質量部の分散剤と、分散助剤として0.02質量部のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムと0.01質量部の硫酸アルミニウムとを添加し、樹脂粒子を水性媒体中に分散させた。分散剤としてはカオリンを使用した。
【0159】
その後、容器内を攪拌しながら密閉された容器内に発泡剤としての二酸化炭素を供給し、容器内の温度を155.5℃まで上昇させた。このときの容器内圧力は2.1MPa(G)であった。その後、容器内の温度を156℃に調整した後、この温度を15分保持することにより、樹脂粒子に発泡剤を含浸させた。その後、容器を開放し、内容物を大気圧雰囲気下に放出することにより樹脂粒子を発泡させて一段発泡粒子を得た。その後、一段発泡粒子を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中で24時間乾燥させた。
【0160】
次に、耐圧容器内に一段発泡粒子を充填し、耐圧容器内に空気を注入して、24時間かけて耐圧容器内の圧力を大気圧から0.6MPa(G)まで上昇させた。この圧力を24時間維持して空気を気泡内に含浸させた。その後、耐圧容器から取り出した一段発泡粒子を二段発泡機に充填し、圧力0.15MPa(G)のスチームを供給することにより、一段発泡粒子をさらに発泡させた。以上により、実施例1の発泡粒子を得た。
【0161】
(実施例2)
実施例2の発泡粒子の製造方法は、表3に示すように、樹脂組成物Aと樹脂Bとの質量比率を樹脂組成物A:樹脂B=50:50に示すように変更したこと以外は、概ね実施例1の発泡粒子の製造方法と同様である。
【0162】
(実施例3)
実施例3の発泡粒子の製造方法は、表3に示すように、樹脂Bとして、ポリプロピレン系樹脂B1に替えてポリプロピレン系樹脂B2を使用したこと以外は、概ね実施例1の発泡粒子の製造方法と同様である。
【0163】
(実施例4)
実施例4の発泡粒子の製造方法は、表3に示すように、樹脂組成物Aとして、ポリプロピレン系樹脂組成物A1に替えてポリプロピレン系樹脂組成物A2を使用したこと以外は、概ね実施例1の発泡粒子の製造方法と同様である。
【0164】
(実施例5)
実施例5の発泡粒子として、概ね実施例1の発泡粒子の製造方法と同様にして得られた、嵩密度が45kg/mである一段発泡粒子を用いた。
【0165】
(比較例1)
比較例1の発泡粒子は、樹脂組成物Aのみから構成されている。比較例1の発泡粒子の製造方法は、表4に示すように、樹脂Bを使用せず、樹脂組成物A1のみを使用して樹脂粒子を作製したこと以外は、概ね実施例1の発泡粒子の製造方法と同様である。
【0166】
(比較例2~3)
比較例2及び比較例3の発泡粒子の製造方法は、樹脂Bとして、ポリプロピレン系樹脂B1に替えて、表4に示すようにポリプロピレン系樹脂B3またはポリプロピレン系樹脂B4のいずれか一方を使用したこと以外は、概ね実施例1の発泡粒子の製造方法と同様である。
【0167】
(参考例)
参考例の発泡粒子は、樹脂Bのみから構成されている。参考例の発泡粒子の製造方法は、表4に示すように、樹脂組成物Aを使用せず、樹脂B1のみを使用して樹脂粒子を作製したこと以外は、概ね実施例1の発泡粒子の製造方法と同様である。
【0168】
表3及び表4に、以上により得られた樹脂粒子、発泡粒子及び発泡粒子を型内成形してなる成形体の諸特性を示す。なお、表3及び表4に示した諸特性の評価方法は以下の通りである。
【0169】
〔樹脂粒子及び発泡粒子の灰分量〕
樹脂粒子の灰分量及び発泡粒子の灰分量の測定方法は、樹脂組成物Aに替えて樹脂粒子または発泡粒子を用いたこと以外は、前述した樹脂組成物Aの灰分量の測定方法と同様である。
【0170】
〔発泡粒子の嵩密度〕
相対湿度50%、温度23℃、気圧1atmの環境下で発泡粒子を24時間以上静置し、発泡粒子の状態を調節した。このようにして得られる発泡粒子をメスシリンダー内に充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させた。その後、メスシリンダーの目盛から発泡粒子群の嵩体積(単位:L)を読み取った。そして、メスシリンダー内の発泡粒子群の質量(単位:g)を前述した嵩体積で除した値を単位換算することにより、発泡粒子の嵩密度(単位:kg/m3)を算出した。
【0171】
〔発泡粒子の平均気泡径〕
発泡粒子を概ね2等分となるように切断した。次に、露出した切断面が視野内に全て納まるように拡大写真を取得した。得られた拡大写真上に、発泡粒子の最表面から中央部を通って反対側の最表面に至る線分を、隣り合う線分のなす角度が等しくなるようにして(つまり、隣り合う線分のなす角度が45°となるようにして)4本引いた。このようにして得られた4本の線分の合計長さを線分と交差する気泡の総数で除した値を、個々の発泡粒子の気泡径とした。
【0172】
以上の操作を無作為に抽出した10個以上の発泡粒子に対して行い、それぞれの発泡粒子について得られた発泡粒子の気泡径を算術平均した値を、発泡粒子の平均気泡径とした。
【0173】
〔発泡粒子の独立気泡率〕
ASTM-D2856-70手順Cに基づき空気比較式比重計を用いて発泡粒子の独立気泡率を測定した。具体的には、まず、状態調節後の嵩体積約20cm3の発泡粒子を測定用サンプルとし、測定用サンプルをエタノールの入ったメスシリンダーに沈めた。この時の液面の上昇量から測定用サンプルの見掛けの体積Vaを測定した。見掛けの体積Vaを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じ、空気比較式比重計(東京サイエンス株式会社製「Beckman Model1000 Air Comparison Pycnometer」)により測定される測定用サンプルの真の体積の値Vxを測定した。そして、これらの体積の値Va及びVxを用い、下記の式(1)に基づいて測定用サンプルの独立気泡率(単位:%)を計算した。以上の操作を測定用サンプルを変更して5回行い、5つの測定用サンプルにおける独立気泡率の算術平均値(N=5)を発泡粒子の独立気泡率(単位:%)とした。
【0174】
独立気泡率=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(1)
【0175】
ただし、上記式(1)における記号の意味は以下の通りである。
Vx:上記方法で測定される測定用サンプルの真の体積、即ち、発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(単位:cm3
Va:測定用サンプルを、エタノールの入ったメスシリンダーに沈めた際の液面の上昇量から測定される測定用サンプルの見掛けの体積(単位:cm3
W:測定用サンプルの質量(単位:g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(単位:g/cm3
【0176】
〔ポリプロピレン系樹脂組成物Rの融点TmR、曲げ弾性率MR、メルトマスフローレイトMFRR及び融解熱量HR
ポリプロピレン系樹脂組成物Rの融点TmR、曲げ弾性率MR、メルトマスフローレイトMFRR及び融解熱量HRの測定方法は、樹脂組成物Aに替えて発泡粒子を使用したこと以外は、前述した樹脂組成物Aの融点TmA、曲げ弾性率MA、メルトマスフローレイトMFRA及び融解熱量HAの測定方法と同様である。
【0177】
なお、ポリプロピレン系樹脂組成物Rの曲げ弾性率MRの測定においては、発泡粒子を180℃でヒートプレスして厚さ4mmのシートを作製し、このシートから切り出された長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を用いて、曲げ弾性率MRの測定を行った。
【0178】
また、ポリプロピレン系樹脂組成物RのメルトマスフローレイトMFRRの測定においては、まず、発泡粒子を180℃の温度で3分間ヒートプレスすることにより、発泡粒子の脱泡処理を行い、発泡粒子を構成する混合樹脂からなる樹脂シートを作製した。この樹脂シートを切断することで得られたペレット状の試料を用いてメルトマスフローレイトMFRRの測定を行った。
【0179】
〔高温ピーク〕
高温ピークの頂点温度及び融解熱量は、JIS K7122:1987に準拠して示差走査熱量測定(DSC)を行うことで得られるDSC曲線から求めた。具体的には、まず、発泡粒子約3mgを試料として用い、加熱速度10℃/分で23℃から230℃まで試料を加熱して示差走査熱量測定を行うことによりDSC曲線を得た。次に、DSC曲線上における80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当する点βとを結ぶ直線L1を引いた。さらに、樹脂固有ピークΔH1と高温ピークΔH2との間に存在する極大点γを通り、グラフの縦軸に平行な直線L2を引き、直線L2により樹脂固有ピークΔH1と高温ピークΔH2とを分割した。
【0180】
そして、DSC曲線における高温ピークΔH2を構成する部分と、直線L1と、直線L2とによって囲まれた部分の面積に基づいて、高温ピークΔH2の融解熱量を算出した。
【0181】
以上の操作を異なる試料を用いて3回行い、各回の測定において得られた高温ピークΔH2の融解熱量の算術平均値を、発泡粒子の高温ピークΔH2の融解熱量とした。
【0182】
〔成形可能範囲〕
成形可能範囲の評価においては、本加熱時の成形圧を0.32MPa(G)から0.44MPa(G)までの間で0.01MPaずつ変化させて型内成形を行うことにより発泡粒子成形体を作製し、得られた成形体の表面性、融着性及び回復性に基づいて成形下限圧力及び成形可能範囲を決定した。
【0183】
発泡粒子成形体の製造方法は以下の通りである。まず、発泡粒子を耐圧容器内に入れ、耐圧容器内を空気で加圧して発泡粒子に空気を含浸させ、発泡粒子に0.10MPa(G)の内圧を付与した。次に、内圧が付与された発泡粒子を、クラッキング充填法により成形型に充填した。本例においては、縦250mm、横200mm、厚み50mmの平板状の発泡粒子成形体を成形可能なキャビティを有する成形型を使用した。クラッキング充填においては、成形体の厚み方向に5mmのクラッキング隙間(つまり、10%のクラッキング量)を開けた状態で発泡粒子を成形型内に充填した後、成形型を完全に閉じることにより成形型内の発泡粒子を機械的に圧縮した。
【0184】
次に、成形型内にスチームを供給して型内成形を行った。型内成形においては、まず、成形型のドレン弁を開放した状態で成形型内にスチームを5秒間供給して予備加熱を行った。次いで、ドレン弁を閉鎖し、本加熱時の成形圧より0.08MPa(G)低い圧力に達するまで、成形型の一方の面側からスチームを供給して第1の一方加熱を行った。次に、本加熱時の成形圧より0.04MPa(G)低い圧力に達するまで成形型の他方の面側よりスチームを供給して第2の一方加熱を行った。その後、本加熱時の成形圧に達するまで成形型の両面からスチームを供給して本加熱を行った。本加熱が完了した後、成形型内の圧力を解放し、成形体の発泡力による表面圧力が0.04MPa(G)になるまで成形型内において成形体を冷却した。
【0185】
その後、成形型から取り出した発泡粒子成形体を80℃のオーブン中で12時間静置して養生工程を行った。養生工程後、発泡粒子成形体を相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて24時間静置することにより、発泡粒子成形体の状態調節を行った。状態調節後の発泡粒子成形体の表面性、融着性及び回復性を評価し、後述する評価基準でいずれの項目でも合格となった成形圧(つまり、合格品が取得可能であった成形圧)の範囲を成形可能範囲とした。成形可能範囲が広いほど、成形性に優れていると判断することができる。また、成形可能な成形圧が低いほど、少ないスチーム量での型内成形が可能となるため、生産性に優れていると判断することができる。
【0186】
成形可能範囲の評価における表面性、融着性及び回復性の評価方法は以下の通りである。
【0187】
・表面性
発泡粒子成形体の厚み方向における一方のスキン面の中央部に100mm×100mmの正方形を描き、次いでこの正方形のいずれか1の角から対角線を引いた。そして、対角線上に存在するボイド、つまり、発泡粒子同士の間に形成される隙間のうち、1mm×1mm以上の大きさを有するボイドの数を数えた。そして、ボイドの数が2個以下の場合に合格と判断し、3個以上である場合に不合格と判断した。
【0188】
・融着性
発泡粒子成形体を長手方向に概ね等分となるように破断させた。破断面に露出した発泡粒子のうち無作為に選択した100個以上の発泡粒子を目視により観察し、粒子内部で破断した発泡粒子(つまり、材料破壊した発泡粒子)であるか、発泡粒子同士の界面で破断した発泡粒子であるかを判別した。そして、観察した発泡粒子の総数に対する粒子内部で破断した発泡粒子の数の比率を百分率で表した値(つまり、材料破壊率)を算出し、この値を融着率とした。そして、融着率が80%以上である場合を合格と判断し、80%未満である場合を不合格と判断した。
【0189】
・回復性
発泡粒子成形体を厚み方向から見た平面視において、各頂点より中心方向に10mm内側となる4か所の位置における発泡粒子成形体の厚みと、中央部における発泡粒子成形体の厚みとをそれぞれ計測した。次いで、計測した箇所のうち最も厚みの厚い箇所の厚みに対する最も厚みの薄い箇所の厚みの比(単位:%)を算出した。このようにして得られた厚みの比が95%以上である場合に合格と判断し、95%未満である場合に不合格と判断した。
【0190】
〔成形体の密度〕
前述した成形可能範囲のうち、最も低い成形圧で型内成形を行い、発泡粒子成形体を得た。この発泡粒子成形体の質量(単位:g)を当該成形体の外形寸法から求められる体積(単位:L)で除した後、単位換算することにより成形体の密度(単位:kg/m3)を算出した。
【0191】
〔成形体の独立気泡率〕
前述した成形可能範囲のうち、最も低い成形圧で型内成形を行い、発泡粒子成形体を得た。この成形体の中心部から縦25mm×横25mm×高さ30mmの試験体を切り出し、試験体の幾何学的体積Va(単位:cm3)、つまり、縦寸法(単位:cm)と横寸法(単位:cm)と高さ寸法(単位:cm)との積を算出した。次に、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じ、空気比較式比重計(具体的には、東京サイエンス株式会社製「Beckman Model1000 Air Comparison Pycnometer」)により、試験体の真の体積の値Vxを測定した。なお、空気比較式比重計により得られる真の体積の値Vxは、測定用サンプルを構成する樹脂の容積と、測定用サンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和(単位:cm3)である。
【0192】
以上により得られた試験体の質量W(単位:g)と、発泡粒子を構成する樹脂の密度ρ(単位:g/cm3)と、前述した方法により得られる試験体の幾何学的体積Va及び試験体の真の体積Vxとを用い、下記式(2)により試験体の独立気泡率(単位:%)を算出した。
独立気泡率=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(2)
【0193】
以上の操作を5個の試験体について行い、各試験体の独立気泡率を算出した。そして、これら5個の試験体における独立気泡率の算術平均値を成形体の独立気泡率とした。
【0194】
〔成形体の50%圧縮強度〕
前述した成形可能範囲のうち、最も低い成形圧で型内成形を行い、発泡粒子成形体を得た。この成形体の中心部から、縦50mm、横50mm、厚み25mmの直方体状の試験片を採取した。JIS K7220:2006に規定された方法に基づいて10mm/minの圧縮速度で試験片の圧縮試験を行い、応力-ひずみ曲線を取得した。なお、圧縮試験は23℃の実験室において行った。この応力-ひずみ曲線に基づいて試験片の50%変形圧縮応力を算出し、この値を成形体の50%圧縮強度とした。また、表3及び表4の「50%圧縮強度/密度」欄には、50%圧縮強度の値を成形体の密度で除した値(単位:kPa/(kg/m))を記載した。
【0195】
【表3】
【0196】
【表4】
【0197】
表3に示すように、実施例1~5の製造方法において用いられる樹脂組成物Aは、ポストコンシューマ材料に由来するポリプロピレン系樹脂組成物aを含み、前記特定の範囲内の融点TmA及び曲げ弾性率MAを有している。同様に、樹脂Bは、前記特定の範囲内の融点TmB及び曲げ弾性率MBを有している。そして、実施例1~5における樹脂粒子は、このような樹脂組成物Aと樹脂Bとを、前記特定の範囲内の質量比で混合して得られる溶融混練物から構成されている。そのため、かかる樹脂粒子を発泡させてなる発泡粒子は、良好な型内成形性を有している。また、実施例1~5の樹脂粒子を発泡させてなる発泡粒子から得られた成形体は、良好な圧縮物性を示した。
【0198】
一方、表4に示すように、比較例1の製造方法における樹脂粒子には樹脂Bが含まれておらず、樹脂組成物Aのみから構成されている。そのため、成形可能範囲の評価において、種々の成形圧で得られた発泡粒子を型内成形したところ、いずれの成形圧においても良好な成形体を得ることはできなかった。
【0199】
比較例2の製造方法において用いられた樹脂組成物A及び樹脂Bにおける曲げ弾性率の比MB/MAは前記特定の範囲を満たさない。そのため、成形可能範囲の評価において、種々の成形圧で得られた発泡粒子を型内成形したところ、いずれの成形圧においても良好な成形体を得ることはできなかった。
【0200】
比較例3の製造方法において用いられた樹脂Bの曲げ弾性率MBは、前記特定の範囲よりも高い。そのため、成形可能範囲の評価において、種々の成形圧で得られた発泡粒子を型内成形したところ、いずれの成形圧においても良好な成形体を得ることはできなかった。
【0201】
以上、実施例に基づいて本発明に係る発泡粒子及びその製造方法の具体的な態様を説明したが、本発明に係る発泡粒子及びその製造方法の具体的な態様は実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
【符号の説明】
【0202】
A ポリプロピレン系樹脂組成物
図1
図2